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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087128
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240624BHJP
   B62D 25/10 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
E02F9/00 N
B62D25/10 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201743
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 太一
【テーマコード(参考)】
2D015
3D004
【Fターム(参考)】
2D015CA03
3D004AA13
3D004BA04
3D004CA04
3D004DA03
3D004DA04
(57)【要約】
【課題】安価な構成でフレーム剛性が得られ、組立や保守にも優れているエンジンパワーユニットの収容構造を備えた建設機械を提供する。
【解決手段】フロアフレームに作業装置の動力源となるエンジンパワーユニットを収容する収容構造が設けられている建設機械において、収容構造31は、エンジンパワーユニットのエンジン収容空間Sを規定する前後一対の門型フレーム32,33と、該門型フレームを取付部として前後分割可能に取り付けられる複数のカバー部材34,35,36とを有する箱形状からなり、前後一対の門型フレームは、左右一対の縦材37,37と、該左右一対の縦材の上端部同士を溶接で繋ぐ横材38とを有し、複数のカバー部材のうちの車幅方向外側に位置する外側面カバー部材44~47は、縦材にヒンジを介して回動可能に連結された開閉扉であり、該開閉扉は、エンジン収容空間を観音扉式に開閉する一対の扉部45,46が含まれている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回ベアリングを介して旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に上下動可能に設けられた作業装置とを備え、
前記上部旋回体は、下面に前記旋回ベアリングが取り付けられるメインフレームと、該メインフレームの車幅方向両側部に設けられたフロアフレームとが一体に結合されているフレーム体を有し、一方側のフロアフレームには、前記作業装置の動力源となるエンジンパワーユニットを収容する収容構造が設けられている建設機械において、
前記収容構造は、前記エンジンパワーユニットのエンジン収容空間を規定する前後一対の門型フレームと、該門型フレームを取付部として前後分割可能に取り付けられる複数のカバー部材とを有する箱形状からなり、
前記前後一対の門型フレームは、左右一対の縦材と、該左右一対の縦材の上端部同士を溶接で繋ぐ横材とを有し、
前記複数のカバー部材のうちの車幅方向外側に位置するカバー部材は、前記縦材にヒンジを介して回動可能に連結された開閉扉であり、
前記開閉扉は、前記エンジン収容空間を観音扉式に開閉する一対の扉部が含まれていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記前後一対の門型フレームのうちの前側門型フレームは、前記エンジンパワーユニットの熱交換装置の配置に対応して設けられ、前記熱交換装置の通風部以外の部分での通風を遮断する遮蔽部材を備えていることを特徴とする請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、前記左右一対の縦材間に渡された板体であることを特徴とする請求項2記載の建設機械。
【請求項4】
前記横材は、前記門型フレームの高さを規定する平面部にカバー部材取付部と吊り治具取付部とを設けてなり、
