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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087169
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20240624BHJP
   A01B 59/042 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
A01C11/02 322
A01C11/02 330L
A01B59/042 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201814
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】池田 一生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 学
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和之
(72)【発明者】
【氏名】川上 修平
(72)【発明者】
【氏名】三宅 浩喜
(72)【発明者】
【氏名】飛田 秀平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠太
【テーマコード(参考)】
2B041
2B062
【Fターム(参考)】
2B041AA07
2B041AB05
2B041AC05
2B041AC06
2B041CA03
2B041CA17
2B041HA03
2B041HA05
2B041HA12
2B041HA15
2B041HA16
2B041HA24
2B041HA29
2B062AA03
2B062AA11
2B062AB01
2B062AB08
2B062BA11
2B062BA23
2B062BA26
2B062CA05
2B062CA25
(57)【要約】
【課題】作業機の装着が不完全な状態で自律走行が開始される場合に比べて、時間や手間の無駄を削減すること。
【解決手段】圃場に対して作業を行う作業機(10,150,160,170,180)が着脱可能な車体(4)と、作業機(10,150,160,170,180)が取り外されている場合には基準データ取得モードと自動走行モードと遠隔操作モードへの移行を規制する制御手段(300)と、を備えたことを特徴とする作業車両(1)。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に対して作業を行う作業機(10,150,160,170,180)が着脱可能な車体(4)と、
圃場の外周の基準となる箇所に沿って前記車体(4)を走行させて基準データを取得する基準データ取得モードと、前記基準データに基づいて前記車体(4)を自動的に走行させる自動走行モードと、前記車体(4)の走行を遠隔操作可能な遠隔操作具(102)からの入力に基づいて前記車体(4)を走行させる遠隔操作モードと、を切り替えて制御する制御手段(300)であって、前記作業機(10,150,160,170,180)が取り外されている場合には、前記基準データ取得モードと前記自動走行モードと前記遠隔操作モードへの移行を規制する前記制御手段(300)と、
を備えたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記作業機として、種子を圃場に播く直播装置(150)、マット状の苗から苗を圃場に植え付ける植付装置(10)、圃場の草を除去する除草機(160)、圃場内の水の流路を形成する溝切機(170)、および、薬剤の散布を行う管理機(180)のいずれかの作業機が装着可能な前記車体(4)と、
前記除草機(160)、前記溝切機(170)および前記管理機(180)のいずれかが装着された場合には、前記基準データ取得モードと前記自動走行モードと前記遠隔操作モードとの間でのモードの移行を規制する前記制御手段(300)と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
作業者が搭乗可能な座席(28)と、前記座席(28)に搭乗した作業者が走行の操作を行う走行操作具(32)と、を有する前記車体(4)と、
前記基準データ取得モードと前記自動走行モードと前記遠隔操作モードと前記走行操作具(32)の操作に基づいて前記車体(4)を走行させる手動走行モードとを切り替えて制御する前記制御手段(300)であって、前記作業機(10,150,160,170,180)として前記直播装置(150)または前記植付装置(10)が装着され且つ前記基準データ取得モード、前記自動走行モードおよび前記遠隔操作モードのいずれかのモードが実行中に、前記作業機(10,150)が取り外された場合には、前記手動走行モードに強制的に移行させる前記制御手段(300)と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記直播装置(150)が装着された状態で作業中に播種する種子の減少が検出された場合には、前記遠隔操作具(102)に種子の減少を報知させる前記制御手段(300)、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項5】
前記直播装置(150)が装着された状態で作業中に、種子を送り出す部材(151)の異常が検出された場合には、前記遠隔操作具(102)に異常を報知させる前記制御手段(300)、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項6】
