(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087218
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】洗浄液の脱気機構を備えた超音波洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B08B 3/12 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
B08B3/12 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201883
(22)【出願日】2022-12-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】390019884
【氏名又は名称】ジャパン・フィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000501
【氏名又は名称】翠弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内野 正英
【テーマコード(参考)】
3B201
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AA47
3B201AB03
3B201BB02
3B201BB72
3B201BB73
3B201BB75
3B201BB77
3B201BB83
3B201BB92
3B201CD11
3B201CD36
(57)【要約】
【課題】
洗浄液中の大きな気泡を液洗浄前に脱気することにより、超音波振動によってキャビテーションを発生させ、超音波洗浄による液洗浄効果を向上させることが可能な洗浄装置を得る。
【解決手段】
超音波振動子2を備えた既設の洗浄槽1と、当該洗浄槽1内の洗浄液4を収納可能とするとともに減圧装置17を接続した脱気機構5とを備え、上記洗浄槽1と脱気機構5とは、当該脱気機構5の開口部7に当該開口部7を閉止可能とする密閉手段14を配置することにより、上記脱気機構5内に上記洗浄液4を収納した状態で上記脱気機構5と洗浄槽1とを非連通可能とし、この非連通状態で上記減圧装置17を作動させることにより、上記脱気機構5内を減圧して当該脱気機構5内の上記洗浄液4中の気体を脱気可能とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子を備えた既設の洗浄槽と、当該洗浄槽内の洗浄液を収納可能とするとともに減圧装置を接続した脱気機構とを備え、上記洗浄槽と脱気機構とは、当該脱気機構の開口部に当該開口部を閉止可能とする密閉手段を配置することにより、上記脱気機構内に上記洗浄液を収納した状態で上記脱気機構と洗浄槽とを非連通可能とし、この非連通状態で上記減圧装置を作動させることにより、上記脱気機構内を減圧して当該脱気機構内の上記洗浄液中の気体を脱気可能としたことを特徴とする洗浄液の脱気機構を備えた超音波洗浄装置。
【請求項2】
上記脱気機構は有底の内槽であって、当該内槽の開口部側を上記洗浄槽の底部側に位置した状態で当該内槽を上記洗浄槽内に配置したことを特徴とする請求項1の洗浄液の脱気機構を備えた超音波洗浄装置。
【請求項3】
上記脱気機構は有底の内槽であって、当該内槽の底部に底部開口部を備えるとともに上端に開口部を備え、当該開口部には、当該開口部を密閉可能とする密閉蓋を備え、当該内槽を、上記底部開口部側が上記洗浄槽の底部側に位置した状態で当該洗浄槽内に配置したことを特徴とする請求項1の洗浄液の脱気機構を備えた超音波洗浄装置。
【請求項4】
上記脱気機構は、一端を開口部とした流通管と、当該流通管の他端から連続する液貯留槽とを備え、上記流通管の一端側を上記洗浄槽内に配置するとともに上記液貯留槽を上記洗浄槽よりも上方に配置したことを特徴とする請求項1の洗浄液の脱気機構を備えた超音波洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄溶剤にて機械部品、電子部品、医療機器等の被洗浄物の洗浄液中の気体を脱気可能とする脱気機構を備えた超音波洗浄装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来より、特許文献1に示す如く超音波振動子を備えた洗浄槽にて被洗浄物の液洗浄を行う超音波洗浄が一般的に知られている。このように超音波振動子を用いて液洗浄を行うことにより、当該超音波振動子の超音波振動により発生するキャビテーションによって、洗浄液中の被洗浄物に付着した汚れを効果的に除去することができる。
【0005】
しかしながら、洗浄槽内の洗浄液に大きな気泡が混入している場合には、超音波振動によって発生するキャビテーションが当該気泡に吸収されてしまうものとなり、超音波振動による洗浄効果が低下するという問題が以前より生じていた。
【0006】
そこで本願では上述の如き課題を解決しようとするものであって、洗浄液中の大きな気泡を液洗浄前に脱気することにより、超音波振動によってキャビテーションを発生させ、超音波洗浄による液洗浄効果を向上させることが可能な洗浄装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は上述の如き課題を解決するため、超音波振動子を備えた既設の洗浄槽と、当該洗浄槽内の洗浄液を収納可能とするとともに減圧装置を接続した脱気機構とを備え、上記洗浄槽と脱気機構とは、当該脱気機構の開口部に当該開口部を閉止可能とする密閉手段を配置することにより、上記脱気機構内に上記洗浄液を収納した状態で上記脱気機構と洗浄槽とを非連通可能とし、この非連通状態で上記減圧装置を作動させることにより、上記脱気機構内を減圧して当該脱気機構内の上記洗浄液中の気体を脱気可能としたことを特徴とする洗浄液の脱気機構を備えたものである。
【0008】
