(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008717
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】カフェイン除去マテ抽出物、抗肥満用組成物、カフェイン除去方法及びマテ抽出物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240112BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240112BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240112BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240112BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240112BHJP
A23F 3/34 20060101ALN20240112BHJP
A23F 3/36 20060101ALN20240112BHJP
A23L 2/80 20060101ALN20240112BHJP
A23L 2/38 20210101ALN20240112BHJP
【FI】
A23L33/105
A61P3/04
A61K36/185
A61K8/9789
A61Q19/00
A23F3/34
A23F3/36
A23L2/80
A23L2/38 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110805
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】595132360
【氏名又は名称】株式会社常磐植物化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】楊 金緯
(72)【発明者】
【氏名】内山 晋司
(72)【発明者】
【氏名】小林 夕希子
【テーマコード(参考)】
4B018
4B027
4B117
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD10
4B018MD48
4B018ME01
4B018MF01
4B027FB15
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4B027FP74
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4B117LG24
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4C083AA111
4C083EE11
4C083FF04
4C088AB12
4C088BA08
4C088NA14
4C088ZA70
(57)【要約】
【課題】カフェインを除去したマテ(Ilex paraguariensis)抽出物、及びその製造方法、カフェイン除去マテ抽出物を有効成分とする抗肥満用組成物を提供する。
【解決手段】
マテ(Ilex paraguariensis)の抽出液および、または抽出物から吸着剤によりカフェインを除去することによりカフェイン除去マテ抽出物を得る。なお、このマテ抽出物は食品組成物、医薬品組成物、化粧品組成物として適用することが可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフェインが除去されたマテ抽出物を製造する方法であって、マテ(Ilex paraguariensis)原抽出物から酸性白土によりカフェインを除去するステップ、を有するカフェイン除去マテ抽出物を製造する方法。
【請求項2】
マテ(Ilex paraguariensis)原抽出物から酸性白土によりカフェインを除去し、カフェイン1.0重量%以下、カフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸10重量%以上を含有するマテ抽出物。
【請求項3】
マテ(Ilex paraguariensis)原抽出物から酸性白土によりカフェインを除去し、カフェイン0.5重量%以下、カフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸15重量%以上を含有するマテ抽出物。
【請求項4】
マテ(Ilex paraguariensis)原抽出物から酸性白土によりカフェインを除去し、カフェイン1.0重量%以下、カフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸10重量%以上を含有するマテ抽出物を有効成分とする抗肥満用組成物。
【請求項5】
マテ(Ilex paraguariensis)原抽出物から酸性白土によりカフェインを除去し、カフェイン0.5重量%以下、カフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸15重量%以上を含有するマテ抽出物を有効成分とする抗肥満用組成物。
【請求項6】
マテ(Ilex paraguariensis)原抽出物から酸性白土によりカフェインが除去され、請求項2、請求項3のいずれかに記載のマテ抽出物を有効成分とする抗肥満用である食品用組成物、医薬品用組成物、又は、化粧品用組成物。
【請求項7】
マテ(Ilex paraguariensis)原抽出物から酸性白土によりカフェインを除去するステップ、カフェイン除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カフェイン除去マテ抽出物、抗肥満用組成物、カフェイン除去方法及びマテ抽出物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マテ(Ilex paraguariensis)は、モチノキ科モチノキ属の常緑樹であり、アルゼンチンやパラグアイ、ブラジルなどの南米を原産とする。マテにはビタミンやミネラルが豊富に含まれ、「飲むサラダ」とも言われ、南米では古くから重要な栄養源の一つとしてマテの葉を湯や水で浸出したマテ茶が飲用されてきた。
