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特開2024-87220配線用補助具、配線方法、およびドアの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087220
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】配線用補助具、配線方法、およびドアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/06 20060101AFI20240624BHJP
   E06B 7/28 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H02G1/06
E06B7/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201914
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(72)【発明者】
【氏名】吉森 希礼
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352CA10
5G352CK07
(57)【要約】
【課題】配線作業性を向上させることのできる配線用補助具の提供、作業効率の良い配線方法、およびこの配線方法を使用したドアの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】先端にコネクタ3が接続されたハーネス4をドア本体1の導入側配線開口5からドア本体1内に導入し、ドア本体1反対面の導出側配線開口6から引き出して配線する配線操作を補助する配線用補助具(J)であって、
弾性を有して薄板状に形成され、無負荷状態で板厚方向に巻き込まれたガイド部7を先端部に備えるとともに、後端部に前記コネクタ3を挿通させて該コネクタ3を保持するコネクタ保持スリット8を備えて構成する。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にコネクタが接続されたハーネスをドア本体の導入側配線開口からドア本体内に導入し、ドア本体反対面の導出側配線開口から引き出して配線する配線操作を補助する配線用補助具であって、
弾性を有して薄板状に形成され、無負荷状態で板厚方向に巻き込まれたガイド部を先端部に備えるとともに、後端部に前記コネクタを挿通させて該コネクタを保持するコネクタ保持スリットを備えた配線用補助具。
【請求項2】
前記コネクタ保持スリットが形成されるスリット形成片に加え、前記コネクタ保持スリットを挿通したコネクタを覆うコネクタカバー片を備えた請求項1記載の配線用補助具。
【請求項3】
1枚のシート体を中央部から折り曲げて折り曲げ基端部に前記ガイド部が形成され、反対端部に前記スリット形成片とコネクタカバー片とが形成されるとともに、
前記スリット形成片には、前記コネクタ保持スリットの後方で、開放端を前方に向けたコ字形状を有し、ハーネスを挿通可能なハーネス挿通スリットが形成される請求項2記載の配線用補助具。
【請求項4】
先端にコネクタが接続されたハーネスを配線用補助具を使用して、中央部に迂回を要する障壁部が存在するハーネス挿通空間内を導入側配線開口から導出側配線開口まで迂回経路を経由して挿通させる配線方法であって、
前記配線用補助具は、弾性を有して薄板状に形成され、無負荷状態で板厚方向に巻き込まれたガイド部を先端部に備えるとともに、後端部に前記コネクタを挿通させて該コネクタを保持するコネクタ保持スリットを備え、
前記コネクタをコネクタ保持スリットに挿通してハーネスを配線用補助具に連結する工程と、
前記ガイド部の巻き込み方向を迂回経路の回転方向に一致させた姿勢で配線用補助具を迂回経路に沿って押し込んで導出側配線開口に臨む位置まで移動させる工程と、
導出側配線開口から前記配線用補助具を引き出す工程とを有する配線方法。
【請求項5】
ドア本体の片面に配置される錠制御装置に連結され、先端にコネクタが接続されたハーネスを中央部に迂回を要する障壁部が存在するハーネス挿通空間内を配線用補助具を使用して導入側配線開口から導出側配線開口まで迂回経路を経由して挿通させて前記コネクタを導出側に引き出した後、対象装置に接続してドアを製造するドアの製造方法であって、
