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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008710
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】圧力検出装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20240112BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G01L9/00 303A
H01L29/84 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110790
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 祐一
(72)【発明者】
【氏名】西川 睦雄
【テーマコード(参考)】
2F055
4M112
【Fターム(参考)】
2F055CC02
2F055DD05
2F055EE14
2F055FF11
2F055GG15
4M112AA01
4M112BA01
4M112CA04
4M112CA08
4M112CA11
4M112CA12
4M112CA13
4M112CA14
4M112DA10
4M112DA14
4M112EA02
4M112EA08
4M112FA20
(57)【要約】
【課題】圧力検出装置におけるリーク電流を抑制する。
【解決手段】上面を有する半導体基板と、前記半導体基板に設けられた第1導電型のバルク領域と、前記バルク領域と前記半導体基板の前記上面との間に設けられた、第1導電型のピエゾ抵抗領域と、前記ピエゾ抵抗領域と前記バルク領域との間に設けられた、第2導電型の第1ウェル領域と、前記第1ウェル領域と前記バルク領域との間に設けられ、前記第1ウェル領域よりも低濃度の第2導電型の第1低濃度領域とを備える圧力検出装置を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を有する半導体基板と、
前記半導体基板に設けられた第1導電型のバルク領域と、
前記バルク領域と前記半導体基板の前記上面との間に設けられた、第1導電型のピエゾ抵抗領域と、
前記ピエゾ抵抗領域と前記バルク領域との間に設けられた、第2導電型の第1ウェル領域と、
前記第1ウェル領域と前記バルク領域との間に設けられ、前記第1ウェル領域よりも低濃度の第2導電型の第1低濃度領域と
を備える圧力検出装置。
【請求項2】
前記第1ウェル領域および前記第1低濃度領域は、前記半導体基板の深さ方向におけるドーピング濃度分布において、それぞれ濃度ピークを有する
請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項3】
前記半導体基板の深さ方向におけるドーピング濃度分布は、
前記第1ウェル領域に配置された濃度ピークと、
前記濃度ピークと前記バルク領域との間に配置された変曲点と
を有し、
前記第1低濃度領域は、前記変曲点と前記バルク領域との間の領域である
請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項4】
前記第1ウェル領域におけるドーピング濃度の最大値は、1×1015/cm以上、1×1017/cm以下であり、
前記第1低濃度領域におけるドーピング濃度の最大値は、1×1013/cm以上、1×1015/cm以下である
請求項1から3のいずれか一項に記載の圧力検出装置。
【請求項5】
前記第1低濃度領域の前記半導体基板の深さ方向における長さは、前記第1ウェル領域の前記深さ方向における長さよりも大きい
請求項1から3のいずれか一項に記載の圧力検出装置。
【請求項6】
前記半導体基板の深さ方向と垂直な方向において、前記第1低濃度領域の幅が、前記第1ウェル領域の幅よりも大きい
請求項1から3のいずれか一項に記載の圧力検出装置。
【請求項7】
前記半導体基板に定格電圧が印加された状態で、前記第1低濃度領域と前記バルク領域との間のpn接合から広がる空乏層が、前記第1ウェル領域の前記濃度ピークまでは到達しない
請求項2または3に記載の圧力検出装置。
【請求項8】
前記バルク領域と前記半導体基板の前記上面との間に設けられた、第1導電型のソース領域およびドレイン領域と、
前記ソース領域および前記ドレイン領域と、前記バルク領域との間に設けられた、第2導電型の第2ウェル領域と、
前記第2ウェル領域と前記バルク領域との間に設けられ、前記第2ウェル領域よりも低濃度の第2導電型の第2低濃度領域と
を更に備える請求項1から3のいずれか一項に記載の圧力検出装置。
【請求項9】
前記ピエゾ抵抗領域は、前記半導体基板の前記上面において、第1方向に長手を有する延伸部を複数有し、
前記圧力検出装置は、それぞれの前記延伸部の間に設けられ、前記バルク領域よりも高濃度の第2導電型の1つ以上の分離領域を有し、
それぞれの前記分離領域は、隣り合う2つの前記延伸部と接している
請求項1から3のいずれか一項に記載の圧力検出装置。
【請求項10】
前記ピエゾ抵抗領域は、
前記半導体基板の前記上面に接する第1導電型の高濃度抵抗部と、
前記高濃度抵抗部と前記第1ウェル領域との間に設けられ、前記高濃度抵抗部よりも低濃度の第1導電型の低濃度抵抗部と
を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の圧力検出装置。
【請求項11】
前記ソース領域は、
前記半導体基板の前記上面に接する第1導電型の高濃度ソース部と、
前記高濃度ソース部と前記第2ウェル領域との間に設けられ、前記高濃度ソース部よりも低濃度の第1導電型の低濃度ソース部と
