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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087188
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】ウォールチェイサー
(51)【国際特許分類】
   B23D 45/16 20060101AFI20240624BHJP
   B25F 5/02 20060101ALI20240624BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20240624BHJP
   B23D 45/10 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B23D45/16
B25F5/02
B25F5/00 H
B23D45/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201833
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 理穂
(72)【発明者】
【氏名】川上 高弘
(72)【発明者】
【氏名】今井田 大樹
【テーマコード(参考)】
3C040
3C064
【Fターム(参考)】
3C040AA03
3C040LL05
3C064AA06
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA06
3C064BA12
3C064BA19
3C064BA33
3C064BB44
3C064BB71
3C064BB77
3C064BB79
3C064BB84
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA25
3C064CA27
3C064CA55
3C064CB05
3C064CB17
3C064CB32
3C064CB36
3C064CB63
3C064CB69
3C064CB71
3C064CB77
3C064CB84
3C064CB85
3C064CB91
(57)【要約】
【課題】落下による衝撃からウォールチェイサーを保護可能な技術を提供する。
【解決手段】ウォールチェイサーは、第1軸周りに回転可能なモータシャフトを有するモータと、第1軸と直交しウォールチェイサーの左右方向を規定する出力軸周りに回転可能なスピンドルと、スピンドルの工具装着部を左右方向における第1の側に突出させた状態でスピンドルとギヤ機構とを収容するギヤハウジングと、前後方向においてギヤハウジングと接続され、モータを収容するモータハウジングを含むリヤ部分とを備える。ギヤハウジングは、左右方向における第1の側とは反対側の第2の側に突出する第1突出部を有する。リヤ部分は、第2の側に突出する第2突出部を有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォールチェイサーであって、
前記ウォールチェイサーの前後方向を規定する第1軸周りに回転可能なモータシャフトを有するモータと、
前記第1軸と直交し前記ウォールチェイサーの左右方向を規定する出力軸周りに回転可能なスピンドルであって、円盤状の複数の先端工具を取り外し可能に装着するように構成された工具装着部を有するスピンドルと、
前記モータシャフトの回転を前記スピンドルに伝達するギヤ機構と、
ギヤハウジングであって、前記工具装着部を前記ギヤハウジングに対し前記左右方向における第1の側に突出させた状態で、前記スピンドルと前記ギヤ機構とを収容するギヤハウジングと、
前記前後方向において前記ギヤハウジングと接続され、前記モータを収容するモータハウジングを含むリヤ部分と、を備え、
前記ギヤハウジングは、前記左右方向における前記第1の側とは反対側の第2の側に突出する第1突出部を有し、
前記リヤ部分は、前記第2の側に突出する第2突出部を有する、
ウォールチェイサー。
【請求項2】
請求項1に記載のウォールチェイサーであって、
前記第1突出部は、前記第1軸に直交する第1仮想平面に対し平行に延在する第1リブを有する、ウォールチェイサー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のウォールチェイサーであって、
前記第1突出部は、前記第1軸を含み前記前後方向に延在する第2仮想平面に対し平行な第2リブを有する、ウォールチェイサー。
【請求項4】
請求項2に従属する請求項3に記載のウォールチェイサーであって、
前記第1リブと前記第2リブとは連結されている、ウォールチェイサー。
【請求項5】
請求項4に記載のウォールチェイサーであって、
前記左右方向及び前記前後方向に直交する方向を前記ウォールチェイサーの上下方向と規定した場合に、前記第1リブと前記第2リブとは前記前後方向及び前記上下方向に離間しており、
前記第1突出部は、前記第1リブと前記第2リブとを連結し、前記第1仮想平面に交差する方向に延在する連結リブを更に備える、ウォールチェイサー。
【請求項6】
請求項5に記載のウォールチェイサーであって、
前記第1リブにおける前記第2の側の端面と、前記第2リブにおける前記第2の側の端面と、前記連結リブにおける前記第2の側の端面とは、前記第2仮想平面からの距離が等しい、ウォールチェイサー。
【請求項7】
請求項3から請求項6までのいずれか一項に記載のウォールチェイサーであって、
前記第1突出部は、前記第2リブの前記前後方向における一端部に設けられた傾斜リブを備え、
前記傾斜リブは、前記第2リブから離れるにつれて前記第2の側への突出高さが低減する、ウォールチェイサー。
【請求項8】
請求項4から請求項7までのいずれか一項に記載のウォールチェイサーであって、
前記ギヤハウジングは、前記モータの冷却風を排出するように構成された排気孔を備え、
前記第1リブと前記第2リブとは、前記ギヤハウジングにおける前記排気孔の周囲に設けられている、ウォールチェイサー。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のウォールチェイサーであって、
前記第2の側から前記第1突出部を見た場合に、前記第1突出部は、前記第1軸に交差する、ウォールチェイサー。
【請求項10】
請求項1に記載のウォールチェイサーであって、
前記第1突出部及び前記第2突出部は、前記モータハウジングよりも前記第2の側に突出している、ウォールチェイサー。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載のウォールチェイサーであって、
前記第1突出部と前記第2突出部とは、前記第1軸を含み前記前後方向に平行な第2仮想平面からの突出高さが等しい、ウォールチェイサー。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載のウォールチェイサーであって、
前記リヤ部分は、前記モータへ電力を供給するバッテリを着脱可能に装着するバッテリ装着部を備える、ウォールチェイサー。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載のウォールチェイサーであって、
前記ギヤハウジングは、前記ギヤ機構を収容するギヤハウジング本体と、前記リヤ部分の前端と接続され前記第1平面に平行な第1部分と、前記第1部分に接続され前記第2平面に平行な第2部分とを備え、
前記第1部分は、前記第1軸を中心とする略筒状壁であり、
前記第2部分は、前記第1接続部の前記第1の側の端よりも前記第2の側において、前記第1接続部から前方へ延在し、
前記第1部分と前記第2部分との連結部分は、直角を成す角部を構成する、ウォールチェイサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウォールチェイサーに関する。
【背景技術】
【0002】
壁、床、天井などに溝切り加工を行うためのウォールチェイサーが知られている。例えば、特許文献1記載のウォールチェイサーは、加工材(壁、床、天井など)に当接されるためのベース部と、ベース部の一方側に配置された本体部とを備えている。本体部は、モータ及びギヤ機構を収容するハウジングと、複数の刃具を覆うカバー本体とを備える。ベース部を加工材に当接させ、モータを回転させた状態で、ユーザが、ベース部に近づく方向に本体部を回動(揺動)させると、回転する刃具がベース部を越えて突出する。この状態で、刃具の回転軸線と直交する方向へウォールチェイサーを平行移動させることで、加工材に溝が形成される。こうして形成された溝は、例えば、電気配線のために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0191387号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0164449号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のウォールチェイサーは、改善の余地を残している。ウォールチェイサーでは、例えば複数の刃具が用いられるため、全体の質量が比較的大きい。そのため、他の電動工具と比較して、ユーザが誤ってウォールチェイサーを落下させた場合にウォールチェイサーに加わる衝撃が大きくなり得る。したがって、落下による衝撃からウォールチェイサーを保護可能な技術が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様によれば、ウォールチェイサーが提供される。前記ウォールチェイサーは、モータと、スピンドルと、ギヤ機構と、ギヤハウジングと、リヤ部分とを備える。前記モータは、前記ウォールチェイサーの前後方向を規定する第1軸周りに回転可能なモータシャフトを有する。前記スピンドルは、前記第1軸と直交し前記ウォールチェイサーの左右方向を規定する出力軸周りに回転可能に構成されている。前記スピンドルは、円盤状の複数の先端工具を取り外し可能に装着するように構成された工具装着部を有する。
