(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087225
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 5/12 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
G02C5/12
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201920
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】514092009
【氏名又は名称】ジェイシーエス モールド 株式会社
【住所又は居所原語表記】Sanho-daero 116-27, Gumi-si,Gyeongsangbuk-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】チャン スッキョン
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006AB03
2H006DA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金属粉末射出成形によってフック部、連結部、支持部からなる眼鏡の鼻パッド支持部材を一体に製造する製造方法を提供する。
【解決手段】フック部、連結部、支持部からなる眼鏡の鼻パッド支持部材を金属粉末射出成形により製造することにおいて、ステンレス鋼粉末55~65体積%及びバインダー35~45体積%を混合してフィードストックを製造するステップと、前記製造されたフィードストックを射出成形機を用いて眼鏡の鼻パッド支持部材の金型に射出することにより成形体を成形するステップと、前記製造された成形体のバインダーを触媒脱脂するステップと、前記脱脂された成形体を焼結するステップと、を含むことを特徴とする金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法を提供する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フック部、連結部、支持部からなる眼鏡の鼻パッド支持部材を金属粉末射出成形により製造することにおいて、
ステンレス鋼粉末55~65体積%及びバインダー35~45体積%を混合してフィードストック(feedstock)を製造するステップと、
前記製造されたフィードストックを射出成形機を用いて眼鏡の鼻パッド支持部材の金型に射出することにより成形体を成形するステップと、
前記製造された成形体のバインダーを触媒脱脂するステップと、
前記脱脂された成形体を焼結するステップと、
を含むことを特徴とする金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法。
【請求項2】
前記フィードストック100体積%のうちステンレス鋼粉末は55~65体積%であり、ステンレス鋼粉末の粒径はD50が6~8μmの球形粉末であることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法。
【請求項3】
前記バインダー100体積%のうちポリオキシメチレン(polyoxymethylene:POM)60~75体積%、カルナウバロウやパラフィンワックスを含む群から一つ以上選択されるワックス5~15体積%、ポリカーボネート(polycarbonate;PC)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)を含む群から一つ以上選択されるポリマー10~25体積%、界面活性剤5~15体積%からなることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法。
【請求項4】
前記焼結ステップは、ステンレス鋼粉末が溶融されて溶けない温度範囲内で水素(H2)雰囲気下1330~1360℃の範囲で2~3時間維持して焼結されることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法。
【請求項5】
前記脱脂工程は、100~130℃に維持したオーブン内に製品を積み、90℃以上の濃硝酸を1~10ml/minで供給し、窒素ガスを1~5l/minで4~8時間供給してバインダーを除去することを特徴とする請求項1に記載の金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法に関し、特に、金属粉末射出成形によりフック部、連結部、支持部からなる眼鏡の鼻パッド支持部材を一体に製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータと携帯電話の使用が多くなるにつれて、視力の低下する人が増え、眼鏡の需要も多くなっている。また個性のあるファッション演出のために眼鏡を着用する人も増えてきている。
