(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087230
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】デッキプレート、デッキプレートの係合検査方法、および、デッキプレートの係合方法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/40 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
E04B5/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201925
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】小橋 資子
(57)【要約】
【課題】デッキプレート同士が相互に十分かみ合っているか否かを外観上認識可能な構造のデッキプレート、デッキプレートの係合検査方法、および、デッキプレートの係合方法を提供する。
【解決手段】所定角度の傾斜板部を介して互いに連続する複数の下板部および上板部が連なって形成された波形状のデッキプレートであって、下板部における一方の端部に係合部分が形成されたオス型リップと、下板部における他方の端部に係合部分が形成されたメス型リップと、メス型リップとオス型リップとが係止された状態において、メス型リップの係合部分に形成された、オス型リップを視認可能な視認部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度の傾斜板部を介して互いに連続する複数の下板部および上板部が連なって形成された波形状のデッキプレートであって、
前記下板部における一方の端部に係合部分が形成されたオス型リップと、
前記下板部における他方の端部に係合部分が形成されたメス型リップと、
前記メス型リップと前記オス型リップとが係合された状態において、前記メス型リップの係合部分に形成された、前記オス型リップを視認可能な視認部と
を備えるデッキプレート。
【請求項2】
前記視認部は、前記メス型リップの係合部分に形成された貫通孔である。
請求項1に記載のデッキプレート。
【請求項3】
前記視認部は、前記メス型リップの係合部分の端部に形成された切断部である
請求項1に記載のデッキプレート。
【請求項4】
前記オス型リップと前記メス型リップとが空間的に重なった場合、前記視認部と前記オス型リップの係合部分とが対向して配置される
請求項2または3に記載のデッキプレート。
【請求項5】
前記オス型リップの係合部分には、長手方向に沿って検査用着色部が設けられている
請求項2に記載のデッキプレート。
【請求項6】
前記オス型リップの係合部分には、前記メス型リップの貫通孔に挿通可能な凸状部が設けられている
請求項2に記載のデッキプレート。
【請求項7】
所定角度の傾斜板部を介して互いに連続する複数の下板部および上板部が連なって形成された波形状のデッキプレート同士の係合状態を検査するデッキプレートの係合検査方法であって、
前記下板部における一方の端部に係合部分が形成されたオス型リップと、前記下板部における他方の端部に係合部分が形成されたメス型リップとを空間的に重なるようにかみ合わせ、
前記オス型リップと前記メス型リップとが空間的に重なっている係合状態にあるか否かを、前記メス型リップの係合部分に形成された視認部を介して確認する
デッキプレートの係合検査方法。
【請求項8】
所定角度の傾斜板部を介して互いに連続する複数の下板部および上板部が連なって形成された波形状のデッキプレート同士の係合状態を検査するデッキプレートの係合検査方法であって、
前記下板部における一方の端部に係合部分が形成されたオス型リップと、前記下板部における他方の端部に係合部分が形成されたメス型リップとを空間的に重なるようにかみ合わせ、
前記オス型リップと前記メス型リップとが空間的に重なっている係合状態にあるか否かを、前記メス型リップの係合部分に形成された貫通孔に予め差し込まれた棒状部材の屈曲具合に基づいて確認する
デッキプレートの係合検査方法。
【請求項9】
所定角度の傾斜板部を介して互いに連続する複数の下板部および上板部が連なって形成された波形状のデッキプレートであって、
前記下板部における一方の端部に係合部分が形成されると共に当該係合部分に貫通孔が形成されたオス型リップと、
前記下板部における他方の端部に係合部分が形成されると共に当該係合部分に貫通孔が形成されたメス型リップと、
前記メス型リップと前記オス型リップとが係合された状態において、前記メス型リップの貫通孔および前記オス型リップの貫通孔に差し込まれた棒状部材と