前記複数のカバー部材のうちの前記平面部に取り付けられるカバー部材には、取付状態で前記横材を上方から見て、前記吊り治具取付部を露出させる切欠き形状が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関し、詳しくは、エンジンパワーユニットの収容構造を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機やアースドリル、クレーンなどの建設機械は、動力源となるエンジンや、その関連部品などを一体的に収容したハウスを備えている。ハウスは、一般に、下端が開放した箱型(溶接組立構造)のものが用いられている。これにより、エンジンEを中心に構成されるエンジンパワーユニット100の組立工程では、図6に示すように、フロアフレーム101上にエンジンEを搭載するとともに、油圧ポンプPやラジエータRなどの部品を組み付けた後、クレーン102で吊したハウス103を上方から被せていく手順により作業が進められる。このようなエンジンパワーユニット100を収容するハウス103は、通常、扉103aのある外側面の位置が車幅(輸送幅)に対応し、収容寸法にも限界があることから、排ガス規制などの求めに応じて付属部品が増えれば、それだけ配置的な条件も厳しくなる。そこで、エンジンなどの被収容体の保守性を考慮して、分解可能なボルト締結構造のハウスが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6565969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたハウスは、門型フレーム(門型の柱)のうちの梁部材が取り外されることで収容空間の上方部分が開放され、吊り上げによる被収容体の着脱作業が容易になるという利点がある。しかしながら、門型フレームの構成がボルト締結を要する複数部品からなると組立性の低下を招きやすく、また、ハウスの天板は、歩行可能な足場にもなることから、こうした主要部品をボルト締結により構成すると、万一、ボルトが緩んだ場合に剛性が低下するという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、安価な構成でフレーム剛性が得られ、組立や保守にも優れているエンジンパワーユニットの収容構造を備えた建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械は、下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回ベアリングを介して旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に上下動可能に設けられた作業装置とを備え、前記上部旋回体は、下面に前記旋回ベアリングが取り付けられるメインフレームと、該メインフレームの車幅方向両側部に設けられたフロアフレームとが一体に結合されているフレーム体を有し、一方側のフロアフレームには、前記作業装置の動力源となるエンジンパワーユニットを収容する収容構造が設けられている建設機械において、前記収容構造は、前記エンジンパワーユニットのエンジン収容空間を規定する前後一対の門型フレームと、該門型フレームを取付部として前後分割可能に取り付けられる複数のカバー部材とを有する箱形状からなり、前記前後一対の門型フレームは、左右一対の縦材と、該左右一対の縦材の上端部同士を溶接で繋ぐ横材とを有し、前記複数のカバー部材のうちの車幅方向外側に位置するカバー部材は、前記縦材にヒンジを介して回動可能に連結された開閉扉であり、前記開閉扉は、前記エンジン収容空間を観音扉式に開閉する一対の扉部が含まれていることを特徴としている。
【0007】
また、前記前後一対の門型フレームのうちの前側門型フレームは、前記エンジンパワーユニットの熱交換装置の配置に対応して設けられ、前記熱交換装置の通風部以外の部分での通風を遮断する遮蔽部材を備えていることを特徴としている。さらに、前記遮蔽部材は、前記左右一対の縦材間に渡された板体であることを特徴としている。
【0008】
加えて、前記横材は、前記門型フレームの高さを規定する平面部にカバー部材取付部と吊り治具取付部とを設けてなり、前記複数のカバー部材のうちの前記平面部に取り付けられるカバー部材には、取付状態で前記横材を上方から見て、前記吊り治具取付部を露出させる切欠き形状が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の建設機械によれば、エンジンパワーユニットの収容構造が、エンジン収容空間を規定する前後一対の門型フレームと、該門型フレームを取付部として前後分割可能に取り付けられる複数のカバー部材とを有しているので、門型フレームの数を抑えた安価な構成で、組立や保守の作業性を向上させることができる。とりわけ、溶接構造の門型フレームにより箱形状の剛性が高まり、足場機能を十分に発揮できるだけでなく、エンジン収容空間の大きさに見合う間口の広い観音扉を組み込めることから、実用性にも優れたものである。
