(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087130
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】露光装置、露光方法、および機械学習モデルの作成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201747
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】木村 知玄
(72)【発明者】
【氏名】仲村 武瑠
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA09
2H197AA22
2H197CD12
2H197CD15
2H197CD43
2H197DA02
2H197DC05
2H197DC14
(57)【要約】
【課題】複雑なシミュレーションモデルを構築することなく、装置の状態が変化した場合でも、ステージの副走査方向の位置ずれを推定して補正できる技術を提供する。
【解決手段】露光装置の制御部50は、入力データ生成部612、機械学習モデルM、および補正部63を有する。入力データ生成部612は、搬送機構に設けられた複数のセンサから出力される計測値D1に基づいて、入力データD2を生成する。機械学習モデルMは、入力データD2に基づいて、ステージの副走査方向の位置ずれ量または必要な補正量を表す推定値D3を出力する。補正部63は、推定値D3に基づいて、ステージの副走査方向の位置を補正する。計測値D1は、少なくとも、ステージの主走査方向の位置と、副走査機構が有する副走査モータのトルクと、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を露光する露光装置であって、
前記基板を保持するステージと、
前記ステージを搬送する搬送機構と、
前記ステージに保持された前記基板へ光を照射するヘッドと、
前記搬送機構を制御する制御部と、
を有し、
前記搬送機構は、
前記ステージを主走査方向に搬送する主走査機構と、
前記ステージを前記主走査方向と交差する副走査方向に搬送する副走査機構と、
を有し、
前記制御部は、
前記搬送機構に設けられた複数のセンサから出力される計測値に基づいて入力データを生成する入力データ生成部と、
前記入力データに基づいて、前記ステージの前記副走査方向の位置ずれ量または前記位置ずれ量に対して必要な補正量を表す推定値を出力する機械学習モデルと、
前記推定値に基づいて、前記ステージの前記副走査方向の位置を補正する補正部と、
を有し、
前記計測値は、少なくとも、
前記ステージの前記主走査方向の位置と、
前記副走査機構が有する副走査モータのトルクと、
を含む、露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置であって、
前記計測値は、
前記主走査機構が有する主走査モータのトルク
をさらに含む、露光装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の露光装置であって、
前記搬送機構は、
前記ステージの前記副走査方向の加速度を検出する加速度センサ
をさらに有し、
前記計測値は、
前記加速度センサにより検出される加速度
をさらに含む、露光装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の露光装置であって、
前記搬送機構は、
前記ステージの前記副走査方向の加速度を検出する加速度センサ
をさらに有し、
前記入力データは、
前記加速度センサの検出値に基づいて算出される前記ステージの主走査軸を中心とするローリング角度
を含む、露光装置。
【請求項5】
基板を保持するステージを、搬送機構により主走査方向に搬送しつつ、前記基板を露光する露光方法であって、
a)前記搬送機構から出力される計測値に基づいて、入力データを生成する工程と、
b)前記入力データを機械学習モデルに入力し、前記機械学習モデルから、前記ステージの前記主走査方向に交差する副走査方向の位置ずれ量または前記位置ずれ量に対して必要な補正量を表す推定値を出力する工程と、
c)前記推定値に基づいて、前記ステージの前記副走査方向の位置を補正する工程と、
を有し、
前記計測値は、少なくとも、
前記ステージの前記主走査方向の位置と、
前記搬送機構が有する副走査モータのトルクと、
を含む、露光方法。
【請求項6】
基板を保持したステージを搬送機構により主走査方向に搬送しつつ、前記基板を露光する露光装置において、前記ステージの副走査方向の位置ずれ量を推定するための機械学習モデルの作成方法であって、
x)前記ステージを前記主走査方向に移動させつつ、前記搬送機構に設けられた複数のセンサから出力される計測値を取得するとともに、前記ステージの前記副走査方向の位置ずれ量を位置ずれ計測装置により計測する工程と、
y)前記複数のセンサの計測値または前記計測値に基づいて算出される値を既知の入力値とし、前記位置ずれ計測装置により計測される位置ずれ量または前記位置ずれ量に対して必要な補正量を既知の出力値とする教師データに基づいて、機械学習モデルを作成する工程と、
を有し、
前記複数のセンサから出力される計測値は、少なくとも、
前記ステージの前記主走査方向の位置と、
前記搬送機構が有する副走査モータのトルクと、
を含む、機械学習モデルの作成方法。
【請求項7】
請求項6に記載の機械学習モデルの作成方法であって、
