(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087132
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】捲回電極体の製造方法及び蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240624BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20240624BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20240624BHJP
H01M 10/0587 20100101ALN20240624BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20240624BHJP
H01G 13/02 20060101ALN20240624BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01G11/86
H01G4/32 311A
H01M10/0587
H01M10/052
H01G13/02
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201751
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 篤志
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AB06
5E078AB13
5E078BB30
5E082AB04
5E082AB05
5E082LL05
5H028AA05
5H028BB08
5H028BB15
5H028CC13
5H029AJ14
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ07
5H029CJ28
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】捲回工程のうち残巻き工程で生じ得る電極板の巻きズレを適切に抑制できる捲回電極体の製造方法等を提供する。
【解決手段】捲回電極体20の製造方法は、捲回工程S11を備える。この捲回工程S11は、長尺電極板21Zの幅方向位置Pxを制御しつつ捲回する本巻き工程S111と、長尺電極板21Zを切断する切断工程S115と、電極板21の未捲回部分21fを巻き取る残巻き工程S116と、本巻き工程S111後、切断工程S115前に、当該電極板21の湾曲量Wに基づいて、残巻き工程S116において未捲回部分21fの幅方向位置Pxが基準幅方向位置Psとなるように長尺電極板21Zの幅方向位置Pxを調整する位置調整工程S114とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々帯状をなす第1セパレータ、負極板、第2セパレータ及び正極板を重ねて捲回してなる捲回電極体の製造方法であって、
巻き芯の周りに、上記第1セパレータ、上記負極板、上記第2セパレータ及び上記正極板を重ねて捲回する捲回工程を備え、
上記捲回工程は、
切断により上記正極板及び上記負極板のいずれか一方の複数の電極板となる切断前の長尺の長尺電極板について、搬送中の上記長尺電極板の幅方向位置が基準幅方向位置となるように、上記長尺電極板の上記幅方向位置を制御しつつ捲回する本巻き工程と、
上記長尺電極板を上記電極板の巻き終わり端で幅方向に切断し上記電極板を切り出す切断工程と、
切断された上記電極板の未捲回部分を巻き取る残巻き工程と、を有し、
上記本巻き工程後、上記切断工程前に、上記本巻き工程における上記幅方向位置の制御に代えて、当該電極板の湾曲量に基づいて、上記残巻き工程において上記未捲回部分の上記幅方向位置が上記基準幅方向位置となるように、上記長尺電極板の上記幅方向位置を調整する位置調整工程を更に有する
捲回電極体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の捲回電極体の製造方法であって、
前記本巻き工程は、
前記長尺電極板の前記幅方向位置を調整する位置調整機構を用いて行い、
前記位置調整工程は、
上記位置調整機構を用いて行う
捲回電極体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の捲回電極体の製造方法であって、
前記位置調整工程は、
前記電極板の前記湾曲量として、上記電極板の推定された推定湾曲量を用いて、前記長尺電極板の前記幅方向位置を調整する
捲回電極体の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の捲回電極体の製造方法であって、
前記長尺電極板は、
上記長尺電極板を予めロール状に巻き取った電極ロールから巻き出し、
前記捲回工程は、
上記電極ロールの巻き出し当初から、当該捲回工程で用いる部分まで巻き出した、上記長尺電極板の巻き出し長さを検知する巻出長検知工程と、
検知した上記巻き出し長さと、
上記長尺電極板のうち、上記電極ロールの最内周に位置する最内周部における湾曲量である最内周湾曲量と、
上記長尺電極板のうち、上記電極ロールの当初の最外周に位置する最外周部における湾曲量である最外周湾曲量とに基づいて、
当該捲回工程で用いる上記電極板の湾曲量を推定して前記推定湾曲量を得る
