(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087142
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60W 20/20 20160101AFI20240624BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20240624BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20240624BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20240624BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240624BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20240624BHJP
B60L 5/24 20060101ALI20240624BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240624BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240624BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240624BHJP
B60L 50/53 20190101ALI20240624BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240624BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240624BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240624BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B60W20/20
B60K6/485 ZHV
B60K6/52
B60K6/547
B60W10/08 900
B60K17/04 G
B60K17/04 C
B60L5/24
B60L1/00 L
B60L15/20 S
B60L50/16
B60L50/53
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/12
B60M7/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201769
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】竹▲崎▼ 直人
(72)【発明者】
【氏名】糸永 薫
(72)【発明者】
【氏名】森本 宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 礼
(72)【発明者】
【氏名】東 靖之
【テーマコード(参考)】
3D039
3D202
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
3D039AA03
3D039AB12
3D039AB27
3D202AA00
3D202AA09
3D202AA10
3D202BB16
3D202BB25
3D202BB53
3D202DD18
3D202DD24
3D202DD45
3D202EE08
3D202EE28
3D202FF01
3D202FF06
5H105BA09
5H105BB06
5H105CC02
5H105CC20
5H105EE02
5H105EE13
5H125AA20
5H125AC02
5H125AC08
5H125AC12
5H125AC22
5H125BA06
5H125BA09
5H125BC12
5H125BD17
5H125CA02
5H125DD02
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】作業車両において内燃機関の燃料の消費や排気ガスの排出量を抑制すること。
【解決手段】車輪(3)を駆動する内燃機関(E)と、電力の供給時に車輪(3)を駆動する第1の電動機(124R,124L)と、駆動される車輪(3)の回転で発電する発電機(102)と、作業機(18)を駆動する第2の電動機(129)と、発電機(102)で発電された電力を蓄電可能な蓄電部(126)であって、作業機(18)の作動時に第2の電動機(129)に電力を供給すると共に、第1の電動機(124R,124L)で車輪(3)を駆動する場合に電力を供給する蓄電部(126)とを備えた作業車両。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪(3)を有する走行車体(1a)と、
燃料を燃焼させて前記車輪(3)を駆動する動力を生成する内燃機関(E)と、
電力の供給時に前記車輪(3)を駆動する動力を生成する第1の電動機(124R,124L)と、
駆動される車輪(3)の回転に基づいて発電可能な発電機(102)と、
前記走行車体(1a)に設けられて、圃場に対して作業を行う作業機(18)と、
前記作業機(18)を駆動する第2の電動機(129)と、
前記発電機(102)で発電された電力を蓄電可能な蓄電部(126)であって、前記作業機(18)の作動時に前記第2の電動機(129)に電力を供給すると共に、前記第1の電動機(124R,124L)で車輪(3)を駆動する場合に前記第1の電動機(124R,124L)に電力を供給する前記蓄電部(126)と、
を備えたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
電力の供給時に前記車輪(3)を駆動する動力を生成する第3の電動機(102)として機能する前記発電機(102)と、
