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特開2024-87244共重合ポリエステル樹脂及び共重合ポリエステル樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087244
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】共重合ポリエステル樹脂及び共重合ポリエステル樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/00 20060101AFI20240624BHJP
   C08G 63/78 20060101ALI20240624BHJP
   C08J 11/04 20060101ALI20240624BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20240624BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
C08G63/00
C08G63/78
C08J11/04
C09J167/00
C09D167/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201947
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228073
【氏名又は名称】日本エステル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小野 勝則
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】杉原 崇嗣
(72)【発明者】
【氏名】北口 貴之
【テーマコード(参考)】
4F401
4J029
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401CA67
4F401DA15
4F401DC01
4F401FA01Z
4F401FA02Z
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4J029AB04
4J029AB07
4J029AC02
4J029AD07
4J029AD10
4J029AE01
4J029AE02
4J029AE03
4J029AE04
4J029AE11
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4J029AE18
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA07
4J029BA08
4J029BA10
4J029BD06A
4J029BD07A
4J029BF09
4J029BF10
4J029BF18
4J029BF20
4J029BF25
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4J029CA04
4J029CA06
4J029CA09
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4J029FC04
4J029FC05
4J029FC08
4J029FC12
4J029FC14
4J029FC16
4J029FC17
4J029FC35
4J029FC36
4J029FC41
4J029FC43
4J029GA12
4J029GA13
4J029GA14
4J029GA15
4J029GA17
4J029GA23
4J029HA01
4J029HB01
4J029HD07
4J029JE162
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4J029KA02
4J029KA03
4J029KD02
4J029KD07
4J029KG02
4J029LB06
4J038DD001
4J038NA01
4J038PB08
4J040ED001
4J040NA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】透明性に優れる共重合ポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】本発明の共重合ポリエステル樹脂は、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含む共重合ポリエステル樹脂であって、ガラス転移温度が-20℃~80℃であり、固形分濃度30質量%で酢酸エチルに溶解したときのヘイズが6.0%以下である、共重合ポリエステル樹脂。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含む共重合ポリエステル樹脂であって、ガラス転移温度が-20℃~80℃であり、固形分濃度30質量%で酢酸エチルに溶解したときのヘイズが6.0%以下である、共重合ポリエステル樹脂。
【請求項2】
請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂を含む、接着剤。
【請求項3】
請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂を含む、塗料。
【請求項4】
請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂から形成された、塗膜。
【請求項5】
請求項4に記載の塗膜を含む、積層体
【請求項6】
a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を用いて共重合ポリエステル樹脂を製造する方法であって、下記(1)~(3)の工程を全て含むことを特徴とする共重合ポリエステル樹脂の製造方法。
(1)リサイクルポリエステル原料に、グリコール成分とジカルボン酸成分を、全アルコール成分/全酸成分のモル比が1.20~1.50となるように添加し、230~260℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を得る工程
