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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087201
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】丁張用固定具
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/06 20060101AFI20240624BHJP
   E02D 27/00 20060101ALI20240624BHJP
   G01C 9/28 20060101ALN20240624BHJP
【FI】
G01C15/06 Z
E02D27/00 Z
G01C9/28
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201861
(22)【出願日】2022-12-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】522491339
【氏名又は名称】株式会社徳屋
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100122312
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 正優
(72)【発明者】
【氏名】小林 克啓
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】丁張板の高さや傾斜の調整が簡便に行え、また丁張杭の直径が大幅に変化した場合でも、同一の金具で対応しうる丁張用固定具を提供する。
【解決手段】丁張杭に丁張板を着脱可能に固定するための先端がV字型の金属製の枠体の丁張用固定具であって、前記枠体の枠体背面部に形成された丁張杭係止用ネジ穴と、前記丁張杭係止用ネジ穴に挿通され、前記枠体の先端側に挿通された前記丁張杭を押圧固定する丁張杭係止用ネジと、前記枠体背面部の上部に直立に延在するネジ止め用部材と、前記ネジ止め用部材に形成された丁張板係止用ネジ穴と、前記丁張板係止用ネジ穴に挿通され、前記丁張杭に当接する前記丁張板を押圧固定する丁張板係止用ネジとを備える構造とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
丁張用杭に丁張板を着脱可能に固定するための先端がV字型の金属製の枠体の丁張用固定具であって、
前記枠体の枠体背面部に形成された丁張杭係止用ネジ穴と、前記丁張杭係止用ネジ穴に挿通され、前記枠体の先端側に挿通された前記丁張用杭を押圧固定する丁張杭係止用ネジと、
前記枠体背面部の上部に直立に延在するネジ止め用部材と、前記ネジ止め用部材に形成された丁張板係止用ネジ穴と、前記丁張板係止用ネジ穴に挿通され、前記丁張杭に当接する前記丁張板を押圧固定する丁張板係止用ネジとを備えたことを特徴とする丁張用固定具。
【請求項2】
前記枠体の水平断面は先細りの五角形であり、前記水平断面の中心線に対し軸対象の形状を有し、前記枠体背面部の縦中央線上に前記丁張板係止用ネジ穴と前記丁張杭係止用ネジ穴とが上下に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の丁張用固定具。
【請求項3】
丁張用杭に丁張板を着脱可能に固定するための金属製枠体の丁張用固定具であって、
前記枠体は、前記丁張杭の直径以上の間隔で対向して配置された一対の帯板からなる枠体側面部と、
前記枠体側面部の一端にそれぞれ連結し、先端がV字型形状を有する枠体先端部と、
前記枠体側面部の他端にそれぞれ連結する帯板の枠体背面部と、
前期枠体背面部に形成された丁張杭係止用ネジ穴と、前記丁張杭係止用ネジ穴に挿通され、前記枠体の先端側に挿通される前記丁張用杭を押圧固定する丁張杭係止用ネジと
前記枠体背面部の上部に延延する平板又はコ型形状のネジ止め用部材と、
