(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087229
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】温度検出装置、耳装着装置、温度検出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01J 5/00 20220101AFI20240624BHJP
G01J 5/08 20060101ALI20240624BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
G01J5/00 101G
G01J5/08 B
A61B5/01 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201924
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 康治
【テーマコード(参考)】
2G066
4C117
【Fターム(参考)】
2G066AC13
2G066BA27
2G066BA57
2G066BC15
4C117XB01
4C117XD09
4C117XE23
4C117XE48
(57)【要約】
【課題】温度センサを位置調整する手間がかからず、測定再現性に優れる温度検出装置を提供する。
【解決手段】電磁波により温度を検出する温度センサ(13)と、第1曲面(20a、40a)を有して温度センサを支持し、温度センサと共に転動する転動部材(20、40)と、第1曲面に対応する第2曲面(25b、41b)を有し、第1曲面及び第2曲面に沿って転動部材を転動可能に支持する支持部材(25、41)と、転動部材を転動する力を発生するアクチュエータ(23、26、47、48、51、53)と、アクチュエータを制御する制御部(30)と、を備える温度検出装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波により温度を検出する温度センサと、
第1曲面を有し、前記温度センサを支持し、前記温度センサと共に転動する転動部材と、
前記第1曲面に対応する第2曲面を有し、前記第1曲面及び第2曲面に沿って前記転動部材を転動可能に支持する支持部材と、
前記転動部材を転動する力を発生するアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御する制御部と、を備える、
ことを特徴とする温度検出装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、
前記第1曲面に沿って設けられる磁性体と、
前記第2曲面に沿って、前記磁性体に対応する位置に設けられる導電部材と、を備え、
前記制御部は前記導電部材に流す電流を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の温度検出装置。
【請求項3】
枠部材と、
前記枠部材の内側に平面的に移動可能に支持される可動部材と、
前記可動部材の移動を前記転動部材に伝達する伝達部材と、を備え、
前記アクチュエータは、
前記枠部材の内側面に沿って設けられる導電部材と、
前記可動部材に、前記導電部材に対応する位置に設けられる磁性体と、を備え、
前記制御部は前記導電部材に流す電流を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の温度検出装置。
【請求項4】
第3曲面を有する第2転動部材と、
前記第3曲面に対応する第4曲面を有し、前記第3曲面及び第4曲面に沿って前記第2転動部材を転動可能に支持する第2支持部材と、
前記第2転動部材の転動を前記転動部材に伝達する伝達部材と、を備え、
前記アクチュエータは、
前記第3曲面に沿って設けられる磁性体と、
前記第4曲面に沿って、前記磁性体に対応する位置に設けられる導電部材と、を備え、
前記制御部は前記導電部材に流す電流を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の温度検出装置。
【請求項5】
前記温度センサは、前記転動部材から突出する支持突起の先端部に支持されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の温度検出装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記転動部材を所定のパターンで転動させ、前記温度センサによって最も温度が高いと検出された最高温度領域を判定し、
前記最高温度領域に対応する位置に前記転動部材を転動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の温度検出装置。
【請求項7】
前記所定のパターンは、前記転動部材を回動半径が徐々に変化するように動作させるパターンである、
ことを特徴とする請求項6に記載の温度検出装置。
【請求項8】
前記所定のパターンは、前記転動部材を回動半径が徐々に変化する渦巻状に動作させるパターンである、
ことを特徴とする請求項7に記載の温度検出装置。
【請求項9】
電磁波により温度を検出する温度センサと、
第1曲面を有し、前記温度センサを支持し、前記温度センサと共に転動する転動部材と、