【0010】
また、前側門型フレームがエンジンパワーユニットの熱交換装置の配置に対応して設けられ、熱交換装置の通風部以外の部分での通風を遮断する遮蔽部材を備えているので、冷却風の流れを熱交換装置の通風部に集中させることが可能となり、エンジンパワーユニットの冷却性能の向上に寄与するものである。さらに、遮蔽部材が左右一対の縦材間に渡された板体であるので、フレーム剛性がより一層高まり、総合的に最適設計を行うことができる。
【0011】
加えて、門型フレームの高さを規定する横材の平面部にカバー部材取付部と吊り治具取付部とを設けているので、吊り治具が取り付けられる吊り点位置を容易に得ることができる。しかも、横材の平面部に取り付けられるカバー部材において、取付状態で横材を上方から見て、吊り治具取付部を露出させる切欠き形状を設けているので、製造段階では、箱形状(サブ組立状態)の収容構造をフロアフレーム上に吊り込むだけの簡単な方法で組立作業を進めることが可能となり、リードタイムの短縮による生産性向上を図ることができる。一方、保守においては、門型フレームを境に前後分割可能なカバー部材により、例えば、油圧ポンプを分解する際の作業量を減らすことができ、とりわけ、収容構造をクレーンで丸吊りして移動すれば、エンジンの載せ替えなどといった大掛かりな作業にも対応できることから、作業量の低減効果も顕著に得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の建設機械の一形態例を示す杭打機の側面図である。
図2】同じくエンジンパワーユニットの収容構造の斜視図である。
図3】同じく収容構造における門型フレームの配置を示す斜視図である。
図4】同じく収容構造の分解斜視図である。
図5】同じく収容構造の要部斜視図である。
図6】従来のエンジンパワーユニットの組立工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図5は、本発明を建設機械の一例である杭打機に適用した一形態例を示している。杭打機11は、図1に示すように、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回ベアリング13を介して旋回可能に設けられた上部旋回体14とで構成されたベースマシン15と、上部旋回体14の前部に立設したリーダ16と、該リーダ16を後方から支持するリーダ起伏シリンダ17とを備えている。また、上部旋回体14の前部には、リーダ16を起伏可能に支持するリーダサポート18が設けられ、上部旋回体14の前部上方には、配管を支持する配管案内アーム19が設けられている。さらに、上部旋回体14の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ20が設けられるとともに、上部旋回体14の後端部に杭打機11のバランスをとるためのカウンタウエイト21が搭載されている。
【0014】
リーダ16は、複数のリーダ部材を互いに着脱可能に連結したもので、上端部にはトップシーブ22が、下端部には下部ガイド23がそれぞれ装着されており、リーダ16の前面には作業装置の一例であるオーガ24が昇降可能に装着されている。オーガ24は、油圧で回転駆動され、出力軸に連結した施工部材(例えば鋼管杭)に回転力を付与するものである。
【0015】
オーガ24の上下には、リーダ16の下端部に設けられた駆動スプロケット25と、上端部に設けられた従動スプロケット26との間に架け渡された昇降用チェーン27の両端がそれぞれ取り付けられ、チェーン式の昇降装置を構成する。昇降装置は、駆動スプロケット25を油圧で回転駆動し、該駆動スプロケット25と従動スプロケット26とに掛け回された昇降用チェーン27を上下方向に移動させることにより、リーダ16の前面に沿ってオーガ24を昇降させる。
【0016】
