(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087164
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】物品ピッキングシステム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
B65G1/137 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201804
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000110011
【氏名又は名称】トーヨーカネツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003454
【氏名又は名称】弁理士法人友野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 恭矢
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 拓哉
【テーマコード(参考)】
3F522
【Fターム(参考)】
3F522AA02
3F522BB26
3F522BB35
3F522CC01
3F522FF06
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3F522JJ02
3F522KK05
3F522LL55
3F522LL56
3F522LL58
(57)【要約】 (修正有)
【課題】物品のピッキングシステムであって、ピッキングされた物品の集品を無人搬送車によって行う際に、無人搬送車の走行の妨げにならず、かつ、ピッキングに要する時間を短縮し、ピッキングミスを少なくするシステムを提供する。
【解決手段】物品ピッキングシステム1であって、ピッキング対象の物品を保管する物品保管部と、ピッキングされた物品を投入できる集品容器40を搬送する1つ以上の無人搬送車32が走行し、及び/または、無人搬送車32がピッキングの対象物をピックアップして搬送する無人搬送車フロア30と、物品保管部と無人搬送車フロア30との間にピッキング作業を行うために設けたピッキングフロア10と、部品保管部の所定の場所に、及び/または、集品容器40に関連付けられる場所に、プロジェクタ23による投影画像によって、ピッキングまたは集品に関する情報を、ポップアウト機能を有して表示する情報表示部24とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-ピッキング対象の物品を保管する物品保管部と、
-ピッキングされた前記物品を投入できる集品容器を搬送する1つ以上の無人搬送車が走行する無人搬送車フロアと、
-前記物品保管部と前記無人搬送車フロアとの間にピッキング作業を行うために設けたピッキングフロアと、
-前記部品保管部の所定の場所に、及び/または、前記集品容器に関連付けられる場所に、プロジェクタによる投影画像によって、ピッキングまたは集品に関する情報を、ポップアウト機能を有して表示する情報表示部と
を有する物品ピッキングシステム。
【請求項2】
前記無人搬送車フロア及び/又は前記ピッキングフロアにおいて、ピッキング対象の前記物品が投入される前記集品容器の搬送及びバッファ機能として集品容器提示コンベヤを設けたことを特徴とする請求項1に記載の物品ピッキングシステム。
【請求項3】
前記ポップアウト機能として、前記プロジェクタにより、前記部品保管部の所定の場所、及び/または、前記集品容器に関連付けられる場所を点滅または点灯表示することを特徴とする請求項1に記載の物品ピッキングシステム。
【請求項4】
前記ポップアウト機能として、前記プロジェクタにより前記部品保管部の所定の場所を点滅または点灯表示し、次に、前記集品容器に関連付けられる場所を点滅または点灯表示することを特徴とする請求項1に記載の物品ピッキングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配送する物品(商品)を物品保管部から取り出して、配送先ごとの集品容器に収容するための物品ピッキングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
物流の分野において、作業員が商品を棚などの物品保管部から取り出し(ピッキング)、配送先ごとの集品容器に収容するピッキングシステムは、種々の手法のものが多数実用化されている。
【0003】
