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  • 特開-車両のファンシュラウド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087204
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】車両のファンシュラウド
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20240624BHJP
   F01P 11/10 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B60K11/04 K
F01P11/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201867
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】西野 陽一
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AA08
3D038AB02
3D038AC02
3D038AC12
3D038AC15
(57)【要約】
【課題】非金属系材料で分割型シュラウドを作り、分割部分をボルト連結してもボルトの軸力を出すことができ、緩みにくい、車両のファンシュラウドを提供する。
【解決手段】車両のファンシュラウド50は、非金属系部材で成形された第1シュラウド部51及び第2シュラウド部52と、第1シュラウド部51及び第2シュラウド部52の重複部Dに穿設された開口部53と、第1シュラウド部51側の開口部53に挿入される中空の突起54bを有する金属製の第1プレート54と、第2シュラウド部55側の開口部53に挿入される中空の突起55bを有する金属製の第2プレート55と、第1プレート54側から突起54bの中空部へ挿入されるボルト56と、第2プレート55側に配設されるナット57と、第1プレート54及び第2プレート55間に充填された接着剤58とを備え、突起54bと突起55bとを当接させる。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンを冷却する冷却機器と、前記冷却機器へ空気を供給するファンとを備えるエンジンルーム内で、前記エンジンと前記ファンとの間を仕切る、車両のファンシュラウドであって、
非金属系部材で成形された、少なくとも第1シュラウド部及び第2シュラウド部と、
前記第1シュラウド部及び前記第2シュラウド部の重複部に穿設された開口部と、
前記第1シュラウド部側の前記開口部に挿入される、中空の突起を有する金属製の第1プレートと、
前記第2シュラウド部側の前記開口部に挿入される、中空の突起を有する金属製の第2プレートと、
前記第1プレート側または前記第2プレート側の一方側から前記突起の中空部へ挿入されるボルトと、
前記第1プレート側または前記第2プレート側の他方側に配設されるナットと、
前記第1シュラウド部と前記第1プレートとの間及び前記第2シュラウド部と前記第2プレートとの間に充填された接着剤とを備え、
前記第1プレートの突起と前記第2プレートの突起とを当接させ、前記ボルト及び前記ナットの螺合により、前記第1シュラウド部及び前記第2シュラウド部を連結させることを特徴とする車両のファンシュラウド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のファンシュラウドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンを冷却し高温となった冷媒は、ラジエータ内へ戻され、ファンから供給される空気によりラジエータ内で冷却される。このとき、ラジエータ周りから生じる高温の空気の多くは車外へ排出されるが、その一部はエンジンルーム内へ流入してくるおそれがあるため、エンジンとファンとの間を仕切るファンシュラウドが必要になる。
【0003】
ところで、リヤにエンジンを搭載したバスでは、エンジンルーム内に重量物が多く配置され、後輪の軸に大きな荷重がかかるため、極力軽量化を図る必要がある。ファンシュラウドのシュラウド部は大型の板金製で大変重くなるため、やはり軽量化する必要がある。
【0004】