前記蓄電部(126)の蓄電量(W1)が予め定められた第1の閾値(Wa)に達する場合に、前記内燃機関(E)と前記第1の電動機(124R,124L)と前記第3の電動機(102)とで前記車輪(3)を駆動させる制御部(300)と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記蓄電部(126)の蓄電量(W1)が前記第1の閾値(Wa)よりも小さい第2の閾値(Wb)に達する場合には、前記第3の電動機(102)と前記内燃機関(E)とで前記車輪(3)を駆動させ、前記蓄電部(126)の蓄電量(W1)が前記第2の閾値(Wb)よりも小さい第3の閾値(Wc)に達する場合には、前記第1の電動機(124R,124L)と前記内燃機関(E)とで前記車輪(3)を駆動させ、前記蓄電部(126)の蓄電量(W1)が前記第3の閾値(Wc)に達しない場合には、前記内燃機関(E)で前記車輪(3)を駆動させる前記制御部(300)、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記蓄電部(126)の蓄電量(W1)が前記第2の閾値(Wb)に達しない場合には、前記発電機(102)において発電させて前記蓄電部(126)に蓄電させる前記制御部(300)、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記内燃機関(E)の回転数が予め定められた回転数に達する場合には、前記発電機(102)の発電負荷を増大させる
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項6】
圃場(402)を跨いで配置されて通電された架線(403)に接触して前記架線(403)と通電可能な通電部(401)と、
前記通電部(401)を介して前記架線(403)から蓄電可能な前記蓄電部(126)と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項7】
前記圃場(402)に設けられた複数の支柱(404)のいずれかに支持された前記架線(403)であって、前記作業車両の走行経路に応じて無人航空機(406)で前記架線(403)を支持する支柱(404)が変更された前記架線(403)から電力供給が可能である
ことを特徴とする請求項6に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、田植機やトラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
田植え機やトラクタ等の作業車両において、内燃機関(7)と発電電動モータ(12)を備えた、いわゆるハイブリッド車で構成された作業車両において、内燃機関の出力軸(7a)でロータリー式耕耘機(6)に動力を伝達する構成が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-186110号公報(「0018」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の特許文献1記載の技術のように、走行輪と作業機をエンジンで駆動させる構成では、圃場の状態や作業内容によって、エンジンの負荷、出力が大きくなる。したがって、燃料の消費や排気ガスの排出量が多くなりやすく、環境に対する負荷が大きい問題がある。
【0005】
本発明は、従来の構成に比べて、作業車両において内燃機関(エンジン)の燃料の消費や排気ガスの排出量を抑制することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は次の解決手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、車輪(3)を有する走行車体(1a)と、燃料を燃焼させて前記車輪(3)を駆動する動力を生成する内燃機関(E)と、電力の供給時に前記車輪(3)を駆動する動力を生成する第1の電動機(124R,124L)と、駆動される車輪(3)の回転に基づいて発電可能な発電機(102)と、前記走行車体(1a)に設けられて、圃場に対して作業を行う作業機(18)と、前記作業機(18)を駆動する第2の電動機(129)と、前記発電機(102)で発電された電力を蓄電可能な蓄電部(126)であって、前記作業機(18)の作動時に前記第2の電動機(129)に電力を供給すると共に、前記第1の電動機(124R,124L)で車輪(3)を駆動する場合に前記第1の電動機(124R,124L)に電力を供給する前記蓄電部(126)と、を備えたことを特徴とする作業車両である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、電力の供給時に前記車輪(3)を駆動する動力を生成する第3の電動機(102)として機能する前記発電機(102)と、前記蓄電部(126)の蓄電量(W1)が予め定められた第1の閾値(Wa)に達する場合に、前記内燃機関(E)と前記第1の電動機(124R,124L)と前記第3の電動機(102)とで前記車輪(3)を駆動させる制御部(300)と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記蓄電部(126)の蓄電量(W1)が前記第1の閾値(Wa)よりも小さい第2の閾値(Wb)に達する場合には、前記第3の電動機(102)と前記内燃機関(E)とで前記車輪(3)を駆動させ、前記蓄電部(126)の蓄電量(W1)が前記第2の閾値(Wb)よりも小さい第3の閾値(Wc)に達する場合には、前記第1の電動機(124R,124L)と前記内燃機関(E)とで前記車輪(3)を駆動させ、前記蓄電部(126)の蓄電量(W1)が前記第3の閾値(Wc)に達しない場合には、前記内燃機関(E)で前記車輪(3)を駆動させる前記制御部(300)を備えたことを特徴とする請求項2に記載の作業車両である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記蓄電部(126)の蓄電量(W1)が前記第2の閾値(Wb)に達しない場合には、前記発電機(102)において発電させて前記蓄電部(126)に蓄電させる前記制御部(300)を備えたことを特徴とする請求項3に記載の作業車両である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記内燃機関(E)の回転数が予め定められた回転数に達する場合には、前記発電機(102)の発電負荷を増大させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、圃場(402)を跨いで配置されて通電された架線(403)に接触して前記架線(403)と通電可能な通電部(401)と、前記通電部(401)を介して前記架線(403)から蓄電可能な前記蓄電部(126)と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、前記圃場(402)に設けられた複数の支柱(404)のいずれかに支持された前記架線(403)であって、前記作業車両の走行経路に応じて無人航空機(406)で前記架線(403)を支持する支柱(404)が変更された前記架線(403)から電力供給が可能であることを特徴とする請求項6に記載の作業車両である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