前記位置ずれ計測装置は、前記露光装置の実運用時には取り外される、機械学習モデルの作成方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の機械学習モデルの作成方法であって、
前記工程y)は、
y-1)前記露光装置の状態を表す状態値が第1条件のときに収集された第1データに基づいて、前記機械学習モデルの重みパラメータを調整する工程と、
y-2)前記工程y-1)の後、前記状態値が前記第1条件とは異なる第2条件のときに収集された第2データを用いて、前記機械学習モデルの推定精度を検証する工程と、
を含み、
前記工程y-2)において、前記推定精度が所定のレベルに達していない場合、前記機械学習モデルのハイパーパラメータを調整して、前記工程y-1)を再度実行する、機械学習モデルの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を保持するステージを主走査方向に搬送しつつ、基板を露光する露光装置において、ステージの副走査方向の位置ずれを補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハ等の基板の表面に、パターンを露光する露光装置が知られている。従来の露光装置については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の露光装置では、基板を保持するステージを主走査方向に搬送しつつ、基板の上面にパルス光を照射することにより、基板にパターンを露光する。このとき、ステージの副走査方向の位置がずれると、基板上における露光位置がずれてしまう。特に、半導体ウェハ等の精密電子部品に対してパターンを露光する装置では、露光位置に関して極めて高い精度が求められる。
【0005】
この点について、特許文献1では、ステージの主走査方向(Y方向)の位置に応じてステージの副走査方向(X方向)の位置を補正するための補正テーブルを作成している。そして、当該文献では、ステージのY方向の移動中に、補正テーブルに基づいてステージの副走査方向の位置を補正している。
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、装置の移設や経年変化により、装置の重心位置やステージの傾き等が変化すると、補正テーブルを再作成する必要がある。また、特許文献1の方法で、装置の状態変化に対応できる補正テーブルを作成しようとすると、非常に複雑なモデルを構築して高度なシミュレーションを行う必要がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、複雑なシミュレーションモデルを構築することなく、装置の状態が変化した場合でも、ステージの副走査方向の位置ずれを推定して補正できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、基板を露光する露光装置であって、前記基板を保持するステージと、前記ステージを搬送する搬送機構と、前記ステージに保持された前記基板へ光を照射するヘッドと、前記搬送機構を制御する制御部と、を有し、前記搬送機構は、前記ステージを主走査方向に搬送する主走査機構と、前記ステージを前記主走査方向と交差する副走査方向に搬送する副走査機構と、を有し、前記制御部は、前記搬送機構に設けられた複数のセンサから出力される計測値に基づいて入力データを生成する入力データ生成部と、前記入力データに基づいて、前記ステージの前記副走査方向の位置ずれ量または前記位置ずれ量に対して必要な補正量を表す推定値を出力する機械学習モデルと、前記推定値に基づいて、前記ステージの前記副走査方向の位置を補正する補正部と、を有し、前記計測値は、少なくとも、前記ステージの前記主走査方向の位置と、前記副走査機構が有する副走査モータのトルクと、を含む。
【0009】
本願の第2発明は、第1発明の露光装置であって、前記計測値は、前記主走査機構が有する主走査モータのトルクをさらに含む。
【0010】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の露光装置であって、前記搬送機構は、前記ステージの前記副走査方向の加速度を検出する加速度センサをさらに有し、前記計測値は、前記加速度センサにより検出される加速度をさらに含む。
【0011】
本願の第4発明は、第1発明または第2発明の露光装置であって、前記搬送機構は、前記ステージの前記副走査方向の加速度を検出する加速度センサをさらに有し、前記入力データは、前記加速度センサの検出値に基づいて算出される前記ステージの主走査軸を中心とするローリング角度を含む。
【0012】
本願の第5発明は、基板を保持するステージを、搬送機構により主走査方向に搬送しつつ、前記基板を露光する露光方法であって、a)前記搬送機構から出力される計測値に基づいて、入力データを生成する工程と、b)前記入力データを機械学習モデルに入力し、前記機械学習モデルから、前記ステージの前記主走査方向に交差する副走査方向の位置ずれ量または前記位置ずれ量に対して必要な補正量を表す推定値を出力する工程と、c)前記推定値に基づいて、前記ステージの前記副走査方向の位置を補正する工程と、を有し、前記計測値は、少なくとも、前記ステージの前記主走査方向の位置と、前記搬送機構が有する副走査モータのトルクと、を含む。
【0013】