を有し、
前記ドレイン領域は、
前記半導体基板の前記上面に接する第1導電型の高濃度ドレイン部と、
前記高濃度ドレイン部と前記第2ウェル領域との間に設けられ、前記高濃度ドレイン部よりも低濃度の第1導電型の低濃度ドレイン部と
を有する請求項8に記載の圧力検出装置。
【請求項12】
前記半導体基板の前記上面の上方に配置され、前記ピエゾ抵抗領域の少なくとも一部を覆う、導電性のシールド膜を更に備える
請求項1から3のいずれか一項に記載の圧力検出装置。
【請求項13】
圧力検出装置の製造方法であって、
前記圧力検出装置は、
上面および下面を有する半導体基板と、
前記半導体基板に設けられた第1導電型のバルク領域と、
前記バルク領域と前記半導体基板の前記上面との間に設けられた、第1導電型のピエゾ抵抗領域と、
前記ピエゾ抵抗領域と前記バルク領域との間に設けられた、第2導電型の第1ウェル領域と、
前記第1ウェル領域と前記バルク領域との間に設けられ、前記第1ウェル領域よりも低濃度の第2導電型の第1低濃度領域と
を備え、
前記第1ウェル領域を形成すべき位置と、前記第1低濃度領域を形成すべき位置のそれぞれに対して別途にイオンを注入して、前記第1ウェル領域および前記第1低濃度領域を形成する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出装置および製造方法に関する。
【0002】
シリコン基板等に形成されたダイアフラムにピエゾ抵抗を設けた圧力検出装置が知られている(例えば特許文献1および2参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2018-125588号公報
[特許文献2] 特開2019-158576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
圧力検出装置においては、基板内におけるリーク電流を抑制することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、圧力検出装置を提供する。圧力検出装置は、上面を有する半導体基板を備えてよい。圧力検出装置は、前記半導体基板に設けられた第1導電型のバルク領域を備えてよい。上記いずれかの圧力検出装置は、前記バルク領域と前記半導体基板の前記上面との間に設けられた、第1導電型のピエゾ抵抗領域を備えてよい。上記いずれかの圧力検出装置は、前記ピエゾ抵抗領域と前記バルク領域との間に設けられた、第2導電型の第1ウェル領域を備えてよい。上記いずれかの圧力検出装置は、前記第1ウェル領域と前記バルク領域との間に設けられ、前記第1ウェル領域よりも低濃度の第2導電型の第1低濃度領域を備えてよい。
【0005】
上記いずれかの圧力検出装置において、前記第1ウェル領域および前記第1低濃度領域は、前記半導体基板の深さ方向におけるドーピング濃度分布において、それぞれ濃度ピークを有してよい。
【0006】
上記いずれかの圧力検出装置において、前記半導体基板の深さ方向におけるドーピング濃度分布は、前記第1ウェル領域に配置された濃度ピークを有してよい。上記いずれかの圧力検出装置において、前記半導体基板の深さ方向におけるドーピング濃度分布は、前記濃度ピークと前記バルク領域との間に配置された変曲点を有してよい。上記いずれかの圧力検出装置において、前記第1低濃度領域は、前記変曲点と前記バルク領域との間の領域であってよい。
【0007】
上記いずれかの圧力検出装置において、前記第1ウェル領域におけるドーピング濃度の最大値は、1×1015/cm以上、1×1017/cm以下であってよい。上記いずれかの圧力検出装置において、前記第1低濃度領域におけるドーピング濃度の最大値は、1×1013/cm以上、1×1015/cm以下であってよい。
【0008】
上記いずれかの圧力検出装置において、前記第1低濃度領域の前記深さ方向における長さは、前記第1ウェル領域の前記深さ方向における長さよりも大きくてよい。
【0009】
上記いずれかの圧力検出装置において、前記深さ方向と垂直な方向において、前記第1低濃度領域の幅が、前記第1ウェル領域の幅よりも大きくてよい。
【0010】
上記いずれかの圧力検出装置において、前記半導体基板に定格電圧が印加された状態で、前記第1低濃度領域と前記バルク領域との間のpn接合から広がる空乏層が、前記第1ウェル領域の前記濃度ピークまでは到達しなくてよい。
【0011】
上記いずれかの圧力検出装置は、前記バルク領域と前記半導体基板の前記上面との間に設けられた、第1導電型のソース領域およびドレイン領域を備えてよい。上記いずれかの圧力検出装置は、前記ソース領域および前記ドレイン領域と、前記バルク領域との間に設けられた、第2導電型の第2ウェル領域を備えてよい。上記いずれかの圧力検出装置は、前記第2ウェル領域と前記バルク領域との間に設けられ、前記第2ウェル領域よりも低濃度の第2導電型の第2低濃度領域を備えてよい。
【0012】
上記いずれかの圧力検出装置において、前記ピエゾ抵抗領域は、前記半導体基板の前記上面において、第1方向に長手を有する延伸部を複数有してよい。上記いずれかの圧力検出装置において、前記圧力検出装置は、それぞれの前記延伸部の間に設けられ、前記バルク領域よりも高濃度の第2導電型の1つ以上の分離領域を有してよい。上記いずれかの圧力検出装置において、それぞれの前記分離領域は、隣り合う2つの前記延伸部と接していてよい。
【0013】
上記いずれかの圧力検出装置において、前記ピエゾ抵抗領域は、前記半導体基板の前記上面に接する第1導電型の高濃度抵抗部を有してよい。上記いずれかの圧力検出装置において、前記ピエゾ抵抗領域は、前記高濃度抵抗部と前記第1ウェル領域との間に設けられ、前記高濃度抵抗部よりも低濃度の第1導電型の低濃度抵抗部を有してよい。
【0014】