、発電機(102)で発電された電力を蓄電部(126)に蓄電して、作業機(18)の作動時に第2の電動機(129)に蓄電部(126)から電力を供給すると共に、第1の電動機(124R,124L)で車輪(3)を駆動する場合に蓄電部(126)から第1の電動機(124R,124L)に電力を供給することで、内燃機関(E)で作業機(18)と車輪(3)とを駆動する従来の構成に比べて、作業車両(1)において内燃機関(E)の燃料の消費や排気ガスの排出量を抑制することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、蓄電部(126)の蓄電量(W1)が第1の閾値(Wa)に達する場合に、内燃機関(E)と第1の電動機(124R,124L)と第3の電動機(102)とで車輪(3)を駆動することで、内燃機関(E)のみで車輪(3)を駆動する場合に比べて、内燃機関(E)の負荷を抑制でき、内燃機関(E)の燃料の消費や排気ガスの排出量を抑制することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、蓄電部(126)の蓄電量(W1)が第2の閾値(Wb)に達する場合には、第3の電動機(102)と内燃機関(E)とで前記車輪(3)を駆動させることで、第1の電動機(124R,124L)も使用する場合に比べて、蓄電量(W1)の減少が抑制される。また、蓄電量(W1)が第3の閾値(Wc)に達する場合には、第1の電動機(124R,124L)と内燃機関(E)とで車輪(3)を駆動させることで、内燃機関(E)のみで駆動する場合に比べて内燃機関(E)の負荷を抑制できる。さらに、蓄電量(W1)が第3の閾値(Wc)に達しない場合には、内燃機関(E)で車輪(3)を駆動させることで、第1の電動機(124R,124L)を使用する場合に比べて、蓄電量(W1)の減少が抑制される。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明の効果に加えて、蓄電量(W1)が第2の閾値(Wb)に達しない場合に発電機(102)で発電することで、発電しない場合に比べて、蓄電量(W1)の回復が促される。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、内燃機関(E)の回転数が予め定められた回転数に達する場合に発電機(102)の発電負荷を増大させない場合に比べて、内燃機関(E)の回転数を予め定められた回転数内にしやすく、内燃機関(E)の破損が抑制される。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、架線(403)から通電部(401)を通じて蓄電部(126)に蓄電できる。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の発明の効果に加えて、作業車両(1)の走行経路に応じて無人航空機(406)で架線(403)を架け替えることで、架線(403)を張り巡らす必要がなくなり、架線(403)を張り巡らせる費用が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は実施の形態の作業車両の一例としてのトラクタの説明図であり、作業機が作業を行う高さに下降した状態の説明図である。
【
図2】
図2は実施の形態の作業車両の一例としてのトラクタの説明図であり、作業機が上昇した状態の説明図である。
【
図3】
図3は実施の形態の作業車両のエンジンの説明図である。
【
図4】
図4は実施の形態のベルトのテンション調整機構の説明図であり、
図4(A)は側面図、
図4(B)は上面図である。
【
図5】
図5は他の形態の説明図であり、
図5(A)は
図4に示す形態の他の形態の説明図、
図5(B)はさらに他の形態の説明図である。
【
図6】
図6は
図5(A)に示す形態の変更例の説明図であり、
図6(A)はテンションローラが1つの場合の説明図、
図6(B)はテンションローラが2つの場合の説明図である。
【
図7】
図7は実施の形態の作業車両の機能ブロック図である。
【
図8】
図8は実施の形態の制御部の機能ブロック図である。
【
図9】
図9は本発明の作業車両の実施の形態の別の形態の説明図である。
【
図11】
図11は無人航空機で作業車両との間で資材を運搬する場合の説明図である。
【
図12】
図12は実施の形態の他の形態のディーゼルエンジンの斜視図である。
【
図16】
図16はレゾネータ固定用ステーの説明図であり、
図16(A)はレゾネータ固定用ステーの斜視図、
図16(B)はステーの側面図、
図16(C)は
図16(B)の状態からカプラを組み付けた状態の説明図である。
【
図19】
図19は実施の形態のエンジンオイルのオイルフィラキャップの説明図であり、
図19(A)はエンジン内圧が低い場合の説明図、
図19(B)はエンジン内圧が高い場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は実施の形態の作業車両の一例としてのトラクタの説明図であり、作業機が作業を行う高さに下降した状態の説明図である。
図2は実施の形態の作業車両の一例としてのトラクタの説明図であり、作業機が上昇した状態の説明図である。
図1、
図2において、本発明の作業車両の一例としての耕耘用のトラクタ1は、走行車体1aの前後部に車輪の一例としての前輪2,2および後輪3,3とを備え、走行車体前部のエンジンルーム4内に搭載したエンジン(内燃機関の一例)Eの回転動力をトランスミッションケース5内の変速装置によって適宜減速して、これらを前輪2,2と後輪3,3に伝えるように構成している。前記エンジンルーム4はボンネット6で覆う構成である。また、トラクタ1の機体後部には、トラクタ1の後方の地面(圃場)を耕耘する耕耘機18などの作業機を装着し、リアPTO軸21で動力が伝達されて作業機を駆動する構成としている。
なお、本明細書ではトラクタ1の前進方向に向かって左右をそれぞれ左側と右側といい、前進方向を前側、後進方向を後側という。
【0022】
走行車体1aの上部には、キャビン7が支持されている。キャビン7の内部では、トランスミッションケース5の上部位置に運転座席8が配置され、この運転座席8の前方には、ステアリングハンドル10や、駐車ブレーキ(図示せず)等が配置されている。また、運転座席8の前方には、速度メータ(図示せず)等の表示パネルや、操作用の各種スイッチ(図示せず)などが配置されている。運転座席8の前方下部には、ブレーキペダル12や、前進ペダルや後進ペダルを有するアクセルペダル13等の走行操作具が配置されている。
【0023】