(2)前記解重合体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程
(3)前記解重合体を温度240~280℃及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合ポリエステル樹脂、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境配慮型素材のニーズの高まりを受けて、繊維,成形,フィルム用途向けに、リサイクルポリエステルをケミカルリサイクルして原料に用いたPETや共重合PETの製品開発が盛んに行われている。同様に、共重合ポリエステルでも、リサイクルポリエステルを原料とする要望が強まっている。例えば、特許文献1,2には、再生ポリエステルをケミカルリサイクルして原料に用いた共重合ポリエステルの接着剤や塗料が記載されているが、再生原料由来のくすみがあり、透明性に劣るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-58132公報
【特許文献2】特開2004-83695公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学用途等においても、ケミカルリサイクル化の要望は高まっており、再生原料由来のくすみを抑えた、透明性に優れる共重合ポリエステルが求められている。
本発明の目的は、リサイクルポリエステル原料を用いた場合であっても、透明性に優れる共重合ポリエステル樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含む共重合ポリエステル樹脂であって、ガラス転移温度が-20℃~80℃であり、固形分濃度30質量%で酢酸エチルに溶解したときのヘイズが6.0%以下である、共重合ポリエステル樹脂。
(2)(1)の共重合ポリエステル樹脂を含む、接着剤。
(3)(1)の共重合ポリエステル樹脂を含む、塗料。
(4)(1)の共重合ポリエステル樹脂から形成された、塗膜。
(5)(4)の塗膜を含む、積層体。
(6)a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を用いて共重合ポリエステル樹脂を製造する方法であって、下記1~3の工程を全て含むことを特徴とする共重合ポリエステル樹脂の製造方法。
1.リサイクルポリエステル原料に、グリコール成分とジカルボン酸成分を、全アルコール成分/全酸成分のモル比が1.20~1.50となるように添加し、230~260℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を得る工程
2.前記解重合体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程
3. 前記解重合体を温度240~280℃及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う工程
【発明の効果】
【0006】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、a)使用済みポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を含有しながらも、異物の混入量が少なく、透明性に優れるものである。本発明のポリエステル樹脂は幅広い用途に用いられるが、接着剤、塗料等に特に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の共重合ポリエステル樹脂を詳細に説明する。
本発明の共重合ポリエステル樹脂(以下、本発明樹脂と称することがある)は、a)使用済みポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を含むポリエステル樹脂である。
【0008】
上記a)の使用済みポリエステル製品としては、例えば一度市場に出回り、使用後に回収されたポリエステル成形品(繊維を含む。)等が挙げられる。その代表例としては、PETボトル等のような容器又は包装材料が挙げられる。上記b)のポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルは、製品化に至らなかったポリエステルであり、例えば規格を外れた樹脂ペレット、成形時に不要になった材料、成形時に切断された断片、成形時、加工時等に発生した屑、銘柄変更時に発生する移行品の裁断物、試作品・不良品の裁断物等が挙げられる。
【0009】
上記a)及びb)は、その形態等は限定されず、必要に応じてさらに粉砕、切断等の加工を行うことによりペレット化されていてもよいし、あるいは溶融してペレット化されていてもよい。上記a)及びb)は、それぞれ単独で使用してもよいし、両者の混合物を用いてもよい。また、上記a)及びb)のリサイクルポリエステル原料としては、結晶質又は非晶質のいずれのものであってもよい。従って、例えば熱処理を行っていない非晶質のポリエステル屑のペレット、熱処理を施した結晶質ペレット、結晶質ペレットと非晶質ペレットとの混合品等を使用することができる。本発明では、特に缶内への投入や解重合反応時にペレット同士の融着を防止する目的で結晶性のリサイクルポリエステル原料を用いることが好ましい。従って、上記a)又はb)の材料を熱処理により結晶化したもの(結晶化ペレット等)を好適に用いることができる。
【0010】
また、上記a)及びb)のリサイクルポリエステル原料の性状としては、限定的ではなく、上記a)及びb)の形態のままでもよいし、さらに裁断、粉砕等の加工を施して得られる裁断片、粉砕物(粉末)等のほか、これらを成形してなる成形体(ペレット等)等の固体の形態が挙げられる。より具体的には、ポリエステル屑の溶融物を冷却及び切断して得られるペレット、PETボトルのようなポリエステル成形品を細かく裁断した裁断片等が例示される。その他にも、上記のような裁断片、粉砕物(粉末)等を溶媒に分散又は溶解させて得られる液体の形態であってもよい。これらの原料を用いてポリエステル製品を製造する際には、必要に応じてこれらをその融点以上の温度で溶融させて融液として缶内へ投入することもできる。
【0011】
