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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008723
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】動物用体温調節具
(51)【国際特許分類】
   A01K 13/00 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
A01K13/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110827
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】591109049
【氏名又は名称】岡本レース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 忠志
(57)【要約】
【課題】 夏場における冷却効果、冬場における保温効果の両方に優れると共に、冷却効果を長時間持続することができ、更に簡便で使い易くコスト面でも有利な動物用体温調節具を提供すること。
【解決手段】 吸水性を有する表地層と裏地層の間に、表地層と裏地層を繋ぐ連結糸またはパイル糸が存在する中間層を備えた多重構造の編地から構成する一方、前記表地層、裏地層及び中間層の材料にそれぞれ吸水性繊維を使用すると共に、前記表地層及び裏地層の材料に、前記中間層の連結糸またはパイル糸の材料よりも速乾性に優れた繊維を使用した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性を有する表地層と裏地層の間に、表地層と裏地層を繋ぐ連結糸またはパイル糸が存在する中間層を備えた多重構造の編織地から成り、前記表地層、裏地層及び中間層の材料にそれぞれ吸水性繊維が使用されると共に、前記表地層及び裏地層の材料に、前記中間層の連結糸またはパイル糸の材料よりも速乾性に優れた繊維が使用されている、動物用体温調節具。
【請求項2】
前記中間層の連結糸またはパイル糸が前記表地層および裏地層の表面に分散して露出している、請求項1記載の動物用体温調節具。
【請求項3】
前記表地層および裏地層の地編糸の材料にマイクロファイバーが使用され、前記中間層の連結糸またはパイル糸の材料にセルロース系繊維が使用されている、請求項1または2に記載の動物用体温調節具。
【請求項4】
前記中間層の連結糸またはパイル糸に、セルロース系繊維から成る糸およびマイクロファイバーから成る糸が併用されると共に、これらの糸に加熱処理が施されて前記マイクロファイバーが熱収縮している、請求項3記載の動物用体温調節具。
【請求項5】
前記多重構造の編地が動物の首に巻いて装着できるマフラー状に形成されている、請求項1~4の何れか一つに記載の動物用体温調節具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜等の動物に装着して動物の体温調節を補助するための動物用体温調節具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、近年においては全世界的に温暖化が進行していることから、夏場の暑さや高温多湿、春・秋における激しい気温変化、冬場の寒さによって家畜が熱射病等で体調を崩し易くなっている。特に仔牛は、体温調節機構が未熟で高温・低温に耐えられる体力も弱く、成牛よりも重度の症状を示すことがある。よって、畜産分野においては、家畜の健康を保つために家畜の体温調節を補助する対策が講じられている。
【0003】
上記暑熱対策としては、従来、扇風機による送風などが行われていたが、送風による対策は家畜に風が当たるように風向きを調整する必要があるだけでなく、扇風機の使用によって電気代が嵩む問題がある。また家畜の首や背中に装着するシートに水を供給して熱交換や噴霧によって家畜の体温を下げる冷却具も開発されているが(特許文献1~2参照)、
構造が複雑で水道費も嵩むためコスト面に課題がある。
【0004】