図1において、トランスミッションケース5の後部上方には油圧シリンダケース14が設けられ、この油圧シリンダケース14の左右両側にはリフトアーム15,15が回動自在に枢着されている。リフトアーム15,15とロワーリンク16,16との間にはリフトロッド17,17が介装連結され、ロワーリンク16,16の後部には作業機の一例としての耕耘機18が連結されている。
【0024】
油圧シリンダケース14内に収容されている油圧シリンダ14aに作動油が供給されるとリフトアーム15,15が上昇側に回動され、リフトロッド17、ロワーリンク16等を介して作業機(耕耘機)18が上昇する。反対に油圧シリンダ14a内の作動油が油圧タンクを兼ねるトランスミッションケース5内に排出されると、リフトアーム15,15は下降する。
なお、走行車体1aの後部に装着される作業機、すなわち、リアPTO軸21から駆動が伝達される作業機としては、農作業用のロータリ耕耘装置に限定されず、プラウや播種機、苗移植機、肥料散布機、薬剤散布機等の作業機がある。
【0025】
図3は実施の形態の作業車両のエンジンの説明図である。
図3において、実施の形態のエンジンEは、下端部に伝動軸であり、エンジン本体100からの出力軸であるクランクシャフト101が配置されている。クランクシャフト101の右斜め上方には、発電機の一例であって、第3の電動機の一例としてのISG(Integrated Starter Generator)モータ102が支持されている。ISGモータ102のプーリ102aと、クランクシャフト101のクランクプーリ101aとの間には、ISGベルト103が張架されており、ISGベルト103は、ISGモータ102とクランクシャフト101との間で回転を伝達する。
ISGモータ102は、通電時に動力を生成してエンジンEのスターター(始動装置、発進モータ)やクランクシャフト101の回転の補助として機能すると共に、クランクシャフト101の回転に伴って発電するオルタネータ(発電装置)としても機能可能である。
【0026】
エンジンEには、エンジン本体を冷却する冷却水が流れるウォータパイプ104が配設されている。ISGモータ102の左上方には、ウォータパイプ104の冷却水を流動させるウォータポンプ106が配置されている。
ウォータポンプ106の左下方には、ポンプ駆動モータ107が配置されている。ポンプ駆動モータ107のプーリ107aと、ウォータポンプ106のプーリ106aとの間には、ポンプ用ベルト108が張架されており、ポンプ駆動モータ107の動力がウォータポンプ106に伝達される。ポンプ駆動モータ107の出力軸には、同軸上に、油圧用のハイドロシャフト109が配置されている。ポンプ駆動モータ107とハイドロシャフト109との間には電磁クラッチ(図示せず)が配置されており、電磁クラッチの入/切に応じてポンプ駆動モータ107でハイドロシャフト109の駆動/非駆動を切り替え可能である。
【0027】
図4は実施の形態のベルトのテンション調整機構の説明図であり、
図4(A)は側面図、
図4(B)は上面図である。
各ベルト103,108は、回転数が高い状態では、張力が弱いとプーリ101a,102a,106a,107aに対して滑りが発生しやすいため、張力が強い方が望ましい。一方で、回転数が低い状態では、張力が過剰であるとベルト103,108の寿命が低下する。
これに対して、
図4に示すように、プーリ101a,102a,106a,107aのいずれか又は全てにおいて、テンション調整機構111を設けることが望ましい。テンション調整機構111は、プーリ101a,102a,106a,107aの内部の下部に形成された環状(リング状)のガイド溝112に沿って移動可能なガイドローラ113を有する。ガイドローラ113には、リンク114の一端が連結されている。リンク114は支点114aを中心に回転可能に構成されている。リンク114の他端には、ベルト103,108の外面に接触するテンションローラ116が支持されている。
【0028】
プーリ101a,102a,106a,107aが回転していない状態では、ガイドローラ113は、ガイドローラ113の自重とテンションローラ116がベルト103,108から受ける反力でガイド溝112内の重力方向下方に位置する。プーリ101a,102a,106a,107aが回転すると、ガイドローラ113が接触するプーリ101a,102a,106a,107aの回転に伴って上方に移動する。ガイドローラ113が上方に移動すると、リンク114を介してテンションローラ116がベルト103,108を厚さ方向に押して、張力が増大する。ここで、ガイドローラ113が上方に移動する高さは、プーリ101a,102a,106a,107aの回転に伴う力が大きいほど高くなる。よって、プーリ101a,102a,106a,107aの回転数が高くなるほど、ガイドローラ113の高さが高くなり、テンションローラ116がベルト103,108を押す量が大きくなり、張力が増大する。
よって、
図4に示すテンション調整機構111では、プーリ101a,102a,106a,107aの回転数に応じてベルト103,108の張力が調整され、回転数が高くなるほどベルト103,108の張力が強くなる。よって、高回転時に張力を強くしつつ、低回転時には張力を弱まることが可能であって、高回転時の滑りを抑制しつつ、ベルト103,108の寿命の低下も抑制される。
【0029】
図5は他の形態の説明図であり、
図5(A)は
図4に示す形態の他の形態の説明図、
図5(B)はさらに他の形態の説明図である。
なお、
図4に示すように、リンク114にテンションローラ116を直接支持する構成では、エンジンの回転変動やベルト103,108のバタつきの影響により、テンションローラ116もバタつきやすい。これに対応して、
図5(A)に示すように、リンク114とテンションローラ116との間に、弾性部材の一例としてのバネ117を介在させることで、バタつきの影響を抑制することも可能である。
【0030】
図6は
図5(A)に示す形態の変更例の説明図であり、
図6(A)はテンションローラが1つの場合の説明図、
図6(B)はテンションローラが2つの場合の説明図である。
図5(A)に示すように1つのバネ117でテンションローラ116を支持する形態では、テンションローラ116がベルト103,108の厚さ方向に押す形態であるが、ベルト103,108が高回転の状態ではベルト103,108の回転に連れてテンションローラ116がベルト送り方向に押されやすい。テンションローラ116がベルト送り方向に押されるとベルト103,108の張力が上昇せず、目的の張力が得られない場合がある。これに対応して、
