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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087209
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】溶湯用送線装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 1/00 20060101AFI20240624BHJP
   B22D 41/00 20060101ALI20240624BHJP
   C21C 7/04 20060101ALI20240624BHJP
   C21C 1/10 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B22D1/00 E
B22D41/00 D
C21C7/04 J
C21C1/10 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201872
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000222875
【氏名又は名称】東洋電化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 洋平
(72)【発明者】
【氏名】牛窓 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】又川 隆義
【テーマコード(参考)】
4K013
4K014
【Fターム(参考)】
4K013EA25
4K013EA28
4K014BD08
4K014BE05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金属被覆の線状部材を溶湯に送線する装置において、溶湯の温度が変わることがあっても適切な送線速度にて線状部材を溶湯に送線することができることを課題とする。
【解決手段】溶湯Mの表面の温度を測定する放射温度計1と、放射温度計1が、取鍋本体10に対して相対的に移動しながら、溶湯Mの表面の一端部側から他端部側を、連続的又は断続的に測定する制御を行う第一制御部2と、放射温度1が測定した温度情報に基づいて溶湯温度を推算し、その溶湯温度を変数として線状部材Wの送線速度を算出する演算部3と、線状部材Wを送線する一対のローラー4と、前記回転速度にて、ローラー4を回動する制御を行う第二制御部5を備える溶湯用送線装置等により解決することができた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取鍋本体に収容された溶湯を改質する成分を金属により被覆された線状部材を、前記溶湯に送線する装置であって、
前記溶湯の表面の温度を測定する放射温度計と、
前記放射温度計が、前記取鍋本体に対して相対的に移動しながら、前記溶湯の表面の一端部側から他端部側を、連続的又は断続的に測定する制御を行う第一制御部と、
前記放射温度が測定した温度情報に基づいて溶湯温度を推算し、前記溶湯温度を変数として前記線状部材の送線速度を算出する演算部と、
前記線状部材を挟持しながら互いに反対方向に回動することにより前記線状部材を送線する少なくとも一対のローラーと、
前記演算部により算出された前記送線速度に基づいた回転速度にて、前記ローラーを回動する制御を行う第二制御部と、
を備えることを特徴とする溶湯用送線装置。
【請求項2】
前記演算部が、前記温度情報に基づいて、1300~1600℃の温度領域において、最高温度、最高温度と最低温度の相加平均、断続的に測定した隣接する複数の温度の相加平均、最高温度と最低温度の相乗平均、又は断続的に測定した隣接する複数の温度の相乗平均から選ばれるいずれか一つを前記溶湯温度として推算することを特徴とする請求項1に記載の溶湯用送線装置。
【請求項3】
前記演算部が、前記溶湯温度を変数として前記溶湯の底側にて前記線状部材の前記金属が溶融する速さを設定する関係式にて、前記送線速度を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶湯用送線装置。
【請求項4】
前記放射温度計が、前記取鍋本体の開口を覆う蓋体の端部から張り出して設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の溶湯用送線装置。
【請求項5】