を備えるデッキプレート。
【請求項10】
所定角度の傾斜板部を介して互いに連続する複数の下板部および上板部が連なって形成された波形状のデッキプレート同士を互いに係合させるデッキプレートの係合方法であって、
前記下板部における一方の端部に係合部分が形成されたオス型リップと、前記下板部における他方の端部に係合部分が形成されたメス型リップとを空間的に重なるようにかみ合わせ、
前記メス型リップに設けられた貫通孔と、前記オス型リップの係合部分とが対向していない場合に、前記貫通孔に棒状の治具を差し込み、
前記治具を介して前記メス型リップを折り曲げて前記オス型リップと係合させる
デッキプレートの係合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキプレート、デッキプレートの係合検査方法、および、デッキプレートの係合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の床や天井等を構成するコンクリート製の合成スラブを施工する建設現場において、コンクリートを打設するまでの型枠、および、デッキ合成スラブの構造材料として合成スラブ用デッキプレート(以下、これを単に「デッキプレート」と呼ぶ。)が使用されている。このデッキプレートは、山頂部、谷底部及びこれらを繋ぐ傾斜部を有し、長手方向に対して交差した断面が波形状に形成されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
このようなデッキプレートにおいては、施工現場において横に敷き並べて用いられるが、隣接するデッキプレート同士のズレ、離れ等を防止する必要がある。そのために、一方のデッキプレートの一端部と他方のデッキプレートの他端部との嵌合、かしめ、溶接、または、ビス止め等により、デッキプレート同士を相互に連結する必要がある。
【0004】
しかしながら、デッキプレートの寸法誤差や敷き込み状況等によって連結が不十分な場合、デッキ合成スラブを支持する梁へのデッキプレート掛かり過不足、コンクリート漏れ、たわみ、ひび割れなどの原因となるおそれがある。
【0005】
デッキプレート同士を連結する嵌合方式では、一方のデッキプレートの一端部に設けられたオスリップと、他方のデッキプレートの他端部に設けられたメスリップとをかみ合わせて嵌合することによってデッキプレート同士を連結することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、嵌合方式においては、一方のデッキプレートの一端部に設けられたオスリップと、他方のデッキプレートの他端部に設けられたメスリップとが十分にかみ合って係合しているか否かを外見から判断することは困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、デッキプレート同士が相互に十分係合しているか否かを外観上認識可能な構造のデッキプレート、デッキプレートの係合検査方法、および、デッキプレートの係合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため本発明においては、所定角度の傾斜板部を介して互いに連続する複数の下板部および上板部が連なって形成された波形状のデッキプレートであって、前記下板部における一方の端部に係合部分が形成されたオス型リップと、前記下板部における他方の端部に係合部分が形成されたメス型リップと、前記メス型リップと前記オス型リップとが係合された状態において、前記メス型リップの係合部分に形成された、前記オス型リップを視認可能な視認部とを備える。
【0010】
本発明のデッキプレートにおいて、前記視認部は、前記メス型リップの係合部分に形成された貫通孔であることが好ましい。
【0011】
本発明のデッキプレートにおいて、前記視認部は、前記メス型リップの係合部分の端部に形成された切断部であることが好ましい。
【0012】
本発明のデッキプレートにおいて、前記オス型リップと前記メス型リップとが空間的に重なった場合、前記視認部と前記オス型リップの係合部分とが対向して配置されることが好ましい。
【0013】
本発明のデッキプレートにおいて、前記オス型リップの係合部分には、長手方向に沿って検査用着色部が設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明のデッキプレートにおいて、前記オス型リップの係合部分には、前記メス型リップの貫通孔に挿通可能な凸状部が設けられていることが好ましい。
【0015】
