(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087232
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】解析支援システム、解析支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/12 20200101AFI20240624BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20240624BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20240624BHJP
【FI】
G06F30/12
G06F30/20
G06F30/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201927
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】大久保 修平
(72)【発明者】
【氏名】大久保 泰範
(72)【発明者】
【氏名】中垣 雄太
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA02
5B146AA03
5B146AA04
5B146AA21
5B146DG01
5B146DJ01
(57)【要約】
【課題】支持部材のモデルの解析を支援して解析者の労力やミスを減らすことができる解析支援システム、解析支援方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】解析支援システム1は、配管101を支持部材102の矩形部105で支持した4つの支持部に対応する節点の1つを選択すると、選択した節点に対して対向する位置にある節点を、選択した節点を除く節点の中から所定の手順によって選択する選択手段6を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の対象物を支持する際に用いられる支持部材のモデルの解析を支援する解析支援システムであって、
前記支持部材は、前記対象物が延在する軸線方向に対して直交する平面をXY平面と規定する場合において、X軸方向に延在する一対の長尺部材とY軸方向に延在する一対の長尺部材を有していて、これらの長尺部材が前記XY平面において矩形状になる矩形部を有するように接合され且つ前記対象物を前記矩形部の内側4点で支持するように配置されるものとし、
前記対象物を前記矩形部で支持した4つの支持部、前記長尺部材の両側に位置する端部、前記長尺部材同士が接合される接合部、及び前記端部と前記接合部との間に位置する中間部をそれぞれ節点と規定し、更に前記長尺部材上で隣り合う前記節点の間の部位をエレメントと規定する場合において、
前記支持部に対応する前記節点の1つを選択すると、選択した前記節点(以下、「選択節点」という)に対して対向する位置にある節点(以下、「対向節点」という)を、前記選択節点を除く前記節点(以下、「候補節点」という)の中から下記(a)~(c)の手順によって選択する選択手段を有する解析支援システム。
(a) 前記長尺部材の中から前記選択節点を含む長尺部材を特定し、特定した前記長尺部材に含まれる前記節点と前記エレメントを特定し、更に、特定した前記節点を前記候補節点から除外した第1残余節点を特定するとともに、特定した前記エレメントを全ての前記エレメントから除外した第1残余エレメントを特定する。
(b) 前記第1残余エレメントの中から、上記(a)で特定した前記節点を端部に持つ前記長尺部材を特定するとともにこの長尺部材に含まれるエレメントとして第2残余エレメントを特定し、前記第2残余エレメントに含まれる前記節点を前記第1残余節点から除外した第2残余節点を特定する。
(c) 前記第2残余節点と前記選択節点とを結ぶ直線のうちX軸に平行又はY軸に平行な直線を特定し、特定した前記直線を規定する前記節点を前記対向節点と特定する。
【請求項2】
前記支持部材は、X軸方向又はY軸方向に延在して前記長尺部材に接合される他の長尺部材を有するものとし、
前記他の長尺部材の両側に位置する他の端部、前記長尺部材と前記他の長尺部材が接合される他の接合部、及び前記他の端部と前記他の接合部との間に位置する他の中間部をそれぞれ前記節点と規定する場合において、
前記選択手段は、上記(a)~(c)に下記(d)を加えた手順によって前記対向節点を選択する、請求項1に記載の解析支援システム。