上記いずれかの圧力検出装置において、前記ソース領域は、前記半導体基板の前記上面に接する第1導電型の高濃度ソース部を有してよい。上記いずれかの圧力検出装置において、前記ソース領域は、前記高濃度ソース部と前記第2ウェル領域との間に設けられ、前記高濃度ソース部よりも低濃度の第1導電型の低濃度ソース部を有してよい。上記いずれかの圧力検出装置において、前記ドレイン領域は、前記半導体基板の前記上面に接する第1導電型の高濃度ドレイン部を有してよい。上記いずれかの圧力検出装置において、前記ドレイン領域は、前記高濃度ドレイン部と前記第2ウェル領域との間に設けられ、前記高濃度ドレイン部よりも低濃度の第1導電型の低濃度ドレイン部を有してよい。
【0015】
上記いずれかの圧力検出装置は、前記半導体基板の前記上面の上方に配置され、前記ピエゾ抵抗領域の少なくとも一部を覆う、導電性のシールド膜を備えてよい。
【0016】
本発明の第2の態様においては、第1の態様に係る圧力検出装置の製造方法を提供する。製造方法では、前記第1ウェル領域を形成すべき位置と、前記第1低濃度領域を形成すべき位置のそれぞれに対して別途にイオンを注入して、前記第1ウェル領域および前記第1低濃度領域を形成してよい。
【0017】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一つの実施形態に係る圧力検出装置300の回路構成の一例を示す図である。
図2】半導体基板50の上面における1つのピエゾ抵抗部110の構造例を示す図である。
図3】圧力検出部100の構造例を示す図である。
図4図3のA-A線における、半導体基板50の深さ方向のドーピング濃度分布の一例を示す図である。
図5図3のA-A線における、半導体基板50の深さ方向のドーピング濃度分布の他の例を示す図である。
図6】圧力検出部100の他の構造例を示す図である。
図7】圧力検出装置300の製造方法を説明する図である。
図8】圧力検出部100の他の構造例を示す図である。
図9】半導体素子部200の構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または装置の実装時における方向に限定されない。
【0021】
本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0022】
半導体基板の深さ方向における中心から、半導体基板の上面までの領域を、上面側と称する場合がある。同様に、半導体基板の深さ方向における中心から、半導体基板の下面までの領域を、下面側と称する場合がある。
【0023】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0024】
本明細書においては、ネット・ドーピング濃度とは、ドナー濃度を正イオンの濃度とし、アクセプタ濃度を負イオンの濃度として、電荷の極性を含めて足し合わせた正味の濃度を意味する。一例として、ドナー濃度をN、アクセプタ濃度をNとすると、任意の位置における正味のネット・ドーピング濃度はN-Nとなる。本明細書では、特に説明する場合を除き、ネット・ドーピング濃度を単にドーピング濃度と記載する。ネット・ドーピング濃度は、電圧-容量測定法(CV法)により測定できる。また、拡がり抵抗測定法(SR法)により計測されるキャリア濃度を、ネット・ドーピング濃度としてよい。CV法またはSR法により計測されるキャリア濃度は、熱平衡状態における値としてよい。本明細書における各濃度は、室温における値でよい。室温における値は、一例として300K(ケルビン)(約26.9℃)のときの値を用いてよい。
【0025】
本明細書においてp+型またはn+型と記載した場合、p型またはn型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、p-型またはn-型と記載した場合、p型またはn型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。本明細書の単位系は、特に断りがなければSI単位系である。また、p型およびn型は、第1導電型および第2導電型に対応する。各実施例におけるp型およびn型は、互いに逆の導電型に置き換えてもよい。
【0026】
イオンまたは電子等の荷電粒子を所定の加速エネルギーで半導体基板に注入した場合、これらの粒子は深さ方向において所定の分布を有する。本明細書では、当該分布のピーク位置を、当該粒子が注入された位置、または、注入された深さ等と称する場合がある。
【0027】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る圧力検出装置300の回路構成の一例を示す図である。圧力検出装置300は、圧力検出部100および半導体素子部200を備える。圧力検出部100は、複数のピエゾ抵抗部110を備える。圧力検出部100は、複数のシールド膜20を更に備えてよい。図1の例では、圧力検出装置300は、ホイートストンブリッジ回路を構成する複数のピエゾ抵抗部110-1、110-2、110-3、および110-4(以下、複数のピエゾ抵抗部110と総称する場合がある)を備える。それぞれのピエゾ抵抗部110-kの抵抗値をRkとする。また、それぞれのピエゾ抵抗部110-kに対して、シールド膜20-kが設けられている。
【0028】
一例としてピエゾ抵抗部110は、半導体基板に形成された拡散抵抗である。半導体基板は、シリコン基板であってもよく、炭化珪素(SiC)等の化合物半導体基板であってもよい。ピエゾ抵抗部110は、p型またはn型のドーパントを半導体基板に選択的にドーピングし、さらに熱拡散することによって形成されてよい。本例のピエゾ抵抗部110は、半導体基板に配置されたダイアフラム上に形成される。
【0029】