その中でも、作業員の正面にフローラックなどの物品保管部を設け、物品保管部と作業員との間に集品容器を搬送するコンベヤを設けたシステムが広く用いられており、特に、作業員がピッキングすべき商品が収容されている物品保管部の棚の間口などにデジタル式の表示部を設け、それによって作業員にピッキング作業を指示するDPS(デジタルピッキングシステム)が、近年、広範に用いられている。
【0004】
すなわち、デジタルピッキングシステムは、物品保管部、例えば商品棚に取り付けられたデジタル表示器の指示に従って、商品を摘み取っていくピースピッキングシステムであり、少品種多量から多品種少量まで、幅広い用途に対応でき、省スペース、少人数での作業が可能となり、作業員の担当範囲が限定でき、商品の指示・数量が表示されるため、作業効率がよく、ピッキングミスも低減できるなどの特徴がある。
【0005】
ここで、集品容器を搬送するには、ベルトコンベヤ、ローラコンベヤ、スラットコンベヤなどのコンベヤ搬送が一般的であるが、特許文献1に記載のようにコンベヤに代えて無人搬送車が集品容器を作業員のところまで搬送する方式も用いられている。
【0006】
すなわち、複数のピッキングゾーンのいずれかまで走行してくるロボット(無人搬送車)に、それぞれのピッキングゾーンで待機しているオペレータが、停止したロボットのトレー(集品容器)に所定の荷物を載置する技術思想が記載されている。
【0007】
ここで、集品容器の搬送に無人搬送車を用いる場合には、集品容器の搬送用の無人搬送車が走行する側(作業員の前面とする)には、無人搬送車が制約なく走行できるために、フローラックなどの物品保管部を設けることは望ましくなく、物品保管部は無人搬送車の走行する側とは反対側(作業員の背面)に設けることが好ましい。
【0008】
しかしながら、そのようにすると、作業員が常時、物品保管部の方を注視している訳ではないために、デジタル表示器を設けていても、振り向いた瞬間にピッキングすべき棚の間口を見つけ出すことは容易ではなく、ピッキングに要する時間が長くなる、あるいは、ピッキングミスを生じる原因となるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2022-050240号公報
【特許文献2】特開2008-222386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、上記問題を解決するために、本発明は、ピッキングされた物品の集品を無人搬送車によって行う際に、無人搬送車の走行の妨げにならず、かつ、ピッキングに要する時間を短縮し、ピッキングミスを少なくするシステムを提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明者は考察を深めた結果、後述するポップアウト機能に着眼した。つまり、ポップアウト機能を、物品の搬送を無人搬送車によって行うことと組み合わせることで上記課題を解決できることを発見した。
【0012】
即ち、上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、物品ピッキングシステムであって、
-ピッキング対象の物品を保管する物品保管部と、
-ピッキングされた前記物品を投入できる集品容器を搬送する1つ以上の無人搬送車が走行する無人搬送車フロアと、
-前記物品保管部と前記無人搬送車フロアとの間にピッキング作業を行うために設けたピッキングフロアと、
-前記部品保管部の所定の場所に、及び/または、前記集品容器に関連付けられる場所に、プロジェクタによる投影画像によって、ピッキングまたは集品に関する情報を、ポップアウト機能を有して表示する情報表示部と
を有することを特徴とする。
【0013】
ここで、無人搬送車とは、誘導体によりガイドされるAGV、非ガイド走行方式のAMRなどが含まれるが、それ以外のものであってもよく、無人走行車、無人移送車などと称する場合もある。
【0014】
また、ピッキングされた物品は、無人搬送車に載置された状態の集品容器に投入(収容)されるようにしてもよいし、無人搬送車から一旦分離してコンベヤで搬送された集品容器に投入され、その後、その集品容器は無人搬送車に再度載置されるようにしてもよい。
【0015】
なお、ピッキング対象の物品を保管する物品保管部は、それぞれが、同一のあるいは異なる物品を保管する、単一または複数の間口を有する固定棚、あるいは傾斜式流動棚(フローラック)などが好適であるが、そのような構造に限定されず、水平式流動棚や平置きなどであってもよい。
【0016】