湾曲量推定工程と、を有する
捲回電極体の製造方法。
【請求項5】
各々帯状をなす第1セパレータ、負極板、第2セパレータ及び正極板を重ねて捲回してなる捲回電極体を備える蓄電デバイスの製造方法であって、
請求項1または請求項2に記載の捲回電極体の製造方法により、上記捲回電極体を製造する電極体製造工程と、
上記捲回電極体を用いて、上記蓄電デバイスを組み立てるデバイス組立工程と、を備える
蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各々帯状をなす第1セパレータ、負極板、第2セパレータ及び正極板を重ねて捲回してなる捲回電極体の製造方法、及び、上記捲回電極体を備える蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池やキャパシタなどの蓄電デバイス内に収容される電極体として、各々帯状をなす第1セパレータ、負極板、第2セパレータ及び正極板を重ねて捲回した、円筒状や扁平状の捲回電極体が知られている。この捲回電極体の製造において、巻き芯の周りに、第1セパレータ、負極板、第2セパレータ及び正極板を重ねて捲回する際、正極板及び負極板のうち、一方の電極板または両方の電極板に巻きズレが生じ得る。
【0003】
この問題に対して従来は、エッジセンサにより、搬送中の電極板の幅方向の一端縁(エッジ)の幅方向位置を検知し、この検知した幅方向位置に基づいて、幅方向位置が予め定めた基準幅方向位置となるように当該電極板の幅方向位置をエッジポジションコントロール(EPC)により調整しつつ、電極板等の捲回を行っていた。これにより、電極板の巻きズレを抑制していた。関連する従来技術として、例えば特許文献1が挙げられる(特許文献1の
図1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の捲回工程に用いる帯状の電極板は、その幅方向に湾曲している場合がある。電極板が湾曲していると、この湾曲によっても電極板の巻きズレが生じる。特に、長尺電極板を切断した後の、電極板の未捲回部分を巻き取る残巻き工程では、既に長尺電極板を切断してしまっているので、搬送中の電極板の未捲回部分に張力が掛からず、この未捲回部分(完成された捲回電極体の外周近傍に配置される部分)で巻きズレが大きく生じる。この巻きズレの大きさは、電極板の湾曲量の大きさに関連していること(具体的には、電極板の湾曲量が大きいほど、未捲回部分の巻きズレが大きくなる)ことが判ってきた。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、捲回工程のうち残巻き工程で生じ得る電極板の巻きズレを適切に抑制できる捲回電極体の製造方法、及び、捲回電極体を備える蓄電デバイスの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、各々帯状をなす第1セパレータ、負極板、第2セパレータ及び正極板を重ねて捲回してなる捲回電極体の製造方法であって、巻き芯の周りに、上記第1セパレータ、上記負極板、上記第2セパレータ及び上記正極板を重ねて捲回する捲回工程を備え、上記捲回工程は、切断により上記正極板及び上記負極板のいずれか一方の複数の電極板となる切断前の長尺の長尺電極板について、搬送中の上記長尺電極板の幅方向位置が基準幅方向位置となるように、上記長尺電極板の上記幅方向位置を制御しつつ捲回する本巻き工程と、上記長尺電極板を上記電極板の巻き終わり端で幅方向に切断し上記電極板を切り出す切断工程と、切断された上記電極板の未捲回部分を巻き取る残巻き工程と、を有し、上記本巻き工程後、上記切断工程前に、上記本巻き工程における上記幅方向位置の制御に代えて、当該電極板の湾曲量に基づいて、上記残巻き工程において上記未捲回部分の上記幅方向位置が上記基準幅方向位置となるように、上記長尺電極板の前記幅方向位置を調整する位置調整工程を更に有する捲回電極体の製造方法である。
【0008】
上述の捲回電極体の製造方法では、本巻き工程後、切断工程前の位置調整工程において、当該電極板の湾曲量に基づいて、残巻き工程で電極板の未捲回部分の幅方向位置が基準幅方向位置となるように、長尺電極板の幅方向位置を予め調整しておく。これにより、残巻き工程では、電極板の未捲回部分の幅方向位置を基準幅方向位置としつつ、未捲回部分を巻き取ることができるので、未捲回部分における電極板の巻きズレを適切に抑制できる。
【0009】
なお、長尺電極板や電極板の「幅方向位置」とは、長尺電極板等のうち、幅方向の一端縁、幅方向の中央など、幅方向の特定位置をいう。また長尺電極板等の幅方向位置を検知する手法としては、例えば、レーザを利用して幅方向位置を検知する手法や、カメラを利用して幅方向位置を検知する手法などが挙げられる。
本巻き工程において、長尺電極板の幅方向位置が基準幅方向位置となるように長尺電極板の幅方向位置を制御する手法としては、例えば、長尺電極板を搬送する位置調整ロールを、そのロール軸線方向に移動(スライド)させたり、位置調整ロールの傾きを変えることにより、長尺電極板の幅方向位置を移動させて、幅方向位置を基準幅方向位置とする手法が挙げられる。
捲回工程で用いる電極板の「湾曲量」は、実際に測定された実測湾曲量でもよいし、推定された推定湾曲量でもよい。
【0010】
(2)更に(1)に記載の捲回電極体の製造方法であって、前記本巻き工程は、前記長尺電極板の幅方向位置を調整する位置調整機構を用いて行い、前記位置調整工程は、上記位置調整機構を用いて行う捲回電極体の製造方法とすると良い。