ピエゾ抵抗部110-1は、ホイートストンブリッジ回路の高電位側端子Vddとホイートストンブリッジ回路の第1中間電位端子Vout1との間に電気的に接続される。ピエゾ抵抗部110-2は、第1中間電位端子Vout1とホイートストンブリッジ回路の低電位側端子Vssとの間に電気的に接続される。ピエゾ抵抗部110-3は、高電位側端子Vddとホイートストンブリッジ回路の第2中間電位端子Vout2との間に電気的に接続される。ピエゾ抵抗部110-4は、第2中間電位端子Vout2と低電位側端子Vssとの間に電気的に接続される。ピエゾ抵抗部110どうしは、配線14により接続されている。また、ピエゾ抵抗部110と各端子も、配線14により接続されている。
【0030】
圧力検出装置300の周囲の圧力が変化すると、半導体基板のダイアフラムが変形し、それぞれのピエゾ抵抗部110の抵抗値が変動する。これにより、第1中間電位端子Vout1および第2中間電位端子Vout2における電位が変化する。当該電位から、圧力検出装置300の周囲の圧力を算出できる。半導体素子部200は、第1中間電位端子Vout1および第2中間電位端子Vout2の電位に応じた信号を処理する。半導体素子部200は、当該信号を増幅する機能、ノイズを除去する機能、デジタル信号に変換する機能、および、デジタル信号を処理する機能の少なくとも一つを有してよい。本例の半導体素子部200は、MOSトランジスタ等の半導体素子を含んでいる。
【0031】
ピエゾ抵抗部110が拡散抵抗の場合、ピエゾ抵抗部110の上方の部材が帯電すると、ピエゾ抵抗部110の拡散層においてキャリアのドリフトが発生する。この場合、ピエゾ抵抗部110におけるキャリア分布が変動して、ピエゾ抵抗部110の抵抗値が変動してしまう場合がある。これに対して、シールド膜20を設けることで、ピエゾ抵抗部110の抵抗値の変動を抑制できる。
【0032】
シールド膜20は、複数のピエゾ抵抗部110のそれぞれの上方に設けられる。シールド膜20は、ポリシリコンまたは金属等の導電性材料で構成される。それぞれのシールド膜20は、接地電位等の所定の電位に接続される。これにより、ピエゾ抵抗部110の上方の部材における帯電を抑制し、ピエゾ抵抗の抵抗値の変動を抑制する。
【0033】
図2は、半導体基板50の上面における1つのピエゾ抵抗部110の構造例を示す図である。本例では、半導体基板50の上面における2つの直交軸をX軸およびY軸とし、半導体基板50の上面と垂直な軸をZ軸とする。
【0034】
本例のピエゾ抵抗部110は、半導体基板50の内部に設けられ、且つ、半導体基板50の上面に露出するp型のピエゾ抵抗領域11を有する。ピエゾ抵抗領域11は、半導体基板50の上面において、所定の方向に延伸して設けられている。図2の例では、ピエゾ抵抗領域11は、XY面内で蛇行した形状を有するが、ピエゾ抵抗領域11は他の形状を有していてもよい。本例のピエゾ抵抗領域11は、Y軸方向に延伸する複数の延伸部15を有している。複数の延伸部15は、X軸方向に沿って互いに所定の間隔を有して配置されている。X軸方向において隣り合う2つの延伸部15は、Y軸方向における端部で互いに接続されている。
【0035】
ピエゾ抵抗領域11の2つの端部は、それぞれ配線14(図1参照)に接続される。ピエゾ抵抗領域11の配線14と接続する部分には、ピエゾ抵抗領域11の他の部分よりも高濃度のp型の高濃度抵抗部12が設けられてよい。これにより、ピエゾ抵抗領域11と配線14との接触抵抗を低減できる。
【0036】
本例では、X軸方向において隣り合う2つの延伸部15の間には、高濃度のn型の分離領域10が設けられている。分離領域10には、電源電圧Vdd(図1参照)等の高電圧が印加されている。図2においては、分離領域10に電源電圧Vddを印加する配線等の構造は省略している。ピエゾ抵抗領域11の上方の部材が帯電すると、2つの延伸部15の間のn型の領域の表層にキャリアが引き寄せられて、p型に反転する場合がある。p型の反転層が形成されると、2つの延伸部15が反転層で接続されて、寄生p型MOSトランジスタとして動作してしまう。本例のように、高濃度の分離領域10を設けることで、2つの延伸部15の間にp型の反転層が形成されることを抑制できる。
【0037】
図3は、圧力検出部100の構造例を示す図である。図3では、1つのピエゾ抵抗部110の近傍における、半導体基板50の断面を示している。図3の断面は、図2におけるB-B断面に相当する。図2においては、図3に示す電源配線13およびn型の分離領域10を省略している。電源配線13は、所定の電源電圧Vddを伝送する配線であり、半導体基板50の上面51と接続する。電源配線13は、金属等の導電材料で形成されている。分離領域10は、半導体基板50の上面51において電源配線13と接続する部分を有する。これにより、半導体基板50の上面51に設けられた分離領域10に電源電圧を印加する。分離領域10に比較的に高い電圧を印加することで、分離領域10がp型に反転することを抑制できる。
【0038】
半導体基板50は、上面51および下面を有する。上面51および下面は、半導体基板50の2つの主面である。図3では半導体基板50の下面を省略している。
【0039】
半導体基板50は、p型のバルク領域1を有する。バルク領域1は、p型のドーパントが一様に分布している領域である。バルク領域1は、半導体基板50のうち、局所的にイオン注入がされた領域以外の領域であってよい。
【0040】
半導体基板50の上面51の上には、配線14が形成される。配線14は、金属等の導電材料で形成されている。
【0041】
半導体基板50には、p型のピエゾ抵抗領域11が設けられている。図3では、ピエゾ抵抗領域11の延伸部15を示している。ピエゾ抵抗領域11は、バルク領域1と、半導体基板50の上面51との間に設けられている。ピエゾ抵抗領域11は、上面51に露出していてよく、露出していなくてもよい。