また、本発明においては、所定角度の傾斜板部を介して互いに連続する複数の下板部および上板部が連なって形成された波形状のデッキプレート同士の係合状態を検査するデッキプレートの係合検査方法であって、前記下板部における一方の端部に係合部分が形成されたオス型リップと、前記下板部における他方の端部に係合部分が形成されたメス型リップとを空間的に重なるようにかみ合わせ、前記オス型リップと前記メス型リップとが空間的に重なっている係合状態にあるか否かを、前記メス型リップの係合部分に形成された視認部を介して確認する。
【0016】
さらに、本発明においては、所定角度の傾斜板部を介して互いに連続する複数の下板部および上板部が連なって形成された波形状のデッキプレート同士の係合状態を検査するデッキプレートの係合検査方法であって、前記下板部における一方の端部に係合部分が形成されたオス型リップと、前記下板部における他方の端部に係合部分が形成されたメス型リップとを空間的に重なるようにかみ合わせ、前記オス型リップと前記メス型リップとが空間的に重なっている係合状態にあるか否かを、前記メス型リップの係合部分に形成された貫通孔に予め差し込まれた棒状部材の屈曲具合に基づいて確認する。
【0017】
さらに、本発明においては、所定角度の傾斜板部を介して互いに連続する複数の下板部および上板部が連なって形成された波形状のデッキプレートであって、前記下板部における一方の端部に係合部分が形成されると共に当該係合部分に貫通孔が形成されたオス型リップと、前記下板部における他方の端部に係合部分が形成されると共に当該係合部分に貫通孔が形成されたメス型リップと、前記メス型リップと前記オス型リップとが係合された状態において、前記メス型リップの貫通孔および前記オス型リップの貫通孔に差し込まれた棒状部材とを備える。
【0018】
さらに、本発明において、所定角度の傾斜板部を介して互いに連続する複数の下板部および上板部が連なって形成された波形状のデッキプレート同士を互いに係合させるデッキプレートの係合方法であって、前記下板部における一方の端部に係合部分が形成されたオス型リップと、前記下板部における他方の端部に係合部分が形成されたメス型リップとを空間的に重なるようにかみ合わせ、前記メス型リップに設けられた貫通孔と、前記オス型リップの係合部分とが対向していない場合に、前記貫通孔に棒状の治具を差し込み、前記治具を介して前記メス型リップを折り曲げて前記オス型リップと係合させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、デッキプレート同士が相互に十分係合しているか否かを外観上認識可能な構造のデッキプレート、デッキプレートの係合検査方法、および、デッキプレートの係合方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施の形態におけるデッキプレートの構成を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施の形態におけるデッキプレートの構成を長手方向から見たときの正面図である。
【
図3】第1の実施の形態におけるデッキプレートのオスリップおよびメスリップの構造を示す部分拡大図である。
【
図4】第1の実施の形態におけるデッキプレートのオスリップおよびメスリップがかみ合った正常な係合状態、および、かみ合わせ不良の非係合状態を示す部分拡大図である。
【
図5】第1の実施の形態におけるオスリップの構成および係合検査方法の説明に供する斜視図である。
【
図6】第1の実施の形態におけるデッキプレートを用いた係合方法の説明に供する長手方向から見た正面図である。
【
図7】第1の実施の形態におけるデッキプレートの係合状態を検査する方法の説明に供する長手方向から見た正面図である。
【
図8】第2の実施の形態におけるデッキプレートの係合状態を示す断面図である。
【
図9】第3の実施の形態におけるデッキプレートのオスリップに凸部が設けられた場合のオスリップとメスリップとがかみ合った正常な状態を示す部分拡大図である。
【
図10】他の実施の形態におけるデッキプレートの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一例であり、本発明の範囲において、種々の実施の形態をとりうる。
【0022】
<第1の実施の形態>
図1乃至
図7を用いて本実施の形態におけるデッキプレートについて説明する。
図1は、第1の実施の形態におけるデッキプレートの構成を示す斜視図である。
図2は、第1の実施の形態におけるデッキプレートの構成を長手方向から見たときの正面図である。
図3は、第1の実施の形態におけるデッキプレートのオスリップおよびメスリップの構造を示す部分拡大図である。
