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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087237
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】コールドプレート
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20240624BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20240624BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240624BHJP
   F28F 13/12 20060101ALI20240624BHJP
   F28F 3/12 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
F28D15/02 102A
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
F28F13/12 A
F28F3/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201933
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】松田 将宗
(72)【発明者】
【氏名】川原 洋司
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322AA11
5E322DA04
5E322FA01
5F136CB07
5F136CB08
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA51
(57)【要約】
【課題】高温流路および低温流路の双方を含む冷媒流路を容易に形成可能なコールドプレートを提供する。
【解決手段】コールドプレートは、基部を有する金属製のベースプレートと、前記基部に接合された外壁部を有する樹脂カバーと、前記基部と前記外壁部とによって囲まれた内部空間と、前記内部空間に連通して冷媒が流入する流入孔と、前記内部空間に連通して前記冷媒が流出する流出孔と、を有する筐体を備え、前記ベースプレートは、前記内部空間に位置して発熱体から受け取った熱を前記冷媒に伝達する熱交換部を有し、前記樹脂カバーは、前記内部空間に位置して前記熱交換部から熱を受け取る前の前記冷媒が流れる低温流路と、前記内部空間に位置して前記熱交換部から熱を受け取った後の前記冷媒が流れるとともに前記低温流路には開口しない高温流路と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部を有する金属製のベースプレートと、前記基部に接合された外壁部を有する樹脂カバーと、を有する筐体を備え、
前記筐体には、前記基部と前記外壁部とによって囲まれた内部空間と、前記内部空間に連通して冷媒が流入する流入孔と、前記内部空間に連通して前記冷媒が流出する流出孔と、が形成され、
前記ベースプレートは、前記内部空間に位置して発熱体から受け取った熱を前記冷媒に伝達する熱交換部を有し、
前記樹脂カバーは、前記内部空間に位置して前記熱交換部から熱を受け取る前の前記冷媒が流れる低温流路と、前記内部空間に位置して前記熱交換部から熱を受け取った後の前記冷媒が流れるとともに前記低温流路には開口しない高温流路と、を有する、
コールドプレート。
【請求項2】
前記樹脂カバーは、前記低温流路と前記高温流路とを隔てる隔壁部を有し、
前記隔壁部は、前記ベースプレートに接合されている、
請求項1に記載のコールドプレート。
【請求項3】
前記隔壁部は、前記熱交換部に接合されている、
請求項2に記載のコールドプレート。
【請求項4】
前記低温流路が前記熱交換部に開口する部位と、前記高温流路が前記熱交換部に開口する部位とは、前記高温流路が延びる第1方向に交差する第2方向における位置が互いに異なっており、
前記熱交換部は、前記第2方向に延びる複数のフィンを有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のコールドプレート。
【請求項5】
前記外壁部、前記低温流路、および前記高温流路は、一体に形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のコールドプレート。
【請求項6】