本発明の目的の一つは、リサイクルポリエステル原料の使用率(リサイクル率)が高い共重合ポリエステル樹脂を得ることであるため、本発明の共重合ポリエステル樹脂は、上記a)及びb)の少なくとも1種であるリサイクルポリエステル原料に由来する成分を10質量%以上含有することが好ましく、中でも20質量%以上含有することがより好ましい。
【0012】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が-20℃~80℃であり、-20~70℃であることが好ましく、-20~65℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が-20℃未満であると、粘着性が強い樹脂となり取り扱いにくくなり、80℃を超えると粘着性が低い樹脂となり、接着剤用途に適さない場合がある。
【0013】
本発明の共重合ポリエスエル樹脂は、DSCを用い-40℃から200℃まで、10℃/分で昇温させたチャートから求めた融解ピーク熱量が1mJ/mg以下であることが好ましく、0.8mJ/mg以下であることがより好ましく、検出されないことがさらに好ましい。1mJ/mgを超えると、非晶性の樹脂とならないことから、接着性が低下する場合がある。
【0014】
<グリコール成分>
本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成するグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール等の脂肪族グリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロブタンジメタノール等の脂環族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエーテル結合含有グリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上のアルコール、等が挙げられる。さらに、2,2-ビス[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンのようなビスフェノール類(ビスフェノールA)のアルキレンオキシド付加体やビス[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンのようなビスフェノール類(ビスフェノールS)のアルキレンオキシド付加体等が挙げられる。
中でも、溶剤溶解性の観点から、ネオペンチルグリコールを30~70モル%含有することが好ましい。
【0015】
<ジカルボン酸成分>
本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、3-tert-ブチルイソフタル酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルネンジカルボン酸およびその無水物、テトラヒドロフタル酸およびその無水物等の脂環式ジカルボン酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸等の3官能以上のカルボン酸が挙げられる。また、スルホン酸基を有するものであってもよく、例えば、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホテレフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5-ナトリウムスルホテレフタル酸ジメチル、5-カリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5-リチウムスルホイソフタル酸ジメチル等が挙げられる。
【0016】
中でも、接着剤に用いた際の接着力を高めるために、凝集力を向上させることから、テレフタル酸、イソフタル酸を含有することが好ましく、テレフタル酸とイソフタル酸とを同時に含有することがより好ましい。また、溶剤溶解性の観点から飽和脂肪族ジカルボン酸を含有することが好ましく、中でもセバシン酸を含有することがより好ましいい。
ジカルボン酸成分中、テレフタル酸の含有量は、1~90モル%であることが好ましい。イソフタル酸の含有量は、1~60モル%であることが好ましい。セバシン酸の含有量は、1~50モル%であることが好ましい。
【0017】
ジカルボン酸成分中、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸の合計した含有量が70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成する他の成分として、上記ジカルボン酸成分以外の多価カルボン酸成分や、ヒドロキシカルボン酸成分等が挙げられる。
<多価カルボン酸成分>
上記ジカルボン酸成分以外の多価カルボン酸成分として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3′,4′-ビフェニルテトラカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0019】
<ヒドロキシカルボン酸成分>
ヒドロキシカルボン酸成分としては、例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体や、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、β-メチル-β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトン、グリコリド、ラクチド等の環状エステルが挙げられる。
【0020】
多価カルボン酸やヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物等が挙げられる。
【0021】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、必要に応じて、モノカルボン酸、モノアルコールが共重合されていてもよい。モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4-ヒドロキシフェニルステアリン酸等が挙げられ、モノアルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0022】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、重縮合触媒が含まれており、また、用途に応じて添加される各種添加剤が含まれていてもよい。