前記ネジ止め用部材に形成された丁張板係止用ネジ穴と、前記丁張板係止用ネジ穴に挿通され、前記丁張杭に当接する前記丁張板を押圧固定する丁張板係止用ネジと
を備えたことを特徴とする丁張用固定具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は丁張用固定具に関し、特に丁張板の高さや傾きの調整が容易であり、また施工現場に応じて、木杭あるいは鉄筋杭等、口径・材質の異なる杭が使用可能な丁張用固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事や建築工事の現場においては、着工前あるいは工事施工中に、施工する建造物の高さ、位置、方向等の基準を定めるための丁張り掛け作業が行われる。これは施工図面に基づいて定められる縄張りの外側に、複数の杭材(丁張用杭)を所定間隔で打設し、水準器により各杭に水平な丁張板等を取り付けてなるものである。
【0003】
従来の丁張は、木製の杭に丁張板(貫板)と呼ばれる木製の板材を、木杭に釘を打ち付けることにより設置されていた。しかし、釘によって打ち付けられた丁張の解体は容易でなく、杭や丁張板を再利用することが難しい、という問題があった。また、釘を用いて丁張板を固定することから、杭は木製でなければならないという制約があった。
【0004】
また施工が進むに従って、丁張板の高さや傾斜角度の調整等のため、一時的に丁張板を取外し、再度取付ける作業が必要な場合が生じるが、丁張板の取外し、再取付け作業は、丁張板から釘を抜き、高さ等の調整後、再度、釘により杭と丁張板とを固定しなければならず手間のかかる煩雑な作業となっていた。
【0005】
また木杭では、凍結した地表面や岩盤等に杭を打ち込むことは容易ではないため、木杭に代えて金属製の杭(例えば鉄筋棒)を使う場合がある。かかる場合には、丁張板の取付けに釘を用いることができないため、釘以外の何らかの手段で丁張板を鉄筋杭に取り付ける必要があり、従来から金属製の固定用治具により丁張板を鉄筋杭に固定している。そのため、鉄筋杭に丁張板を固定する固定具に関して、多数の提案がなされている(例えば特許文献1~3)。以下、従来提案された丁張用固定具の技術内容について説明する。
【0006】
特許文献1には、立杭を嵌め込む立杭支持管に、板材を挿入する板材支持管(長方形の箱体)を所定の方向に固着し、立杭支持管には止めネジを、板材支持管には釘穴又は止めネジを設けてなる「測量用丁張の組立用クランプ」が開示されている。
【0007】
特許文献2には、金属又は硬質樹脂の杭部材と、この杭部材に上下移動可能に嵌合する筒部と、この筒部に直交して取り付けられたトンボ部を有する丁張装置が開示されている。この丁張装置はさらに、トンボ部を杭に対して回動可能にする構成も付加開示されている。
【0008】
特許文献3には、丁張板を把持する断面コの字状の丁張板保持部と、この把持部の背面中央に連結された杭把持部と、この両者を回動可能に連結する連結部を備える丁張用固定具が開示されている。
【0009】
しかし、これらの特許文献は、後述する本発明の課題、即ち、丁張板の高さや傾斜の調整を行うため、簡便に杭から丁張板の取外し取付けが可能であり、杭材の直径が大幅に変化しても使用可能な丁張用固定具に対して、何ら解決の示唆を与えるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開平5―2014号公報
【特許文献2】特開2004-37154号公報
【特許文献3】特開2018-185189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように土木・建築工事等において、工事の施工が進むに従って一時的に丁張板を取外し、丁張板の高さや傾斜角度の調整を行う作業が必要となる場合が生じる。かかる場合において、特許文献1に記載の丁張用固定具は、鉄筋杭の使用が可能なため凍結した地表面や固い地盤に杭を打ち込むことができ、また丁張用固定具により丁張板を鉄筋杭に固定することもできる。
【0012】