【0003】
マテは抗肥満作用や抗コレステロール作用、抗糖尿病作用、脂肪燃焼促進作用などの生理活性を有することが報告されている(非特許文献1、2)。マテの有効成分として、カフェインやポリフェノールなどが知られている。カフェインに関して、非特許文献3において、細胞試験ならびに動物試験で超臨界二酸化炭素抽出法を用いて抽出したマテ由来のカフェインでは脂肪蓄積量の抑制効果が見られたのに対し、カフェインを抽出した後の葉の抽出物では効果が見られなかったことが報告されている。また、マテ由来のカフェインで脂肪酸合成酵素の遺伝子発現量が減少した一方、カフェインを抽出した後の葉の抽出物では変化が見られなかったことが報告されており、マテ中のカフェインが脂肪合成を抑制することによって抗肥満効果をもたらすことが示唆されている。
【0004】
一方、カフェインにはアデノシン受容体阻害により神経を興奮させることが知られており、覚醒作用や利尿作用、胃酸分泌促進作用などがある。夜遅い時間に摂取すると睡眠が浅くなることや空腹時の摂取によって胃が荒れることがある。また、過剰摂取では、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠、下痢、吐き気などの症状を引き起こす。長期摂取では高血圧リスクが高くなる可能性があり、妊婦が高濃度のカフェインを摂取した場合に低体重児出産につながる可能性があると言われている。カフェインにはこうした弊害があることから、カフェインレスやノンカフェイン、デカフェといったカフェインを除去した飲食物の需要が高まっており、2025年度のペットボトル入りデカフェ飲料市場は約130億円となる見込みとなっている。
【0005】
また、マテにはポリフェノールとしてカフェ酸とキナ酸のエステル化合物であるカフェオイルキナ酸およびジカフェオイルキナ酸も含まれている。非特許文献4では、マテ熱水抽出物から単離されたクロロゲン酸(カフェオイルキナ酸の一種)及び3,5-ジカフェオイルキナ酸を投与した場合にマウスの摂餌量が有意に低下することを報告している。なお、カフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸には膵リパーゼ阻害作用があることが報告されており(非特許文献5)、これらの成分にも抗肥満作用や代謝改善作用が期待できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hussein, G. M., Matsuda, H., Nakamura, S., Akiyama, T., Tamura, K., & Yoshikawa, M. (2011). Protective and ameliorative effects of mate (Ilex paraguariensis) on metabolic syndrome in TSOD mice. Phytomedicine, 19(1), 88-97.
【非特許文献2】Dos Santos, T. W., Miranda, J., Teixeira, L., Aiastui, A., Matheu, A., Gambero, A., Portillo, M. P. & Ribeiro, M. L. (2018). Yerba Mate Stimulates Mitochondrial Biogenesis and Thermogenesis in High―Fat―Diet―Induced Obese Mice. Molecular nutrition & food research, 62(15), 1800142.
【非特許文献3】Zapata, F. J., Rebollo―Hernanz, M., Novakofski, J. E., Nakamura, M. T., & de Mejia, E. G. (2020). Caffeine, but not other phytochemicals, in mate tea (Ilex paraguariensis St. Hilaire) attenuates high―fat―high―sucrose―diet―driven lipogenesis and body fat accumulation. Journal of Functional Foods, 64, 103646.
【非特許文献4】Hussein, G. M. E., Matsuda, H., Nakamura, S., Hamao, M., Akiyama, T., Tamura, K., & Yoshikawa, M. (2011). Mate tea (Ilex paraguariensis) promotes satiety and body weight lowering in mice: involvement of glucagon―like peptide―1. Biological and Pharmaceutical Bulletin, 34(12), 1849-1855.
【非特許文献5】Narita, Y., Iwai, K., Fukunaga, T., & Nakagiri, O. (2012). Inhibitory activity of chlorogenic acids in decaffeinated green coffee beans against porcine pancreas lipase and effect of a decaffeinated green coffee bean extract on an emulsion of olive oil. Bioscience, biotechnology, and biochemistry, 76(12), 2329-2331.