前記直播装置(150)が装着され且つ前記直播装置(150)を作動させるクラッチ(152)の入切を制御する前記制御手段(300)であって、作業中に前記クラッチ(152)が切られた状態が予め定められた期間継続した場合には、前記手動走行モードでは前記クラッチ(152)の入れ忘れを前記遠隔操作具(102)に報知させると共に、前記自動走行モードと前記遠隔操作モードでは作業中に前記クラッチ(152)が切られた状態が予め定められた期間継続しても前記遠隔操作具(102)に報知させない前記制御手段(300)、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【請求項7】
除草剤を圃場に散布する電動の除草剤散布装置(61)と、殺虫殺菌剤を苗に散布する電動の殺虫剤散布装置(66)と、を有する前記植付装置(10)と、
前記車体(4)に設けられた表示部(31a)に、前記除草剤散布装置(61)および前記殺虫剤散布装置(66)の電源の入切状態を表示させる前記制御手段(300)と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、田植機やトラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
田植機やトラクタ等の作業車両において、作業機として苗植付装置(20)や除草装置(40)が選択的に装着可能な乗用型田植え機において、軽量の作業機が装着された状態での最高速度を規制するために、作業機が装着されていない場合や除草装置(40)が装着されている場合にはエンジン回転数を検出して、エンジン回転数が許容値を超えると警報を発し、苗植付装置(20)が装着されている場合にはエンジン回転数の検出を行わない技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-79515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術のように作業機を着脱、交換可能な作業車両では、作業機と車両本体とを接続するコネクタの接続忘れや完全に接続されていない等で作業機の装着が不完全な状態であったり、作業機が取り外された状態で、誤って走行される場合がある。
作業機の装着が不完全または取り外された状態で自律走行(自動走行、無人走行)を行うと、作業機が圃場に降下するが回転、駆動されなかったりして作業が行われなかったり、作業機が破損したりする恐れがある。特に、自律走行を行う技術では、自律走行経路を作成する前に、圃場の外周に沿って作業車両を走行させて、自律走行時の基準となる圃場の範囲を取得する動作(基準データ取得モード、ティーチングモード)が一般的に行われるが、作業機の接続が不完全な状態でティーチングモードが実行された後に作業機の装着不完全が判明しても、作業機の装着不完全の解消後に再度ティーチングモードを実行することとなり、時間や手間が無駄になってしまう問題がある。
【0005】
本発明は、作業機の装着が不完全な状態で自律走行が開始される場合に比べて、時間や手間の無駄を削減することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は次の解決手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、圃場に対して作業を行う作業機(10,150,160,170,180)が着脱可能な車体(4)と、圃場の外周の基準となる箇所に沿って前記車体(4)を走行させて基準データを取得する基準データ取得モードと、前記基準データに基づいて前記車体(4)を自動的に走行させる自動走行モードと、前記車体(4)の走行を遠隔操作可能な遠隔操作具(102)からの入力に基づいて前記車体(4)を走行させる遠隔操作モードと、を切り替えて制御する制御手段(300)であって、前記作業機(10,150,160,170,180)が取り外されている場合には、前記基準データ取得モードと前記自動走行モードと前記遠隔操作モードへの移行を規制する前記制御手段(300)と、を備えたことを特徴とする作業車両である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記作業機として、種子を圃場に播く直播装置(150)、マット状の苗から苗を圃場に植え付ける植付装置(10)、圃場の草を除去する除草機(160)、圃場内の水の流路を形成する溝切機(170)、および、薬剤の散布を行う管理機(180)のいずれかの作業機が装着可能な前記車体(4)と、前記除草機(160)、前記溝切機(170)および前記管理機(180)のいずれかが装着された場合には、前記基準データ取得モードと前記自動走行モードと前記遠隔操作モードとの間でのモードの移行を規制する前記制御手段(300)と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、作業者が搭乗可能な座席(28)と、前記座席(28)に搭乗した作業者が走行の操作を行う走行操作具(32)と、を有する前記車体(4)と、前記基準データ取得モードと前記自動走行モードと前記遠隔操作モードと前記走行操作具(32)の操作に基づいて前記車体(4)を走行させる手動走行モードとを切り替えて制御する前記制御手段(300)であって、前記作業機(10,150,160,170,180)として前記直播装置(150)または前記植付装置(10)が装着され且つ前記基準データ取得モード、前記自動走行モードおよび前記遠隔操作モードのいずれかのモードが実行中に、前記作業機(10,150)が取り外された場合には、前記手動走行モードに強制的に移行させる前記制御手段(300)と、