前記第1曲面に対応する第2曲面を有し、前記第1曲面及び第2曲面に沿って前記転動部材を転動可能に支持する支持部材と、
前記転動部材を転動する力を発生するアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御する制御部と、
少なくとも前記温度センサを先端部に備え、少なくとも一部が被測定者の外耳道に挿入される挿入部と、を備える、
ことを特徴とする耳装着装置。
【請求項10】
電磁波により温度を検出する温度センサを支持する転動部材を、アクチュエータによって所定のパターンで転動させ、前記温度センサによって最も温度が高いと検出された最高温度領域を判定し、
前記最高温度領域に対応する位置に前記転動部材を転動させる、
ことを特徴とする温度検出方法。
【請求項11】
電磁波により温度を検出する温度センサを支持する転動部材をアクチュエータによって転動させる温度検出装置のコンピュータを、
前記アクチュエータによって前記転動部材を所定のパターンで転動させ、前記温度センサによって最も温度が高いと検出された最高温度領域を判定し、前記最高温度領域に対応する位置に前記転動部材を転動させる制御部、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度検出装置、耳装着装置、温度検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鼓膜から放射される赤外線を検出することによって、鼓膜の温度を測定する耳式体温計が知られている。耳式体温計は、温度測定時に被測定者の外耳道に挿入されるプローブを有し、プローブには赤外線を検出する赤外線センサが設けられる。鼓膜から発した赤外線が赤外線センサに到達して検出されると、検出結果に基づいて温度が算出される。
【0003】
耳式体温計によって被測定者の鼓膜の温度を正確に測定するためには、鼓膜に対する赤外線センサの位置を適切に定める必要がある。例えば、特許文献1には、被測定者の外耳道にプローブを挿入する向きに応じた複数通りの本体の持ち方を使用者に認識させるための指標を備えた耳式体温計が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外耳道の形状や鼓膜の位置は被測定者によって様々である。そのため、耳式体温計の本体に設けた指標を目安にして耳式体温計の装着を行っても、鼓膜に対する赤外線センサの位置に誤差が生じる可能性があり、測定再現性に欠けるという問題があった。
【0006】
また、本体に指標を設けた場合でも、耳式体温計の位置を手動で設定するのは手間がかかる。特に、被測定者の運動中や睡眠中に継続的に鼓膜の温度を測定する場合、被測定者の体動によって耳式体温計の位置がずれやすく、その都度、耳式体温計の位置を手動で調整することは現実的ではない。
【0007】
このような背景から、耳式体温計の位置を手動で調整する手間をかけずに、高精度な測定結果を取得できるようにすることが望まれていた。
【0008】
そこで、本発明は、温度センサを位置調整する手間がかからず、測定再現性に優れる温度検出装置、耳装着装置、温度検出方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る温度検出装置は、電磁波により温度を検出する温度センサと、第1曲面を有し、前記温度センサを支持し、前記温度センサと共に転動する転動部材と、前記第1曲面に対応する第2曲面を有し、前記第1曲面及び第2曲面に沿って前記転動部材を転動可能に支持する支持部材と、前記転動部材を転動する力を発生するアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する制御部と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の態様によれば、温度センサを位置調整する手間がかからず、測定再現性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】耳式体温計を被測定者の耳に適切に装着した状態を示す図である。
【
図2】耳式体温計を適切な位置からずれて装着した状態を示す図である。
【
図3】外耳道に挿入した赤外線センサと鼓膜の位置関係を説明する図である。
【
図4】第1の実施形態の耳式体温計の内部構造を示す図である。
【
図5】第1の実施形態の耳式体温計が備える転動部材を底面側から見た図である。
【
図6】耳式体温計の制御系を示すブロック図である。
【
図7】イニシャライズの際に転動部材を転動させるパターンの例を示す図である。
【
図8】イニシャライズの際に転動部材を転動させて赤外線センサによって検出された温度変化を示すグラフである。
【
図9】第2の実施形態の耳式体温計の内部構造を示す図である。
【
図10】第3の実施形態の耳式体温計の内部構造を示す図である。
【
図11】第3の実施形態の耳式体温計のアクチュエータを平面視した図である。
【
図12】第4の実施形態の耳式体温計の内部構造を示す図である。
【
図13】第5の実施形態の耳式体温計の内部構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る耳式体温計10を耳に装着して使用する状態を示している。
【0013】