このファンシュラウドのシュラウド部は大きく、一枚もので、周辺部品との隙間が小さいため、車両整備のとき、脱着作業に多大な時間と労力が必要となる。さらにはシュラウド部近辺にある小さい部品の交換だけでもシュラウド部全体を取り外さなければならない。これらを鑑み、整備性を向上させるため分割構造とした樹脂製シュラウド部として特許文献1のようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-218510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、樹脂等の非金属系材料で分割型シュラウドを作り、分割部分をボルト連結しようとすると、ボルトの軸力が出にくく、緩みやすいという不具合がある。
【0007】
そこで、本発明は、非金属系材料で分割型シュラウドを作り、分割部分をボルト連結してもボルトの軸力を出すことができ、緩みにくい、車両のファンシュラウドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0009】
本適用例に係る車両のファンシュラウドは、エンジンと、前記エンジンを冷却する冷却機器と、前記冷却機器へ空気を供給するファンとを備えるエンジンルーム内で、前記エンジンと前記ファンとの間を仕切る、車両のファンシュラウドであって、非金属系部材で成形された、少なくとも第1シュラウド部及び第2シュラウド部と、前記第1シュラウド部及び前記第2シュラウド部の重複部に穿設された開口部と、前記第1シュラウド部側の前記開口部に挿入される、中空の突起を有する金属製の第1プレートと、前記第2シュラウド部側の前記開口部に挿入される、中空の突起を有する金属製の第2プレートと、前記第1プレート側または前記第2プレート側の一方側から前記突起の中空部へ挿入されるボルトと、前記第1プレート側または前記第2プレート側の他方側に配設されるナットと、前記第1シュラウド部と前記第1プレートとの間及び前記第2シュラウド部と前記第2プレートとの間に充填された接着剤とを備え、前記第1プレートの突起と前記第2プレートの突起とを当接させ、前記ボルト及び前記ナットの螺合により、前記第1シュラウド部及び前記第2シュラウド部を連結させることを特徴とする。
【0010】
本適用例によれば、金属製の第1プレートの突起と金属製の第2プレートの突起とを当接させているため、第1プレート側または第2プレート側の一方側から挿入されるボルトの軸力を確保することができる。このため、第1シュラウド部及び第2シュラウド部を低剛性の非金属系材料で成形しても、ボルト及びナットの螺合によって第1シュラウド部及び第2シュラウド部を緩ませず強固に連結させることができる。
【0011】
また、本適用例によれば、第1プレート及び第2プレート間に充填された接着剤を備えることにより、第1プレートと第2プレートとを容易に固定することができる。具体的には、第1シュラウド部及び第2シュラウド部の厚みが最適寸法からずれている場合であっても、ボルトの挿入方向における第1プレートと第2プレートとの間の接着剤の充填量を調整すれば、第1プレートを接着剤を介して第1シュラウド部に固定することができ、かつ、第2プレートを接着剤を介して第2シュラウド部に固定することができ、さらにはボルトの挿入方向において第1プレートの突起と第2プレートの突起とを当接させることができる。よって、ファンシュラウドを容易に生産することができる。
【0012】
このように、本発明に係る車両のファンシュラウドによれば、非金属系材料で分割型シュラウドを作り、分割部分をボルト連結してもボルトの軸力を出すことができ、緩みにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る車両のファンシュラウドの一実施形態を適用したエンジンルーム構造の概略図である。
図2】本発明に係る車両のファンシュラウドの一実施形態の正面図である。
図3】本発明に係る車両のファンシュラウドの一実施形態の側面図である。
図4図3に示す側面図の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図1図4を適宜参照しつつ、本発明に係る車両のファンシュラウドの一実施形態における構成及び効果について説明する。
【0015】
(ファンシュラウドの構成)
図1に示すように、車両のエンジンルーム構造1は、エンジン10と、燃料フィルタ20と、ラジエータ30と、ファン40と、車両のファンシュラウド50とを備えている。ここでの車両としては、例えば、大型バス(具体的にはリヤエンジンバス)、大型トラック及び一般乗用車等が挙げられる。本実施形態のエンジンルーム構造1は、リヤエンジンバスの右後部の構造であり、図1は車両後方からエンジンルームを視た図である。なお、車両の車内側と車外側とはサイドアウタパネル2によって仕切られている。
【0016】
