(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087200
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】ストーカ装置
(51)【国際特許分類】
F23H 7/08 20060101AFI20240624BHJP
F23H 7/04 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
F23H7/08 Z
F23H7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201858
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 敬
(72)【発明者】
【氏名】赤木 良
(72)【発明者】
【氏名】池田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】中田 皓大
(72)【発明者】
【氏名】大浜 萌
(57)【要約】
【課題】 被焼却物の乾燥を効果的に行えるとともに落じん灰の量を少なくできるストーカ装置を提供する。
【解決手段】 上流側ストーカ7及び下流側ストーカ9を備え、上流側ストーカ7は、被焼却物の搬送方向に階段状に並んだ複数の火格子を有する第1の可動火格子列及び第1の固定火格子列を備え、第1の可動火格子列と第1の固定火格子列とが搬送方向と直交する方向に交互に並んで配置され、第1の可動火格子列が搬送方向及び搬送方向の逆方向に揺動し、下流側ストーカ9は、搬送方向と直交する方向に並んだ複数の火格子を有する第2の可動火格子列及び第2の固定火格子列を備え、第2の可動火格子列と第2の固定火格子列とがオーバーラップして搬送方向に交互に並んで配置され、第2の可動火格子列が搬送方向及び搬送方向の逆方向に揺動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼却物を搬送方向に搬送しながら乾燥させて燃焼するストーカ式焼却炉に用いられ、前記搬送方向の上流側に配置される上流側ストーカと下流側に配置される下流側ストーカとを備えたストーカ装置であって、
前記上流側ストーカは、
前記搬送方向に階段状に並んだ複数の火格子を有する第1の可動火格子列及び第1の固定火格子列を備え、前記第1の可動火格子列と前記第1の固定火格子列とが前記搬送方向と直交する方向に交互に並んで配置され、前記第1の可動火格子列が平面視において前記搬送方向及び前記搬送方向の逆方向に揺動することにより被焼却物を搬送する第1形式のストーカからなり、
前記下流側ストーカは、
前記搬送方向と直交する方向に並んだ複数の火格子を有する第2の可動火格子列及び第2の固定火格子列を備え、前記第2の可動火格子列と前記第2の固定火格子列とが互いの一部分がオーバーラップして前記搬送方向に交互に並んで配置され、前記第2の可動火格子列が前記第2の固定火格子列とオーバーラップした状態を維持しながら平面視において前記搬送方向及び前記搬送方向の逆方向に揺動することにより被焼却物を搬送する第2形式のストーカからなる、
ストーカ装置。
【請求項2】
前記上流側ストーカと前記下流側ストーカとの間に、前記第1形式または前記第2形式のストーカからなる中間ストーカをさらに備えた、
請求項1に記載のストーカ装置。
【請求項3】
前記第1形式のストーカは、
前記第1の可動火格子列が、前記第1の可動火格子列の前記火格子が上に凸の曲線に沿って往復移動するように揺動する、
請求項1または2に記載のストーカ装置。
【請求項4】
前記第2形式のストーカは、
前記搬送方向を水平方向とし、前記第2の可動火格子列及び前記第2の固定火格子列が、それぞれの前記火格子の表面が前記搬送方向に向かって上り傾斜となるように配置されている、
請求項1または2に記載のストーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ストーカ式焼却炉に用いられるストーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ごみ等の廃棄物からなる被焼却物を焼却する焼却炉として、ストーカ式焼却炉が用いられている。ストーカ式焼却炉では、被焼却物を搬送しながら乾燥させて燃焼するために複数のストーカが被焼却物の搬送方向に並んで設置される。