前記配線用補助具は、弾性を有して薄板状に形成され、無負荷状態で板厚方向に巻き込まれたガイド部を先端部に備えるとともに、後端部に前記コネクタを挿通させて該コネクタを保持するコネクタ保持スリットを備え、
前記コネクタをコネクタ保持スリットに挿通してハーネスを配線用補助具に連結する工程と、
前記ガイド部の巻き込み方向を迂回経路の回転方向に一致させた姿勢で配線用補助具を迂回経路に沿って押し込んで導出側配線開口に臨む位置まで移動させる工程と、
導出側配線開口から前記配線用補助具を引き出した後、配線用補助具を取り外し、コネクタを対象装置に接続する工程とを有するドアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線用補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
閉空間に開設された一方の開口から他方の開口にハーネスを挿通させる際に使用される配線用補助具としては、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
この従来例において、補助具は、2つ折りが可能な基板と、基板にハーネスを保持する第1テープと、基板の折り曲げ状態を保持する第2テープとを有する。
【0004】
配線作業に際し、先端にコネクタが連結されたハーネスを第1テープを使用して基板に固定した後、基板を2つ折りにし、さらに第2テープにより折り曲げ姿勢を保持する。
【0005】
この状態でコネクタは基板の各片に挟まれた状態となり、所定の開口から他方の開口に向けてハーネスを押し込んだ際の閉空間の内壁面との擦過等による受傷が防止されて他方の開口から導出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-265933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来例において、ハーネス挿通空間に連通するハーネスの導入側配線開口と導出側配線開口との間に障害がない場合には、導入側配線開口側から配線用補助具を挿入して、導出側配線開口から引き出すだけで配線操作を完了することができる。
【0008】
これに対し、ドアの表裏に配置される錠制御装置間を配線する際には、中間に障壁のない位置に配線開口をドアの表裏に別途開設すると、ドア表面に不要な開口部が露出することとなるために、例えば、図2に示すように、錠制御装置2の取付用開口等を配線用開口5、6として利用することが行われる。
【0009】
この場合、ドアに開設された錠収容空間16内に配置される錠装置15がハーネス4の進路を阻む障壁となることが多く、錠装置15の導入側(図2(b)における右側)の壁面を避けるように斜め上方に挿通させても、錠収容空間16の左端隅角部(図2(b)におけるA部)に先端が突き当たってしまい、単にハーネス4を前方に押し込むだけでは反対側の導出側配線開口6まで導出することができない。
【0010】
このため、このような配置における配線作業は、障害となる錠装置15を一旦取り外して行う必要があり、作業効率が悪いという問題がある。
【0011】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、錠装置がハーネス挿通経路上の障壁となる場合であっても、このような障壁部がない場合と同様に配線作業を行うことができるようにして配線作業性を向上させることのできる配線用補助具の提供を目的とする。
【0012】
また、本発明の他の目的は、作業効率の良い配線方法、およびこの配線方法を使用したドアの製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば上記目的は、
先端にコネクタ3が接続されたハーネス4をドア本体1の導入側配線開口5からドア本体1内に導入し、ドア本体1反対面の導出側配線開口6から引き出して配線する配線操作を補助する配線用補助具(J)であって、
弾性を有して薄板状に形成され、無負荷状態で板厚方向に巻き込まれたガイド部7を先端部に備えるとともに、後端部に前記コネクタ3を挿通させて該コネクタ3を保持するコネクタ保持スリット8を備えた配線用補助具(J)を提供することにより達成される。
【0014】
配線用補助具(J)は弾性を有して薄板状に形成され、ドア本体1の表裏いずれかの壁面に配置される錠制御装置2から引き出されるハーネス4を他方の壁面に開設された導出側配線開口6から引き出す際に使用される。