図4は、第1の実施の形態におけるデッキプレートのオスリップおよびメスリップがかみ合った正常な係合状態、および、かみ合わせ不良の非係合状態を示す部分拡大図である。
図5は、第1の実施の形態におけるオスリップの構成および係合検査方法の説明に供する斜視図である。
図6は、第1の実施の形態におけるデッキプレートを用いた係合方法の説明に供する長手方向から見た正面図である。
図7は、第1の実施の形態におけるデッキプレートの係合状態を検査する方法の説明に供する長手方向から見た正面図である。
【0023】
<デッキプレート>
図1および
図2に示すように、デッキプレート1は鋼製であり、建築物の床構造体(または屋上構造体)を構築する際の合成スラブに使用されるものである。
【0024】
なお、
図1において、デッキプレート1の長手方向を長さ方向Lとし、デッキプレート1の短手方向を幅方向Wとし、デッキプレート1の高さ方向を上下方向Hとして、以下説明する。ただし、これらの方向は説明の便宜上用いているに過ぎず、デッキプレート1の実際の使用時における方向とは必ずしも一致しない。
【0025】
デッキプレート1は、亜鉛メッキ等のメッキ処理が施された薄板状の鋼板により形成された波型鋼板である。ただし、これに限らず、デッキプレート1は、表面処理を施していない黒かわ材等により形成されていてもよい。
【0026】
デッキプレート1は、例えば、平板状の鋼板をロール成形機によってロール成形することにより製造される。デッキプレート1は、ロール成形機によって複数の箇所で曲げ加工が施される。ここで、デッキプレート1の板厚は、0.5~6.0mmであることが好ましく、この場合のデッキプレート1の板厚は、例えば、1.0mmである。
【0027】
デッキプレート1は、下板部11と、傾斜板部12と、上板部13と、を有する。下板部11と上板部13は、デッキプレート1の幅方向Wに沿って交互に形成されている。
【0028】
デッキプレート1の上板部13は、下板部11よりもデッキプレート1の厚さ方向Hの上方に形成されており、下板部11と上板部13との間隔がデッキプレート1の高さとなっている。デッキプレート1において、互いに隣接する下板部11の端部と上板部13の端部は、傾斜板部12によって連結されている。
【0029】
デッキプレート1における上板部13の表面には、上下方向Hの下方に向かって凹んだ溝13mが形成されている。溝13mは、上板部13の幅方向中央近傍において、デッキプレート1の長さ方向Lに沿って延在するように所定の深さに形成されている。
【0030】
デッキプレート1における下板部11と傾斜板部12とが交差する連結部分には、V字状またはU字状に湾曲された湾曲部15が形成されている。湾曲部15は、下板部11と傾斜板部12とが交差する連結部分において、デッキプレート1の長さ方向Lに沿って延在するように形成されている。
【0031】
デッキプレート1における下板部11の幅W方向における一方(
図1左側)の端部(以下、これを「一端」と言う。)には、その端部がL字状または略L字状に折り曲げられたオス型リップ111が形成されている。
【0032】
図3に示すように、オス型リップ111は、下板部11の端部が折り曲げられることにより形成されており、下板部11から幅方向Wの一端側(図中左側)に向かって平坦に延びる平坦部分111a、平坦部分111aの端部から幅方向Wの一端側(図中左側)に向かって斜め上方へ延びる傾斜部分111b、傾斜部分111bの上方端部から幅方向Wの他端側(図中右側)に向かって湾曲した湾曲部分111w、湾曲部分111wの端部から他端側(図中右側)に向かって僅かに下方へ延びる平坦な係合部分111cを有している。
【0033】
オス型リップ111の傾斜部分111bは、係合部分111cと後述するメス型リップ112の係合部分112cとが空間的に重なってかみ合わせることが可能な高さに形成されている。また、オス型リップ111の係合部分111cは、メス型リップ112の係合部分112cとかみ合わせるのに十分な幅方向Wの長さを有している。
【0034】
ここで、オス型リップ111の係合部分111cと、メス型リップ112の係合部分112cとが空間的に重なってかみ合うという意味は、両者が互いに空間的に重なった(オーバーラップした)状態にあることを意味し、本実施の形態においては係合とも言う。
【0035】
なお、オス型リップ111の係合部分111cは、湾曲部分111wの端部から他端側(図中右側)へ向かって僅かに下方へ延びているが、メス型リップ112の係合部分112cと空間的に重なるようにかみ合わせることが可能であれば、平坦部分111aと平行に延びていてもよい。
