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特開2024-87127機械式継手接合用治具、機械式継手の接合方法、構造体、構造体の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087127
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】機械式継手接合用治具、機械式継手の接合方法、構造体、構造体の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/24 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
E02D5/24 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201742
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】田近 久和
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041DB02
2D041DB13
(57)【要約】
【課題】C型リング部材に加工が不要で、C型リング部材が内側継手側と外側継手側に跨る配置を維持させることができる機械式継手接合用治具、機械式継手の接合方法、構造体、構造体の施工方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る機械式継手接合用治具15は、C型リング部材13が格納された環状溝11のC型リング部材13と環状溝底と隙間において環状溝11の全周に亘って配置可能なパイロットワイヤ17と、パイロットワイヤ17に連結され、または連結可能で、環状溝11のC型リング部材13と環状溝底と隙間において環状溝11の全周に亘って配置されて、C型リング部材13をC型リング部材13が格納された内側継手5側又は外側継手7側から内側継手5側と外側継手7側に跨る位置に移動させてその位置に保持させるC型リング部材移動・保持部材19と、を備えたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側継手の外周面と外側継手の内周面のそれぞれに継手組合せ完了状態で対向するように形成された環状溝を有し、前記内側継手又は前記外側継手の前記環状溝に格納可能、かつ組合せ完了状態において前記環状溝内で前記内側継手側と前記外側継手側に跨るように配置可能なC型リング部材を備えた機械式継手を接合するために用いる機械式継手接合用治具であって、
前記C型リング部材が格納された前記環状溝の前記C型リング部材と環状溝底と隙間において前記環状溝の全周に亘って配置可能なパイロットワイヤと、
該パイロットワイヤに連結され、または連結可能で、前記環状溝の前記C型リング部材と環状溝底と隙間において前記環状溝の全周に亘って配置されて、前記C型リング部材を該C型リング部材が格納された前記内側継手側又は前記外側継手側から前記内側継手側と前記外側継手側に跨る位置に移動させてその位置に保持させるC型リング部材移動・保持部材と、
を備えた機械式継手接合用治具。
【請求項2】
前記C型リング部材移動・保持部材は、線状部材と、該線状部材に所定の間隔を離して取り付けられ、前記線状部材よりも径が大きく前記C型リング部材に当接して押圧する複数の押圧部材とを備えてなる請求項1に記載の機械式継手接合用治具。
【請求項3】
前記押圧部材のうち少なくとも先頭に配置されたものは、先端が先細になっている請求項2に記載の機械式継手接合用治具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の機械式継手接合用治具を用いた前記機械式継手の接合方法であって、
前記C型リングを前記内側継手又は前記外側継手の前記環状溝に格納し、前記パイロットワイヤを前記C型リング部材と環状溝底と隙間に全周に亘って配置する工程と、
前記内側継手と前記外側継手を組み合わせて組合せ完了状態とする工程と、
前記外側継手に設けたアクセス孔から前記パイロットワイヤの一端にアクセスして前記C型リング部材移動・保持部材の一端とを連結状態にする工程と、