【非特許文献6】Arcari, D. P., Bartchewsky Jr, W., Dos Santos, T. W., Oliveira, K. A., DeOliveira, C. C., Gotardo, E. M., Pedrazzoli Jr, J., Gambero, A., Ferraz, L. F. C., Carvalho, P. O. & Ribeiro, M. L. (2011). Anti―inflammatory effects of yerba mate extract (Ilex paraguariensis) ameliorate insulin resistance in mice with high fat diet―induced obesity. Molecular and cellular endocrinology, 335(2), 110-115.
【非特許文献7】Conceicao, E. P. S., Kaezer, A. R., Peixoto―Silva, N., Felzenszwalb, I., De Oliveira, E., Moura, E. G., & Lisboa, P. C. (2017). Effects of Ilex paraguariensis (yerba mate) on the hypothalamic signalling of insulin and leptin and liver dysfunction in adult rats overfed during lactation. Journal of developmental origins of health and disease, 8(1), 123-132.
【非特許文献8】Machado, M. L., Arantes, L. P., Gubert, P., Zamberlan, D. C., da Silva, T. C., da Silveira, T. L., Boligon, A. & Soares, F. A. A. (2018). Ilex paraguariensis modulates fat metabolism in Caenorhabditis elegans through purinergic system (ADOR―1) and nuclear hormone receptor (NHR―49) pathways. Plos one, 13(9), e0204023.
【非特許文献9】Balzan, S., Hernandes, A., Reichert, C. L., Donaduzzi, C., Pires, V. A., Junior, A. G., & Junior, E. L. C. (2013). Lipid―lowering effects of standardized extracts of Ilex paraguariensis in high―fat―diet rats. Fitoterapia, 86, 115-122.
【非特許文献10】Gao, H., Liu, Z., Qu, X., & Zhao, Y. (2013). Effects of Yerba Mate tea (Ilex paraguariensis) on vascular endothelial function and liver lipoprotein receptor gene expression in hyperlipidemic rats. Fitoterapia, 84, 264-272.
【非特許文献11】Carmo, L. S., Rogero, M. M., Cortez, M., Yamada, M., Jacob, P. S., Bastos, D. H. M., Borelli, P. & Ambrosio Fock, R. (2013). The effects of yerba mate (Ilex paraguariensis) consumption on IL―1, IL―6, TNF―α and IL―10 production by bone marrow cells in wistar rats fed a high―fat diet. International Journal for Vitamin and Nutrition Research, 83(1), 26-35.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
抗肥満作用や代謝改善作用を報告している文献では、マテ抽出物中のカフェインならびにカフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸の含量は表1のように報告されている。カフェインの含量は5.82~35.4mg/g、カフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸の含量は3.7~180.5mg/gであった。カフェイン含量が10mg/g(1.0重量%)以下、かつカフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸の含量が100mg/g(10重量%)以上は非特許文献9のみであった。しかしながら、非特許文献9のマテ抽出物はマテの70%エタノール抽出物を食品用途に使用できないn-ブタノールで分画し製造している。