そこで、従来においては、吸水性ポリマーを利用した気化熱式の冷却シートも開発されており(特許文献3~4参照)、この種の冷却シートは水を含ませて家畜の首や背中に装着するだけでよいため、低コストで簡便に使用できるメリットがある。しかし、吸水性ポリマーを利用した冷却シートは、家畜と接触する冷却シートの内側面が温まると熱交換が止まってしまい、短時間で冷却効果が低下してしまう問題がある。
【0005】
一方、従来においては、ポリエステル等のマイクロファイバーを利用した気化熱式の冷却シートも公知となっている(例えば、特許文献5)。しかしながら、この種の冷却シートは速乾性に優れているものの、短時間で水分が蒸発してしまうため、冷却効果を長時間持続することが難しい。またこの冷却シートを、水を含ませない乾燥した状態で冬場に保温具として使用した際に充分な断熱効果も得ることも難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭48-27792号公報
【特許文献2】特開2021-16340号公報
【特許文献3】特開平1-223961号公報
【特許文献4】WO01/008473号公報
【特許文献5】特許第6833160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題を解決することを課題としており、要約すると夏場における冷却効果、冬場における保温効果の両方に優れると共に、冷却効果を長時間持続することができ、更に簡便で使い易くコスト面でも有利な動物用体温調節具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決する手段として、吸水性を有する表地層と裏地層の間に、表地層と裏地層を繋ぐ連結糸またはパイル糸が存在する中間層を備えた多重構造の編地から構成する一方、前記表地層、裏地層及び中間層の材料にそれぞれ吸水性繊維を使用すると共に、前記表地層及び裏地層の材料に、前記中間層の連結糸またはパイル糸の材料よりも速乾性に優れた繊維を使用した(効果については後述する)。
【0009】
上記中間層の連結糸またはパイル糸を前記表地層および裏地層の表面に分散して露出させることで、前記連結糸またはパイル糸に水が吸収され易くなると共に、表地層または裏地層の露出部から連結糸のパイル糸の水分を蒸発させ易くなる。
【0010】
また本発明では、上記表地層および裏地層の地編糸の材料にマイクロファイバーを使用し、上記中間層の連結糸またはパイル糸の材料にセルロース系繊維を使用することで、表地層および裏地層の速乾性を高めると共に、中間層において水分を長時間保持し易くすることができる。
【0011】
また本発明では、上記中間層の連結糸またはパイル糸に、セルロース系繊維から成る糸およびマイクロファイバーから成る糸を併用すると共に、これらの糸に加熱加工を施して前記マイクロファイバーを熱収縮させることで、マイクロファイバーの嵩高性によって中間層の潰れを防止して空気の断熱層を保持すると共に、中間層における水分保持量を高めることができる。
【0012】
また本発明では、上記多重構造の編地をマフラー状に形成することで動物(家畜をはじめとする牛や馬等)の首に巻いて装着するだけで動物用体温調節具として簡便に使用することができる。なお上記マフラーは、両端に面ファスナー等の止着手段を設けて脱着が可能にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の動物用体温調節具は、夏場の気温が高い時期において、生地に水分を含ませ使用することで気化熱による冷却効果を発揮させることができる。この際、水分は速乾性に優れた表地層及び裏地層で先に気化していくが、中間層には保水力のある連結糸またはパイル糸が存在するため、この中間層の糸で水分を保持し、表地層及び裏地層に順次水分を供給することで冷却効果を長時間維持することができる。
【0014】
一方、本発明の動物用体温調節具は、冬場の気温が低い時期において、水分を含ませない乾燥した状態で家畜・動物の首や胴体に装着することで保温効果を発揮させることができる。この際、生地の中間層には連結糸やパイル糸が存在することで空気の断熱層が形成されるため、低温の外気による影響が表地層から裏地層まで達し難く、家畜・動物の肌が冷やされ難くなるため、優れた保温効果を得ることができる。
【0015】