また、ピッキングに関する情報を表示する部品保管部の所定の場所は、物品が保管されている間口またはその近傍であることが好適であるが、それに限定されず、ピッキングに関する情報が有効に提供される場所であればよい。
【0017】
また、ピッキングされた物品を集品容器に投入する集品作業に関連する情報を表示する、集品容器に関連付けられる場所とは、集品容器自身、集品容器を搬送するコンベヤ(後述)または無人搬送車など、集品すべき場所を示すことができれば、どのような場所であってもよい。
【0018】
また、プロジェクタを用いる情報表示部とは、特許文献2のように、デジタル表示器の代わりに、プロジェクタを設けるプロジェクションマッピング方式のものであり、設備費用が低廉であること、商品の入れ替えの対応が容易なことなどから、実用化されている。
【0019】
次に、「ポップアウト機能を有する」とあるところのポップアウトとは、認知心理学で知られる機能であり、複数の認知対象が存在する状況下で、その中の一つが他と異なる認知的特性を有する場合に、不可避的に、すなわち、人間の意志による制御が及ばない形で、対象が認知される現象である。
【0020】
具体的にはピッキング指示情報を、その周辺の物体、すなわち載置棚、ピッキング対象物などとは認知的特性が大きく異なるようなものとして表示することが好適である。
【0021】
次に、本発明の第2の態様は、第1の態様の物品ピッキングシステムであって、 前記無人搬送車フロア及び/又は前記ピッキングフロアにおいて、ピッキング対象の前記物品が投入される前記集品容器の搬送及びバッファ機能として集品容器提示コンベヤを設けたことを特徴としてもよい。
【0022】
すなわち、無人搬送車から集品容器提示コンベヤへと、一旦、集品容器を移載し、集品容器提示コンベヤ上で物品の投入が行われた集品容器を、集品容器提示コンベヤから再度無人搬送車へと移載して搬送するようにしたものである。
【0023】
この場合は、集品容器提示コンベヤは、無人搬送車フロアに止まらず、ピッキングフロアまで延伸することもあり得るため、上記のような表現とした。
【0024】
このようにすると、集品容器提示コンベヤに一時保管(バッファ)機能を持たせることができ、無人搬送車の台数の削減や動作の簡略化が可能となる。
【0025】
次に、本発明の第3の態様は、第1の態様の物品ピッキングシステムであって、 前記ポップアウト機能として、前記プロジェクタにより、前記部品保管部の所定の場所、及び/または、前記集品容器に関連付けられる場所を点滅または点灯表示することを特徴としてもよい。
【0026】
このようにすると、ポップアウト機能が有効に発揮され、ピッキングまたは集品作業の効率向上やミスの低減が実現できる。
【0027】
次に、本発明の第4の態様は、第1の態様の物品ピッキングシステムであって、
前記ポップアウト機能として、前記プロジェクタにより前記部品保管部の所定の場所を点滅または点灯表示し、次に、前記集品容器に関連付けられる場所を点滅または点灯表示することを特徴としてもよい。
【0028】
このようにすると、ポップアウト機能により、作業の順序を的確に指示することができ、作業順に関連するミスの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、集品に使用される無人搬送車の走行の妨げとなるような物品保管部を無人搬送車フロアやピッキングフロアに設置せずに、かつ、物品保管部の所定場所あるいは集品容器関連場所にポップアウト機能を有することで、短時間で、ミスの少ないピッキングシステムが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る物品ピッキングシステムの斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る物品ピッキングシステムの平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るシステムの情報表示部の説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るシステムの運用のフローチャートである。
【0031】
以下、図面を参照し、本発明の第1の実施形態にかかる物品のピッキングシステムについて説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0032】
<構成>
図1は本発明の第1の実施形態に係る物品ピッキングシステムの斜視図であり、
図2は同システムの平面図である。
【0033】