本願の第6発明は、基板を保持したステージを搬送機構により主走査方向に搬送しつつ、前記基板を露光する露光装置において、前記ステージの副走査方向の位置ずれ量を推定するための機械学習モデルの作成方法であって、x)前記ステージを前記主走査方向に移動させつつ、前記搬送機構に設けられた複数のセンサから出力される計測値を取得するとともに、前記ステージの前記副走査方向の位置ずれ量を位置ずれ計測装置により計測する工程と、y)前記複数のセンサの計測値または前記計測値に基づいて算出される値を既知の入力値とし、前記位置ずれ計測装置により計測される位置ずれ量または前記位置ずれ量に対して必要な補正量を既知の出力値とする教師データに基づいて、機械学習モデルを作成する工程と、を有し、前記複数のセンサから出力される計測値は、少なくとも、前記ステージの前記主走査方向の位置と、前記搬送機構が有する副走査モータのトルクと、を含む。
【0014】
本願の第7発明は、第6発明の機械学習モデルの作成方法であって、前記位置ずれ計測装置は、前記露光装置の実運用時には取り外される。
【0015】
本願の第8発明は、第6発明または第7発明の機械学習モデルの作成方法であって、前記工程y)は、y-1)前記露光装置の状態を表す状態値が第1条件のときに収集された第1データに基づいて、前記機械学習モデルの重みパラメータを調整する工程と、y-2)前記工程y-1)の後、前記状態値が前記第1条件とは異なる第2条件のときに収集された第2データを用いて、前記機械学習モデルの推定精度を検証する工程と、を含み、前記工程y-2)において、前記推定精度が所定のレベルに達していない場合、前記機械学習モデルのハイパーパラメータを調整して、前記工程y-1)を再度実行する。
【発明の効果】
【0016】
第1発明から第9発明によれば、ステージの主走査方向の位置および副走査モータのトルクに基づいて、機械学習モデルにより、ステージの副走査方向の位置ずれ量または必要な補正量を推定できる。このため、複雑なシミュレーションモデルを構築する必要がなく、装置の状態が変化した場合でも、ステージの副走査方向の位置ずれを補正できる。
【0017】
特に、第2発明、第3発明、および第4発明によれば、副走査方向の位置ずれ量または必要な補正量を、より精度よく推定できる。
【0018】
また、第7発明によれば、露光装置の実運用時には、高価な位置ずれ計測装置を用いることなく、機械学習モデルから出力される推定値に基づいて、ステージの副走査方向の位置を適切に補正できる。
【0019】
また、第8発明によれば、露光装置の状態が第1データの取得時と異なる場合でも、副走査方向の位置ずれ量または必要な補正量を精度よく出力できる機械学習モデルを作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】制御部の機能を概念的に示したブロック図である。
【
図5】機械学習モデルの作成時における露光装置の正面図である。
【
図6】機械学習モデルを作成するときの手順を示したフローチャートである。
【
図7】教師データを、第1データと第2データとに分ける様子を示した図である。
【
図8】露光処理のときに実行されるステージの搬送制御の流れを示したフローチャートである。
【
図9】ステージが主走査軸を中心として傾斜している状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
なお、以下では、水平面に沿うある一方向を「主走査方向」とし、水平面に沿う他の方向を「副走査方向」とする。主走査方向と副走査方向とは、互いに交差(以下の実施形態では直交)する。
【0023】
<1.露光装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る露光装置1の正面図である。
図2は、当該露光装置1の側面図である。この露光装置1は、感光材料が塗布された半導体ウェハなどの基板9の上面に、空間変調された光を照射して、基板9の上面にパターンを露光する装置である。
図1および
図2に示すように、露光装置1は、ベース10、ステージ20、搬送機構30、露光部40、および制御部50を備えている。
【0024】
ベース10は、搬送機構30および露光部40を支持する支持台である。ベース10は、主走査方向および副走査方向に広がる平板状の外形を有する。ベース10は、工場の床面に対して固定される。
【0025】
ステージ20は、基板9を保持する平板状のプレートである。ステージ20は、平坦な上面を有する。基板9は、ステージ20の上面に、略水平な姿勢で載置される。ステージ20は、基板9を固定するチャックピンや、基板9を吸着する複数の吸着孔を有していてもよい。
【0026】
搬送機構30は、ステージ20を搬送する機構である。搬送機構30は、ベース10に対してステージ20を、主走査方向および副走査方向に移動させる。
図1および
図2に示すように、搬送機構30は、主走査プレート31、副走査プレート32、主走査機構33、副走査機構34、回転機構35、主走査エンコーダ36、副走査エンコーダ37、および加速度センサ38を有する。
【0027】
主走査プレート31は、平板状の外形を有する。主走査プレート31は、ベース10の上方に、略水平な姿勢で配置される。主走査プレート31は、ベース10に対して主走査方向に移動可能に支持されている。副走査プレート32は、主走査プレート31の上方に、略水平な姿勢で配置される。副走査プレート32は、主走査プレート31に対して副走査方向に移動可能に支持されている。ステージ20は、副走査プレート32の上方に、略水平な姿勢で配置される。ステージ20は、副走査プレート32に対して、鉛直方向に延びる回転軸Aを中心として回転可能に支持されている。
【0028】
主走査機構33は、ステージ20を主走査方向に搬送するための機構である。主走査機構33は、ベース10に対して主走査プレート31を、主走査方向に移動させる。主走査機構33は、一対の主走査ガイド331と、主走査モータ332とを有する。