【0011】
上述の捲回電極体の製造方法では、本巻き工程を位置調整機構を用いて行うと共に、位置調整工程も、本巻き工程で利用する位置調整機構を用いて行うので、位置調整工程を行うための装置等を別途必要としない。
【0012】
(3)更に(1)または(2)に記載の捲回電極体の製造方法であって、前記位置調整工程は、前記電極板の前記湾曲量として、上記電極板の推定された推定湾曲量を用いて、前記長尺電極板の幅方向位置を調整する捲回電極体の製造方法とすると良い。
【0013】
捲回工程で用いる個々の電極板の湾曲量を実際に測定するのは、測定精度や生産コストの観点から難しい場合がある。これに対し、上述の製造方法では、当該電極体について実際に測定された実測湾曲量ではなく、推定された推定湾曲量を用いるので、当該電極体の実測湾曲量を得る必要がない。
【0014】
(4)更に(3)に記載の捲回電極体の製造方法であって、前記長尺電極板は、上記長尺電極板を予めロール状に巻き取った電極ロールから巻き出し、前記捲回工程は、上記電極ロールの巻き出し当初から、当該捲回工程で用いる部分まで巻き出した、上記長尺電極板の巻き出し長さを検知する巻出長検知工程と、検知した上記巻き出し長さと、上記長尺電極板のうち、上記電極ロールの最内周に位置する最内周部における湾曲量である最内周湾曲量と、上記長尺電極板のうち、上記電極ロールの当初の最外周に位置する最外周部における湾曲量である最外周湾曲量とに基づいて、当該捲回工程で用いる上記電極板の湾曲量を推定して前記推定湾曲量を得る湾曲量推定工程と、を有する捲回電極体の製造方法とすると良い。
【0015】
長尺電極板をロール状に巻き取った電極ロールでは、内周側と外周側とで長尺電極板の湾曲量が異なる。具体的には、長尺電極板の湾曲量は、最内周で最も小さく、外周ほど大きく、最外周で最も大きいことが判ってきた。長尺電極板をロール状に巻き取る際や、電極ロールの保存期間中における経時的な変化により、電極ロールの外周ほど長尺電極板の湾曲量が大きくなると考えられる。従って、同じ電極ロールから長尺電極板を巻き出して切断した電極板同士でも、電極板毎に湾曲量が異なる。
【0016】
これに対し、上述の捲回電極体の製造方法では、長尺電極板の電極ロールからの巻き出し長さを検知して、この巻き出し長さと、長尺電極板の最内周部の最内周湾曲量と、長尺電極板の最外周部の最外周湾曲量とに基づいて、当該捲回工程で用いる電極板の湾曲量を推定する。これにより、個々の電極板の湾曲量を適切に推定できるので、この推定湾曲量を用いて位置調整工程を行うことで、残巻き工程で生じ得る電極板の巻きズレを、より適切に抑制できる。
【0017】
なお、「巻き出し長さ」は、例えば、電極ロールから長尺電極板を巻き出し始めた時点からの電極ロールの回転角度に基づいて算出できる。また巻き出し長さは、長尺電極板の搬送速度と、電極ロールから長尺電極板を巻き出し始めた時点からの長尺電極板の搬送時間とに基づいて算出することもできる。
「最内周湾曲量」には、長尺電極板を電極ロールとして巻き取り始める前に予め測定した、長尺電極板の巻き取り始め部における湾曲量を用いるのが好ましい。
また「最外周湾曲量」には、捲回工程を行うのに先立って測定した、電極ロールから最初に巻き出した長尺電極板の巻き出し始め部における湾曲量を用いるのが好ましい。
【0018】
(5)また他の態様は、各々帯状をなす第1セパレータ、負極板、第2セパレータ及び正極板を重ねて捲回してなる捲回電極体を備える蓄電デバイスの製造方法であって、(1)~(4)のいずれかに記載の捲回電極体の製造方法により、上記捲回電極体を製造する電極体製造工程と、上記捲回電極体を用いて、上記蓄電デバイスを組み立てるデバイス組立工程と、を備える蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0019】
上述の蓄電デバイスの製造方法では、電極体製造工程で未捲回部分における電極板の巻きズレが抑制された捲回電極体を形成できるので、未捲回部分における電極板の巻きズレが抑制された捲回電極体を備えた蓄電デバイスを製造できる。
【0020】
なお、「蓄電デバイス」としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の二次電池や、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタ、全固体電池などが挙げられる。また蓄電デバイスは、捲回電極体を単数備えていても複数備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】実施形態に係り、捲回電極体の製造方法を含む電池の製造方法のフローチャートである。
【
図5】実施形態に係り、捲回工程を行う捲回装置の説明図である。
【
図6】実施形態に係り、(a)は本巻き工程において長尺正極板を捲回する様子を示す説明図であり、(b)は残巻き工程において切断済みの正極板の未捲回部分を巻き取る様子を示す説明図である。
【
図7】実施形態に係り、長尺正極板の幅方向位置の調整を示す説明図である。
【
図8】実施形態に係り、正極ロールの説明図である。
【
図10】正極ロールをなす長尺正極板の巻き出し長さLと湾曲量Wとの関係を示すグラフである。
【