(d) 上記(c)で特定した前記直線が複数存在する場合、前記直線の長さが最も短い直線を特定し、特定した長さが最も短い前記直線を規定する前記節点を前記対向節点と特定する。
【請求項3】
長尺の対象物を支持する際に用いられる支持部材のモデルの解析を支援する解析支援方法であって、
前記支持部材は、前記対象物が延在する軸線方向に対して直交する平面をXY平面と規定する場合において、X軸方向に延在する一対の長尺部材とY軸方向に延在する一対の長尺部材を有していて、これらの長尺部材が前記XY平面において矩形状になる矩形部を有するように接合され且つ前記対象物を前記矩形部の内側4点で支持するように配置されるものとし、
前記対象物を前記矩形部で支持した4つの支持部、前記長尺部材の両側に位置する端部、前記長尺部材同士が接合される接合部、及び前記端部と前記接合部との間に位置する中間部をそれぞれ節点と規定し、更に前記長尺部材上で隣り合う前記節点の間の部位をエレメントと規定する場合において、
前記支持部に対応する前記節点の1つを選択すると、選択した前記節点(以下、「選択節点」という)に対して対向する位置にある節点(以下、「対向節点」という)を、前記選択節点を除く前記節点(以下、「候補節点」という)の中から下記(a)~(c)の手順によって選択する選択工程を有する解析支援方法。
(a) 前記長尺部材の中から前記選択節点を含む長尺部材を特定し、特定した前記長尺部材に含まれる前記節点と前記エレメントを特定し、更に、特定した前記節点を前記候補節点から除外した第1残余節点を特定するとともに、特定した前記エレメントを全ての前記エレメントから除外した第1残余エレメントを特定する。
(b) 前記第1残余エレメントの中から、上記(a)で特定した前記節点を端部に持つ前記長尺部材を特定するとともにこの長尺部材に含まれるエレメントとして第2残余エレメントを特定し、前記第2残余エレメントに含まれる前記節点を前記第1残余節点から除外した第2残余節点を特定する。
(c) 前記第2残余節点と前記選択節点とを結ぶ直線のうちX軸に平行又はY軸に平行な直線を特定し、特定した前記直線を規定する前記節点を前記対向節点と特定する。
【請求項4】
コンピュータで実行され、長尺の対象物を支持する際に用いられる支持部材のモデルの解析を支援するプログラムであって、
前記支持部材は、前記対象物が延在する軸線方向に対して直交する平面をXY平面と規定する場合において、X軸方向に延在する一対の長尺部材とY軸方向に延在する一対の長尺部材を有していて、これらの長尺部材が前記XY平面において矩形状になる矩形部を有するように接合され且つ前記対象物を前記矩形部の内側4点で支持するように配置されるものとし、
前記対象物を前記矩形部で支持した4つの支持部、前記長尺部材の両側に位置する端部、前記長尺部材同士が接合される接合部、及び前記端部と前記接合部との間に位置する中間部をそれぞれ節点と規定し、更に前記長尺部材上で隣り合う前記節点の間の部位をエレメントと規定する場合において、
前記支持部に対応する前記節点の1つを選択すると、選択した前記節点(以下、「選択節点」という)に対して対向する位置にある節点(以下、「対向節点」という)を、前記選択節点を除く前記節点(以下、「候補節点」という)の中から下記(a)~(c)の手順によって選択する選択工程を実行するプログラム。
(a) 前記長尺部材の中から前記選択節点を含む長尺部材を特定し、特定した前記長尺部材に含まれる前記節点と前記エレメントを特定し、更に、特定した前記節点を前記候補節点から除外した第1残余節点を特定するとともに、特定した前記エレメントを全ての前記エレメントから除外した第1残余エレメントを特定する。
(b) 前記第1残余エレメントの中から、上記(a)で特定した前記節点を端部に持つ前記長尺部材を特定するとともにこの長尺部材に含まれるエレメントとして第2残余エレメントを特定し、前記第2残余エレメントに含まれる前記節点を前記第1残余節点から除外した第2残余節点を特定する。