【0036】
ここで、
図4(A)に示すように、オス型リップ111の係合部分111cと、メス型リップ112の係合部分112cとが空間的に重なったかみ合わせ状態をオス型リップ111とメス型リップ112とが正常にかみ合った状態(以下、これを「かみ合わせ正常の状態」という。)とする。
【0037】
この「かみ合わせ正常の状態」とは、オス型リップ111の係合部分111cと、メス型リップ112の係合部分112cとが空間的に重なったかみ合わせ状態に限らず、オス型リップ111の係合部分111cおよびメス型リップ112の係合部分112cの曲がりが大きく、両者が直接接触して重なったかみ合わせ状態も含む概念である。
【0038】
また、この「かみ合わせ正常の状態」とは、オス型リップ111の係合部分111cと、メス型リップ112の係合部分112cとが空間的に完全に重なっているかみ合わせ状態に限らない。例えば、オス型リップ111の係合部分111cと、メス型リップ112の係合部分112cとが部分的にのみ重なっている場合、すなわち、オス型リップ111の係合部分111cの半分以上と、メス型リップ112の係合部分112cの半分以上とが空間的に重なった場合であれば「かみ合わせ正常の状態」とする。
【0039】
これに対して、
図4(B)に示すように、オス型リップ111の係合部分111cと、メス型リップ112の係合部分112cとが空間的に重なっていない状態をオス型リップ111とメス型リップ112とがかみ合っていない不良な状態(以下、これを「かみ合わせ不良の状態」という。)とする。
【0040】
この「かみ合わせ不良の状態」とは、オス型リップ111の係合部分111cと、メス型リップ112の係合部分112cとが空間的に重なっていない状態に限らず、部分的にのみ重なっている場合、すなわち、オス型リップ111の係合部分111cの半分未満と、メス型リップ112の係合部分112cの半分未満とが空間的に重なった場合であっても、「かみ合わせ不良の状態」とする。
【0041】
デッキプレート1における下板部11の幅W方向における他方の端部(以下、これを「他端」と言う。)には、その先端がU字状または略U字状に折り曲げられたメス型リップ112が形成されている。
【0042】
メス型リップ112は、下板部11の他端が折り曲げられることにより形成されており、下板部11から幅方向Wの外側(
図3中右側)に向かって斜め上方へ延びる傾斜部分112a、傾斜部分112aの上方端部から幅方向Wの他端側(図中右側)へ向かって水平に延びる平坦部分112b、平坦部分112bの幅方向Wの他端側(図中右側)の端部からU字状に湾曲した湾曲部分112w、湾曲部分112wの端部から傾斜部分112aへ向かって僅かに下方へ延びる平坦な係合部分112cを有している。
【0043】
メス型リップ112の平坦部分112bにおける幅方向Wの距離は、オス型リップ111の係合部分111cよりも長く形成されている。また、メス型リップ112の係合部分112cにおける幅方向Wの距離は、オス型リップ111の係合部分111cと同じ長さに形成されている。ただし、これに限るものではなく、係合部分112cが係合部分111cよりも長く、または、短く形成されていてもよい。
【0044】
さらに、メス型リップ112の平坦部分112bには、「かみ合わせ正常の状態」において、メス型リップ112の係合部分112cと対向する位置に上下方向(矢印H方向)に貫通した平面視円形状の貫通孔112hが設けられている。貫通孔112hは、円形状に形成されているが、これに限るものではなく、
図4(A)に示したように、オス型リップ111とメス型リップ112とが「かみ合わせ正常の状態」にある場合、貫通孔112hからオス型リップ111の係合部分111cを目視可能であれば、楕円形状、矩形状等、その他種々の形状であっても構わない。さらに、貫通孔112hは、係合部分111cが僅かに見える程度の直径であってもよく、長手方向(長さ方向L)に沿って所定の間隔毎に所定数設けられていてもよい。
【0045】
なお、
図4(B)に示したように、貫通孔112hは、オス型リップ111とメス型リップ112とが「かみ合わせ不良の状態」にある場合、メス型リップ112の貫通孔112hとオス型リップ111の係合部分111cとが対向するように配置されることがない。
【0046】
しかしながら、
図4(A)に示したように、貫通孔112hは、オス型リップ111とメス型リップ112とが「かみ合わせ正常の状態」にある場合、メス型リップ112の貫通孔112hに対して、オス型リップ111の係合部分111cの半分以上が少なくとも対向するように配置される。