【表1】
【0008】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、カフェインを1.0重量%以下まで除去し、かつカフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸の含量が10重量%以上を含有し、食品に使えるより安全なマテ(Ilex paraguariensis)抽出物の製造方法及びこれにより得られる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題についてマテ(Ilex paraguariensis)の製造方法を鋭意検討した結果、吸着剤によってカフェインを1.0重量%以下まで除去したマテ抽出物を製造する方法の開発に成功した。更に、カフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸の含量を10重量%以上維持し、細胞試験において脂肪蓄積抑制効果を実証し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明の一観点に係るカフェイン除去マテ抽出物を製造する方法は、マテ(Ilex paraguariensis)原抽出物から吸着剤によりカフェインを除去するステップ、を有するものである。
【0011】
また、本発明の他の一観点に係るマテ抽出物は、マテ(Ilex paraguariensis)原抽出物から吸着剤によりカフェインを除去し、カフェイン1.0重量%以下、カフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸10重量%以上を含有するものである。
【0012】
また、本発明の他の一観点に係るマテ抽出物はマテ(Ilex paraguariensis)原抽出物から吸着剤によりカフェインを除去し、カフェイン0.5重量%以下、カフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸15重量%以上を含有するものである。
【0013】
また、本発明の他の一観点に係る抗肥満用組成物は、マテ(Ilex paraguariensis)原抽出物から吸着剤によりカフェインを除去し、カフェイン1.0重量%以下、カフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸10重量%以上を含有するマテ抽出物を有効成分とするものである。
【0014】
また、本発明の他の一観点に係る抗肥満用組成物は、マテ(Ilex paraguariensis)原抽出物から吸着剤によりカフェインを除去し、カフェイン0.5重量%以下、カフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸15重量%以上を含有するマテ抽出物を有効成分とするものである。
【0015】
また、本発明の他の一観点に係る抗肥満用の食品用組成物、医薬品用組成物、又は、化粧品用組成物は、マテ(Ilex paraguariensis)原抽出物から吸着剤によりカフェインが除去され、上記観点のいずれかに記載のマテ抽出物を有効成分とする。
【0016】
また、本発明の他の一観点に係るカフェイン除去方法は、マテ(Ilex paraguariensis)原抽出物から吸着剤によりカフェインを除去するステップ、を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
以上、本発明によって、カフェインを除去したマテ抽出物及びその製造方法、マテ抽出物を有効成分とする抗肥満用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】3T3―L1細胞を用いた試験におけるマテ原抽出物、カフェイン除去マテ抽出物による脂肪蓄積量の抑制効果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例において記載された例示にのみ限定されるわけではない。
【0020】
(製造方法)
本発明の製造方法(以下「本方法」という。)は、吸着剤によりマテ原抽出物からカフェインを除去し、カフェインが除去されたマテ抽出物を得るものである。
【0021】
本方法に用いられるマテ(Ilex paraguariensis)の使用部位は特に制限なく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、全草、地上部、茎、葉、根を用いることができ、葉を用いることがより好ましい。またマテは生、乾燥、葉を加工したものを利用できる。
【0022】