【0003】
使用しているうちに眼鏡の一部が破損すると、新たに購入するか、または修理をしなければならなくなる。眼鏡が破損したときに、破損した部品のみを入れ替える合理的消費が主流となっている。
【0004】
眼鏡の鼻パッド支持部材は、眼鏡フレームのレンズ支持部の内側後方に設けられて、眼鏡着用者の鼻筋の両方部位に接触されることにより、眼鏡の安定的な着用を図るものである。
【0005】
眼鏡の鼻パッド支持部材は、眼鏡フレーム固定部の両側後方にそれぞれ支持部が設けられたものもあるが、眼鏡フレーム固定部の後方に一つの支持部が設けられたものもある。
【0006】
一対の支持部を持つものは、眼鏡フレームの一対のレンズ支持部間に一つだけ設けられ、一つの支持部を持つものは、各レンズ支持部の内側にそれぞれ設けられる。
【0007】
眼鏡の鼻パッド支持部材は、眼鏡フレームの材質及びデザインによって様々な形態のものが使用される。
【0008】
プラスチック材質の眼鏡フレームであれば、プラスチック材質の眼鏡の鼻パッド支持部材が眼鏡フレームと一体に射出成形されても良く、別途のプラスチック材質の眼鏡の鼻パッド支持部材が眼鏡フレームに分解可能に取り付けられても良い。
【0009】
本発明は、特にプラスチック材質の眼鏡フレームに分解可能に設けられ、眼鏡フレーム固定部の後方に一つの支持部が設けられる眼鏡の鼻パッド支持部材に関する。
【0010】
金属粉末射出成形(Metal Injection Molding;M.I.M)工法は、複雑な3次元形状の精密部品を後加工することなく大量生産できる技術であって、金属粉末を熱可塑性高分子物質であるバインダー(Binder)と混合して成形可能な混合体に製造して成形する。
【0011】
成形された金属射出体は、バインダーを脱脂除去した後、特定雰囲気で高温焼結して精密な寸法と複雑な形状を持つ製品を生産することができ、製品の形状や材質が変更されても少額の設備費用で大量生産が可能な製造工法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】大韓民国登録特許公報第10-1156068号
【特許文献2】大韓民国公開特許公報第10-2010-0091756号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法に関し、具体的には金属粉末射出成形によってフック部、連結部、支持部からなる眼鏡の鼻パッド支持部材を一体に製造する製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態に係る金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法は、ステンレス鋼粉末55~65体積%及びバインダー35~45体積%を混合してフィードストック(feedstock)を製造するステップと、前記製造されたフィードストックを射出成形機を用いて眼鏡の鼻パッド支持部材の金型に射出することにより成形体を成形するステップと、前記製造された成形体のバインダーを触媒脱脂するステップと、前記脱脂された成形体を焼結するステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
前記眼鏡の鼻パッド支持部材のフック部100は、前方に弾性固定部110が設けられ、後方に挿入支持部120が設けられており、弾性固定部110は両側が面取りされた円柱状である。
【0016】
前記弾性固定部110は、先端の中央に横方向に切欠溝111が形成され、先端の直径が大きく後端の直径が小さいテーパを有する密着部112が前方に設けられており、前記弾性固定部110の両側面の後方中央には回転防止リブ113が設けられる。
【0017】
前記弾性固定部110の後方に設けられる挿入支持部120は、弾性固定部110の後端の直径よりも大きい直径を持つ円柱状である。
【0018】
前記フィードストック100体積%のうちステンレス鋼粉末は55~65体積%であり、ステンレス鋼粉末の粒径はD50が6~8μmの球形粉末であることを特徴とする。
【0019】
前記バインダー100体積%のうちポリオキシメチレン(polyoxymethylene:POM)60~75体積%、カルナウバロウやパラフィンワックスを含む群から一つ以上選択されるワックス5~15体積%、ポリカーボネート(polycarbonate;PC)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)を含む群から一つ以上選択されるポリマー10~25体積%、界面活性剤5~15体積%からなることを特徴とする。
【0020】
本発明は、ステンレス鋼粉末とバインダーを専用の混練機に入れて加圧/加熱しながら混練してペレット状のフィードストックを製造することを特徴とする。
【0021】