【0029】
一対の主走査ガイド331は、ベース10の上面に、副走査方向に間隔をあけて設けられている。各主走査ガイド331は、主走査方向に沿って直線状に延びる。主走査ガイド331には、例えばエアガイドが用いられる。これにより、ベース10に対して主走査プレート31を、浮上させた状態で主走査方向に移動させることができる。
【0030】
主走査モータ332は、一対の主走査ガイド331の間に配置されている。本実施形態の主走査モータ332は、固定子332aと移動子332bとを有するリニアモータである。固定子332aは、ベース10の上面に、主走査方向に沿って設けられている。移動子332bは、主走査プレート31の下面に固定されている。
【0031】
主走査モータ332の駆動時には、制御部50から主走査モータ332に駆動信号が供給される。そうすると、固定子332aと移動子332bとの間に生じる磁気的な吸引力および反発力によって、移動子332bが、固定子332aに沿って主走査方向に移動する。その結果、ベース10に対して主走査プレート31が、主走査方向に移動する。
【0032】
また、主走査機構33は、主走査モータ332のトルクを出力可能な主走査回路333を有する。主走査回路333は、制御部50と電気的に接続されている。
【0033】
副走査機構34は、ステージ20を副走査方向に搬送するための機構である。副走査機構34は、主走査プレート31に対して副走査プレート32を、副走査方向に移動させる。副走査機構34は、一対の副走査ガイド341と、副走査モータ342とを有する。
【0034】
一対の副走査ガイド341は、主走査プレート31の上面に、主走査方向に間隔をあけて設けられている。各副走査ガイド341は、副走査方向に沿って直線状に延びる。副走査ガイド341には、例えばボールガイドが用いられる。これにより、主走査プレート31に対して副走査プレート32を、低摩擦で副走査方向に移動させることができる。
【0035】
副走査モータ342は、一対の副走査ガイド341の間に配置されている。本実施形態の副走査モータ342は、固定子342aと移動子342bとを有するリニアモータである。固定子342aは、主走査プレート31の上面に、副走査方向に沿って設けられている。移動子342bは、副走査プレート32の下面に固定されている。
【0036】
副走査モータ342の駆動時には、制御部50から副走査モータ342に駆動信号が供給される。そうすると、固定子342aと移動子342bとの間に生じる磁気的な吸引力および反発力によって、移動子342bが、固定子342aに沿って副走査方向に移動する。その結果、主走査プレート31に対して副走査プレート32が、副走査方向に移動する。
【0037】
また、副走査機構34は、副走査モータ342のトルクを出力可能な副走査回路343を有する。副走査回路343は、制御部50と電気的に接続されている。
【0038】
回転機構35は、鉛直方向に延びる回転軸Aを中心とするステージ20の回転角度を調整するための機構である。回転機構35は、副走査プレート32に対してステージ20を、回転軸Aを中心として回転させる。回転機構35には、例えば、回転モータが使用される。回転機構35の駆動時には、制御部50から回転モータに駆動信号が供給される。これにより、回転モータが動作して、副走査プレート32に対してステージ20が、回転軸Aを中心として回転する。その結果、回転軸Aを中心とするステージ20の回転角度(ヨーイング角度)が調整される。
【0039】
このように、ステージ20は、主走査機構33および副走査機構34により、ベース10に対して、主走査方向および副走査方向に移動可能であるとともに、ヨーイング角度を調整することが可能となっている。
【0040】
主走査エンコーダ36は、ステージ20の主走査方向の位置を検出するセンサである。主走査エンコーダ36は、ベース10と主走査プレート31との間に設けられている。主走査エンコーダ36には、例えば、リニアエンコーダが使用される。主走査エンコーダ36は、主走査方向に延びるリニアスケールと、リニアスケールを検出する検出子とを有する。主走査エンコーダ36は、ステージ20の主走査方向の位置を示す検出信号を、制御部50へ出力する。
【0041】
副走査エンコーダ37は、ステージ20の副走査方向の位置を検出するセンサである。副走査エンコーダ37は、主走査プレート31と副走査プレート32との間に設けられている。副走査エンコーダ37には、例えば、リニアエンコーダが使用される。副走査エンコーダ37は、副走査方向に延びるリニアスケールと、リニアスケールを検出する検出子とを有する。副走査エンコーダ37は、ステージ20の副走査方向の位置を示す検出信号を、制御部50へ出力する。
【0042】
加速度センサ38は、ステージ20の主走査方向および副走査方向の加速度を検出するセンサである。
図1および
図2に示すように、加速度センサ38は、副走査プレート32に固定されている。加速度センサ38は、副走査プレート32およびステージ20とともに主走査方向および副走査方向に移動しつつ、ステージ20の主走査方向および副走査方向の加速度を検出する。そして、加速度センサ38は、検出された加速度を示す検出信号を、制御部50へ出力する。なお、加速度センサ38は、ステージ20に固定されていてもよい。
【0043】
露光部40は、ステージ20に保持された基板9を露光するユニットである。
図1および