【0042】
ピエゾ抵抗領域11のドーピング濃度は、バルク領域1のドーピング濃度よりも高くてよい。図2において説明したように、ピエゾ抵抗領域11の両端のそれぞれは、配線14に接続されている。ピエゾ抵抗領域11は、配線14と接続する高濃度抵抗部12を有してよい。高濃度抵抗部12は、ピエゾ抵抗領域11の他の部分よりも高濃度のp型の領域である。
【0043】
図2において説明したように、XZ断面において、ピエゾ抵抗領域11の複数の延伸部15が、X軸方向に沿って設けられてよい。X軸方向において隣り合う2つの延伸部15の間には、n型の分離領域10が設けられている。分離領域10は、後述する第1ウェル領域91よりも高濃度であってよい。分離領域10は、X軸方向において隣り合う2つの延伸部15と接触してよい。分離領域10は、半導体基板50の上面51に露出してよい。分離領域10は、延伸部15より深く形成されてよく、延伸部15と同じ深さまで形成されてよく、延伸部15より浅く形成されてもよい。
【0044】
半導体基板50には、n型の第1ウェル領域91と、n-型の第1低濃度領域101が設けられている。第1ウェル領域91は、ピエゾ抵抗領域11と、バルク領域1との間に設けられている。本例のピエゾ抵抗領域11は、第1ウェル領域91の内部に配置されている。第1ウェル領域91の内部には、分離領域10が設けられてもよい。第1ウェル領域91の内部に設けられた各領域は、第1ウェル領域91によりバルク領域1と分離される。
【0045】
第1低濃度領域101は、第1ウェル領域91の底部とバルク領域1との間に設けられている。第1低濃度領域101は、第1ウェル領域91よりも低濃度のn型の領域である。つまり第1低濃度領域101におけるドーピング濃度の最大値が、第1ウェル領域91におけるドーピング濃度の最大値よりも低い。第1低濃度領域101におけるドーピング濃度の最小値は、第1ウェル領域91におけるドーピング濃度の最大値より低くてよく、高くてもよい。本例の第1低濃度領域101の上端は第1ウェル領域91と接しており、下端はバルク領域1と接している。第1低濃度領域101およびバルク領域1の界面にはpn接合が形成される。
【0046】
第1低濃度領域101を設けない場合、高濃度の第1ウェル領域91とバルク領域1とが接することになり、pn接合部における不純物濃度が高くなる。この場合、第1ウェル領域91とバルク領域1の間のリーク電流が大きくなる。リーク電流の増大は、高温時に特に顕著になる。第1ウェル領域91とバルク領域1の間のリーク電流が大きくなると、圧力検出装置300の動作に影響を与える場合がある。例えば第1ウェル領域91に流れるリーク電流が増減すると、第1ウェル領域91の電位が変動する。第1ウェル領域91の電位が変動すると、ピエゾ抵抗領域11のキャリア濃度分布が変動して、抵抗値が変動する場合がある。特許文献1に開示された技術では、リーク電流を補償する回路を設けているが、回路規模が増大してしまう。
【0047】
これに対して第1低濃度領域101を設けることで、第1低濃度領域101とバルク領域1が接することになり、pn接合部における不純物濃度を低くできる。これにより、第1低濃度領域101とバルク領域1の間のリーク電流を抑制でき、圧力検出装置300を精度よく動作させることができる。
【0048】
本例のピエゾ抵抗領域11は、半導体基板50の上面51に接する高濃度抵抗部12と、高濃度抵抗部12よりも低濃度のp型の低濃度抵抗部を有する。本例では、高濃度抵抗部12と第1ウェル領域91との間に配置されたピエゾ抵抗領域11の部分が、低濃度抵抗部に相当する。このような構成により、第1ウェル領域91と、ピエゾ抵抗領域11とのpn接合部におけるリーク電流を低減できる。このため、圧力検出装置300を精度よく動作させることができる。
【0049】
半導体基板50の上面51の上方には、絶縁膜2が設けられてよい。一例として絶縁膜2は、半導体基板50の上面51を酸化または窒化して形成した膜である。絶縁膜2は、LOCOS膜であってよい。配線14および電源配線13は、絶縁膜2に設けられた開口を介して、半導体基板50と接続する。
【0050】
半導体基板50の上面51の上方には、保護膜17が設けられてよい。一例として保護膜17は、半導体基板50の上面51に堆積させた膜である。保護膜17は、ポリイミド等の絶縁材料で形成されている。保護膜17は、半導体基板50の上面51に設けられた各部材を覆うように設けられる。
【0051】
保護膜17または絶縁膜2が帯電すると、半導体基板50の表層にキャリアが引き寄せられて、圧力検出装置300の特性が変化する場合がある。上述したように、2つの延伸部15の間にp型の反転層が形成されると、寄生PMOSトランジスタとして動作する可能性がある。また、延伸部15の表層にキャリアが引き寄せられると、ピエゾ抵抗領域11の抵抗値が変動する可能性がある。本例の圧力検出装置300は、保護膜17または絶縁膜2における帯電を抑制するとともに、帯電が生じた場合でも圧力検出装置300の特性変動を抑制する。
【0052】
半導体基板50の上面51の上方には、ポリシリコン等の導電性の材料で形成されたシールド膜20が配置されている。シールド膜20には、接地電位等の基準電位が印加される。シールド膜20を設けることで、保護膜17または絶縁膜2等における帯電を抑制できる。シールド膜20は、ピエゾ抵抗領域11(図3では延伸部15)の少なくとも一部を覆っている。シールド膜20は、延伸部15の間の領域の少なくとも一部も覆ってよい。本例のシールド膜20は、X軸方向に沿って配置された複数の延伸部15のうち、両端の2つの延伸部15以外の延伸部15を覆っている。また、X軸方向に沿って配置された複数の分離領域10の全てを覆っている。シールド膜20は、X軸方向の両端の2つの延伸部15を部分的に覆っていてもよい。例えばシールド膜20は、当該2つの延伸部15において、配線14で覆われていない領域の少なくとも一部を覆ってよい。シールド膜20と半導体基板50との間には、絶縁膜2が設けられている。シールド膜20は、保護膜17により覆われてよい。