前記高温流路は、前記流出孔に近づくにつれて漸次広がる形状を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のコールドプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールドプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体の内部空間を流れる冷媒によって発熱体を冷却する金属製のコールドプレートが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/174593号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の電子部品高集積化による発熱密度の増大により、コールドプレートにはより高い冷却性能が求められるようになっている。この課題に対して、いわゆる噴流冷却や二相流冷却を採用して冷却性能を高めたコールドプレートが提案されてきている。例えば、特許文献1には、二相流冷却方式のコールドプレートが開示されている。噴流冷却方式や二相流冷却方式のコールドプレートは、一般に、発熱体の熱を受け取る前の冷媒が流れる低温流路と、発熱体の熱を受け取った後の冷媒が流れる高温流路と、を備える。
【0005】
しかしながら、コールドプレートが金属製である場合(例えば、特許文献1)、高温流路と低温流路とを含む複雑な冷媒流路を形成することが容易でない場合があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされ、高温流路および低温流路の双方を含む冷媒流路を容易に形成可能なコールドプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の態様1に係るコールドプレートは、基部を有する金属製のベースプレートと、前記基部に接合された外壁部を有する樹脂カバーと、を有する筐体を備え、前記筐体には、前記基部と前記外壁部とによって囲まれた内部空間と、前記内部空間に連通して冷媒が流入する流入孔と、前記内部空間に連通して前記冷媒が流出する流出孔と、が形成され、前記ベースプレートは、前記内部空間に位置して発熱体から受け取った熱を前記冷媒に伝達する熱交換部を有し、前記樹脂カバーは、前記内部空間に位置して前記熱交換部から熱を受け取る前の前記冷媒が流れる低温流路と、前記内部空間に位置して前記熱交換部から熱を受け取った後の前記冷媒が流れるとともに前記低温流路には開口しない高温流路と、を有する。
【0008】
本発明の態様1によれば、低温流路および高温流路が樹脂カバーに設けられているため、例えばこれらの流路を金属で形成する場合と比較して、流路の形成を容易に行うことができる。
【0009】
また、本発明の態様2は、態様1のコールドプレートにおいて、前記樹脂カバーは、前記低温流路と前記高温流路とを隔てる隔壁部を有し、前記隔壁部は、前記ベースプレートに接合されている。
【0010】
また、本発明の態様3は、態様2のコールドプレートにおいて、前記隔壁部は、前記熱交換部に接合されている。
【0011】
また、本発明の態様4は、態様1から態様3のいずれか一つのコールドプレートにおいて、前記低温流路が前記熱交換部に開口する部位と、前記高温流路が前記熱交換部に開口する部位とは、前記高温流路が延びる第1方向に交差する第2方向における位置が互いに異なっており、前記熱交換部は、前記第2方向に延びる複数のフィンを有する。
【0012】
また、本発明の態様5は、態様1から態様4のいずれか一つのコールドプレートにおいて、前記外壁部、前記低温流路、および前記高温流路は、一体に形成されている。
【0013】
また、本発明の態様6は、態様1から態様5のいずれか一つのコールドプレートにおいて、前記高温流路は、前記流出孔に近づくにつれて漸次広がる形状を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、高温流路および低温流路の双方を含む冷媒流路を容易に形成可能なコールドプレートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係るコールドプレートを示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るコールドプレートを示す分解図である。
図3図1に示すIII-III線に沿う断面図である。
図4図1に示すIV-IV線に沿う断面図である。
図5図3に示す領域Aを拡大して示す図である。
図6】本発明の第1実施形態に係るコールドプレートを示す一部破断図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るコールドプレートを示す分解図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る樹脂カバーを示す斜視図である。
図9図7に示すIX-IX線に沿う、入口凹部を含む断面図である。
図10図7に示すX-X線に沿う、出口凹部を含む断面図である。