物品ピッキングシステム1は、作業員P(ピッカーと称することもある)のピッキング作業を行う略長方形状に延伸するピッキングフロア10(図中点線斜線部)と、ピッキングフロア10の外側に設けられた物品保管部であるフローラック20と、ピッキングフロア10の、フローラック20とは反対の外側に設けられ、無人搬送車32が走行しうる無人搬送車フロア30と、この物品ピッキングシステム1を制御するシステム制御部50とを有する。
【0034】
なお、無人搬送車フロア30は、無人搬送車32が走行しうる場合は、ピッキングフロア10の一部を含んでいてもよい。
【0035】
フローラック20は、図中では1人の作業員Pの担当分として3段の棚に4種ずつの物品が保管できる間口を有し、そのおのおのの間口に物品保管容器21が載置されており、その3人分(フローラック20a、20b、20c)を示しているが、棚の段数、各段の物品種類数には限定はなく、また、作業員の人数にも限定はなく1人分以上であれば何人分であってもよい。
【0036】
なお、フローラック20の物品保管容器21に収容された物品は、ピッキングされて数量が不足した場合には、システム制御部50の指示などにより、フローラック20の後方から補充することが可能である。
【0037】
なお、物品保管容器21は、所定のオリコンなどの容器であってもよいし、物品の梱包・輸送に用いられた段ボールなどをそのまま用いてもよい。
【0038】
フローラック20の上部には、支持具22に保持されたプロジェクタ(投影機)23が設けられている。プロジェクタ23としては、短焦点あるいは超短焦点のものが、このシステムの構成上は好適である。
【0039】
支持具22は、プロジェクタ23の投影方向などを調整できるように、可動(手動または駆動機構付き)の接続部を有していてもよい。
【0040】
フローラック20の各段の物品保管容器21の上部には、各々の物品保管容器21に対応した情報表示部24が設けられている。この情報表示部24は、プロジェクタ23から投影される画像情報を表示できるスクリーンであり、構造としては、樹脂製で金属やガラスの反射部材を含んでいるものが好適であるが、それに限定されずどのような素材であってもよい。また、形状については間口ごとに設けるようにしたが、各段ごとに連続したものであってもよく、また、物品保管容器21の上部でなく、下部または側部に設けてもよい。
【0041】
図3は本発明の第1の実施形態に係る物品ピッキングシステムの情報表示部の説明図である。この実施形態では、ピッキングすべき物品保管容器21の直上部のスクリーンが、ピッキングすべき物品の個数、外観、品名を表示できる物品情報表示部241として設けられる。また、作業の終了などを入力するための操作部242が物品情報表示部241の近傍(図中では右側)に設けられる。
【0042】
なお、操作部242には、物品の存在する位置を示す下向き矢印などが表示されていてもよい。
【0043】
この操作部242は、タッチパネルになっており、ピッキング作業の終了時にはこの部分をタッチすることで、システム制御部50に作業の終了を通知することができ、作業の終了が通知されると、情報表示部24の表示は終了する。
【0044】
なお、操作部242については、接触を要するタッチパネルに限定せず、作業員Pが手を近付けると感知できる静電容量式などの近接センサ、超音波センサ、画像センサなどを用いてもよい。いずれのセンサも、機械可動部分を有さないため、故障が少なく、長寿命であるという利点がある。
【0045】
さらに、この操作部242を画像センサで構成するようにしてもよい。これによれば、パネル状にする必要もなく、作業員の手などを検知することで作業の終了を判断するようにすることもできる。このようにすれば、部品点数を削減でき、設置場所の自由度が増し、工事が容易になるなどの利点がある。
【0046】
無人搬送車フロア30は、上部に容器搬送コンベヤ31を設けた無人搬送車32、無人搬送車32の容器搬送コンベヤ31の上に載置されて搬送される集品容器40を受け取り、作業員Pの面前に提示するための集品容器提示コンベヤ33を有する。
【0047】
無人搬送車32は、非ガイド走行方式のAMRであることが、構成の自由度の点から好ましいが、コスト及び制御の容易さなどの点から誘導体によりガイドされるAGVであってもよい。
【0048】
集品容器提示コンベヤ33は、略コの字型であり、導入部331、提示部332、送出部333からなり、導入部331と提示部332、提示部332と送出部333は、それぞれ直交している。各々のコンベヤは駆動部を有するローラコンベヤであることが好ましく、直角の方向変換については周知の方向転換機構を用いればよい。