前記ギヤ機構は、前記モータシャフトの回転を前記スピンドルに伝達するように構成されている。前記ギヤハウジングは、前記工具装着部を前記ギヤハウジングに対し前記左右方向における第1の側に突出させた状態で、前記スピンドルと前記ギヤ機構とを収容する。前記リヤ部分は、前記前後方向において前記ギヤハウジングと接続され、前記モータを収容するモータハウジングを含むように構成されている。前記ギヤハウジングは、前記左右方向における前記第1の側とは反対側の第2の側に突出する第1突出部を有する。前記リヤ部分は、前記第2の側に突出する第2突出部を有する。
【0006】
この態様によれば、ウォールチェイサーが第2の側を略鉛直下側にして落下した場合であっても、第1突出部と第2突出部とが地面等に当たるので、落下時の衝撃を分散することができる。そのため、ウォールチェイサーの一部分に応力が集中することが抑制されるので、ウォールチェイサーを落下時の衝撃から保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態としてのウォールチェイサーを示す斜視図であり、本体部が上死点にある状態を示す図である。
図2】ウォールチェイサーの左側面図であり、本体部が上死点にある状態を示す図である。
図3】ウォールチェイサーの右側面図であり、本体部が上死点にある状態を示す図である。
図4】ウォールチェイサーの後面図であり、本体部が上死点にある状態を示す図である。
図5】バッテリが装着されたウォールチェイサーの斜視図であり、本体部が下死点にある状態を示す図である。
図6】ウォールチェイサーの左側面図であり、本体部が下死点にある状態を示す図である。
図7】ウォールチェイサーの右側面図であり、本体部が下死点にある状態を示す図である。
図8】ウォールチェイサーの部分下面図である。
図9】ウォールチェイサーの上面図である。
図10図9のX-X線における断面図である。
図11図3のXI-XI線における断面図である。
図12図9のXII-XII線におけるシャフト付近の断面図である。
図13図9のXIII-XIII線における断面図であり、刃具から第2カバーまでの電流の経路を説明する図である。
図14図13の部分拡大図であり、ベアリングボックスと第1連結部周辺を示す図である。
図15図13の部分拡大図であり、第2連結部と第3連結部周辺を示す図である。
図16】ウォールチェイサーにおける右部分の斜視図であり、第1突出部及び第2突出部を説明するための図である。
図17】ギヤハウジング本体の斜視図である。
図18】ギヤハウジング本体を示す別の図である。
図19】シャフトとシャフト周りに設けられた各筒状部とを示す図である。
図20】左カバーの斜視図である。
図21】ベース部の左側面図である。
図22】第3筒状部周辺を後から見た図である。
図23】第3筒状部周辺を左から見た図である。
図24】カバー部におけるシャフト周りを左から見た部分模式図であり、(a)第1カバーが回動される前の状態と、(b)第1カバーが第1方向に第1角度範囲を超えて回動された状態とを説明するための図である。
図25】カバー部におけるシャフト周りを上から見た部分模式図であり、(a)第1カバーが回動される前の状態と、(b)第1カバーが第1方向に第1角度範囲を超えて回動された状態とを説明するための図である。
図26】カバー部の左側面図であり、第1カバーが第1方向に第1角度範囲を超えて回動され、ベース部が第2方向に回動された状態を示す図である。
図27】カバー部の右側面図であり、第1カバーが第1方向に第1角度範囲を超えて回動され、ベース部が第2方向に回動された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の非限定的な一実施形態において、前記第1突出部は、第1リブを有していてもよい。前記第1リブは、前記第1軸に直交する第1仮想平面に対し平行に延在するように形成されていてもよい。
この実施形態によれば、第1リブにより落下時の衝撃を分散できるとともに、ギヤハウジングの変形を抑制できる。そのため、落下時の衝撃からウォールチェイサーを保護できる。
【0009】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記第1突出部は、第2リブを有していてもよい。前記第2リブは、前記第1軸を含み前記前後方向に延在する第2仮想平面に対し平行に形成されていてもよい。
この実施形態によれば、第2リブにより落下時の衝撃を分散できる。また、ユーザは、第2リブを視認することで、ウォールチェイサーが所定の方向に対して傾いているか否かを認識しやすい。そのため、加工精度を向上可能なウォールチェイサーを提供できる。
【0010】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記第1リブと前記第2リブとは連結されていてもよい。
この実施形態によれば、落下時の衝撃をより分散でき、ギヤハウジングの変形をより抑制できる。
【0011】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記左右方向及び前記前後方向に直交する方向を前記ウォールチェイサーの上下方向と規定した場合に、前記第1リブと前記第2リブとは前記前後方向及び前記上下方向に離間して前記ギヤハウジングに設けられていてもよい。前記第1突出部は、連結リブを有していてもよい。前記連結リブは、前記第1リブと前記第2リブとを連結し、前記第1仮想平面に交差する方向に延在するように形成されていてもよい。
この実施形態によれば、第1リブと第2リブとが直角を成すように連結される構成と比較して、落下時の衝撃によって、第1突出部が変形することを抑制できる。そのため、ギヤハウジングの変形をより抑制できる。
【0012】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記第2の側における、前記第1リブの端面と前記第2リブの端面と前記連結リブの端面とは、前記第2仮想平面からの距離が等しくてもよい。
この実施形態によれば、落下時における地面等への設置面積を確保できるので、落下時の衝撃をより分散でき、ギヤハウジングの変形をより抑制できる。
【0013】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記第1突出部は、前記第2リブの前記前後方向における一端部に設けられた傾斜リブを備えていてもよい。前記傾斜リブは、前記第2リブから離れるにつれて前記第2の側への突出高さが低減するように形成されていてもよい。
この実施形態によれば、落下時の衝撃をより分散でき、ギヤハウジングの変形をより抑制できる。
【0014】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記ギヤハウジングは、前記モータの冷却風を排出するように構成された排気孔を備えていてもよい。前記第1リブと前記第2リブとは、前記ギヤハウジングにおける前記排気孔の周囲に設けられていてもよい。
この実施形態によれば、排気孔の周囲のスペースを利用して、ギヤハウジングに第1突出部を設けることができる。
【0015】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記第2の側から前記第1突出部を見た場合に、前記第1突出部は、前記第1軸に交差してもよい。
この実施形態によれば、落下時の衝撃による応力がモータシャフトに集中することを効果的に抑制できる。
【0016】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記第1突出部及び前記第2突出部は、前記モータハウジングよりも前記第2の側に突出していてもよい。
この実施形態によれば、ウォールチェイサーが第2の側を略鉛直下側にして落下した場合であっても、第1突出部と第2突出部とが地面等に当たるので、落下時の衝撃を分散することができる。そのため、ウォールチェイサーを落下時の衝撃から保護できる。
【0017】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記第1突出部と前記第2突出部とは、前記第1軸を含み前記前後方向に平行な第2仮想平面からの突出高さが等しくなるように形成されていてもよい。
この実施形態によれば、ウォールチェイサーが第2の側を略鉛直下側にして落下した場合であっても、第1突出部と第2突出部とが地面等に当たるので、落下時の衝撃を分散することができる。そのため、ウォールチェイサーを落下時の衝撃から保護できる。
【0018】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記リヤ部分は、前記モータへ電力を供給するバッテリを着脱可能に装着するバッテリ装着部を備えていてもよい。
この実施形態によれば、ウォールチェイサーの質量が比較的大きい場合であっても、落下による衝撃からウォールチェイサーを保護できる。
【0019】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記ギヤハウジングは、ギヤハウジング本体と、第1部分と、第2部分とを備えていてもよい。前記ギヤハウジング本体は、前記ギヤ機構を収容するように構成されていてもよい。前記第1部分は、前記リヤ部分の前端と接続され前記第1平面に平行に形成されていてもよい。前記第2部分は、前記第1部分に接続され前記第2平面に平行に形成されていてもよい。前記第1部分は、前記第1軸を中心とする略筒状壁であってもよい。前記第2部分は、前記第1接続部の前記第1の側の端よりも前記第2の側において、前記第1接続部から前方へ延在するように構成されていてもよい。前記第1部分と前記第2部分との連結部分は、直角を成す角部を構成してもよい。
この実施形態によれば、第1突出部と第2突出部とにより落下時の衝撃が効果的に分散されるので、比較的応力が集中しやすい角部を基点としてギヤハウジングに亀裂が生じることを抑制できる。また、第1部分と第2部分とが角部を構成して接続されているため、ウォールチェイサーの他の構成部品を、第2部分よりも第2の側に配置しやすいという利点を有する。