前記放射温度計が、前記取鍋本体の開口を覆う蓋体の端部から張り出して設けられていることを特徴とする請求項3記載の溶湯用送線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を溶融して得られる溶湯に、金属マグネシウムなどの溶湯を改質する成分などからなる線状部材を送線する溶湯用送線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マグネシウムなどを鉄にて被覆したコアードワイヤーを、取鍋に収容された溶湯に送線するワイヤーフィーダー法と呼ばれる送線手法に関する送線装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1において、鉄被覆Mgワイヤーを、ピンチロールにて挟持して搬送し、取鍋の上方から取鍋に入っている溶融鋳鉄中の所定の深さ以上に、溶融鋳鉄の深さ及び鉄被覆Mgワイヤーの鉄の厚みに応じて供給速度を調整して供給する送線装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-316331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の送線装置において、取鍋に収容されている溶融鋳鉄の温度が常に一定ではなく作業する環境などにおいて変わるため、鉄被覆Mgワイヤーの鉄の溶融の速さも変わることから、溶融鋳鉄の深さ及び鉄被覆Mgワイヤーの鉄の厚みから鉄被覆Mgワイヤーの送線速度を調整するだけでは、適切な送線速度とすることが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、取鍋本体に収容された溶湯を改質する成分を金属により被覆された線状部材を、溶湯に送線する装置において、作業する環境において溶湯の温度が変わることがあっても適切な送線速度にて線状部材を溶湯に送線することができることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕すなわち、本発明は、取鍋本体(10)に収容された溶湯(M)を改質する成分を金属により被覆された線状部材(W)を、前記溶湯(M)に送線する装置であって、前記溶湯(M)の表面の温度を測定する放射温度計(1)と、前記放射温度計(1)が、前記取鍋本体(10)に対して相対的に移動しながら、前記溶湯(M)の表面の一端部側から他端部側を、連続的又は断続的に測定する制御を行う第一制御部(2)と、前記放射温度(1)が測定した温度情報に基づいて前記溶湯温度を推算し、前記溶湯温度を変数として前記線状部材(W)の送線速度を算出する演算部(3)と、前記線状部材(W)を挟持しながら互いに反対方向に回動することにより前記線状部材(W)を送線する少なくとも一対のローラー(4)と、前記演算部(3)により算出された前記送線速度に基づいた回転速度にて、前記ローラー(4)を回動する制御を行う第二制御部(5)と、を備えることを特徴とする溶湯用送線装置である。
【0008】
〔2〕そして、前記演算部(3)が、前記温度情報に基づいて、1300~1600℃の温度領域において、最高温度、最高温度と最低温度の相加平均、断続的に測定した隣接する複数の温度の相加平均、最高温度と最低温度の相乗平均、又は断続的に測定した隣接する複数の温度の相乗平均、から選ばれるいずれか一つを前記溶湯温度として推算することを特徴とする前記〔1〕に記載の溶湯用送線装置である。
【0009】
〔3〕そして、前記演算部(3)が、前記溶湯温度を変数として前記溶湯の底側にて前記線状部材の前記金属が溶融する速さを設定する関係式にて、前記送線速度を算出することを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の溶湯用送線装置である。
【0010】
〔4〕そして、前記放射温度計(1)が、前記取鍋本体(10)の開口を覆う蓋体(20)の端部から張り出して設けられていることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕記載の溶湯用送線装置である。
【0011】
〔5〕そして、前記放射温度計(1)が、前記取鍋本体(10)の開口を覆う蓋体(20)の端部から張り出して設けられていることを特徴とする前記〔3〕記載の溶湯用送線装置である。
【発明の効果】
【0012】
本件発明によれば、取鍋本体に収容された溶湯を改質する成分を金属により被覆された線状部材を、溶湯に送線する装置において、作業する環境において溶湯の温度が変わることがあっても適切な送線速度にて線状部材を溶湯に送線することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態における溶湯用送線装置の概略図である。
図2】(a)本発明の第一実施形態における溶湯用送線装置において、溶湯の表面の温度を測定している一の途中状態を示す概略側面図である。(b)同概略平面図である。