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の作業車両である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記直播装置(150)が装着された状態で作業中に播種する種子の減少が検出された場合には、前記遠隔操作具(102)に種子の減少を報知させる前記制御手段(300)、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の作業車両である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記直播装置(150)が装着された状態で作業中に、種子を送り出す部材(151)の異常が検出された場合には、前記遠隔操作具(102)に異常を報知させる前記制御手段(300)、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の作業車両である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記直播装置(150)が装着され且つ前記直播装置(150)を作動させるクラッチ(152)の入切を制御する前記制御手段(300)であって、作業中に前記クラッチ(152)が切られた状態が予め定められた期間継続した場合には、前記手動走行モードでは前記クラッチ(152)の入れ忘れを前記遠隔操作具(102)に報知させると共に、前記自動走行モードと前記遠隔操作モードでは作業中に前記クラッチ(152)が切られた状態が予め定められた期間継続しても前記遠隔操作具(102)に報知させない前記制御手段(300)、を備えたことを特徴とする請求項3に記載の作業車両である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、除草剤を圃場に散布する電動の除草剤散布装置(61)と、殺虫殺菌剤を苗に散布する電動の殺虫剤散布装置(66)と、を有する前記植付装置(10)と、前記車体(4)に設けられた表示部(31a)に、前記除草剤散布装置(61)および前記殺虫剤散布装置(66)の電源の入切状態を表示させる前記制御手段(300)と、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の作業車両である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、作業機(10,150,160,170,180)が取り外されている場合に基準データ取得モードと自動走行モードと遠隔操作モードへの移行を規制することで、作業機(10,150,160,170,180)の装着が不完全な状態で自律走行が開始される場合に比べて、時間や手間の無駄を削減することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、直播装置(150)および植付装置(10)以外の作業機が装着された場合に、自律走行することを規制できる。
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、基準データ取得モード、自動走行モードおよび遠隔操作モードのいずれかのモードが実行中に、作業機(10,150)が取り外された場合に、手動走行モードに強制的に移行させることで、作業不良や事故の発生を抑制できる。
請求項4記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、種子の減少を作業者に報知できる。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、種子を送り出す部材(151)の異常を作業者に報知できる。
請求項6記載の発明によれば、請求項3記載の発明の効果に加えて、自動走行モードと遠隔操作モードではクラッチ(152)が切られた状態が継続しても遠隔操作具(102)に報知させないことで、作業者への不必要な報知が削減できる。
請求項7記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、除草剤散布装置(61)および殺虫剤散布装置(66)の電源の入切状態を表示することで、作業者に状態を報知できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は実施の形態の苗移植機の側面図である。
図2図2は苗移植機の正面図である。
図3図3は苗移植機の平面図である。
図4図4は実施の形態の制御部の機能ブロック図である。
図5図5は実施の形態の表示パネルの一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施の形態を、以下に説明する。
図1は実施の形態の苗移植機の側面図である。
図2は苗移植機の正面図である。
図3は苗移植機の平面図である。
【0018】
本発明の実施の形態の作業車両の一例としての苗移植機1は、高床乗用走行形態の車体4の後側に、リフトシリンダ(図示せず)の油圧伸縮によって昇降回動される平行リンク形態のリフトリンク機構11を介して、作業機の一例であり、植付装置の一例として、多条植機体の苗植付部10が装着されている。この苗植付部10は、前記リフトリンク機構11に連結する苗移植機体5の下側部に、土壌面を滑走均平するセンタフロートや、サイドフロート等の複数のフロート6を配置している。苗移植機体5は、伝動ケースを主体として、この上部の多数枚のマット状の苗(マット苗)を敷き並べて、後端下りの傾斜面に沿って繰出案内して、この後下端部に形成の苗取出口7へ繰出する苗タンク8と、この苗取出口7に繰出されたマット苗を分離保持して下方の均平土壌面へ挿込む植付爪を、側面視楕円形状の植付軌跡線に沿って作動させる植付装置9等を配置して、多条植形態の苗植付作動を行わせる。