(c) 前記第2残余節点と前記選択節点とを結ぶ直線のうちX軸に平行又はY軸に平行な直線を特定し、特定した前記直線を規定する前記節点を前記対向節点と特定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば配管、電線、各種機器(熱交換器等)、ケーブルトレイ等の長尺の対象物を支持する際に用いられる支持部材に関し、それらのモデルの解析を支援する解析支援システム、解析支援方法、及びこれらに関係するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種のプラント(発電プラント、化学プラント、石油プラント等)には、所定の流体を通過させるための配管の他、電線、各種機器(熱交換器等)、ケーブルトレイ等が使用される。これらの配管等は、外力(例えば地震の揺れに起因する力)が作用した際の変位を防止するために多数の支持部材により支持される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなプラントを設計するにあたっては、配管等や支持部材のモデルについて各種の解析を行い、所定の基準を満たしているか確認される。特許文献1においては、モーダル応答解析を行うことによって配管の塑性変形による固有振動数の低下を考慮した設計を行うことができる技術が示されている。
【0004】
また配管等に作用する外力に関する解析としては、例えば
図11に示す手法がある。
図11は、特許文献1における
図1に示された直管1の如き配管501のモデルと、配管支持構造物7の如き支持部材502のモデルについて示している。ここで
図11は、配管501の軸線方向に対して直交するXY平面での図である。
【0005】
配管501は筒状をなしていて、XY平面での断面形状はリング状である。ここでこのリング状になる部位をリング部503と規定する。また支持部材502は、X軸方向に延在する一対の長尺部材504とY軸方向に延在する一対の長尺部材504を有していて、これらの長尺部材504がXY平面において矩形状になるように接合されたものである。ここで、XY平面において矩形状になる部位を矩形部505と規定する。支持部材502は、矩形部505の内側4点がリング部503の外側に接触し、この接触する4点でリング部503を支持するように配置される。
【0006】
ここで、リング部503を矩形部505で支持した4つの支持部、長尺部材504の両側に位置する端部、長尺部材504同士が接合される接合部、及びこの端部とこの接合部との間に位置する中間部を、図示したように節点P1~P12と規定する。すなわち、リング部503を矩形部505で支持した4つの支持部に対応する節点をP4、P9、P11、P12とし、Y方向に延在する長尺部材504の両側に位置する端部に対応する節点をP1、P5、P6、P10とし、X方向に延在する長尺部材504の両側に位置する端部に対応する節点をP3、P8、P5、P10とする。図示例において節点P3、P5、P8、P10は、Y方向に延在する長尺部材504とX方向に延在する長尺部材504同士が接合される接合部に対応する節点でもある。そして上述した端部と接合部との間に位置する中間部に対応する節点をP2、P7とする。節点P1~P12には、XYZ座標における座標値が設定され、これにより配管501と支持部材502の形状及び位置が規定される。
【0007】
このような配管501に外力が作用する場合、支持部材502の解析は、4つの支持部に対応する節点P4、P9、P11、P12の何れかに力が加わるとの設定を行って実行される。例えば
図11に示す状態において右側へ向かう力が配管501に作用する場合の解析は、解析者が配管501の右側に位置する節点P9に対して右側への力が作用するとの設定を行って解析が実行される。また
図11に示す状態において上側へ向かう力が配管501に作用する場合の解析は、解析者が配管501の上側に位置する節点P12に対して上側への力が作用するとの設定を行って解析が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、例えば配管501が右側に変位する瞬間と左側に変位する瞬間が生じるような場合(例えば地震が発生した場合)における支持部材502の解析は、配管501の右側に位置する節点P9に対して右側への力が作用するとの設定を行って解析を実行し、更に配管501の左側に位置する節点P4に対して左側への力が作用するとの設定を行って解析を実行する。すなわち、地震等を想定した解析を行う場合、解析者は2つの節点に対して力の設定を行わなければならない。しかもプラント全体にはこのような支持部材502が多数含まれているため、力の設定を行うにあたって解析者に多大な労力をかけることになる。またこのような労力を強いることにより、力の設定を行うべき節点とは異なる節点を選択する等のミスを引き起こすおそれがある。
【0010】
