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特開2024-8716ガスタービンシステムおよびその制御方法
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  • 特開-ガスタービンシステムおよびその制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008716
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ガスタービンシステムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 9/28 20060101AFI20240112BHJP
   F02C 9/30 20060101ALI20240112BHJP
   F02C 9/32 20060101ALI20240112BHJP
   F02C 9/40 20060101ALI20240112BHJP
   F02C 3/22 20060101ALI20240112BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F02C9/28 C
F02C9/30
F02C9/32
F02C9/40 B
F02C3/22
F02C7/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110802
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】石原 信哉
(72)【発明者】
【氏名】池口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】寺内 晃司
(57)【要約】
【課題】簡易な制御方式によって、供給される燃料ガスの圧力を適切に調整することにより、ガスタービンエンジンの運用コストを低減する。
【解決手段】圧縮機(11)、燃焼器(13)およびタービン(15)を備えるガスタービンエンジン(3)と、前記燃焼器(13)に導入される燃料ガス(F)の圧力を調整する燃料ガス圧力調整装置(5)とを備えるガスタービンシステム(1)において、前記燃料ガス圧力調整装置(5)から前記燃焼器(13)へ導入される前記燃料ガス(F)の指令圧力値(Pc)を、前記ガスタービンエンジン(3)の運転環境状態に基づいて直接算出し、算出した前記指令圧力値に基づいて前記燃料ガス圧力調整装置(5)を制御する制御装置(7)を設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、燃焼器およびタービンを備えるガスタービンエンジンと、
前記燃焼器に導入される燃料ガスの圧力を調整する燃料ガス圧力調整装置と、
前記燃料ガス圧力調整装置から前記燃焼器へ導入される前記燃料ガスの指令圧力値を、前記ガスタービンエンジンの運転環境状態に基づいて直接算出し、算出した前記指令圧力値に基づいて前記燃料ガス圧力調整装置を制御する制御装置と、
を備えるガスタービンシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービンシステムにおいて、
前記制御装置が、前記運転環境状態を示すパラメータである、吸気温度、燃料密度および燃料温度の少なくとも一つのパラメータに基づいて、前記指令圧力値を直接算出する、
ガスタービンシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガスタービンシステムにおいて、
前記制御装置が、さらに、前記ガスタービンエンジンの負荷率に基づいて、前記指令圧力値を直接算出する、
ガスタービンシステム。
【請求項4】
請求項1または2に記載のガスタービンシステムにおいて、
前記制御装置が、
前記ガスタービンエンジンの起動時から定常運転状態に達するまでは、前記燃料ガスの圧力を所定の一定値に維持し、
前記ガスタービンエンジンが定常運転状態に達した後に、前記指令圧力値に基づいて前記燃料ガス圧力調整装置を制御する、
ガスタービンシステム。
【請求項5】
圧縮機、燃焼器およびタービンを備えるガスタービンエンジンと、
前記燃焼器に導入される燃料ガスの圧力を調整する燃料ガス圧力調整装置と、
を備えるガスタービンシステムを制御する方法であって、
前記燃料ガス圧力調整装置から前記燃焼器へ導入される前記燃料ガスの指令圧力値を、前記ガスタービンエンジンの運転環境状態に基づいて直接算出することと、
算出した前記指令圧力値に基づいて前記燃料ガス圧力調整装置を制御することと、
を含む、ガスタービンシステムの制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の制御方法において、
前記直接算出することが、