【0053】
分離領域10を設けることで、2つの延伸部15の間の領域にp型の反転層が形成されるのを抑制できる。また、それぞれの延伸部15の表層には、n型領域111が設けられてよい。n型領域111は、第1ウェル領域91よりも高濃度のn型であってよい。n型領域111を設けることで、延伸部15の表層に高濃度のp型領域が形成されるのを抑制し、ピエゾ抵抗領域11の抵抗値の変動を抑制できる。
【0054】
図4は、図3のA-A線における、半導体基板50の深さ方向のドーピング濃度分布の一例を示す図である。A-A線は、Z軸と平行であり、延伸部15の一部、第1ウェル領域91、第1低濃度領域101、および、バルク領域1の一部を通過する。延伸部15と第1ウェル領域91との境界、および、第1低濃度領域101とバルク領域1との境界にはpn接合が形成されている。
【0055】
本例の第1ウェル領域91および第1低濃度領域101は、それぞれドナーとなるイオンを注入して熱処理することで形成される。つまり、半導体基板50の深さ方向において、異なる2つの位置にイオン注入することで、第1ウェル領域91および第1低濃度領域101が形成される。
【0056】
本例の第1ウェル領域91は、深さ方向のドーピング濃度分布において、濃度ピークP1を有する。第1低濃度領域101は、深さ方向のドーピング濃度分布において、濃度ピークP2を有する。濃度ピークは、ドーピング濃度が極大値を示す点である。それぞれの濃度ピークの深さ位置は、イオンを注入した深さ位置に対応している。
【0057】
濃度ピークP2のドーピング濃度D2は、濃度ピークP1のドーピング濃度D1よりも低い。ドーピング濃度D2は、ドーピング濃度D1の半分以下であってよく、1/5以下であってよく、1/10以下であってよく、1/100以下であってもよい。ドーピング濃度D1は、1×1015/cm以上、1×1017/cm以下であってよい。ドーピング濃度D2は、1×1013/cm以上、1×1015/cm以下であってよい。
【0058】
濃度ピークP1と濃度ピークP2の間には、ドーピング濃度が極小値を示す谷部52が配置されている。延伸部15(またはピエゾ抵抗領域11)の下端から谷部52までの領域を第1ウェル領域91としてよい。谷部52からバルク領域1までの領域を第1低濃度領域101としてよい。延伸部15からバルク領域1までのドーピング濃度分布に複数の谷部52が存在する場合、延伸部15に最も近い谷部52を、第1ウェル領域91と第1低濃度領域101との境界としてよい。谷部52のドーピング濃度D3は、バルク領域1のドーピング濃度D4より大きい。ドーピング濃度D3は、ドーピング濃度D4の2倍以上であってよく、5倍以上であってよく、10倍以上であってもよい。
【0059】
第1ウェル領域91の深さ方向の長さをZ1、第1低濃度領域101の深さ方向の長さをZ2とする。長さZ2は、長さZ1の半分以上であってよく、1倍より大きくてよく、1.5倍以上であってもよい。第1低濃度領域101を長く形成することで、圧力検出装置300の実動作時に、第1低濃度領域101とバルク領域1との間のpn接合から広がる空乏層が、第1ウェル領域91の濃度ピークP1までは到達するのを抑制できる。このため、リーク電流を抑制できる。
【0060】
半導体基板50に定格の電源電圧Vddが印加された状態で、第1低濃度領域101とバルク領域1との間のpn接合から広がる空乏層の上端が到達する深さ位置をZdとする。深さ位置Zdは、定格の電源電圧Vddの大きさと、ドーピング濃度分布から演算できる。深さ位置Zdは、濃度ピークP1よりも下方(つまりバルク領域1の近く)に位置している。深さ位置Zdにおけるドーピング濃度は、ドーピング濃度D1の半分(0.5×D1)より小さくてよい。深さ位置Zdは、第1ウェル領域91内に配置されてよい。本例では、深さ位置Zdは、濃度ピークP1と谷部52との間に配置されてよい。
【0061】
図5は、図3のA-A線における、半導体基板50の深さ方向のドーピング濃度分布の他の例を示す図である。本例のドーピング濃度分布は、図4の例における谷部52に代えて変曲点54を有し、且つ、第1低濃度領域101が濃度ピークP2を有さない点で、図4に示した例と相違する。他の構造は、図4において説明したドーピング濃度分布と同様である。第1低濃度領域101に対するイオンのドーズ量が比較的に小さい場合、図5に示すように濃度ピークP2が明確にあらわれない場合も考えられる。
【0062】
変曲点54は、濃度ピークP1からバルク領域1に向かう方向において、ドーピング濃度分布が、上に凸の形状から下に凸の形状に切り替わる点である。つまり変曲点54は、ドーピング濃度を深さ位置で二階微分した値の符号が、濃度ピークP1からバルク領域1に向かう方向において負から正に変化する点である。変曲点54とバルク領域1の間には、変曲点55が配置されてよい。変曲点55は、変曲点54からバルク領域1に向かう方向において、ドーピング濃度分布が、下に凸の形状から上に凸の形状に切り替わる点である。つまり変曲点55は、ドーピング濃度を深さ位置で二階微分した値の符号が、変曲点54からバルク領域1に向かう方向において正から負に変化する点である。
【0063】