このような問題点に鑑み、本発明は、支持部材のモデルの解析を支援して解析者の労力やミスを減らすことができる解析支援システム、解析支援方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、長尺の対象物を支持する際に用いられる支持部材のモデルの解析を支援する解析支援システムであって、前記支持部材は、前記対象物が延在する軸線方向に対して直交する平面をXY平面と規定する場合において、X軸方向に延在する一対の長尺部材とY軸方向に延在する一対の長尺部材を有していて、これらの長尺部材が前記XY平面において矩形状になる矩形部を有するように接合され且つ前記対象物を前記矩形部の内側4点で支持するように配置されるものとし、前記対象物を前記矩形部で支持した4つの支持部、前記長尺部材の両側に位置する端部、前記長尺部材同士が接合される接合部、及び前記端部と前記接合部との間に位置する中間部をそれぞれ節点と規定し、更に前記長尺部材上で隣り合う前記節点の間の部位をエレメントと規定する場合において、前記支持部に対応する前記節点の1つを選択すると、選択した前記節点(以下、「選択節点」という)に対して対向する位置にある節点(以下、「対向節点」という)を、前記選択節点を除く前記節点(以下、「候補節点」という)の中から下記(a)~(c)の手順によって選択する選択手段を有する。
(a) 前記長尺部材の中から前記選択節点を含む長尺部材を特定し、特定した前記長尺部材に含まれる前記節点と前記エレメントを特定し、更に、特定した前記節点を前記候補節点から除外した第1残余節点を特定するとともに、特定した前記エレメントを全ての前記エレメントから除外した第1残余エレメントを特定する。
(b) 前記第1残余エレメントの中から、上記(a)で特定した前記節点を端部に持つ前記長尺部材を特定するとともにこの長尺部材に含まれるエレメントとして第2残余エレメントを特定し、前記第2残余エレメントに含まれる前記節点を前記第1残余節点から除外した第2残余節点を特定する。
(c) 前記第2残余節点と前記選択節点とを結ぶ直線のうちX軸に平行又はY軸に平行な直線を特定し、特定した前記直線を規定する前記節点を前記対向節点と特定する。
【0012】
上述した解析支援システムにおいて、前記支持部材は、X軸方向又はY軸方向に延在して前記長尺部材に接合される他の長尺部材を有するものとし、前記他の長尺部材の両側に位置する他の端部、前記長尺部材と前記他の長尺部材が接合される他の接合部、及び前記他の端部と前記他の接合部との間に位置する他の中間部をそれぞれ前記節点と規定する場合において、前記選択手段は、上記(a)~(c)に下記(d)を加えた手順によって前記対向節点を選択することが好ましい。
(d) 上記(c)で特定した前記直線が複数存在する場合、前記直線の長さが最も短い直線を特定し、特定した長さが最も短い前記直線を規定する前記節点を前記対向節点と特定する。
【0013】
また本発明は、長尺の対象物を支持する際に用いられる支持部材のモデルの解析を支援する解析支援方法であって、前記支持部材は、前記対象物が延在する軸線方向に対して直交する平面をXY平面と規定する場合において、X軸方向に延在する一対の長尺部材とY軸方向に延在する一対の長尺部材を有していて、これらの長尺部材が前記XY平面において矩形状になる矩形部を有するように接合され且つ前記対象物を前記矩形部の内側4点で支持するように配置されるものとし、前記対象物を前記矩形部で支持した4つの支持部、前記長尺部材の両側に位置する端部、前記長尺部材同士が接合される接合部、及び前記端部と前記接合部との間に位置する中間部をそれぞれ節点と規定し、更に前記長尺部材上で隣り合う前記節点の間の部位をエレメントと規定する場合において、前記支持部に対応する前記節点の1つを選択すると、選択した前記節点(以下、「選択節点」という)に対して対向する位置にある節点(以下、「対向節点」という)を、前記選択節点を除く前記節点(以下、「候補節点」という)の中から下記(a)~(c)の手順によって選択する選択工程を有する解析支援方法でもある。
(a) 前記長尺部材の中から前記選択節点を含む長尺部材を特定し、特定した前記長尺部材に含まれる前記節点と前記エレメントを特定し、更に、特定した前記節点を前記候補節点から除外した第1残余節点を特定するとともに、特定した前記エレメントを全ての前記エレメントから除外した第1残余エレメントを特定する。
(b) 前記第1残余エレメントの中から、上記(a)で特定した前記節点を端部に持つ前記長尺部材を特定するとともにこの長尺部材に含まれるエレメントとして第2残余エレメントを特定し、前記第2残余エレメントに含まれる前記節点を前記第1残余節点から除外した第2残余節点を特定する。
(c) 前記第2残余節点と前記選択節点とを結ぶ直線のうちX軸に平行又はY軸に平行な直線を特定し、特定した前記直線を規定する前記節点を前記対向節点と特定する。
【0014】