図3】(a)本発明の第一実施形態における溶湯用送線装置において、溶湯の表面の温度を測定している他の途中状態を示す概略側面図である。(b)同概略平面図である。
図4】(a)本発明の第一実施形態における溶湯用送線装置において、放射温度計が測定した温度情報を示すグラフである。(b)(a)にて示された一の温度領域に対応する箇所に該当する部分を示す概略平面図である。
図5】(a)本発明の第一実施形態における溶湯用送線装置において、放射温度計が測定した温度情報を示すグラフである。(b)(a)にて示された他の温度領域に対応する箇所に該当する部分を示す概略平面図である。
図6】(a)本発明の第二実施形態における溶湯用送線装置において、溶湯の表面の温度を測定している一の途中状態を示す概略側面図である。(b)同概略平面図である。
図7】(a)本発明の第二実施形態における溶湯用送線装置において、溶湯の表面の温度を測定している他の途中状態を示す概略側面図である。(b)同概略平面図である。
図8】(a)本発明の第三実施形態における溶湯用送線装置において、溶湯の表面の温度を測定している一の途中状態を示す概略側面図である。(b)同概略平面図である。
図9】(a)本発明の第三実施形態における溶湯用送線装置において、溶湯の表面の温度を測定している他の途中状態を示す概略側面図である。(b)同概略平面図である。
図10】(a)本発明の第四実施形態における溶湯用送線装置において、溶湯の表面の温度を測定している一の途中状態を示す概略側面図である。(b)同概略平面図である。
図11】(a)本発明の第四実施形態における溶湯用送線装置において、溶湯の表面の温度を測定している他の途中状態を示す概略側面図である。(b)同概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る溶湯用送線装置に関する実施の形態について、添付の図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この形態に限定されるものではない。また、説明中の上下方向とは、図1図2(a)、図3(a)、図6(a)、図7(a)、図8(a)、図9(a)、図10(a)、図11(a)における取鍋本体10の開口と底を結ぶ方向である。なお、数値範囲を示す「~」の表現は、上限と下限を含むものである。
【0015】
〔第一実施形態〕
図1から図3に示すように、本発明の溶湯用送線装置の一つの実施形態は、所定の線状部材Wを、取鍋本体10に収容された溶湯Mに送線する装置であり、放射温度計1、第一制御部2、演算部3、ローラー4、第二制御部5などを備えている。
【0016】
線状部材Wは、溶湯Mを改質する成分を金属により被覆された線状の部材である。溶湯Mを改質する成分として、鋳鉄用に、脱硫又は球状化のために、マグネシウム、シリコン、鉄などを含有することができ、また、鉄鋼用に、脱酸のためにカルシウム及びシリコンを含有し、脱硫のためにカルシウム及びアルミニウムを含有することもできる。そして、溶鋼成分を安定させるために、硫黄を含有する材料、溶鉱成分の微調整を行うために、炭素を含有することもできる。そして、線状部材Wは、これらの成分を溶湯Mの内部に添加するために、例えば、0.3~2mmなどの薄い鋼板や鉄などの金属で外周が被覆されている。線状部材Wは、目的に応じて、溶湯Mを改質する成分を1種又は2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0017】
放射温度計1は、溶湯Mの表面の温度を測定する測定装置である。放射温度計1により、溶湯Mの表面に対して、溶湯Mそのものの温度や、浮遊しているノロ、酸化膜などの不純物であるスラグsの温度も測定することができる。なお、放射温度計1は、溶湯Mの表面から放射されている赤外線を光学的に読み取り、溶湯Mとは接触せずに溶湯Mの表面の温度を測定することができる。本実施形態において、図1図2(a)、図3(a)に示すように、放射温度計1は、温度センサーを包含する本体部分が蓋体20の上面に設置されており、略直角に屈折して下方に延びる導光部を備えており、溶湯Mの表面から放射されている赤外線を導光部内の反射鏡にて約90度の角度で反射して本体部分の温度センサーにて測定している。放射温度計1が蓋体20の上面に設置されているために、取鍋本体10の開口を覆うために蓋体20を移動する作業とともに溶湯Mの表面の温度も測定することができるので、作業効率がよい。また、本実施形態において、放射温度計1は、略直角に屈折した導光部を具備して蓋体20の上面に取り付けられて蓋体20の端部から張り出して設けられているが、他の実施形態において、光ファイバーなど湾曲して柔軟に屈曲可能な導光部を具備して蓋体20の上面に取り付けられて蓋体20の端部から張り出して設けられていてもよく、又はそのような導光部を具備せずに蓋体20の側部に下方向きに取り付けられて蓋体20の端部から張り出して設けられていてもよい。なお、放射温度計1は、少なくとも1000~1700℃の温度域を測定することができるものであれば、市販品の放射温度計を用いることができる。