耳式体温計10は、イヤフォン型であり、本体部11と、本体部11から突出する筒状の挿入部12と、を有している。挿入部12の先端に赤外線センサ13が設けられている。赤外線センサ13は、電磁波により温度を検出する非接触式の温度センサであり、赤外線を検出する。なお、温度センサは赤外線を検出するセンサに限定されるものではなく、所定の波長帯の電磁波を検出する任意の温度センサを用いることができる。
【0014】
耳式体温計10を被測定者の耳に装着する際に、挿入部12が外耳道1に挿入され、本体部11が耳介2によって保持される。外耳道1への挿入部12の挿入量は被測定者によって異なるが、挿入部12のうち少なくとも赤外線センサ13を備える先端部分が外耳道1に挿入される。耳式体温計10は、外耳道1の奥の鼓膜3の温度を測定する温度検出装置及び耳装着装置である。
【0015】
図1は、耳式体温計10を適切に装着した場合を示しており、赤外線センサ13が鼓膜3に向いた状態にある。鼓膜3から発した赤外線が赤外線センサ13に到達する位置関係にあり、赤外線センサ13によって鼓膜3の中心付近の温度を測定することができる。
【0016】
図2は、耳式体温計10が適切な位置からずれている場合を示しており、赤外線センサ13が鼓膜3よりも手前の外耳道1の内面に向いた状態にある。この状態では、鼓膜3から発した赤外線が赤外線センサ13に到達しにくく、赤外線センサ13によって鼓膜3の中心付近の温度を適正に測定することができない。
【0017】
耳式体温計10を用いて被測定者の運動中や睡眠中の深部体温を継続的に測定する場合、一例として1秒程度のサンプリング間隔で温度測定を行う。このような継続的な測定を行う場合、赤外線センサ13が適切な温度測定対象領域(鼓膜3の中心付近)の温度を測定し続けることが重要である。そして、運動中の測定や、睡眠中のように長時間に亘る測定では、被測定者の体動によって耳式体温計10の位置がずれやすい。
【0018】
また、継続的な温度測定に限らず、耳式体温計10を耳に装着した際に、耳式体温計10が適切な位置に装着されているか否かを被測定者や測定者が目視などで判断し、手動で位置を合わせるのは手間がかかる。さらに、耳式体温計10を耳に装着した状態では赤外線センサ13の位置を外部から視認できず、外耳道1や耳介2の形状も被測定者毎に異なるので、外部から視認可能な本体部11だけを目安に赤外線センサ13の正確な向きを設定することは難しい。
【0019】
本実施形態の耳式体温計10は、耳式体温計10が適切な位置からずれて装着されている場合に、自動的に赤外線センサ13の向きを補正して鼓膜3に向く状態を維持させることが可能であり、以下にその詳細を説明する。
【0020】
図3は、赤外線センサ13と鼓膜3の位置関係を簡略に表したものである。一例として、耳に耳式体温計10を装着した状態で、赤外線センサ13から鼓膜3までの距離Lが20mm~25mm程度であり、鼓膜3の半径rが5mm程度である。この場合、挿入部12の中心軸Cを中心としておおよそ11°~14°の傾動範囲θで赤外線センサ13の向きを可変にさせることで、耳式体温計10の位置ずれの影響を補正して、赤外線センサ13が鼓膜3に向く状態を得ることができる。
【0021】
図4及び
図5は、第1の実施形態である耳式体温計10が備えるセンサ駆動構造を示している。このセンサ駆動構造は全体が挿入部12の内部に配置される。なお、
図4では、転動部材20を側面視で表し、支持部材25を断面視で表している。
【0022】
図4に示すように、球体形状の転動部材20に赤外線センサ13が支持されている。転動部材20は、球面状の第1曲面20aを外面に備え、さらに、第1曲面20aを囲む円環形状のフランジ20bを備えている。挿入部12の中心軸Cは、転動部材20の略中心を通り、フランジ20bは中心軸Cを囲むように形成されている。中心軸Cに対して垂直であり、且つ互いに垂直な関係にある2つの仮想の軸線が延びる向きをX軸方向及びY軸方向とする。
【0023】
第1曲面20aは、フランジ20bによって上半領域20cと下半領域20dに区切られている。上半領域20cの頂部には赤外線センサ13が支持されている。下半領域20dには、複数の球体形状のベアリング22と、磁性体である複数の永久磁石23と、が支持されている。
【0024】
図5に示すように、転動部材20は5つのベアリング22を備えている。下半領域20dの中央に1つのベアリング22が設けられ、中心軸Cを挟んでX軸方向に間隔を空けて2つのベアリング22が設けられ、中心軸Cを挟んでY軸方向に間隔を空けて2つのベアリング22が設けられている。個々のベアリング22は、転動部材20に対して転動可能に支持されており、ベアリング22の外面の一部が第1曲面20aから突出している。
【0025】
図5に示すように、転動部材20は4つの永久磁石23を備えている。中心軸Cを挟んでX軸方向に間隔を空けて2つの永久磁石23(永久磁石23X)が設けられ、中心軸Cを挟んでY軸方向に間隔を空けて2つの永久磁石23(永久磁石23Y)が設けられている。個々の永久磁石23は、第1曲面20aに沿う湾曲した形状であり、第1曲面20aから突出せずに転動部材20の内側に埋設されている。
【0026】