前記パイロットワイヤの他端に前記アクセス孔からアクセスして、前記パイロットワイヤの他端を引っ張って、前記C型リング部材移動・保持部材を前記C型リング部材と環状溝底と隙間に引き込んで、前記C型リング部材を前記内側継手側と前記外側継手側に跨る位置に移動させてその位置に保持させる工程と、を備えた機械式継手の接合方法。
【請求項5】
機械式継手が取り付けられた継手付き管同士を、請求項4に記載の機械式継手の接合方法によって連結されてなる構造体。
【請求項6】
請求項5に記載の構造体の施工方法であって、連結対象となる継手付き管の一方の管軸方向の位置を拘束した状態で、他方の継手付き管を前記一方の継手付き管に位置合わせして接合する構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式継手の接合に用いる機械式継手接合用治具、機械式継手接合用治具を用いた機械式継手の接合方法、該機械式継手の接合方法によって連結されてなる構造体、該構造体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭・鋼管矢板の接合については、従来から現場溶接主体で行われてきたが、近年は技能者減少、工期短縮、品質管理などから機械式の継手による接合が増加してきている。
鋼管杭・鋼管矢板では、管状の継手部材を鋼管とは別に製造し、接合する鋼管の端部にそれぞれ継手部材を溶接にて取り付け、継手部材同士を接合する方式が一般的である。
【0003】
継手は杭の施工時および供用時に作用する圧縮・引張・せん断・ねじりといった荷重を伝達できる構造が必要である。圧縮に対しては継手部材の端面同士を面接触させること、せん断に対しては雄形状の管を雌形状の管に挿入し、二重管状態にすることにより容易に伝達できる。しかし、引張およびねじり荷重は単なる挿入・面接触では伝達することができず、構造に工夫が必要である。
【0004】
引張およびねじり荷重伝達を可能とした機械式継手として、C字状のリング部材(以下、「C型リング部材」という場合あり)を用いたものが、例えば特許文献1に柱状体接続構造として開示されている。
特許文献1に開示の柱状接続構造は、第一柱状体(1)の一端部と第二柱状体(2)の一端部とに、一対の内側柱部(11)と外側管部(21)とを振り分けて設け、その内側柱部(11)と外側管部(21)とを互いに接続した柱状体接続構造である。そして、前記内側柱部(11)の外周面に環状の外溝部(12)を少なくとも1カ所設けるとともに、前記外側管部(21)の内周面に環状の内溝部(22)を少なくとも1カ所設けている。さらに、径変化自在で、前記外溝部(12)もしくは内溝部(22)の入り口から奥に引退した状態に収容可能なリング状部材(3)を設けている。そして、前記内側柱部(11)を前記外側管部(21)に嵌入した状態で、前記リング状部材(3)を、前記外溝部(12)と前記内溝部(22)との両者間にわたって介在して、その両者に係合状態に保持している(特許文献1の請求項2参照)。
【0005】
特許文献1において、リング状部材としてのC型リング部材を縮径させた状態で内側柱部に収容し、内側柱部を外側管部に嵌入した状態で、C型リング部材の縮径状態を解除する態様が実施の形態2-2に記載されている。この態様は、熱可塑性樹脂製の接続部材でC型リング部材の両端部を接続して縮径状態とし、内側柱部を外側管部に嵌入した状態で接続部材を加熱融解させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-36285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示の方法では、C型リング部材に特別な加工が必要である。
また、特許文献1では、リング状部材(3)を、外溝部(12)と内溝部(22)との両者間にわたって介在させた後、外溝部(12)又は内溝部(22)のいずれかに移動しないようにする手段については言及されていない。そのため、軸方向のみ荷重が作用するのであれば、支圧で耐えることができたとしても、変形により管径方向にリング状部材(3)が移動することがある場合には、耐力が低下する可能性は否めない。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、内側継手側と外側継手側に跨るように配置可能なC型リング部材を備えた機械式継手を接合するために用いるものであって、C型リング部材に特別な加工が不要で、C型リング部材を内側継手側と外側継手側に跨る位置に維持させることができる機械式継手接合用治具を提供することを目的としている。