図11】本発明の第2実施形態の変形例に係る樹脂カバーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るコールドプレートについて図面に基づいて説明する。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態に係るコールドプレート100は、金属製のベースプレート10と、樹脂カバー20と、を有する扁平な筐体1を備える。また、図2から図4に示すように、筐体1には、内部空間Sと、内部空間Sに連通して冷媒が流入する流入孔H1と、内部空間Sに連通して冷媒が流出する流出孔H2と、が形成されている。
【0018】
<方向定義>
ここで、本実施形態では、コールドプレート100の厚み方向を、単に厚み方向Zと称する。厚み方向Zは、ベースプレート10と樹脂カバー20とが対向する方向でもある。厚み方向Zから見ることを、平面視と称する。また、厚み方向Zに交差する(例えば、直交する)一方向を、第1方向Xと称する。また、厚み方向Zおよび第1方向Xの双方に交差する(例えば、直交する)方向を、第2方向Yと称する。また、厚み方向Zに沿って、ベースプレート10から樹脂カバー20に向かう向きを、+Xの向きまたは上方と称する。+Zの向きとは反対の向きを、-Zの向きまたは下方と称する。第1方向Xにおける一つの向きを、+Xの向きと称する。+Xの向きとは反対の向きを、-Xの向きと称する。第2方向Yにおける一つの向きを、+Yの向きと称する。+Yの向きとは反対の向きを、-Yの向きと称する。
【0019】
ベースプレート10の材質としては、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属を好適に用いることができる。図2から図4に示すように、本実施形態に係るベースプレート10は、板状の基部11と、熱交換部12と、を有する。
【0020】
図3および図4に示すように、基部11は、上方を向く第1面11aと、第1面11aとは反対側に位置して下方を向く第2面11bと、を有する。熱交換部12は、第1面11aに形成されている。基部11と熱交換部12とは一体に形成されていてもよいし、別体に形成されていてもよい。第2面11bには、不図示の発熱体や伝熱部材等が接触する。
【0021】
図2から図4に示すように、本実施形態に係る熱交換部12は、第2方向Yに延びる複数のフィン13を有する。各フィン13は、第2方向Yおよび厚み方向Zに延在する板状の形状を有する。各フィン13は、上方を向く上端面13aを有する。熱交換部12は、不図示の発熱体から受け取った熱を冷媒に伝達する役割を有する。熱交換部12が複数のフィン13を有することにより、熱交換部12と冷媒との接触面積が増え、熱伝導効率が向上する。
【0022】
図2に示すように、本実施形態に係る基部11の第1面11aには、嵌合溝11cが形成されている。嵌合溝11cは、平面視において、熱交換部12を取り囲む環状の形状を有する。
【0023】
樹脂カバー20の材質としては、疎水性の樹脂を好適に用いることができる。樹脂カバー20を構成する樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィルド(PPS)、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアセタール(POM)等の熱可塑性を有する結晶性プラスチックを用いることができる。樹脂カバー20の熱伝導率は、金属製であるベースプレート10の熱伝導率よりも低い。
【0024】
図1から図4に示すように、本実施形態に係る樹脂カバー20は、板状の天板部20Aと、メイン部材20Bと、を含む2つの部材を有している。天板部20Aとメイン部材20Bとは、例えば熱融着や超音波接合等によって互いに接合されている。
【0025】
図3および図4に示すように、本実施形態に係るメイン部材20Bは、メイン部材20Bの上面から下方に向けて凹む第1凹部21と、メイン部材20Bの下面から上方に向けて凹む第2凹部22と、を有する。第1凹部21および第2凹部22は、メイン部材20Bの平面視における周縁部を除いた全体にわたって形成されている(図2も参照)。
【0026】
第1凹部21および連通孔25a(後述)は、熱交換部12から熱を受け取る前の冷媒が流れる低温流路P1として機能する。図2に示すように、第1凹部21には流入孔H1が開口する。図3および図4に示すように、第2凹部22には、熱交換部12が収容される。図4に示すように、第2凹部22の第1方向Xにおける寸法は熱交換部12の第1方向Xにおける寸法よりも大きい。これにより、第2凹部22と熱交換部12との間には、第1方向Xにおける隙間(以下、合流空間S2と称する)が設けられる。合流空間S2には、流出孔H2が開口する。
【0027】