図11】変形形態に係り、長尺正極板の幅方向位置の調整を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施形態に係る電池(蓄電デバイス)1の斜視図を、
図2に電池1が備える捲回電極体20の斜視図を、
図3に捲回電極体20の展開図を示す。なお、以下では、電池1の電池高さ方向AH、電池幅方向BH及び電池厚み方向CHを、
図1に示す方向と定めて説明する。この電池1は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型(直方体状)で密閉型のリチウムイオン二次電池である。
【0023】
電池1は、ケース10と、ケース10内に収容された扁平状の捲回電極体20と、ケース10のケース上部11にそれぞれ支持された正極端子40及び負極端子50等から構成されている。捲回電極体20は、ケース10内で、絶縁フィルムからなる袋状の図示しない絶縁ホルダに覆われている。またケース10内には、電解液3が収容されており、その一部は捲回電極体20内に含浸され、残りはケース10のケース底部12上に溜まっている。
【0024】
このうちケース10は、金属(本実施形態ではアルミニウム)からなる直方体箱状であり、電池高さ方向AHの上側AH1に矩形環状の開口部15cを有する有底角筒状の本体部材15と、開口部15cを閉塞する形態で本体部材15に全周にわたりレーザ溶接された矩形板状の蓋部材16とから構成されている。
ケース上部11をなす蓋部材16には、ケース10の内圧が開弁圧を超えたときに破断して開弁する安全弁17が設けられている。またケース上部11には、ケース10の内外を連通する注液孔16kが設けられており、アルミニウムからなる円板状の封止部材18で気密に封止されている。
【0025】
更にケース上部11のうち、電池幅方向BHの一方側BH1の端部近傍には、アルミニウムからなる正極端子40が、樹脂部材45を介してケース上部11と絶縁された状態で固設されている。この正極端子40は、ケース10内で、捲回電極体20のうち正極板21の集電部21dに接続し導通する一方、ケース上部11を貫通して電池外部まで延びている。
またケース上部11のうち、電池幅方向BHの他方側BH2の端部近傍には、銅からなる負極端子50が、樹脂部材55を介してケース上部11と絶縁された状態で固設されている。この負極端子50は、ケース10内で、捲回電極体20のうち負極板25の集電部25dに接続し導通する一方、ケース上部11を貫通して電池外部まで延びている。
【0026】
次に捲回電極体20について説明する。この捲回電極体20は、帯状の第1セパレータ31と、帯状の負極板(電極板)25と、帯状の第2セパレータ35と、帯状の正極板(電極板)21とを重ねて円筒状に捲回した後に、扁平状にプレスしたものである。捲回電極体20は、横倒しの状態でケース10内に収容されている。
第1セパレータ31及び第2セパレータ35は、それぞれ樹脂製の多孔質膜からなる。
【0027】
正極板21は、帯状のアルミニウム箔からなる集電箔22を有する。この集電箔22の両主面上には、それぞれリチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極活物質粒子を含む活物質層23が帯状に形成されている。正極板21のうち、集電箔22上に活物質層23が形成された部位が、活物質部21cである。一方、正極板21のうち、幅方向EHの片方の端部は、集電箔22上に活物質層23が存在せず、集電箔22が露出した集電部21dとなっている。この集電部21dは、捲回電極体20の電池幅方向BHの一方側BH1に渦巻き状をなして突出しており、前述のように正極端子40と接続している。
【0028】
負極板25は、帯状の銅箔からなる集電箔26を有する。この集電箔26の両主面上には、それぞれリチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質粒子を含む活物質層27が帯状に形成されている。負極板25のうち、集電箔26上に活物質層27が形成された部位が、活物質部25cである。一方、負極板25のうち幅方向EHの片方の端部は、集電箔26上に活物質層27が存在せず、集電箔26が露出した集電部25dとなっている。この集電部25dには、捲回電極体20の電池幅方向BHの他方側BH2に渦巻き状をなして突出しており、前述のように負極端子50と接続している。
【0029】
次いで捲回電極体20の製造方法、この捲回電極体20を用いた電池1の製造方法について説明する(
図4~
図10参照)。
まず「電極体製造工程S1」(
図4参照)において、捲回電極体20(
図2参照)を製造する。具体的には、まず、正極ロール(電極ロール)21R(
図8及び
図5参照)と、負極ロール(電極ロール)25Rと、第1セパレータロール31Rと、第2セパレータロール35Rとをそれぞれ用意する。
【0030】
正極ロール21Rは、切断により複数の正極板21(長さ約4m)となる長尺の長尺正極板(長尺電極板)21Z(長さ約4000m)を予めロール状に巻き取ったものである。また負極ロール25R(長さ約4m)は、切断により複数の負極板25となる長尺の長尺負極板(長尺電極板)25Z(長さ約4000m)を予めロール状に巻き取ったものである。また第1セパレータロール31Rは、切断により複数の第1セパレータ31(長さ約4m)となる長尺の長尺第1セパレータ31Z(長さ約4000m)を予めロール状に巻き取ったものである。また第2セパレータロール35Rは、切断により複数の第2セパレータ35(長さ約4m)となる長尺の長尺第2セパレータ35Z(長さ約4000m)を予めロール状に巻き取ったものである。なお、以下では、「長尺正極板21Z」を「長尺電極板21Z」、「長尺負極板25Z」を「長尺電極板25Z」、「正極板21」を「電極板21」、「負極板25」を「電極板25」と言うことがある。