図6(A)に示すように、2つのバネ117a,117bに角度を持たせた状態で、テンションローラ116を押す形態とすることで、テンションローラ116がベルト送り方向に押されると、バネ117a,117bの一方が縮み、他方が伸びることとなり、弾性復元力で元の位置に戻りやすい。従って、目的の張力が得られやすくなる。
【0031】
また、
図5(A)に示すように1つのバネ117でテンションローラ116を支持する形態では、ベルト103,108の長さやプーリ101a,102a,106a,107aの軸間距離等によっては共振が発生することがあり、ベルト103,108の変動、バタつきが大きくなることがある。バタつきの振幅が大きな位置がテンションローラ116の位置と重なると、テンションローラ116でベルト103,108を押すことができなくなって目的の張力が得られない場合がある。これに対応して、
図6(B)に示すように、ベルト103,108の送り方向に沿って異なる位置にテンションローラ116a,116bを設置することで、テンションローラ116a,116bの一方が振幅の大きな位置に一致してベルト103,108を押せなくても、他方でベルト103,108を押すことができ、目的の張力が得られやすくなる。特に、2つのバネ117a,117bのバネ定数を変えることで、回転の変動や固有振動(共振)を軽減する効果が高まることも期待できる。
【0032】
他にも、テンション調整機構111に替えて、
図5(B)に示すテンション調整機構111′を使用することも可能である。テンション調整機構111′では、テンションローラ116′を支持するアーム118をバネ117で押すとともに、アーム118をエンジンオイルの油圧でも押す構成とすることも可能である。エンジンEの回転数が高くなると油圧が上昇することを利用して、エンジンEの回転数に応じて適切な張力にテンション調整機構111′で調整することも可能である。
【0033】
図7は実施の形態の作業車両の機能ブロック図である。
図7において、エンジンEのクランクシャフト101の動力は、変速装置の一例としてのHST(Hydraulic Static Transmission:静油圧式無段変速機)121に伝達される。HST121で変速された回転は、フロントギアケース122に入力される。フロントギアケース122に入力された動力は、左右の前輪2,2に伝達される。また、フロントギアケース122に入力された動力は、左後輪ギアケース123Lと、右後輪ギアケース123Rに伝達される。各後輪ギアケース123R,123Lには、それぞれ、第1の電動機の一例としての走行モータ124R,124Lからも動力が伝達可能に構成されている。各後輪ギアケース123R,123Lの出力は左右の後輪3,3にそれぞれ伝達される。実施の形態のトラクタ1では、旋回時の内外輪差に対応するために、旋回の外側の車輪の回転数が多くなるように、左右の後輪3,3を独立して駆動させる。
【0034】
なお、実施の形態のトラクタ1では、左右の後輪3,3に対応して、それぞれ走行モータ124R,124Lを設ける構成を例示したが、これに限定されない。1つのモータで2つの後輪3,3を駆動する構成にも適用可能である。ただ、同じモータ容量を使用する場合、左右に個別に走行モータ124R,124Lを設けたほうが後輪3,3をよりパワフルに駆動できるメリットがあり、後輪3,3のトルクを同じにするのであれば、個別に走行モータ124R,124Lを設けたほうが小型のモータを採用可能であり、コストメリットもある。
【0035】
ISGモータ102は、蓄電部の一例としての高圧バッテリ126や低圧バッテリ127に電気的に接続されている。従って、ISGモータ102を発電モードで使用する場合には、発電された電気で各バッテリ126,127が充電、蓄電可能であると共に、ISGモータ102を走行モードで使用する場合には、高圧バッテリ126から電力の供給が可能である。
実施の形態では低圧バッテリ127は、前記ポンプ駆動モータ107や照明、表示パネル等の電気機器へ給電を行う。また、低圧バッテリ127と高圧バッテリ126との間には、変圧器の一例としてのDCDCコンバータ128が接続されており、低圧バッテリ127と高圧バッテリ126との間で電力の融通が可能に構成されている。
【0036】
実施の形態の高圧バッテリ126は、前記走行モータ124R,124Lに電気的に接続されており、走行モータ124R,124Lの使用時に電力を供給可能である。走行モータ124R,124Lは電力の供給時に、後輪3,3を駆動する動力を生成する。また、高圧バッテリ126は、第2の電動機の一例としての作業機モータ129に電気的に接続されており、作業機モータ129の使用時に電力を供給可能である。作業機モータ129は、作動時にリアPTO軸21を回転させる動力を生成し、作業機の一例としての耕耘機18を作動させる。
【0037】
(制御部の説明)
図8は実施の形態の制御部の機能ブロック図である。
なお、
図8のブロック図において、本発明の実施の形態の説明とは関係のない要素に関しては図示および説明を省略している。
【0038】
(トラクタの制御部の説明)
実施の形態のトラクタ1は、各機能を制御する制御部300を有する。制御部300は、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、制御部300は、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、制御部300は、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、制御部300は、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。したがって、実施の形態の制御部300は、小型の情報処理装置、いわゆるマイクロコンピュータにより構成されている。よって、制御部300は、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0039】
制御部300には、残量センサSN1や回転数センサSN2、その他の図示しない各種センサや入力ボタン等の信号入力要素からの信号が入力される。
残量センサSN1は、高圧バッテリ126に蓄電されている電気の残量を検出する。
回転数センサSN2は、エンジンEの回転数を検出する。
【0040】
また、制御部300は、被制御要素の一例としてのISGモータ102、走行モータ124R,124L、HST121、作業機モータ129等に制御信号を送信して、トラクタ1の走行や耕耘機18の作動、停止を制御可能である。
【0041】
図8において、実施の形態の制御部300は、以下の機能手段(プログラムモジュール)を有する。