【0049】
なお、集品容器提示コンベヤ33は、略コの字状でなく直線状あるいは曲線状であってもよく、また、作業員Pの分担分に分割されておらずに、連続に配置されてもよい。
【0050】
更に、集品容器提示コンベヤ33は、ローラコンベヤに限定されず、ベルトコンベヤなど他の種類のコンベヤであってもよい。
【0051】
また、集品容器提示コンベヤ33の搬送面の床面からの高さは、無人搬送車32の上部の容器搬送コンベヤ31の搬送面の床面からの高さと略同一であり、集品容器40を容器搬送コンベヤ31の上に載置した無人搬送車32を集品容器提示コンベヤ33の導入部331の端部に密着あるいは近接させ、容器搬送コンベヤ31を駆動させて集品容器40を集品容器提示コンベヤ33へと移載させることができる。
【0052】
集品容器40は集品容器提示コンベヤ33の導入部331から提示部332へと搬送され、作業員Pの面前に提示される。そこで、作業員Pによって物品を投入された集品容器40は、送出部333へ搬送され、送出部333の端部から、無人搬送車32の容器搬送コンベヤ31の上に移載され、無人搬送車32によって次工程へと搬送されるようになっている。
【0053】
システム制御部50は、このシステムを制御するもので、汎用のサーバまたはPCが好適であり、CPU、記憶部、入出力部、表示部、通信インターフェースなどを備えており、このシステムの各部(プロジェクタ23及び情報表示部24を含むフローラック20、集品容器提示コンベヤ33、無人搬送車32)と通信が可能で、動作の指示が可能になっている。
【0054】
なお、システム制御部50は、物流施設全体の制御をおこなうWMSなどに含まれていてもよく、あるいは、クラウドコンピューティングとして外部の資源を用いるようにしてもよい。
【0055】
さらに、システム制御部50は、先に述べた操作部242を画像センサとした場合には、画像センサとAI機能とを組み合わせることで、ピッキング作業員の動作の間違いを発見したり、作業員の動きから疲労度を判定したり、その疲労度の結果を踏まえてその作業員の作業を別の作業員に振り替えるなどができるようにしてもよい。こうすることで、高付加価値のシステムとして機能させることができることから、より一層のピッキングミス低減や作業員の健康管理に役立つ、人にやさしいピッキングシステムが実現できる。
【0056】
また、これまでの実施形態の説明では、集品容器40は、無人搬送車32から集品容器提示コンベヤ33へ移載されて、作業員Pの面前に提示されるようにしたが、集品容器提示コンベヤ33を用いずに、集品容器40を載置した無人搬送車32自体が作業員Pの面前まで自走するような実施形態であってもよい。その場合は、無人搬送車32の上部に設ける容器搬送コンベヤ31は不要となることもあり得る。
【0057】
なお、これまでの実施形態の説明では、プロジェクタを用いた情報表示部は、物品保管部を対象として設けるとしたが、これに加えて、あるいはこれに代えて、集品容器側に設けてもよい。(図示は省略する。)
【0058】
すなわち、集品容器への物品の投入作業に関する情報を表示するようにする。この場合に、情報を表示するのは、集品容器に関連付けられる場所、すなわち、集品容器自身、集品容器を搬送する集品容器提示コンベヤ33またはコンベヤを用いない場合には無人搬送車32など、集品すべき場所を示すことができる場所であれば、どのような場所であってもよい。
【0059】
<運用>
次に、このような構成の本発明の第1の実施形態に係る物品ピッキングシステムの運用について説明する。
【0060】
図4は本発明の第1の実施形態に係る物品ピッキングシステムの運用を説明するフローチャートである。
【0061】
ピッキング作業の開始に際し、システム制御部50が、無人搬送車31に、最初にピッキングされる物品を集品する集品容器40の搬送を指示する。(ステップS01)
【0062】
本実施形態では集品容器提示コンベヤ33を用いているため、予め集品される集品容器40を搭載した無人搬送車31を集品容器提示コンベヤ33に移載させて、作業者の面前に提示できるようにする。
【0063】
なお、集品容器提示コンベヤ33を用いずに、無人搬送車32に搭載した状態の集品容器40に物品を集品(投入)する実施形態の場合は、移載動作は不要である。
【0064】
次に、作業員Pがピッキングフロア10内でフローラック20に正対している状態で、システム制御部50が、フローラック20の情報表示部24にポップアウト機能(後に詳述)を有するピッキング指示を発する。(ステップS02)これによって、作業員Pはピッキングすべき物品の位置、種類、個数などを、容易に、かつ、間違いなく認識して作業を行うことができる。