【0031】
ここで、電極板21,25(長尺電極板21Z,25Z)の湾曲について説明する(
図9参照)。電極板21,25は、前述のように、集電箔22,26の両主面上に活物質層23,27が形成された活物質部21c,25cと、集電箔22,26のみからなる集電部21d,25dとを有する。電極板21,25は、活物質層23,27の密度を高めるためにロールプレスされている。このロールプレスの際、集電箔22,26のうち、活物質部21c,25cをなす部位は、ロールプレスにより圧延されて長手方向DHに延びるが、集電部21d,25dをなす部位は、活物質層23,27が存在せず、プレス圧が殆ど掛からないため、殆ど延びない。このため、ロールプレスされた電極板21,25は、幅方向EHに湾曲している。更に長尺電極板21Z,25Zをロール状に巻き取って電極ロール21R,25Rを形成する際に掛かる張力や、巻取り状態の電極ロール21R,25Rの保存期間中に掛かる張力による経時的な変化により、電極ロール21R,25Rの外周ほど、長尺電極板21Z,25Zの湾曲量Wが大きくなることが判ってきた。
【0032】
本実施形態では、電極板21,25(長尺電極板21Z,25Z)の湾曲量Wを、以下のように規定する。即ち、電極板21,25の長手方向DHに所定の間隔で並んだ3つのエッジ位置(エッジ位置A、エッジ位置C、エッジ位置B)について、エッジ位置Aからエッジ位置Bまでの長手方向DHの長さを長手方向長さa、エッジ位置Aとエッジ位置Bとを結ぶ仮想直線D(
図9中に破線で示す)から、エッジ位置Cまでの幅方向EHの距離を幅方向ズレ量bとし、長手方向長さaに対する幅方向ズレ量bを、湾曲量W(=b/a)とする。例えば、長手方向長さa=2000mm、幅方向ズレ量b=2.0mmの場合、湾曲量W=2.0/2000=0.0010となる。
【0033】
電極体製造工程S1では、まず「捲回工程S11」(
図4参照)において、円筒状の巻き芯111の周りに、第1セパレータ31、負極板25、第2セパレータ35及び正極板21を、この順に重ねて円筒状に捲回して、円筒捲回電極体20Yを形成する。この捲回工程S11は、捲回装置100(
図5~
図7参照)を用いて行う。捲回装置100は、第1セパレータ供給部101と、負極板供給部102と、第2セパレータ供給部103と、正極板供給部104と、巻取部110とを備える。
【0034】
このうち各供給部(第1セパレータ供給部101、負極板供給部102、第2セパレータ供給部103及び正極板供給部104)には、前述の各ロール(第1セパレータロール31R、負極ロール25R、第2セパレータロール35R及び正極ロール21R)が取り付けられる。各供給部は、各ロールから、各長尺部材(長尺第1セパレータ31Z、長尺負極板25Z、長尺第2セパレータ35Z及び長尺正極板21Z)を、それぞれ巻取部110に向けて送り出すように構成されている。また各供給部から巻取部110に至る各長尺部材の搬送経路には、それぞれ各長尺部材を搬送する複数の搬送ローラ(不図示)が設けられている。
一方、巻取部110には、巻き芯111が取り付けられる。巻取部110は、この巻き芯111の周りに、第1セパレータ31(長尺第1セパレータ31Z)、負極板25(長尺負極板25Z)、第2セパレータ35(長尺第2セパレータ35Z)及び正極板21(長尺正極板21Z)を重ねて巻き取るように構成されている。
【0035】
また捲回装置100は、各供給部(第1セパレータ供給部101、負極板供給部102、第2セパレータ供給部103及び正極板供給部104)と巻取部110との間に、それぞれ切断部(第1セパレータ切断部121、負極板切断部122、第2セパレータ切断部123及び正極板切断部124)を備える。これらの切断部は、それぞれ各長尺部材(長尺第1セパレータ31Z、長尺負極板25Z、長尺第2セパレータ35Z及び長尺正極板21Z)をそれらの幅方向に切断して、各部材(第1セパレータ31、負極板25、第2セパレータ35及び正極板21)を切り出すように構成されている。
【0036】
更に捲回装置100は、長尺正極板21Z(正極板21)の搬送経路に、エッジセンサ130と、位置調整機構140と、巻出長検知部150とを備える。また捲回装置100は、制御部160を備える。
このうちエッジセンサ130は、位置調整機構140よりも下流側で、正極板切断部124と巻取部110との間に設けられており、搬送中の長尺正極板21Zの幅方向EHの一端縁(エッジ)の幅方向位置Px(
図7参照)を検知する。本実施形態では、エッジセンサ130として、レーザを利用して幅方向位置Pxを検知するエッジセンサを用いている。なお、エッジセンサ130の設置位置は、上記に限定されず、例えば、エッジセンサ130を、位置調整機構140と正極板切断部124との間や、位置調整機構140よりも上流側(位置調整機構140と正極板供給部104との間)に設けることもできる。またエッジセンサ130として、カメラを利用して幅方向位置Pxを検知するエッジセンサを用いてもよい。
【0037】
位置調整機構140は、正極板供給部104と正極板切断部124との間に設けられている(