また本発明は、コンピュータで実行され、長尺の対象物を支持する際に用いられる支持部材のモデルの解析を支援するプログラムであって、前記支持部材は、前記対象物が延在する軸線方向に対して直交する平面をXY平面と規定する場合において、X軸方向に延在する一対の長尺部材とY軸方向に延在する一対の長尺部材を有していて、これらの長尺部材が前記XY平面において矩形状になる矩形部を有するように接合され且つ前記対象物を前記矩形部の内側4点で支持するように配置されるものとし、前記対象物を前記矩形部で支持した4つの支持部、前記長尺部材の両側に位置する端部、前記長尺部材同士が接合される接合部、及び前記端部と前記接合部との間に位置する中間部をそれぞれ節点と規定し、更に前記長尺部材上で隣り合う前記節点の間の部位をエレメントと規定する場合において、前記支持部に対応する前記節点の1つを選択すると、選択した前記節点(以下、「選択節点」という)に対して対向する位置にある節点(以下、「対向節点」という)を、前記選択節点を除く前記節点(以下、「候補節点」という)の中から下記(a)~(c)の手順によって選択する選択工程を実行するプログラムでもある。
(a) 前記長尺部材の中から前記選択節点を含む長尺部材を特定し、特定した前記長尺部材に含まれる前記節点と前記エレメントを特定し、更に、特定した前記節点を前記候補節点から除外した第1残余節点を特定するとともに、特定した前記エレメントを全ての前記エレメントから除外した第1残余エレメントを特定する。
(b) 前記第1残余エレメントの中から、上記(a)で特定した前記節点を端部に持つ前記長尺部材を特定するとともにこの長尺部材に含まれるエレメントとして第2残余エレメントを特定し、前記第2残余エレメントに含まれる前記節点を前記第1残余節点から除外した第2残余節点を特定する。
(c) 前記第2残余節点と前記選択節点とを結ぶ直線のうちX軸に平行又はY軸に平行な直線を特定し、特定した前記直線を規定する前記節点を前記対向節点と特定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による解析支援システム、解析支援方法、及びプログラムによれば、力の設定を行うための一つの節点を選択すると、この節点に対して対向する位置にある節点を自動的に選択することができる。従って例えば地震等を想定した解析を行うにあたり、力の設定を行う節点を正しく選択することができる。また対向する位置にある節点が自動的に選択されるため、解析者が一つの節点に設定した力を対向する位置にある節点に自動的に設定することも可能であり、解析者の労力を減らすこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る解析支援システムのブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る配管と支持部材に関するXY平面での図である。
【
図3】
図2に示した支持部材に関する節点P1~P12の座標値を示した表である。
【
図4】
図2に示した支持部材に関するエレメントE1~E12と節点P1~P12との関係を示した表である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る解析支援方法における手順(a)に関する図と表である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る解析支援方法における手順(b)に関する図と表である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る解析支援方法における手順(c)に関する図と表である。
【
図8】支持部材の変形例に関するXY平面での図である。
【
図9】
図8に示した支持部材に関する節点P1~P14の座標値を示した表である。
【
図10】
図8に示した支持部材に関するエレメントE1~E14と節点P1~P14との関係を示した表である。
【
図11】本発明が解決しようとする課題に関する配管と支持部材のXY平面での図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る解析支援システム、解析支援方法、及びプログラムについて説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る解析支援システム1の構成を示すブロック図である。解析支援システム1は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)や携帯情報端末等であるが、これらに限られない。また解析支援システム1は、1台のPC等で実現されるものにかぎられず、有線や無線のネットワークを介してつながった複数台のPC等で実現されるものでもよい。