また本発明の動物用体温調節具は、立体的な編織地から形成されるため、製造コストが低廉に抑えられるだけでなく、随時水分の供給を行う必要もないため、電気代や水道費などのランニングコストが嵩む心配もない。加えて、本発明の動物用体温調節具の使用方法に関しても、水分を含ませて或いはそのままの乾燥した状態で家畜・動物の首や胴体に巻き付けて装着するだけでよいため、誰でも簡単に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明における第一実施形態の動物用体温保持具を示す概略図である。
図2】本発明における第一実施形態のパイル糸の加熱加工前後の状態を示す説明図である。
図3】本発明における第一実施形態の動物用体温保持具の冷却具としての効果を説明するための説明図である。
図4】本発明における第一実施形態の動物用体温保持具の保温具としての効果を説明するための説明図である。
図5】本発明における第二実施形態の動物用体温保持具を示す概略図である。
図6】本発明における第二実施形態の連結糸の加熱加工前後の状態を示す説明図である。
図7】本発明における第一実施形態及び第二実施形態の動物用体温調節具の使用状態を示す写真である。
図8】本発明における第一実施形態の動物用体温調節具の冷却効果の実証試験のデータである。
図9】本発明における第一実施形態の動物用体温調節具の保温効果の実証試験のデータである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
『第一実施形態』
本発明の第一実施形態を図1図4に基づいて説明する。なお図中、符号1で指示するものは、表地層であり、符号1’で指示するものは、裏地層である。また符号2で指示するものは、中間層であり、符号Eで指示するものは、表地層または裏地層における中間層の糸の露出部である。
【0018】
「動物用体温調節具の構成」
[1]基本構成について
本実施形態では、図1に示すように、吸水性を有する編地から成る表地層1および裏地層1’の間にパイル糸21・21’によって中間層2を形成して多重構造の編地から成る動物用体温調節具を構成している。具体的には、片面にパイル組織を備えた表地層1および裏地層1’を、パイル糸21・21’が内側を向いた状態で重ね、表地層1および裏地層1’の周縁部を縫着してマフラー状の動物用体温調節具を構成している。
【0019】
また上記表地層1、裏地層1’及び中間層2には、それぞれ吸水性繊維を使用すると共に、上記表地層1及び裏地層1’の地編糸の材料に、前記中間層2のパイル糸1の主材料よりも速乾性に優れた繊維を使用している。これにより夏は水を含ませた湿潤状態で動物用冷却具として使用でき、また冬は水を含ませない乾燥状態で動物用保温具として使用することが可能となる(詳しくは後述する)。
【0020】
[2]表地層・裏地層について
[2-1]地編糸の材料
次に各構成要素について説明する。上記表地層1および裏地層1’については、本実施形態では、地編糸の主材料に合成樹脂繊維(ポリエステル繊維)のマイクロファイバーを使用している。マイクロファイバーとしては、ポリエステル繊維以外にもナイロン繊維等も使用できる。このマイクロファイバーの特性により表地層1および裏地層1’には吸湿・吸水性および速乾性を付与できる。またマイクロファイバーは、肌に優しいだけでなく速乾性に優れるためベタ付きも抑えられる。
【0021】
なお地編糸の太さや種類は、適宜変更することができ、表地層1と裏地層1’に異なる材料を使用することもできる。また上記合成樹脂繊維は親油性であるため、親水性のセルロース系繊維に水分が移動し易くなる効果も有する。本明細書中の「マイクロファイバー」とは、化学的に組成された8マイクロメートル以下の極細の繊維であり、異形断面や多角形断面の形状を成すものをいう。なお上記地編糸に複数種類の繊維を使用する場合には、使用割合の一番大きい糸の材料として速乾性に優れた繊維を使用するのが好ましい。
【0022】
[2-2]編組織および編密度、厚み
上記表地層1および裏地層1’の編組織としては、本実施形態ではラッセル編を採用しているが、トリコット編や平編、リブ編、パール編などの他の編組織を採用することもできる。また上記表地層1および裏地層1’の編密度は、本実施形態ではコース方向およびウェール方向ともに空気による断熱層を形成できる高密度な編地としており、厚みは5~30mmの範囲で形成している。なお表地層1と裏地層1’の編組織や編密度、厚みは求める機能に応じて適宜変更することができ、表地層1と裏地層1’に織組織を採用することもできる。