【0003】
例えば、特許文献1には、固定火格子と、固定火格子に隣接して前後方向に移動可能に設けられた可動火格子とを有する並列揺動型ストーカが記載されている。このストーカでは、固定火格子と可動火格子との間には、所定の隙間が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ストーカ式焼却炉では、被焼却物の搬送方向の上流側から下流側に向かって、乾燥ゾーン、燃焼ゾーン、後燃焼ゾーンが順番に設定され、これら各ゾーンにストーカを割り当てて配置することが多い。各ゾーンに配置された複数のストーカによってストーカ装置が構成される。特許文献1に記載のストーカは、被焼却物の乾燥を効果的に行うことができるが、特許文献1に記載のストーカを後燃焼ゾーンに配置した場合、後燃焼ゾーンでは、粒子の細かい焼却灰が多いため、固定火格子と可動火格子との間の隙間から落下する落じん灰が多くなる。
【0006】
本開示は上記のような課題を解決するためになされたもので、被焼却物の乾燥を効果的に行えるとともにストーカから落下する落じん灰の量を少なくできるストーカ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示のある態様に係るストーカ装置は、被焼却物を搬送方向に搬送しながら乾燥させて燃焼するストーカ式焼却炉に用いられ、前記搬送方向の上流側に配置される上流側ストーカと下流側に配置される下流側ストーカとを備えたストーカ装置であって、前記上流側ストーカは、前記搬送方向に階段状に並んだ複数の火格子を有する第1の可動火格子列及び第1の固定火格子列を備え、前記第1の可動火格子列と前記第1の固定火格子列とが前記搬送方向と直交する方向に交互に並んで配置され、前記第1の可動火格子列が平面視において前記搬送方向及び前記搬送方向の逆方向に揺動することにより被焼却物を搬送する第1形式のストーカからなり、前記下流側ストーカは、前記搬送方向と直交する方向に並んだ複数の火格子を有する第2の可動火格子列及び第2の固定火格子列を備え、前記第2の可動火格子列と前記第2の固定火格子列とが互いの一部分がオーバーラップして前記搬送方向に交互に並んで配置され、前記第2の可動火格子列が前記第2の固定火格子列とオーバーラップした状態を維持しながら平面視において前記搬送方向及び前記搬送方向の逆方向に揺動することにより被焼却物を搬送する第2形式のストーカからなる。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、以上に説明した構成を有し、被焼却物の乾燥を効果的に行えるとともにストーカから落下する落じん灰の量を少なくできるストーカ装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の一例のストーカ装置を備えたストーカ式焼却炉の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、ストーカ装置を上方から視た概略平面図である。
【
図3】
図3は、第1ストーカまたは第2ストーカの一部分を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1ストーカまたは第2ストーカの第1の可動火格子列の揺動機構の一例を示す概略側面図である。
【
図5】
図5は、第3ストーカを側方から視た簡略図である。
【
図6】
図6は、比較例のストーカの一部分を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な表示ではない場合がある。
【0011】
(実施形態)
図1は、本実施形態の一例のストーカ装置を備えたストーカ式焼却炉の概略構成を示す図である。
【0012】
図1に示すストーカ式焼却炉1は、ホッパ2、シュート3、フィーダ4、主燃焼室5、再燃焼室6、ストーカ装置10、焼却灰の排出シュート11、及び風箱12~14等を備えている。
【0013】
ストーカ式焼却炉1では、ごみ等の廃棄物からなる被焼却物mがホッパ2に供給される。ホッパ2に供給された被焼却物mは、シュート3を通ってフィーダ4によって主燃焼室5へ押し出されて、主燃焼室5に設置されたストーカ装置10へ供給される。
【0014】