残量判別手段301は、残量センサSN1の検知結果に基づいて、高圧バッテリ126の電気の残量を判別する。実施の形態の残量判別手段301では、高圧バッテリ126のバッテリ残量W1が、第1の閾値の一例としての高残量値Waに達している場合(W1≧Waの場合)には、高圧バッテリ126のバッテリ残量W1が十分であると判別する。また、バッテリ残量W1が、高残量値Waに達せず、且つ、第2の閾値の一例としての中残量値Wbに達している場合(Wb≦W1<Waの場合)は、高圧バッテリ126のバッテリ残量W1が中量であると判別する。さらに、バッテリ残量W1が、中残量値Wbに達せず、且つ、第3の閾値の一例としての低残量値Wcに達している場合(Wc≦W1<Wbの場合)は、高圧バッテリ126のバッテリ残量W1が低量であると判別する。また、バッテリ残量W1が、低残量値Wcに達しない場合(W1<Wcの場合)は、高圧バッテリ126のバッテリ残量W1がほとんどないと判別する。
【0042】
なお、各閾値Wa~Wcの値は、設計や仕様等に応じて適宜設定可能であるが、一例として、高残量値Wa=80%、中残量値Wb=50%、低残量値Wc=20%と予め設定しておくことが可能である。なお、各閾値Wa~Wcは、固定値とすることも可能であるし、作業者がボタン入力等で変更可能とすることも可能である。
【0043】
回転数判別手段302は、回転数センサSN2の検知結果に基づいて、エンジンEの回転数が高回転であるかを判別する。実施の形態の回転数判別手段302は、エンジンEの回転数R1が、予め定められた高回転判別値Raに達する場合には、エンジンEが高回転状態と判別する。
【0044】
走行モード設定手段303は、高圧バッテリ126の残量に基づいて、トラクタ1の走行時のエンジンEや各走行用のモータ102,124の動作(走行モード)の設定を行う。実施の形態では、高圧バッテリ126の残量が十分な場合(W1≧Waの場合)には、走行モード設定手段303は、エンジンEとISGモータ102と走行モータ124R,124Lとで車輪2,3を駆動させる第1の走行モードに設定する。高圧バッテリ126の残量が中量の場合(Wb≦W1<Waの場合)には、走行モード設定手段303は、エンジンEとISGモータ102とで車輪2,3を駆動させる第2の走行モードに設定する。高圧バッテリ126の残量が低量の場合(Wc≦W1<Wbの場合)には、走行モード設定手段303は、エンジンEと走行モータ124R,124Lとで車輪2,3を駆動させる第3の走行モードに設定する。高圧バッテリ126の残量がほとんどない場合(W1<Wcの場合)には、走行モード設定手段303は、エンジンEで車輪2,3を駆動させる第4の走行モードに設定する。
【0045】
したがって、実施の形態では、第1の走行モードと第2の走行モードでは、ISGモータ102が走行用のモータとして機能し、第3の走行モードと第4の走行モードでは、ISGモータ102が発電機として機能して、高圧バッテリ126の充電が行われる。
なお、実施の形態では、第2の走行モードでは、ISGモータ102の駆動で全ての車輪2,3が恩恵を受けるが、第3の走行モードでは走行モータ124R,124Lの駆動で後輪3,3しか恩恵を受けられない。したがって、第2の走行モードの方が第3の走行モードよりもパワフルに駆動可能である。
【0046】
負荷設定手段304は、エンジンEの回転数に基づいて、ISGモータ102を発電機として機能させる際の負荷を設定する。負荷設定手段304は、エンジンEの回転数が高回転状態と判別された場合に、発電負荷を高負荷状態とする。例えば、トラクタ1が下り傾斜の走行中に自重で速度が上昇し、エンジンEの回転数が上昇した場合には、ISGモータ102を発電機として機能させると共に、発電時の電気抵抗(負荷)を重くする(図示しない可変抵抗の抵抗値を大きくする)ことで、ISGモータ102をいわばブレーキとしても機能させて減速させて、エンジンEの回転数を抑制する。
【0047】
前記構成を備えた実施の形態のトラクタ1では、耕耘機18を作動させる場合には、従来構成のようにエンジンEの動力を使用せず、高圧バッテリ126を電源とした作業機モータ129により耕耘機18が作動する。したがって、エンジンでPTO軸を駆動する従来の構成に比べて、エンジンEへの負荷が減少し、エンジンEでの燃料の消費や排気ガスの排出を抑制することが可能である。
また、高圧バッテリ126の残量が十分な場合、トラクタ1の走行時に第1の走行モードで走行される。すなわち、エンジンEだけでなく、ISGモータ102と走行モータ124R,124Lとでパワーアシストされた状態で走行する。したがって、エンジンEの負荷が減少し、燃料や排気ガスが抑制される。
【0048】
さらに、高圧バッテリ126の残量が中量の場合、トラクタ1の走行時に第2の走行モードで走行される。すなわち、エンジンEだけでなく、ISGモータ102でパワーアシストされた状態で走行する。したがって、パワーアシストされない場合に比べて、エンジンEの負荷が減少し、燃料や排気ガスが抑制されると共に、走行モータ124R,124Lも駆動される第1走行モードに比べて、走行モータ124R,124L分の電力消費がなく、高圧バッテリ126の残量の減少も抑制される。
また、高圧バッテリ126の残量が低量の場合、トラクタ1の走行時に第3の走行モードで走行される。すなわち、エンジンEだけでなく、走行モータ124R,124Lでパワーアシストされた状態で走行する。したがって、パワーアシストされない場合に比べてエンジンEの負荷が減少し、燃料や排気ガスが抑制されると共に、ISGモータ102が走行で使用される第1の走行モードや第2の走行モードに比べて、ISGモータ102で発電がおこなわれるため、高圧バッテリ126の残量の回復も促される。
【0049】
さらに、高圧バッテリ126の残量がほとんどない場合、トラクタ1の走行時に第4の走行モードで走行される。すなわち、エンジンEだけで走行する。したがって、走行モータ124R,124L分の電力消費がなく且つISGモータ102で発電が行われる状態で走行されており、高圧バッテリ126の残量の回復も促される。
また、実施の形態のトラクタ1では、エンジンEが高回転状態では、発電機としてのISGモータ102の発電負荷を重くする。したがって、例えば、トラクタ1が下り傾斜の走行中に自重で速度が上昇した場合や、エンジンオイルの入れすぎによりエンジンEが過回転した場合等でも、ISGモータ102をブレーキとしても機能させて、エンジンEの回転数を抑制可能である。よって、エンジンEの破損が防止され、トラクタ1が減速されて、事故も抑制される。
【0050】
図9は本発明の作業車両の実施の形態の別の形態の説明図である。
実施の形態のトラクタ1において、外部から電力を供給できるように、