【0019】
前記車体4の運転席28の下部には、エンジンカバー29下にエンジン(内燃機関)30を搭載し、この運転席28の前方部にステアリングボード31、及び、走行操作具の一例としてのステアリングハンドル32、その他、苗移植機1の運転操作のための操作機構33等が配置されている。ステアリングボード31には、表示部の一例としての表示パネルや入力部の一例としての各種ボタンやツマミ等が配置されている。
前記運転席28、ステアリングボード31、及びこれらの間のセンタフロア34等の左右両側部には、車体4の前端部から後端部上のリアフェンダ24に亘って一連に長く、かつ横幅広く形成のサイドフロア2が構成されている。運転者や、補助作業者は、このサイドフロア2上面を前後移動して、マット苗補給作業や、肥料補給作業等を行い易くなっている。
【0020】
図1図3に示す苗移植機1では、苗植条数を八条植形態として、横幅の広い規格に設定しているため、前記サイドフロア2の外側に沿って適宜幅のサブフロア35を増設して、前記苗植付部10の幅域に対応させている。なお、サブフロア35を設けない構成とすることも可能である。このサブフロア35の前端部上には、車体4の横側から立設の支持フレーム36上に複数段の補助苗棚26を設けて、後側の苗タンク8へ補給するための、マット苗を積込収容しておくことができる。このサブフロア35の外側部に運転者乗降用のステップ37を設ける。
また、サブフロア35の側方には、左右一対の線引きマーカ41が配置されている。線引きマーカ41は、左右の内、苗が未植付の側の線引きマーカ41が展開されて、圃場の表層に走行の基準となる線を引く。
【0021】
前記運転席28の後側部には、サイドフロア2の後端部に亘って横幅広く段高形態のリアフロア3を構成し、このリアフロア3の前端縁は、サイドフロア2の後端縁に前下り傾斜の傾斜板38で連結して、足元移行の行い易い形態としている。この傾斜板38の下端部には、短い操作レバー機構39を配置して、運転席28からの操作を行い易くしている。このリアフロア3の上方位置には、後側縁上に沿う後辺部50と、左右側縁上に沿う側辺部51とによって、コ字状形態に囲うガードレール52を構成し、リアフロア3上で運転者が補給作業するときの作業姿勢を安全に維持できる。
【0022】
前記車体4の後輪27の上方部には、リアフェンダ24が構成されていて、このリアフェンダ24の上側に前記リアフロア3の左右側端部を構成している。前輪40、後輪27は、サイドフロア2、及びリアフロア3の横幅内部域に配置されるが、特に後輪27のトレッドの広い形態によっては、このリアフロア3の幅域から外側へ張出す形態となることがある。このため、リアフェンダ24は、リアフロア3の外側端よりも外側へ幅広く張出す形態に構成することも可能であり、又、前記リアフロア3自体の下面をリアフェンダ24として共用する形態とすることも可能である。
【0023】
前記車体4の後側部には、土壌面を滑走して苗移植機体5を支持するフロート6と、マット苗を受けて後側下部の苗取出口7へ繰出す苗タンク8と、この苗取出口7に繰出されたマット苗を分離保持して前記フロート6による均平土壌面に植付ける植付装置9とからなる苗植付部10が、昇降可能のリフトリンク機構11を介して装着されている。前記リアフロア3の外側部に前後方向に沿って複数基の施肥装置12が配置されている。
【0024】
苗移植機1による苗植作業時には、苗植付部10が下降した状態で、各フロート6で均平した土壌面に植付装置9が作動して、苗タンク8の苗取出口7に繰出したマット苗を適数本に分離しながら保持して、均平土壌面に一定深さに植付ける。各植付装置9による植付部に施肥を行うときは、予め施肥ホッパ19に供給していた粒状肥料が繰出装置15によって繰出口部に繰り出されて、ブロア13からリアフロア3下側のダクト14を経て送風される送風力によって、各施肥条毎の施肥ホース25を経て各フロート6によって均平された植付土壌面の植付近傍位置に施肥が行われる。
【0025】
苗植付部10を上昇させる時の苗タンク8の上端部を、このリアフロア3の上方位置へ
接近させるように上昇させることができ、リアフロア3面上からの作業者によるマット苗の補給作業を行い易くすることができ、迅速で、的確な苗補給を行うことができる。
【0026】
また、前記リアフロア3の左右両側端部を、リアフェンダ24として構成するか、または、リアフェンダ24の上側部に構成し、このリアフェンダ24の上方位置に前記複数基の施肥装置12を配置する。
【0027】
前記運転席28横側のサイドフロア2の後端部に形成されるリアフロア3の左右両側端部は、高床形態の車体4の後輪27上側部を覆うリアフェンダ24の上方位置に配置されるため、前記のように苗タンク8に対するマット苗補給作業時の踏付移動の邪魔になり難く、このサイドフロア2後側位置のリアフロア3の横端部の足元域を広く形成して、後方側の苗タンク8に対する苗補給作業や、横側の施肥ホッパ19に対する肥料補給作業等を容易に行わせることができる。
【0028】
実施の形態の苗植付部10には、苗タンク8の下方には、除草剤散布装置61が設置されている。実施の形態の除草剤散布装置61は、左右方向に間隔をあけて複数配置されている。除草剤散布装置61は、除草剤が収容される除草剤ホッパ62を有する。除草剤ホッパ62の出口部分には、作動時に回転して除草剤を繰り出して圃場に散布する繰り出し部材63が配置されている。実施の形態の繰り出し部材63は電動であり、電力の供給制御で繰り出し部材63の作動/非作動や繰り出し速度等を制御可能である。
【0029】