前記加熱は、ステンレス鋼粉末とバインダーとの混練工程でバインダーを溶融できる温度よりも10~20℃高い温度で加圧して混練することを特徴とする。
【0022】
前記成形するステップにおける射出速度は、120~128mmsであることを特徴とする。
前記脱脂工程は、100~130℃に維持したオーブン内に製品を積み、90℃以上の濃硝酸を1~10ml/minで供給し、窒素ガスを1~5l/minで4~8時間供給してバインダーを除去することを特徴とする。
【0023】
前記焼結ステップは、ステンレス鋼粉末が溶融されて溶けない温度範囲内で水素(H2)雰囲気下1330~1360℃の範囲で2~3時間維持して焼結されることを特徴とする。
【0024】
前記焼結ステップにおいて、焼結板はアルミナ含有量90%以上の高純度のアルミナ(Al2O3)であり、焼結板の粗さはRa0.5~1.0μmの範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、ステンレス鋼粉末とバインダーを混合して成形体を成形した後、脱脂焼結してフック部、連結部、支持部からなる眼鏡の鼻パッド支持部材を一体に製造することにより、眼鏡の鼻パッド支持部材のプレス後、溝部、突出部、角面取り、テーパ部などの加工工程を最小化し、細長い形状の眼鏡の鼻パッド支持部材を1回の金属粉末射出成形で製造することができ、材料のロス率を下げて大量生産が可能な効果を奏する。
【0026】
本発明により製造された眼鏡の鼻パッド支持部材は、フック部と支持部とを連結する連結部の端面をフック部及び支持部に比べて小さい円形に製造することにより、着用者の鼻部位の形状と好みに合わせて眼鏡を着用できるように、眼鏡の鼻パッド支持部材のフック部と支持部とを連結する連結部が、着用者の所望する形態に撓むことができるようにする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の製造方法で製造された眼鏡の鼻パッド支持部材の斜視図である。
【
図2】本発明の製造方法で製造された眼鏡の鼻パッド支持部材の正面図である。
【
図5】本発明に係る眼鏡の鼻パッド支持部材と眼鏡フレームの後方分解斜視図である。
【
図6】本発明に係る眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法の具体例を詳細に説明する。また、本発明を説明するに当たり、関連した公知の汎用的な構成または機能に対する詳細な説明は省略する。
【0029】
以下、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」及びその他の方向性用語は、明細書に定義された状態を基準に定義する。
【0030】
図1は本発明の製造方法で製造された眼鏡の鼻パッド支持部材の斜視図であり、
図2は本発明の製造方法で製造された眼鏡の鼻パッド支持部材の正面図であり、
図3は
図1のA-A断面図であり、
図4は
図2のB-B断面図であり、
図5は本発明に係る眼鏡の鼻パッド支持部材と眼鏡フレームの後方分解斜視図である。
【0031】
以下では、本発明の製造方法で製造された眼鏡の鼻パッド支持部材の形状と眼鏡フレームとの結合構造及び結合状態を説明する。
【0032】
図1及び
図2のように本発明の好ましい実施形態に係る眼鏡の鼻パッド支持部材は、フック部100、連結部200、支持部300で構成されるが、いずれも1回の金属粉末射出成形で製造される。
【0033】
本発明の眼鏡の鼻パッド支持部材のフック部100は、眼鏡フレーム400のフック部挿入溝に挿入されて眼鏡フレーム400と結合される。
【0034】
前記眼鏡の鼻パッド支持部材において、フック部100は前方に弾性固定部110が設けられ、後方に挿入支持部120が設けられている。
【0035】
フック部100の弾性固定部110は、両側が面取りされた円柱状である。
【0036】
また、前記弾性固定部110は、先端の中央に横方向に切欠溝111が形成され、先端の直径が大きく後端の直径が小さいテーパを有する密着部112が前方に設けられており、前記弾性固定部110の両側面の後方中央には回転防止リブ113が設けられる。
【0037】
前記弾性固定部110の後方に設けられる挿入支持部120は、弾性固定部110の後端の直径よりも大きい直径の円柱状である。
【0038】
また、連結部200は、着用者の鼻部位の形状と好みに合わせて眼鏡を着用できるように、眼鏡の鼻パッド支持部材をフィットさせるときに人為的な力を加えて強制に変形させた場合、変形状態がそのまま維持されながらも、弱い外部の荷重に対して弾性復元力を持つようにすることが好ましい。本発明では、連結部の端面を円形に製造する。
【0039】
連結部200の後方に支持部300が下方向に折曲られて形成されている。
【0040】
支持部300の下端部にシリコン材質のパッド(図示せず)を固設できるようにするパッド接続孔310が設けられている。
【0041】