【0018】
図2(a)(b)、図3(a)(b)に示すように、放射温度計1は、蓋体20の直線状の移動に伴って、溶湯Mの表面の一端側から他端側を、溶湯Mの表面のうち特定の領域の温度を連続的に測定し、その温度情報を第一制御部2に送信する。本実施形態において、放射温度計1の移動は直線状であるが、他の実施形態において、ジグザグなどの折れ線状やサインカーブなどの曲線状であってもよい。
【0019】
第一制御部2は、放射温度計1が、取鍋本体10に対して相対的に移動しながら、溶湯Mの表面の一端部側から他端部側を、連続的又は断続的に測定する制御を行う部材である。第一制御部2により、放射温度計1を用いて、漠然と溶湯Mの表面全体を測定するのではなく、溶湯Mの表面を部分的に連続的に又は断続的に測定することで、溶湯Mそのものと溶湯Mに浮遊するスラグsを区別可能に測定することができる。本実施形態において、第一制御部2により、放射温度計1が移動して、静置している取鍋本体10に対して溶湯Mの表面の温度を測定しているが、他の実施形態において、取鍋本体10が移動して、静置している放射温度計1にて溶湯Mの表面の温度を測定してもよい。また、本実施形態において、第一制御部2は、放射温度計1が蓋体20に設けられているために、蓋体20の移動と連動して溶湯Mの表面を連続的に測定する制御を行うことが好ましい。放射温度計1が取鍋本体10の上方を移動している間に、連続して測定していてもよいし、例えば0.1間隔など断続的に測定していてもよい。さらに、本実施形態において、第一制御部2は、放射温度計1と有線にて接続されているが、他の実施形態において、無線LANなどを介して無線にて接続されていてもよい。なお、第一制御部2は、後述する演算部3及び第二制御部5とともに、コンピューターCとして一つにまとめられていることが好ましい。
【0020】
演算部3は、放射温度1が測定した温度情報に基づいて溶湯温度を推算し、その溶湯温度を変数として線状部材Wの送線速度を算出する部材である。一般的に、溶湯Mの温度が比較的高いと、線状部材Wの被覆金属が溶湯Mの内部で早く溶融することから線状部材Wが取鍋本体10の底で衝突しにくいため、所定の長さの線状部材Wの送線速度を速くして効率的に線状部材Wを溶湯Mに送線することができ、溶湯Mの温度が比較的低いと、線状部材Wの被覆金属が溶湯Mの内部で溶融しにくいことから線状部材Wが取鍋本体10の底で衝突するおそれがあることため、所定の長さの線状部材Wの送線速度を遅くして線状部材Wを溶湯Mに送線する必要があり、溶湯Mの温度は線状部材Wの送線速度と関係性がある。このため、演算部3により、溶湯Mの適切な温度を推算して、その溶湯温度に基づいて線状部材Wの適切な送線速度を算出することができる。
【0021】
具体的には、まず、放射温度1にて測定された溶湯Mの表面の温度情報は、第一制御部2などを介して演算部3に送られるところ、測定時間とそのときの温度の関係を表す図4(a)(b)や図5(a)(b)に示されているように、溶湯Mそのものを測定した温度と浮遊するスラグsを測定した温度において、概してスラグsの温度が低くなるように差異がみられる。なお、図4(a)に示す両矢印の時間帯は、図4(b)における両矢印で示す溶湯Mそのものを測定していた時間であり、図5(a)に示す両矢印の時間帯は、図5(b)における両矢印で示すスラグsを測定していた時間であることを示している。このため、演算部3によりスラグsなど溶湯Mそのもの以外の温度を除き溶湯Mそのものである温度を溶湯温度として推算する。一般的に元湯から取鍋本体10に移されるときの出湯温度が、1450~1550℃くらいであり、線状部材Wの送線処理までに発熱することはなく、鋳込み開始温度は少なくとも1350℃以上であることから、線状部材Wの送線処理のときの溶湯Mの温度は、おおむね1300~1600℃の温度領域に含まれる。そこで、演算部3は、1300~1600℃の温度領域において、例えば、最高温度を溶湯温度として推算する。また、同温度領域において、最高温度と最低温度の相加平均を溶湯温度として推算してもよいし、例えば0.5秒間隔で断続的に測定した隣接する5点などの複数の温度の相加平均としてもよいし、最高温度と最低温度の相乗平均を溶湯温度として推算してもよいし、又は0.5秒間隔で断続的に測定した隣接する5点などの複数の温度の相乗平均としてもよい。このように、所定の温度領域において、上限値を超える温度を異常値とし、下限値を下回る温度をスラグsや取鍋本体10の縁部として排除することにより、適切な溶湯温度を算出することができる。