しかし、丁張用固定具と丁張板との固定は、丁張固定具に形成された釘穴を通して釘で打ち付けなけねばならない。このため、丁張板の高さ調整等のためには、丁張板の釘を抜き、釘止めの作業が必要であり、丁張板を再利用することが難しい、という問題がある。
【0013】
特許文献2に記載の丁張装置は鉄筋杭を使用できるので、特許文献1の丁張用固定具と同様に凍結した地表面や固い地盤の地面でも使用することができる。しかし、丁張板は筒部に保持され、丁張装置が備える高さ調整ネジにより筒部を杭部材に締結して固定するものであることから、丁張板の高さや傾きを微調整したい場合であっても、調整ネジを緩めることにより丁張装置自体も杭から外れてしまい、丁張板のみを微調整することができない、という問題がある。また、構造が複雑であり重くコスト高になるという問題がある。
【0014】
特許文献3に記載の丁張用固定具は、特許文献1の丁張用固定具、特許文献2に記載の丁張装置と同様に、鉄筋杭を使用できるので凍結した地表面や固い地盤の地面でも使用することができる。しかし、丁張板は丁張用固定具に形成された丁張板保持板に保持されるため、丁張板保持板の幅内に収まる丁張板しか使用できない、という問題がある。また、鉄筋杭は中空円筒状の把持板で保持する構造であるが、中空円筒状の把持板は補助板を介して矩形の丁張板保持板に溶接で連結されている構造であることから、構造が複雑で重くコスト高になるという問題がある。また、現場での取扱い次第で溶接部から丁張板保持板が外れ壊れてしまう、という問題がある。
【0015】
上述したように、特許文献1から3に記載の技術では、建築工事等の施工の進捗に併せて生じる丁張板の高さや傾斜の微調整に簡便に対応できない、という問題がある他、次のような問題がある。
【0016】
丁張杭には、木杭(木製丸棒)、鉄筋棒、鉄製パイプ、鉄棒、硬質樹脂パイプ等多種類のものが用いられる。また、その直径は15~60mm程度の範囲で大幅に異なるものが用いられることが少なくない。
【0017】
一方、丁張用固定具は、一施工現場に多数個用いられ、かつ比較的高価なものであるから、一つの工事が終了した後は、使用した丁張用固定具を取り外して、他の工事現場で繰り返し使用することが求められる。かかる丁張用固定具の再使用で問題となるのは、丁張杭の直径の変化に対する対応性の問題である。
【0018】
従来技術においては、丁張杭に着脱可能に丁張用固定具を取り付ける方法として、丁張用固定具に設けた筒状部材(鞘管、以下スリーブという)に丁張杭を挿通し、スリーブ側面に設けた雌ネジのネジ孔に、ボルトや蝶ネジ等を螺合して押圧し固定する。スリーブの断面形状は、特許文献1~3の例にも見られるように、ほとんどの場合円形のものが用いられる。
【0019】
太い丁張杭を使用するためには、スリーブの直径をある程度大きくしなければならないが、大径スリーブを細い丁張杭に固定する場合には、次のような問題が考えられる。即ち、係止用ネジの押圧力が適正に作用するためには、スリーブの軸心と丁張杭の軸心が一致していなければならず、これがずれていると、係止用ネジの先端が杭の傾斜面に当たることになり、杭が横ずれを起こしたり、締め付け力が不十分になったりする。
【0020】
実際の現場作業でスリーブと杭の軸心が一致するように位置合わせすることは必ずしも容易ではなく、作業の手間を大きくすることになる(位置合わせの問題がある)。また、スリーブの径に対して杭が細い場合には、軸心が一致するように押圧されても、係止用ネジ(通常は太めのボルト状のネジが用いられる)の先端が平らなため、丁張用固定具に横方向の強い力(とくに衝撃力)が作用すると杭が横にずれて、係止用ネジの押圧力が働かなくなり、丁張用固定具がずり落ちてしまうという問題が起こる(横ずれの問題がある)。
【0021】
本発明者らの経験によれば、杭の直径がスリーブの直径の2/3程度以上であれば横ずれ等はあまり問題にならないが、杭の径がこれ以下の場合には、位置合わせや横ずれが大きな問題になることが知見された。このようにスリーブが円筒形の場合には、杭とスリーブの接触面が一点(一直線)のため、横滑りを起こし易いものと考えられる。
【0022】