図9に示すように、通電部の一例としてのパンタグラフ401を設けることも可能である。
図9において、キャビン7の上面にパンタグラフ401を設置し、圃場402を跨いで配置された架線403との接触で給電が可能とすることも可能である。パンタグラフ401を通じて架線403から給電されることで、各バッテリ126,127を充電することが可能である。よって、第1の走行モードで走行されやすくなったり、耕耘機18の作動時でも高圧バッテリ126の残量の減少が抑制されやすくなる。また、外部から給電可能な構成とすることで、各バッテリ126,127も容量も小さくでき、低コスト化、小型化も可能である。
【0051】
図10は架線が切り替わる形態の説明図である。
図10において、架線403は、圃場402の外縁(または圃場402内)に設置された支柱(電柱)404に架けられている。支柱404は、圃場402の外縁に沿って複数設置可能である。そして、架線403を支柱404に着脱可能な状態で架ける構成とすることも可能である。よって、架線403は、無人航空機の一例としてのドローン406で支持される支柱404を切り替え可能となる。したがって、公衆回線407を介して、トラクタ1とサーバ408との間で情報の送受信を行い、情報の送受信で得られたトラクタ1の予定の走行経路409に応じて、サーバ408からドローン406に信号を送信して、ドローン406を自動操縦し、架線403を架け替える(支持する支柱404を切り替える)ことが可能である。このようにすることで、圃場402で作業中に架線403から給電を受けられる期間が長くなり、各バッテリ126,127の残量の不安がさらに減少される。また、複数の架線403を張り巡らさなくても、1本の架線403を切り替えて電力供給することも可能である。
【0052】
図11は無人航空機で作業車両との間で資材を運搬する場合の説明図である。
作業機が肥料や農薬、薬液等を散布する作業機である場合や、作業機が苗を移植する苗移植機である場合、作業機が種をまく播種機である場合には、肥料や苗、種等の資材について、作業機の収容部分に収容される量だけでなく、補充用の資材の袋や箱等を作業車両に積み込む場合がある。袋や箱等は資材の補充が終わると、空き袋、空き箱となり、作業終了までは作業車両に保管されることとなる。ここで、圃場402が広い場合、一度の作業で全ての面積の作業を行おうとすると、多くの資材を積み込む必要があり、空き袋や空き箱用のスペースを作業車両内に確保する必要もある。
ここで、
図10に示すドローン406を使用する場合には、
図11に示すように、作業車両(トラクタ1)に対して、圃場402の外部から資材を運搬したり、作業車両から圃場402の外部に空き箱等を運搬することで、圃場402が広くても、頻繁に資材を補充するために作業を中断する必要がなくなり、空き箱等を保管するスペースも少なくて済む。また、大量の空き箱を保管する場合は空き箱を下ろすために時間や労力がかかる問題があったが、作業中にドローン406で運搬することで、作業時間も短縮可能である。さらに、大量の空き箱を積んだ状態で作業をすると、空き箱の重量分作業車両の燃費が悪化するが、ドローン406で運搬することで作業車両の燃費の向上が期待される。
【0053】
なお、ドローン406は、GNSSやカメラ等を搭載して、作業車両(のキャビンの天井等)に付与されたマーカと、圃場402外の作業補助者の位置に設置されたマーカとの間で自動操縦で移動する構成とすることが望ましい。この時、作業車両側のマーカに対して特定の位置に、空き箱等を一時的に保管する籠411を設置しておき、籠411のフック411aをドローン406で引掛けることで、ドローン406で籠411をピックアップして、運搬することが可能である。
なお、籠411のピックアップ方法は、フック411aに限定されず、例えば、籠411に永久磁石を設け、ドローン406側に電磁石を設置して、電磁石の動作/非動作で籠411を吸着/離脱させることも可能である。
【0054】
図12は実施の形態の他の形態のディーゼルエンジンの斜視図である。
図13は
図12の状態からハーネスステーを取り外した状態の説明図である。
図14はハーネスステーの説明図である。
図15は
図12の状態からDPFやレゾネータを取り外した状態の説明図である。
図16はレゾネータ固定用ステーの説明図であり、
図16(A)はレゾネータ固定用ステーの斜視図、
図16(B)はステーの側面図、
図16(C)は
図16(B)の状態からカプラを組み付けた状態の説明図である。
【0055】
図12において、実施の形態の他の形態として、トラクタ1のエンジンEとしてディーゼルエンジンE′を採用することが可能である。ディーゼルエンジンE′では、エンジン本体100の上部の前側に、清浄装置の一例としてのDPF(Diesel Particulate Filter:ディーゼル微粒子捕集フィルタ)151が配置されている。DPF151は、エンジン本体100からの排気ガスが通過する際に排気ガス中の微粒子を補修して清浄化するフィルタの機能を有する。
図12、
図13、
図15において、実施の形態のDPF151は、エンジン本体100の上部に支持されたDPFブラケット152に固定支持されている。
【0056】
また、DPF151の後側には、吸気音低減装置の一例としてのレゾネータ153が配置されている。レゾネータ153は、エンジン本体100への吸気通路上に配置されており、吸気音を低減する機能を有する。
図12、
図13、
図15において、レゾネータ153はレゾネータ固定用ステー154に固定支持されている。
図16において、レゾネータ固定用ステー154は、板状の本体部154aと、本体部154aの前方に延び且つDPFブラケット152にネジ止めされる第1の固定部154bを有する。前記本体部154aの左端には、下方に向けて延び、エンジン本体100のシリンダヘッド(図示せず)にネジ止めされる第2の固定部154cが形成されている。前記本体部154aの右後端には、下方に延び、エンジン本体100に支持されるアジャストプレート(図示せず)にネジ止めされる第3の固定部154dが形成されている。したがって、レゾネータ固定用ステー154はエンジン本体100に対して3カ所で安定して固定され、レゾネータ153の位置も安定する。
【0057】
前記本体部154aの後端には、後斜め上方に延びるハーネス支持板154eと、ハーネス支持板154eの上端に設けられたカプラ固定部154fとが形成されている。ハーネス支持板154eの後面にはハーネスタイ154gが支持されている。ハーネスタイ154gは変形可能な針金状の部材で構成されており、ハーネス155にハーネスタイ154gを巻き付けるように変形させて、ハーネス155を固定する。ハーネス155の先端に支持されたカプラ155aはカプラ固定部154fにネジ止めされる。したがって、ハーネス155がハーネスタイ154gで位置が固定され、カプラ155aの位置も安定させることができる。