以下、樹脂カバー20のうち平面視において凹部21、22が形成されていない部分(平面視における周縁部)を周壁部24と称する(図2も参照)。周壁部24は、筒状の形状を有する。周壁部24の形状は、基部11に形成された嵌合溝11cの形状に対応している。周壁部24は、嵌合溝11cに嵌合された状態で、基部11に接合されている。周壁部24と基部11との接合の詳細については後述する。
【0028】
また、図3および図4に示すように、樹脂カバー20のうち、厚み方向Zにおいて第1凹部21と第2凹部22との間に位置する部分を、閉塞部25と称する。閉塞部25は、第1凹部21と第2凹部22とを厚み方向Zにおいて隔てるように、筒状の周壁部24の内側を閉塞している。閉塞部25は、周壁部24の厚み方向Zにおける中央部に位置する。本実施形態において、周壁部24と閉塞部25とは、一体に形成されている。閉塞部25は、熱交換部12に接合されている。閉塞部25と熱交換部12との接合の詳細については後述する。
【0029】
閉塞部25には、第1凹部21および第2凹部22の双方に開口する複数の連通孔25aが形成されている。つまり、各連通孔25aは、閉塞部25を厚み方向Zに貫通している。連通孔25a(低温流路P1)は、熱交換部12に開口している。図2に示すように、本実施形態に係る連通孔25aは、第1方向Xにおける寸法が第2方向Yにおける寸法よりも長い長孔形状を有する。また、本実施形態に係る閉塞部25は、複数(図示の例においては4つ)の連通孔25aが第1方向Xにおいて間隔を空けて配された列Rを複数有している。複数の列Rは、第2方向Yにおいて間隔を空けて配されている。
【0030】
図3に示すように、閉塞部25は、閉塞部25の下面から上方に向けて凹む複数の第3凹部23を有する。複数の第3凹部23は、第2方向Yにおいて間隔を空けて配されている。また、図4に示すように、第3凹部23は、第1方向Xに延びている(図6も参照)。より具体的に、本実施形態に係る第3凹部23は、熱交換部12の第1方向Xにおける全体にわたって延在している。第3凹部23は、熱交換部12から熱を受け取った後の冷媒が流れる高温流路P2として機能する。第3凹部23(高温流路P2)は、熱交換部12に開口している。
【0031】
ここで、第3凹部23(高温流路P2)は、第1凹部21(低温流路P1)に開口していない。つまり、第3凹部23は閉塞部25を厚み方向Zに貫通していない。また、図3および図4に示すように、第3凹部23と連通孔25aとは、第2方向Yにおける位置が互いに異なっており、第3凹部23は連通孔25aに開口していない。これにより、閉塞部25は、第1凹部21(低温流路P1)と第3凹部23(高温流路P2)とを隔てる隔壁部Bとして機能する。隔壁部Bは、低温流路P1を流れる冷媒と高温流路P2を流れる冷媒とが熱交換部12を介さずに混ざり合うことを防止する役割を有する。
【0032】
図3および図4に示すように、周壁部24の上端部には、周壁部24の内周側(第1方向Xまたは第2方向Yにおける内側)と、上方と、に開口する嵌合凹部24aが形成されている。図2に示すように、嵌合凹部24aは、周壁部24の全周にわたって形成されている。また、第1凹部21の平面視における中央部には、上方に向けて突出する一対の支持突起25bが設けられている。図3および図4に示すように、天板部20Aは、嵌合凹部24aに嵌合されてかつ支持突起25bに接した状態で、メイン部材20Bに固定される。より具体的に、天板部20Aは、例えば熱融着や超音波接合等によって嵌合凹部24aおよび支持突起25bに接合される。
【0033】
以下、メイン部材20Bの周壁部24と、天板部20Aと、を併せて、樹脂カバー20の外壁部Wと称する場合がある。外壁部Wは、有頂筒状の形状を有する。前述した内部空間Sは、有頂筒状の外壁部Wと、ベースプレート10の板状の基部11と、によって囲まれる空間である。図3および図4に示すように、前述した熱交換部12、低温流路P1および高温流路P2は、内部空間Sに位置している。
【0034】
以下、ベースプレート10と樹脂カバー20との接合の詳細について説明する。本実施形態においては、嵌合溝11cと周壁部24(外壁部W)とが熱融着により接合され、フィン13の上端面13aと閉塞部25(隔壁部B)とが熱融着により接合されている。
【0035】
図3および図4に示すように、基部11の嵌合溝11cおよびフィン13の上端面13aには、後述する適宜の表面処理によって、粗面化部40が形成されている。以下、嵌合溝11cに形成された粗面化部40を第1粗面化部40Aと称し、フィン13の上端面13aに形成された粗面化部40を第2粗面化部40Bと称する。図5に示すように、各粗面化部40A、40Bは、複数の微細孔41を有している。
【0036】