上部旋回体14は、下面に旋回ベアリング13が取り付けられる矩形箱状のメインフレーム28と、該メインフレーム28の車幅方向両側部に枠組みされたフロアフレーム29(反対側は図示せず)とが一体に結合されているフレーム体を有している。右側のフロアフレーム上の前部には、オーガ24や上部旋回体14、下部走行体12などを駆動させる操作がなされる運転室30が設置されている。また、右側のフロアフレーム上の後部には、作動油タンクなどの油圧機器を収納する機器収納室(図示せず)が設けられている。一方、左側のフロアフレーム29上には、エンジンの駆動を受けて圧油を供給するための油圧源装置として、エンジンパワーユニットや、これに付属する排ガス浄化装置などの複数の関連機器を収納する収容構造31が設けられている。
【0017】
エンジンパワーユニットの構成は、基本的に従来のものと同様であるが、後述の収容構造31について理解を容易にするために、図6の従来のものを参照して説明する。エンジンパワーユニットは、主に、防振状態で搭載されたディーゼルエンジン(以下、エンジンという)Eと、該エンジンEの前部側(図6の左側)の出力軸に連結された冷却ファンFと、エンジンEの後部側(図6の右側)の出力軸に連結された油圧ポンプPとを有している。また、冷却ファンFの近傍位置、つまり冷却ファンFによる冷却風(外気)の流れ方向の上流側には、冷却ファンFと対面し、エンジンEの冷却水を冷却するラジエータRが設けられている。さらに、作動油(戻り油)を冷却するオイルクーラ(付設の冷却ファンを含む)Cが適宜な位置に設けられている。なお、オイルクーラCは、図示は省略するが、ラジエータRと一体的に設けることができる。
【0018】
ラジエータR及びオイルクーラCは、エンジンパワーユニットの熱交換装置として機能するもので、放熱用のフィンが取り付けられたチューブからなる冷却コア(通風部)を有し、チューブ内に冷却水や作動油などの被冷却流体が流れる構造である。そして、対応する冷却ファンFの作動で発生した冷却風が冷却コアを通過することで、被冷却流体が冷却される。これにより、フロアフレーム101上にハウス103を被せた状態では、例えば、ラジエータRの前後両側において、冷却ファンFの作動を受けて冷却風が導入される上流空間(図6の左側)と、ラジエータRの冷却コアを通過した冷却済み空気(排風)が流入する下流空間(図6の右側)とが形成される。
【0019】
また、図示は省略するが、エンジンEの排気管には、高次の排ガス規制に対応する排ガス浄化装置が設けられている。排ガス浄化装置は、例えば、尿素水を還元剤とするSCR(Selective Catalytic Reduction:選択還元型触媒)や、排気管のSCRに対して上流側に配置されるとともに、排気管内の排ガスに向けて尿素水を噴射する噴射ノズルなどを有している。これにより、燃焼後の排ガスは、排ガス浄化装置で浄化処理がなされた後、排気管に案内されて排気口から外部に排出される。
【0020】
ところで、定期的な保守などにおいて、油圧ポンプPなどの重量物を着脱する場合には、余裕のある作業スペースやクレーンの吊り操作が求められる。しかしながら、図6に示すような、従来からある箱型のハウス103では、対象物にアクセスするうえで扉103aの開口部が役に立たず、こうした場合には、ハウス103を取り外す付帯作業に労力を要することとなる。ここで、特許文献1に記載されるような、収容空間の上方部分を開放する分解式の構成も考えられるが、門型フレームの構成がボルト締結を要する複数部品からなると組立性の低下を招きやすく、また、ハウスの天板は、歩行可能な足場にもなることから、万一、ボルトが緩んだ場合に剛性が低下するという問題がある。そこで、杭打機11には、安価な構成でフレーム剛性が得られ、組立や保守にも優れたエンジンパワーユニットの収容構造31が設けられている。以下では、収容構造31の具体的な構成について、図2乃至図5を参照しながら説明する。
【0021】
収容構造31は、図2に示すように、鋼製フレーム構造及び外装を担う板金構造で概略構成した箱形状からなり、図3などに示すように、エンジンパワーユニットのエンジン収容空間Sを規定する前後一対の門型フレーム32,33と、該門型フレーム32,33を取付部として前後分割可能に取り付けられる前部カバー部材34、中間部カバー部材35、後部カバー部材36とを有し、矩形枠状のフロアフレーム上面(図示せず)に下端開口部を整合してボルト締結されている。
【0022】