【0047】
図5(A)および(B)に示すように、オス型リップ111の係合部分111cには、長手方向(長さ方向L)に沿って延在するように形成された2本の検査用着色部115、116が設けられている。検査用着色部115、116は、係合部分111cの表面に対して互いに異なる色または互いに異なるパターンのデザインで塗られた部分である。
【0048】
検査用着色部115は、係合部分111cのうち傾斜部分111b側の半分の領域に塗られている。検査用着色部116は、係合部分111cのうち傾斜部分111bとは反対側となる開放端側の半分の領域に塗られている。例えば、検査用着色部115を赤色とし、検査用着色部116を青色とする。但し、これに限らず、その他の色の組み合わせや、互いに異なるデザインのストライプ柄にする等であってもよい。
【0049】
なお、これに限らず、係合部分111cのうち傾斜部分111b側の半分の領域にのみ検査用着色部115を設けるようにしてもよい。この場合であっても、赤色の検査用着色部115、および、青色の検査用着色部116のように、検査用着色部115とそれ以外の無着色部とに分けることができる。
【0050】
<係合検査方法>
この場合、
図5(A)に示すように、オス型リップ111とメス型リップ112とが「かみ合わせ正常の状態」にある場合、作業者がメス型リップ112の貫通孔112hから視ると、オス型リップ111の係合部分111cのうち傾斜部分111b側の半分の領域に塗られた青色の検査用着色部116を目視することができる。このとき、作業者は、2つのデッキプレート1同士が空間的に相互に十分かみ合っている「かみ合わせ正常の状態」にあることを外観上認識することができる。
【0051】
つまり、メス型リップ112の貫通孔112hは、オス型リップ111とメス型リップ112とが「かみ合わせ正常の状態」にあるか否かを視覚的に認識するための視認部として機能する。
【0052】
これに対して、
図5(B)に示すように、オス型リップ111とメス型リップ112とが「かみ合わせ不良の状態」にある場合、作業者がメス型リップ112の貫通孔112hから視ると、係合部分111cのうち傾斜部分111bとは反対側となる開放端側の半分の領域に塗られた赤色の検査用着色部115を目視することになる。このとき、作業者は、2つのデッキプレート1同士が空間的に重なっておらず、相互に十分かみ合っていない「かみ合わせ不良の状態」にあることを外観上認識することができる。
【0053】
因みに、作業者は、メス型リップ112の貫通孔112hから視たとき、赤色の検査用着色部115および青色の検査用着色部116の両方を目視した場合、「かみ合わせ正常の状態」と「かみ合わせ不良の状態」の中間にあることを外観上認識することもできる。
【0054】
なお、上述した通り、オス型リップ111の係合部分111cのうち傾斜部分111b側の半分の領域にのみ検査用着色部115を設けた場合であっても、作業者はメス型リップ112の貫通孔112hから検査用着色部115を完全に目視確認できたときに「かみ合わせ正常の状態」にあることを外観上認識することができる。
【0055】
また、作業者は、メス型リップ112の貫通孔112hから係合部分111cの検査用着色部115を目視確認できずに、係合部分111cの無着色部を目視確認できたときには、「かみ合わせ不良の状態」にあることを外観上認識することができる。
【0056】
<係合方法>
次に、2つのデッキプレート1が相互に十分かみ合っていない「かみ合わせ不良の状態」にある場合に、2つのデッキプレート1を相互に十分かみ合わせた「かみ合わせ正常の状態」にするための係合方法について説明する。
【0057】
図6(A)および(B)に示すように、デッキプレート1のメス型リップ112の平坦部分112bに設けられた貫通孔112hを用いることにより、その貫通孔112hを用いて一方のデッキプレート1のメス型リップ112と他方のデッキプレート1のオス型リップ111とを「かみ合わせ正常の状態」にすることができる。
【0058】
具体的には、オス型リップ111とメス型リップ112とが「かみ合わせ不良の状態」にある場合、
図6(A)に示すように、メス型リップ112の平坦部分112bに設けられた貫通孔112hに対して、例えば金属等からなる円柱棒状の治具JGを差し込む。
【0059】
その後、
図6(B)に示すように、メス型リップ112の湾曲部分112wよりも先の部分を、貫通孔112hを中心として治具JGにより太矢印の示す方向へ折り曲げることによって、メス型リップ112の係合部分112cとオス型リップ111の係合部分111cとを接触させてかみ合わせる。これにより、作業者はオス型リップ111とメス型リップ112とを「かみ合わせ正常の状態」に係合させることができる。