前記眼鏡の鼻パッド支持部材の従来の製造方法には、プレスによりフック部100、連結部200、支持部300からなる外形を打ち抜いた後、フック部を切削加工によって形成したり、ダイカストのような方法によって製造されていた。
【0042】
プレス、切削加工の方法では製造工程が複雑で、製造コストも高くなり、ダイカストのような鋳造による製造工程は、フック部の寸法公差を満たすのに困難があった。
【0043】
このような従来の製造方法の問題点を解決するために、本発明者らは金属粉末射出成形の製造工程を発明するに至った。
【0044】
本発明により製造された眼鏡の鼻パッド支持部材と眼鏡フレームの結合構造及び結合状態は、
図3の眼鏡の鼻パッド支持部材と眼鏡フレームの後方分解斜視図を参照して説明する。
【0045】
図3のように眼鏡の鼻パッド支持部材は、プラスチック材質の眼鏡フレーム400に分解可能に取り付けられる。
【0046】
眼鏡の鼻パッド支持部材が取り付けられる眼鏡フレーム400は、一対のレンズ支持部410の間に設けられる連結部420の後面両側にフック部100が挿入されるように挿入溝430が設けられている。
【0047】
眼鏡フレーム400の挿入溝430の内部構造は、フック部100と対応する構造でなければならない。
【0048】
眼鏡フレーム400の連結部420の後面両側に形成される挿入溝430は、内部前方部にフック部100の弾性固定部110と対応する弾性固定部(付与せず)が設けられていなければならない。
【0049】
また、前記挿入溝430の内部後方部には、フック部100の挿入支持部120と対応する挿入支持部(図示せず)が設けられていなければならない。
【0050】
また、前記挿入溝430の内部下端には、横方向にフック部100の切欠溝111と対応する挿入突起(図示せず)が設けられていなければならない。
【0051】
従って、眼鏡フレーム400の挿入溝430の弾性固定部(図示せず)は、両側が面取りされた円柱状である。
【0052】
また、前記眼鏡フレーム400の挿入溝430は、先端の直径が大きく後端の直径が小さいテーパを有する密着部(図示せず)が前方に設けられ、両側面の後方中央にリブ挿入溝(図示せず)が設けられている。
【0053】
また、眼鏡フレーム400の挿入溝430の弾性固定部(図示せず)の後方に設けられる挿入支持部(図示せず)は、弾性固定部(図示せず)の後端の直径よりも大きい直径の円柱状である。
【0054】
眼鏡の鼻パッド支持部材は、眼鏡フレーム400の後方で眼鏡フレーム400の連結部420に設けられた挿入溝430にフック部100を挿入するだけで、簡単に眼鏡フレーム400と組み立てることができる。
【0055】
本発明の好ましい実施形態に係る眼鏡の鼻パッド支持部材と眼鏡フレーム400の組み立て状態では、フック部100の切欠溝113が眼鏡フレーム挿入溝430の挿入突起(図示せず)に挿入される。
【0056】
また、弾性固定部110前方の密着部112が眼鏡フレーム挿入溝430の密着部(図示せず)と強く密着される。
【0057】
従って、強い外力が加わらない限り、眼鏡フレーム400から眼鏡の鼻パッド支持部材が離れるおそれがない。
【0058】
また、フック部100の回転防止リブ113が眼鏡フレーム400の挿入溝430のリブ挿入溝(図示せず)に挿入されて+型の結合がなされる。
【0059】
フック部100及び連結部200が左右方向に回転するおそれがなく堅固な組み立て状態を維持することができる。
【0060】
一方、組み立て状態の眼鏡の鼻パッド支持部材を分解しようとするときには、フック部100の後方に一体に設けられた連結部200を把持して眼鏡フレーム400の後方に強く引っ張れば良い。
【0061】
すると、眼鏡フレーム400の挿入溝430からフック部100が引き出されるので、眼鏡フレーム400から眼鏡の鼻パッド支持部材を容易に分解することができる。
【0062】
眼鏡の鼻パッド支持部材の分解過程において、フック部100が眼鏡の鼻パッド支持部材400の挿入溝430から引き出されるときには、フック部100の密着部112の上部と下部とが切欠溝111寄りに窄まりながら眼鏡フレーム挿入溝430の密着部(図示せず)から外れるようになる。
【0063】
このように、本発明の好ましい実施形態に係る眼鏡の鼻パッド支持部材は、眼鏡フレーム400と簡単に組み立てたり分離したりできるので、破損したときにも容易に修理したり入れ替えたりすることができる。
【0064】
また、様々なデザインの眼鏡の鼻パッド支持部材を保有する場合、眼鏡フレーム400に合わせて入れ替えたり、着用者の心理状態及び好みなどに合わせて入れ替えることにより着用者の個性を表現することができる。
【0065】
図4は、本発明に係る眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法を示すフローチャートである。
【0066】