前後一対の門型フレーム32,33は、基本的には、フレーム横断面がコ字状をなす共通部材からなり、エンジン収容空間Sの車幅方向の寸法を規定する左右一対の縦材(支柱)37,37と、該左右一対の縦材37,37の上端部間に横架されて該上端部と溶接接合され、エンジン収容空間Sの高さ寸法を規定する横材(梁)38とを有している。縦横の各部材37,38には、対応するカバー部材34,35,36をボルト締結するための複数の裏ナット(溶接ナット)が設けられており、縦材37の下端部には、フロアフレーム上に組み付けるためのボルト締結構造39が設けられている。
【0023】
横材38は、図5にも示すように、門型フレーム32,33の高さを規定する矩形長手状の平面部(上面)38aにおいて、各カバー部材34,35,36が取り付けられるカバー部材取付部(溶接ナット)40と、吊り治具(例えばアイボルト)が取り付けられる吊り治具取付部(溶接ナット)41とが設けられている。平面部38aには、長手方向(左右方向)に5つ並ぶカバー部材取付部40が、幅方向(前後方向)に2列配置され、各列の一方が中間部カバー部材35のボルト締結に用いられ、他方が中間部カバー部材35の前後に隣接する前部カバー部材34及び後部カバー部材36のボルト締結に用いられる。また、吊り治具取付部41は、長手方向(左右方向)に離間し、左右一対の縦材37,37の近傍に1つづつ設けられ、これにより、例えば、門型フレーム32,33を単体で吊る場合には、吊り治具にロープを掛けて2点吊りが行えるようになる。
【0024】
また、前後一対の門型フレーム32,33のうちの前側門型フレーム32は、エンジンパワーユニットのラジエータ(熱交換装置)Rの配置に対応して設けられ(図6参照)、ラジエータRの冷却コア(通風部)以外の部分での通風を遮断する遮蔽部材として、左右一対の縦材37,37間に渡された鋼製の板体42を備えている。この遮蔽部材には、例えば、遮蔽対象となる空間や隙間を埋めるスポンジ状のシール部材などが含まれている。これにより、エンジン収容空間Sは、エンジンパワーユニットの運転中において、ラジエータRの冷却コアを通過した冷却済み空気(排風)だけが流入する下流空間となる。
【0025】
各カバー部材34,35,36は、図4に示すように、外装として組替え可能な構成単位(モジュール)を有し、門型フレーム32,33に対して着脱する際には、対応する取付部に当接させた状態でボルト締結される。なお、通気を得る目的で板面にパンチングメタル形状の開口部43を有している点は従来構造と同様である。また、車幅方向外側(車両左側面)に位置する5枚の第1~第5外側面カバー部材44,45,46,47,48は、開閉扉として構成されており、そのうちの4枚(第1~第4外側面カバー部材44,45,46,47)は、縦材37,37にヒンジ(図示せず)を介して回動可能に連結されている。
【0026】
各開閉扉44~48は、外観上、横幅が極力統一されており、そのなかでも、2枚の開閉扉(第2,第3外側面カバー部材)45,46は、エンジン収容空間Sを観音扉式に開閉する一対の扉部を構成している。観音扉45,46は、互いの横幅が同一で中央から両側に開く構成である。これにより、エンジン収容空間Sの間口を大きく取りながら扉部の回動時に外方への最大突出量を抑えることができる。また、観音扉式に構成する際に、縦材37,37間に上下一対のフレーム補強材49,50が渡され、これに扉用の締め金具部品(例えばクレセント錠)が取り付けられている。なお、後部側の2枚の開閉扉(第4,第5外側面カバー部材)47,48についても一方が門型フレーム33の縦材37を用いて構成した観音扉式に開閉するものである。
【0027】
このように構成した収容構造31では、各カバー部材34,35,36を組み合わせて箱形状を形成した後、部品状態(サブ組立状態)でクレーンの吊り操作が行えると便宜である。そこで、このような事情を踏まえて、門型フレーム32,33の横材38の平面部38aに取り付けられる天板部材34a,35a,36aには、図5に示すように、取付状態で横材38,38を上方から見て、4箇所全ての吊り治具取付部41を露出させる切欠き形状34b,35b,36bが設けられている。切欠き形状34b,35b,36bは、隣り合う天板部材34a,35a,36a同士が近接する部分(板端部)において、吊り治具取付部41に対応する領域を略矩形状に切除した形状である。これにより、例えば、前後一対の門型フレーム32,33を同時に吊る場合には、カバー部材34,35,36を取り付けた状態で、吊り治具にロープを掛けて4点吊りが行えるようになる。