【0020】
<全体構成>
以下、図1から図27を参照し、本開示の一実施形態としてのウォールチェイサー1について説明する。ウォールチェイサー1は、壁、床、天井などの加工材に溝切り加工を行うための携帯用加工機である。ウォールチェイサー1は、2列溝切カッタとも称されており、同時に2列の溝の加工を行うことができる。図1および図2に示すように、ウォールチェイサー1は、ベース部2と本体部3とを備えている。ベース部2は、略平板状のベース21を備えている。本体部3は、ベース21に対して一方側に配置される。ベース21は、略矩形状である。ベース21の本体部3と反対側の面は、平坦に形成されており、加工材(床、天井、壁など)に当接するための当接面23として機能する。
【0021】
図11に示すように、本体部3は、スピンドル40に装着された略円盤状の2つの刃具101,102を、スピンドル40の回転軸AX2を中心として回転駆動するように構成されている。回転軸AX2は、出力軸とも呼ばれる。刃具101,102は、ダイヤモンドブレードとも呼ばれる。刃具101,102は、互いに平行となるように配置される。ベース部2の当接面23を加工材に当接させ、回転する刃具101,102が、図5から図7に示すように当接面23を越えて本体部3と反対側へ突出した状態で、刃具101,102が平行に並ぶ方向(換言すれば、出力軸AX2の延在方向)と直交し、かつ、当接面23に平行な方向にウォールチェイサー1を平行移動させることによって、加工材に対する溝切り加工が進行する。刃具の回転方向は、第1カバー51の方向(左方向)から見て反時計回転である。図1図2及び図5に示すように第1カバー51には刃具101、102の回転方向を示す矢印8が刻まれている。また、図3及び図7に示すようにギヤハウジング31にも刃具101、102の回転方向を示す矢印9が刻まれている。
【0022】
これによって、加工材における刃具101,102の移動軌跡に対応する位置に、2つの直線的な溝が形成される。この2つの溝の間の部分は、任意の工具によって削り取られ、最終的に1つの大きな溝が形成される。こうして形成された溝には、例えば、電気配線が収容され得る。
【0023】
以下では、説明の便宜上、溝切り加工を行う際に加工材に対してウォールチェイサー1を移動させる加工方向をウォールチェイサー1の前後方向と定義する。前後方向のうち、出力軸AX2に近い側をウォールチェイサー1の前側と定義し、出力軸AX2に遠い側をウォールチェイサー1の後側と定義する。また、当接面23に直交する方向(換言すれば、前後方向と出力軸AX2とに直交する方向)において、本体部3が位置する側をウォールチェイサー1の上側と定義し、その反対側をウォールチェイサー1の下側と定義する。また、前後方向および上下方向に直交する方向をウォールチェイサー1の左右方向と定義する。左右方向のうち、後側から前側を見たときの右側をウォールチェイサー1の右側と定義し、その反対側をウォールチェイサー1の左側と定義する。本実施形態では、ウォールチェイサー1によって溝切り加工を進める方向(以下、加工進行方向とも呼ぶ)は、前側から後側へ向かう方向である。ただし、加工進行方向が後側から前側へ向かう方向となるようにウォールチェイサー1が設計されてもよい。あるいは、加工進行方向を、前側から後側へ向かう方向、および、後側から前側へ向かう方向からユーザが状況に応じて選択可能となるようにウォールチェイサー1(例えば、刃具101、102の形状)が設計されてもよい。
【0024】
図3に示すように、本体部3は、カバー本体50と、本体ハウジング30とを備える。図1に示すように、カバー本体50は、刃具101,102の左右及び上側を覆うように構成されている。カバー本体50は、左右方向に分割可能に構成された第1カバー51と第2カバー55とを含む。第1カバー51は、カバー本体50の左側部分を構成する。第1カバー51は、刃具101の左側及び上側を覆うように配置されている。第2カバー55は、カバー本体50の右側部分を構成する。第2カバー55は、刃具102の右側及び上側を覆うように配置されている。
【0025】
第1カバー51と第2カバー55とは、連結部59によって左右方向に連結されている。本実施形態では、連結部59として、第1カバー51と第2カバー55の上部に配置されたツマミネジが採用されている。第1カバー51は、合成樹脂により形成されている。第2カバー55は、金属により形成されている。
【0026】
本体ハウジング30は、カバー本体50に対して、右側に配置されている。図3に示すように、本体ハウジング30は、全体として略筒状に形成され、前後方向に延在している。本体ハウジング30は、前から後に、この順で並んだ、ギヤハウジング31と、モータハウジング37と、コントローラハウジング38とを含む。ギヤハウジング31は、第2カバー55と左右方向に連結されている。本実施形態では、ギヤハウジング31は金属により形成されている。そのため、ギヤハウジング31と第2カバー55とは、強固に連結され得る。
【0027】
図11に示すように、ギヤハウジング31は、スピンドル40の左部分401をカバー本体50へ突出させた状態で、スピンドル40の右部分402を収容する。スピンドル40の左部分401は、刃具101、102を着脱可能に装着する工具装着部を構成する。ギヤハウジング31内には、ギヤ機構4が収容されている。ギヤ機構4は、小ベベルギヤ412と、スピンドル40周りに固定され、小ベベルギヤ412と噛み合う大ベベルギヤ413とを含む。
【0028】
モータハウジング37内には、電動のモータ371が収容されている。モータ371は、前後方向に離間して配置された軸受によって回転可能に支持されるモータシャフト372を備えている。モータシャフト372は、前後方向に延在する回転軸AX1を中心として回転可能である。モータシャフト372の回転軸AX1は、出力軸AX2と交差(直交)する。モータシャフト372の前端部は、ギヤハウジング31内に配置されている。小ベベルギヤ412は、モータシャフト372の前端部に固定されている。モータ371(モータシャフト372)は、ギヤ機構4を介して、スピンドル40に出力軸AX2を中心とした回転駆動力を提供する。
【0029】
図11に示すように、カバー本体50におけるスピンドル40周りには、インナーフランジ46が取り付けられている。インナーフランジ46は、筒状の部材である。インナーフランジ46の右端部は、出力軸AX2に関して径方向外側に向けてフランジ状に突出している。スピンドル40におけるインナーフランジ46よりも左側には、雄ネジ部が形成されている。当該雄ネジ部には、ロックナット47が取り付けられている。インナーフランジ46と、ロックナット47との間に、刃具102、スリーブ481周りに設けられた少なくとも1つ(図11の例では、6つ)の環状のスペーサ48、および、刃具101を挟み、ロックナット47を締め付けることによって、スピンドル40に対する刃具101,102の位置が固定される。刃具101,102の間に配置されるスペーサ48の数を変更することによって、刃具101,102の離間距離を調節することができる。なお、スピンドル40、スピンドル40周りのインナーフランジ46、スリーブ481、スペーサ48、ロックナット47は、いずれも金属製である。
【0030】
図1から図3に示すように、ベース部2は、ベース21から当接面23と反対側(本体部3側)に向けて延在する補助カバー22を備えている。補助カバー22は、第1カバー51及び第2カバー55の内側において、第1カバー51及び第2カバー55の下側縁部よりも上方まで延在している。
【0031】
図12に示すように、ベース部2は、その後端部に、左右方向に貫通する孔259を有する第3筒状部25を備えている。同様に、第1カバー51の後端部、第2カバー55の後端部には、夫々、左右方向に貫通する孔549、589を備える第1筒状部54、第2筒状部58が設けられている。図4に示すように、第1筒状部54、第3筒状部25、第2筒状部58は、左から右にこの順で、ベース21の上側に配置されている。ベース21の上側には、第1筒状部54、第3筒状部25、第2筒状部58の各孔549、259、589を貫通するように、金属製のシャフト26が配置されている。シャフト26は、左右方向に延在している。本実施形態では、シャフト26の軸AX3は、出力軸AX2と平行である。
【0032】
シャフト26の左端、右端には、夫々、車輪271、272が取り付けられている。車輪271、272によって、ウォールチェイサー1を加工材に押し付けつつ前後方向に移動させて加工を行う際に、ウォールチェイサー1の移動が円滑化される。なお、図12に示すように、車輪271、272は、夫々本体部273と、本体部273を覆う被覆部274とを含む。被覆部274は、主に、車輪271、272のうち、加工材に当接する部分に設けられている。本体部273は、合成樹脂により形成されている。被覆部274は、金属(板金)により形成されている。このような構成により、本実施形態のウォールチェイサー1では、車輪271、272の軽量化と、耐摩耗性の向上とが実現されている。
【0033】
ベース部2とカバー本体50(本体部3)とは、シャフト26周りに回動可能に構成されている。シャフト26の軸AX3は、回動軸でもある。図2に示すように、本体部3は、回動軸AX3周りの第1方向R1と第2方向R2とに揺動(回動)可能である。第1方向R1は、第1カバー51と第2カバー55とがベース21から遠ざかる方向である。第2方向R2は、第1方向R1と反対の方向である。第2方向R2は、当接面23が加工材に当接している場合には、第1カバー51と第2カバー55とがベース21に近づく方向でもある。
【0034】
本実施形態では、第2カバー55は、シャフト26の周囲を取り囲むように配置されたトーションスプリング62(図12参照)によって、ベース21から離れる第1方向R1に付勢されている。このため、初期状態では、本体部3は、図1から図3に示す位置に保持される。このときの本体部3の位置は、上死点とも称される。