従って、スリーブの断面形状を変え、スリーブと杭の接触状態が変わるようにすれば、丁張用固定具の杭直径の変化に対する対応性が大幅に向上する可能性が考えられる。
【0023】
そこで本発明の第1の課題は、丁張板の高さや傾斜の調整が簡便に行え、丁張板の再利用できる、即ち、丁張掛け作業の省力化、省資源化及び作業効率の向上に寄与し得る丁張用固定具を提供することにある。また、丁張杭に丁張板を固定する丁張用固定具において、丁張用固定具と丁張杭が接触する部位の構造を改良して、丁張杭の直径が大幅に変化しても対応可能な(位置合わせや横ずれ等の問題の生じない)丁張用固定具の構造を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、本出願人は以下のことを発想した。すなわち、杭を挿通するスリーブの断面が円形でなく、先端が先細り状の五角形であれば、杭の径がスリーブより大幅に小さくても、丁張杭係止用ネジで押圧した場合、杭は先細りの先端に嵌り込むため、横ぶれを生じることはない。また、杭は先端の両面で支持されるため、2点接触となり、横方向からの強い力が作用しても、横ずれを起こすことはない。
【0025】
杭を押圧し固定する丁張杭係止用ネジで押圧し固定されている杭に当接するように丁張板を配置し、かかる状態の丁張板を丁張板係止ネジで押圧し固定する構造とする。これにより、丁張用固定具による杭との固定と、丁張用固定具による丁張板との固定を独立して行うことができ、丁張板の微小な高さや傾斜の調整を簡便に行うことができる。
【0026】
上記の着想に基づく本発明の丁張用固定具は、丁張用杭に丁張板を着脱可能に固定するための先端がV字型の金属製の枠体の丁張用固定具であって、
前記枠体の枠体背面部に形成された丁張杭係止用ネジ穴と、前記丁張杭係止用ネジ穴に挿通され、前記枠体の先端側に挿通された前記丁張用杭を押圧固定する丁張杭係止用ネジと、
前記枠体背面部の上部に直立に延在するネジ止め用部材と、前記ネジ止め用部材に形成された丁張板係止用ネジ穴と、前記丁張板係止用ネジ穴に挿通され、前記丁張杭に当接する前記丁張板を押圧固定する丁張板係止用ネジとを備えたことを特徴とするものである。
【0027】
上記の丁張用固定具においては、前記枠体の水平断面は五角形であり、前記水平断面の中心線に対し軸対象の形状を有し、前記枠体背面部の縦中央線上に前記丁張板係止用ネジ穴と前記丁張杭係止用ネジ穴とが上下に形成されていることが望ましい。
【0028】
本発明の丁張用固定具は、丁張用杭に丁張板を着脱可能に固定するための金属製枠体の丁張用固定具であって、
前記枠体は、前記丁張杭の直径以上の間隔で対向して配置された一対の帯板からなる枠体側面部と、
前記枠体側面部の一端に連結し、先端がV字型形状を有する枠体先端部と、前記枠体側面部の他端にそれぞれ連結する帯板からなる枠体背面部と、前期枠体背面部に形成された丁張杭係止用ネジ穴と、前記丁張杭係止用ネジ穴に挿通され、前記枠体の先端側に挿通される前記丁張用杭を押圧固定する丁張杭係止用ネジと、前記枠体背面部の上部に延延する平板又はコ型形状のネジ止め用部材と、前記ネジ止め用部材に形成された丁張板係止用ネジ穴と、前記丁張板係止用ネジ穴に挿通され、前記丁張杭に当接する前記丁張板を押圧固定する丁張板係止用ネジとを備えたことを特徴とするものである。
【0029】
前記枠体の水平断面は先細りの五角形であり、前記水平断面の中心線に対し軸対象の形状を有し、前記枠体背面部の縦中央線上に前記丁張板係止用ネジ穴と前記丁張杭係止用ネジ穴とが上下に形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の丁張用固定具によれば、丁張板の高さや傾斜角度の調整が簡便に行え、丁張掛け作業の省力化、省資源化及び作業効率の向上に寄与し得る丁張用固定具を提供することができる。
【0031】