【0015】
挿通操作に先立って、配線用補助具(J)をハーネス4の先端に連結する。連結操作は、配線用補助具(J)の後端部(本明細書において、配線操作に際して導入側配線開口5へ挿入する側を「前方」、反対側を「後方」とする。)に形成されたコネクタ保持スリット8にハーネス4の先端に固定されたコネクタ3を挿通させるだけで完了することができる。
【0016】
本発明による配線用補助具(J)は、図2(b)に示すように、ドア本体1内部に収容される錠装置15が設けられ、錠装置15の先端にある障壁部12が導入側配線開口5から導出側配線開口6に至る配線経路を阻む障壁となり、このような障壁部12の存在により迂回経路14を経由した配線が必要となっている状態であってもハーネス4の挿通操作を容易にすることが可能にするもので、迂回経路14の回転方向(図2(b)においては反時計周り方向)にガイド部7の巻き込み方向を一致させて配線用補助具(J)を押し込むと、ガイド部7に発生する巻き込み姿勢への弾性復元力によりガイド部7の先端は迂回経路14に沿って移動し、従来例のように、図2(b)のA部で先端が突き当たって移動不能になるということがない。
【0017】
この結果、配線操作の際に錠装置15が障壁となり、迂回経路14を通った配線を要する場合であっても錠装置15を取り付けたまま配線操作を行うことができるために、配線作業性が向上する。
【0018】
また、配線用補助具(J)は、
前記コネクタ保持スリット8が形成されるスリット形成片9に加え、前記コネクタ保持スリット8を挿通したコネクタ3を覆うコネクタカバー片10を備えて形成することができる。
【0019】
コネクタカバー片10を設けることにより、コネクタ保持スリット8から挿通されたコネクタ3はスリット形成片9とコネクタカバー片10とにより挟まれて表裏面が覆われる状態となり、コネクタ3の挿通操作中における錠装置15等との直接的な接触が防止され、コネクタ3の損傷、脱離等が防がれる。
【0020】
さらに、配線用補助具(J)は、
1枚のシート体を中央部から折り曲げて折り曲げ基端部に前記ガイド部7が形成され、反対端部に前記スリット形成片9とコネクタカバー片10とが形成されるとともに、
前記スリット形成片9には、前記コネクタ保持スリット8の後方で、開放端を前方に向けたコ字形状を有し、ハーネス4を挿通可能なハーネス挿通スリット11が形成されるように構成することができる。
【0021】
コネクタカバー片10は適宜手段でスリット形成片9に連結することができるが、シート体を中央部から折り曲げて配線用補助具(J)を形成すると、折り曲げ基端部に対する反対端部に2枚のシートの重ね合わせ部が形成されるために、この各々をスリット形成片9とコネクタカバー片10として使用することが可能になり、1枚のシート体を折り畳むだけで配線用補助具(J)を形成することができるために、製作工数、製造コストを低減させることができる。
【0022】
また、ハーネス4の装着は、配線用補助具(J)の終端部の2片によりハーネス4の先端を挟み付けた後、ハーネス4の先端をハーネス挿通スリット11からスリット形成片9の表面に引き出し、さらに、コネクタ3をコネクタ保持スリット8からスリット形成片9の裏面側に押し込むだけで簡単に装着することができる。
【0023】
さらに、本発明による配線用補助具(J)を使用してドアにハーネス4を配線する場合には、
先端にコネクタ3が接続されたハーネス4を配線用補助具(J)を使用して、中央部に迂回を要する障壁部12が存在するハーネス挿通空間13内を導入側配線開口5から導出側配線開口6まで迂回経路14を経由して挿通させる配線方法であって、
前記配線用補助具(J)は、弾性を有して薄板状に形成され、無負荷状態で板厚方向に巻き込まれたガイド部7を先端部に備えるとともに、後端部に前記コネクタ3を挿通させて該コネクタ3を保持するコネクタ保持スリット8を備え、
前記コネクタ3をコネクタ保持スリット8に挿通してハーネス4を配線用補助具(J)に連結する工程と、
前記ガイド部7の巻き込み方向を迂回経路14の回転方向に一致させた姿勢で配線用補助具(J)を迂回経路14に沿って押し込んで導出側配線開口6に臨む位置まで移動させる工程と、
導出側配線開口6から前記配線用補助具(J)を引き出す工程とを有する配線方法によることができる。