図4に示すように、挿入部12の内部に、転動部材20を支持する支持部材25を備えている。支持部材25は、転動部材20の一部が挿入される凹部25aを有し、凹部25aの内面として、転動部材20の第1曲面20aに対応する凹面である第2曲面25bを有する。転動部材20のうち下半領域20dが凹部25aに挿入され、複数のベアリング22が第2曲面25bに接触(点接触)して支持される。この支持状態で、転動部材20は支持部材25に対して第1曲面20a及び第2曲面25bに沿った転動が可能であり、転動部材20が赤外線センサ13と共に転動することによって赤外線センサ13の向きが変化する。機構的な転動部材20の最大の傾き量(傾き角)は、フランジ20bが支持部材25の天面25cに当接することによって制限される。
図4は、転動部材20が可動範囲の中心に位置する初期位置を示している。
図4及び
図5の構成において、例えば転動部材20の直径が6mmであると、転動部材20の転動による赤外線センサ13の最大の移動距離が1.5mm程度である。
【0027】
支持部材25は、導電部材である複数のコイル26を備えている。具体的には、4つのコイル26を備えている。中心軸Cを挟んでX軸方向に間隔を空けて2つのコイル26(コイル26X)が設けられ、中心軸Cを挟んでY軸方向に間隔を空けて2つのコイル26(コイル26Y)が設けられている。なお、
図4では、Y軸方向で紙面奥側に位置するコイル26Yと紙面手前側に位置するコイル26Yとが重なる関係にある。個々のコイル26は、第2曲面25bに沿う湾曲した形状であり、第2曲面25bから突出せずに支持部材25の内側に埋設されている。
【0028】
4つの永久磁石23と4つのコイル26がそれぞれ対応(対向)する位置に配置されており、転動部材20を転動する力を発生するアクチュエータを構成している。各永久磁石23の磁場中の各コイル26に電流を流すと当該コイル26に力(ローレンツ力)が生じる。コイル26が支持部材25に固定されているのでコイル26は移動せず、永久磁石23を備える転動部材20が第1曲面20aと第2曲面25bに沿って転動する。コイル26Xに電流を流すと、支持部材25に対して転動部材20をY軸方向に移動させる力が加わり、コイル26Yに電流を流すと、支持部材25に対して転動部材20をX軸方向に移動させる力が加わる。各コイル26に流す電流を制御することによって、転動部材20を任意の向き及び大きさ(角度)で転動させることができる。
【0029】
図6は耳式体温計10における制御系を示すブロック図である。制御部30は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、記憶部とを有し、記憶部に記憶されているプログラムを読み出してプロセッサが実行することで、耳式体温計10の各部の動作を制御する。後述する赤外線センサ13の向きの補正に関する一連の制御や処理についても、記憶部に記憶されているプログラムに基づいて行われる。なお、少なくとも制御部30は、耳式体温計10のコンピュータを構成している。
【0030】
制御部30は、コイル駆動回路31を介して各コイル26に流す電流を制御する。
図6に示すように、2つのコイル26Xの動作をセットで制御し、2つのコイル26Yの動作をセットで制御する回路構成になっている。制御部30に接続する電源32は、各コイル26への電力供給源として機能する。制御部30及びコイル駆動回路31を備える回路基板や電源32は、本体部11の内部に設けられている。
【0031】
赤外線センサ13で検出した信号は、AFE(アナログ・フロント・エンド)33で調整されて制御部30に入力される。制御部30は、赤外線センサ13で検出した信号に基づいて、測定対象の温度を演算する。演算により得られた温度データは、制御部30の記憶部に記憶される。なお、本体部11の外面に表示部を設けて、温度データの数値を表示部に表示してもよい。あるいは、耳式体温計10と外部機器との間でデータ送受を可能にして、温度データを耳式体温計10から外部装置へ送信してもよい。このような温度データの各種処理は、制御部30によって行われる。
【0032】
温度測定の前や、継続的な複数回の温度測定の間の所定のタイミングで、赤外線センサ13を適切な向きに調整するイニシャライズ(キャリブレーション)を行う。イニシャライズでは、制御部30は、転動部材20を所定のパターンで転動させながら赤外線センサ13による温度測定を行い、温度測定対象領域である鼓膜3の温度を測定するように赤外線センサ13の向きを調整する。
【0033】
図7は、イニシャライズの際に制御部30が転動部材20を転動させるパターンの例を示している。
図7の例は、回動半径が徐々に大きくなる渦巻状(螺旋状)のパターンで転動部材20を転動させた場合の赤外線センサ13の移動軌跡Pを表している。なお、
図7の例とは逆に、回動半径が徐々に小さくなる渦巻状(螺旋状)のパターンで転動部材20を転動させてもよい。制御部30は、このような所定のパターンで転動部材20を転動させながら、赤外線センサ13の検出結果を所定の時間間隔(例えば、数ms毎)でバーストサンプリングし、測定値を平滑化しながら各方向の温度を取得する。
【0034】