また、苗タンク8の外側(後上方)には、殺虫剤散布装置66が設置されている。殺虫剤散布装置66は、左右方向に延びるガイド部材67に沿って左右方向に移動可能な殺虫剤ホッパ68を有する。殺虫剤ホッパ68には、苗タンク8に搭載された苗(マット苗)に散布される殺虫殺菌剤が収容されている。殺虫剤ホッパ68の出口には、殺虫剤繰り出し部材69が配置されている。実施の形態の殺虫剤繰り出し部材69は、繰り出し部材63と同様の構成であり、電動であり、作動時に殺虫剤ホッパ68内の殺虫殺菌剤がマット苗に散布される。また、殺虫剤ホッパ68には、図示しない電動の移動用モータが搭載されており、移動用モータの作動によりガイド部材67に沿って殺虫剤ホッパ68が往復移動する。したがって、殺虫剤繰り出し部材69が作動しながら殺虫剤ホッパ68が往復移動することにより、苗タンク8上のマット苗の全域に殺虫殺菌剤が散布可能である。
【0030】
実施の形態の苗植付部10では、除草剤散布装置61や殺虫剤散布装置66が設置されているが、除草剤散布装置61や殺虫剤散布装置66は苗植付部10に対して着脱可能である。すなわち、除草剤散布装置61や殺虫剤散布装置66は、いわゆるオプションユニットであり、作業者の要望に応じていずれか一方のみを設置したり、両方設置しない構成とすることも可能である。
【0031】
なお、実施の形態では、作業機として、マット苗から植付爪で苗を圃場に植え付ける植付装置の一例としての苗植付部10を例示したが、これに限定されない。リフトリンク機構11に着脱可能な作業機としては、例えば、種子を圃場に播く直播装置や、圃場の草を除去する除草機、圃場内の水の流路を形成する溝切機、薬剤の散布を行う管理機等の従来公知の種々の作業機が使用可能である。
【0032】
実施の形態の苗移植機1は、無線通信回線101を介して、遠隔操作具の一例としてのタブレット端末102との間で情報の送受信が可能である。タブレット端末102は、表示部の一例であって入力部の一例としてのタッチパネル102aと、電源ボタン等の複数の入力ボタン102b等を有する。前記タブレット端末102に作業者が入力操作することで、苗移植機1を遠隔操作することが可能である。したがって、作業者が苗移植機1から離れた位置(例えば、圃場の外側)から遠隔操作することも可能であるし、作業者が運転席28に座った状態でステアリングハンドル32等を操作せずにタブレット端末102を操作して苗移植機1の走行や植付作業の操作をすることも可能である。
【0033】
(制御部の説明)
図4は実施の形態の制御部の機能ブロック図である。
(苗移植機の制御部の説明)
実施の形態の苗移植機1は、各機能を制御する制御手段の一例としての制御部300を有する。制御部300は、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、制御部300は、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、制御部300は、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、制御部300は、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。したがって、実施の形態の制御部300は、小型の情報処理装置、いわゆるマイクロコンピュータにより構成されている。よって、制御部300は、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0034】
制御部300には、ステアリングボード31の各種ボタンやツマミ、操作機構33、切れ角センサSN1、右後輪回転センサSN2a、左後輪回転センサSN2b、作業機接続センサSN3、残量センサSN4、異常検出センサSN5、GNSS、デフスイッチSW1、その他の図示しない各種センサ(例えば除草剤ホッパ62内の残量センサ)等の信号入力要素からの信号が入力される。
【0035】
切れ角センサSN1は、ステアリングハンドル32の操作量(切れ角)を検出する。
右後輪回転センサSN2aは、右後輪27Rの回転数を検出する。
左後輪回転センサSN2bは、左後輪27Lの回転数を検出する。
作業機接続センサSN3は、作業機(苗植付部10等)の接続、着脱を検出する。
残量センサSN4は、作業機が直播装置150である場合に直播装置150から撒かれる種子の残量を検出する。実施の形態の残量センサSN4は、直播装置150のホッパ内の重量を検出して種子の残量を検出する。
異常検出センサSN5は、作業機が直播装置150である場合に直播装置150の異常を検出する。実施の形態の異常検出センサSN5は、直播装置150から種子を送り出す部材(繰り出しロール151)の下流側に配置されており、繰り出しロール151から送り出されて通過する種子の量を検出する。
GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)は、車体4の現在位置を取得する。
デフスイッチSW1は、苗移植機1のデファレンシャル(作動装置)で旋回時の内外輪差を自動的につけるデフロックを行うか否かを入力するためのスイッチである。
また、制御部300には、タブレット端末102から送信された情報が入力される。
【0036】
制御部300は、被制御要素の一例としてのリフトシリンダや植え付けクラッチ等に制御信号を送信して、作業機(苗植付部10)の昇降や、作業機(苗植付部10)の作動/停止を制御可能である。
また、制御部300は、作業機として苗植付部10が装着されている場合には、電動の除草剤散布装置61の繰り出し部材63や、電動の殺虫剤散布装置66の殺虫剤繰り出し部材69や移動用モータ70に制御信号を送信して制御する。