図2に示すように、露光部40は、ヘッド41、照明光学系42、およびレーザ発振器43を有する。ヘッド41は、ベース10から延びるフレーム(図示省略)に固定されている。したがって、本実施形態では、ベース10に対するヘッド41の位置は、固定されている。
【0044】
レーザ発振器43は、制御部50から供給される駆動信号に従って、パルス光を出射する。レーザ発振器43から出射されるパルス光は、照明光学系42を介してヘッド41へ導入される。ヘッド41の内部には、空間変調器が設けられている。空間変調器には、例えば、回折格子型の空間光変調器であるGLV(Grating Light Valve)(登録商標)が用いられる。ヘッド41へ導入されたパルス光は、空間変調器により所定のパターンに変調されて、基板9の上面に照射される。これにより、基板9の上面の感光材料が露光される。
【0045】
露光装置1の稼働時には、搬送機構30による基板9の搬送と、ヘッド41による露光とが、繰り返し実行される。具体的には、露光装置1は、主走査機構33によりステージ20を主走査方向に搬送しつつ、ヘッド41からパルス光を照射することにより、基板9の上面の主走査方向に延びる帯状の領域(スワス)に露光を行う。その後、露光装置1は、副走査機構34によりステージ20を副走査方向に1スワス分だけ移動させ、再び主走査方向の露光を行う。このように、露光装置1は、主走査方向の露光と、副走査方向のステージ20の移動とを繰り返すことにより、基板9の上面全体にパターンを露光する。
【0046】
制御部50は、露光装置1の各部を動作制御するためのユニットである。
図3は、露光装置1の制御ブロック図である。
図3中に概念的に示すように、制御部50は、CPU等のプロセッサ51、RAM等のメモリ52、およびハードディスクドライブ等の記憶部53を有するコンピュータにより構成されている。記憶部53には、露光装置1を動作制御するためのコンピュータプログラムPと各種データDが記憶されている。
【0047】
また、
図3に示すように、制御部50は、主走査機構33(主走査モータ332および主走査回路333を含む)、副走査機構34(副走査モータ342および副走査回路343を含む)、回転機構35、主走査エンコーダ36、副走査エンコーダ37、加速度センサ38、および露光部40(ヘッド41およびレーザ発振器43を含む)と、電気的に接続されている。制御部50は、記憶部53に記憶されたコンピュータプログラムPやデータDをメモリ52に読み出し、当該コンピュータプログラムPおよびデータDに基づいて、プロセッサ51が演算処理を行うことにより、露光装置1内の上記各部を動作制御する。これにより、露光装置1における露光処理が進行する。
【0048】
<2.制御部の機能について>
制御部50は、ステージ20を主走査方向に搬送しつつ、ステージ20の副走査方向の微小な位置ずれ量を推定し、推定された位置ずれを補正する機能を有する。
図4は、制御部50の当該機能を概念的に示したブロック図である。
図4に示すように、制御部50は、入力データ取得部61、推定部62、および補正部63を有する。入力データ取得部61、推定部62、および補正部63の各機能は、制御部50としてのコンピュータが、コンピュータプログラムPに従って動作することにより、実現される。
【0049】
入力データ取得部61は、搬送機構30に設けられた複数のセンサから出力される計測値D1を取得し、後述する機械学習モデルMへ入力する入力データD2を生成する処理部である。複数のセンサは、上述した主走査回路333、副走査回路343、主走査エンコーダ36、副走査エンコーダ37、および加速度センサ38を含む。
【0050】
入力データ取得部61は、計測値入力部611と、入力データ生成部612とを有する。計測値入力部611は、上記の複数のセンサから出力された計測値D1を取得する。入力データ生成部612は、それらの計測値D1に基づいて、機械学習モデルMへ入力する入力データD2を生成する。入力データD2は、複数のセンサから出力される計測値D1そのものであってもよいし、計測値D1に対して所定の演算やフィルタ処理等を行うことにより得られるデータであってもよい。
【0051】
推定部62は、入力データ取得部61により得られた入力データD2に基づいて、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量を表す推定値D3を出力する処理部である。
図4に示すように、推定部62は、機械学習モデルMを有する。機械学習モデルMは、機械学習アルゴリズムを用いた後述する学習処理により作成された推論プログラムである。機械学習モデルMを得るための機械学習アルゴリズムとしては、例えば、一層ニューラルネットワークやディープラーニング等を含むニューラルネットワーク、ランダムフォレストや勾配ブースティング等を含む決定木系アルゴリズム、サポートベクトルマシンといった、いわゆる教師あり機械学習アルゴリズムが用いられる。
【0052】
機械学習モデルMは、上述した入力データD2を説明変数とし、ステージ20の副走査方向位置ずれ量を目的変数とする。推定部62は、入力データ取得部61が取得した入力データD2を、機械学習モデルMへ入力する。そうすると、機械学習モデルMは、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量を表す推定値D3を出力する。ただし、機械学習モデルMから出力される推定値D3は、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量に対して必要な補正量を表すものであってもよい。
【0053】