前記運転環境状態を示すパラメータである、吸気温度、燃料密度および燃料温度の少なくとも一つのパラメータに基づいて前記指令圧力値を直接算出することを含む、
ガスタービンシステムの制御方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の制御方法において、
前記直接算出することが、さらに、
前記ガスタービンエンジンの負荷率に基づいて前記指令圧力値を算出することを含む、
ガスタービンシステムの制御方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載の制御方法において、
前記ガスタービンエンジンの起動時から定常運転状態に達するまで、前記燃料ガスの圧力を所定の一定値に維持することと、
前記ガスタービンエンジンが定常運転状態に達した後に、前記指令圧力値に基づいて前記燃料ガス圧力調整装置を制御することと、
を含む、
ガスタービンシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンシステムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンの運転において、従来、燃焼器への燃料ガス供給は、燃料ガスの圧力を一定に維持した状態で行われることが一般的であった(例えば、特許文献1参照。)。このような燃料ガスの供給圧力を一定にする場合の圧力値は、ガスタービンエンジンが設置されるサイトにおける最低気温時の最大負荷に基づいて定められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-252397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
もっとも、実際には、常時燃料ガス圧力を一定に保つ必要はなく、例えば吸気温度が高い状況など、より低い圧力で燃料ガスを供給しても、ガスタービンエンジンを運用することができる場合がある。換言すれば、常時燃料ガス圧力を高い状態で運転することにより、燃料ガスを圧縮するための無駄な運用コストが生じていることになる。
【0005】
また、特許文献1では、燃料ガスの供給圧力を変化させることも提案されているが、インレットガイドベーン開度に基づいて車室内圧力を推定するといった、燃料ガス圧力に直接関係しないパラメータの取得や算出を必要とする制御であり、制御のためのアルゴリズムやシステムが複雑化する。
【0006】
本開示の目的は、上記の課題を解決するために、簡易な制御方式によって、供給される燃料ガスの圧力を適切に調整することにより、ガスタービンエンジンの運用コストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するために、本開示に係るガスタービンシステムは、
圧縮機、燃焼器およびタービンを備えるガスタービンエンジンと、
前記燃焼器に導入される燃料ガスの圧力を調整する燃料ガス圧力調整装置と、
前記燃料ガス圧力調整装置から前記燃焼器へ導入される前記燃料ガスの指令圧力値を、前記ガスタービンエンジンの運転環境状態に基づいて直接算出し、算出した前記指令圧力値に基づいて前記燃料ガス圧力調整装置を制御する制御装置と、
を備える。
【0008】
また、本開示に係るガスタービンシステムの制御方法は、
圧縮機、燃焼器およびタービンを備えるガスタービンエンジンと、
前記燃焼器に導入される燃料ガスの圧力を調整する燃料ガス圧力調整装置と、
を備えるガスタービンシステムを制御する方法であって、
前記燃料ガス圧力調整装置から前記燃焼器へ導入される前記燃料ガスの指令圧力値を、前記ガスタービンエンジンの運転環境状態に基づいて直接算出することと、
算出した前記指令圧力値に基づいて前記燃料ガス圧力調整装置を制御することと、
を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るガスタービンシステムおよびその制御方法によれば、簡易な制御方式によって、供給される燃料ガスの圧力を適切に調整することにより、ガスタービンエンジンの運用コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係るガスタービンシステム概略構成を示すブロック図である。
図2図1のガスタービンシステムの燃料ガスの圧力スケジュールの例を模式的に示すグラフである。
図3図1のガスタービンシステムの制御方法の一例を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施形態を図面に従って説明するが、本開示はこの実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1に、本開示の第1実施形態に係るガスタービンシステム1の概略構成を示す。ガスタービンシステム1は、ガスタービンエンジン(以下、単に「ガスタービン」という。)3、燃料ガス圧力調整装置5、および制御装置7を備えている。
【0013】