さらに、制御部300は、作業機として直播装置150が装着されている場合には、直播装置150の繰り出しロール151(繰り出し部材63と同様の構成)や、繰り出しロール151の入切を切り替えるクラッチ152に制御信号を送信して制御する。
また、制御部300は、表示部の一例としてのステアリングボード31のモニタ31aに制御信号を出力する。
さらに、制御部300は、タブレット端末102に向けて情報を出力する。
【0037】
実施の形態の制御部300は、以下の機能手段(プログラムモジュール)を有する。
作業機判別手段301は、作業機接続センサSN3を通じて、接続されている作業機の種類(苗植付部10、直播装置150、除草機160、溝切機170、管理機180等)を判別する。
【0038】
ティーチングモード制御手段302は、圃場の外周の基準となる箇所(実施の形態では圃場の外縁)に沿って車体4を走行させて基準データ(ティーチングデータ、教師データ)を取得する基準データ取得モードの一例ととしてのティーチングモードを実行させる。実施の形態のティーチングモード制御手段302は、ステアリングボード31またはタブレット端末102からの入力でティーチングモードの開始の入力がされた後に、ステアリングハンドル32等を作業者が手動操作またはタブレット端末102で遠隔操作して苗移植機1を走行させ、ステアリングボード31等でティーチングモードの終了の入力がされるまでの走行軌跡、すなわち、走行経路に沿ったGNSSの位置情報の時間的な履歴データを、基準データとして取得する。
【0039】
自動走行モード制御手段303は、基準データに基づいて車体4を自動的に走行させる。実施の形態の自動走行モード制御手段303は、ティーチングモードで得られた基準データから車体4の走行経路を自動的に算出し、ステアリングボード31またはタブレット端末102からの入力で自動走行モードの開始の入力がされた後に、車体4の走行や作業機(苗植付部10等)の動作を制御して、走行経路に沿って車体4を走行させつつ、作業機で作業させる。
【0040】
遠隔操作モード制御手段304は、タブレット端末102からの入力に基づいて車体4を制御して、車体4を走行させる。実施の形態の遠隔操作モード制御手段304は、ステアリングボード31またはタブレット端末102からの入力で遠隔操作モードの入力がされた場合に、タブレット端末102からの入力に応じて、車体4の走行や作業機の動作を制御する。
【0041】
手動操作モード制御手段305は、ステアリングハンドル32の操作に基づいて車体4を走行させる。実施の形態の手動操作モード制御手段305は、ステアリングボード31またはタブレット端末102からの入力で手動操作モードの開始の入力がされた場合に、ステアリングハンドル32やアクセルペダル、ブレーキペダル等の走行操作具の操作に応じて車体4の走行を制御すると共に、ステアリングボードの各種ボタン等の入力に応じて作業機の動作を制御する。
なお、実施の形態の苗移植機1では、苗移植機1の電源投入時(起動時、初期状態、デフォルト状態)は手動操作モードとなるように設定されているが、設計や仕様等に応じて変更可能である。
【0042】
モード移行手段306は、ステアリングボード31またはタブレット端末102からの入力に応じて、ティーチングモードや自動走行モード、遠隔操作モード、手動操作モードの切り替えを行う。実施の形態のモード移行手段306は、作業機接続センサSN3の検出結果に基づいて、作業機が取り外されている場合には、ティーチングモードと自動走行モードと遠隔操作モードへの移行を規制する。すなわち、作業機が取り外されている場合には、手動操作モードでの制御か、車体4の停止しかできないように、モードの移行が規制される(ティーチングモード等に移行できない)。
【0043】
また、実施の形態のモード移行手段306は、作業機判別手段301の判別結果から、装着されている作業機が除草機160、溝切機170、管理機180のいずれかの場合には、ティーチングモードと自動走行モードと遠隔操作モードへの移行を規制する。すなわち、実施の形態では、装着されている作業機が苗植付部10または直播装置150の場合にのみ、ティーチングモードと自動走行モードと遠隔操作モードを実行可能で、苗植付部10および直播装置150以外の作業機が装着されている場合には、ティーチングモード等に移行できないように構成されている。
【0044】
さらに、実施の形態のモード移行手段306は、苗植付部10または直播装置150が装着された状態で、ティーチングモード、自動走行モード、遠隔操作モードのいずれかが実行中に、作業機接続センサSN3の検出結果から作業機が取り外されたと判別された場合には、ティーチングモード等を強制的に終了して、手動走行モードに強制的に移行させる。
【0045】
残量検出手段307は、作業機が直播装置150の種子の残量を検出する。実施の形態の残量検出手段307は、残量センサSN4の検知結果に基づいて、直播装置150の種子の残量が予め定められた量以上残っているかを判別する。
作業機異常検出手段308は、作業機の異常を検出する。実施の形態の作業機異常検出手段308は、作業機が直播装置150の場合には、繰り出しロール151を作動させる制御信号を繰り出しロール151に送信しても、種子の送出しが異常検出センサSN5で検出されない場合に、繰り出しロール151に異常が発生したと判別する。
【0046】
クラッチ入れ忘れ検出手段309は、作業機の作動/非作動を切り替えるクラッチの入れ忘れを検出する。実施の形態のクラッチ入れ忘れ検出手段309は、作業機が直播装置150の場合に、直播装置150が下降してフロート6が接地し、且つ、クラッチ152が切り状態で、予め定めれた距離走行すると、入れ忘れと判別する。