図5参照)。位置調整機構140は、長尺正極板21Zを搬送しつつ、長尺正極板21Zの幅方向位置Pxを調整する(
図7参照)。本実施形態の位置調整機構140は、ロール軸線RXの傾きを変更可能に構成された位置調整ロール141を有している。そして、この位置調整ロール141の傾きを変更することにより、長尺正極板21Zの幅方向位置Pxを調整できる。
【0038】
巻出長検知部150は、正極板供給部104の近傍に設けられている(
図5参照)。この巻出長検知部150は、正極ロール21Rの巻き出し当初から、当該捲回工程S11で用いる部分まで巻き出した、長尺正極板21Zの巻き出し長さLを検知するように構成されている。本実施形態では、正極ロール21Rから長尺正極板21Zの巻き出しを始めた時点からの正極ロール21Rの回転角度θに基づいて、巻き出し長さLを算出する。なお、長尺正極板21Zの搬送速度と、正極ロール21Rから長尺正極板21Zの巻き出しを始めた時点からの搬送時間とに基づいて、巻き出し長さLを算出する構成を採用してもよい。
【0039】
制御部160は、図示しないCPU、ROM及びRAMを含み、ROM等に記憶された所定の制御プログラムによって作動するマイクロコンピュータを有する。制御部160には、エッジセンサ130、位置調整機構140、巻出長検知部150などが接続されており、エッジセンサ130及び巻出長検知部150からそれぞれ入力された検出信号に基づいて、位置調整機構140における位置調整ロール141の傾きを制御する。具体的な制御方法については後述する。
【0040】
次に上述の捲回装置100を用いた捲回工程S11について説明する。捲回工程S11のうち「本巻き工程S111」(
図4参照)では、搬送中の長尺正極板21Zの幅方向位置Pxが基準幅方向位置Psとなるように、長尺正極板21Zの幅方向位置Pxを制御しつつ、長尺正極板21Z等を捲回する(
図5、
図6(a)及び
図7参照)。
【0041】
具体的には、搬送中の長尺正極板21Zの幅方向位置Pxを検知し、この検知した幅方向位置Pxに基づいて、幅方向位置Pxが予め定めた基準幅方向位置Psとなるように、長尺正極板21Zの幅方向位置Pxを制御しつつ捲回する。詳細には、制御部160には、基準幅方向位置Psが記憶されているので、エッジセンサ130により検知された長尺正極板21Zの幅方向位置Pxと基準幅方向位置Psとの差分(Px-Ps)を求める。そして、この差分(Px-Ps)の大きさに基づいて、幅方向位置Pxが基準幅方向位置Psとなるように、位置調整機構140において位置調整ロール141の傾きを変化させて(
図7参照)、長尺正極板21Zの幅方向位置Pxを制御(PID制御)する。
このようにして本巻き工程S111を行うことで、長尺正極板21Zの幅方向位置Pxを基準幅方向位置Psとしながら、長尺正極板21Zを長尺負極板25Z等と共に巻き芯111に捲回できるので、本巻き工程S111における長尺正極板21Zの巻きズレを適切に抑制できる。
【0042】
続いて、「切断工程S115」(
図4参照)を行う直前に「位置調整工程S114」を行う。この位置調整工程S114では、上述の本巻き工程S111における長尺正極板21Zの幅方向位置Pxの制御に代えて、後述する残巻き工程S116に備えて長尺正極板21Zの幅方向位置Pxを調整する(
図5及び
図7参照)。即ち、当該捲回工程S11で用いる正極板21の湾曲量Wに基づいて、残巻き工程S116で、切断された正極板21の未捲回部分21fの幅方向位置Pxが基準幅方向位置Psとなるように、長尺正極板21Zの幅方向位置Pxを調整する。
【0043】
この位置調整工程S114に先立ち、「巻出長検知工程S112」(
図4参照)では、巻出長検知部150により(
図5参照)、正極ロール21Rの巻き出し当初から、当該捲回工程S11で用いる部分まで巻き出した、長尺正極板21Zの巻き出し長さLを検知する。例えば、長さ約4000mの長尺正極板21Zを巻き取った正極ロール21Rから、4分の1の長尺正極板21Zが巻き出された状態では、巻き出し長さL=1000mと検知される。
【0044】
続いて「湾曲量推定工程S113」(
図4参照)では、制御部160において(
図5参照)、当該捲回工程S11で用いる正極板21の湾曲量Wを推定して推定湾曲量Wnを得る。具体的には、正極ロール21Rを捲回装置100に取り付けるのに先立ち、長尺正極板21Zのうち、正極ロール21Rの最内周に位置する最内周部21Za(
図8参照)における湾曲量Wである最内周湾曲量Waと、長尺正極板21Zのうち、正極ロール21Rの当初の最外周に位置する最外周部21Zbにおける湾曲量Wである最外周湾曲量Wbとをそれぞれ測定しておく。
【0045】
本実施形態では、最内周湾曲量Waは、ロールプレス後の長尺正極板21Zを正極ロール21Rとして巻き取り始める前に、長尺正極板21Zの巻き取り始め部における湾曲量Wを実際に測定し、この湾曲量Wを最内周部21Zaの最内周湾曲量Waとしている。具体的には、長尺正極板21Zの巻き取り始め部について、長手方向長さa=2000mmにおける幅方向ズレ量bを測定し(
図9参照)、最内周湾曲量WaをWa=b/aにより求める。例えば、幅方向ズレ量b=0.5mmの場合、最内周湾曲量Wa=0.5/2000=0.00025となる。
【0046】