マテ原抽出物の抽出方法は特に制限されず、当業者に周知の方法にしたがって行うことができる。抽出溶媒としては、水または温水、アルコール系溶媒、およびアセトン等その他の有機溶媒を用いることができる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等及びこれらの混合物を例示することができる。アセトン以外のその他の有機溶媒としては、酢酸エチルなどのエステル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール類;ジエチルエーテルなどのエーテル類などを例示することができる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。抽出溶媒は、水と親水性有機溶媒を組み合わせて含水親水性溶剤の形態で使用してもよい。溶媒を組み合わせて使用する場合、溶媒の混合比率は任意に設定することができる。これらの中でも水を用いることがより好ましい。
【0023】
抽出溶媒の量は、上記効果を発揮する本組成物を得ることができる限りにおいて限定されるものではないが、マテ葉の乾燥1重量部に対して、2重量部以上100重量部以下であることが好ましい。抽出温度は4℃以上90℃であることが好ましい。抽出時間は30分以上1週間以下であることが好ましい。抽出方法は攪拌抽出、浸漬抽出、向流抽出、超音波抽出、超臨界抽出などの任意の方法で行うことができる。
【0024】
上記工程を経ることによって得られるマテ原抽出物から吸着剤によってカフェインを除去することで、濃縮乾燥することでカフェインが除去されたマテ抽出物(カフェイン除去マテ抽出物)を得ることができる。ここで吸着剤は、カフェインを除去できるものである限りにおいて限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸性白土、シリカ-マグネシア系吸着剤やスチレン-ジビニルベンゼン系吸着剤などの合成吸着樹脂などを用いることができるが、中でも、カフェイン除去効率とカフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸含量の維持の観点から、酸性白土を用いることがより好ましい。酸性白土を用いる場合、これを用いない場合に比べてカフェインを90%以上削減することが可能となるだけでなく、カフェオイルキナ酸の含有量を10重量%以上維持することが可能である。
【0025】
カフェイン除去マテ抽出物は、得られた抽出液を濾過し得られた濾液そのもの、これを濃縮した濃縮液、濃縮液を乾燥して得られる乾燥物、これらの粗精製物又は精製物のいずれであってもよく、またこれらの混合物であってもよい。濃縮方法は、蒸発式濃縮、膜濃縮などの任意の方法で行うことができる。乾燥方法は、減圧乾燥、凍結乾燥、スプレー乾燥などの任意の方法で行うことができる。必要な場合にはデキストリンなどの賦形剤を入れてもよい。精製を行う場合は、当業者に既知の手段に従って行うことができる。例えば、合成吸着樹脂、活性炭、イオン交換樹脂、セファデックス、バイオゲルなどのゲル濾過剤、カラムクロマトグラフィー、再結晶などを単独で、または組み合わせて使用してもよい。
【0026】
また、本組成物は、食品組成物、医薬品組成物、又は化粧品組成物としての形態をとり、特に食品組成物の場合、機能性表示食品、健康食品としての形態をとりうる。更に食品の場合、固形物だけではなく飲料としての形態もとりうる。
【0027】
また本組成物が食品組成物であるときの形態は、例えばドリンク、キャンデー、ゼリー、グミなどのデザート類とする形態を挙げることができ、健康食品、機能性表示食品であるときの形態は、例えば錠剤、ハードカプセル、ソフトカプセル、顆粒、ドリンクなどの形態を挙げることができる。
【0028】
また本組成物が医薬品組成物である場合、その形態は、錠剤、カプセル剤、丸剤、液剤、乳剤を挙げることができる。投与方法は特に限定されるものではないが、経口投与可能な形態であることが望ましい。また製剤的に許容できる範囲で様々の担体を加えることができる。担体としては例えば賦形剤、着色剤、甘味剤、懸濁化剤等を挙げることができる。
【0029】
また本組成物が化粧品組成物である場合は、例えばローション、クリーム、パック、ゲル、乳剤、バルサム、軟膏、液剤、粉剤、またはその他の局所的もしくは内部的に適用可能な形態を挙げることができる。
【0030】
また本組成物におけるカフェイン除去マテ(Ilex paraguariensis)抽出物の含有量としては、想定される摂取量に合わせて適宜調整可能である。
【0031】
また本組成物におけるカフェイン除去マテ(Ilex paraguariensis)抽出物は、本組成物の効果を得ることができる限りにおいて限定されるわけではないが、1日あたり10mg以上1000mg以下であることが好ましく、より好ましくは20mg以上500mg以下である。
【0032】
また、本組成物におけるカフェイン除去マテ抽出物は、その抽出物中にカフェインが10mg/g以下であることが好ましく、より好ましくは5mg/g以下の範囲である。また、マテ抽出物中にカフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸の合計量が、10重量%以上含まれていることが好ましく、より好ましくは15重量%以上の範囲である。この範囲で含有されることにより、本組成物の効果を好ましく発揮することができる。