【0024】
本発明によれば、ガイド部7の弾性復元力を利用して配線用補助具(J)を障壁部12に沿うように移動させることができるために、錠装置15が障壁部12となる場合であっても、錠装置15を取り外すことなく配線作業を行うことができ、配線作業性を向上させることができる。
【0025】
また、ドア本体1の片面に配置される錠制御装置2をドア内部を通過させて反対面まで引き出し、対象装置に接続したドアを製造する際には、
ドア本体1の片面に配置される錠制御装置2に連結され、先端にコネクタ3が接続されたハーネス4を中央部に迂回を要する障壁部12が存在するハーネス挿通空間13内を配線用補助具(J)を使用して導入側配線開口5から導出側配線開口6まで迂回経路14を経由して挿通させて前記コネクタ3を導出側に引き出した後、対象装置に接続してドアを製造するドアの製造方法であって、
前記配線用補助具(J)は、弾性を有して薄板状に形成され、無負荷状態で板厚方向に巻き込まれたガイド部7を先端部に備えるとともに、後端部に前記コネクタ3を挿通させて該コネクタ3を保持するコネクタ保持スリット8を備え、
前記コネクタ3をコネクタ保持スリット8に挿通してハーネス4を配線用補助具(J)に連結する工程と、
前記ガイド部7の巻き込み方向を迂回経路14の回転方向に一致させた姿勢で配線用補助具(J)を迂回経路14に沿って押し込んで導出側配線開口6に臨む位置まで移動させる工程と、
導出側配線開口6から前記配線用補助具(J)を引き出した後、配線用補助具(J)を取り外し、コネクタ3を対象装置に接続する工程とを有するドアの製造方法を利用することができる。
【0026】
本発明において、錠装置15がハーネス挿通空間13内で障壁部12となる場合であっても、錠装置15を取り外すことなく配線作業を行うことができるために、製造効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、配線作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明が適用されたドアの側面図である。
図2】ドア本体を示す図で、(a)は室外側錠制御装置を取り付ける前の図1の2A方向矢視図、(b)は錠装置の内部構造を省略して示す図2(a)の2B-2B線断面図である。
図3】配線用補助具を示す図で、(a)は薄板材を折り曲げる前の状態を示す斜視図、(b)は中心から折り曲げた状態を示す側面図である。
図4】配線用補助具を示す図で、(a)は側面図、(b)は(a)の4B方向矢視図、(c)は(a)の4C部拡大図である。
図5】配線用補助具をハーネスに装着した状態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)の5B方向矢視図である。
図6】配線操作時の配線用補助具の移動を示す説明図で、(a)は操作開始時を示す図、(b)は障壁部を避けて移動させた状態を示す図、(c)は障壁部の頂部を移動させた状態を示す図、(d)は障壁部を乗り越えた状態を示す図である。
図7】配線を完了した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に本発明が適用されるドアを示す。ドアは、ドア本体1と、ドア本体1の板厚中央部に固定される錠装置15とを有し、錠装置15には、ドアを施錠するためのデッドボルト15aと、ドアの閉塞状態を維持するためのラッチ装置15bとが収納される。
【0030】
利用者がドアの開閉操作を室内側(図1における左側)、および室外側(図1における右側)から行うことができるように、錠装置15には、ラッチ装置15bを直接操作するためのハンドル17が連結される。図2に示すように、錠装置15には、室内外のハンドル17が連結されるラッチ操作部15cが設けられる。
【0031】
また、ドアにはデッドボルト15aを操作するための錠制御装置2が配置される。本例において、ドア本体1の室外側壁面には、図示しない認証信号入力手段、認証部、モータ等のアクチュエータを備える室外側錠制御装置2(2out)が固定され、認証信号入力手段から入力された認証信号が認証部において認証されるとアクチュエータが駆動される。
【0032】
図2に示すように、アクチュエータの駆動軸は、錠装置15に設けられたデッドボルト操作部15dに連結され、デッドボルト15aの施解錠動作が行われる。
【0033】