【0060】
なお、治具JGを使ってメス型リップ112の湾曲部分112wよりも先の部分を折り曲げるのではなく、メス型リップ112の貫通孔112hを接着剤注入孔として用いることもできる。この場合、貫通孔112hから接着剤を流し込んでオス型リップ111とメス型リップ112とを接着固定することにより、オス型リップ111とメス型リップ112とを「かみ合わせ正常の状態」にすることができる。
【0061】
また、メス型リップ112の貫通孔112hをビス止め用のガイド孔として用いることもできる。この場合、貫通孔112hからビスを差し込み、ビスとオス型リップ111とを螺合させることにより、オス型リップ111とメス型リップ112とを「かみ合わせ正常の状態」にすることができる。この場合、オス型リップ111の係合部分111cに予めネジ溝が形成された貫通孔を形成しておけばよい。
【0062】
このように、デッキプレート1のメス型リップ112に設けられた貫通孔112hを用いることにより、従来のようにデッキプレート1同士を例えばすみ肉溶接等することなく、デッキプレート1同士を容易に係合させて連結させることができる。
【0063】
<他の係合検査方法>
図7(A)に示すように、一方のデッキプレート1のメス型リップ112に設けられた貫通孔112hに対して、折り曲げ自在な柔らかい棒状部材としての柱状体CB1を予め挿入しておく。
【0064】
その状態において、
図7(A)から
図7(B)に示すように、一方のデッキプレート1のメス型リップ112に対して、他方のデッキプレート1のオス型リップ111が空間的に重なるようにかみ合わせる。
【0065】
このとき、一方のデッキプレート1と、他方のデッキプレート1とを「かみ合わせ正常の状態」にできる場合、メス型リップ112の貫通孔112hとオス型リップ111の係合部分111cとが対向することになるため、オス型リップ111の係合部分111cによって柱状体CB1の中腹部分が押されて略L字状に屈曲される。
【0066】
しかしながら、一方のデッキプレート1のメス型リップ112に対して、他方のデッキプレート1のオス型リップ111を空間的に重なるようにかみ合わせたとき、「かみ合わせ不良の状態」であれば、
図7(A)の状態のままとなり、柱状体CB1が屈曲されることはない。
【0067】
したがって、作業者は柱状体CB1の屈曲具合を目視確認するだけで、一方のデッキプレート1のメス型リップ112と、他方のデッキプレート1のオス型リップ111とが空間的に重なった「かみ合わせ正常の状態」であるか、或いは、相互に空間的に重なっていない「かみ合わせ不良の状態」であるかを容易に判別することができる。
【0068】
<第2の実施の形態>
図3との対応部分に同一符号を付した
図8に示すように、第2の実施の形態におけるデッキプレート1aは、オス型リップ111の係合部分111cに対してもメス型リップ112の貫通孔112hと同じ形状および内径を有する貫通孔111hを有すると共に、メス型リップ112およびオス型リップ111が係合した状態において、貫通孔112hおよび貫通孔111hの双方に差し込まれた棒状部材としての円柱体CB2を有している。
【0069】
このような構成を有する一方のデッキプレート1aのメス型リップ112と、他方のデッキプレート1aのオス型リップ111とが空間的に重なって十分かみ合った「かみ合わせ正常の状態」である場合、メス型リップ112の貫通孔112hに対して、その貫通孔112hの内径よりも僅かに小さな外径の円柱体CB2を差し込む。
【0070】
この場合、メス型リップ112の貫通孔112hと同じように、オス側リップ111の係合部分111cに対しても同じ内径の貫通孔111hが形成されているため、メス型リップ112の貫通孔112hとオス型リップ111の貫通孔111hの双方に円柱体CB2を差し込んだ状態を形成することができる。
【0071】
これにより、作業者は、デッキプレート1aのメス型リップ112の貫通孔112hからオス型リップ111の円柱体CB2が飛び出ていることを目視確認することができるので、一方のデッキプレート1aのメス型リップ112と、他方のデッキプレート1aのオス型リップ111とが空間的に重なって相互に十分かみ合った「かみ合わせ正常の状態」にあることを円柱体CB2の存在によって判別することができる。
【0072】
また、この場合、円柱体CB2の存在によって、一方のデッキプレート1aと他方のデッキプレート1aとの係合状態が外れてしまうことを確実に防止することができる。
【0073】
<第3の実施の形態>