本発明の眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法は、ステンレス鋼粉末55~65体積%、バインダー35~45体積%を混合してフィードストック(feedstock)を製造するステップと、前記製造されたフィードストックを射出成形機を用いて眼鏡の鼻パッド支持部材の金型に射出することにより成形体を成形するステップと、前記製造された成形体のバインダーを触媒脱脂するステップと、前記脱脂された成形体を焼結するステップと、を含む。
【0067】
前記フィードストック100体積%のうちステンレス鋼粉末は55~65体積%であり、ステンレス鋼粉末の粒径は、D50が6~8μmの球形粉末を使用する。
【0068】
前記バインダーの構成は、形状を維持し流動の主体となる主バインダーであるポリオキシメチレン(polyoxymethylene:POM)と、フィードストックの粘度減少と金型との潤滑を促進するワックス類剤と、粉末及び高分子の湿潤性(wetting)や粘着特性(adhesion)を向上させるための界面活性剤などで構成される。
【0069】
前記バインダー100体積%のうちポリオキシメチレン(polyoxymethylene:POM)60~75体積%、カルナウバロウやパラフィンワックスを含む群から一つ以上選択されるワックス5~15体積%、ポリカーボネート(polycarbonate;PC)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)を含む群から一つ以上選択されるポリマー10~25体積%、界面活性剤5~15体積%からなる。
【0070】
ステンレス鋼粉末と、バインダーであるポリオキシメチレン(polyoxymethylene:POM)、カルナウバロウやパラフィンワックスを含む群から一つ以上選択されるワックス、ポリカーボネート(polycarbonate;PC)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)を含む群から一つ以上選択されるポリマー、界面活性剤からなるバインダーを専用の混練機に入れて加圧/加熱しながら混練してペレット状のフィードストックを製造する。
【0071】
このとき、加熱はステンレス鋼粉末とバインダーの混練工程でバインダーを溶融する温度よりも10~20℃高い温度で加圧して混練する。
【0072】
前記製造されたペレット状のフィードストックを射出機を用いて成形体を製造する。本発明の眼鏡の鼻パッド支持部材の形状は、長さに比べて薄いため、成形体の充填に困難があり、一般的な射出速度よりも10~25%速い120~128mm/sの速度で射出して成形金型の末端部まで充填が円滑に行なわれるようにし、バインダー成分のうちカルナウバロウやパラフィンワックスを含む群から一つ以上選択されるワックス5~15体積%を含んで流動度を高めた。
【0073】
前記脱脂工程は、成形体の形態が維持されながらバインダーを除去することが重要である。内部の温度は、100~130℃に維持したオーブン内に製品を積み、90%以上の濃硝酸を1~10ml/minで供給すると共に窒素ガスを1~5l/minで4~8時間供給する。
【0074】
前記焼結ステップは、ステンレス鋼粉末が遷移的液相焼結になって多孔質状態の脱脂体から焼結密度が95~98%である高密度の焼結体を製造する。焼結ステップは、ステンレス鋼粉末が溶融されて溶けない温度範囲内で水素(H2)雰囲気下1330~1360℃の範囲で2~3時間維持して焼結する。
【0075】
前記焼結ステップで水素(H2)ガス雰囲気は、製造工程で発生する原料粉末の酸化被膜を水素と反応させて除去させると共に残留バインダー成分である炭素成分を除去することにより、焼結工程でステンレス鋼の焼結密度を高める。
【0076】
本発明の眼鏡の鼻パッド支持部材の形状は、長さに比べて薄く、断面積が小さいため、焼結するときに同一に収縮されるように管理することが重要である。また、焼結に使用される焼結板の粗さを管理することにより、焼結時の収縮が同一に行なわれる。焼結板は、アルミナ含有量90%以上の高純度のアルミナ(Al2O3)であり、焼結板の粗さはRa0.5~1.0μmの範囲である。
【0077】
以上、本発明の特定した部分を詳細に説明したが、当業界の通常の知識を持つ者にとってこのような具体的な技術は単に好ましい実施形態に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されるものではない。
従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物によって定義しなければならない。
【符号の説明】
【0078】
100:フック部 110:弾性固定部
111:切欠溝 112:密着部
113:回転防止リブ 120:挿入支持部
200:連結部 300:支持部
400:眼鏡フレーム 410:レンズ支持部
420:連結部 430:フック部挿入溝