一方、ドア本体1の室内側壁面には、室内側錠制御装置2(2in)が固定される。本例において室内側錠制御装置2(2in)は、錠装置15のデッドボルト操作部15dに連結されるサムターン装置18、図示しない駆動用バッテリを備える。
【0034】
なお、以上においては、室外側錠制御装置2(2out)に、アクチェータ、認証部等を配置し、室内側に駆動用バッテリを配置する例を示したが、室外側錠制御装置2(2out)に認証信号入力手段が、室内側錠制御装置2(2in)にサムターン装置等、室内からのデッドボルト15a操作手段が各々配置されていれば、例えば、認証部を室内側錠制御装置2(2in)に配置する等の変更が可能である。
【0035】
また、図1、2においては、アクチュエータは室外側錠制御装置2(2out)に配置されるとして説明したが、錠装置15をアクチュエータを収納した電気錠として構成することもできる。
【0036】
本例において、上記室外側錠制御装置2(2out)と室内側錠制御装置2(2in)との配線は配線操作に先立って室外側錠制御装置2(2out)に一端が接続されたハーネスをドア本体1の室外側壁面に開設された導入側配線開口5からドア本体1内のハーネス挿通空間13内に導入し、室内側壁面に開設された導出側配線空間6から引き出して行われる。ハーネス挿通空間13には錠収容空間16の上端部空間が利用される。
【0037】
また、配線開口5、6にはドア本体1の表面に別途開口を設けることによる外観の低下を避けるために、室内側錠制御装置2(2in)のサムターン装置、および室外側錠制御装置2(2out)を取り付けるための開口部が利用され、この結果、錠装置15は配線開口5、6間を結ぶ経路に対して障壁となるために、配線操作は錠装置15の上端、下端、あるいは側面等を経由する迂回経路14を通って行う必要がある。
【0038】
以上のように迂回経路14を通ってハーネス4を配線する際に有用な配線用補助具(J)は、図3以下に示すように、弾性を有する薄板材により形成され、本例において、板厚0.2ないし0.3(mm)程度のPET樹脂が使用される。なお、材料は汎用プラスチック等の弾性を有する素材であっても良く、板厚は適宜設定できる。
【0039】
図3(a)に示すように、薄板材は中心部に幅狭部19を備えた所定長の短冊形状に形成され、配線用補助具(J)は、図3(b)に示すように、この薄板材を長手方向中心から折り曲げて形成される。
【0040】
また、折り曲げ基端には、図4に示すように、板厚側に渦巻状に巻き込んだ状態での加温等によりクリープ変形を発生させたガイド部7が形成される。
【0041】
さらに、上記ガイド部7の後方で、折り曲げた一方の片(スリット形成片9)には図4(b)に示すように、該スリット形成片9の幅方向に直線状に延びるコネクタ保持スリット8が形成され、その後方には、開放端を前方、すなわち、コネクタ保持スリット8に向けた姿勢のコ字形状のハーネス挿通スリット11が設けられる。コネクタ保持スリット8の終端にはコネクタ3を挿通させる際の応力集中を防止してハーネス挿通スリット11が裂けないように、円形孔8aが形成される。
【0042】
図5に示すように、ハーネス4の先端にはコネクタ3が連結されており、上記コネクタ保持スリット8の長さは、コネクタ3が挿通可能な寸法に設定され、ハーネス挿通スリット11の幅方向寸法はハーネス4が挿通可能な寸法に設定される。
【0043】
以下に、以上のように形成される配線用補助具(J)を使用した配線方法、およびドアの製造方法を示す。
【0044】
ハーネス4の配線にあたって、先ず、ハーネス4の前端に配線用補助具(J)を連結する。配線用補助具(J)の連結は、スリット形成片9の終端縁とこのスリット形成片9に重なっているコネクタカバー片10との間にハーネス4の前端部、およびコネクタ3を通過させた後、ハーネス挿通スリット11からスリット形成片9の表面(コネクタカバー片10の対向面に対する反対面)に引き出し、次いで、コネクタ3をコネクタ保持スリット8を通過させてスリット形成片9の裏面に引き出して行われる。
【0045】
図5(b)に示すように、連結完了状態において、コネクタ3はハーネス挿通スリット11により離脱を規制されるとともに、スリット形成片9とコネクタカバー片10とにより挟まれた状態となる。
【0046】