また、上記脱気機構は有底の内槽であって、当該内槽の開口部側を上記洗浄槽の底部側に位置した状態で当該内槽を上記洗浄槽内に配置したものであっても良い。
【0009】
また、上記脱気機構は有底の内槽であって、当該内槽の底部に底部開口部を備えるとともに上端に開口部を備え、当該開口部には、当該開口部を密閉可能とする密閉蓋を備え、当該内槽を、上記底部開口部側が上記洗浄槽の底部側に位置した状態で当該洗浄槽内に配置したものであっても良い。
【0010】
また、上記脱気機構は、一端を開口部とした流通管と、当該流通管の他端から連続する液貯留槽とを備え、上記流通管の一端側を上記洗浄槽内に配置するとともに上記液貯留槽を上記洗浄槽よりも上方に配置したものであっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記の如く既存の洗浄槽に脱気機構を備えることによって、当該脱気機構により洗浄槽に収納した洗浄液中の大きな気泡を脱気することが可能となる。そのため、当該脱気機構にて大きな気泡を脱気した洗浄液を上記洗浄槽内に収納して当該洗浄槽内で被洗浄物の超音波液洗浄を行った際に、当該洗浄槽に備えた超音波振動子の超音波振動から発生するキャビテーションを、洗浄液中の大きな気泡に吸収されることなく効果的に発生させて洗浄効果を高めることが可能となる。また、本願発明は既存の洗浄槽を使用することができるため、別途専用の洗浄槽を新たに準備する必要がなく、コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】実施例2において、密閉蓋を閉止した状態を示す概念図。
【
図3】
図2において密閉蓋を開放した状態を示す概念図。
【
図4】実施例2おいて、内槽に洗浄液と被洗浄物とを収納するとともに密閉蓋を閉止した状態を示す概念図。
【
図6】実施例3において、液貯留槽内に洗浄液を移送した状態を示す概念図。
【
図7】実施例3において、洗浄槽内に洗浄液及び被洗浄物を収納した状態を示す概念図。
【実施例0013】
本願発明の実施例1を説明すると、
図1に示す如く(1)は既設の洗浄槽であって、当該洗浄槽(1)の底部(8)外方に超音波振動子(2)を備えている。このように既設の洗浄槽を使用することができるため、特別な洗浄槽を別途準備する必要がなくコストを低減することが可能となる。また、当該洗浄槽(1)内には、本実施例の脱気機構(5)である有底の内槽(6)を配置している。即ち、当該内槽(6)の開口部(7)を上記洗浄槽(1)の底部(8)側に配置するとともに、当該内槽(6)の内槽底部(10)を上記洗浄槽(1)の洗浄開口部(11)側に配置している。また上記内槽底部(10)は、上記洗浄槽(1)の洗浄開口部(11)よりも上方に突出した状態で配置されている。
【0014】
また、上記内槽(6)の開口縁(12)には、当該開口縁(12)と上記洗浄槽(1)の底面(13)とを液密的に密閉可能とする弾性部材にて形成した密閉手段(14)を設けている。また、当該内槽(6)には、減圧路(15)を通じて減圧ポンプ(16)を接続した減圧装置(17)と、減圧解除バルブ(18)とを各々別個に備えている。
【0015】
上記の如く構成した超音波洗浄装置による洗浄液(4)の脱気作業及び超音波洗浄方法について以下に説明する。まず、
図1に示す如く上記洗浄槽(1)内に被洗浄物(3)を配置するとともに、洗浄液(4)を収納することにより上記被洗浄物(3)を当該洗浄液(4)に浸漬した状態としておく。次に、上記内槽(6)の減圧解除バルブ(18)を開弁した状態で、当該内槽(6)を上記洗浄槽(1)内に挿入配置する。これにより、上記内槽(6)の開口縁(12)と上記洗浄槽(1)の底面(13)との間を液密的に密閉されるものとなるとともに、上記内槽(6)内に上記洗浄液(4)が収納された状態となる。
【0016】
このような状態で、上記内槽(6)の減圧解除バルブ(18)を閉弁することにより当該内槽(6)の内部を密閉状態とした後、上記減圧ポンプ(16)を作動させることにより、当該内槽(6)の内部を減圧状態とする。この減圧により、上記内槽(6)内の洗浄液(4)中に混入している大きな気泡が脱気され、当該洗浄液(4)から除去されるものとなる。そしてこの脱気作業後、当該内槽(6)を上記洗浄槽(1)から引き上げる。
【0017】
これにより、上記脱気作業により大きな気泡が脱気された洗浄液(4)が上記洗浄槽(1)内に貯留されるとともに、当該洗浄液(4)中に上記被洗浄物(3)が浸漬された状態となる。そして、上記超音波振動子(2)を作動させることにより、この洗浄液(4)によって、上記の如く洗浄槽(1)内に既に配置されている被洗浄物(3)の超音波洗浄を行う。
【0018】
この超音波洗浄の際に、上記脱気作業によって上記洗浄液(4)中の大きな気泡が脱気されているため、上記超音波振動子(2)の超音波振動から生じるキャビテーションが上記洗浄液(4)中の大きな気泡に吸収される事態が生じにくいものとなる。よって、当該超音波洗浄の際にキャビテーションによる洗浄効果を十分に発揮することが可能となる。尚、本実施例では上記の如く、脱気作業の際に上記内槽(6)を減圧することから、洗浄槽(1)として上記減圧に耐えられる耐圧性のものを使用することが好ましい。
その後上記超音波振動子(26)を作動させることにより、被洗浄物(42)の超音波洗浄を行う。この超音波洗浄の際に、上記脱気作業によって上記洗浄液(40)中の大きな気泡が脱気されているため、上記超音波振動子(26)の超音波振動から発生するキャビテーションが上記洗浄液(40)中の大きな気泡に吸収されることなく、当該キャビテーションによる洗浄効果を十分に発揮することが可能となる。尚、本実施例では上記の如く、脱気作業の際に上記内槽(28)を減圧することから、上記内槽(28)と連通可能な上記洗浄槽(25)の底部開口部(31)を必要最小限の開口面積とすることにより、洗浄槽(25)として耐圧性ではないものを使用した場合でも上記減圧に対応可能なものとしている。