【0035】
図3および図7に示すように、カバー本体50の右側部分(第2カバー55の右壁56)には、略円弧状の貫通孔57が形成されている。また、図21に示すように、補助カバー22には、右側に突出する突起27が設けられている。突起27の上端は、補助カバー22の上縁部29(図21参照)と略同じ位置にある。突起27は、貫通孔57内に突出している。突起27は、貫通孔57に係合可能である。突起27が貫通孔57に係合することで、左右方向においてベース部2と第2カバー55とが係合される。当接面23が加工材に当接されてカバー本体50が回動されると、第2カバー55が回動することにより、貫通孔57に対する突起27の位置が相対的に変化する。
【0036】
突起27が貫通孔57の下端に位置することによって、上死点の位置が規定されるとともに、カバー本体50の下縁部が補助カバー22の上縁部29よりも上側に変位することが防止される。図1から図3に示すように、本体部3が上死点にあるとき、刃具101,102は、ベース21に対して上側に位置している。このとき、ベース部2の補助カバー22は、刃具101,102のうちのカバー本体50よりも下側の部分を覆っている。
【0037】
本体部3の回動動作についての本体部3の下動端の位置(下側の可動限界位置)は、切込み深さ調節機構(デプスガイド63)によって可変に設定され得る。本実施形態では、図10に示すように、デプスガイド63は、ストッパ633と貫通孔57とを含む。ストッパ633は、貫通孔57の任意の位置に固定可能に構成されている。本実施形態では、ストッパ633は、第2カバー55よりも外側(右側)に位置する操作ツマミ634と、貫通孔57を左右方向に貫通するボルト(不図示)と、第2カバー55よりも内側(左側)に位置するナット635とを含む。操作ツマミ634は、ボルトの頭の周囲に取り付けられている。ユーザは、操作ツマミ634を操作してボルトを緩めることで、貫通孔57の円弧形状に沿った任意の位置にストッパ633を移動させることができる。ユーザが操作ツマミ634を締め付けると、ボルトとナット635とが第2カバー55を左右方向に締め付ける。これによって、ストッパ633が、第2カバー55に対し、移動された位置に固定される。
【0038】
本体部3は、ストッパ633が、補助カバー22の上縁部29に当接するまで、ユーザによって押し下げられる(第2方向R2へ回動される)ことができる。つまり、デプスガイド63と補助カバー22の上縁部29とが当接する位置が、本体部3の下動端の位置となる。本実施形態では、デプスガイド63によって、下動端の位置が可動範囲の最も下側に設定されている状態で、本体部3を下動端まで下げたときの本体部3の位置は、下死点とも称される。本実施形態では、下死点は、ストッパ633が貫通孔57の上端に固定されている状態で、本体部3を下動端まで下げたときの本体部3の位置である。
【0039】
図5から図7及び図10に示すように本体部3が下死点にあるとき(あるいは、本体部3が下動端にあるとき)、刃具101,102は、ベース21の貫通孔24(図8参照)を介して、ベース21の当接面23を越えて下側に部分的に突出する。このような機構によって、ユーザは、刃具101,102による切り込み深さを調節できる。本体部3が下動端にある状態において、ユーザが本体部3を下方に向けて押し下げる力を解除すると、本体部3は、トーションスプリング62の付勢力によって、上死点まで戻る。
【0040】
なお、図9に示すように、本体部3は、モータ371に電力を供給するためのバッテリ200を着脱可能に構成されたバッテリ装着部39を備えている。バッテリ装着部39は、コントローラハウジング38の上部分に設けられている。バッテリ装着部39は、バッテリ装着時のスライドガイドおよび給電端子391を有する。バッテリ装着部39は、バッテリ200を後側から前側に向けてスライド式に着脱可能である。バッテリ装着部39は、左右方向において、コントローラハウジング38よりも若干内側に位置している。バッテリ200は、例えば、公称電圧が36ボルト(V)の直流電源であり、比較的重量が大きい。他の実施形態では、モータ371の電源として、より大きな公称電圧のバッテリが採用されてもよい。あるいは、バッテリ200に代えて、商用電源が利用されてもよい。
【0041】
本体部3は、さらに、第1ハンドル64と第2ハンドル65とを備えている。図6及び図7に示すように、第1ハンドル64は、コントローラハウジング38の後側に設けられている。第1ハンドル64は、いわゆるループハンドルであり、ユーザが手で把持するための第1把持部641を備えている。第1把持部641には、モータ371の起動および停止の操作を行うための操作部材(トリガ642)が取り付けられている。
【0042】
ユーザがトリガ642を後側へ引き操作すると、コントローラハウジング38に収容されたコントローラ381(図10)を介してバッテリ200からモータ371へ電力が供給され、モータ371が起動される。これにより、モータシャフト372が回転し、刃具101、102が回転される。ユーザがトリガ642の引き操作を解除すると、モータ371への電力供給が停止され、モータ371が停止される。
【0043】
第1ハンドル64は、モータシャフト372の回転軸AX1と平行な回転軸線を中心として回転可能に、コントローラハウジング38の後端部に取り付けられている。第1ハンドル64は、図1に示すように第1把持部641が出力軸AX2と略平行になる位置と、図1に示す位置から右に90度回転した位置(図6図7及び図9参照)と、図1に示す位置から左に90度回転した位置とに、選択的に固定可能である。
【0044】
コントローラハウジング38の後端部であって、第1把持部641に対向する部分には、フィルターを備える吸気孔382が設けられている。モータハウジング37内に配置されたファン373(図10参照)が回転すると、ウォールチェイサー1の外部の空気が吸気孔382から本体ハウジング30内に流入し、ギヤハウジング31に設けられた排気孔301(後述)から排出される。これにより、モータ371が冷却される。
【0045】
図4に示すように、第2ハンドル65は、カバー本体50の前端付近で、カバー本体50の上部に取り付けられている。第2ハンドル65は、いわゆるループハンドルである。第2ハンドル65は、ユーザが手で把持するための第2把持部651と、基部652と、ブリッジ部653,653と、筒部654と、シャフト(不図示)と、操作ツマミ655とを備える。
【0046】
第2把持部651は、出力軸AX2と平行、つまり、左右方向に延在している。筒部654は、第2カバー55から上部に突出するように、第2カバー55と一体的に形成された部分である。基部652は、筒部654の左右方向に夫々に配置されている。ブリッジ部653,653は、第2把持部651と、筒部654及び基部652と、の間に隙間が形成されるように筒部654及び基部652と、第2把持部651とを連結している。シャフトは、基部652および筒部654を左右方向に貫通している。操作ツマミ655は、シャフトの右端に取り付けられている。第2ハンドル65は、ユーザが操作ツマミ655を緩めると、シャフトを中心として回転可能に構成されている。ユーザが操作ツマミ655を締め付けると、操作ツマミ655及びシャフトの先端に設けられたナット(不図示)によって、基部652および筒部654が左右方向に固定され、第2ハンドル65の回転位置が固定される。
【0047】
本実施形態では、筒部654は金属製であり、第2カバー55と一体に形成されている。なお、第2カバー55と連結され、スピンドル40の右部分402を収容するギヤハウジング31、刃具101,102を回転させるスピンドル40、及び、スピンドル40周りに設けられた、ギヤ機構4を含む複数の部品も、金属製である。そのため、加工作業中に、刃具101,102が、壁内に埋設されていた電気配線等に意図せず触れた(切断した)場合には、刃具101,102からスピンドル40及びスピンドル40周りの部品を介して、第2カバー55及び筒部654まで、電流の流れる経路が形成され得る。本実施形態のウォールチェイサー1では、第2ハンドル65の第2把持部651、基部652、ブリッジ部653は、合成樹脂により形成されている。そのため、上述の電流の経路が意図せず形成されても、第2把持部651へ当該電流が到達することが防止されている。
【0048】
本実施形態のウォールチェイサー1は、更に、刃具101,102から第2カバー55までの電流の流れる経路を、第2カバー55(筒部654)に至る前に遮断する絶縁機構を備える。絶縁機構は、スピンドル40周りと第2カバー55との間に介在する複数の部品に、少なくとも1つの絶縁部材を適用することで実現されている。以下、ウォールチェイサー1における絶縁機構について説明する。
【0049】
<絶縁機構の構成>
まず、ギヤハウジング31及びギヤハウジング31の内部構成について詳細に説明する。図13に示すように、ギヤハウジング31は、スピンドル40の右部分402を覆うギヤハウジング本体32と、ギヤハウジング31の底部を構成するベアリングボックス33とを含む。ギヤハウジング本体32は、左端および後端において開口している。ギヤハウジング本体32は、スピンドル40の右部分402及び右部分402周りに設けられた複数の介在部材41(図14参照)を収容する。
【0050】
図13及び図17に示すように、ギヤハウジング31は、更に、ギヤハウジング本体32の上部に設けられた第3連結部34を有する。第3連結部34は、ギヤハウジング本体32から上方へ突出した部分である。第3連結部34は、金属製である。第3連結部34は、左右方向に貫通する貫通孔341を備える略板状に形成されている。第3連結部34は、第2カバー55の第2連結部554(後述)と、金属製のボルト86によって連結される。
【0051】