ストーカ装置10は、例えば、第1ストーカ7、第2ストーカ8及び第3ストーカ9を備えている。第1ストーカ7が上流側ストーカに相当し、第2ストーカ8が中間ストーカに相当し、第3ストーカ9が下流側ストーカに相当する。なお、第1~第3ストーカ7,8,9の下方の風箱12,13,14を通じて一次空気が導入され、主燃焼室5へ一次空気が供給される。また、主燃焼室5には、主燃焼室5の壁面や天井などに設けられた空気供給口から二次空気が供給される。なお、「上流側」、「下流側」は、被焼却物の搬送方向における上流側、下流側を意味する。
【0015】
ストーカ装置10は、乾燥ゾーンZ1、燃焼ゾーンZ2及び後燃焼ゾーンZ3を有し、被焼却物mを、これら3つのゾーンZ1、Z2、Z3を通過させながら搬送することができる。このストーカ装置10では、第1ストーカ7が乾燥ゾーンZ1に割り当てられ、第2ストーカ8が燃焼ゾーンZ2に割り当てられ、第3ストーカ9が後燃焼ゾーンZ3に割り当てられている。
【0016】
ストーカ装置10で搬送される被焼却物mは、概ね、乾燥ゾーンZ1で乾燥されて、燃焼ゾーンZ2で着火して燃焼される。後燃焼ゾーンZ3では、燃焼ゾーンZ2で燃え残ったものが完全燃焼される。燃焼後に残った焼却灰は、排出シュート11から外部へと排出される。また、主燃焼室5の燃焼排ガスは、再燃焼室6で完全燃焼する。このストーカ式焼却炉1には、当該ストーカ式焼却炉1の廃熱を利用して蒸気を発生する廃熱ボイラ15が設置されているが、廃熱ボイラ15が無い構成であってもよい。
【0017】
次に、本実施形態のストーカ装置10について、
図2~
図5を参照して詳しく説明する。
図2は、ストーカ装置10を上方から視た概略平面図である。
【0018】
まず、第1ストーカ7及び第2ストーカ8について説明する。
図3は、第1ストーカ7または第2ストーカ8の一部分を示す斜視図である。
図4は、第1ストーカ7または第2ストーカ8の第1の可動火格子列21の揺動機構の一例を示す概略側面図である。
【0019】
第1ストーカ7及び第2ストーカ8は同様の構成であり、いずれも第1形式のストーカである。この第1ストーカ7及び第2ストーカ8は、
図2に示すように、第1の可動火格子列21と第1の固定火格子列22とが搬送方向S1と直交する方向に交互に並んで配置されている。また、
図3に示すように、第1の可動火格子列21は、被焼却物の搬送方向S1に階段状に並んだ複数の火格子21aが結合されてなり、表面が階段状に形成されている。第1の固定火格子列22も、第1の可動火格子列21と同様、搬送方向S1に階段状に並んだ複数の火格子22aが結合されてなり、表面が階段状に形成されている。そして、第1の可動火格子列21及び第1の固定火格子列22は、搬送方向S1の上流側部分より下流側部分が低くなるように傾斜して配置されている。第1の固定火格子列22は所定のフレームに固定されて常に静止状態である。第1の可動火格子列21が
図2の矢印aで示すように、平面視において、搬送方向S1及び搬送方向S1の逆方向に揺動することにより被焼却物を搬送するようになっている。なお、第1の可動火格子列21と第1の固定火格子列22との間には、第1の可動火格子列21の揺動運動が可能なように所定の小さな隙間がある。
【0020】
複数の第1の可動火格子列21を揺動させる揺動機構について、
図4を参照して説明する。
【0021】
この揺動機構は、複数の各々の第1の可動火格子列21に対して、可動火格子列21の複数の火格子21aを装着した可動フレーム31と、可動フレーム31の上流側部分及び下流側部分に連結されるリンク32,33とを備えている。さらに、揺動機構は、複数の全ての第1の可動火格子列21に対して共通の駆動軸34、アーム35及び油圧シリンダ36を備えている。
【0022】
上流側のリンク32は、一端が可動フレーム31の上流側の連結具に連結され、他端が水平に配置された駆動軸34に固定されている。駆動軸34には、アーム35の一端が固定され、アーム35の他端は油圧シリンダ36のピストンロッド36aの先端部分に連結されている。油圧シリンダ36の基端部分は、適宜の部品を介してベースフレーム37に固定されている。下流側のリンク33は、一端が可動フレーム31の下流側の連結具に連結され、他端が連結具38に連結されている。連結具38は、適宜の部品を介してベースフレーム37に固定されている。なお、駆動軸34は、所定の軸受によって同一位置で回転可能に支持されている。