【0023】
[2-3]表地層及び裏地層の一体化
本実施形態では、上記表地層1と裏地層1’の一体化を、一枚物の生地を折り畳んで重ね合わせ、3辺の端縁部を縫着して一体化しているが、折り畳みせずに別体の生地を重ね合わせて全周の端縁部を縫着して構成することもできる。また全周の端縁部を閉じた状態で一体化できる方法であれば、ヒートシールや接着等の方法も採用できる。また袋編み等により表地層1と裏地層1’を一体的に形成することもできる。
【0024】
[3]中間層について
[3-1]パイル糸の材料
上記中間層2のパイル糸21の主材料として、本実施形態ではセルロース系繊維を使用している。具体的には、図2(a)に示すようにセルロース系繊維21aの糸とマイクロファイバー21bの糸を併用した複合糸を使用している。またセルロース系繊維としては、吸湿発熱作用を有するキュプラ(旭化成株式会社「ベンベルグ(登録商標)」)を使用しているが、他の再生セルロース繊維であるレーヨンや、天然セルロース繊維であるコットンや麻などを使用することもできる。このセルロース系繊維の特性により、中間層2のパイル糸21に吸水性および水分保持力を付与できる。
【0025】
また上記パイル糸21のマイクロファイバー22bには、表地層1及び裏地層1’の地編糸と同じ素材を使用しているが、異なる材料を使用することもできる。またパイル糸21にセルロース系繊維のみを使用することもできる。ちなみに上記表地層1及び裏地層1’に使用する繊維と、中間層2に使用する繊維の速乾性の比較については、各層の主材料に使用する繊維の速乾性、或いは各層の繊維全体の速乾性で比較する。
【0026】
[3-2]マイクロファイバーの熱収縮
本実施形態では、上記中間層2のパイル糸21に染色加工を施し、この際の加熱処理によりマイクロファイバー21bを図2(b)に示すように熱収縮させている。これによりマイクロファイバー21bの糸が表地層1や裏地層1’の内面側に集まって固まりの状態となるため、その嵩高性によって中間層2に空気の断熱層を形成・維持できる。またセルロース系繊維21aは、熱収縮せずにマイクロファイバー21bに絡んだ状態となるため、マイクロファイバー21bからセルロース系繊維21aに水分が移動し易くなる。
【0027】
[4]表地層および裏地層の露出部について
本実施形態では、図1に示すように、中間層2のパイル糸21を表地層1および裏地層1’の表面に分散して露出させて多数の露出部Eを形成している。これにより動物用体温調節具を夏場に冷却具として使用する際に露出部Eから中間層2のパイル糸21が保持する水分を外部に蒸発させ易くなる。この露出部Eの面積や密度は、糸や編組織の種類によって変わってくるが、表地層1や裏地層1’の表面に均等に分散させることが好ましい。なお露出部Eは、表地層1の片面のみに形成することもできる。
【0028】
[5]動物用体温調節具の機能について
[5-1]冷却具
上記動物用体温調節具を夏場に冷却具として使用する場合には、マフラー状の動物用体温調節具に水を含ませて動物・家畜(牛や馬等)の首部分に巻き付けて使用する。この際、図3に示すように表地層1の露出部Eから常時、水分が外部に蒸発することで中間層2の温度を気化熱により下げることができる。更に裏地層1’の水分を蒸発させることで動物の体温を気化熱によって下げることができる。また中間層2には、水分の保持力に優れたセルロース系繊維を使用しているため、中間層2で保持している水分を裏地層1’に継続的に供給して冷却効果を長時間持続できる。
【0029】
[5-2]保温具
上記動物用体温調節具を冬場に保温具として使用する場合には、マフラー状の動物用体温調節具に水を含ませずに動物(牛や馬等)の首部分に巻き付けて使用する。この際、図4に示すように中間層2によって空気の断熱層を形成することができるため、表地層1で冷気を遮断するだけでなく、外気による裏地層1’の温度低下並びに動物の体温低下を抑制できる。また動物の汗は裏地層1’で吸収・蒸発させて中間層2のパイル糸21を吸湿発熱させることができるため、中間層2の温度低下も抑制できる。更にポリエステル繊維は熱伝導率が低いため、裏地層1’の熱が逃げ難く動物が暖かさを感じ易くなる。