また最外周湾曲量Wbは、捲回装置100に正極ロール21Rを取り付ける直前に、正極ロール21Rから最初に巻き出した長尺正極板21Zの巻き出し始め部における湾曲量Wを実際に測定し、この湾曲量Wを最外周部21Zbの最外周湾曲量Wbとしている。具体的には、長尺正極板21Zの巻き出し始め部について、長手方向長さa=2000mmにおける幅方向ズレ量bを測定し(
図9参照)、最外周湾曲量WbをWb=b/aにより求める。例えば、幅方向ズレ量b=3.0mmの場合、最内周湾曲量Wa=3.0/2000=0.0015となる。
そして、捲回装置100を用いて捲回工程S11を行うのに先立ち、上述の最内周湾曲量Wa及び最外周湾曲量Wbの各値(上の例では、Wa=0.00025、Wb=0.0015)を捲回装置100に入力し、これらの値を制御部160に記憶させておく。
【0047】
湾曲量推定工程S113では、制御部160において、巻出長検知部150で検知された長尺正極板21Zの巻き出し長さLと、予め制御部160に記憶させておいた最内周湾曲量Wa及び最外周湾曲量Wbとに基づいて、当該捲回工程S11で用いる正極板21の湾曲量Wを推定し、推定湾曲量Wnを得る。
具体的には、本実施形態では、最内周湾曲量Wa及び最外周湾曲量Wbの各値が異なる複数の正極ロール21Rを用いて、予め予備実験を行うことにより、長尺正極板21Zの巻き出し長さLと湾曲量Wとの関係式(近似曲線)REを得ておく(
図10参照)。そして、この関係式REに、巻き出し長さL、最内周湾曲量Wa及び最外周湾曲量Wbをそれぞれ代入することで、当該正極板21の推定湾曲量Wnを算出する。例えば、巻き出し長さL=1000mにおいて、推定湾曲量Wn=0.00075と求まる。
【0048】
位置調整工程S114では、この推定湾曲量Wnに基づいて、後述する残巻き工程S116における正極板21の未捲回部分21fの巻きズレを抑制するべく、長尺正極板21Zの幅方向位置Pxを調整する。具体的には、推定湾曲量Wnの大きさに基づいて、位置調整機構140において位置調整ロール141の傾きを変化させて(
図7参照)、長尺正極板21Zの幅方向位置Pxを調整する。なお、推定湾曲量Wnの大きさに対して、位置調整ロール141の傾きをどの程度変化させるかは、予め予備実験を行って適切な値を得ておく。
【0049】
続いて「切断工程S115」(
図4参照)において、長尺正極板21Zを正極板21の巻き終わり端21eで幅方向EHに切断し正極板21を切り出す(
図6(b)及び
図5参照)。また正極板21の巻き終わり端21eよりも負極板25の巻き終わり端が長くなるように、負極板切断部122により長尺負極板25Zを切断し負極板25を切り出す。更に負極板25の巻き終わり端よりも第1セパレータ31及び第2セパレータ35の巻き終わり端がそれぞれ長くなるように、第1セパレータ切断部121により長尺第1セパレータ31Zを切断し第1セパレータ31を切り出すと共に、第2セパレータ切断部123により長尺第2セパレータ35Zを切断し第2セパレータ35を切り出す。
【0050】
続いて「残巻き工程S116」(
図4参照)において、切断された正極板21の未捲回部分21fを、第1セパレータ31の未捲回部分31f、負極板25の未捲回部分25f、第2セパレータ35の未捲回部分35fと共に巻き取る(
図6(b)及び
図5参照)。その際、前述の位置調整工程S114において、この残巻き工程S116に備えて長尺正極板21Zの幅方向位置Pxが予め調整されているため、残巻き工程S116で正極板21の未捲回部分21fで巻きズレが生じるのを抑制できる。
なお、円筒捲回電極体20Yの巻き終わった後には、図示しない粘着テープにより、円筒捲回電極体20Yの最外周に位置する第1セパレータ31の巻き終わり端を、円筒捲回電極体20Yに固定する。
【0051】
次に電極体製造工程S10の「プレス工程S12」(
図4参照)において、捲回装置100から取り出した円筒捲回電極体20Yを、図示しないプレス装置を用いて、プレスし潰して、扁平状の捲回電極体20(
図2参照)を形成する。
【0052】
次に「デバイス組立工程S2」(
図4参照)において、上述の捲回電極体20を用いて、電池1を組み立てる。まず蓋部材16、正極端子40及び負極端子50を用いたインサート成形により、樹脂部材45,55を成形して、蓋部材16に樹脂部材45,55を介して正極端子40及び負極端子50を固設する(
図1参照)。次にこの正極端子40及び負極端子50を、捲回電極体20の正負の集電部21d,25dにそれぞれ超音波溶接する。
【0053】
次にこの捲回電極体20を袋状の図示しない絶縁ホルダで包んで、これらを本体部材15内に挿入し、蓋部材16で本体部材15の開口部15cを塞ぐ。そして、本体部材15の開口部15cと蓋部材16とを全周にわたりレーザ溶接して、ケース10を形成する。
次に電解液3を注液孔16kを通じてケース10内に注液し、電解液3を捲回電極体20内に含浸させる。その後、注液孔16kを外部から封止部材18で覆い、封止部材18をケース10にレーザ溶接する。その後は、この電池1について、初充電やエージング、各種検査等を行う。かくして、電池1が完成する。
【0054】
以上で説明したように、捲回電極体20の製造方法では、本巻き工程S111の後、切断工程S115の前の位置調整工程S114において、捲回工程S11で用いる正極板21の湾曲量Wに基づいて、残巻き工程S116で正極板21の未捲回部分21fの幅方向位置Pxが基準幅方向位置Psとなるように、長尺正極板21Zの幅方向位置Pxを予め調整している。これにより、残巻き工程S116では、正極板21の未捲回部分21fの幅方向位置Pxを基準幅方向位置Psとしつつ、未捲回部分21fを巻き取ることができるので、未捲回部分21fにおける正極板21の巻きズレを適切に抑制できる。