また、前記機械式継手接合治具を用いた機械式継手の接合方法、該接合方法よって連結された複数の管を備えた構造体及び構造体の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る機械式継手接合用治具は、内側継手の外周面と外側継手の内周面のそれぞれに継手組合せ完了状態で対向するように形成された環状溝を有し、前記内側継手又は前記外側継手の前記環状溝に格納可能、かつ組合せ完了状態において前記環状溝内で前記内側継手側と前記外側継手側に跨るように配置可能なC型リング部材を備えた機械式継手を接合するために用いるものであって、
前記C型リング部材が格納された前記環状溝の前記C型リング部材と環状溝底と隙間において前記環状溝の全周に亘って配置可能なパイロットワイヤと、該パイロットワイヤに連結され、または連結可能で、前記環状溝の前記C型リング部材と環状溝底と隙間において前記環状溝の全周に亘って配置されて、前記C型リング部材を該C型リング部材が格納された前記内側継手側又は前記外側継手側から前記内側継手側と前記外側継手側に跨る位置に移動させてその位置に保持させるC型リング部材移動・保持部材と、を備えたものである。
【0010】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記C型リング部材移動・保持部材は、線状部材と、該線状部材に所定の間隔を離して取り付けられ、前記線状部材よりも径が大きく前記C型リング部材に当接して押圧する複数の押圧部材とを備えてなるものである。
【0011】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記押圧部材のうち少なくとも先頭に配置されたものは、先端が先細になっているものである。
【0012】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の機械式継手接合用治具を用いた機械式継手の接合方法であって、
前記C型リングを前記内側継手又は前記外側継手の前記環状溝に格納し、前記パイロットワイヤを前記C型リング部材と環状溝底と隙間に全周に亘って配置する工程と、
前記内側継手と前記外側継手を組み合わせて組合せ完了状態とする工程と、
前記外側継手に設けたアクセス孔から前記パイロットワイヤの一端にアクセスして前記C型リング部材移動・保持部材の一端とを連結状態にする工程と、
前記パイロットワイヤの他端に前記アクセス孔からアクセスして、前記パイロットワイヤの他端を引っ張って、前記C型リング部材移動・保持部材を前記C型リング部材と環状溝底と隙間に引き込んで、前記C型リング部材を前記内側継手側と前記外側継手側に跨る位置に移動させてその位置に保持させる工程と、を備えたものである。
【0013】
(5)また、本発明に係る構造体は、前記機械式継手が取り付けられた継手付き管同士を、上記(4)に記載の機械式継手の接合方法によって連結されてなるものである。
【0014】
(6)本発明に係る構造体の施工方法は、上記(5)に記載の構造体の施工方法であって、連結対象となる継手付き管の一方の管軸方向の位置を拘束した状態で、他方の継手付き管を前記一方の継手付き管に位置合わせして接合するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる機械式継手接合用治具を使用することで、C型リング部材に特別な加工をすることなく、C型リング部材を用いた機械式継手の接合を極めて簡単に行うことができ、かつ安定的に荷重伝達が可能な状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1、2に係る機械式継手接合用治具の説明図である。
図2図1の一部拡大図である。
図3図1に示した機械式継手接合用治具を用いた機械式継手の接合方法の説明図である。
図4】C型リング部材移動・保持部材が環状溝とC型リング部材との隙間に挿入される様子を示す図である。
図5】C型リング部材移動・保持部材が環状溝内に配置された状態の説明図である。
図6】C型リング部材移動・保持部材の他の態様の説明図である。
図7図6に示したC型リング部材移動・保持部材が環状溝とC型リング部材との隙間に挿入される様子を示す図である。