また本発明の丁張用固定具を用いれば、係止用ネジで押圧された丁張杭は、V字形状の枠体先端部の両側面に当接するため、横方から力が作用しても、横ずれを起こす懸念は全くない。また丁張杭が細い場合は、V字形状の枠体先端部の奥に杭が入り込み、杭が太い場合は浅い位置に留まって、如何なる場合にも、係止用ネジで押圧された杭は枠体先端部の両側面で固定されるため、丁張杭の直径が大幅に変化しても問題なく使用しうる。
【0032】
すなわち、丁張杭直径の大幅な変化への対応性が確保され、これにより、本発明の丁張用固定具は、一個の固定具で如何なる種類の丁張杭にも適用しうることになり、丁張用固定具の汎用性を大幅に拡大することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、実施例の図面を参照して、本発明の望ましい実施形態について説明する。図1は、本実施例の丁張用固定具の形状を示す図で、図1(a)は平面図、 図1(b)は側面図、図1(c) は背面図、図1(d)は斜視図である。
【0034】
この丁張用固定具は、図に見られるように、枠体1とネジ止め用部材2とからなっている。枠体1は、その内部に丁張杭10を挿通して、丁張杭係止用ネジ11により杭を保持する機能を有するものである。
【0035】
この枠体1は、丁張杭(図2図3参照)の直径以上の間隔で(予想される最大径のものを想定して)、対向して配置された一対の枠体側面部3a、3bと、これら枠体側面部の一方の端部に形成された、上方から見て、先細りのV字形状を有する枠体先端部4と、両枠体側面部の他方の端部を連結し枠(スリーブ)となるように封止する直立板状の枠体背面部5とを備えている。また、枠体背面部5の中央付近には丁張杭係止用ネジ孔6が形成されている。
【0036】
この枠体1は、その水平断面が先端先細りの五角形形状になるように形成され、この枠体先端部の内側に丁張杭10が嵌め込まれた状態で、丁張杭係止用ネジ孔6に螺合する丁張杭係止用ネジ11により押圧固定される。その際重要なことは、五角形の形状が、その底辺(この場合は枠体背面部5)の中心を通る法線(直立線)に対して軸対象に形成されていることである。これにより、丁張杭係止用ネジ11の中心軸と丁張杭10の中心軸が一致するように位置決めされる。
【0037】
本実施例においては、枠体側面部3、枠体先端部4、枠体背面部5のいずれも、幅約20mm、厚さ3mm程度の帯板を使い、これを縦にした状態で作成されている。
枠体1を構成する材料は、枠体背面部5以外は必ずしも帯板である必要はなく、例えば丸棒や角棒状のもので形成されていてもよい。また、本実施例では、一対の枠体側面部3aと3bは互いに平行になっているが、必ずしもその必要はなく、例えば僅かな傾斜で幅が先広がりになるような形状であってもよい。
【0038】
ネジ止め用部材2は、ネジ穴を有する板状の部材で、これに螺合する丁張板係止用ネジ13により丁張板12を押圧・固定する機能を有するものである。ネジ止め用部材2は、枠体1の枠体背面部5の延長上に直立する板状の部材で、その中央付近に丁張板係止用ネジ孔7が設けられている。
【0039】
本実施例では、ネジ止め用部材2は枠体平面部8とその両側端に形成された立ち上がり部9とから、その断面が溝型形状(コ型形状)になっている。この枠体平面部8の高さは、丁張板12を安定に支持するという観点から、好ましくは丁張板12の幅と同程度であればよい。その厚みは、係止用ネジに螺合する雌ネジを形成するに十分な厚みがあればよい。
【0040】
本実施例では、枠体1とネジ止め用部材2とは一体に形成されているが、必ずしもその必要はなく、別個に作成した枠体1とネジ止め用部材2とを、溶接、銀ロー付け、ネジ止め等手段で接合したものであっても良い。ただし、丁張杭係止用ネジ孔6と丁張板係止用ネジ孔7の軸心は同一垂直面内に配置されていることが好ましい。
【0041】
本実施例におけるネジ止め用部材2の立ち上がり部9(袖部9)は、枠体平面部8にネジ押えの反力が作用するから、これに対する補強を目的とするもので、必ずしもこれが無くてもよい。また、必要があれば別の形状の補強材で補強されていてもよい。
【0042】