【0022】
次に、上述のように推算された溶湯温度を変数として、溶湯Mの下側である底側にて線状部材Wの被覆金属が溶融する速さを設定する関係式を用いて、線状部材Wの送線速度を算出する。このようにして、取鍋本体10に収容された溶湯Mの温度に基づいて、1秒あたりに添加する線状部材Wの長さである適切な線状部材Wの送線速度を算出することができる。
【0023】
また、溶湯Mの重量が予め計測されており、線状部材Wに含有される単位長さあたりの溶湯Mを改質する成分の重量も予め把握されているため、溶湯Mに添加すべき溶湯Mを改質する成分の所定の重量割合から、演算部3は、これらの情報に基づいて、溶湯Mに送線すべき線状部材Wの長さを、線状部材Wの送線速度に所定の時間を乗じて算出することもできる。このため、後述する第二制御部5は、演算部3より送られた線状部材Wを送線する時間に基づいて、その時間だけローラー4を回動するように制御することができる。
【0024】
ローラー4は、線状部材Wを挟持しながら互いに反対方向に回動することにより線状部材Wを送線する少なくとも一対の部材である。ローラー4は、図1などに示すように、取鍋本体10の上方に位置して、図示しないモーターなどの駆動源によって一対をなす一方が回動し、対向する他方が従動することで互いに反対方向に回動し、線状部材Wを挟持して取鍋本体10に収容された溶湯Mに送線することができる。ローラー4は、上述した駆動源など他の部材を備えて送線機Fを構成している。ローラー4は、鋼鉄などの金属や、シリカなどの無機材料から形成されていることが好ましい。また、ローラー4と取鍋本体10の間には、必要に応じて線状部材Wを挿通し、溶湯Mの所定箇所や蓋体20の所定箇所に適切に案内するための筒状の部材が配設されていてもよい。本実施形態において、ローラー4は、二対設けられているが、他の実施形態において、一対や三対以上設けられていてもよい。
【0025】
第二制御部5は、演算部3により算出された送線速度に基づいた回転速度にて、ローラー4を回動する制御を行う部材である。第二制御部5により、線状部材Wを適切な送線速度にて溶湯Mに送線することができる。具体的に、第二制御部5は、例えば、演算部3により算出された送線速度に基づいて計算された回転速度にてローラー4が回動するように、ローラー4の一方を回動する図示しないモーターなどの駆動源に対して制御することが好ましい。さらに、本実施形態において、第二制御部5は、ローラー4を含む送線機Fと有線にて接続されているが、他の実施形態において、無線LANなどを介して無線にて接続されていてもよい。また、上述したように、第二制御部5は、演算部3より送られた線状部材Wを送線する時間に基づいて、その時間だけローラー4を回動するように制御することができる。
【0026】
取鍋本体10は、上方に開口して内部に溶湯Mを貯留することができる壁面と底面を備える容器状の部材されている。本実施形態において、取鍋本体10は、有底円筒状の形状を有しているが、他の実施形態において、外形が多角形状である有底筒状の形状とすることができる。また、取鍋本体10は、単一の材料から形成されていてもよく、複数の材料から形成されていてもよいが、とりわけ、取鍋本体10の内面は、直接的に溶湯Mと接触するために、耐火煉瓦、耐火断熱煉瓦など耐火性、耐熱性や耐腐食性などに優れたシリカ、ジルコニア、粘土、アルミナなどの無機化合物を主体とする材料から形成されていることが好ましい。
【0027】
蓋体20は、取鍋本体10の開口を覆う部材である。蓋体20により、例えば、線状部材Wの溶湯Mを改質する成分としてマグネシウムが含有されているときに、その線状部材Wを溶湯Mに送線して爆発的な反応が起こったとしても、取鍋本体10の開口から外部には飛散することがなく、作業員を守ることができる。本実施形態において、蓋体20は、放射温度計1と一体化されているが、他の実施形態において、放射温度計1と分離していてもよい。
【0028】
〔第二実施形態〕
図6図7に示すように、本発明の溶湯用送線装置の一つの実施形態は、第一実施形態と同様に、所定の線状部材Wを、取鍋本体10に収容された溶湯Mに送線する装置であり、放射温度計1、第一制御部2、演算部3、ローラー4、第二制御部5などを備えているところ、第一実施形態と異なり、放射温度計1が固設されており、取鍋本体10が移動する。また、図6図7において、第一制御部2、演算部3、ローラー4、第二制御部5は省略されているが、第一実施形態と同様に構成として存在し同様に機能するものである。なお、図6図7において、蓋体20は表されていないが、放射温度計1と一体化されずに、放射温度計1が測定した後に、取鍋本体10の開口を覆う蓋体20が存在することが好ましい。以下、第一実施形態と異なる構成について説明する。