電源入切検出手段310は、作業機の電動の部材、装置の入切を検出する。実施の形態の苗植付部10において、電動の除草剤散布装置61や殺虫剤散布装置66が作動中は、電源が「入」と判別し、停止中は、電源が「切」と判別する。
【0047】
報知制御手段311は、苗移植機1の稼働状況を作業者に報知する制御を行う。実施の形態の報知制御手段311は、ステアリングボード31の表示パネルへの画像表示を制御したり、タブレット端末102に表示させる情報の送受信を制御することで、報知の制御を行う。なお、報知は、画像表示に限定されず、音声案内やランプの点灯、警報ブザーの作動等、任意の報知方法を採用可能である。報知制御手段311は、ティーチングモード等の各モードに移行した場合に、実行中のモードを表示したり、直播装置150の種子の残量が少なくなった場合、作業機で異常が発生した場合、クラッチ152の入れ忘れと判別されたりすると、その旨の表示を行う。
【0048】
ここで、クラッチ152の入れ忘れについては、自動走行モードまたは遠隔操作モードが実行中は、実施の形態では、クラッチ152の入れ忘れと判別されても、報知が行われない。自動走行モードや遠隔操作モードでは、モード中に条数調整等が行われると、クラッチ152の入れ忘れと判別される条件を満たす場合がしばしばある。したがって、クラッチ152の入れ忘れの度に、作業者に報知されると、不必要な報知、警報がされてしまう。したがって、実施の形態では、自動走行モードや遠隔操作モードではクラッチ152の入れ忘れと判別されても報知は行われない。一方、手動操作モードの実行中に、クラッチ152の入れ忘れ条件が満たされた場合には、報知がされる。
【0049】
図5は実施の形態の表示パネルの一例の説明図である。
パネル表示制御手段311aは、ステアリングボード31の表示パネルへの画像表示を制御する。図5において、一例として、実施の形態の表示パネルのオプション電源表示画面401は、除草剤散布装置61の電源の入切状態を表示する除草入切表示部401aと、殺虫剤散布装置66の電源の入切状態を表示する殺虫入切表示部401bと、除草剤散布装置61の電源の入り切りの入力を行う除草入切入力ボタン401cと、殺虫剤散布装置66の電源の入り切りの入力を行う殺虫入切入力ボタン401dと、車体4の燃料の残量表示を行う燃料表示部401eと、GNSSの受信レベルを表示するGNSS表示部401fとを有する。除草入切入力ボタン401cや殺虫入切入力ボタン401dは、表示パネルに指等で触れる度に、「入」、「切」を切り替えることが可能であり、除草入切入力ボタン401cおよび殺虫入切入力ボタン401dでの入力に応じて除草入切表示部401aおよび殺虫入切表示部401bの表示も「入」、「切」が変更される。なお、入力は、表示パネルへ指で触れる操作に限定されず、入力用のボタンをステアリングボード31に設ける構成とすることも可能である。
【0050】
また、オプション電源表示画面401は、常時表示される画面とすることも可能であるし、特定のボタンの入力やつまみの回転、フリック入力等がされた場合に表示されるように構成することも可能である。さらに、オプション電源表示画面401は、除草剤散布装置61および殺虫剤散布装置66の一方または両方が装着されていなくても表示されるように構成することも可能であるが、装着されている場合にのみ表示されるようにすることで、不要な画像表示を省略することも可能である。
【0051】
端末表示制御手段311bは、タブレット端末102に向けて報知画像を表示する制御信号を送信する。タブレット端末102のタッチパネル102aに、実行中のモードの表示や、種子の残量が少なくなったことの報知、作業機で異常が発生したことの報知、クラッチ152の入れ忘れの報知、オプション電源表示画面401の表示等をするように制御信号を送信する。
【0052】
車輪回転検出手段312は、右後輪回転センサSN2aと左後輪回転センサSN2bの検出結果に基づいて、右後輪27Rと左後輪27Lの回転数をそれぞれ検出する。
舵角検出手段313は、切れ角センサSN1の検出結果に基づいて、ステアリングハンドル32の切れ角に応じた車体4の舵角(進行方向、向き)を検出する
デフスイッチ入力判別手段314は、デフスイッチSW1の入力が「オン」であるか「オフ」であるかを判別する。
【0053】
オートデフ制御手段315は、デフスイッチSW1が「オン」の場合に、旋回時にデファレンシャルで内外輪差をつけて旋回を行うオートデフ制御を行う。すなわち、ステアリングハンドル32が操作されて旋回を行う際に、旋回時の舵角に応じて内輪の回転数を外輪の回転数に対して少なくするように制御する。実施の形態のオートデフ制御手段315は、デフスイッチSW1が「オフ」の場合には、オートデフ制御を行わない。
【0054】
スリップ監視手段316は、車体4のスリップ(車輪の空回転)を監視する。実施の形態のスリップ監視手段316は、デフスイッチSW1が「オフ」の場合に、スリップサンプリング間隔(例えば、1秒ごと)の右後輪27Rと左後輪27Lの検出数の和が一定値(一例として30カウント)以上の場合に、苗移植機1の車速を一定以上として、スリップを監視する。旋回時のスリップの判別は、例えば、右後輪27Rの検出数と、左後輪27Lの検出数との差分が、予め定められたスリップ判別値(例えば、450カウント)に達する場合には、スリップが発生していると判別することが可能である。
【0055】
実施の形態のスリップ監視手段316は、スリップが検出されると、車体4の走行を停止させ、タブレット端末102に報知を行うが、これに限定されず、走行を停止せず、タブレット端末102等にスリップの発生を報知するだけとすることも可能である。