まず、重縮合触媒としては、限定的ではないが、例えばゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、コバルト化合物、亜鉛化合物、スズ化合物等の少なくとも1種を用いることができる。その中でも、特にゲルマニウム化合物及びアンチモン化合物の少なくとも1種を使用することが好ましい。得られる共重合ポリエステル樹脂の透明性を重視する場合においては、ゲルマニウム化合物を使用することが好ましい。上記の各化合物としては、ゲルマニウム、アンチモン、チタン、コバルト等の酸化物、無機酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、硫化物等を用いることができる。
【0023】
重縮合触媒の使用量は、特に限定されないが、例えば生成するポリエステル樹脂の酸成分1モルに対して1×10-5モル以上とすることが好ましく、その中でも6×10-5モル以上とすることがより好ましい。上記使用量の上限は、例えば1×10-3モル程度とすることができるが、これに限定されない。
【0024】
なお、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重縮合触媒も、重縮合反応時に触媒として作用する場合もあるため、重縮合工程で重縮合触媒を添加する際には、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重縮合触媒の種類及びその含有量を考慮することが好ましい。
【0025】
用途に応じて添加される各種添加剤としては、溶融粘度を調整することができる脂肪酸エステル、ヒンダードフェノール系抗酸化剤、樹脂の熱分解を抑制することができるリン化合物、樹脂の外観を改良することができる色調調整剤、樹脂の白度を向上させるチタン化合物、樹脂の結晶性を向上させる結晶核剤等が挙げられる。
【0026】
脂肪酸エステルとしては、例えば蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等が挙げられる。これらの中でも、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレートが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0027】
ヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1’-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が用いられるが、効果とコストの点で、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0028】
リン化合物としては、例えば亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフォート等のリン化合物を用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0029】
色調調整剤としては、酢酸コバルト等のコバルト化合物、酢酸マンガン等のマンガン化合物、染料(青系、紫系、赤系)、銅フタロシアニン系化合物等の色調調整剤が挙げられる。中でも、重縮合触媒活性、得られるポリエステル樹脂の物性及びコストの点から、酢酸コバルトや染料が好ましい。
また、染料は、青系染料、赤系染料、紫系染料等を含有すると、色調が良好となり好ましい。
【0030】
なお、染料としては、カラーインデックス名で、SOLVENT BLUE 104、SOLVENT BLUE 122、SOLVENT BLUE 45等の青系の染料、SOLVENT RED 111、SOLVENT RED 179、SOLVENT RED 195、SOLVENT RED 135、P IGMENT RED 263、VATRED 41等の赤系の染料、DESPERSE VIOLET 26、SOLVENT VIOLET 13、SOLVENT VIOLET 37、SOLVENT VIOLET 49等の紫系染料が挙げられる。中でも装置腐食の要因となりやすいハロゲンを含有せず、高温での耐熱性が比較的良好で発色性に優れた、SOLVENT BLUE 104、SOLVENT BLUE 45、SOLVENT RED 179、SOLVENT RED 195、SOLVENT RED 135、SOLVENT VIOLET 59が好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0031】
チタン化合物としては、酸化チタンを用いることが好ましい。酸化チタンは、ポリエステル樹脂の艶消し剤や白色顔料として一般的に使用されているが、本発明樹脂に適量の酸化チタンが添加されていることにより、繊維とした際の白度が向上し、良好な色調の織編物を得ることが出来る点で好ましい。酸化チタンの添加量としては、ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.05~5質量部であることが好ましい。
【0032】
結晶核剤としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、合成ケイ酸及びケイ酸塩、亜鉛華、ハイサイトクレー、カオリン、塩基性炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、石英粉、ケイ藻土、ドロマイト粉、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素等;カルボキシル基の金属塩を有する低分子有機化合物、カルボキシル基の金属塩を有する高分子有機化合物、高分子有機化合物等が挙げられる。中でも、マイカ、タルク、高分子量有機化合物が好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0033】
<ヘイズ>