図14に示すように、ギヤハウジング31内のスピンドル40周りには、複数の介在部材41が設けられている。具体的には、スピンドル40周りには、右から左の順に、いずれも金属製の、第1ベアリング411と、大ベベルギヤ413と、ベアリングリテーナ414と、第2ベアリング415と、ワッシャ416とが配置されている。スピンドル40は、第1ベアリング411と第2ベアリング415とによって、出力軸AX2周りに回転可能に、ギヤハウジング31に保持されている。大ベベルギヤ413は、第1ベアリング411の左側で、スピンドル40の周りに固定されており、小ベベルギヤ412と噛み合っている。第2ベアリング415は、第2ベアリング415の径方向外側に配置されたベアリングボックス33によって、ギヤハウジング31に保持されている。
【0052】
ベアリングボックス33は、左右方向に延在する筒部332と、筒部332の右端部において、出力軸AX2に関し径方向外側へ突出するフランジ331とを有する。フランジ331は、ギヤハウジング本体32の左端部に、ネジ335(図8参照)によって結合されている。
【0053】
次に、ギヤハウジング31と第2カバー55との連結構造について説明する。図13に示すように、第2カバー55は、スピンドル40周りに設けられた第1連結部551と、第1連結部551よりも上側に設けられた第2連結部554とを備える。第1連結部551及び第2連結部554は、第2カバー55の右壁56と一体に形成されており、右壁56から右側へ突出している。
【0054】
図14に示すように、第1連結部551は、出力軸AX2を中心とした略筒状に形成されている。第1連結部551は、左右方向に延在している。第1連結部551の内径は、ベアリングボックス33の筒部332の外径よりも大きい。また、第1連結部551の右端552は、筒部332の左端333よりも右側に位置している。第1連結部551は、筒部332の径方向外側を覆う。
【0055】
ベアリングボックス33の筒部332と第1連結部551との間には、絶縁材料により形成されたスペーサ81が介在している。スペーサ81は、左右方向に延在する孔813を有する筒状部812と、筒状部812の右端に設けられ、径方向外側へ突出するフランジ811とを備える。筒状部812は、周方向に離間した間隙Gを有し、出力軸AX2に直交する断面視において略円環状に形成されている。当該間隙Gは、左右方向に延在している。スペーサ81のフランジ811は、左右方向において、ベアリングボックス33のフランジ331と、第1連結部551の右端552との間に配置されている。スペーサ81のフランジ331は、ウォールチェイサー1の外部に現れる(図8及び図14参照)。
【0056】
図13に示すように、スペーサ81の筒状部812の内周面は、ベアリングボックス33の筒部332の外周面に当接する。また、筒状部812の外周面は、第1連結部551の内周面に当接する。本実施形態では、ベアリングボックス33と、スペーサ81と、第1連結部551とは、左右方向において互いにオーバーラップするように配置されている。出力軸AX2に直交し、ベアリングボックス33と第1連結部551とを通る仮想平面Pは、スペーサ81を通る。
【0057】
第1連結部551は、ベアリングボックス33の筒部332の径方向外側にスペーサ81を配置した状態で、ネジ559(図7参照)によって周方向に締め付け可能に構成されている。第1連結部551をネジ559で締め付けることにより、スペーサ81の筒状部812の間隙Gは、周方向に小さくなる。そのため、スペーサ81は、ベアリングボックス33と第1連結部551の間に容易に組み付けられる。なお、図14に示すスペーサ81では、間隙Gが周方向に略閉塞している。
【0058】
図15に示すように、第2連結部554は、左右方向に延在する孔555を有する。孔555周りには、ボルトシャフト862を螺合可能な雄ネジ部557が設けられている。第2連結部554の右端には、凹部556が設けられている。凹部556は、孔555の中心軸AX4を中心として、第2連結部554の右端から左側へ窪むように形成されている。
【0059】
第2連結部554は、ギヤハウジング31の第3連結部34と、左右方向において対向するように設けられている。第3連結部34の貫通孔341の中心を通る中心軸AX4は、第2連結部554の孔555の中心を通る。なお、貫通孔341の内径は、孔555の内径よりも大きい。第3連結部34の左端345における貫通孔341の周りには、左端345から右側へ窪む凹部342が設けられている。
【0060】
第3連結部34と、第2連結部554との間には、絶縁材料によって形成された第1ブッシュ82が介在している。第1ブッシュ82は、第2連結部554の孔555よりも大きい内径の貫通孔821を有する、略筒状に形成されている。第1ブッシュ82は、左側および右側に突出する、筒状の凸部822、823を備えている。凸部822、823は、夫々、第2連結部554に設けられた凹部556、第3連結部34に設けられた凹部342に、嵌め込まれている。第1ブッシュ82の外表面824は、ウォールチェイサー1の外部に現れる。
【0061】
第3連結部34の貫通孔341、及び、第1ブッシュ82の貫通孔821の径方向内側には、絶縁材料によって形成された第2ブッシュ84が配置されている。第2ブッシュ84は、左右方向に延在する筒部842と、筒部842の右端部において、径方向外側へ突出するフランジ841とを有する。第2ブッシュ84のフランジ841は、第3連結部34の右端343に当接している。筒部842の孔845は、第2連結部554の孔555と略等しい内径を有する。筒部842は、第3連結部34の右表面344(右端343)から、第1ブッシュ82の右端825付近まで延在している。第2ブッシュ84のフランジ841は、ウォールチェイサー1の外部に現れる。
【0062】
第3連結部34と第2連結部554とは、金属製のボルト86によって連結されている。ボルト86は、頭部861と、ボルトシャフト862とを備える。ボルトシャフト862の先端部863は、第2連結部554の雄ネジ部557に螺合されている。また、頭部87は、金属製のワッシャ89を介して、第2ブッシュ84のフランジ841に押し付けられている。
【0063】
第3連結部34と第2連結部554とを連結する際には、まず、左右方向において第3連結部34と第2連結部554との間に第1ブッシュ82を配置し、第3連結部34と第1ブッシュ82の径方向内側に第2ブッシュ84の筒部842を配置する。更に、ボルトシャフト862を、第2ブッシュ84の孔845に挿入して先端部863を第2連結部554の雄ネジ部557に螺合する。これにより、第3連結部34と第2連結部554とが強固に連結される。
【0064】
以上の構成により、スペーサ81は、ベアリングボックス33と第1連結部551の間に配置されて、ベアリングボックス33と第1連結部551との間の電流の経路を遮断する。詳細には、図13及び図14に示すように、スペーサ81の筒状部812は、ベアリングボックス33と第1連結部551との出力軸AX2に直交する方向(径方向)の電流の経路C1を遮断する。スペーサ81のフランジ811は、ベアリングボックス33と第1連結部551との左右方向の電流の経路C2を遮断する。
【0065】
第2ブッシュ84もまた、第3連結部34と第2連結部554とにわたって配置され、第3連結部34と第2連結部554との間の電流の経路を遮断する。詳細には、図13及び図15に示すように、第2ブッシュ84の筒部842は、ボルトシャフト862を介した、第3連結部34と第2連結部554の電流の経路C4を遮断する。また、第2ブッシュ84のフランジ841は、頭部861及びボルトシャフト862を介した、第3連結部34と第2連結部554の電流の経路C5を遮断する。
【0066】
以上で説明したように、本実施形態のウォールチェイサー1では、金属製の刃具101、102から、金属製のスピンドル40、ボルト86を含む複数の金属製の介在部材41を介した、第2カバー55までの電流の経路C1、C2、C3、C4、C5を、スペーサ81、第1ブッシュ82、第2ブッシュ84によって効果的に遮断できる。そのため、第2カバー55に電流が到達することが抑制される。したがって、カバー本体50にユーザの手指が意図せず触れることが許容される。
【0067】
また、金属製のギヤハウジング31と金属製の第2カバー55とを、金属製のボルト86によって連結できるので、連結強度や耐衝撃性を高めることができる。なお、本実施形態では、刃具101、刃具102、第2カバー55、筒部654、ギヤハウジング31として、アルミニウムダイカスト(Die Casting)合金が用いられている。そのため、連結強度や耐衝撃性がいっそう高められる。
【0068】
なお、本実施形態では、スペーサ81、第1ブッシュ82、第2ブッシュ84は、合成樹脂により形成されている。具体的には、ガラス繊維を含有したポリアミドにより形成されている。スペーサ81、第1ブッシュ82、第2ブッシュ84は、絶縁材料により形成されていればよく、例えば任意の合成樹脂が用いられてもよい。
【0069】
<衝撃分散機構の構成>
以下、図8及び図15から図17を用いて、衝撃分散(緩和)機構について説明する。なお、以下では、ウォールチェイサー1を構成する複数の部分(要素、部品)のうち、カバー本体50に対して右側に位置する部分を、右部分3Rとも呼ぶ。更に、右部分3Rのうち、ギヤハウジング31よりも後側に位置する部分を、リヤ部分3RBとも呼ぶ。右部分3Rは、本体ハウジング30に収容されたギヤ機構4及びモータ371等、ウォールチェイサー1を駆動させるための主要部品を含んでいる。本実施形態のウォールチェイサー1では、右部分3R(ウォールチェイサー1における右表面)が略鉛直下方を向くようにウォールチェイサー1が落下した場合に、これらの主要部品や、主要部品を収容する本体ハウジング30に、衝撃が局所的に集中することを抑制する機構が採用されている。
【0070】