ガスタービン3は、圧縮機11、燃焼器13およびタービン15を主要な構成要素として備える。ガスタービン3に取り入られた作動媒体である空気Aは、圧縮機11で圧縮されて燃焼器13に送られ、燃焼器13に供給された燃料ガスFが混合され、混合気として燃焼される。燃焼器13で生成した高温の燃焼ガスがタービン15に送られてタービン15を回転駆動する。タービン15の回転動力が、出力回転軸17を介して出力される。ガスタービン3の出力回転軸17には、図示しない減速機を介して、例えば発電機のような負荷19に連結されている。
【0014】
燃料ガス圧力調整装置5は、燃焼器13に導入される燃料ガスFの圧力を調整する。本実施形態では、燃料ガス源から燃焼器13へ燃料ガスFを導入する燃料ガス導入路21上に、燃料ガスFの圧力を調整するための複数の機器が設けられており、これら複数の機器が「燃料ガス圧力調整装置5」を構成する。図示の例では、燃料ガス圧力調整装置5は、燃料ガス源からの燃料ガスFを圧縮する燃料ガス圧縮機23、燃料ガス圧縮機23で圧縮され、燃料ガス圧縮機23から排出された燃料ガスFの圧力を調整する燃料ガス圧力調整弁25、燃焼器13に導入される燃料ガスFの流量を調整する燃料ガス制御弁27、各弁の下流に設けられた圧力検知装置29等を備えている。
【0015】
より具体的には、図示の例では、燃料ガス圧力調整弁25として、スライド弁から構成された第1ガス圧力調整弁25Aと、第1ガス圧力調整弁25Aの下流に配置されたバイパス弁である第2ガス圧力調整弁25Bとが設けられている。バイパス弁である第2ガス圧力調整弁25Bには、ガス圧縮機11の上流側へ連通する燃料ガスバイパス通路が接続されている。
【0016】
さらに、図示の例では、燃料ガス制御弁27として、第1燃料ガス制御弁27A、第2燃料ガス制御弁27Bおよび第3燃料ガス制御弁27Cが設けられている。これらの燃料ガス制御弁27は、燃焼器13に設けられた複数の燃料ガス噴射ノズル31にそれぞれ対応しており、例えば第1燃料ガス制御弁27Aはパイロット燃料噴射ノズル31Aに供給される燃料ガス、第2燃料ガス制御弁27Bはメイン燃料噴射ノズル31Bに供給される燃料ガス、第3燃料ガス制御弁27Cは追炊き燃料噴射ノズル31Cに供給される燃料ガスの流量をそれぞれ調整する。もっとも、燃料ガス制御弁27の数および配置はこの例に限定されず、燃焼器13の仕様に応じて適宜選択してよい。
【0017】
制御装置7は、ガスタービンシステム1全体の動作を制御する装置であってもよいが、本明細書では、制御装置7の、燃料ガスFの圧力制御に関係する機能および構成についてのみ説明する。
【0018】
以下、ガスタービンシステム1における制御装置7による制御動作、すなわちガスタービンシステム1の制御方法について説明する。
【0019】
本実施形態において、制御装置7は、燃料ガス圧力調整装置5から燃焼器13へ導入される燃料ガスFの指令圧力値を、ガスタービン3の運転環境状態に基づいて直接算出し、算出した指令圧力値に基づいて燃料ガス圧力調整装置5を制御する。これにより、制御装置7は、燃料ガス圧力調整装置5から燃焼器13へ導入される燃料ガスFの圧力を、ガスタービン3の運転環境状態に応じて調整する。
【0020】
図示の例では、制御装置7は指令圧力値算出部33と、ガス圧力制御部35とを備えており、指令圧力値算出部33が指令圧力値を運転環境状態に基づいて直接算出し、ガス圧力制御部35が燃料ガス圧力調整装置5を制御する。なお、図1では、説明の便宜上、指令圧力値算出部33と、ガス圧力制御部35とが別個に設けられているが、指令圧力値算出部33とガス圧力制御部35とは、必ずしもハードウエアとして別個に設けられていなくともよい。
【0021】
本明細書における、「運転環境状態」とは、ガスタービン3の作動に影響を与え得る外部環境の状態を指す。運転環境状態を示すパラメータとして、例えば、吸気温度、燃料密度,燃料温度,ガスタービン3の設置サイトの気圧等が挙げられる。換言すれば、運転環境状態には、運転中のガスタービン3の構成要素の作動状態、例えばインレットガイドベーン開度、圧縮機吐出圧力等は含まれない。
【0022】
本実施形態において、制御装置7は、上述の運転環境状態を示すパラメータから、燃焼器13へ供給される燃料ガスFの指令圧力値(以下、単に「指令圧力値」という場合がある。)Pcを直接算出する。制御装置7は、さらに、この指令圧力値Pcの値に基づいて燃料ガス圧力調整装置5を制御する。ここでの「指令圧力値Pcを直接算出する」とは、運転環境状態を示すパラメータに基づいて、ガスタービン3内の運転状態に関するパラメータ、例えば圧縮機吐出圧力や、車室圧力等を介することなく、指令圧力値Pcの値を算出することを意味する。
【0023】
例えば、制御装置7は、燃焼器13へ供給される指令圧力値Pcを、吸気温度、燃料ガス密度、燃料ガス温度の関数fとして、以下の式(1)により算出する。
P=f(吸気温度、燃料ガス密度、燃料ガス温度)+燃料制御弁圧力損失