【0023】
油圧シリンダ36のピストンロッド36aが伸縮運動することにより、アーム35を介して駆動軸34を所定の角度で往復回動運動させる。このとき、上流側のリンク32が駆動軸34とともに運動することにより、可動フレーム31とともに可動火格子列21が揺動する。また、可動フレーム31の揺動に伴って下流側のリンク33が連結具38の軸を中心にして揺動する。これにより、
図3の矢印aで示すように、火格子21aが上に凸の曲線からなる円弧に沿って往復移動するように可動火格子列21が揺動する。
【0024】
次に、第3ストーカ9について説明する。
図5は、第3ストーカ9を側方から視た簡略図である。
【0025】
第3ストーカ9は、第1及び第2ストーカ7,8とは異なる第2形式のストーカである。この第3ストーカ9は、
図2及び
図5に示すように、第2の可動火格子列41と第2の固定火格子列42とが互いの一部分がオーバーラップして搬送方向S1に交互に並んで配置されている。第2の可動火格子列41は、搬送方向S1と直交する方向に並んだ複数の火格子41aが結合されてなる。第2の固定火格子列42は、搬送方向S1と直交する方向に並んだ複数の火格子42aが結合されてなる。第2の固定火格子列42は所定の固定フレームに固定されて常に静止状態である。第2の可動火格子列41が、第2の固定火格子列42とオーバーラップした状態を維持しながら、矢印bで示すように、平面視において、搬送方向S1及び搬送方向S1の逆方向に揺動することにより被焼却物を搬送するようになっている。
【0026】
本実施形態では、
図5に示すように、可動火格子列41及び固定火格子列42は、それぞれの火格子41a,42aの表面が被焼却物の水平な搬送方向S1に向かって所定の傾斜角度θで上り傾斜となるように配置されている。複数の可動火格子列41の後端は、ブラケット43を介して連結棒45に固定されている。連結棒45は傾斜角度θの上り傾斜方向に往復移動できるように支持されている。そして、連結棒45の基端部分は、例えば油圧シリンダ46のピストンロッド46aに結合されている。油圧シリンダ46のピストンロッド46aが伸縮運動することにより、連結棒45及び可動火格子列41が矢印b方向に揺動し、被焼却物が搬送方向S1に搬送される。
【0027】
本実施形態のストーカ装置10では、乾燥ゾーンZ1及び燃焼ゾーンZ2に配置される第1,第2ストーカ7,8を第1形式のストーカとすることにより、第1の可動火格子列21の揺動運動によって被焼却物を効率よく攪拌でき、被焼却物の乾燥を効果的に行える。また、第1の可動火格子列21が、火格子21aが上に凸の曲線に沿って往復移動するように揺動することにより、第1の固定火格子列22と第1の可動火格子列21とに跨って存在する被焼却物をせん断する効果が得られ、被焼却物の攪拌作用を大きくして被焼却物の乾燥及び燃焼をより効率的に行うことができる。
【0028】
また、粒子の細かい焼却灰が多くなる後燃焼ゾーンZ3に配置される第3ストーカ9を第2形式のストーカとすることにより、第2の可動火格子列41が第2の固定火格子列42とオーバーラップした状態を維持しながら揺動するので、落じん灰の量を少なくできる。風箱12~14の下方には落じん灰を回収するコンベアが配置されるが、落じん灰の量が少なくなることにより、コンベアによる搬送量が低減する。よって、コンベヤの長寿命化やトラブル低減の効果が期待できる。また、許容積載荷重の小さいコンベアを用いることができ、当該コンベアのコスト低減を図ることができる。
【0029】
また、第2形式のストーカは、第2の可動火格子列41及び第2の固定火格子列42が、それぞれの火格子41a、42aの表面が水平な搬送方向S1に向かって上り傾斜となるように配置されている。これにより、第3ストーカ9に必要な高さを低くすることができ、ストーカ装置10全体の高さを低くすることができる。よって、ストーカ装置10を備えるストーカ式焼却炉1を有した施設の建設コストの削減を図ることが可能になる。
【0030】
なお、第3ストーカ9に必要な高さは高くなるが、第2形式のストーカからなる第2の可動火格子列41及び第2の固定火格子列42を、それぞれの火格子41a、42aの表面が水平となるように配置した構成も可能である。この場合、被焼却物の搬送方向S1が斜め下方へ向かう方向となる。