図8は、イニシャライズの際に渦巻状のパターンで転動部材20を転動させた場合に赤外線センサ13によって検出された温度変化を示すグラフであり、横軸がパターンに沿う測定位置の変化を示し、縦軸が温度を示している。一般的に、血流量や血管の密度などの要素によって、外耳道1の内面よりも鼓膜3の方が高い温度になる。従って、制御部30は、赤外線センサ13によって最も温度が高いと検出された最高温度領域Hを温度測定対象領域である鼓膜3の中央付近であると判定し、最高温度領域Hに対応する位置(グラフの横軸の座標)を記憶する。そして、制御部30は、コイル26に流す電流を制御して、最高温度領域Hに対応する位置まで転動部材20を転動させ、転動部材20の向きを固定させる。このような制御及び動作によってイニシャライズが完了する。所定の範囲を網羅するパターンで転動部材20を転動させて最高温度領域Hを判定してから、最高温度領域Hに対応する位置まで転動部材20を転動させることにより、赤外線センサ13を最適な向きに自動で補正することができる。
【0035】
図7のような渦巻状のパターンで赤外線センサ13の位置を変えながらイニシャライズ用の温度測定を行う方法は、狭い円筒状の外耳道1の内部において最高温度領域Hの検出を素早く行うことができ、効率が良い。
【0036】
なお、イニシャライズ時に転動部材20を転動させるパターンは、渦巻状には限定されない。例えば、回動半径が異なる複数の同心円のパターンで転動部材20を転動させることも可能である。あるいは、X軸方向やY軸方向に進行するパターンを組み合わせて転動部材20を転動させることも可能である。
【0037】
イニシャライズを行うタイミングや間隔は、任意に設定することができる。例えば、運動中や睡眠中に想定される深部体温の変化を予め制御部30の記憶部に記憶させ、想定される変化以上の温度変化が生じた場合(つまり、耳式体温計10の位置ずれが疑われる場合)に、イニシャライズを実行することができる。あるいは、周期的(定期的)な時間で区切って自動的にイニシャライズを実行してもよい。
【0038】
以上のように、第1の実施形態の耳式体温計10では、制御部30がアクチュエータを構成するコイル26への通電を制御して、赤外線センサ13を支持する転動部材20を転動させることにより、赤外線センサ13が鼓膜3を向くように補正する。従って、手動による耳式体温計10の位置調整を行わずに、正確な体温検出を実現することができる。
【0039】
耳式体温計10のセンサ駆動構造は、挿入部12の先端部に設けた転動部材20を転動させるので、赤外線センサ13の向きを変更する際に挿入部12からの突出量の変化がほとんど無く、センサ駆動構造の構成要素が外耳道1の内部に接触することを防止できる。また、転動部材20の転動によって迅速に赤外線センサ13の向きを変更させることができる。従って、素早く安全に赤外線センサ13の位置補正を行うことが可能である。
【0040】
また、耳式体温計10では、アクチュエータの構成要素である永久磁石23及びコイル26を、赤外線センサ13を支持するための転動部材20及び支持部材25に備えているので、アクチュエータとその周辺の構造をシンプルにして、センサ駆動構造を小型化及び軽量化することができる。
【0041】
続いて、耳式体温計の異なる実施形態を説明する。以下の各実施形態の耳式体温計において、上記の第1の実施形態の耳式体温計10の構成要素と同じ符号で示している箇所は、耳式体温計10と同様に機能する部分であり、詳細な説明を省略する。また、以下の各実施形態の耳式体温計は、
図6に示すものと同様の制御系を備えており、上記の耳式体温計10と同様の制御(イニシャライズなど)を行うことができる。
【0042】
第1の実施形態の耳式体温計10(
図4)では、アクチュエータを含むセンサ駆動構造の全体を挿入部12に収めているが、挿入部12におけるスペース制限が厳しい場合や、挿入部12をさらに小型化させる(特に、太さを小さくする)ことが求められる場合には、センサ駆動構造を本体部11側に配置してもよい。以下に説明する各実施形態の耳式体温計は、センサ駆動構造の少なくとも一部を本体部11側に配置するタイプである。
【0043】
図9は、第2の実施形態の耳式体温計110を示している。なお、
図9では、転動部材40と第2転動部材43を側面視で表し、支持部材41と第2支持部材44を断面視で表している。
【0044】
耳式体温計110では、挿入部12の先端部に設けた球体形状の転動部材40に赤外線センサ13が支持されている。転動部材40は、球面状の第1曲面40aを外面に備えている。
【0045】
挿入部12の内部には、転動部材40を支持する支持部材41が設けられている。支持部材41は、転動部材40の一部が挿入される凹部41aを有し、凹部41aの内面として、転動部材40の第1曲面40aに対応する凹面である第2曲面41bを有する。支持部材41には複数の球体形状のベアリング42が支持されており、各ベアリング42の一部が第2曲面41bから突出する。
【0046】
転動部材40のうち赤外線センサ13を支持する上半領域とは反対側の下半領域が凹部41aに挿入され、複数のベアリング42が第1曲面40aに接触(点接触)して転動部材40が支持される。この支持状態で、転動部材40は支持部材41に対して、第1曲面40a及び第2曲面41bに沿って転動が可能であり、転動によって赤外線センサ13の向きが変化する。
【0047】
耳式体温計110では、転動部材40を転動する力を発生するアクチュエータが本体部11側に配置されている。アクチュエータに関する構成部品として、球体形状の第2転動部材43と、第2転動部材43を支持する第2支持部材44とが、本体部11の内部に設けられている。
【0048】