補正部63は、推定部62から出力される推定値D3に基づいて、ステージ20の副走査方向の位置を補正する処理部である。補正部63は、推定値D3に基づいて、副走査モータ342に、補正のための駆動信号D4を出力する。これにより、副走査モータ342が動作して、ステージ20の副走査方向の位置ずれが補正される。
【0054】
<3.機械学習モデルの作成>
続いて、上述した機械学習モデルMを作成するための学習処理について、説明する。
図5は、機械学習モデルMの作成時における露光装置1の正面図である。
図5に示すように、機械学習モデルMを作成するときには、露光装置1に、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量を計測する位置ずれ計測装置80が設置される。この位置ずれ計測装置80は、上述した副走査エンコーダ37よりも高い精度(細かい分解能)で、ステージ20の副走査方向の微小な位置ずれ量を計測できる。
【0055】
位置ずれ計測装置80は、ステージ20に固定されるミラー81と、レーザ測長器82とを有する。ミラー81は、ステージ20の副走査方向の端縁部に固定される。レーザ測長器82は、図示を省略した取付具を介して、ベース10に固定される。レーザ測長器82は、ミラー81へ向けてレーザ光を出射するとともに、当該レーザ光がミラー81により反射した反射光を受光する。そして、レーザ測長器82は、出射光と反射光の位相差に基づいて、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量を計測する。
【0056】
図6は、機械学習モデルMを作成するときの手順を示したフローチャートである。機械学習モデルMを作成するときには、まず、露光装置1に、上記の位置ずれ計測装置80を設置する(ステップS11)。
【0057】
次に、制御部50は、主走査機構33を動作させつつ、機械学習のための教師データTを収集する(ステップS12)。具体的には、制御部50は、主走査機構33によりステージ20を主走査方向に移動させつつ、搬送機構30に設けられた複数のセンサから出力される計測値D1と、位置ずれ計測装置80から出力されるステージ20の副走査方向の位置ずれ量とを、取得する。複数のセンサには、上述した主走査回路333、副走査回路343、主走査エンコーダ36、副走査エンコーダ37、および加速度センサ38が含まれる。
【0058】
制御部50は、上記の複数のセンサの計測値D1を既知の入力値とし、位置ずれ計測装置80により計測される位置ずれ量を既知の出力値とする教師データTを、記憶部53に記憶させる。なお、既知の入力値は、複数のセンサの計測値D1に対して、上述した入力データ生成部612と同一の処理を行うことにより生成されるデータであってもよい。また、既知の出力値は、位置ずれ計測装置80により計測される位置ずれ量に対して必要な補正量であってもよい。
【0059】
本実施形態では、露光装置1の状態を表す状態値を変化させつつ、ステップS12の教師データの収集を行う。状態値は、例えば、ステージ20の副走査方向の位置であってもよい。また、状態値は、ベース10またはステージ20の僅かな傾斜角度や重心位置のずれを表す値であってもよい。制御部50は、
図7のように、教師データTを、状態値が第1条件のときに収集された第1データT1と、状態値が第1条件とは異なる第2条件のときに収集された第2データT2とに分ける。
【0060】
次に、制御部50は、上記の第1データT1に基づいて、機械学習モデルMの重みパラメータを調整する(ステップS13)。これにより、露光装置1の状態値が第1条件のときに、複数のセンサの計測値D1に基づいて、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量の推定値D3を精度よく出力できる、機械学習モデルMが作成される。
【0061】
続いて、制御部50は、上記の第2データT2を用いて、露光装置1の状態値が第2条件のときの、機械学習モデルMの推定精度を検証する(ステップS14)。具体的には、第2データT2の既知の入力値を機械学習モデルMに入力し、機械学習モデルMから出力される推定値D3と、第2データT2の既知の出力値との差が、許容範囲内であるか否かを判定する。
【0062】
ステップS14の検証において、機械学習モデルMの推定精度が、許容されるレベルに達していない場合(ステップS15:No)、制御部50は、機械学習モデルMの構造を規定するハイパーパラメータを調整する(ステップS16)。例えば、機械学習アルゴリズムがディープラーニングである場合、制御部50は、ステップS16において、機械学習モデルMの中間層の数を調整する。そして、上述したステップS13-S14を再度実行する。
【0063】
このように、制御部50は、第1データT1に基づいて機械学習モデルMの重みパラメータを調整し、その第1データT1とは露光装置1の状態が異なるときに収集された第2データT2を用いて、機械学習モデルMの推定精度を検証する。そして、機械学習モデルMの推定精度が不十分の場合には、機械学習モデルMのハイパーパラメータを調整する。このようなステップS13-S16の処理を繰り返すことにより、露光装置1の状態が変化した場合でも、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量または必要な補正量を精度よく推定できる機械学習モデルMが作成される。
【0064】
やがて、ステップS14の検証において、機械学習モデルMによる位置ずれ量の推定精度が、所望のレベルに達したと判断されると(ステップS15:Yes)、制御部50は、機械学習モデルMの作成を終了する。そして、露光装置1から位置ずれ計測装置80が取り外される(ステップS17)。