【0031】
(比較例)
図6は、比較例のストーカの一部分を示す斜視図である。この
図6に示す比較例のストーカ50は、複数の第1の反転火格子53と複数の第2の反転火格子54とを備えている。第1の反転火格子53と第2の反転火格子54とは同様の構成であるが、動作のタイミングが異なる。このストーカ50は、複数の第1の反転火格子53が被焼却物の搬送方向S1に並んで配置された列と、複数の第2の反転火格子54が被焼却物の搬送方向S1に並んで配置された列とが、搬送方向S1と直交する方向に交互に並んで配置されている。第1,第2の反転火格子53,54は、固定フレーム51に取り付けられた火格子ホルダ52に回動可能に取り付けられている。固定フレーム51は、支持フレーム55上に固定されている。
【0032】
第1,第2の反転火格子53,54は、側方から見ると扇形形状であり、火格子ホルダ52に内蔵された回動軸を中心に回動可能であり、実線で示す状態である第1状態と二点鎖線で示す状態である第2状態との間で、矢印cで示すように反復運動するように構成されている。ここで、第1の反転火格子53と第2の反転火格子54とは、第1状態及び第2状態の変化するタイミングが異なる。例えば、はじめは、第1,第2の反転火格子53,54の両方が第1状態とする。次に、第1の反転火格子53が第1状態から第2状態へ変化し、さらに第1状態へ変化する。次に、第2の反転火格子54が第1状態から第2状態へ変化し、さらに第1状態へ変化する。以下、同様に、第1の反転火格子53と第2の反転火格子54とが交互に動作を繰り返す。
【0033】
この比較例のストーカ50は、乾燥ゾーンZ1、燃焼ゾーンZ2及び後燃焼ゾーンZ3のいずれかのゾーンに割り当てられた場合には、本実施形態の第1形式の第1,第2ストーカ7,8及び第2形式の第3ストーカ9と比較して、同等あるいはそれ以上に優れた被焼却物の攪拌作用を得ることは可能であるが、第1,第2の反転火格子53,54が第2状態になったときに同反転火格子が露出して焼損しやすくなるという欠点がある。また、比較例のストーカ50を後燃焼ゾーンZ3に割り当てた場合には、本実施形態の第2形式の第3ストーカ9と比較して、可動する第1,第2の反転火格子53,54と固定フレーム51との隙間から落下する落じん灰の量が多くなる。
【0034】
よって、本実施形態のように第1,第2ストーカ7,8に第1形式のストーカを用い、第3ストーカ9に第2形式のストーカを用いることにより、被焼却物を効率よく攪拌でき、被焼却物の乾燥を効果的に行えるとともに、火格子の焼損を低減することができる。
【0035】
なお、本実施形態のストーカ装置10においては、乾燥ゾーンZ1、燃焼ゾーンZ2及び後燃焼ゾーンZ3に対して、第1形式の第1ストーカ7、第1形式の第2ストーカ8及び第2形式の第3ストーカ9をそれぞれ割り当てたが、これに限定されるものではない。乾燥ゾーンZ1に第1形式のストーカを割り当て、燃焼ゾーンZ2に第2形式のストーカを割り当て、後燃焼ゾーンZ3に第2形式のストーカを割り当てるようにしてもよい。
【0036】
また、ストーカ装置10を2つのストーカで構成してもよい。この場合には、乾燥ゾーンZ1及び燃焼ゾーンZ2に1つの上流側ストーカとして第1形式のストーカを割り当て、後燃焼ゾーンZ3に1つの下流側ストーカとして第2形式のストーカを割り当てるようにしてもよい。あるいは、乾燥ゾーンZ1に1つの上流側ストーカとして第1形式のストーカを割り当て、燃焼ゾーンZ2及び後燃焼ゾーンZ3に1つの下流側ストーカとして第2形式のストーカを割り当てるようにしてもよい。
【0037】
上記のように本実施形態では、ストーカ装置10において、上流側の領域に1つまたは複数の第1形式のストーカが設置され、下流側の領域に1つまたは複数の第2形式のストーカが設置される。例えば、
図2等に示されるように、第1形式のストーカでは、被焼却物の搬送方向S1に長い可動火格子列21と固定火格子列22とが搬送方向S1と直交する方向に交互に配置されている。この場合、可動火格子列21が揺動することにより、前述のように被焼却物はせん断方向の力を受けて動かされる。一方、第2形式のストーカでは、被焼却物の搬送方向S1と直交する方向に長い可動火格子列41と固定火格子列42とが搬送方向S1に一部分がオーバーラップして交互に配置されている。この場合、可動火格子列41が揺動することにより、被焼却物は搬送方向S1に向かって圧縮と開放の力が作用して動かされる。このように、第1形式のストーカと第2形式のストーカでは異なる力が被焼却物に作用して被焼却物が動かされるので、第1形式のストーカと第2形式のストーカとを組み合わせることにより、被焼却物の乾燥及び燃焼を促進することができる。