エンジン10は、車両の動力発生源となる内燃機関である。エンジン10としては、例えば、ディーゼルエンジン又はガソリンエンジン等が挙げられる。
【0017】
燃料フィルタ20は、エンジンに供給される燃料(例えば軽油又はガソリン等)から不純物を除去するための単数又は複数のフィルタである。
【0018】
ラジエータ30は、エンジン10を冷却するための冷却回路内に設けられた冷却機器(熱交換器)である。この冷却回路は、低温の冷媒C1(例えば水)をエンジン10に供給し、エンジン10と熱交換して高温となった冷媒C2をラジエータ30に供給して冷却することにより低温の冷媒C1に戻す。ラジエータ30は、低温の冷媒C1を再度エンジン10に供給するための冷却機器である。
【0019】
ファン40は、エンジン10からラジエータ30に戻された高温の冷媒C2を冷却するため、サイドアウタパネル2に形成された開口から空気Aを引き込んでラジエータ30に供給するものである。ラジエータ30を通過した高温の空気Aの大部分は車外に放出される。ファン40としては、例えば、電動式のもの、または、エンジン10に連結されたクランク軸(図示せず)により回転する機械式のものを使用することもできる。なお、本実施形態のファン40はラジエータ30より車内側に位置しており、車外側にから車内側に空気Aを引き込むことでラジエータ30に空気Aを供給するが、ファン40の配置はこれに限られない。例えば、ファン40をラジエータ30より車外側に配置して、車外側から車内側に空気を送り出すことでラジエータ30に空気を供給してもよい。
【0020】
ファンシュラウド50は、ファン出口側を流れる高温の空気Aがエンジンルームに流入することを抑制するために、エンジン10とファン40との間を仕切る仕切部材である。図2から図4に示すように、ファンシュラウド50は、第1シュラウド部51と、第2シュラウド部52と、開口部53と、第1プレート54と、第2プレート55と、ボルト56と、ナット57と、接着剤58とを備えている。
【0021】
図2に示すように、第1シュラウド部51は、比較的大きな面積を有する第2シュラウド部52の一部分をなすように配置されている。第1シュラウド部51の位置は燃料フィルタ20の位置に対応しており、第1シュラウド部51を第2シュラウド部52から取り外すことで、燃料フィルタ20にアクセス可能となる。
【0022】
第1シュラウド部51及び第2シュラウド部52は、ファン出口側を流れる高温の空気Aがエンジンルームに流入することを抑制するための板状部材である。第1シュラウド部51及び第2シュラウド部52の形状としては、特に限定されず、例えば長方形状、楕円形状等を挙げることができ、また、例えば平板の形状、段差もしくは傾斜を有する形状等を挙げることができる。第1シュラウド部51及び第2シュラウド部52の材質は、非金属系材料であり、例えばプラスチック(好ましくは繊維強化プラスチック:FRP)もしくは樹脂等を挙げることができる。
【0023】
開口部53は、第1シュラウド部51及び第2シュラウド部52の重複部Dに穿設されており、ボルト56の挿入方向において第1シュラウド部51及び第2シュラウド部52を貫通している貫通孔である。
【0024】
第1プレート54は、リング状の基部54aと、ボルト56の挿入方向に向かって基部54aから突出する円筒状の突起54bとを備えている金属製部材である。突起54bは円筒状であることから、ボルト56の挿入方向において延在している円柱状の中空部を有している。突起54bは、開口部53に挿入されている。
【0025】
第2プレート55は、リング状の基部55aと、ボルト56の挿入方向の反対方向に向かって基部55aから突出する円筒状の突起55bとを備えている金属製部材である。突起55bは、円筒状であることから、ボルト56の挿入方向において延在している円柱状の中空部を有している。突起55bは、開口部53に挿入されている。ボルト56の挿入方向において、第2プレート55の突起55bにおける端部は、第1プレート54の突起54bにおける端部と当接している。
【0026】
ボルト56は、第1プレート54側から突起54bの中空部へ挿入される。ナット57は、第2プレート55側に配設されてボルト56を受けるためのものである。ボルト56とナット57とが螺合することにより、第1シュラウド部51及び第2シュラウド部52が連結されている。なお、ボルト56の挿入方向は、第1プレート54の突起54bの突出方向、第2プレート55の突起55bの突出方向と同一直線(同軸)上にある。
【0027】