+配管圧力損失 …式(1)
【0024】
なお、制御装置7が指令圧力値Pcを定めるための関数fは、上記で運転環境状態を示すパラメータとして例示した吸気温度、燃料ガス密度、燃料ガス温度等のすべての要素の関数である必要はなく、これらのうちの一部、例えば吸気温度のみの関数であってもよい。図1には、制御装置7が吸気温度に基づいて燃料ガス圧力を調整する例を示している。すなわち、図1には、圧縮機に空気を導入する吸気通路37に、吸気温度を検知する温度検知装置39が設けられている例を示している。もっとも、制御に用いる運転環境状態パラメータの種類に応じて、必要な検知装置が適宜の部分に設けられてよい。
【0025】
関数fが吸気温度の関数である場合の指令圧力値Pcのスケジュールの例を、従来のガス圧力一定の場合と比較して図2に示す。図2において、従来のガス圧力スケジュールを破線で、fが吸気温度の関数である場合のガス圧力スケジュールを実線で示す。
【0026】
なお、ガスタービン3の運転において、必要な指令圧力値Pcの値は、ガスタービン3の負荷率によっても変化する。すなわち、ガスタービン3の部分負荷運転時に必要なガス圧力は、全負荷運転時に必要なガス圧力に比べて低下する。したがって、制御装置7は、運転環境状態に加えて、図2に一点鎖線で示すように、ガスタービン3の負荷率を考慮して指令圧力値Pcを決定してもよい。
【0027】
指令圧力値Pcの値に基づく燃料ガス圧力調整装置5の制御は、この例では、ガス圧縮機11の回転速度、第1ガス圧力調整弁25A、第2ガス圧力調整弁25B、燃料制御ノズル31A~31Cの各開度を変更することにより行う。
【0028】
なお、燃料ガス圧力調整装置5の制御によって燃料ガスの圧力を調整するに際しては、例えば第1ガス圧力調整弁25A、第2ガス圧力調整弁25Bの開度の調整によって、急激な圧力変化とならないよう、圧力変化の速度を調整してもよい。
【0029】
また、本実施形態において、図3に示すように、制御装置7は、ガスタービン3の起動時から定常運転に達するまでの状態S1において、、燃料ガスの圧力を所定の一定値に維持し、ガスタービン3が定常運転状態S2となった後に、燃料ガスの圧力を、運転環境状態に応じて調整する。なお、同図では、定常運転状態S2の初期に全負荷運転を行い、その後部分負荷運転に移行する例を示している。
【0030】
このように、ガスタービン3の起動時から定常運転に達するまでは、燃料ガスの圧力を所定の一定値に維持することにより、ガスタービン3の動作が不安定になりやすい起動時には燃料ガス圧力を一定値として安定的な運用を図ることができる。さらに、その後の定常運転において燃料ガス圧力を調整して運用コストを削減することができる。なお、ガスタービン3の起動時から定常運転に達するまでは、燃料ガスFの圧力を所定の一定値に維持することは必須ではなく、ガスタービン3の起動時から燃料ガスFの圧力を、運転環境状態に応じて調整してもよい。
【0031】
なお、図1に示す制御装置7は、例えば、上述した制御に必要な処理を行う各種回路、これらの処理に必要な情報を格納するためのメモリ、電池等の電源素子または外部から電源供給を受けるための電源回路、外部からの入力信号を有線または無線で受信するための受信回路出力信号を有線または無線で外部へ送信するための送信回路等を備えている。さらに、制御装置7は、検知対象の物理量(圧力,温度,流量等)を検知するセンサ素子、取得した検知量に対して信号変換処理、演算処理等必要な処理を行う各種回路、これらの処理に必要な情報を格納するためのメモリ、電池等の電源素子または外部から電源供給を受けるための電源回路、出力信号を有線または無線で外部へ送信するための送信回路等を備えている。
【0032】
なお、ガスタービン3の運転に用いられる燃料ガスFの種類は、特に限定されず、一般的に利用可能な燃料ガス、例えば天然ガス,都市ガス,バイオガス,液化石油ガス,コークス炉ガス,VRガス化ガス,水素ガス等であってよい。
【0033】
また、本実施形態では、燃料ガス圧力調整装置5の具体的態様の一例として、燃料ガス圧縮機23と、燃料ガス圧力調整弁25と、燃料ガス制御弁27とを備えている例を示したが、燃料ガス圧力調整装置5の具体的な態様はこれに限定されない。例えば、燃料ガスFの供給源自体が圧力調整機能を有する場合は、このような供給源も燃料ガス圧力調整装置5の一構成要素となり得る。また、ガスタービンシステム1には、図1に示した以外の、当該システムの運用上必要な各種の機器や弁が設けられていてよい。
【0034】
本実施形態の第1の態様に係るガスタービンシステム1は、圧縮機11、燃焼器13およびタービン15を備えるガスタービンエンジン3と、前記燃焼器13に導入される燃料ガスFの圧力を調整する燃料ガス圧力調整装置5と、前記燃料ガス圧力調整装置5から前記燃焼器13へ導入される前記燃料ガスFの指令圧力値を、前記ガスタービンエンジン3の運転環境状態に基づいて直接算出し、算出した前記指令圧力値に基づいて前記燃料ガス圧力調整装置5を制御する制御装置7とを備える。