熱融着の際には、ベースプレート10が加熱されるとともに、粗面化された嵌合溝11cおよび上端面13a(すなわち、第1粗面化部40Aおよび第2粗面化部40B)に対して、周壁部24および閉塞部25が各々押し付けられる。このとき、ベースプレート10は、樹脂カバー20を構成する樹脂の融点以上の温度まで加熱される。このため、ベースプレート10に押し付けられた周壁部24および閉塞部25の一部が溶融し、微細孔41に入り込む。
【0037】
そして、加熱後にベースプレート10を冷却することで、溶融した樹脂が微細孔41の内部で固化する。固化した樹脂はアンカーとして機能し、樹脂カバー20とベースプレート10とが、第1粗面化部40Aおよび第2粗面化部40Bの双方において強固に接合される。ベースプレート10と樹脂カバー20とを強固に接合することで、内部空間Sの気密性を向上させることができる。
【0038】
粗面化部40A、40Bを形成するために嵌合溝11cおよび上端面13aに対して行う表面処理としては、レーザー照射やエッチング等の化成処理を採用することができる。例えば、レーザーによって接合領域(嵌合溝11cおよび上端面13a)に深さ10~100μm程度の微細孔41を複数形成してもよい。また、複数の微細孔41を、閉ループ状に所定の間隔を空けて形成してもよい。微細孔41同士の間隔は、例えば、微細孔41の直径~500μm程度であってもよい。また、接合領域を酸化させてもよい。これらの方法によれば、ベースプレート10と樹脂カバー20との間の接合表面積を十分に確保することができる。
【0039】
次に、以上のように構成されたコールドプレート100の作用について説明する。
【0040】
コールドプレート100は、ベースプレート10を介して発熱体から熱を受け取り、受け取った熱を外部に放出する放熱モジュールである。以下、放熱の原理について説明する。
【0041】
コールドプレート100の内部空間Sには、流入孔H1を通じて冷媒が供給される。流入孔H1から供給された冷媒は、図4および図6に示すように、第1凹部21(低温流路P1)を流れる(流れF1として図示)。その後、冷媒は、図3および図6に示すように、連通孔25a(低温流路P1)を通じて熱交換部12に到達する(流れF2として図示)。熱交換部12に到達した冷媒は、熱交換部12から熱を受け取りながらフィン13に沿って第2方向Yに移動し(流れF3として図示)、複数の第3凹部23(高温流路P2)のいずれかに到達する(流れF4として図示)。第3凹部23に到達した冷媒は、図4および図6に示すように、第3凹部23に沿って第1方向Xに移動し、合流空間S2に到達する(流れF5として図示)。合流空間S2に到達した冷媒は、流出孔H2を通じてコールドプレート100の外部へと排出される。上記のように、本実施形態に係るコールドプレート100においては、低温流路P1、熱交換部12、高温流路P2の順に冷媒が流れる。このプロセスにより、コールドプレート100は、発熱体から熱を受け取り、受け取った熱を外部に放出することができる。
【0042】
コールドプレート100は、いわゆる二相流冷却方式のコールドプレートであってもよい。すなわち、コールドプレート100は、熱交換部12において冷媒が液体から気体へと蒸発するように構成されていてもよい。この場合、冷媒の蒸発潜熱によって効率よく発熱体を冷却することができる。二相流冷却方式のコールドプレート100においては、低温流路P1に液体の冷媒が流れ、高温流路P2には気体の冷媒が流れる。
【0043】
また、コールドプレート100は、いわゆる噴流冷却方式のコールドプレートであってもよい。すなわち、コールドプレート100は、冷媒が連通孔25aの流路抵抗によって加速され、熱交換部12に対して高い流速で噴出されるように構成されていてもよい。この構成によっても、コールドプレート100によって効率よく発熱体を冷却することができる。噴流冷却方式のコールドプレート100においては、低温流路P1および高温流路P2の双方に液体の冷媒が流れる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係るコールドプレート100は、基部11を有するベースプレート10と、基部11に接合された外壁部W(天板部20Aおよび周壁部24)を有する樹脂カバー20と、を有する筐体1を備え、筐体1には、基部11と外壁部Wとによって囲まれた内部空間Sと、内部空間Sに連通して冷媒が流入する流入孔H1と、内部空間Sに連通して冷媒が流出する流出孔H2と、が形成され、ベースプレート10は、内部空間Sに位置して発熱体から受け取った熱を冷媒に伝達する熱交換部12を有し、樹脂カバー20は、内部空間Sに位置して熱交換部12から熱を受け取る前の冷媒が流れる低温流路P1(第1凹部21)と、内部空間Sに位置して熱交換部12から熱を受け取った後の冷媒が流れるとともに低温流路P1には開口しない高温流路P2(第3凹部23)と、を有する。