【0033】
マテ葉中のカフェインは1~2重量%との報告がある(非特許文献:Burris, K. P., Harte, F. M., Davidson, P. M., Stewart Jr, C. N., & Zivanovic, S. (2012). Composition and bioactive properties of yerba mate (Ilex paraguariensis A. St.―Hil.): a review. Chilean journal of agricultural research, 72(2), 268.)。マテ抽出物で換算した場合、2.5~5.0重量%となる。
【0034】
カフェインレスとは、カフェインを90%以上除去したものを指す。カフェイン含量が通常のマテ抽出物の10分の1以下とする場合、0.25~0.5重量%と計算され、この範囲とすることで、カフェインによる副作用の出現の可能性が低減できると考えられる。本発明では、カフェインが1.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以下とした。
【0035】
以上、本発明によって、カフェインを除去しながらも抗肥満効果を維持する組成物を提供することができる。
【実施例0036】
ここで実際に、上記実施形態に係る組成物を製造し、その効果を確認した。以下具体的に説明する。
【0037】
(1)吸着剤の検討
マテ(Ilex paraguariensis)乾燥葉100gに水1Lを加え、1時間加熱後、固液分離し抽出液を得た。抽出残渣を再度0.6Lの水にて、1時間加熱した後、固液分離し抽出液を得た。1回目の抽出液と2回目の抽出液をあわせたものに、酸性白土、合成吸着剤のいずれかの吸着剤を添加し、マテ原抽出物からのカフェイン除去に適した吸着剤を検討した。その結果、酸性白土はカフェオイルキナ酸含量を10重量%以上を保ったまま、最も効率よくカフェインを除去できることがわかった(表2)。
【表2】
【0038】
(2)抽出例1(カフェイン除去マテ抽出物の製造)
マテ(Ilex paraguariensis)乾燥葉100gに水1Lを加え、1時間加熱後、固液分離し抽出液を得た。抽出残渣を再度0.6Lの水にて、1時間加熱した後、固液分離し抽出液を得た。1回目の抽出液と2回目の抽出液をあわせ、酸性白土を添加し、攪拌後、ろ過した。ろ過液を減圧濃縮した後、乾燥させ、固形物として30gを得た。
【0039】
なお、上記得た固形物について、液体クロマトグラフィーによる測定を行ったところ、カフェイン除去マテ抽出物中、カフェインは0.23重量%であることを確認した。また、カフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸の合計値で22.04重量%含まれていることを確認した。
【0040】
(3)抽出例2(マテ原抽出物の製造)
マテ(Ilex paraguariensis)乾燥葉100gに水1Lを加え、1時間加熱後、固液分離し抽出液を得た。抽出残渣を再度0.6Lの水にて、1時間加熱した後、固液分離し抽出液を得た。1回目の抽出液と2回目の抽出液をあわせ、ろ過液を減圧濃縮した後、乾燥させ、固形物として30gを得た。
【0041】
なお、上記得た抽出例2について、液体クロマトグラフィーによる測定を行ったところ、カフェインは2.47重量%であった。また、カフェオイルキナ酸及びジカフェオイルキナ酸の合計値で17.06重量%以上含まれていることを確認した。
【0042】
(4)細胞試験(細胞内中性脂肪蓄積量)
3T3―L1細胞をDMEM(高グルコース)培地を用いて、37℃、5%CO2条件下で培養した。100,000 cells/mLとなるように調製し、インスリン(最終濃度:5μg/mL)、デキサメタゾン(DEX、最終濃度:25nM)、イソブチルメチルキサンチン(IBMX、最終濃度:0.5 mM)を用い、脂肪細胞への分化誘導を行った。分化誘導開始日より、抽出例1または抽出例2を最終濃度62.5、31.25、15.625μg/mLになるように添加した。3日ごとに培地を入れ替え、新たにインスリン(最終濃度:5μg/mL)、DEX(最終濃度:25nM)、IBMX(最終濃度:0.5 mM)、抽出例1または抽出例2(最終濃度:62.5、31.25、15.625μg/mL)を添加した。コントロールには抽出例1、2の代わりにDMSOを用いた。6日間の分化誘導終了後、ナイルレッド染色によって細胞内中性脂肪蓄積量を測定した(励起波長:525nm、蛍光波長:585nm)。
【0043】
カフェイン除去を行った抽出例1は濃度依存的に細胞内中性脂肪蓄積量抑制効果を示し、その効果はカフェイン除去を行わなかった抽出例2と同等であった(
図1)。このことから、カフェイン除去を行った場合にも抗肥満効果が維持されることが示された。
【0044】
以上、上記の細胞試験によって、本組成物が、抗肥満効果を持つことが確認された。