図8図6に示したC型リング部材移動・保持部材が環状溝内に配置された状態の説明図である。
図9】C型リング部材移動・保持部材における押圧部材が2個の態様の説明図である。
図10】実施の形態1において機械式継手接合用治具によって接合される機械式継手の説明図である。
図11】実施の形態2に係る機械式継手の接合方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る機械式継手接合用治具を説明する前に、機械式継手接合用治具が用いられる機械式継手について、一例である図10に基づいて説明する。
【0018】
本発明が対象としている機械式継手1は、図10に示すように、鋼管3の端部に備えられる管状の内側継手5と、他の鋼管3の端部に備えられて内側継手5と接合される管状の外側継手7と、を有している。
そして、内側継手5の基端側には段差部9が形成され、内側継手5と外側継手7とを組み合わせた状態(図10(b)参照)で、外側継手7の先端部が段差部9に当接して組合せ完了状態となるように構成されている。
【0019】
内側継手5の外周面と外側継手7の内周面のそれぞれには環状溝11が形成されており、この環状溝11は継手の組合せ完了状態で対向するように配置されている。なお、図10に示す環状溝11は一段であるが、本発明が対象としている機械式継手1における環状溝11は一段に限られず、複数段であってもよい。
【0020】
また、内側継手5の環状溝11に内側継手5の外側継手7への組合せを妨げないように格納可能なC型リング部材13を備えている。
このC型リング部材13は、継手の組合せ完了状態において環状溝11内で内側継手5側と外側継手7側に跨るように配置される。このため、C型リング部材13は、内側継手5の環状溝11に格納された状態(自然状態)から外力を加えることで拡径可能である。すなわち、C型リング部材13は、図10(a)に示すように、内側継手5の環状溝11に格納された状態から、外力を加えることで、図10(b)の黒矢印に示すように拡径して環状溝11内で内側継手5側と外側継手7側に跨るように配置される。
【0021】
上記のような機械式継手1の接合に用いられる機械式継手接合用治具15(以下、単に「治具15」という)を図1図2に基づいて説明する。
【0022】
本実施の形態に係る治具15は、図1図2に示すように、パイロットワイヤ17とC型リング部材移動・保持部材19とを備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0023】
<パイロットワイヤ>
パイロットワイヤ17は、C型リング部材13が格納された環状溝11のC型リング部材13と環状溝11と隙間において環状溝11の全周に亘って配置可能な鋼線等からなる線状の部材である。
【0024】
<C型リング部材移動・保持部材>
C型リング部材移動・保持部材19は、パイロットワイヤ17に連結され、または連結可能で、環状溝11のC型リング部材13と環状溝底と隙間において環状溝11の全周に亘って配置されるものである。つまり、本発明の治具15は、(a)パイロットワイヤ17とC型リング部材移動・保持部材19とが連結された1つの部材である場合と、(b)パイロットワイヤ17とC型リング部材移動・保持部材19とが、それぞれ分離した部材の組である場合と、を含む。
そして、C型リング部材13をC型リング部材13が格納された内側継手5側から内側継手5側と外側継手7側に跨る位置に移動させ、その位置に保持させる機能を有している。
【0025】
上記のような機能を有するC型リング部材移動・保持部材19は、図2に示すように、線状部材21(ワイヤ)と、線状部材21に所定の間隔を離して取り付けられ、線状部材21よりも径が大きくC型リング部材13に当接して押圧する複数の押圧部材23とを備えている。
押圧部材23の数は特に限定されないが、本実施の形態では図2図3(c)に示すように、7個の例を示している。
【0026】
線状部材21と押圧部材23との接合は、線状部材21と押圧部材23を溶接接合したり(図2の先頭から3番目の押圧部材23参照)、押圧部材23の前後の線状部材21をかしめたり(図2の先頭から2番目の押圧部材23参照)すればよい。また、線状部材21を内蔵・固定するために押圧部材23の内部にスリーブをいれて線状部材21をかしめ、押圧具材自体は上下別パーツとしてそれをボルトなどで一体化するようにしてもよい(図2の先頭押圧部材23a参照)。