【0045】
この構成によれば、コールドプレート100が低温流路P1および高温流路P2を有しているため、コールドプレート100に対して二相流冷却方式や噴流冷却方式を適用することができる。また、低温流路P1および高温流路P2が樹脂カバー20に設けられているため、例えば流路P1、P2を金属で形成する場合と比較して、流路P1、P2の形成を容易に行うことができる。また、低温流路P1が金属よりも熱伝導性の低い樹脂で形成されているため、コールドプレート100に二相流冷却方式を適用した場合においては、冷媒が熱交換部12ではなく低温流路P1において蒸発してしまうことを防止できる。また、高温流路P2を疎水性の樹脂によって形成することで、熱交換部12において一度蒸発した冷媒が高温流路P2に液体として付着することを防止できる。これにより、コールドプレート100の冷却効率を安定させることができる。
【0046】
また、樹脂カバー20は、低温流路P1と高温流路P2とを隔てる隔壁部B(閉塞部25)を有し、隔壁部Bは、ベースプレート10に接合されている。この構成により、例えば外壁部Wのみがベースプレート10と接合されている場合と比較して、ベースプレート10と樹脂カバー20とをより強固に接合することができる。また、隔壁部Bが樹脂カバー20に接合されていることで、冷媒が熱交換部12を経由せずに低温流路P1と高温流路P2との間を移動しまう可能性を低減することができる。特に、コールドプレート100に二相流冷却方式を適用した場合においては、蒸発に伴う冷媒の体積増大に起因してコールドプレート100の内圧が高まる。これにより、冷媒が熱交換部12を経由せずに低温流路P1と高温流路P2との間を移動してしまう可能性が高まる。したがって、隔壁部Bをベースプレート10に接合させて流路P1、P2間における冷媒の移動を防止する構成が好適である。
【0047】
また、隔壁部Bは、熱交換部12に接合されている。より具体的に、隔壁部Bは、複数のフィン13に接合されている。この構成により、隔壁部Bの接合対象として熱交換部12を好適に活用することができる。
【0048】
また、低温流路P1が熱交換部12に開口する部位(第3凹部23)と、高温流路P2が熱交換部12に開口する部位(連通孔25a)とは、高温流路P2が延びる第1方向Xに交差する第2方向Yにおける位置が互いに異なっており、熱交換部12は、第2方向Yに延びる複数のフィン13を有する。この構成により、フィン13を用いて低温流路P1から高温流路P2へと冷媒を誘導することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0050】
図7に示すように、本実施形態に係るコールドプレート200は、第1実施形態に係る樹脂カバー20とは異なる形状の樹脂カバー50を有する。本実施形態に係る樹脂カバー50は、第1実施形態に係る樹脂カバー20とは異なり、一体の部材によって形成されている。
【0051】
具体的に、本実施形態に係る樹脂カバー50は、図8に示すように、天板部51と、周壁部52と、蛇行壁部53と、を有する。天板部51、周壁部52および蛇行壁部53は、互いに一体に形成されている。図7から図10に示すように、天板部51および周壁部52は、第1実施形態に係る天板部20Aおよび周壁部24と同様に、有頂筒状の外壁部Wを構成する。周壁部52(外壁部W)は、第1実施形態と同様に、基部11の嵌合溝11cに対して接合されている。
【0052】
図9および図10に示すように、蛇行壁部53は、天板部51から下方に向けて突出している。蛇行壁部53は、外壁部W(天板部51および周壁部52)とベースプレート10の基部11とによって囲まれる内部空間Sに位置している。図8に示すように、蛇行壁部53は、平面視において蛇行壁部53の中央部に配置されている。
【0053】
蛇行壁部53の第1方向Xにおける寸法は、外壁部Wの第1方向Xにおける内径よりも小さい。これにより、蛇行壁部53と外壁部Wとの間には、第1方向Xにおける隙間が2つ設けられている。当該2つの隙間は、蛇行壁部53の第1方向Xにおける両側に位置する。2つの隙間のうち一方の隙間(以下、分岐空間S1と称する)には、流入孔H1が開口する。2つの隙間のうち他方の隙間(以下、合流空間S2と称する)には、流出孔H2が開口する。
【0054】
図8に示すように、蛇行壁部53は、第1方向Xに蛇行しながら第2方向Yに延びる波状の形状を有する。これにより、蛇行壁部53は、分岐空間S1に開口する複数の入口凹部54と、合流空間S2に開口する複数の出口凹部55と、を有する。複数の入口凹部54と複数の出口凹部55とは、第2方向Yにおいて交互に配されている。なお、蛇行壁部53の第2方向Yにおける両端は、ともに外壁部Wに接続されている。
【0055】