配線操作は、図6(a)に示すように、先ず、ガイド部7の渦巻形状を解消させた後、ガイド部7の先端を導入側配線開口5から迂回経路14方向、すなわち、本例においては、障壁となる錠装置15の上端方向に押し込む。迂回経路14には錠装置の下端方向、側壁方向を選択することができる。
【0047】
ガイド部7は渦巻形状を解消しても、先端の曲率は完全に解消されることなくフック形状を維持し、この状態で押し込むと、先端縁が錠装置15の室外側壁面に沿って移動し、さらに押し込むと、図6(b)に示すように、ガイド部7の先端縁が錠装置15の室外側隅角部に係止した状態となる。
【0048】
この状態から図6(c)に示すように、ガイド部7の先端が錠装置15の上端面に沿って移動するように配線用補助具(J)を押し込むと、ガイド部7の先端には巻き込み方向の復元力が付与されているために、ガイド部7の先端が錠装置15の室内側隅角部に達すると、図6(d)に示すように、該隅角部を回り込むようにして先端が錠装置15の室内側壁面に当接する状態となる。
【0049】
図6(d)に示すように、ガイド部7の先端が錠装置15の室内側隅角部に係止した状態で室内側、すなわち導出側配線開口6からアクセス可能な場合には、そのまま指等で摘んでガイド部7の先端を導出側配線開口6から引き出すことができる。
【0050】
また、ガイド部7の先端が錠装置15の室内側隅角部に係止した状態でガイド部7の先端が導出側配線開口6からアクセス可能な位置に達していない場合には、さらに配線用補助具(J)を押し込むと、ガイド部7の原形への復元力により先端部には図6(d)において反時計回りのモーメントが作用するために、押し込み操作により先端が錠収容空間の室内側隅角部に先端が突き当たって移動不可能となることなく、導出側配線開口6側に移動することができる。
【0051】
この後、ハーネス4を十分な長さまで引き出した後、配線用補助具(J)をハーネス4から取り外し、コネクタ3を所定の接続対象、本例においては室内側錠制御装置2(2in)に接続して配線操作が完了する。
【0052】
上述したように、ガイド部7の先端は幅狭部19を折り曲げて形成されているために、幅方向寸法が一般部に比して小さくなっており、導出側配線開口6に臨んだガイド部7の先端を指等で容易に摘むことができる。
【0053】
また、配線用補助具(J)のハーネス挿通空間13内への押し込み操作に際し、配線用補助具(J)を板厚方向にわずかに湾曲させることによって座屈荷重を大きくすることができ、押し込み操作を円滑に行うことができる。
【0054】
さらに、ハーネス4の前端に配線用補助具(J)を装着した状態でコネクタ3はスリット形成片9とコネクタカバー片10とにより挟まれた状態となるために、挿通操作時にコネクタ3が直接錠装置15の隅角部に衝接、擦過することがないために、コネクタ3の損傷、離脱が完全に防止される。
【0055】
以上のように配線操作が終了した後、図7に示すように、ハーネス4から配線用補助具(J)を外し、さらに、コネクタ3を接続対象である室内側錠制御装置2(2in)に接続してドアの製造が終了する。
【0056】
なお、以上においては、ハーネス4を室外側錠制御装置2(2out)側から室内側錠制御装置2(2in)に向けて配線する場合を示したが、室内側錠制御装置2(2in)側を導入側配線開口5とし、室内側から室外側に向けて配線を行うこともできる。
【0057】
また、以上において配線用補助具(J)は一枚のシート体を折り曲げてガイド部7、スリット形成片9、およびコネクタカバー片10を一体に形成する場合を示したが、配線用補助具(J)は、一枚のシート体によりガイド部7とスリット形成片9とを一体形成し、これとは別体のシート体により形成されるコネクタカバー片10を上記スリット形成片9に両面粘着テープ等の適宜の接合手段により接合したり、あるいは、一枚のシート体によりガイド部7、コネクタカバー片10を一体に形成し、これとは別体のシート体により形成されるスリット形成片9を上記コネクタカバー片10に接合することにより形成することもできる。
【符号の説明】
【0058】
1 ドア本体
2 錠制御装置
3 コネクタ
4 ハーネス
5 導入側配線開口
6 導出側配線開口
7 ガイド部
8 コネクタ保持スリット
9 スリット形成片
10 コネクタカバー片
11 ハーネス挿通スリット
12 障壁部
13 ハーネス挿通空間
14 迂回経路
J 配線用補助具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7