接着剤58は、ボルト56の挿入方向における第1プレート54及び第2プレート55間に充填されている。具体的には、接着剤58は、ボルト56の挿入方向における第1シュラウド部51と第1プレート54の基部54aとの間と、ボルト56の挿入方向における第2シュラウド部52と第2プレート55の基部55aとの間とに充填されている。なお、接着剤58は、ボルト56の径方向における第1シュラウド部51と第1プレート54の突起54bとの間と、ボルト56の径方向における第2シュラウド部52と第2プレート55の突起55bとの間とに充填されていてもよい。接着剤58としては、例えば、時間の経過と共に硬化する性質を有する樹脂系接着剤(具体的にはメタクリル樹脂系接着剤)を使用することができる。
【0028】
(ファンシュラウドの効果)
ファンシュラウド50によれば、金属製の第1プレート54の突起54bと金属製の第2プレート55の突起55bとを当接させているため、第1プレート54側から挿入されるボルト56の軸力を確保することができる。このため、第1シュラウド部51及び第2シュラウド部52を低剛性の非金属系材料で成形しても、ボルト56及びナット57の螺合によって第1シュラウド部51及び第2シュラウド部52を緩ませず強固に連結させることができる。
【0029】
また、第1プレート54及び第2プレート55間に充填された接着剤58を備えることにより、第1プレート54と第2プレート55とを容易に固定することができる。具体的には、第1シュラウド部51及び第2シュラウド部52の厚み(ボルト56の挿入方向における厚み)が最適寸法からずれている場合であっても、ボルト56の挿入方向における第1プレート54と第2プレート55との間の接着剤58の充填量を調整すれば、第1プレート54を接着剤58を介して第1シュラウド部51に固定することができ、かつ、第2プレート55を接着剤58を介して第2シュラウド部52に固定することができ、さらにはボルト56の挿入方向において第1プレート54の突起54bと第2プレート55の突起55bとを当接させることができる。なお、最適寸法からのずれについては、第1シュラウド部51及び第2シュラウド部52の厚みが3.5mmである場合であれば、-1.0mm~+1.0mmの誤差であれば許容範囲とすることができる。よって、例えばL-RTM成型法等によって、ファンシュラウド50を容易に生産することができる。
【0030】
このように、ファンシュラウド50によれば、非金属系材料で分割型シュラウドである第1シュラウド部51及び第2シュラウド部52を作り、分割部分をボルト56で連結してもボルト56の軸力を出すことができ、緩みにくくすることができる。
【0031】
さらに、ファンシュラウド50を備えるエンジンルーム構造1によれば、車両のメンテナンスにおいて、ファンシュラウド50の第1シュラウド部51をファンシュラウド50から取り外し、燃料フィルタ20のフィルタを容易に交換することができる。
【0032】
(その他)
上記一実施形態においては、ボルト56が第1プレート54側から突起54bの中空部へ挿入され、ナット57が第2プレート55側に配設されているが、ボルト56が第2プレート55側から突起55bの中空部へ挿入され、ナット57が第1プレート54側に配設されていてもよい。
【0033】
上記一実施形態において、接着剤58は、ボルト56の挿入方向における第1シュラウド部51と第1プレート54の基部54aとの間と、ボルト56の挿入方向における第2シュラウド部52と第2プレート55の基部55aとの間とのいずれかに充填されていればよい。
【0034】
上記一実施形態において、第1プレート54及び第2プレート55については、ボルト56を貫通可能な中空の突起さえ有していれば種々の形状に変更することができる。例えば、基部54a及び基部55aについては、リング状以外にも、貫通孔(中空部)を有する正方形板状に変更することができるし、突起54b及び突起55bについては、円筒状以外にも、貫通孔(中空部)を有する四角柱状に変更することができる。
【0035】
上記一実施形態においては、シュラウド部として第1シュラウド部51及び第2シュラウド部52の2部材を備えているが、シュラウド部として3部材以上を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 車両のエンジンルーム構造
2 サイドアウタパネル
10 エンジン
20 燃料フィルタ
30 ラジエータ
40 ファン
50 車両のファンシュラウド
51 第1シュラウド部
52 第2シュラウド部
53 開口部
54 第1プレート
54a 基部
54b 突起
55 第2プレート
55a 基部
55b 突起
56 ボルト
57 ナット
58 接着剤
A 圧縮空気
C1 低温の冷媒
C2 高温の冷媒
D 重複部
図1
図2
図3
図4