図9に示すように、入口凹部54は、合流空間S2に開口していない。図10に示すように、出口凹部55は、分岐空間S1に開口していない。本実施形態においては、入口凹部54が低温流路P1として機能し、出口凹部55が高温流路P2として機能する。また、蛇行壁部53は、低温流路P1(入口凹部54)と高温流路P2(出口凹部55)とを隔てる隔壁部Bとして機能する。隔壁部Bである蛇行壁部53は、内部空間Sに位置する熱交換部12(フィン13の上端面13a)に対して接合されている。入口凹部54および出口凹部55は、熱交換部12に開口している。
【0056】
以上のように構成されたコールドプレート200は、第1実施形態に係るコールドプレート100と同様に、ベースプレート10を介して発熱体から熱を受け取り、受け取った熱を外部に放出する放熱モジュールとして機能する。以下、放熱の原理について説明する。
【0057】
図9に示すように、流入孔H1から供給された冷媒は、分岐空間S1から複数の入口凹部54(低温流路P1)へと分岐した後、入口凹部54(低温流路P1)に沿って第1方向Xに流れる(流れF6として図示)。その後、冷媒は、入口凹部54の先端部54aにおいてせき止められ、熱交換部12に移動する(流れF7として図示)。熱交換部12に到達した冷媒は、熱交換部12から熱を受け取りながらフィン13に沿って第2方向Yに移動し、図10に示すように、複数の出口凹部55(高温流路P2)のいずれかに到達する(流れF8として図示)。出口凹部55に到達した冷媒は、出口凹部55に沿って第1方向Xに移動し、合流空間S2に到達する(流れF9として図示)。合流空間S2に到達した冷媒は、流出孔H2を通じてコールドプレート200の外部へと排出される。上記のように、本実施形態に係るコールドプレート200においても、低温流路P1、熱交換部12、高温流路P2の順に冷媒が流れる。このプロセスにより、コールドプレート200は、発熱体から熱を受け取り、受け取った熱を外部に放出することができる。
【0058】
なお、図9に示すように、入口凹部54の先端部54aは、第2方向Yに交差する断面において円弧状の形状を有していてもよい。この構成によれば、入口凹部54(低温流路P1)から熱交換部12への冷媒の流れを促進することができる。同様に、出口凹部55の先端部55aは、第2方向Yに交差する断面において円弧状の形状を有していてもよい(図10参照)。この構成によれば、先端部55aにおける冷媒の滞留を抑制することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係るコールドプレート200は、第1実施形態に係るコールドプレート100と同様に、樹脂カバー50が、低温流路P1および高温流路P2を有する。この構成により、例えば流路P1、P2を金属で形成する場合と比較して、流路P1、P2の形成を容易に行うことができる。
【0060】
さらに、本実施形態に係るコールドプレート200においては、外壁部W、低温流路P1、および高温流路P2が、一体に形成されている。この構成により、例えば外壁部W、低温流路P1、および高温流路P2が別体に形成されている場合と比較して、樹脂カバー50の製造をより容易に行うことができる。
【0061】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0062】
図11は、第2実施形態に係る樹脂カバー50の変形例を示す図である。図11に示すように、出口凹部55(高温流路P2)の幅(第2方向Yにおける寸法)は、第1方向Xにおいて一定でなくてもよい。この変形例において、出口凹部55(高温流路P2)は、流出孔H2に近づくにつれて漸次広がる形状を有している。この構成によれば、出口凹部55(高温流路P2)に到達した冷媒が、流出孔H2に向けて流れやすくなる。これにより、コールドプレート200の冷却効率をより高めることができる。
【0063】
また、熱交換部12はフィン13を有していなくてもよい。発熱体から受け取った熱を冷媒に伝達することが可能であれば、熱交換部12の構成は適宜変更可能である。
【0064】
また、隔壁部Bの位置や形状によっては、隔壁部Bがベースプレート10のうち熱交換部12以外の部分に接合されていてもよい。
【0065】
また、低温流路P1と高温流路P2との間での冷媒の移動を抑制可能であれば、隔壁部Bはベースプレート10に接合されていなくてもよい。
【0066】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0067】
100、200…コールドプレート 1…筐体 10…ベースプレート 11…基部 12…熱交換部 13…フィン 20、50…樹脂カバー W…外壁部 B…隔壁部 H1…流入孔 H2…流出孔 P1…低温流路 P2…高温流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11