なお、スリップ監視手段316は、ステアリングハンドル32の舵角が一定状になった場合にスリップの監視を開始し、直進状態となった場合にスリップの監視を終了(リセット、初期化)する。また、デフスイッチSW1が「オン」になった場合にもスリップの監視を終了する。
【0056】
スリップ監視手段316でスリップが検出された場合には、スリップを抑制するために、実施の形態のスリップ監視手段316はデフスイッチSW1を強制的に「オン」にしてオートデフ制御を行わせる。オートデフ制御が強制的に開始された場合、一定時間経過後(例えば1秒後)に、効果確認サンプリング間隔(例えば、2秒ごと)の右後輪27Rと左後輪27Lの検出数の和が一定値(一例として142カウント)以上の場合に、苗移植機1の車速を一定以上として、スリップが解消したかどうか、すなわち、オートデフの効果があったか否かを確認することが好ましい。例えば、右旋回中に、左後輪27Lの検出数が500カウントに達した時に、右後輪27Rの検出数が50カウント未満の場合にはスリップしている(スリップが解消されていない)と判別し、50カウントに達している場合はスリップしていない(スリップが解消された)と判別することが可能である。オートデフの効果の確認は、舵角が直進状態になる(オートデフ制御が終了する)と終了することが可能である。
【0057】
なお、実施の形態のスリップ監視手段316は、旋回時のみスリップの監視を行う構成を例示したが、これに限定されない。直進時の右後輪27Rと左後輪27Lが所定値(例えば、1m相当のカウント値)に達した場合に、GNSSの検出結果から車体が所定距離(例えば、1m)未満しか移動していない場合には、スリップが解消されていないと判断し、車体4の走行を停止させることも可能である。なお、スリップが解消された場合は、次回の旋回が検出されるまでスリップの監視を中断することも可能であるし、直進中は係属してスリップの監視を続ける構成とすることも可能である。
【0058】
また、実施の形態では、スリップが検出されるとオートデフ制御を強制的にオンにする場合を例示したが、これに限定されない。例えば、四輪駆動と二輪駆動を切り替えられる作業車両の場合は、強制的に四輪駆動に切り替える構成とすることも可能である。
【0059】
前記構成を備えた実施の形態の苗移植機1では、作業機が取りつけられていない場合に、ティーチングモードや自動走行モード、遠隔操作モードへの移行が規制される。作業機が取り付けられていないということは、車体4の制御部300が作業機を認識していない状態であり、作業機の装着が不完全または取り外された状態である。この状態で、自動走行モードや遠隔操作モードが実行されると、作業機が圃場に降下するが回転、駆動されなかったりして作業が行われなかったり、作業機が破損したりする恐れがある。また、自動走行モードの前提となるティーチングモードを実行しても、ティーチングモード後に作業機の装着不完全が判明しても、作業機の装着不完全の解消後に再度ティーチングモードを実行することとなり、時間や手間が無駄になる。これらに対して、実施の形態では、作業機が取りつけられていない場合に、ティーチングモードや自動走行モード、遠隔操作モードへの移行が規制されており、作業機の装着が不完全な状態で自律走行が開始される場合に比べて、作業が行われなかったり、作業機が破損したり、時間や手間の無駄が削減される。
【0060】
また、実施の形態では、作業機が苗植付部10または直播装置150以外の場合には、自動走行モード等に移行されない。したがって、苗植付部10または直播装置150の場合のみ作業者が搭乗しなくてもよい自律走行や遠隔操作が可能となっている。
また、実施の形態では、自動走行モード等で作業中に作業機が取り外された場合に、強制的に手動走行モードに移行する。現実問題として、作業中に作業機が取り外されたと認識される状況は、作業機の装着が不完全で作業機が途中で外れてしまった状態や、作業機と車体4とを接続するケーブルの断線、あるいはケーブルを連結するコネクタが外れるといった状況が考えられる。作業中に作業機が取り外されたと判別される状況のまま、作業を継続すると、作業が不完全になったり、事故が発生する恐れがある。したがって、実施の形態では、このような場合に強制的に手動走行モードに移行させることで、それ以上の自動走行を規制し、事故の発生等を抑制している。
【0061】
また、実施の形態では、直播装置150の種子の残量が少なくなったり、繰り出しロール151の異常が検出されると、タブレット端末102に表示される。したがって、作業者に種子の残量減少等を報知できる。
また、実施の形態では、自動走行モードや遠隔操作モードでは、クラッチ152の入れ忘れが報知されない。したがって、不必要な報知が削減される。
また、実施の形態では、オプション電源表示画面401に、除草剤散布装置61や殺虫剤散布装置66の電源の入り切りの状態が表示され、作業者が容易に状況を確認可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の作業車両は、苗移植機に限定されず、トラクタや薬液散布車両、除雪車、芝刈り機等、各種作業用車両にも適用できる。なお、作業機も例示したものに限定されず、整地機、収穫機等の任意の作業機に適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…作業車両、
4…車体、
10…植付装置、
10,150,160,170,180…作業機、
28…座席、
31a…表示部、
32…走行操作具、
61…除草剤散布装置、
66…殺虫剤散布装置、
102…遠隔操作具、
150…直播装置、
151…種子を送り出す部材、
152…クラッチ、
160…除草機、
170…溝切機、
180…管理機、
300…制御手段。
図1
図2
図3
図4
図5