【0065】
ピッキング作業が終了すると、作業員Pは、操作部242からピッキング終了情報を入力し、システム制御部50が、ピッキング終了信号を受け取り、情報表示部24のピッキング指示表示を終了する。(ステップS03)
【0066】
ほぼ同時に、システム制御部50が、ピッキングされた物品の、所定の集品容器40への投入を指示する。(ステップS04)ここで、集品容器40の指定は、特段の表示などを行わずに集品容器提示コンベヤ33の提示部332の中央に位置する集品容器40であるとしてもよく、あるいは、集品容器提示コンベヤ33に表示器を設けその表示器を用いて指示をする、あるいは、集品容器40自体に表示機能を設けるなど、どのような方法で指定してもよい。
【0067】
作業員Pは、ピッキングフロア10の中で、身体を回転して集品容器提示コンベヤ33に正対するように向きを変え、指示された集品容器40にピッキングした物品を投入する。
【0068】
なお、集品作業についても、ピッキング作業と同様の、ポップアウト機能を有するプロジェクタによる情報表示を行ってもよい。ピッキング作業の際と同様の効果が得られる。
【0069】
集品容器40への物品の投入の完了については、特に完了を通知せず所定時間経過後投入されたものと判断することでもよいし、終了を通知する操作部を設ける、作業員Pの手の動きを検知するなどの方法で投入完了を通知してもよい。更に、正しく投入できたかどうかを光学センサなどでチェックするようにしてもよい。
【0070】
次に、システム制御部50が、投入完了後の集品容器40の搬送を、無人搬送車32に指示する。(ステップS05)
【0071】
この後も、ピッキングすべき物品がある場合は、最初のステップに戻り、作業が継続する。ここで、次の物品をピッキングするために、作業員Pは、集品容器40に正対している状態から、身体の向きを旋回し、フローラック20の側へ向き直ることになる。
【0072】
その際に、ピッキングに関する情報表示(ピッキングの指示)を、速やかに、かつ、正確に作業員Pに伝達できることが、このシステムの運用上、極めて重要である。
【0073】
ここで、これらの情報表示については、視覚的ポップアウト機能を備えている。すなわち、これらの情報表示を、その周辺の物体、すなわち、フローラック20の棚部、ピッキング対象物、あるいは物品保管容器21などとは認知的特性が大きく異なるようなものとすることで人間の認知特性をさらに不可避的に刺激するようにする。
【0074】
本発明の第1の実施形態では、視覚的ポップアウトの例として、ピッキングすべき物品の載置された間口の情報表示部24のみを点滅させ、他の間口の情報表示部24については消灯状態のままとする。
【0075】
このようにすると、作業員Pがその前の物品の集品容器40への投入を終えて、身体を旋回させ、振り向いてフローラック20が視界に入った瞬間にポップアウトが生じ、不可避的にピッキングすべき物品に関する情報表示を認知し、そこに表示されている情報を受け取ることができる。これにより、次のピッキング対象物品を、間違いなく、かつ素早くピッキングし、集品容器40へと投入することができる。
【0076】
ポップアウト原理からして、ピッカーの無意識の領域まで刺激する、すなわち、ピッカーは自分が意識しようとしまいと、ある情報(たとえばピッキングに係る対象物品及びその数量に係る情報。両者を併せて「ピッキング情報」とも以下、称する。)を不可避的に受領することとなる。これは、人間の認知上、間違いの入る余地を極小化する。なんとなれば、認識外の領域にまで刺激・情報受領領域が広がる結果、誤りの源泉である認識間違いの入る余地のない領域でたとえばピッキング情報をやり取りすることができるからである。
【0077】
この点を補足する。ピッカーは元来、間違えたくて間違えるのではない。ピッカー自体の勤務成績にも直結するからなるべくピッキング誤りのないように作業すると考えられるからである。しかし、人間であるがゆえの限界として、たとえば体調不良であれば、どんな正確な作業可能者であっても間違いは発生し得る。また、健康者であっても、たとえば長時間同一/同様作業を連続して行っていると倦怠感から間違いが発生する可能性が高まる。疲労度が蓄積されてきた状態にある者も同様のことがいえる。これらはすべて、人間であるがゆえの認識の誤りに起因している。すなわち、「A物品を3個」ピックした作業に続けて「B物品を4個」ピックし、ここでたとえば疲労状態になったうえで、「A物品を2個ピックアップせよ」というピッキング情報を受け取った者が、視認した情報が「A物品」「2個」であるにも拘わらず、少し前にピッキング情報として視認してすぐにピックアップ・アクションを引き起こす動作情報に転換した情報である「A物品」「3個」という情報と混同を(ピッカー脳内で)発生させるためであると考えられる。疲労度が高くない場合等であればこのような誤動作は表に出るまでに自身の内部で修正されるものの、疲労度が高い/不健康状態であるなどの状況にある場合にはかかる内部修正がなされずに、上記誤認識が誤ピックアップ行動として顕在化してしまうことになる。