【0029】
放射温度計1は、取鍋本体10の上方に固設されている。そして、取鍋本体10は、溶湯Mを収容した状態で、レールR上を移動することができる台車Bに積載されている。このため、台車Bが所定の速度で図6(a)及び図7(a)に矢印で示す左側に移動することにより、放射温度計1が、図6(a)(b)に示すように溶湯Mの表面の一端部側を測定し、そして、図7(a)(b)に示すように溶湯Mの表面の他端部側を測定することで、放射温度計1が、取鍋本体10に対して相対的に移動しながら、溶湯Mの表面の一端部側から他端部側を、連続的又は断続的に測定することができる。また、第一制御部2は、台車Bの動きと連動して上述した温度測定の制御を行うことが好ましい。
【0030】
〔第三実施形態〕
図8図9に示すように、本発明の溶湯用送線装置の一つの実施形態は、第一実施形態と同様に、所定の線状部材Wを、取鍋本体10に収容された溶湯Mに送線する装置であり、放射温度計1、第一制御部2、演算部3、ローラー4、第二制御部5などを備えているところ、第一実施形態と異なり、放射温度計1が蓋体20と一体化されておらずに移動し、取鍋本体10が所定の場所に載置されている。また、図8図9において、第一制御部2、演算部3、ローラー4、第二制御部5は省略されているが、第一実施形態と同様に構成として存在し同様に機能するものである。なお、図8図9において、蓋体20は表されていないが、放射温度計1が測定した後に、取鍋本体10の開口を覆う蓋体20が存在することが好ましい。以下、第一実施形態と異なる構成について説明する。
【0031】
放射温度計1は、取鍋本体10の上方を移動可能に設けられている。例えば、放射温度計1が、取鍋本体10の上方に設置されたレールに沿って台車に固設されるなどして、その台車の移動とともに動くことができる。そして、取鍋本体10は、溶湯Mを収容した状態で、所定の場所に載置されている。このため、放射温度計1が所定の速度で図8(a)及び図9(a)に矢印で示す左側に移動することにより、放射温度計1が、図8(a)(b)に示すように溶湯Mの表面の一端部側を測定し、そして、図9(a)(b)に示すように溶湯Mの表面の他端部側を測定することで、放射温度計1が、取鍋本体10に対して相対的に移動しながら、溶湯Mの表面の一端部側から他端部側を、連続的又は断続的に測定することができる。また、第一制御部2は、放射温度計1の動きと連動して上述した温度測定の制御を行うことが好ましい。なお、本実施形態において、放射温度計1の移動は直線状であるが、他の実施形態において、ジグザグなどの折れ線状やサインカーブなどの曲線状であってもよい。
【0032】
〔第四実施形態〕
図10図11に示すように、本発明の溶湯用送線装置の一つの実施形態は、第一実施形態と同様に、所定の線状部材Wを、取鍋本体10に収容された溶湯Mに送線する装置であり、放射温度計1、第一制御部2、演算部3、ローラー4、第二制御部5などを備えているところ、第一実施形態と異なり、放射温度計1が蓋体20と一体化されておらずに回動し、取鍋本体10が所定の場所に載置されている。また、図10図11において、第一制御部2、演算部3、ローラー4、第二制御部5は省略されているが、第一実施形態と同様に構成として存在し同様に機能するものである。なお、図10図11において、蓋体20は表されていないが、放射温度計1が測定した後に、取鍋本体10の開口を覆う蓋体20が存在することが好ましい。以下、第一実施形態と異なる構成について説明する。
【0033】
放射温度計1は、取鍋本体10の上方を所定の点を中心に回動可能に設けられている。例えば、放射温度計1が、放射温度計1に設けられた回動軸を中心に回動することができる。そして、取鍋本体10は、溶湯Mを収容した状態で、所定の場所に載置されている。このため、放射温度計1が所定の速度で図10(a)及び図11(a)に両矢印で示す方向に回動することにより、放射温度計1が、図10(a)(b)に示すように溶湯Mの表面の一端部側を測定し、そして、図11(a)(b)に示すように溶湯Mの表面の他端部側を測定することで、放射温度計1が、取鍋本体10に対して相対的に移動しながら、溶湯Mの表面の一端部側から他端部側を、連続的又は断続的に測定することができる。また、第一制御部2は、放射温度計1の動きと連動して上述した温度測定の制御を行うことが好ましい。
【符号の説明】
【0034】
1・・・放射温度計
2・・・第一制御部
3・・・演算部
4・・・ローラー
5・・・第二制御部
10・・・取鍋本体
20・・・蓋体
M・・・溶湯
W・・・線状部材
s・・・スラグ
F・・・送線機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11