図9に示すように、第3の実施の形態におけるデッキプレート1bは、オス型リップ111の係合部分111cに対して高さ方向Hの上方に向かって突出した円柱形状の凸状部111dを有している。
【0074】
デッキプレート1bにおけるオス型リップ111の係合部分111cに設けられた凸状部111dの外径は、メス型リップ112の貫通孔112hの内径よりも僅かに小さい。要するに、凸状部111dが貫通孔112hに入り込む大きさの外径であればよい。
【0075】
また、凸状部111dは、高さ方向Hの高さが少なくともメス型リップ112の貫通孔112hの高さと同じか僅かに高いことが好ましい。なお、凸状部111dは、円柱形状に限らず、貫通孔112hに挿通可能であれば楕円柱形状や角柱形状であっても構わない。
【0076】
このような構成を有する一方のデッキプレート1bのメス型リップ112と、他方のデッキプレート1bのオス型リップ111とが空間的に重なって相互に十分かみ合った「かみ合わせ正常の状態」である場合、メス型リップ112の貫通孔112hに対して、オス型リップ111の凸状部111dが入り込むことになる。
【0077】
この場合、作業者は、デッキプレート1bのメス型リップ112の貫通孔112hからオス型リップ111の凸状部111dの頭部を目視確認することができるので、一方のデッキプレート1bのメス型リップ112と、他方のデッキプレート1bのオス型リップ111とが空間的に重なった十分かみ合った「かみ合わせ正常の状態」であることを容易に認識することができる。
【0078】
また、この場合も、第2の実施の形態と同様に、オス型リップ111の凸状部111dの存在によって、一方のデッキプレート1bと他方のデッキプレート1bとの係合状態が外れてしまうことを確実に防止することができる。
【0079】
<その他>
本発明における第1乃至第3の実施の形態においては、メス型リップ112の平坦部分112bに貫通孔112hを設けるようにした場合について述べた。しかしながら、本発明はこれに限らず、
図10に示すようにメス型リップ112の長手方向(長さ方向L)の端部に対して貫通孔112hを設ける代わりに斜めに切断し、オス型リップ111の係合部分111cを上方から視認できるように切断部112sを設けるようにしてもよい。
【0080】
この場合でも、視認部としての切断部112sからオス型リップ111の係合部分111cを目視確認できるので、作業者は「かみ合わせ正常の状態」であるか否かを判別することができる。因みに、
図10は、「かみ合わせ不良の状態」であることが示されている。
【0081】
また、上述の第1の実施の形態において、検査用着色部115が係合部分111cのうち傾斜部分111b側の半分の領域に塗られ、検査用着色部116が係合部分111cのうち傾斜部分111bとは反対側となる開放端側の半分の領域に塗られるようにした場合について述べた。
【0082】
しかしながら、本発明はこれに限らず、青色の検査用着色部115が係合部分111cのうち傾斜部分111b側の半分以下の領域に塗られ、赤色の検査用着色部116が係合部分111cのうち傾斜部分111bとは反対側となる開放端側の半分以上の領域に塗られるよう幅方向Wにおける太さを変化させてもよい。この場合、「かみ合わせ正常の状態」であるか否かの判定基準を厳しくすることができる。
【0083】
同様に、青色の検査用着色部115の領域の幅方向Wにおける太さが赤色の検査用着色部116の領域の幅方向Wにおける太さよりも大きくするようにしてもよい。この場合、「かみ合わせ正常の状態」であるか否かの判定基準を甘くすることができる。
【0084】
さらに、上述の第1乃至第3の実施の形態においては、デッキプレート1、1a、1bが合成スラブに使用される場合を想定して説明したが、本発明はこれに限らず、屋根用デッキプレート等、オス型リップとメス型リップとを係合させる方式であれば他の種々の用途に適用することができる。
【0085】
以上、本発明の好適な第1乃至第3の実施の形態について説明したが、本発明は上記第1乃至第3の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0086】
1a,1b…デッキプレート、11…下板部、12…傾斜板部、13…上板部、13m…溝、15…湾曲部、111…オス型リップ、111a…平坦部分、111b…傾斜部分、111w…湾曲部分、111c…係合部分、111d…凸状部、112…メス型リップ、112a…傾斜部分、112b…平坦部分、112c…係合部分、112s…切断部、112w…湾曲部分、112h…貫通孔、115,116…検査用着色部、JG…治具、CB1…柱状体、CB2…円柱体。