【0019】
解析支援システム1は、入力部2、出力部3、記憶部4、制御部5を備えている。
【0020】
入力部2は、解析支援システム1に各種の情報を入力する機能を持つものであり、例えばキーボードやマウス、タッチパネルにより実現される。
【0021】
出力部3は、解析支援システム1から各種の情報を出力する機能を持つものであり、例えばディスプレイ、プロジェクタ、プリンタにより実現される。
【0022】
記憶部4は、予め記憶させた、又は入力部2によって入力した各種の情報を記憶する機能を持つものであり、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、リードオンリーメモリ、ランダムアクセスメモリにより実現される。なお記憶部4には、解析支援システム1によって解析支援方法を実行するためのプログラム、及び解析支援システム1によって後述する支持部材102の解析を実行するためのプログラムが記憶されている。
【0023】
制御部5は、入力部2、出力部3、記憶部4につながっていて、記憶部4からプログラムを読み出して演算処理を実行することによって、所定の解析、及び解析支援を実行する。制御部5は、例えばマイクロプロセッサにより実現される。制御部5でプログラムを実行することにより、選択手段6を機能させることができる。
【0024】
このような解析支援システム1を用いることにより、
図2に示した配管101を支持する際に用いられる支持部材102のモデルについての解析を支援することができる。なお
図2は、配管101の軸線方向に対して直交するXY平面での図である。
【0025】
配管101は筒状をなしていて、XY平面での断面形状はリング状である。ここでこのリング状になる部位をリング部103と規定する。なお、図示したリング部103はX方向とY方向の長さが等しい円環状であるが、リング部103は、X方向とY方向の長さが異なる楕円環状になるものでもよい。また支持部材102は、X軸方向に延在する一対の長尺部材104とY軸方向に延在する一対の長尺部材104を有していて、これらの長尺部材104がXY平面において矩形状になるように接合されたものである。なお本明細書において「接合」とは、部材同士を連結させることを意味し、溶接だけでなく、ボルトやリベットを用いて固定するものも含む。ここで、XY平面において矩形状になる部位を矩形部105と規定する。支持部材102は、矩形部105の内側4点がリング部103の外側に接触し、この接触する4点でリング部103を支持するように配置される。なお本実施形態の解析支援システム1では、支持部材102で支持する対象物として、配管101以外のもの(例えば電線や各種機器(熱交換器等)、ケーブルトレイ等)を設定することが可能である。この場合は、対象物のXY平面での断面形状(円環状や楕円環状になるものに限られず例えば四角形のような多角形状でもよい)に応じた断面モデルが、矩形部105の内側4点で支持されると設定すればよい。
【0026】
ここで、リング部103を矩形部105で支持した4つの支持部、長尺部材104の両側に位置する端部、長尺部材104同士が接合される接合部、及びこの端部とこの接合部との間に位置する中間部を、図示したように節点P1~P12と規定する。すなわち、リング部103を矩形部105で支持した4つの支持部に対応する節点をP4、P9、P11、P12とし、Y方向に延在する長尺部材104の両側に位置する端部に対応する節点をP1、P5、P6、P10とし、X方向に延在する長尺部材104の両側に位置する端部に対応する節点をP3、P8、P5、P10とする。図示例において節点P3、P5、P8、P10は、Y方向に延在する長尺部材104とX方向に延在する長尺部材104同士が接合される接合部に対応する節点でもある。そして上述した端部と接合部との間に位置する中間部に対応する節点をP2、P7とする。また支持部材102は、XZ平面に対して平行になる設置面に対して節点P1、P6で設置された固定点であるとする。
【0027】
節点P1~P12には、XYZ座標における座標値が設定され、これにより配管101と支持部材102の形状及び位置が規定される。本実施形態では、節点P1から節点P2に至る長さを2aとし、節点P3から節点P5に至る長さを2bとし、節点P5から節点P10に至る長さを2cとしていて、節点P1~P12のXYZ座標における座標値を、
図3のように規定している。なお
図3に示した節点P1~P12の座標値は、記憶部4に記憶されている。