図2は、本実施例の丁張用固定具を用いて、丁張杭10に丁張板12を取り付けた状態を示す図で、図2(a)は平面図、 図2(b)は側面図である。図2に見られるように、丁張杭10はその背後から丁張杭係止用ネジ11(本実施例では蝶ネジを使用している)で押圧されて、枠体1の枠体先端部4に押し付けられ、図2(a)に示すP1、P2の2点で枠体1に接触して固定される。
【0043】
このように、丁張杭10が2点接触で固定されるため、横ずれの懸念が全くないのは先に述べた通りである。また、丁張板12は枠体1の上に載置した状態で、背後から丁張板係止用ネジ13(本実施例では蝶ネジ)で押圧され、丁張杭10の表面に押し付けられて固定される。
【0044】
丁張板係止用ネジ13の軸心は、丁張杭10断面の中心軸と一致するように構成されているから、押圧力は丁張杭10断面の軸心に作用することになる。また、このネジの先端はその軸心に直角な平面状であることが望ましい。これにより、とくに角度調整しなくても、丁張板12を丁張杭10の軸心に直交した状態で固定することができる。
【0045】
さらに、ネジの先端が平面状であれば、丁張杭10に押圧された丁張板12が回動するのを防ぐ効果が得られる。門型丁張の場合は、丁張板は2本以上の杭で固定されるため、回動の問題は起こらない。しかしトンボ型丁張の場合は、1本の杭で固定されているため、丁張板12に杭の周りに回す力がかかると、丁張板がグラグラと動く懸念がある。
【0046】
ネジの先端が凸状であると、丁張板を1点支持で抑えるため、グラつきが出る可能性があるが、太めの係止用ネジを用い、その先端を平面状にしておけば、2点で支持するのと同様の効果が得られ、グラ付きを避けることができる。
【0047】
さらに、本実施例の構成には含まれていないが、係止用ネジの先端に、ネジと連動して回転することのないように、T型またはY型の押え部材を着脱可能に取り付けるという方法をとれば、より確実に丁張板のグラつきを防止することができる。
【0048】
図3は、本発明の丁張用固定具を直径の異なる丁張杭に用いた場合の、枠体内の固定状況を説明するための図で、図3(a)は細い丁張杭の場合、 図3(b)は太い丁張杭の場合である。いずれも、丁張杭係止用ネジ11の軸線の高さでの枠体の水平断面図である。
【0049】
図3に見られるように、丁張杭10は丁張杭係止用ネジ11の先端で押圧されて、枠体のV字状の枠体先端部4の両傾斜面内側に当接し、固定される。その際に、丁張杭係止用ネジ11の中心軸は、枠体背面部5の中心を通る法線(直立線)Xに一致するように丁張杭係止用ネジ孔が設けられている。また、枠体先端部4の両傾斜面は法線Xに対し軸対象に形成されている。
【0050】
そのため、丁張杭10の太さ如何にかかわらず、杭断面の中心線が法線Xと一致するように位置決めされる。すなわち、丁張杭10を枠体1に挿通して、丁張杭係止用ネジ11で押圧すれば、とくに位置合わせの操作をしなくても、係止用ネジの中心が、丁張杭10の断面の中心線上に当接することになる。
【0051】
この原理は、丁張杭の太さ如何にかかわらず、まったく同様に適合されるため、丁張用固定具を丁張杭に固定する作業が容易になる。このように、格別の位置合わせの操作をしなくても、自動的に杭の中心を押えるようになることが、本発明の丁張用固定具の重要な特性の一つである。
【0052】
図4は一実施例として土木工事の現場における、本発明の丁張用固定具を用いた丁張り掛けの施工状態図である。丁張杭10は鉄筋棒であり、2本の丁張杭10に丁張板12を門型に掛けている。図4においては、丁張杭10に2段に丁張板12を丁張固定具で固定し、上段の丁張板12の地表との傾斜を水準器により測定している。丁張板12の傾斜角度が微妙に違う場合には、丁張板係止用ネジ13を緩めることで、丁張杭10と丁張固定具との固定を維持しつつ、丁張板12の調整を簡便に行うことできる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の一実施例の丁張用固定具の形状を示す図である。
図2】本発明の一実施例の丁張用固定具を用いて、丁張杭に丁張板を取り付けた状態を示す図である。