第2転動部材43は、球面状の第3曲面43aを外面に備え、さらに、第3曲面43aを囲む円環形状のフランジ43bを備えている。第3曲面43aは、フランジ43bによって上半領域43cと下半領域43dに区切られている。第2転動部材43の直径は転動部材40の直径よりも大きい。
【0049】
第2転動部材43における上半領域43cと転動部材40の下半領域は、伝達部材である複数本のテンションワイヤ45で接続されている。具体的には、中心軸Cを挟んでX軸方向に位置を異ならせて2本のテンションワイヤ45が配置され、中心軸Cを挟んでY軸方向に位置を異ならせて2本のテンションワイヤ45が配置され、合計4本のテンションワイヤ45を備えている。4本のテンションワイヤ45は、中心軸Cに対して傾斜して延び、途中で交差している。各テンションワイヤ45は可撓性を有し、所定の張力をもって転動部材40と第2転動部材43を接続している。
【0050】
第2転動部材43における下半領域43dには、複数の球体形状のベアリング46が支持されている。個々のベアリング46は、第2転動部材43に対して転動可能に支持されており、ベアリング46の外面の一部が下半領域43dから突出している。
【0051】
第2支持部材44は、第2転動部材43の一部が挿入される凹部44aを有し、凹部44aの内面として、第2転動部材43の第3曲面43aに対応する凹面である第4曲面44bを有する。第2転動部材43のうち下半領域43d側が凹部44aに挿入され、複数のベアリング46が第4曲面44bに接触(点接触)して支持される。この支持状態で、第2転動部材43は第2支持部材44に対して、第3曲面43a及び第4曲面44bに沿って転動が可能である。
【0052】
第2転動部材43は、アクチュエータを構成する磁性体として、複数(例えば、4つ)の永久磁石47を備えている。個々の永久磁石47は、第3曲面43aの下半領域43dに沿う湾曲した形状であり、第3曲面43aから突出せずに第2転動部材43の内側に埋設されている。
【0053】
第2支持部材44は、アクチュエータを構成する導電部材として、複数(例えば、4つ)のコイル48を備えている。個々のコイル48は、第4曲面44bに沿う湾曲した形状であり、第4曲面44bから突出せずに第2支持部材44の内側に埋設されている。
【0054】
複数の永久磁石47と複数のコイル48がそれぞれ対応(対向)する位置に配置されており、転動部材40を転動する力を発生するアクチュエータを構成している。永久磁石47の磁界中のコイル48に電流を流すと、第2転動部材43を転動させる力が発生する。例えば、X軸方向に間隔を空けて配置した2つのコイル48Xに電流を流すと、第2支持部材44に対して第2転動部材43をY軸方向に転動させる力が加わり、Y軸方向に間隔を空けて配置した2つのコイル48Yに電流を流すと、第2支持部材44に対して第2転動部材43をX軸方向に転動させる力が加わる。各コイル48に流す電流を制御することによって、第2転動部材43を任意の向き及び大きさ(角度)で転動させることができる。
【0055】
第2転動部材43が第3曲面43a及び第4曲面44bに沿って転動すると、複数本のテンションワイヤ45によって転動部材40に力が伝達され、支持部材41に対して転動部材40が第1曲面40a及び第2曲面41bに沿って転動する。その結果、転動部材40に支持されている赤外線センサ13の向きが変化する。
【0056】
耳式体温計110では、第2転動部材43よりも小型(小径)の転動部材40を挿入部12の先端部に配置し、アクチュエータが第2転動部材43を転動させた力をテンションワイヤ45によって転動部材40に伝達して赤外線センサ13の向きを変化させるので、挿入部12の内部に設けられる構造をコンパクトにして、挿入部12の小型化を図ることができる。また、第2転動部材43や第2支持部材44の大きさが挿入部12内のスペースに制約されないので、大型の永久磁石47や大型のコイル48を用いた高出力のアクチュエータを構成することができる。
【0057】
また、細いテンションワイヤ45を用いることによって、第2転動部材43から転動部材40に力を伝達する手段をシンプル且つコンパクトに構成することができる。
【0058】
図10及び
図11に示す第3の実施形態の耳式体温計210は、挿入部12に設けられる構成(転動部材40、支持部材41、ベアリング42)については第2の実施形態(
図9)の耳式体温計110と同様であり、本体部11の内部に設けられるアクチュエータの構成が耳式体温計110とは異なっている。
【0059】
本体部11の内部に、略矩形の枠型形状の枠部材50を有している。枠部材50の内側には、X軸方向の両側に位置する一対の平行な内側面50aと、Y軸方向の両側に位置する一対の平行な内側面50bと、を有する。
【0060】
枠部材50は、導電部材である複数のコイル51を備えている。具体的には、一対の内側面50aに沿って一対のコイル51(コイル51X)が設けられ、一対の内側面50bに沿って一対のコイル51(コイル51Y)が設けられ、合計で4つのコイル51を備えている。
【0061】
枠部材50の内側に可動部材52が設けられている。可動部材52は、X軸方向の両側に位置する一対の平行な側面52aと、Y軸方向の両側に位置する一対の平行な側面52bと、挿入部12側を向く天面52cと、挿入部12とは反対側を向く底面52dと、を有する箱型(板状)の部材である。