【0028】
このように、本発明の建設機械によれば、エンジンパワーユニットの収容構造31が、エンジン収容空間Sを規定する前後一対の門型フレーム32,33と、該門型フレーム32,33を取付部として前後分割可能に取り付けられる複数のカバー部材34,35,36とを有しているので、門型フレーム32,33の数を抑えた安価な構成で、組立や保守の作業性を向上させることができる。とりわけ、溶接構造の門型フレーム32,33により箱形状の剛性が高まり、足場機能を十分に発揮できるだけでなく、エンジン収容空間Sの大きさに見合う間口の広い観音扉45,46を組み込めることから、実用性にも優れたものである。
【0029】
また、前側門型フレーム32がエンジンパワーユニットの熱交換装置(例えばラジエータ)の配置に対応して設けられ、熱交換装置の通風部以外の部分での通風を遮断する遮蔽部材を備えているので、冷却風の流れを熱交換装置の通風部に集中させることが可能となり、エンジンパワーユニットの冷却性能の向上に寄与するものである。さらに、遮蔽部材が左右一対の縦材37,37間に渡された板体42であるので、フレーム剛性がより一層高まり、総合的に最適設計を行うことができる。
【0030】
加えて、門型フレーム32,33の高さを規定する横材38の平面部38aにカバー部材取付部40と吊り治具取付部41とを設けているので、吊り治具が取り付けられる吊り点位置を容易に得ることができる。しかも、横材38の平面部38aに取り付けられるカバー部材(天板部材)34a,35a,36aにおいて、取付状態で横材38を上方から見て、吊り治具取付部41を露出させる切欠き形状34b,35b,36bを設けているので、製造段階では、箱形状(サブ組立状態)の収容構造31をフロアフレーム上に吊り込むだけの簡単な方法で組立作業を進めることが可能となり、リードタイムの短縮による生産性向上を図ることができる。一方、保守においては、門型フレーム32,33を境に前後分割可能なカバー部材34,35,36により、例えば、油圧ポンプを分解する際の作業量を減らすことができ、とりわけ、収容構造31をクレーンで丸吊りして移動すれば、エンジンの載せ替えなどといった大掛かりな作業にも対応できることから、作業量の低減効果も顕著に得られるものである。
【0031】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、収容構造を構成する門型フレームや各種カバー部材の大きさ、形状などについては任意であり、エンジンパワーユニットの配置や構造に応じて適宜変更することができる。また、建設機械として杭打機を例示したが、これに限られず、アースドリルやクレーンなど、掘削装置や荷役装置の動力源としてエンジンパワーユニットを備えた各種建設機械に適用することができる。この場合、構成要素に分割可能な収容構造により製造原価低減に大きく寄与し、モデルチェンジや新型開発を円滑に進めることができる。
【符号の説明】
【0032】
11…杭打機、12…下部走行体、13…旋回ベアリング、14…上部旋回体、15…ベースマシン、16…リーダ、17…リーダ起伏シリンダ、18…リーダサポート、19…配管案内アーム、20…ジャッキ、21…カウンタウエイト、22…トップシーブ、23…下部ガイド、24…オーガ、25…駆動スプロケット、26…従動スプロケット、27…昇降用チェーン、28…メインフレーム、29…フロアフレーム、30…運転室、31…収容構造、32,33…門型フレーム、34…前部カバー部材、34a…天板部材、34b…切欠き形状、35…中間部カバー部材、35a…天板部材、35b…切欠き形状、36…後部カバー部材、36a…天板部材、36b…切欠き形状、37…縦材、38…横材、38a…平面部、39…ボルト締結構造、40…カバー部材取付部、41…吊り治具取付部、42…板体、43…開口部、44…第1外側面カバー部材、45…第2外側面カバー部材(観音扉)、46…第3外側面カバー部材(観音扉)、47…第4外側面カバー部材(観音扉)、48…第5外側面カバー部材(観音扉)、49,50…フレーム補強材
図1
図2
図3
図4
図5
図6