【0027】
本実施の形態では、パイロットワイヤ17との接続部に最も近い位置(先頭)に配置された先頭押圧部材23aは、図2に示すように、先細となるように先端に向かって湾曲して傾斜する傾斜面になっている。
先頭押圧部材23aの先端を先細となる傾斜面にすることで、C型リング部材13と環状溝11の溝底との間に挿入し易くなる。
【0028】
また、2番目以降の押圧部材23は、C型リング部材13を押圧して所定の寸法だけ拡径させるものである。押圧部材23は、断面円形でも断面矩形でもよく、形状が限定されるものではない。もっとも、押圧部材23はC型リング部材13に安定して当接する形状が好ましく、直方体のような形状が好ましい。
なお、押圧部材23の断面形状が円形の場合、押圧部材23が環状溝11内で片側にずれたりしないようにするのが好ましい。このために、C型リング部材13や環状溝11における押圧部材23と当接する面に押圧部材23の表面形状に沿って周方向に延びるR状の溝を形成するようにしてもよい。
【0029】
先頭押圧部材23a及び押圧部材23は、環状溝11の溝底及びC型リング部材13の両方との摩擦抵抗が少ない部材が好ましく、例えば外面をパーカライジング処理した鋼材や、摩擦係数の少ない樹脂(例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン))を用いるか、グリス塗布してもよい。
【0030】
押圧部材23及び先頭押圧部材23aの機能は、前述したように、C型リング部材13を拡径して内側継手5側と外側継手7側に跨る位置に移動させることである。この機能をより効果的に発揮させるために、押圧部材23及び先頭押圧部材23aにおける最も大径部位の半径方向の寸法dsは、下式を満たすことが好ましい。
ds≦di+do-wc-esum
ただし、di:内側継手溝深さ(半径方向の幅)
do:外側継手溝深さ(半径方向の幅)
wc:C型リング部材の幅(半径方向)
esum:各部位の設計公差のうち正方向の公差の和
例えば、wc=12mm、di=12mm、do=6mmの場合、esum=0.5mmとして、dsは5.5mm以下となる。
【0031】
また、C型リング部材13が外側継手管7に最低限掛かる必要がある半径方向の幅をdomとして、換言すればC型リング部材13が外側継手管7にdom程度掛かれば計画している耐力(支圧)を満たすとして、dsは下式を満たすことが好ましい。
ds≧di+dom-wc+esum’
であることが好ましい。ここで、esum’は各部位の設計公差のうち負方向の公差の和の絶対値である。
【0032】
次に、上記のように構成された本実施の形態の治具15を用いて機械式継手1を接合する機械式継手1の接合方法を図3図5に基づいて説明する。
なお、環状溝11を図面上で分かりやすくするため、内側継手5及び外側継手7における溝壁部分は他の部位よりも薄い灰色にしている。
【0033】
まず、C型リング部材13を内側継手5の環状溝11に格納する。C型リング部材13は、自然状態で環状溝11内から突出しない状態で格納可能である。
環状溝11の溝底とC型リング部材13との間にパイロットワイヤ17をC型リング部材13の全周に亘るように配置する。このとき、パイロットワイヤ17の両端をC型リング部材13の切れ目の位置に配置する。
【0034】
次に、内側継手5と外側継手7を組み合わせて組合せ完了状態とする(図3(b)参照)。より具体的には、内側継手5を外側継手7に挿入し、外側継手7の先端部を内側継手5の段差部9に当接させて組合せ完了状態となる。
【0035】
その後、外側継手7に設けたアクセス孔27(図3(b)(c)参照)からパイロットワイヤ17の一端側にアクセスし、パイロットワイヤ17の一端とC型リング部材移動・保持部材19の線状部材21の一端とを連結する。
なお、パイロットワイヤ17の一端とC型リング部材移動・保持部材19の線状部材21の一端とが事前に連結されている場合には、この連結作業は不要である。
【0036】
上記の連結が完了後、パイロットワイヤ17の他端を引っ張ることで、C型リング部材移動・保持部材19がパイロットワイヤ17に引っ張られて環状溝11の溝底とC型リング部材13との間に挿入される(図3(b)、図4参照)。
先頭押圧部材23aの先端は先細になっているので、環状溝11の溝底とC型リング部材13の隙間に挿入しやすい。
【0037】