上記成分を含む本発明の共重合ポリエステル樹脂は透明性に優れるものである。その指標としては、固形分濃度30質量%で酢酸エチルに溶解し溶液とした場合のヘイズが6.0%以下であることが好ましく、4.0%以下であることがより好ましく、3.0%以下であることがさらに好ましい。ヘイズの求め方については、実施例において詳述する。
【0034】
<色調b値>
上記成分を含む本発明の共重合ポリエステル樹脂は色調に優れるものである。その指標としては、固形分濃度30質量%で酢酸エチルに溶解し溶液とした場合の色調b値が20.0以下であることが好ましく、10.0以下であることがより好ましく、5.0以下であることがさらに好ましい。色調b値の求め方については、実施例において詳述する。
【0035】
<酸価>
共重合ポリエステル樹脂の酸価は、0.5mgKOH/g以上であることが好ましく、0.5~3.5mgKOH/gであることがより好ましく、0.5~3.0mgKOH/gであることがさらに好ましい。酸価が0.5mgKOH/g未満であると、接着性に劣る場合がある。
【0036】
<数平均分子量>
共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量は、3,000~40,000であることが好ましく、5,000~35,000であることがより好ましく、5,000~30,000であることがさらに好ましく、5,000~20000であることが特に好ましい。数平均分子量が3,000未満であると樹脂の取り扱いが困難となったり、接着力が低下したりする場合があり、40,000を超えると、溶媒への溶解性が劣る場合がある。
【0037】
次に、本発明樹脂の製造方法について説明する。本発明の製造方法においては、(1)~(3)に示す工程を順に行うことが重要である。
(1)リサイクルポリエステル原料にグリコール成分とジカルボン酸成分を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.20~1.50となるように添加し、230~260℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより、解重合体を得る工程
(2)前記解重合体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程
(3)前記解重合体を240~280℃及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う工程
【0038】
まず、(1)の解重合工程では、リサイクルポリエステル原料にグリコールを、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.20~1.50となるように添加し、230~260℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を得る。
【0039】
(1)の工程において、グリコール成分、ジカルボン酸成分、リサイクルポリエステル原料を投入する際には、撹拌しながら全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.20~1.50となるようにして、230~260℃の熱処理条件下で解重合を行い、解重合体を得る。
本発明の製造方法においては、この工程が重要である。つまり、本発明においては、グリコール成分およびジカルボン酸成分の存在下でリサイクルポリエステル原料の解重合を行うが、このとき、原料の全ての成分を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が、1.20~1.50となるようにして投入し、解重合を行うものである。
【0040】
グリコール成分、またはジカルボン酸成分の投入量(添加量)は、リサイクルポリエステル原料100質量部に対して3~40質量部とすることが好ましい。添加量が上記より少ない場合、リサイクルポリエステル原料を投入した際に、リサイクルポリエステル原料同士がブロッキングを起こしやすくなり、攪拌機に過大な負荷がかかるため好ましくない。
【0041】
(1)の工程において、グリコール成分、ジカルボン酸成分、およびリサイクルポリエステル原料に加えて、エチレンテレフタレートオリゴマーを添加して解重合を行ってもよい。エチレンテレフタレートオリゴマーを添加する際にも、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.20~1.50となるようにすることが必要である。
【0042】
エチレンテレフタレートオリゴマーとしては、例えばエチレングリコールとテレフタル酸とのエステル化反応物を好適に用いることができる。また、エチレンテレフタレートオリゴマーの数平均重合度は、限定的ではないが、例えば2~20程度とすることができる。
【0043】
本発明の(1)の工程においては、上記した解重合反応により、リサイクルポリエステル原料はモノマーにまで分解されずに、繰り返し単位が5~20程度のオリゴマーまで分解されることが望ましい。
【0044】
解重合反応を行う際の全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲を超えて高いと、得られる共重合ポリエステル樹脂は、本発明で規定する溶液ヘイズが高いものとなる。これは、解重合反応を行う際の全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲を超えて高いものである場合、リサイクルポリエステル原料中の各種の無機物や非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われないため、(2)の工程において、これらの異物をもれなく濾過することができず、(3)の工程の重縮合反応後に異物が析出し、その結果、樹脂溶液のヘイズが高い共重合ポリエステル樹脂となる。全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲を外れて低いと、解重合反応が十分に進行せず、重縮合反応に進むことができず、共重合ポリエステル樹脂が得られない。
【0045】