図3】本発明の一実施例である丁張用固定具を直径の異なる丁張杭に用いた場合の、枠体内の固定状況の説明図である。
図4】本発明の一実施例として土木工事の現場における丁張りを掛けの施工状態図である。
【符号の説明】
【0054】
1:枠体、2:ネジ止め用部材、3a,3b:枠体側面部、4:枠体先端部、
5:枠体背面部、6丁張杭係止用ネジ孔、7:丁張板係止用ネジ孔、
8:枠体平面部、9:立ち上がり部、10:丁張杭、11:丁張杭係止用ネジ、
12:丁張板、13:丁張板係止用ネジ
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
丁張杭に丁張板を着脱可能に固定するための先端がV字型の金属製の枠体の丁張用固定具であって、
前記枠体の枠体背面部に形成された丁張杭係止用ネジ穴と、前記丁張杭係止用ネジ穴に挿通され、前記枠体の先端側に挿通された前記丁張杭を押圧固定する丁張杭係止用ネジと、
前記枠体背面部の上部に直立に延在するネジ止め用部材と、前記ネジ止め用部材に形成された丁張板係止用ネジ穴と、前記丁張板係止用ネジ穴に挿通され、前記丁張杭に当接する前記丁張板を押圧固定する丁張板係止用ネジとを備えたことを特徴とする丁張用固定具。
【請求項2】
前記枠体の水平断面は先細りの五角形であり、前記水平断面の中心線に対し軸対象の形状を有し、前記枠体背面部の縦中央線上に前記丁張板係止用ネジ穴と前記丁張杭係止用ネジ穴とが上下に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の丁張用固定具。
【請求項3】
丁張杭に丁張板を着脱可能に固定するための金属製の枠体の丁張用固定具であって、
前記枠体は、前記丁張杭の直径以上の間隔で対向して配置された一対の帯板からなる枠体側面部と、
前記枠体側面部の一端にそれぞれ連結し、先端がV字型形状を有する枠体先端部と、
前記枠体側面部の他端にそれぞれ連結する帯板の枠体背面部と、
前記枠体背面部に形成された丁張杭係止用ネジ穴と、前記丁張杭係止用ネジ穴に挿通され、前記枠体の先端側に挿通される前記丁張杭を押圧固定する丁張杭係止用ネジと
前記枠体背面部の上部に延延する平板又はコ型形状のネジ止め用部材と、
前記ネジ止め用部材に形成された丁張板係止用ネジ穴と、前記丁張板係止用ネジ穴に挿通され、前記丁張杭に当接する前記丁張板を押圧固定する丁張板係止用ネジと
を備えたことを特徴とする丁張用固定具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
上記の着想に基づく本発明の丁張用固定具は、丁張杭に丁張板を着脱可能に固定するための先端がV字型の金属製の枠体の丁張用固定具であって、
前記枠体の枠体背面部に形成された丁張杭係止用ネジ穴と、前記丁張杭係止用ネジ穴に挿通され、前記枠体の先端側に挿通された前記丁張杭を押圧固定する丁張杭係止用ネジと、
前記枠体背面部の上部に直立に延在するネジ止め用部材と、前記ネジ止め用部材に形成された丁張板係止用ネジ穴と、前記丁張板係止用ネジ穴に挿通され、前記丁張杭に当接する前記丁張板を押圧固定する丁張板係止用ネジとを備えたことを特徴とするものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
本発明の丁張用固定具は、丁張杭に丁張板を着脱可能に固定するための金属製の枠体の丁張用固定具であって、
前記枠体は、前記丁張杭の直径以上の間隔で対向して配置された一対の帯板からなる枠体側面部と、
前記枠体側面部の一端に連結し、先端がV字型形状を有する枠体先端部と、前記枠体側面部の他端にそれぞれ連結する帯板からなる枠体背面部と、前期枠体背面部に形成された丁張杭係止用ネジ穴と、前記丁張杭係止用ネジ穴に挿通され、前記枠体の先端側に挿通される前記丁張杭を押圧固定する丁張杭係止用ネジと、前記枠体背面部の上部に延延する平板又はコ型形状のネジ止め用部材と、前記ネジ止め用部材に形成された丁張板係止用ネジ穴と、前記丁張板係止用ネジ穴に挿通され、前記丁張杭に当接する前記丁張板を押圧固定する丁張板係止用ネジとを備えたことを特徴とするものである。