【0028】
そして、長尺部材104上で隣り合う節点P1~P12の間の部位をエレメントと規定する。例えば
図2の左側に位置する長尺部材104は、節点P1と節点P2の間に位置するエレメントE1と、節点P2と節点P3の間に位置するエレメントE2と、節点P3と節点P4の間に位置するエレメントE3と、節点P4と節点P5の間に位置するエレメントE4で構成されているものとする。これらエレメントE1~E4と節点との関係を、
図4における「エレメント」と「エレメントを特定する節点」に示す。また上記以外の長尺部材104は、
図3に示したようにエレメントE5~E12で構成されているものとする。
図4では、エレメントE5~E12についても節点との関係を示している。
【0029】
また本実施形態では、エレメントE1~E12が何れの長尺部材104を構成しているかについても規定している。例えば
図2の左側に位置する長尺部材104は、その両側の端部に相当する節点が節点P1と節点P5である。本実施形態では、左側に位置する長尺部材104を構成するエレメントE1~E4に対して、この長尺部材104の両側の端部に相当する節点P1と節点P5を関連付けている。そして、右側に位置する長尺部材104を構成するエレメントE6~E8に対して、この長尺部材104の両側の端部に相当する節点P6と節点P10を関連付け、下側に位置する長尺部材104を構成するエレメントE9~E10に対して、この長尺部材104の両側の端部に相当する節点P3と節点P8を関連付け、上側に位置する長尺部材104を構成するエレメントE11~E12に対して、この長尺部材104の両側の端部に相当する節点P5と節点P10を関連付けている。これらエレメントE1~E12と節点P1~P12との関係についても、
図4における「エレメント」と「長尺部材の両側端部に対応する節点」に示す。なお、
図4に示したエレメントE1~E12と節点P1~P12との関係は、記憶部4に記憶されている。
【0030】
次に、解析支援システム1による解析支援方法について説明する。以下では、配管101が右側に変位する瞬間と左側に変位する瞬間が生じるような力が作用する場合の解析支援方法の一例であって、解析者が配管501の右側に位置する節点P9に対して右側への力が作用するとの設定を行うにあたり、節点P9を選択した場合に、節点P9に対向する節点P4が自動的に選択される方法について説明する。
【0031】
解析者が解析支援システム1を操作して節点P9を選択すると、選択手段6が機能して、4つの長尺部材104の中から選択した節点P9を含む長尺部材104を特定する。本実施形態では、選択手段6が記憶部4に記憶された
図4の関係を参照し、節点P9は、節点P6、P10が両側の端部になる長尺部材104に含まれることを特定する。そして選択手段6は、節点P6、P10が両側の端部になる長尺部材104に含まれる節点として、節点P6、P7、P8、P10を特定する。また選択手段6は、節点P6、P10が両側の端部になる長尺部材104に含まれるエレメントとして、エレメントE5~E8を特定する。更に選択手段6は、節点P1~P12のうち節点P9を除く節点P1~P8、P10~P12から、特定した節点P6、P7、P8、P10を除外して残余の節点(第1残余節点)を特定する。本実施形態において第1残余節点は、節点P1~P5、P11、P12である。また選択手段6は、特定したエレメントE5~E8を全てのエレメントE1~E12から除外した第1残余エレメントを特定する(
図5(a)、(b)参照)。本実施形態において第1残余エレメントは、エレメントE1~E4、E9~E12である。なおここまでの手順を手順(a)と称する。
【0032】
次いで選択手段6は、記憶部4に記憶された
図4(
図5(b))の関係を参照し、上述した第1残余エレメント(エレメントE1~E4、E9~E12)の中から、上記(a)で特定した節点(節点P6、P7、P8、P10)を端部にもつ長尺部材104を特定するとともにこの長尺部材104に含まれるエレメントとして第2残余エレメントを特定する。本実施形態において、上記(a)で特定した節点(節点P6、P7、P8、P10)を端部にもつ長尺部材104は、
図6(b)に示すように、節点P8を端部に持つ長尺部材104と節点P10を端部に持つ長尺部材104であって、節点P8を端部に持つ長尺部材104にはエレメントE9、E10が含まれ、節点P10を端部に持つ長尺部材104にはエレメントE11、E12が含まれる。すなわち第2残余エレメントとして、第1残余エレメント(エレメントE1~E4、E9~E12)の中からエレメントE9、E10、E11、E12が特定される。そして選択手段6は、第2残余エレメント(エレメントE9、E10、E11、E12)に含まれる節点(節点P3、P5、P8、P10、P11、P12)を第1残余節点から除外した第2残余節点を特定する。本実施形態において第2残余節点は、節点P1、P2、P4である(