【0062】
可動部材52は、磁性体である複数の永久磁石53を備えている。具体的には、一対の側面52aに沿って一対の永久磁石53(永久磁石53X)が設けられ、一対の側面52bに沿って一対の永久磁石53(永久磁石53Y)が設けられ、合計で4つの永久磁石53を備えている。個々の永久磁石53は、側面52a及び側面52bから突出せずに可動部材52の内側に埋設されている。
【0063】
一対の内側面50aと一対の側面52aとの間には隙間があり、一対の内側面50bと一対の側面52bとの間には隙間があり、可動部材52は枠部材50に対してX軸方向及びY軸方向へ移動可能である。換言すれば、可動部材52は枠部材50に対して平面的に移動可能である。
【0064】
枠部材50の四隅(各内側面50aと各内側面50bの境界部)と可動部材52の四隅(各側面52aと各側面52bの境界部)は、4本のテンションワイヤ54で接続されている。各テンションワイヤ54は可撓性を有し、所定の張力をもって枠部材50と可動部材52を接続している。
【0065】
4つのコイル51と4つの永久磁石53がそれぞれ対応(対向)する位置に配置されており、可動部材52を駆動するアクチュエータを構成している。永久磁石53の磁場中のコイル51に電流を流すとコイル51に力(ローレンツ力)が生じる。コイル51が枠部材50に固定されているのでコイル51は移動せず、永久磁石53を備える可動部材52が枠部材50の内側で中心軸Cに対して垂直な方向に平面的に移動する。一例として、コイル51Xに電流を流すと、可動部材52をY軸方向に移動させる力が加わり、コイル51Yに電流を流すと、可動部材52をX軸方向に移動させる力が加わる。各コイル51に流す電流を制御することによって、可動部材52を任意の向き及び大きさで移動させることができる。
【0066】
図10に示すように、本体部11に設けた可動部材52の天面52cと、挿入部12に設けた転動部材40の下半領域は、伝達部材である複数本のテンションワイヤ55で接続されている。具体的には、中心軸Cを挟んでX軸方向に位置を異ならせて2本のテンションワイヤ55が配置され、中心軸Cを挟んでY軸方向に位置を異ならせて2本のテンションワイヤ55が配置され、合計4本のテンションワイヤ55を備えている。4本のテンションワイヤ55は、中心軸Cに対して傾斜して延び、途中で交差している。各テンションワイヤ55は可撓性を有し、所定の張力をもって可動部材52と転動部材40を接続している。
【0067】
コイル51に電流を流して可動部材52を移動させると、可動部材52が移動する力が複数本のテンションワイヤ55によって転動部材40に伝達され、支持部材41に対して転動部材40が転動する。その結果、転動部材40に支持されている赤外線センサ13の向きが変化する。
【0068】
以上のように、枠部材50に対して平面的に可動部材52を移動させるタイプのアクチュエータを適用することが可能である。本体部11の内部は、挿入部12の内部に比べてスペースを確保しやすいため、このようなタイプのアクチュエータを配置するのに適している。そして、平面的に移動する可動部材52からテンションワイヤ55を用いて力を伝達することによって、転動部材40の転動を行わせることができる。
【0069】
図12に示す第4の実施形態の耳式体温計310は、第1の実施形態の耳式体温計10(
図4)で挿入部12に配置されていた転動部材20と支持部材25を、本体部11に配置変更している。つまり、赤外線センサ13と共に転動する転動部材20と、転動部材20を転動可能に支持する支持部材25と、転動部材20を転動させる力を発生するアクチュエータとを、本体部11の内部に設けている。第1の実施形態の耳式体温計10との相違点として、耳式体温計310では、転動部材20の上半領域20cから突出する棒状の支持突起20eが設けられ、支持突起20eの先端に赤外線センサ13が支持されている。
【0070】
支持突起20eは挿入部12の内部に挿入され、支持突起20eの先端部が挿入部12の先端部に位置する。従って、赤外線センサ13は、支持突起20eを介して挿入部12の先端部に配置されている。アクチュエータを構成するコイル26に電流を流して転動部材20を転動させると、支持突起20eの先端部に支持されている赤外線センサ13の向きが変化する。
【0071】
耳式体温計310では、センサ駆動構造のうち、赤外線センサ13を支持する支持突起20eだけが挿入部12の内部に配置されるので、挿入部12の内部構造がシンプルになり、挿入部12の小型化を図ることができる。
【0072】
図13に示す第5の実施形態の耳式体温計410は、転動部材20と支持部材25を本体部11に設け、且つ、挿入部12に挿入される支持突起20eの先端部に赤外線センサ13を支持したという点で、第4の実施形態の耳式体温計310(
図12)と共通する。第4の実施形態の耳式体温計310との相違点として、耳式体温計410では、転動部材20を転動させる力を発生するアクチュエータが、可動部材52を平面的に移動させるタイプになっている。このアクチュエータは、第3の実施形態の耳式体温計210(
図10、
図11)におけるアクチュエータと同じ構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0073】