本発明の製造方法において、(1)の工程で用いる反応器は、容量や攪拌翼の形状は、一般的に使用されているエステル化反応器で特に問題ないが、解重合反応を効率的に進めるため、エチレングリコールを系外に溜出させない蒸留塔を併設している構造となっていることが好ましい。リサイクルポリエステル原料を投入する際には、常圧下で撹拌しながら行うことが好ましく、少量の不活性ガス(一般的には窒素ガスを使用)でパージした状態で投入することがより好ましい。
【0046】
また、エステル反応器を使用して解重合反応を行う際には、リサイクルポリエステル原料とグリコール成分とジカルボン酸成分を添加して行う解重合反応を複数回に分けて行う方法や、グリコール成分やジカルボン酸成分中にリサイクルポリエステル原料を少量ずつ添加する方法を採用することが好ましい。
【0047】
(1)の工程で行う解重合時の反応温度は、230~260℃の範囲に設定して行うことが好ましく、中でも内温を245~255℃の範囲に設定して行うことがより好ましい。解重合時の反応温度が230℃未満の場合には、解重合反応に必要な熱量が付与できず、重縮合反応を行うことができなかったり、解重合反応に長時間の熱処理が必要となり、操業性が悪くなったりする。一方、反応温度が260℃を超える場合は、解重合体の溶融粘度が低くなりすぎるため、(2)の工程での濾過効率が悪くなり、樹脂溶液としたときのヘイズが高くなる。なお、解重合時の反応時間(リサイクルポリエステル原料の投入終了後からの反応時間)は、4時間以内が好ましく、ポリエステルの色調悪化を抑える観点から、2時間以内とすることがより好ましい。
【0048】
(2)の工程においては、(1)の工程で解重合反応を行った解重合体を、濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて異物を濾過する。上記したように、(1)の工程の条件で解重合反応を行うことにより、リサイクルポリエステル原料の使用量が多い場合であっても、これらの原料中に多く含まれる各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われ、その後、重縮合反応を行うことにより、透明性に優れる共重合ポリエステルを得ることができる。このため、濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させることにより、これらの析出した異物をもれなくフィルターで捕捉し、異物の混入量の少ない濾液を得ることができる。
濾過粒度が25μmより大きいフィルターを使用すると、解重合体中の異物を十分に除去できず、得られる共重合ポリエステル樹脂中の異物が多くなる。このため、樹脂溶液のヘイズが悪くなる。一方、濾過粒度が10μmよりも小さいフィルターを使用すると、異物による目詰まりが生じやすく、その後の重縮合反応を行うことができない。また、フィルターライフが短くなることにより、コスト的に不利となり、また、操業性も悪化する。
【0049】
また、本発明の製造方法の(2)の工程で使用できるフィルターとしては、一般的なもので特に問題ないが、スクリーンチェンジャー式のフィルターやリーフディスクフィルターやキャンドル型焼結フィルターなどが挙げられる。
【0050】
次に(3)の工程として、重縮合反応槽において、(3)の工程で得られた反応生成物に、温度240~280℃、1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う。
重縮合反応温度が240℃未満であったり、重縮合反応時の圧力が1.0hPaを超えると、重縮合反応時間が長くなるため、生産性に劣るものとなったり、重縮合反応が進まず、共重合ポリエステル樹脂を得ることができない。
重縮合反応温度が280℃を超えて高すぎると、熱分解により重合が進行しなかったり、熱分解によりポリマーが着色したりする。
【0051】
<共重合ポリエステル樹脂の用途>
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、接着剤や塗料として好適に用いられる。接着剤や塗料には、溶媒または各種の添加剤を含有していてもよい。
本発明のポリエステル樹脂をホットメルト接着剤としてもよい。この場合の接着方法としては、ペレット状、粉状、シート状、フィルム状、不織布状等各種の形状に成形し、被着体に挟み込んで加熱接着する方式、溶融アプリケータを使用し被着体に塗布した後、貼り合わせる方式、押出機を使用して被着体にフィルム状、チューブ状に被覆コートした後、貼り合わせる方式等、各種の方式を採用することができる。
【0052】
(樹脂溶液)
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂は、種々の溶媒に溶解または分散し、樹脂溶液の形態で種々の用途に展開できる。本発明において樹脂溶液とは、共重合ポリエステル樹脂が溶解した溶液および分散した溶液の両者を含む。
【0053】
溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサフルオロイソプロパノール、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエタン、トリフルオロ酢酸、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、トリメチルベンゼン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン、スルホラン、シクロヘキサノン等が挙げられる。上記溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、上記以外の溶媒と混合して使用してもよい。上記溶媒は、ポリエステル樹脂の種類、重合度、所望の濃度等を考慮し、適宜選択できる。
【0054】
樹脂溶液には、無機フィラー、バインダー、酸化防止剤、濡れ剤、レベリング剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0055】
本発明の共重合ポリエステル樹脂を、他の樹脂または硬化剤と反応させて使用する場合、本発明の樹脂溶液と、他の樹脂または硬化剤の溶液とをそれぞれ調製し、使用直前に混合し、その後、塗布乾燥等して両樹脂を反応硬化させてもよい。
【0056】
本発明の樹脂溶液を塗布し、乾燥することにより、塗膜、積層体等を形成することができる。塗膜、積層体形成の際に使用できる基材の具体例としては、ガラス基板、各種金属板、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム等が挙げられる。