【0055】
更に本実施形態では、本巻き工程S111を位置調整機構140を用いて行うと共に、位置調整工程S114も、本巻き工程S111で利用する位置調整機構140を用いて行うので、位置調整工程S114を行うための装置等を別途必要としない。
また本実施形態では、当該捲回工程S11で用いる個々の正極板21について、実際に測定された実測湾曲量Wrではなく、推定された推定湾曲量Wnを用いているので、当該正極板21の実測湾曲量Wrを得る必要がない。
【0056】
また本実施形態では、長尺正極板21Zの正極ロール21Rからの巻き出し長さLを検知して、この巻き出し長さLと、長尺正極板21Zの最内周部21Zaの最内周湾曲量Waと、長尺正極板21Zの最外周部21Zbの最外周湾曲量Wbとに基づいて、当該捲回工程S11で用いる正極板21の湾曲量Wを推定している。これにより、個々の正極板21の湾曲量Wを適切に推定できるので、この推定湾曲量Wnを用いて位置調整工程S114を行うことで、残巻き工程S116で生じ得る正極板21の巻きズレを、より適切に抑制できる。
【0057】
また電池1の製造方法では、電極体製造工程S1で未捲回部分21fにおける正極板21の巻きズレが抑制された捲回電極体20を形成できるので、未捲回部分21fにおける正極板21の巻きズレが抑制された捲回電極体20を備えた電池1を製造できる。
【0058】
(変形形態)
次いで、上記実施形態の変形形態について説明する(
図11参照)。なお、実施形態と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
実施形態に係る捲回装置100の位置調整機構140では、傾きを変更可能な位置調整ロール141により、長尺正極板21Zの幅方向位置Pxを調整していた。これに対し、本変形形態に係る捲回装置200の位置調整機構240では、ロール軸線RXに沿って移動(スライド)可能な位置調整ロール241により、長尺正極板21Zの幅方向位置Pxを調整する点が異なる。
【0059】
具体的には、
図11に示すように、本変形形態の位置調整機構240は、ロール軸線RXに沿って移動可能に構成された位置調整ロール241を有している。そして、この位置調整ロール241をロール軸線RXに沿って移動させることにより、長尺正極板21Zの幅方向位置Pxを調整する。この位置調整機構240を用いて位置調整工程S114を行うことで、本変形形態でも、残巻き工程S116では、正極板21の未捲回部分21fの幅方向位置Pxを基準幅方向位置Psとしつつ、未捲回部分21fを巻き取ることができる。このため、未捲回部分21fにおける正極板21の巻きズレを適切に抑制できる。その他、実施形態と同様な部分は、実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0060】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態に即して説明したが、本発明は実施形態及び変形形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば実施形態では、残巻き工程S116における正極板21の未捲回部分21fの巻きズレを抑制するべく、長尺正極板21Zについて位置調整工程S114を行った。負極板25の集電箔26(銅箔)は、正極板21の集電箔22(アルミニウム箔)に比して、硬く変形し難いため、負極板25は、湾曲量Wが小さく、残巻き工程S116での巻きズレも小さいからである。但し、残巻き工程S116における負極板25の未捲回部分25fの巻きズレをより適切に抑制するべく、長尺負極板25Zについて位置調整工程S114を行ってもよい。
【0061】
また実施形態では、位置調整工程S114で利用する正極板21の湾曲量Wとして、正極板21の推定された推定湾曲量Wnを用いているが、正極板21の実測された実測湾曲量Wrを用いることもできる。具体的には、捲回装置100(
図5参照)の正極板供給部104と位置調整機構140との間に、複数のエッジセンサを設ける。そして、正極板供給部104の正極ロール21Rから巻き出され、位置調整機構140に向けて搬送される長尺正極板21Zのエッジ位置を検知することにより、実測湾曲量Wrを得ることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 電池(蓄電デバイス)
20 捲回電極体
20Y 円筒捲回電極体
21 正極板(電極板)
21Z 長尺正極板(長尺電極板)
21Za (長尺正極板の)最内周部
21Zb (長尺正極板の)最外周部
21R 正極ロール(電極ロール)
21e 巻き終わり端
21f 未捲回部分
25 負極板(電極板)
25Z 長尺負極板(長尺電極板)
25R 負極ロール(電極ロール)
31 第1セパレータ
35 第2セパレータ
100,200 捲回装置
S1 電極板製造工程
S11 捲回工程
S111 本巻き工程
S112 巻出長検知工程
S113 湾曲量推定工程
S114 位置調整工程
S115 切断工程
S116 残巻き工程
S2 デバイス組立工程
L 巻き出し長さ
W 湾曲量
Wa 最内周湾曲量
Wb 最外周湾曲量
Wn 推定湾曲量
Wr 実測湾曲量
Px 幅方向位置
Ps 基準幅方向位置