本例では、延伸部15(またはピエゾ抵抗領域11)の下端から変曲点54までの領域を第1ウェル領域91とする。変曲点54からバルク領域1までの領域を第1低濃度領域101とする。延伸部15からバルク領域1までのドーピング濃度分布に複数の変曲点54が存在する場合、延伸部15に最も近い変曲点54を、第1ウェル領域91と第1低濃度領域101との境界としてよい。延伸部15(またはピエゾ抵抗領域11)の下端から変曲点55までの領域を第1ウェル領域91としてもよい。延伸部15からバルク領域1までのドーピング濃度分布に複数の変曲点55が存在する場合、延伸部15に最も近い変曲点55を、第1ウェル領域91と第1低濃度領域101との境界としてよい。
【0064】
第1低濃度領域101におけるドーピング濃度は、第1ウェル領域91との境界(変曲点54または変曲点55)からバルク領域1まで単調に減少する。つまり当該境界からバルク領域1まで、ドーピング濃度が増加する領域が存在しない。当該境界におけるドーピング濃度D5が、第1低濃度領域101におけるドーピング濃度の最大値に相当する。ドーピング濃度D5は、ドーピング濃度D4の2倍以上であってよく、5倍以上であってよく、10倍以上であってもよい。
【0065】
ドーピング濃度D5は、濃度ピークP1のドーピング濃度D1よりも低い。ドーピング濃度D5は、ドーピング濃度D1の半分以下であってよく、1/5以下であってよく、1/10以下であってよく、1/100以下であってもよい。ドーピング濃度D1は、1×1015/cm以上、1×1017/cm以下であってよい。ドーピング濃度D5は、1×1013/cm以上、1×1015/cm以下であってよい。
【0066】
図4および図5においては、第1ウェル領域91および第1低濃度領域101のドーピング濃度分布を説明した。高濃度抵抗部12と、ピエゾ抵抗領域11の高濃度抵抗部12以外の部分のドーピング濃度分布も、第1ウェル領域91および第1低濃度領域101のドーピング濃度分布と同様の形状を有してよい。つまり、高濃度抵抗部12とそれ以外の部分との境界は、ドーピング濃度分布の谷部であってよく、変曲点であってもよい。
【0067】
図6は、圧力検出部100の他の構造例を示す図である。本例の圧力検出部100は、第1低濃度領域101のX軸方向の幅X2が、第1ウェル領域91のX軸方向の幅X1よりも大きい点で、図3に示した例と相違する。他の構造は、図3から図5において説明したいずれかの態様と同様である。幅X2を大きくすることで、第1低濃度領域101のX軸方向の位置がずれた場合でも、第1ウェル領域91の下端を第1低濃度領域101で覆うことができる。
【0068】
図7は、圧力検出装置300の製造方法を説明する図である。図7では、製造工程のうち、第1ウェル領域91および第1低濃度領域101を形成する工程を示している。製造方法においては、第1ウェル領域91を形成すべき深さ位置と、第1低濃度領域101を形成すべき深さ位置のそれぞれに対して別途にイオンを注入することで、第1ウェル領域91および第1低濃度領域101を形成する。図7の例では、第1イオンを注入して第1ウェル領域91を形成し、第2イオンを注入して第1低濃度領域101を形成している。第1イオンおよび第2イオンは、同一元素のイオンであってよく、異なる元素のイオンであってもよい。
【0069】
第1イオンを注入した後、および、第2イオンを注入した後のそれぞれのタイミングで、半導体基板50を熱処理してよい。これによりイオンを拡散し、また、イオンを活性化させて、n型の領域を形成できる。第2イオンを注入して熱処理を行ってから、第1イオンを注入して熱処理を行ってもよい。この場合、第2イオンに対する熱履歴が大きくなるので、第2イオンの拡散距離を長くして、第1低濃度領域101のZ軸方向の長さを大きくしやすくなる。他の例では、第1イオンおよび第2イオンを注入した後に、熱処理を行ってもよい。
【0070】
図8は、圧力検出部100の他の構造例を示す図である。本例の圧力検出部100は、第1ウェル領域91が内部に配置されるように第1低濃度領域101を形成している点で、図3に示した例と相違する。他の構造は、図3から図5において説明したいずれかの態様と同様である。第1ウェル領域91とバルク領域1との間全てに第1低濃度領域101が設けられているため、図3に示す例に比べリーク電流を低減できる。
【0071】
図8に示した、圧力検出部100の製造方法の一例を説明する。当該製造工程のうち、第1ウェル領域91および第1低濃度領域101の工程について説明する。圧力検出部100の製造方法においては、第1低濃度領域101を形成すべき領域にイオンを注入し熱処理し拡散させる。その後、第1ウェル領域91を形成すべき領域にイオンを注入し熱処理し拡散させる。第1低濃度領域101を形成するためのイオンおよび第1ウェル領域91を形成するためのイオンは、同一元素のイオンであってよく、異なる元素のイオンであってもよい。この方法によると、図5に示したドーピング濃度分布を得ることができる。
【0072】
図9は、半導体素子部200の構造例を示す図である。図9では、1つのPMOSトランジスタの近傍における、半導体基板50の断面を示している。図9においても、半導体基板50の下面を省略している。
【0073】
半導体基板50は、p型のバルク領域1、第2ウェル領域92および第2低濃度領域102を有する。第2ウェル領域92は、上面51と、バルク領域1との間に設けられたn型の領域である。
【0074】
第2ウェル領域92の内部には、PMOSトランジスタの各領域が形成される。PMOSトランジスタの構造は後述する。第2低濃度領域102は、第2ウェル領域92とバルク領域1との間に設けられている。第2低濃度領域102は、第2ウェル領域92よりも低濃度のn型の領域である。つまり第2低濃度領域102におけるドーピング濃度の最大値が、第2ウェル領域92におけるドーピング濃度の最大値よりも低い。第2低濃度領域102におけるドーピング濃度の最小値は、第2ウェル領域92におけるドーピング濃度の最大値より低くてよく、高くてもよい。本例の第2低濃度領域102の上端は第2ウェル領域92と接しており、下端はバルク領域1と接している。第2低濃度領域102およびバルク領域1の界面にはpn接合が形成される。