【0058】
図12において、レゾネータ153とDPF151との間には、ハーネス固定部材の一例であって遮熱部材の一例としてのハーネスステー156が配置されている。
図14において、ハーネスステー156は、レゾネータ153の上側に配置される板状のステー部156aと、レゾネータ153とDPF151の隙間に差し込まれた状態で配置される板状の遮熱部156bとを有する。ステー部156aには、レゾネータ153にネジ止めされる2つの被固定孔156cが形成されている。また、ステー部156aの上面には、図示しないセンサに向けて配策される配線(ハーネス、図示せず)を支持するハーネスクリップ156dが支持されている。
【0059】
DPF151は高温の排気ガスが通過するため昇温しやすく、DPF151からの輻射熱でレゾネータ153が昇温すると、レゾネータ153や空気の熱膨張等で吸気量が減少する恐れがある。これに対して、遮熱部156bを有するハーネスステー156を設けることで、レゾネータ153の温度上昇が抑制され、吸気量の減少が抑制される。また、ハーネスステー156には、ハーネスクリップ156dが設けられており、ハーネスを固定する箇所を確保可能である。
【0060】
図17はレゾネータの説明図であり、
図17(A)は斜視図、
図17(B)は
図17(A)の矢印XVIIB方向から見た図、
図17(C)は
図17(A)の矢印XVIIC方向から見た図、
図17(D)は
図17(A)の矢印XVIID方向から見た図である。
図18は
図17のレゾネータの断面図であり、
図18(A)は
図17(B)のXVIIIA-XVIIIA線断面図、
図18(B)は
図17(C)のXVIIIB-XVIIIB線断面図、
図18(C)は
図17(D)のXVIIIC-XVIIIC線断面図、
図18(D)は
図17(D)のXVIIID-XVIIID線断面図である。
図17、
図18において、レゾネータ153は、右端部の吸気入口161と左端部の吸気出口162とを有する。吸気入口161と吸気出口162との間は、吸気ダクト163で接続されている。
吸気ダクト163の下部には、空間で構成されたレゾネータ容積部164が形成されている。吸気入口161の左側と吸気ダクト163の左部(下流部)との間は、連結通路166で接続されている。
【0061】
また、吸気出口162の後側から吸気ダクト163の左部(下流部)との間は、ブローバイガス通路167で接続されている。なお、実施の形態では、連結通路166と吸気ダクト163との合流部分の方が、ブローバイガス通路167と吸気ダクト163との合流部分よりも上流側に配置されている。また、連結通路166は、吸気ダクト163に対して上方から合流しているのに対して、ブローバイガス通路167は吸気ダクト163に対して後方から合流している。ブローバイガス通路167は、図示しないホースでエンジン本体100に接続されており、エンジン本体100での燃焼時に発生するブローバイガス(未燃焼ガス)が通過可能である。
【0062】
図17、
図18に示すレゾネータ153は、一例として鋳物で一体成形されており、上端部の砂抜き孔168はシーリングキャップで穴埋めされる。従来構成では、レゾネータ容積部、連結通路、吸気ダクト、ブローバイガス通路が別部品で構成されているため、設置に広いスペースが必要となり、部品点数も増加しコスト高になりやすい。これに対して、実施の形態のレゾネータ153は、レゾネータ容積部164、連結通路166、吸気ダクト163、ブローバイガス通路167が一体形成されており、省スペース化が可能であり、部品点数も削減され、低コスト化が可能である。
また、実施の形態では、吸気ダクト163の中流部~下流部とDPF151とが平行な配置となっており、直交する配置の場合に比べて省スペース化が可能である。
【0063】
図19は実施の形態のエンジンオイルのオイルフィラキャップの説明図であり、
図19(A)はエンジン内圧が低い場合の説明図、
図19(B)はエンジン内圧が高い場合の説明図である。
図19において、エンジンEにおいて、エンジンオイルの給油口171には、給油口171を開閉するためのオイルフィラキャップ172が装着されている。
図19のオイルフィラキャップ172は、キャップ本体部172aの下部にネジ部172bが設けられ、上部に作業者がオイルフィラキャップ172を回す際に摘まむ摘まみ部172cが形成されている。オイルフィラキャップ172の中央部には、リリーフバルブ173が支持されている。リリーフバルブ173は、外気に通じる外気口173aと、エンジンオイルのタンク側に通じる開口173bを有する。外気口173aと開口173bとの間には、ピストン173cが外気口173aを塞ぐ位置(
図19A参照)と外気口173aを開放する位置(
図19(B)参照)との間で移動可能に支持されている。ピストン173cはスプリング173dで外気口173aを塞ぐ位置に向けて押されている。
【0064】
したがって、エンジンEの内圧が低い状態では、スプリング173dの力で、
図19(A)に示すように外気口173aが閉塞され、内部の気化したエンジンオイルの漏出が抑制される。エンジンEの内圧が高くなると、内圧でピストン173cが押されて、
図19(B)に示すように外気口173aが開放され、エンジンオイルの通路が外気に開放されることで、エンジンの内圧を外部に逃がすことが可能である。例えば、ブローバイガス通路が冬季等で凍結して閉塞され、エンジンEの内圧が上昇すると、オイル漏れや部品の破損の恐れがあるが、実施の形態のオイルフィラキャップ172では、エンジンEの内圧上昇を抑制でき、エンジンEの破損を抑制可能である。また、既存のトラクタ1でも、オイルフィラキャップ172を付け替えるだけで、凍結対策が可能であり、寒冷地仕様に容易に対応することができる。
【0065】
(変更例)
本発明の作業車両は、トラクタに限定されず、苗移植機や薬液散布車両等の作業機を備えた各種作業用車両にも適用できる。
さらに、乗用のトラクタを例示したが、これに限定されず、自律走行する作業車両にも適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1a…走行車体、
3…車輪、
18…作業機、
102…発電機,第3の電動機、
124R,124L…第1の電動機、
126…蓄電部、
129…第2の電動機、
300…制御部、
401…通電部、
402…圃場、
403…架線、
404…支柱、
406…無人航空機、
E…内燃機関、
W1…蓄電量、
Wa…第1の閾値、
Wb…第2の閾値、
Wc…第3の閾値。