第3の実施形態の耳式体温計210との相違点として、耳式体温計410におけるアクチュエータでは、枠部材50が支持部材25の一部として形成されている。また、アクチュエータを構成する可動部材52は、転動部材20に対して、伝達部材である1本のテンションワイヤ60で接続されている。テンションワイヤ60は、可動部材52の天面52cの中心付近と、転動部材20における下半領域20dの中心付近とを接続している。テンションワイヤ60は可撓性を有し、所定の張力をもって可動部材52とテンションワイヤ60を接続している。
【0074】
コイル51に電流を流して可動部材52を平面的に移動させると、可動部材52が移動する力がテンションワイヤ60によって転動部材20に伝達され、支持部材25に対して転動部材20が転動する。その結果、支持突起20eの先端部に支持されている赤外線センサ13の向きが変化する。
【0075】
耳式体温計410においては、転動部材20とアクチュエータがいずれも本体部11内に配置されていて互いの距離が近いため、1本のテンションワイヤ60で可動部材52から転動部材20へ安定して力を伝達することができる。
【0076】
以上に説明した通り、各実施形態の耳式体温計では、赤外線センサと共に転動する転動部材を備え、制御部によってアクチュエータを制御して転動部材を転動させることによって、鼓膜の温度を測定する適正な赤外線センサの向きを自動的に定めることが可能である。従って、耳式体温計の位置を手動で調整する手間がかからず、測定再現性を向上させることができる。また、耳への耳式体温計自体の装着位置を変えることなく、赤外線センサが常に鼓膜を向くような追尾動作が可能であるため、被測定者の運動中や睡眠中のように外部から耳式体温計へのアクセスを行いにくい状況下での有用性が高い。
【0077】
以上の各実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0078】
上記の各実施形態のアクチュエータは、X軸方向に間隔を空けて2組の永久磁石及びコイルを備え、Y軸方向に間隔を空けて2組の永久磁石及びコイルを備えているが、アクチュエータの構成はこれに限定されない。例えば、X軸方向への力を発生するための1組の永久磁石及びコイルと、Y軸方向への力を発生するための1組の永久磁石及びコイルとで、アクチュエータを構成してもよい。
【0079】
上記の各実施形態における転動部材20、転動部材40、第2転動部材43はいずれも全体が球体形状の部材であるが、転動部材や第2転動部材は、支持部材や第2支持部材によって転動可能に支持される領域(転動部材20の下半領域20d、転動部材40の下半領域、第2転動部材43の下半領域43dなど)以外の部分については、球体以外の形状であってもよい。例えば、転動部材20のうち上半領域20cに相当する部分を、球体形状(第1曲面20a)以外の形状で構成してもよい。
【0080】
上記の各実施形態では、磁性体である永久磁石と導電部材であるコイルとを対向させて配置したアクチュエータを備えている。このタイプのアクチュエータは、構造がシンプルで小型軽量に構成しやすく、且つ、動作の応答性に優れるという利点がある。特に、可動側の部材(転動部材20、第2転動部材43、可動部材52)に永久磁石を配置したムービングマグネットタイプのアクチュエータは、可動側の部材と共に移動する永久磁石に接続する配線を設ける必要がないため、配線構造がシンプルであるという利点や、可動側の部材が配線による抵抗を受けずに動作できるという利点がある。しかし、上記の各実施形態のアクチュエータとは異なる構成のアクチュエータを適用してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 :外耳道
3 :鼓膜
10 :耳式体温計(温度検出装置、耳装着装置)
11 :本体部
12 :挿入部
13 :赤外線センサ(温度センサ)
20 :転動部材
20a :第1曲面
20b :フランジ
20c :上半領域
20d :下半領域
20e :支持突起
22 :ベアリング
23 :永久磁石(アクチュエータ、磁性体)
25 :支持部材
25a :凹部
25b :第2曲面
26 :コイル(アクチュエータ、導電部材)
30 :制御部(コンピュータ)
31 :コイル駆動回路
32 :電源
40 :転動部材
40a :第1曲面
41 :支持部材
41a :凹部
41b :第2曲面
42 :ベアリング
43 :第2転動部材
43a :第3曲面
43b :フランジ
43c :上半領域
43d :下半領域
44 :第2支持部材
44a :凹部
44b :第4曲面
45 :テンションワイヤ(伝達部材)
46 :ベアリング
47 :永久磁石(アクチュエータ、磁性体)
48 :コイル(アクチュエータ、導電部材)
50 :枠部材
50a :内側面
50b :内側面
51 :コイル(アクチュエータ、導電部材)
52 :可動部材
52a :側面
52b :側面
52c :天面
52d :底面
53 :永久磁石(アクチュエータ、磁性体)
54 :テンションワイヤ
55 :テンションワイヤ(伝達部材)
60 :テンションワイヤ(伝達部材)
110 :耳式体温計(温度検出装置、耳装着装置)
210 :耳式体温計(温度検出装置、耳装着装置)
310 :耳式体温計(温度検出装置、耳装着装置)
410 :耳式体温計(温度検出装置、耳装着装置)
C :中心軸
H :最高温度領域