【0057】
樹脂溶液を基材へ塗布する方法は特に限定されないが、例えば、ワイヤーバーコーター塗り、フィルムアプリケーター塗り、スプレー塗り、グラビアロールコーティング法、スクリーン印刷法、リバースロールコーティング法、リップコーティング、エアナイフコーティング法、カーテンフローコーティング法、浸漬コーティング法、ダイコート法、スプレー法、凸版印刷法、凹版印刷法、インクジェット法が挙げられる。塗膜は、従来の方法、装置等を使用して形成することができ、本発明の樹脂溶液を基材に塗布し、溶媒成分を乾燥することにより得られる。
【0058】
本発明の樹脂溶液は、缶塗料として使用できる。缶塗料の塗布用機材である金属板としては、シート状または帯状の鋼板、アルミニウム板、あるいは、それらの表面に種々のメッキ処理や化成処理を施したものが挙げられる。樹脂溶液を金属板上に塗布後、焼き付けることで、金属表面に塗膜を形成することができる。塗膜を有する金属板は2ピース缶の缶胴や上蓋、3ピース缶の缶胴や底蓋材等加工性が必要な部材として用いることができる。
【0059】
本発明の樹脂溶液は、リチウムイオン二次電池等の蓄電素子用セパレータにも使用できる。樹脂溶液を用いて作製した多孔膜をセパレータとして使用してもよいし、既存のセパレータの両面または片面に本発明の樹脂溶液を用いて多孔被膜を形成したものをセパレータとして使用してもよい。
また、本発明の樹脂溶液は、プリプレグの製造にも使用できる。プリプレグは、ポリエステルと反応重合する化合物を有機溶媒に溶解した樹脂溶液を、強化繊維クロスに含浸または塗布させた後、乾燥することにより得ることができる。
また、本発明の樹脂溶液は、塗料、コーティング剤、接着剤、ワニス等に用いることもできる。
【0060】
(繊維)
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、繊維形態に成形することができる。繊維に成形するには、常法の溶融紡糸法を採用することができ、例えば、紡糸、延伸を2ステップで行う方法、または1ステップで行う方法を採用できる。さらに、繊維に対して捲縮を付与したり、熱セットを施したり、カット工程によるステープル(短繊維)としたりすることができる。
【0061】
繊維は、短繊維の場合には、紡糸操業性、抄紙用途に用いる場合の分散性を向上させるために、フィラーを含有してもよい、フィラーとしては、シリカなどの無機物または有機フィラー等が挙げられる。
また繊維は、フィラメント(長繊維)の場合には、滑り性、隠蔽性を付与するために、非金属系の艶消剤等の添加剤を含有してもよい。
【0062】
繊維は、異型断面糸、中空断面糸、複合繊維等であってもよいし、原着糸であってもよい。また、例えば、混繊、混紡等の公知の糸加工手段を採用し、加工糸としてもよい。
【0063】
上記ポリエステル繊維は、織編物または不織布等に加工することができる。例えば、ポリエステル繊維は、衣料用繊維、カーテン、カーペット、ふとん綿、ファイバーフィル等に代表されるインテリア・寝装用繊維、タイヤコード、ロープ等の抗張力線、土木・建築資材、エアバッグ等の車輛用資材等に代表される産業資材用繊維、各種織物、各種編物、ネット、短繊維不織布、長繊維不織布用等の各種繊維用途に使用することができる。
【0064】
不織布は、単体だけでなく、例えば、不織布同士、または不織布とフィルム等との2層以上の多層積層体に積層することができる。不織布は、分離膜またはろ過材の支持体、各種フィルター、電池セパレータ、ハウスラップ等の産業資材用途をはじめ、マスク、メディカルガウン等の医療用途、衣料用途、カーペット用途、梱包用資材等、タイヤ類、ベルト類、ホース類、ターポリン等のゴム製品の補強用材料、重布類、ロープ類、網類等に用いることができる。
【0065】
(成形体)
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、中空成形体等の成形体に成形することができる。中空成形体としては、ミネラルウォーター、ジュース、ワインまたはウイスキー等の飲料容器、ほ乳瓶、瓶詰め食品容器、整髪料、化粧品等の容器、住居および食器用洗剤容器等が挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂の持つ衛生性、強度、耐溶剤性を活かし、耐圧容器、耐熱耐圧容器、耐アルコール容器の形態として、各種飲料用に特に好適である。
【0066】
中空成形体の製造方法としては、ポリエステルチップを真空乾燥法等によって乾燥した後、押出成形機または射出成形機等の成形機を用いて成形する方法、溶融重合後の溶融体を溶融状態のまま成形機に導入して成形する直接成形方法により、有底の予備成形体を得、この予備成形体を延伸ブロー成形、ダイレクトブロー成形、押出ブロー成形するブロー成形法を採用することができる。
【0067】
中空容器は、積層ボトルなどの多層構造を有するものであってもよい。例えば、ポリビニルアルコールまたはポリメタキシリレンジアミンアジペート等のガスバリア性樹脂層、遮光性樹脂層、リサイクルポリエステル層等を中間層として設けた多層構造が挙げられる。蒸着またはCVD(ケミカルベーパーデポジット)等の方法を用いて、アルミニウム等の金属またはダイヤモンド状カーボンの層で容器の内外を被覆することもできる。
【0068】
本発明の共重合ポリエステル樹脂をホットメルトモールディング用途またはポッティング用途に用いることもできる。
なお、ホットメルトモールディング法とは、溶剤を用いることなく、樹脂を溶融し、予め工業用部品(特に電子部品)が配置された金型内に、溶融した樹脂を低圧(好ましくは0.1~3MPa)で射出注入し、前記部品のハウジングまたはケースとして樹脂の成形(いわゆるインサート成形)を行う方法をいう。
ポッティング法とは、予めハウジング内または基板上に工業用部品を置き、これに溶融した樹脂を低圧(好ましくは1MPa以下)で注入または滴下し、前記ハウジングまたは基板と前記部品とを一体化させる方法をいう。
【0069】
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂は、熱伝導性充填材を混合し、射出成形、圧縮成形、押出し成形、トランスファー成形、シート成形など通常公知の溶融成形法を用いて所望の形状に成形して、熱伝導性の成形体とすることもできる。