【0075】
第2ウェル領域92のドーピング濃度は、第1ウェル領域91のドーピング濃度と同一であってよく、異なっていてもよい。第2低濃度領域102のドーピング濃度は、第1低濃度領域101のドーピング濃度と同一であってよく、異なっていてもよい。第2ウェル領域92および第2低濃度領域102の深さ方向におけるドーピング濃度分布は、図3または図4において説明したドーピング濃度分布と同様であってよい。
【0076】
第2低濃度領域102を設けることで、第2低濃度領域102とバルク領域1が接することになり、pn接合部における不純物濃度を低くできる。これにより、第2低濃度領域102とバルク領域1の間のリーク電流を抑制できる。第2ウェル領域92にリーク電流が流れると、PMOSトランジスタの動作に影響する場合があるが、本例ではPMOSトランジスタを精度よく動作させることができる。
【0077】
第2ウェル領域92の内部には、p型のソース領域108およびp型のドレイン領域109が設けられている。ソース領域108およびドレイン領域109のドーピング濃度は、バルク領域1よりも高くてよい。ソース領域108はソース配線7に接続され、ドレイン領域109はドレイン配線8に接続されている。ソース配線7およびドレイン配線8は、金属等の導電材料で形成されている。
【0078】
半導体基板50の上面51の上方には、ポリシリコン等の導電材料で形成されたゲート電極5が設けられる。ゲート電極5は、ソース領域108およびドレイン領域109の間のn型領域(本例では第2ウェル領域92)の上方に配置されている。ゲート電極5に所定のゲート電圧が印加されると、当該n型領域の表層にp型のチャネル反転層が形成されて、ソース領域108およびドレイン領域109の間に電流が流れる。ゲート電極5と半導体基板50との間には、ゲート絶縁膜4が設けられている。ゲート電極5は、金属等の導電材料で形成されたゲート配線6と接続されている。
【0079】
第2ウェル領域92の内部には、n型領域19が配置されていてもよい。n型領域19は、第2ウェル領域92よりも高濃度の領域である。n型領域19は、電源配線13と接続されており、所定の電源電圧Vddが印加される。これにより、第2ウェル領域92の電位を電源電圧Vddに設定できる。
【0080】
ソース領域108は、上面51に接するp型の高濃度ソース部208と、高濃度ソース部208と第2ウェル領域92との間に設けられ、高濃度ソース部208よりも低濃度のp型の低濃度ソース部とを有してよい。図9の例では、高濃度ソース部208以外のソース領域108が、低濃度ソース部に相当する。このような構成により、ソース領域108と第2ウェル領域92とのpn接合における不純物濃度を低くして、リーク電流を抑制できる。高濃度ソース部208と、高濃度ソース部208以外のソース領域108のドーピング濃度分布も、第1ウェル領域91および第1低濃度領域101のドーピング濃度分布と同様の形状を有してよい。つまり、高濃度ソース部208とそれ以外のソース領域108との境界は、ドーピング濃度分布の谷部であってよく、変曲点であってもよい。
【0081】
ドレイン領域109は、上面51に接するp型の高濃度ドレイン部209と、高濃度ドレイン部209と第2ウェル領域92との間に設けられ、高濃度ドレイン部209よりも低濃度のp型の低濃度ドレイン部とを有してよい。図9の例では、高濃度ドレイン部209以外のドレイン領域109が、低濃度ドレイン部に相当する。このような構成により、ドレイン領域109と第2ウェル領域92とのpn接合における不純物濃度を低くして、リーク電流を抑制できる。高濃度ドレイン部209と、高濃度ドレイン部209以外のドレイン領域109のドーピング濃度分布も、第1ウェル領域91および第1低濃度領域101のドーピング濃度分布と同様の形状を有してよい。つまり、高濃度ドレイン部209とそれ以外のドレイン領域109との境界は、ドーピング濃度分布の谷部であってよく、変曲点であってもよい。
【0082】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0083】
1・・バルク領域、2・・・絶縁膜、4・・・ゲート絶縁膜、5・・・ゲート電極、6・・・ゲート配線、7・・・ソース配線、8・・・ドレイン配線、9・・・第1ウェル領域、10・・・分離領域、11・・・ピエゾ抵抗領域、12・・・高濃度抵抗部、13・・・電源配線、14・・・配線、15・・・延伸部、17・・・保護膜、19・・・n型領域、20・・・シールド膜、50・・・半導体基板、51・・・上面、52・・・谷部、54、55・・・変曲点、91・・・第1ウェル領域、92・・・第2ウェル領域、100・・・圧力検出部、101・・・第1低濃度領域、102・・・第2低濃度領域、108・・・ソース領域、109・・・ドレイン領域、110・・・ピエゾ抵抗部、111・・・n型領域、200・・・半導体素子部、208・・・高濃度ソース部、209・・・高濃度ドレイン部、300・・・圧力検出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
第2ウェル領域92のドーピング濃度は、第1ウェル領域91のドーピング濃度と同一であってよく、異なっていてもよい。第2低濃度領域102のドーピング濃度は、第1低濃度領域101のドーピング濃度と同一であってよく、異なっていてもよい。第2ウェル領域92および第2低濃度領域102の深さ方向におけるドーピング濃度分布は、図または図において説明したドーピング濃度分布と同様であってよい。