【0030】
[6]動物用体温調節具の形態について
本実施形態では、上記多重構造の編地から成る動物用体温調節具を、50~65cmの牛の首に巻き付けて使用できる幅13cm×長さ78cmのマフラー状の形態としているが、動物の腹部に巻き付ける腹巻き状の形態や、動物の脚部に巻き付けるサポーター状の形態を採用することもできる。また動物用体温調節具の両端を脱着自在に接続する手段としては、本実施形態では面ファスナーを使用しているが、面ファスナーの代わりにスナップボタンやフック、線ファスナーなどを採用することもできる。
【0031】
『第二実施形態』
[1]基本構成について
本発明の第二実施形態を図5図7に基づいて説明する。本実施形態では、図5に示すように、吸水性を有する編地から成る表地層1および裏地層1’の間に連結糸22により中間層2を形成して多重構造の編地から成る動物用体温調節具を構成している。具体的には、表地層1と裏地層1’を連結糸22によって繋ぎ、生地の周縁部を縫着してマフラー状の動物用体温調節具を構成している。
【0032】
[2]表地層・裏地層・中間層について
本実施形態の上記表地層1及び裏地層1’の地編糸、並びに中間層2の連結糸22の材料については、第一実施形態と同様である。また本実施形態では、ダブルラッセル生地により多重構造の編地を構成している。本実施形態では、上記表地層1と裏地層1’の一体化を周縁部の縫着により行っているが、ヒートシールや接着等によって周囲を閉じた状態で一体化することもできる。
【0033】
[3]連結糸の熱収縮について
また本実施形態では、上記中間層2の連結糸22のマイクロファイバー22bを染色加工時の加熱処理により図2(a)(b)に示すように熱収縮させている。これによりマイクロファイバー22bの糸が集まって固まりの状態となるため、その嵩高性によって中間層2に空気層を形成・維持することができる。またセルロース系繊維22aは、熱収縮せずにマイクロファイバー22bに絡んだ状態となるため、マイクロファイバー22bからセルロース系繊維22aに水分を移動させ易くなる。
【0034】
[4]動物用体温調節具の装着について
参考までに本実施形態(第一実施形態も同様)の動物用体温調節具を動物(仔牛)に装着した状態を図7に示す。図7に示すように牛の首にマフラー状の動物用体温調節具を巻き、両端の面ファスナーで牛の首回りにマフラーがフィットするように長さを調節して装着することで冷却・保温効果を得ることができる。また図7に示すように動物の移動を阻害するホース等もないため、動物がストレスを感じ難い。
【実施例0035】
[冷却効果の実証試験]
本試験では、上記第一実施形態のマフラー状の動物用体温調節具を水温約25℃の水に浸漬した後、軽く絞り、試験室内のハンバ-に吊した状態で表面温度の変化を測定した。温度測定は室温30±2℃、湿度50±5%RHの条件下で、サーモグラフィー(日本アビオニクスス(株)TVS-200EX)を用いて行った。その結果、図8(a)(b)に示すように試験直後から約10時間、温度をほぼ一定に維持することができ、このことから冷却具として使用した場合に長時間の冷却効果を得られることが確認できた。
【0036】
[保温効果の実証試験]
本試験では、2頭の子牛A・Bにそれぞれ上記第一実施形態のマフラー状の動物用体温調節具とタオル地のマフラーを装着し、1日ごとに子牛とマフラーの組み合わせを交換しながら、マフラーの内側に取り付けた温度計により子牛の体温変化を測定した。その結果、図9に示すように外気温が氷点下になったとき、タオル地のマフラーは子牛が寒冷ストレスを受けるとされる9℃以下まで動物の体温が下がったのに対し、上記第一実施形態のマフラー状の動物用体温調節具は動物の体温が11℃を下回ることがなかった。このことから保温具として使用した場合の効果も優れていることが確認できた。
【符号の説明】
【0037】
1 表地層
1’裏地層
2 中間層
21 パイル糸
21a セルロース系繊維
21b マイクロファイバー
22 連結糸
22a セルロース系繊維
22b マイクロファイバー
E 露出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9