【0065】
<4.露光処理>
続いて、上記の露光装置1において、製品となる基板9を露光する実運用時の露光処理について説明する。
【0066】
露光装置1の実運用時には、上記の位置ずれ計測装置80は取り外される。実運用時には、ステージ20の副走査方向の位置ずれを、位置ずれ計測装置80で計測するのではなく、機械学習モデルMにより推定する。これにより、高価な位置ずれ計測装置80を用いることなく、ステージ20の副走査方向の位置を補正できる。
【0067】
基板9の露光処理を行うときには、まず、ステージ20に基板9を保持させる。そして、主走査機構33によりステージ20を主走査方向に搬送しつつ、ヘッド41からパルス光を照射することにより、基板9の上面にパターンを露光する。
【0068】
図8は、このような露光処理のときに繰り返し実行されるステージ20の搬送制御の流れを示したフローチャートである。露光処理時には、主走査機構33がステージ20を主走査方向に搬送する。このとき、搬送機構30に設けられた複数のセンサから計測値D1が出力され、当該計測値D1が、制御部50の計測値入力部611に入力される(ステップS21)。複数のセンサは、上述した主走査回路333、副走査回路343、主走査エンコーダ36、副走査エンコーダ37、および加速度センサ38を含む。
【0069】
次に、入力データ生成部612が、計測値入力部611に入力された計測値D1に基づいて、入力データD2を生成する(ステップS22)。ここでは、上述したステップS12と同一の処理が実行される。例えば、ステップS12において実行される処理がフィルタ処理である場合には、ステップS22においても、同様のフィルタ処理を実行する。これにより、計測値D1を反映した入力データD2が生成される。
【0070】
続いて、推定部62が、入力データD2を機械学習モデルMに入力する(ステップS23)。そうすると、機械学習モデルMから、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量を表す推定値D3が出力される(ステップS24)。ただし、機械学習モデルMから出力される推定値D3は、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量に対して必要な補正量を表すものであってもよい。
【0071】
その後、補正部63が、機械学習モデルMから出力された推定値D3に基づいて、ステージ20の副走査方向の位置ずれを補正する(ステップS25)。具体的には、補正部63は、推定値D3に基づいて、副走査モータ342に、補正のための駆動信号D4を出力する。これにより、副走査モータ342が、推定された副走査方向の位置ずれをキャンセルする方向に動作する。その結果、ステージ20の副走査方向の位置ずれが低減される。
【0072】
以上のように、この露光装置1は、搬送機構30に設けられた複数のセンサから出力される計測値D1を反映した入力データD2に基づいて、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量または必要な補正量を表す推定値D3を出力する。装置の移設や経時変化等により、露光装置1の状態が変わった場合には、搬送機構30に設けられた複数のセンサの計測値D1も変化する。このため、当該複数のセンサの計測値D1を説明変数とする機械学習モデルMを用いることで、露光装置1の状態が変わった場合でも、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量または必要な補正量を推定することが可能となる。したがって、複雑なシミュレーションモデルを構築する必要がなく、推定値D3に基づいて、ステージ20の副走査方向の位置を適切に補正できる。その結果、基板9に対する露光処理を精度よく行うことができる。
【0073】
<5.計測値について>
上記のように、この露光装置1では、搬送機構30に設けられた複数のセンサの計測値D1に基づいて、機械学習モデルMに入力する入力データD2を生成している。以下では、このような入力データD2を生成するために取得すべき計測値D1の種類について、説明する。
【0074】
主走査ガイド331が、主走査方向に対して僅かに傾斜している場合や、主走査ガイド331に僅かな歪みがある場合、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量は、ステージ20の主走査方向の位置に依存する。このため、主走査エンコーダ36から出力されるステージ20の主走査方向の位置と、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量との間には、相関が存在する。したがって、入力データD2を生成するための計測値D1には、少なくとも、ステージ20の主走査方向の位置を含めることが望ましい。
【0075】
また、ステージ20が、主走査方向に延びる軸(以下「主走査軸B」と称する)を中心として僅かに傾斜している場合、ステージ20は、重力の影響で副走査方向に位置ずれしやすくなる。このステージ20の傾斜は、副走査モータ342のトルクに影響する。すなわち、副走査モータ342のトルクは、上記の傾斜がない場合とは異なる値となる。このため、副走査回路343から出力される副走査モータ342のトルクと、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量との間には、相関が存在する。したがって、入力データD2を生成するための計測値D1には、少なくとも、副走査モータ342のトルクを含めることが望ましい。