【0038】
上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0039】
(本開示のまとめ)
本開示の第1態様に係るストーカ装置は、被焼却物を搬送方向に搬送しながら乾燥させて燃焼するストーカ式焼却炉に用いられ、前記搬送方向の上流側に配置される上流側ストーカと下流側に配置される下流側ストーカとを備えたストーカ装置であって、前記上流側ストーカは、前記搬送方向に階段状に並んだ複数の火格子を有する第1の可動火格子列及び第1の固定火格子列を備え、前記第1の可動火格子列と前記第1の固定火格子列とが前記搬送方向と直交する方向に交互に並んで配置され、前記第1の可動火格子列が平面視において前記搬送方向及び前記搬送方向の逆方向に揺動することにより被焼却物を搬送する第1形式のストーカからなり、前記下流側ストーカは、前記搬送方向と直交する方向に並んだ複数の火格子を有する第2の可動火格子列及び第2の固定火格子列を備え、前記第2の可動火格子列と前記第2の固定火格子列とが互いの一部分がオーバーラップして前記搬送方向に交互に並んで配置され、前記第2の可動火格子列が前記第2の固定火格子列とオーバーラップした状態を維持しながら平面視において前記搬送方向及び前記搬送方向の逆方向に揺動することにより被焼却物を搬送する第2形式のストーカからなる。
【0040】
この構成によれば、上流側ストーカを第1形式のストーカとすることにより、第1の可動火格子列の揺動運動によって被焼却物を効率よく攪拌でき、被焼却物の乾燥を効果的に行える。また、粒子の細かい焼却灰が多くなるところに配置される下流側ストーカを第2形式のストーカとすることにより、第2の可動火格子列が第2の固定火格子列とオーバーラップした状態を維持しながら揺動するので、落じん灰の量を少なくできる。
【0041】
本開示の第2態様に係るストーカ装置は、第1態様に係るストーカ装置において、前記上流側ストーカと前記下流側ストーカとの間に、前記第1形式または前記第2形式のストーカからなる中間ストーカをさらに備えている。
【0042】
この構成によれば、ストーカ装置上の全領域を搬送方向の上流側から下流側に向かって乾燥ゾーン、燃焼ゾーン、後燃焼ゾーンに分けたときに、乾燥ゾーンに上流側ストーカを割り当て、燃焼ゾーンに中間ストーカを割り当て、後燃焼ゾーンに下流側ストーカを割り当てることができる。
【0043】
本開示の第3態様に係るストーカ装置は、第1または第2態様に係るストーカ装置において、前記第1形式のストーカは、前記第1の可動火格子列が、前記第1の可動火格子列の前記火格子が上に凸の曲線に沿って往復移動するように揺動する。
【0044】
この構成によれば、第1の固定火格子列と第1の可動火格子列とに跨って存在する被焼却物をせん断する効果が得られ、被焼却物の攪拌作用を大きくして被焼却物の乾燥及び燃焼をより効率的に行うことができる。
【0045】
本開示の第4態様に係るストーカ装置は、第1乃至第3のいずれかの態様に係るストーカ装置において、前記第2形式のストーカは、前記搬送方向を水平方向とし、前記第2の可動火格子列及び前記第2の固定火格子列が、それぞれの前記火格子の表面が前記搬送方向に向かって上り傾斜となるように配置されている。
【0046】
この構成によれば、第2形式のストーカに必要な高さを低くすることができ、ストーカ装置全体の高さを低くすることができる。よって、ストーカ装置を備えるストーカ式焼却炉を有した施設の建設コストの削減を図ることが可能になる。
【符号の説明】
【0047】
7 第1ストーカ
8 第2ストーカ
9 第3ストーカ
10 ストーカ装置
21 第1の可動火格子列
21a 第1の可動火格子列の火格子
22 第1の固定火格子列
22a 第1の固定火格子列の火格子
41 第2の可動火格子列
41a 第2の可動火格子列の火格子
42 第2の固定火格子列
42a 第2の固定火格子列の火格子