図8には、仮想的な平面P1、P2、P3が示されている。平面P1は、モータシャフト372の回転軸AX1に直交する平面である。平面P1は、前後方向に直交する面でもある。平面P2は、回転軸AX1を含み、前後方向に延在する面である。平面P3は、右部分3Rにおける最も右側に突出する部分を通る面である。平面P3は平面P2に平行な面である。なお、本実施形態では、第1ハンドル64は、右部分3Rにおけるもっとも右側に突出する部分に含まれない。上述したように、第1ハンドル64は、図1に示す位置と、図1に示す位置から右に90度回転した位置(図6図7及び図9参照)と、図1に示す位置から左に90度回転した位置とに、選択的に固定可能に構成されている。図6図7及び図9に示すように第1ハンドル64が固定された場合には、第1ハンドル64は、平面P3よりも左側に配置されるためである。また、ウォールチェイサー1の使用時には、第1ハンドル64は、図6図7及び図9に示すように、第1把持部641が上下方向に延在するように使用され得るためである。
【0071】
ウォールチェイサー1の右部分3Rは、ギヤハウジング31に設けられた第1突出部70と、リヤ部分3RBに設けられた第2突出部3Tとを備える。第1突出部70および第2突出部3Tは、モータハウジング37の外表面374よりも右側へ突出している。第1突出部70及び第2突出部3Tの突出端(右端)は、平面P3上に位置する。
【0072】
図8及び図16に示すように、第2突出部3Tは、コントローラハウジング38の外表面384と、シャフト26の右端部262とを含む。
【0073】
図17及び図18に示すように、ギヤハウジング本体32は、本体部325と、第1接続部321と、第2接続部323と、第1突出部70とを含む。本体部325は、ギヤハウジング本体32において、ギヤ機構4を含む介在部材41を収容する部分である。本体部325の左右方向幅は、モータハウジング37よりも小さい(図8参照)。
【0074】
第1接続部321は、ギヤハウジング本体32において、モータハウジング37の前端部と接続される部分である。第1接続部321は、ギヤハウジング本体32の後端部を構成する。第1接続部321は、回転軸AX1を中心とする略筒状壁であり、回転軸AX1に直交する。第2接続部323は、ギヤハウジング本体32において、ベアリングボックス33と接続される部分である。図18に示すように、第2接続部323は、第1接続部321の左端322Lよりも内側(右側)において第1接続部321と接続され、第1接続部321から前方へ延在している。第1接続部321と第2接続部323との連結部分は、略直角をなす角部324を構成する。
【0075】
第1突出部70は、本体部325から右側に突出するように形成されている。図18に示すように、本体部325の右表面326は、第1接続部321の右端322Rよりも内側(左側)に位置している。第1突出部70は、右表面326から更に右側に突出するリブ状に形成されている。また、第1突出部70は、第1接続部321近傍に設けられている。第1接続部321近傍は、前後方向において、ギヤハウジング31におけるモータハウジング37近傍でもある。
【0076】
図17及び図18に示すように、第1突出部70は、第1リブ71と、第2リブ72と、連結リブ73と、傾斜リブ74とを備える。第1リブ71、第2リブ72、連結リブ73、傾斜リブ74は、いずれも略壁状である。第1リブ71は、平面P1と平行に(左右方向に)延在する。第1リブ71は、右から見て、モータシャフト372の回転軸AX1に直交する。第2リブ72は、平面P2と平行に(前後方向に)延在する。図16及び図17に示すように、第2リブ72は、第1リブ71よりも前側、かつ、上側に設けられている。連結リブ73は、第1リブ71と第2リブ72とを連結し、平面P1に交差する方向に延在する。図8及び図18に示すように、第1リブ71の右端711、第2リブ72の右端721、連結リブ73の右端731は、平面P3上に位置する。言い換えると、各右端711、721、731の平面P2からの距離は等しい。傾斜リブ74は、第2リブ72の前端に接続されている。図18に示すように、傾斜リブ74は、前側へ向かうにつれて、右表面326からの突出高さが低減するように形成されている。傾斜リブ74の前端741は、右表面326と接続されている。
【0077】
第1突出部70は、更に、傾斜リブ75を備える。傾斜リブ75は、第1リブ71の下側、かつ、前側に設けられている。傾斜リブ75は、上述の傾斜リブ74と略平行に延在し、前側へ向かうにつれて、右表面326からの突出高さが低減するように形成されている。傾斜リブ75の前後方向長さは、傾斜リブ74よりも短い。傾斜リブ75は、連結リブ76によって、第1リブ71と連結されている。以上のように、第1突出部70は、複数のリブ71~76が連結されて形成されている。
【0078】
第1突出部70は、ギヤハウジング本体32に設けられた排気孔301の周囲を覆うように、ギヤハウジング31に設けられている。図17に示すように、排気孔301は、第1リブ71よりも前側、かつ、傾斜リブ74の前端741より後側に設けられている。また、排気孔301の大部分は、上下方向において、第2リブ72及び傾斜リブ74と、傾斜リブ75との間に設けられている。第1突出部70は、排気孔301の前方を開放した状態で、排気孔301の周囲を部分的に覆っている。ファン373が回転すると、リヤ部分3RBの後端に設けられた吸気孔382から本体ハウジング30内に空気が流入し、排気孔301から排出される。これにより、モータ371が冷却される。
【0079】
なお、図17に示すように、本体部325における傾斜リブ75の前側には、右表面326から左側へ向けて窪む凹部328が形成されている。図8に示すように、凹部328には、シャフトロックスイッチ91が配置される。ユーザが、シャフトロックスイッチ91をギヤハウジング31に対して押し込みつつ、スピンドル40(刃具101、102)を手指で回転させ、大ベベルギヤ413に設けられた孔(不図示)にシャフトロックスイッチ91の軸部(不図示)が係合すると、スピンドル40が回転不能となる。これにより、ユーザは、ロックナット47を回転させて、刃具101、102をスピンドル40から取外して交換することができる。
【0080】
以上で説明したように、本実施形態のウォールチェイサー1は、ギヤハウジング31に設けられた第1突出部70とリヤ部分3RBに設けられた第2突出部3Tとを有する。そのため、ウォールチェイサー1が、ウォールチェイサー1の右側を略鉛直下側に向けて落下した場合であっても、第1突出部70と第2突出部3Tとが地面等に当たるので、落下時の衝撃を分散できる。そのため、ウォールチェイサー1を落下時の衝撃から保護できる。
【0081】
また、第1突出部70は、複数のリブ71~76が連結されて形成されているため、落下時の接地面積を増やすことができる。そのため、落下時の衝撃をより分散できる。
【0082】
また、第1リブ71は、平面P1に平行に延在し、かつ、右から見てモータシャフト372の回転軸AX1に直交する。そのため、落下時にモータシャフト372に加わる衝撃を効果的に分散できる。
【0083】
また、第2リブ72は、平面P2に平行、つまり、ウォールチェイサー1の加工方向に延在する。そのため、ユーザは、第2リブ72を視認することで、ウォールチェイサー1が水平方向に対して傾いているか否かを認識しやすい。そのため、加工精度を向上できる。
【0084】
また、第1リブ71と第2リブ72とは、平面P1に交差する連結リブ73によって連結されているので、第1リブ71と第2リブ72とが直角に連結される構成と比較して、落下時の衝撃によって第1突出部70が変形することを抑制できる。
【0085】
また、第2リブ72の前端741には、第2リブ72から離れるにつれて右側への突出高さが低減する傾斜リブ74が設けられている。そのため、ウォールチェイサー1の落下時に、例えば、平面P2、P3に交差する方向の応力が加わった場合でも、傾斜リブ74により当該応力を緩和できる。
【0086】
更に、第1突出部70は、モータ371の冷却風を排出する排気孔301の周囲に設けられている。そのため、ギヤハウジング31のスペースを有効に利用できる。また、第1突出部70は、排気孔301から空気が排出される方向を開放させて、排気孔301の周囲を部分的に覆っているので、モータ371の冷却効率を維持できる。
【0087】
なお、ギヤハウジング31における第1接続部321と第2接続部323との連結部分は、角部324、324を構成している。角部324は、略直角を成すため、比較的応力が集中しやすい。しかし、本実施形態のウォールチェイサー1では、第1突出部70と第2突出部3Tとにより落下時の衝撃が効果的に分散されるので、角部324を基点としてギヤハウジング31に亀裂が生じることを効果的に抑制できる。また、第1接続部321と第2接続部323とは直角を成すように接続されるので、本実施形態のウォールチェイサー1によれば、ギヤハウジング本体32の左側に他の部品が配置しやすいという利点をも有する。
【0088】
ウォールチェイサー1は、刃具101、102を備えるため、スピンドル40に取付けられる先端工具の重量が比較的大きく、落下時の衝撃も大きくなりやすい。しかし、本実施形態のウォールチェイサー1によれば、落下時の衝撃を効果的に分散できる。
【0089】
更に、本実施形態のウォールチェイサー1はバッテリ200が着脱可能に装着されるバッテリ装着部39を備えている。バッテリ200の重量により、落下時の衝撃は、より大きくなりやすい。しかし、本実施形態のウォールチェイサー1によれば、落下時の衝撃をより効果的に分散できる。
【0090】
<カバー部の構成>
以下、カバー本体50とベース部2とを含むカバー部5の構成について詳細に説明する。ウォールチェイサー1では、スピンドル40に刃具101、102を装着したりスピンドル40から刃具101、102を取り外したりする際には、刃具101,102を露出させるようにカバー部5が開かれる。本実施形態のカバー部5は、ユーザが第1カバー51をシャフト26周りの第1方向Rに回動させることで、カバー部5を容易に開くことが可能に構成されている。
【0091】