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フック部、連結部、支持部からなる眼鏡の鼻パッド支持部材を金属粉末射出成形により製造することにおいて、
ステンレス鋼粉末55~65体積%及びバインダー35~45体積%を混合してフィードストックを製造するステップと、
前記製造されたフィードストックを射出成形機を用いて眼鏡の鼻パッド支持部材の金型に射出することにより成形体を成形するステップと、
前記製造された成形体のバインダーを触媒脱脂するステップと、
前記脱脂された成形体を焼結するステップと、
を含むことを特徴とする金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法。
【請求項2】
前記フィードストック100体積%のうちステンレス鋼粉末は55~65体積%であり、ステンレス鋼粉末の粒径はD50が6~8μmの球形粉末であることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法。
【請求項3】
前記バインダー100体積%のうちポリオキシメチレン60~75体積%、カルナウバロウ又はパラフィンワックスから一つ以上選択されるワックス5~15体積%、ポリカーボネート、ポリプロピレン又はポリエチレンから一つ以上選択されるポリマー10~25体積%、界面活性剤5~15体積%からなることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法。
【請求項4】
前記焼結ステップは、ステンレス鋼粉末が溶融されない温度範囲内で水素雰囲気下1330~1360℃の範囲で2~3時間維持して焼結されることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法。
【請求項5】
前記脱脂工程は、100~130℃に維持したオーブン内に製品を積み、90℃以上の濃硝酸を1~10ml/minで供給し、窒素ガスを1~5l/minで4~8時間供給してバインダーを除去することを特徴とする請求項1に記載の金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
前記バインダー100体積%のうちポリオキシメチレン(polyoxymethylene:POM)60~75体積%、カルナウバロウ又はパラフィンワックスから一つ以上選択されるワックス5~15体積%、ポリカーボネート(polycarbonate;PC)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)又はポリエチレン(polyethylene;PE)から一つ以上選択されるポリマー10~25体積%、界面活性剤5~15体積%からなることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
前記焼結ステップは、ステンレス鋼粉末が溶融されない温度範囲内で水素(H2)雰囲気下1330~1360℃の範囲で2~3時間維持して焼結されることを特徴とする。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フック部、連結部、支持部からなる眼鏡の鼻パッド支持部材を金属粉末射出成形により製造することにおいて、
ステンレス鋼粉末55~65体積%及びバインダー35~45体積%を混合してフィードストックを製造するステップと、
前記製造されたフィードストックを射出成形機を用いて眼鏡の鼻パッド支持部材の金型に射出することにより成形体を成形するステップと、
前記製造された成形体のバインダーを触媒脱脂するステップと、
前記脱脂された成形体を焼結するステップと、を含み、
該焼結するステップにおいて、
焼結板は、アルミナ含有量90%以上の高純度のアルミナ(Al2O3)であり、焼結板の粗さはR a0.5~1.0μmの範囲であり、
ステンレス鋼粉末が溶融されない温度範囲内で水素雰囲気下1330~1360℃の範囲で2~3時間維持して焼結させることを特徴とする金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法。
【請求項2】
前記バインダー100体積%のうちポリオキシメチレン60~75体積%、カルナウバロウ又はパラフィンワックスから一つ以上選択されるワックス5~15体積%、ポリカーボネート、ポリプロピレン又はポリエチレンから一つ以上選択されるポリマー10~25体積%、界面活性剤5~15体積%からなることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法。
【請求項3】
前記脱脂工程は、100~130℃に維持したオーブン内に製品を積み、90℃以上の濃硝酸を1~10ml/minで供給し、窒素ガスを1~5l/minで4~8時間供給してバインダーを除去することを特徴とする請求項1に記載の金属粉末射出成形による眼鏡の鼻パッド支持部材の製造方法。