図6(a)、(b)参照)。なお、手順(a)の後に行われるここまでの手順を手順(b)と称する。
【0033】
次いで選択手段6は、手順(c)として、記憶部4に記憶された
図3、
図4(
図6(b))の関係を参照し、第2残余節点(節点P1、P2、P4)と選択した節点P9とを結ぶ直線のうちX軸に平行又はY軸に平行な直線を特定する。そして特定した直線を規定する節点を、選択した節点P9に対向する節点と特定する。換言すると、節点P1、P2、P4のうち、X座標又はY座標が節点P9と同一になるものが節点P9に対向する節点と特定される。本実施形態では、節点P9におけるY座標と節点P4におけるY座標が同一であるため、節点P4が対向する節点であると特定される(
図7(a)、(b)参照)。
【0034】
このように上述した解析支援システム1、上述した解析支援方法、及び上述したプログラムによれば、選択した節点P9に対向する節点P4を自動的に選択することができる。従って、配管101が左右両側に変位する場合での支持部材102の解析を行うにあたり、力の設定を行う節点を正しく選択することができる。またこのような解析を行うにあたって節点P9に設定する右側への力と節点P4に設定する左側への力は、大きさが同一で向きが逆の関係にある。すなわち、解析者が節点P9を選択してこの節点P9に力を設定すると、節点P9に設定した力の大きさと同一で向きが逆になる力を、自動的に選択される節点P4に対して自動的に設定することも可能であるため、解析者の労力削減にも寄与する。
【0035】
本発明に係る支持部材は、
図2に示した支持部材102の形状に限定されるものではなく、例えば
図8に示した支持部材102Aのようなものも含まれる。支持部材102Aは、上述したX軸方向に延在する一対の長尺部材104とY軸方向に延在する一対の長尺部材104に加えてX軸方向に延在する他の長尺部材104Aを備えている。他の長尺部材104Aは、一端部が節点P4で長尺部材104と接合され、他端部が壁面Wと接合されている。ここで、他の長尺部材104Aにおける中間部を節点P13と称し、他の長尺部材104Aが壁面Wに接合された接合部を節点P14と称する。また節点P4から節点P14に至る長さを2dとする。そして他の長尺部材104Aは、節点P4と節点P13の間に位置するエレメントE13と、節点P13と節点P14の間に位置するエレメントE14で構成されているものとする。なお、
図9に示した節点P1~P14の座標値と、
図10に示したエレメントE1~E14と節点P1~P14の関係は、記憶部4に記憶されている。
【0036】
上述した解析支援システム1は、支持部材102Aについても解析支援方法を実行することが可能である。この点につき、節点P9を選択した場合に、節点P9に対向する節点P4が自動的に選択される方法について説明する。
【0037】
支持部材102Aの場合も、解析者が解析支援システム1を操作して節点P9を選択すると、選択手段6が機能して、上述した手順(a)~(c)を実行する。ここで手順(b)においては、支持部材102の場合と比較して節点P13、P14が追加されているため、第2残余節点は、節点P1~P5、P13、P14となる。また手順(c)においては、節点P1~P5、P13、P14のうち、X座標又はY座標が節点P9と同一になるものは、節点P4、P13、P14と特定される。すなわち、第2残余節点である節点P1~P5、P13、P14と選択した節点P9とを結ぶ直線のうちX軸に平行又はY軸に平行な直線は複数存在することになる。
【0038】
このような場合において解析支援システム1は、手順(d)として、複数の直線のなかで長さが最も短い直線を特定し、この直線を規定する節点を、選択した節点P9に対向する節点と特定する。
図9に示した節点P4、P13、P14の座標値と節点P9の座標値により、最も短い直線は、節点P4と節点P9を結ぶ直線であると判別できるため、節点P4が対向する節点であると特定することができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0040】
1:解析支援システム
6:選択手段
101:配管
102:支持部材
103:リング部
104:長尺部材
105:矩形部
E1~E12:エレメント
P1~P12:節点