図19に示すように、第1カバー51の後端部、ベース部2の後端部、第2カバー55の後端部には、夫々、第1筒状部54、第3筒状部25、第2筒状部58が設けられている。第1筒状部54、第3筒状部25、第2筒状部58は、ベース21の上に設けられている。第1筒状部54、第3筒状部25、第2筒状部58は、夫々、左右方向に貫通する孔549、259、589(図12参照)を有する略筒状に形成されている。孔549、259、589には、シャフト26が挿入されている。第1筒状部54、第3筒状部25、第2筒状部58は、左から右にこの順で、シャフト26周りに回動可能に配置されている。
【0092】
図20に示すように、第1筒状部54の右部分には、第1当接部541と、第1凹部542とが設けられている。第1当接部541は、第1筒状部54において右側へ突出するブロック状に形成された部分である。第1当接部541は、第1筒状部54における凸状部分とも言える。第1当接部541の右端は、回動軸AX3に直交する。第1凹部542は、回動軸AX3を中心とした周方向において、第1当接部541に対して第2方向R2側に設けられ、かつ、第1当接部541に対し左側に窪んだ部分である。なお、第1当接部541の第1方向R1側には、トーションスプリング62の一部を覆う筒壁543が設けられている。図19に示すように、第1筒状部54の左端は、回動軸AX3に直交する当接面547を構成している。当接面547は、シャフト26周りに設けられた止め輪277に当接している。止め輪277により、第1筒状部54の左側への移動は規制される。
【0093】
図21及び図22に示すように、第3筒状部25の左部分には、第2当接部252と、第3当接部253と、傾斜部254とが設けられている。第2当接部252は、第3筒状部25において最も左側へ突出する部分である。第2当接部252は、第3筒状部25における凸状部分とも言える。第2当接部252における左端は、回動軸AX3に直交する。図23に示すように、第3当接部253は、第2当接部252に対し第1方向R1側に設けられている。また、図22に示すように、第3当接部253は、第2当接部252に対して右側に窪んでいる。第3当接部253は、第2凹部とも呼ばれる。傾斜部254は、第2当接部252と第3当接部253とを周方向において接続する部分である。傾斜部254は、第1方向R1側へ向かうにつれて、第1カバー51の側(左側)への突出量が次第に減少するように形成されている。このように、第3筒状部25の左部分は、段差形状を呈する。なお、図19に示すように、第3筒状部25の右端は、回動軸AX3に直交する当接面255を構成している。
【0094】
図19に示すように、第2筒状部58は、左端に設けられた当接面581(第1当接面)と、右端に設けられた当接面582とを備える。当接面581、582は、回動軸AX3に直交する。当接面581は、第3筒状部25の当接面255(第2当接面)に当接する。当接面582は、シャフト26周りに設けられた止め輪278に当接している。止め輪278により、第2筒状部58の右側への移動は規制される。
【0095】
ウォールチェイサー1の状態が、加工作業を行うことが可能な状態である常時には、補助カバー22の突起27は、デプスガイド63の貫通孔57に係合している(例えば、図3参照)。また、常時には、第1カバー51と第2カバー55とは、連結部59によって左右方向に連結されており、回動軸AX3周りに一体に回動する。言い換えると、第1カバー51は単独で回動されない。
【0096】
図24及び図25には、カバー部5におけるシャフト26周りを上から見た部分模式図が示されている。(a)は、常時におけるカバー部5を示し、(b)は第1カバー51と第2カバー55との連結が解除されて、第1カバー51が単独で回動された状態を示している。常時には、第1筒状部54の第1当接部541と第3筒状部25の第2当接部252とは、左右方向において当接している(図19図25参照)。そのため、第3筒状部25の左側への移動は、第1当接部541によって規制される。また、上述したように、止め輪277、278は、第1筒状部54、第2筒状部58、第3筒状部25全体が、左右方向に移動することを規制している。そのため、本実施形態のウォールチェイサー1では、加工作業中に、カバー部5がシャフト26上を左右方向に移動することが抑制されている。
【0097】
連結部59による連結が解除されると、第1カバー51は、独立してシャフト26周りに回動可能となる。なお、ベース部2の突起27が第2カバー55の貫通孔57に係合しているため、ベース部2は独立して回動不能である。
【0098】
図24図25に示すように、第1カバー51が第1方向R1へ回動されると、第1筒状部54の第1当接部541は第1方向R1側へ移動する。第1当接部541と第2当接部252との当接は、周方向において、第1当接部541が第2当接部252と異なる位置に移動するまで、維持される。第1当接部541と第2当接部252との当接が維持される第1カバー51の回動角度の範囲を、第1角度範囲とも呼ぶ。第1角度範囲は、例えば、第1カバー51が基準位置から第1方向R1に回動された場合に、周方向において第1当接部541が第2当接部252と異なる位置に移動するまでにおける第1カバー51の回動角度の範囲である。基準位置は、例えば、上死点にある第1カバー51の所定の位置(例えば、下縁511)である。基準位置は、下死点にある第1カバー51の所定の位置であってもよい。第1カバー51の回動角度が第1角度範囲内である場合には、第3筒状部25の左側への移動は、第1当接部541によって規制される。
【0099】
第1カバー51が第1角度範囲をこえて更に第1方向R1へ回動されると、第2当接部252の左側には、第1凹部542が位置するようになる。つまり、第2当接部252の左側には、スペースが生じる。そのため、第2当接部252は、図25(b)に矢印ARで示すように、第1凹部542側に移動可能となる。言い換えると、第3筒状部25(ベース部2)は、左側に移動可能となる。
【0100】
また、第2当接部252の第1方向R1側には、傾斜部254および第3当接部253が位置している。そのため、第1カバー51が第1角度範囲を超えて第1方向R1へ回動されるのに応じて、第1当接部541の右側には、傾斜部254が位置し、次いで、第3当接部253が位置するようになる。本実施形態では、第2当接部252と第3当接部253との左側への突出量の差は、第1凹部542の深さ(左右方向の幅)よりも小さい。そのため、第3筒状部25(ベース部2)が左側へ移動されると、第2当接部252は第1凹部542内に移動され、第3当接部253は第1当接部541に当接する。つまり、第1カバー51の回動範囲が第1角度範囲を超えると、ベース部2は、第3当接部253が第1当接部541に当接するまで、左側に移動できる。なお、基準位置に対する第1カバー51の回動角度であって、第1角度範囲を超えた角度を、第2角度範囲とも呼ぶ。第2角度範囲は、ベース部2と第2カバー55との左右方向の係合が解除される、第1カバー51の回動角度の範囲でもある。
【0101】
本実施形態では、第1当接部541と第3当接部253との左右方向の距離は、ベース部2が左側へ移動されたときに、ベース部2の突起27を第2カバー55の貫通孔57から抜くことが可能な距離に調整されている。そのため、第1カバー51が第1角度範囲を超えて回動されると、ベース部2が左側へ移動され、ベース部2と第2カバー55との係合が解除される。その結果、ベース部2は、独立して、シャフト26周りに回動可能となる。この状態で、ユーザがベース部2を第2方向R2へ移動させると、刃具101、102は左側に完全に露出される(図26参照)。以上のように、本実施形態のウォールチェイサー1では、第1カバー51を第1角度範囲を超えて第1方向R1に回動させることにより、カバー部5を容易に開いて、刃具101、102を左部分401に着脱することができる。
【0102】
以上で説明したように、本実施形態のウォールチェイサー1では、第1カバー51を第1方向R1へ回動することで、第2カバー55を第1カバー51側(左側)へ移動させ、ベース部2を第2方向R2へ回動できる。そのため、カバー部5を容易に開くことができる。したがって、本実施形態のウォールチェイサー1は、刃具101、102を容易に交換できるという利点を有する。
【0103】
また、常時には、第1カバー51の第1当接部541と第2カバー55の第2当接部252とが当接することで、第2カバー55の左側への移動が規制される。そのため、加工作業中にカバー部5がシャフト26上を左右方向に移動することが抑制される。したがって、ウォールチェイサー1における加工精度を向上できる。
【0104】
また、デプスガイド63の貫通孔57を、ベース部2と第2カバー55とを係合させるための係合部として用いることができる。そのため、当該係合部を別途設ける構成と比較して、ウォールチェイサー1を簡易に構成できる。
【0105】
また、カバー部5の第1筒状部54、第2筒状部58、第3筒状部25が設けられるシャフト26は、ウォールチェイサー1を加工方向に移動させるための車輪271、272のシャフトとしても機能する。そのため、ウォールチェイサー1の構成を簡易化できる。
【0106】
上記実施形態の各構成要素と本開示の技術の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本開示の技術の各構成要素を限定するものではない。