C型リング部材移動・保持部材19が環状溝11の溝底とC型リング部材13の隙間に挿入されることで、押圧部材23によってC型リング部材13が拡径され(図4参照)、C型リング部材13が環状溝11内において内側継手5側と外側継手7側に跨る位置に配置される。これによって、機械式継手1は引張荷重の伝達が可能となる。
【0038】
図5(a)は、環状溝11内における先頭押圧部材23aとC型リング部材13の配置関係を示している。また、図5(b)は、押圧部材23とC型リング部材13の配置関係を示している。
図5に示すように、先頭押圧部材23a及び押圧部材23は、環状溝11内に配置され続けるので、C型リング部材13の拡径状態を維持し、機械式継手1によって接合された鋼管3の供用中に、所定の支圧耐力を損なうことが無く、安全性を確保できる。
【0039】
なお、機械式継手1の組合せ状態(接合状態)を解除して、鋼管3同士を分離させたい場合には、C型リング部材移動・保持部材19を引き抜くことで、C型リング部材13が自己の弾性により縮径する。これによって、C型リング部材13は図3(a)に示したように、内側継手5の環状溝11内に収納され、内側継手5を外側継手7から分離可能となる。
【0040】
以上のように、本実施の形態の治具15を使用することで、C型リング部材13を用いた機械式継手1の接合を極めて簡単に行うことができ、かつ安定的に荷重伝達が可能な状態を維持できる。
また、機械式継手1を分離する際にも、C型リング部材移動・保持部材19を引き抜くだけで良く、この点でも優れている。
【0041】
なお、先頭押圧部材23aについては、図6図8に示すように、先端の中心が挿入時に環状溝11の溝底側に偏心した形状にすることで、先頭押圧部材23aの先端を溝底とC型リング部材13の隙間に挿入し易くなるのでより好ましい。
【0042】
なお、押圧部材23及び先頭押圧部材23aの総数に関し、上記では7個の場合を例示したが、本発明の押圧部材23の数はこれに限られない。もっとも、最低限で環状溝11内で対面にある必要があるため、環状溝11内での先頭押圧部材23aと押圧部材23又は押圧部材23同士の間隔が180度以下である必要がある。すなわち、押圧部材23は最低でも180度に1個必要であり、この場合には、図9に示すように、全体で2個となる。これより多い例えば、120度に1個では全体で3個、45度に1個では、全体で8個、となる。
【0043】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、内側継手5と外側継手7の組合せ前の状態で、C型リング部材13が内側継手5の環状溝11に格納されている場合であった。
本発明の機械式継手接合用治具15は上記の場合に限られず、C型リング部材13が外側継手7の環状溝11内に格納されている場合にも適用可能である。
この場合について、図11に基づいて説明する。
【0044】
組合せ前の状態では、図11(a)に示すように、C型リング部材13は外側継手7の環状溝11内に格納され、溝底とC型リング部材13との隙間にパイロットワイヤ17を配置しておく。
次に、外側継手7と内側継手5を組合せた状態で、C型リング部材移動・保持部材19を溝底とC型リング部材13との隙間に挿入する。これによって、図11(b)の黒矢印で示すようにC型リング部材13を縮径させ、C型リング部材13は環状溝11内で内側継手5側と外側継手7側に跨るように配置される。
【0045】
実施の形態2における作用効果は、実施の形態1と同様である。
【0046】
なお、上記の機械式継手1が取り付けられた継手付き鋼管3同士を、上述した機械式継手1の接合方法によって連結することで、構造体を構成することができる。
また、このような構造体の施工方法としては、連結対象となる継手付き鋼管3の一方の鋼管軸方向の位置を拘束した状態で、他方の継手付き鋼管3を前記一方の継手付き鋼管3に位置合わせして接合するようにすればよい。
【符号の説明】
【0047】
1 機械式継手
3 鋼管
5 内側継手
7 外側継手
9 段差部
11 環状溝
13 C型リング部材
15 治具
17 パイロットワイヤ
19 C型リング部材移動・保持部材
21 線状部材
23 押圧部材
23a 先頭押圧部材
27 アクセス孔
図1
図2
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図11