この構成によれば、必要なガス圧力を運転環境状態から直接算出するという簡易な制御方式によって、供給される燃料ガスFの圧力を適切に調整することができる。これにより、燃料ガス圧力調整装置5の無駄な運用コストを削減することができるので、ガスタービン3全体の運用コストを低減することができる。
【0035】
本実施形態の第2の態様に係るガスタービンシステム1は、第1の態様に係るガスタービンシステム1において、前記制御装置7が、前記運転環境状態を示すパラメータである、吸気温度、燃料密度および燃料温度の少なくとも一つのパラメータに基づいて、前記指令圧力値を直接算出する。この構成によれば、必要な燃料ガス圧力に特に影響の大きい運転環境状態パラメータを用いることにより、効率的に燃料ガスFの圧力を調整することができる。
【0036】
本実施形態の第3の態様に係るガスタービンシステム1は、第1または第2の態様に係るガスタービンシステム1において、前記制御装置7が、さらに、前記ガスタービンエンジン3の負荷率に基づいて、前記指令圧力値を直接算出する。この構成によれば、ガスタービン3の部分負荷運転の場合に、負荷率に応じて燃料ガス圧力をさらに適切に調整することが可能になる。
【0037】
本実施形態の第4の態様に係るガスタービンシステム1は、第1から第3のいずれかの態様に係るガスタービンシステム1において、前記制御装置7が、前記ガスタービンエンジン3の起動時から定常運転に達するまでは、前記燃料ガスFの圧力を所定の一定値に維持し、前記ガスタービンエンジン3が定常運転に達した後に、前記指令圧力値に基づいて前記燃料ガス圧力調整装置5を制御する。この構成によれば、ガスタービン3エンジンの動作が不安定になりやすい起動時には燃料ガス圧力を一定値として安定的な運用を図りながら、その後の定常運転において燃料ガス圧力を調整して運用コストを削減することができる。
【0038】
本実施形態の第1の態様に係るガスタービンシステム1の制御方法は、圧縮機11、燃焼器13およびタービン15を備えるガスタービンエンジン3と、前記燃焼器13に導入される燃料ガスFの圧力を調整する燃料ガス圧力調整装置5と、を備えるガスタービンシステム1を制御する方法であって、前記燃料ガス圧力調整装置5から前記燃焼器13へ導入される前記燃料ガスFの指令圧力値を、前記ガスタービンエンジン3の運転環境状態に基づいて直接算出することと、算出した前記指令圧力値に基づいて前記燃料ガス圧力調整装置5を制御することと、を含む。
この構成によれば、必要なガス圧力を運転環境状態から直接算出するという簡易な制御方式によって、供給される燃料ガスFの圧力を適切に調整することができる。これにより、燃料ガス圧力調整装置5の無駄な運用コストを削減することができるので、ガスタービン3全体の運用コストを低減することができる。
【0039】
本実施形態の第2の態様に係る制御方法は、第1の態様に係る制御方法において、
前記直接算出することが、前記運転環境状態を示すパラメータである、吸気温度、燃料密度および燃料温度の少なくとも一つのパラメータに基づいて前記指令圧力値を直接算出することを含む。この構成によれば、必要な燃料ガス圧力に特に影響の大きい運転環境状態パラメータを用いることにより、効率的に燃料ガスFの圧力を調整することができる。
【0040】
本実施形態の第3の態様に係る制御方法は、第1または第2の態様に係る制御方法において、前記直接算出することが、さらに、前記ガスタービンエンジン3の負荷率に基づいて前記指令圧力値を算出することを含む。この構成によれば、ガスタービン3の部分負荷運転の場合に、負荷率に応じて燃料ガス圧力をさらに適切に調整することが可能になる。
【0041】
本実施形態の第4の態様に係る制御方法は、第1から第3のいずれかの態様に係る制御方法において、前記ガスタービンエンジン3の起動時から定常運転に達するまで、前記燃料ガスFの圧力を所定の一定値に維持することと、前記ガスタービンエンジン3が定常運転に達した後に、前記指令圧力値に基づいて前記燃料ガス圧力調整装置5を制御することと、を含む。この構成によれば、ガスタービン3の動作が不安定になりやすい起動時には燃料ガス圧力を一定値として安定的な運用を図りながら、その後の定常運転において燃料ガス圧力を調整して運用コストを削減することができる。
【0042】
以上のとおり、図面を参照しながら本開示の好適な実施形態を説明したが、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本開示の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 ガスタービンシステム
3 ガスタービンエンジン
5 燃料ガス圧力調整装置
7 制御装置
11 圧縮機
13 燃焼器
15 タービン
F 燃料ガス
Pc 指令圧力値
図1
図2
図3