ウォールチェイサー1は、「ウォールチェイサー」の一例である。回転軸AX1は、「第1軸」の一例である。出力軸AX2は、「出力軸」の一例である。刃具101、102は、「複数の先端工具」の一例である。左部分401は、「工具装着部」の一例である。モータシャフト372、モータ371は、「モータシャフト」、「モータ」の一例である。ギヤ機構4は、「ギヤ機構」の一例である。ギヤハウジング31は、「ギヤハウジング」の一例である。モータハウジング37は、「モータハウジング」の一例である。左側、右側は、夫々、左右方向における「第1の側」、「第2の側」の一例である。リヤ部分3RBは、「リヤ部分」の一例である。第1突出部70は、「第1突出部」の一例である。コントローラハウジング38の外表面384、シャフト26の右端部262、第2突出部3Tは、「第2突出部」の一例である。平面P1、P2、P3は、夫々、「第1仮想平面」、「第2仮想平面」、「第3仮想平面」の一例である。第1リブ71は、「第1リブ」の一例である。第2リブ72は、「第2リブ」の一例である。連結リブ73、76は、「連結リブ」の一例である。傾斜リブ74、75は、「傾斜リブ」の一例である。端面711、端面721、端面731は、夫々、「第2の側における、第1リブの端面」、「第2の側における、第2リブの端面」、「第2の側における、連結リブの端面」の一例である。排気孔301は、「排気孔」の一例である。バッテリ200、バッテリ装着部39は、夫々、「バッテリ」、「バッテリ装着部」の一例である。ギヤハウジング本体32は、「ギヤハウジング本体」の一例である。第1接続部321、第2接続部323は、夫々、「第1部分」、「第2部分」の一例である。第1接続部321の左端322Lは、「第1の側の端」の一例である。角部324は、「角部」の一例である。
【0107】
なお、上記実施形態は単なる例示であり、本開示に係る形態用加工機は、例示されたウォールチェイサー1に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。また、これらの変更のうち少なくとも1つが、実施形態に例示されるウォールチェイサー1、及び各請求項に記載された特徴の少なくとも1つと組み合わされて採用されうる。
【0108】
ウォールチェイサー1の絶縁機構に関し、以下の変形が可能である。例えば、複数の介在部材41が、スピンドル40と第2カバー55とを絶縁する少なくとも1つの絶縁部材を含む限りにおいて、複数の介在部材41及び少なくとも1つの絶縁部材の構成は、第2カバー55とギヤハウジング31との構成や、絶縁機構が適用される携帯用加工機の構成に応じて適宜変更され得る。例えば、ウォールチェイサー1が第2連結部554と第3連結部34とを備えない構成では、少なくともスペーサ81がギヤハウジング31と第2カバー55との間に配置されれば、スピンドル40から介在部材41を介した第2カバー55までの電流の経路C1、経路C2を遮断することができる。そのため、上述の実施形態と同様の効果を奏する。また、第2連結部554と第3連結部34とが金属製のボルト86以外で連結する場合には、第2ブッシュ84は省略されてもよい。
【0109】
また、第2カバー55は、ギヤハウジング31との第1連結部551、第2連結部554が金属製であり、その他の部分が合成樹脂により形成されていてもよい。この構成であっても、第2カバー55のうち金属製の部分に電流が到達することを抑制できるので、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0110】
また、ギヤハウジング31と第2カバー55とが金属製のボルト86で連結される場合には、ギヤハウジング31と第2カバー55との一方にボルト86が螺合する螺合部が設けられ、他方にボルトシャフト862を内部に配置可能な孔(第1孔)が設けられればよい。例えば、ギヤハウジング31に雄ネジ部557を設け、第2連結部554に、第2ブッシュ84の筒部842が配置可能な孔(第1孔)を設けてもよい。
【0111】
衝撃分散機構に関し、以下の変形が可能である。例えば、第1突出部70の構成は、衝撃分散機構が適用される携帯用加工機の構成に応じて適宜変更され得る。例えば、第1リブ71と第2リブ72とは、連結されていなくともよい。あるいは、第1突出部70は、第1リブ71と第2リブ72とのいずれか一方を備えていなくともよい。また、同様に、第2突出部3Tの構成は、衝撃分散機構が適用される携帯用加工機の構成に応じて適宜変更され得る。例えば、第2突出部3Tは、コントローラハウジング38から右側に突出するように形成された壁部(リブ)であってもよい。
【0112】
カバー部5の構成に関し、以下の変形が可能である。例えば、カバー部5の構成は、第1カバー51の第1方向R1への回動角度が第1角度範囲内である場合に、ベース部2の左側(第1カバー51へ向かう側)への移動が規制され、第1カバー51の第1方向R1への回動角度が第1角度範囲を超えた場合には、ベース部2の左側への移動が許容される限りにおいて、適宜変更され得る。例えば、第1カバー51の第1当接部541、ベース部2の第2当接部252は、第1筒状部54、夫々、第1カバー51の第1筒状部54、ベース部2の第3筒状部25以外の部分に設けられていてもよい。
【0113】
また、ベース部2と第2カバー55とを左右方向に係合する構成は、ベース部2の左側(第1カバー51へ向かう側)への移動が規制されている場合に係合し、ベース部2の左側へ移動するのに応じて当該係合が解除される限りにおいて、適宜変更され得る。例えば、第2カバー55が、デプスガイド63の貫通孔57とは異なる溝部を有し、突起27が当該溝部に係合されてもよい。あるいは、突起27は、ベース部2に対して固定された任意の部分と係合してもよい。あるいは、第2カバー55が突起を有し、ベース部2が当該突起が係合される溝部を有していてもよい。
【0114】
また、第1筒状部54、第2筒状部58、第3筒状部25の構成は、シャフト26周りに回動可能に設けられている限りにおいて、適宜変更され得る。例えば、第1筒状部54、第2筒状部58、第3筒状部25の少なくとも1つは、周方向に一部が離間した筒状に形成されていてもよい。
【0115】
また、第1当接部541、第2当接部252、第3当接部253、第1凹部542の構成は、第1カバー51の回動角度が第1角度範囲内である場合に第1当接部541と第2当接部252とが当接し、第1角度範囲を超えた場合に当該当接が解除される限りにおいて、適宜変更され得る。
【0116】
また、第1カバー51と第2カバー55とは、第1カバー51が第1方向R1へ回動可能に構成されている限りにおいて、適宜変更され得る。例えば、第1カバー51と第2カバー55とは、常時において連結部59により連結されていなくともよい。あるいは、第1カバー51と第2カバー55とが連結される場合には、連結部59の構成は適宜変更されてもよい。
【0117】
上記実施形態では、ウォールチェイサー1の先端工具として、2列溝を形成するための刃具101、102が用いられていた。これに代えて、3つ以上の刃具が使用されてもよい。あるいは、2列以上の刃部を有する単一の刃具が使用されてもよい。
【0118】
ベース部2は省略されてもよい。この場合、本体部3をベース部2に対して揺動させるための構成も省略される。
【符号の説明】
【0119】
1:ウォールチェイサー、2:ベース部、3:本体部、3R:右部分、3RB:リヤ部分、3T:第2突出部、4:ギヤ機構、5:カバー部、8:矢印、9:矢印、21:ベース、22:補助カバー、23:当接面、24:貫通孔、25:第3筒状部、26:シャフト、27:突起、29:上縁部、30:本体ハウジング、31:ギヤハウジング、32:ギヤハウジング本体、33:ベアリングボックス、34:第3連結部、37:モータハウジング、38:コントローラハウジング、39:バッテリ装着部、40:スピンドル、41:介在部材、46:インナーフランジ、47:ロックナット、48:スペーサ、50:カバー本体、51:第1カバー、52:第1カバー、54:第1筒状部、55:第2カバー、56:右壁、57:貫通孔、58:第2筒状部、59:連結部、62:トーションスプリング、63:デプスガイド、64:第1ハンドル、65:第2ハンドル、70:第1突出部、71:第1リブ、72:第2リブ、73:連結リブ、74:傾斜リブ、75:傾斜リブ、76:連結リブ、81:スペーサ、82:第1ブッシュ、84:第2ブッシュ、86:ボルト、87:頭部、89:ワッシャ、91:シャフトロックスイッチ、101:刃具、102:刃具、200:バッテリ、252:第2当接部、253:第3当接部、254:傾斜部、255:当接面、259:孔、262:右端部、271:車輪、272:車輪、273:本体部、274:被覆部、277:止め輪、278:止め輪、301:排気孔、321:第1接続部、322L:左端、322R:右端、323:第2接続部、324:角部、325:本体部、326:右表面、328:凹部、331:フランジ、332:筒部、333:左端、335:ネジ、341:貫通孔、342:凹部、343:右端、344:右表面、345:左端、371:モータ、372:モータシャフト、373:ファン、374:外表面、381:コントローラ、382:吸気孔、384:外表面、391:給電端子、401:左部分、402:右部分、411:第1ベアリング、412:小ベベルギヤ、413:大ベベルギヤ、414:ベアリングリテーナ、415:第2ベアリング、416:ワッシャ、481:スリーブ、511:下縁、541:第1当接部、542:第1凹部、543:筒壁、547:当接面、549:孔、551:第1連結部、552:右端、554:第2連結部、555:孔、556:凹部、557:雄ネジ部、559:ネジ、581:当接面、582:当接面、589:孔、633:ストッパ、634:操作ツマミ、635:ナット、641:第1把持部、642:トリガ、651:第2把持部、652:基部、653:ブリッジ部、654:筒部、655:操作ツマミ、711:右端、721:右端、731:右端、741:前端、811:フランジ、812:筒状部、813:孔、821:貫通孔、822:凸部、823:凸部、824:外表面、825:右端、841:フランジ、842:筒部、845:孔、861:頭部、862:ボルトシャフト、863:先端部、AR:矢印、AX1:回転軸、AX2:出力軸、AX3:軸、AX4:中心軸、C1:経路、C2:経路、C3:経路、C4:経路、C5:経路、G:間隙、P:仮想平面、P1:平面、P2:平面、P3:平面、R1:第1方向、R2:第2方向
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