【0078】
本発明では、これに対して、ポップアウトという不可避的認識をトリガーする事態を生じさせることで、人間の自覚的認識外の領域まで刺激することで、上記誤認識を生じさせないようにしようとするものである。ここで、ポップアウトとは、妨害刺激群から一つだけ異なる目標刺激を探し出す際に、すべての刺激を探索することなく目標刺激を瞬間的に知覚することができる現象、と定義する。
【0079】
ポップアウトを起こすためには、単に表示するのではなく、たとえば次の要素を入れて表示する。
・際立たせたい情報以外の情報(「周辺情報」という。)を消灯しターゲット情報のみを点滅(または点灯)表示する。(図示の状態)あるいは、周辺情報を点灯表示しターゲット情報を点滅表示する。
・周辺情報を黒字で表示しターゲット情報を赤字で表示する。
・周辺情報を通常ポイントで表示しターゲット情報を通常ポイントのたとえば1.5倍のポイントで表示する。
【0080】
このように、ポップアウト機能を有する物品保管部(フローラック)と無人搬送車を用いた集品容器の搬送とを作業員のピッキングフロアの両側に設けたことにより、物品のピッキング作業をポップアウト機能によって確実に行なわせるようにした上で、無人搬送車の走行の自由度を確保したから、システム構成の自由度や運用の効率が極めて高くなる。
【0081】
なお、これまでの説明では、本願のシステムは、複数種類の物品の中から必要な物品を必要な個数だけオーダ単位に集品するピッキングシステムとしたが、逆に必要な物品を必要な個数だけオーダ別に仕分ける種まき(アロケーション)システムに用いてもよい。
【0082】
すなわち、作業員Pのピッキングフロアの外側に設けられた、無人搬送車から物品を供給する物品供給部と、作業員Pのピッキングフロアの外側で物品供給部と反対側に設けた、ポップアウト機能を有する物品種まき部(アロケーション部)とを有している構成である。
【0083】
無人搬送車による物品の供給は、本発明の第1の実施形態のように、コンベヤを介在させてもよいし、無人搬送車が直接物品を作業員に提示するようにしてもよい。
【0084】
ポップアウト機能を有する物品種まき部は、格子状の棚に載置された容器と、容器の近傍に設けられたプロジェクタ(投影機)とを有し、投入すべき間口に関する情報が、プロジェクタから、ポップアウト機能を有した状態で、格子状の棚の各間口に対応して表示できるものである。
【0085】
このように、物品の供給側と反対側の物品種まき部に、ポップアウト機能を有した情報表示部を設けたから、供給された物品を保持して物品種まき部側へと向きを変えた瞬間に、投入すべき間口を正しく認識することができ、迅速で間違いのない物品種まきシステムが実現できる。
【0086】
すなわち、無人搬送車を用いた物品供給部と、ポップアウト機能を有する物品種まき部とを作業員のピッキングフロアの外の両側に設けたことにより、無人搬送車の走行の自由度を確保し、その上で物品の種まき作業をポップアウト機能によって確実に行なわせるようにしたから、システム構成の自由度や運用の効率が極めて高くなる。
【0087】
また、これまでの説明では、ポップアウト機能は、視覚によるものとしてきたが、それに加えて、あるいはそれに代えて、聴覚(音声)、振動など、五感に対し、適切に働きかけて、ポップアウトを生じさせる機能であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の物品ピッキングシステムは、広く物流業界で用いることができ、利便性、正確性などの点で優れており、産業上、大いに利用可能な発明である。
【符号の説明】
【0089】
1 物品ピッキングシステム
10 ピッキングフロア
20(a、b、c)フローラック
21 物品保管容器
22 支持具
23 プロジェクタ
24 情報表示部
30 無人搬送車フロア
31 ベルトコンベヤ
32 無人搬送車
33 集品容器提示コンベヤ
40 集品容器
50 システム制御部
P 作業員(ピッカー)