【0076】
すなわち、入力データD2を生成するための計測値D1には、少なくとも、ステージ20の主走査方向の位置と、副走査モータ342のトルクと、を含めることが望ましい。
【0077】
図9は、ステージ20が主走査軸Bを中心として僅かに傾斜している状態を示した図である。
図9のように、ステージ20の主走査軸Bを中心とする回転角度(以下「ローリング角度」と称する)がθの場合、重力加速度gの影響で、ステージ20には、副走査方向にF=g・sinθの慣性力が作用する。この慣性力Fは、ステージ20の副走査方向の位置ずれの要因となる。また、このような慣性力Fが存在すると、加速度センサ38が検出する副走査方向の加速度は、ステージ20が傾斜していない場合とは異なる値となる。このため、加速度センサ38から出力される副走査方向の加速度と、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量との間には、相関が存在する。したがって、入力データD2を生成するための計測値D1には、加速度センサ38から出力される副走査方向の加速度を含めることが、より望ましい。
【0078】
また、入力データ生成部612は、加速度センサ38の検出値に基づいて、ステージ20の主走査軸Bを中心とするローリング角度θを算出してもよい。そして、算出されたローリング角度θを、入力データD2に含めてもよい。ローリング角度θとステージ20の副走査方向の位置ずれ量との間には、上記の副走査方向の加速度とステージ20の副走査方向の位置ずれ量との間よりも、強い相関が存在する。このため、入力データD2にローリング角度θを含めることで、副走査方向の位置ずれ量または必要な補正量を、より精度よく推定できる。
【0079】
また、入力データD2を生成するための計測値D1には、さらに、主走査回路333から出力される主走査モータ332のトルク、副走査エンコーダ37から出力されるステージ20の副走査方向の位置、加速度センサ38から出力される主走査方向の加速度のうちの少なくとも1つを、含めることが望ましい。これにより、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量または必要な補正量を、より精度よく推定できる。
【0080】
また、入力データD2を生成するための計測値D1として、搬送機構30から出力される他の計測値を追加してもよい。例えば、主走査機構33によるステージ20の主走査方向の移動速度、副走査機構34によるステージ20の副走査方向の移動速度、回転機構35のモータのトルクなどを、計測値D1に含めてもよい。
【0081】
<6.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0082】
上記の実施形態では、主走査モータ332および副走査モータ342が、リニアモータであった。しかしながら、主走査モータ332および副走査モータ342は、回転式のモータであってもよい。その場合、各モータから出力される回転運動を、ボールネジ等により直進運動に変換すればよい。
【0083】
また、上記の実施形態では、加速度センサ38が、ステージ20の主走査方向および副走査方向の加速度を検出するものであった。しかしながら、加速度センサ38は、ステージ20の副走査方向の加速度のみを検出するものであってもよい。
【0084】
また、上記の実施形態では、教師データTの収集時に、レーザ測長器82を有する位置ずれ計測装置80により、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量を計測していた。しかしながら、教師データTの収集時に、他の方法で、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量を計測してもよい。例えば、ステージ20に基板9を載せて露光を行い、その露光結果に基づいて、ステージ20の副走査方向の位置ずれ量を計測してもよい。
【0085】
また、上記の実施形態では、露光装置1の制御部50が、機械学習モデルMを作成するための学習処理を行っていた。しかしながら、機械学習モデルMを作成するための学習処理は、制御部50とは別のコンピュータが行ってもよい。
【0086】
また、露光対象となる基板9は、半導体ウェハには限定されない。基板9は、例えば、フラットパネルディスプレイ用の基板や、プリント基板などであってもよい。
【0087】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に取捨選択してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 露光装置
9 基板
10 ベース
20 ステージ
30 搬送機構
31 主走査プレート
32 副走査プレート
33 主走査機構
34 副走査機構
35 回転機構
36 主走査エンコーダ
37 副走査エンコーダ
38 加速度センサ
40 露光部
41 ヘッド
42 照明光学系
43 レーザ発振器
50 制御部
61 入力データ取得部
62 推定部
63 補正部
80 位置ずれ計測装置
331 主走査ガイド
332 主走査モータ
333 主走査回路
341 副走査ガイド
342 副走査モータ
343 副走査回路
611 計測値入力部
612 入力データ生成部
D1 計測値
D2 入力データ
D3 推定値
D4 駆動信号
M 機械学習モデル
P コンピュータプログラム
T 教師データ
T1 第1データ
T2 第2データ
θ ローリング角度