熱伝導性の成形体の具体例としては、半導体素子や抵抗などの封止物、コネクタ、ソケット、コンピュータ関連部品等の電気・電子部品、家庭電気製品部品、放熱シートや電子部品からの熱を外部に逃すための放熱部材、ランプソケットなど照明器具部品、通信機器部品、印刷機関連部品、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース等の機械部品、自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品等の自動車部品、耐熱食器等の調理用器具、航空機、宇宙機、宇宙機器用部品、センサー類部品等が挙げられる。
【0070】
(シート)
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、シートに成形することができる。シートは、例えば、ポリエステル樹脂を押出機からシート状物に押出すことにより製造することができる。その後、さらに真空成形、圧空成形、型押し等により加工することができる。シートの用途としては、食品用または雑貨用のトレイまたは容器、カップ、ブリスターパック、電子部品のキャリアテープ、電子部品配送用トレイ、各種カード等が挙げられる。シートにおいても、中間層としてガスバリア性樹脂層、遮光性樹脂層、リサイクルポリエステル層等を設けた多層構造とすることもできる。
【0071】
(フィルム)
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、フィルムに成形することができる。フィルムに成形する方法としては、例えば、ポリエステル樹脂を溶融押出し、T-ダイスより冷却回転ロール上にシート状に成形し、未延伸フィルムを作成する方法が挙げられる。また、複数の押出機を用い、共押出法により積層フィルムとし、コア層、スキン層に各種機能を分担させることもできる。
【0072】
本発明のフィルムは、例えば、帯電防止性フィルム、易接着性フィルム、カード用、ダミー缶用、農業用、建材用、化粧材用、壁紙用、OHPフィルム用、印刷用、インクジェット記録用、昇華転写記録用、レーザービームプリンタ記録用、電子写真記録用、熱転写記録用、感熱転写記録用、プリント基板配線用、メンブレンスイッチ用、プラズマディスプレイ用、タッチパネル用、マスキングフィルム用、写真製版用、レントゲンフィルム用、写真ネガフィルム用、位相差フィルム用、偏光フィルム用、偏光膜保護(TAC)用、プロテクトフィルム用、感光性樹脂フィルム用、視野拡大フィルム用、拡散シート用、反射フィルム用、反射防止フィルム用、導電性フィルム用、セパレータ用、紫外線防止用、バックグラインドテープ用等に用いられる。
【0073】
(熱伝導性組成物)
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、熱伝導性充填材を混合することで、熱伝導性の組成物とすることもできる。熱伝導性の組成物の具体的な用途としては、上述の熱伝導性成形体の具体例に挙げられたものがある。
【0074】
(粉体)
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、粉体に加工し、金型に充填して圧縮成形して樹脂成形体を作製する際の原料、または、樹脂に配合するフィラー等として用いることができる。ポリエステル樹脂の粉体を原料として得られる樹脂成形体は、例えば、コネクタ、LEDリフレクタに用いることができる。またポリエステル樹脂のフィラーを配合した樹脂は、例えば、研磨剤に用いることができる。
【0075】
粉体は、粉体塗料として用いることもできる。粉体塗料は、例えば、自転車カゴ、ガーデニング用品、台所用品、衣料金具、冷蔵庫棚、冷凍ショーケース、食器洗い乾燥機カゴ、取手、ショッピングカート、フェンス、グレーチング、鋼管継柱下管、支部アンカー部品、建築スペーサ、防護棚、鋼管、パネルタンク、バルブ、自動車部品、車両用取手、レール締付具、ボンネットステー、室外機ファンカバー、ブースバー、テレフォンポール、テレフォンケーブル部品、架線金物バンド、電線管継手、工業用配管、配管機材、フランジ・バルブ類、硫酸タンク、タンクローリー内面、継手内面塗装、配管機材、熱交換機、屎尿処理器具、メッキ治具等に用いることできる。
【0076】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、透明性に優れ、さらに、良好な接着性を有することから、透明基材や印刷層を有する基材等に積層されて用いられる接着層や塗膜、または光学部材用途などに、特に好ましく用いられる。
光学部材用途としては、例えば、透明電極膜、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、電磁波シールドフィルム、近赤外線吸収フィルム、AR(アンチリフレクション)フィルム、液晶フィルム、偏光子保護フィルム、太陽電池用フィルム等、これらの光学部材の貼り合わせに用いられる接着剤やコーティング剤、これらの光学部材に用いられる塗膜等が挙げられる。
【実施例0077】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、測定、評価は以下の方法により行った。
【0078】
(1)共重合ポリエステル樹脂の組成
重水素化クロロホルム/重水素化トリフルオロ酢酸=9/1(質量比)の混合溶媒1mLに10mgの試料を溶解し、日本電子社製のECZ-400R型NMRにてH-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピーク積分強度から各ジカルボン酸成分と、各グリコール成分とのモル比を算出した。
【0079】
(2)共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量
GPC分析装置(島津製作所社製 送液ユニットLC-10ADvp型および紫外-可視分光光度計SPD-6AV型、検出波長254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により、数平均分子量を求めた。
【0080】
(3)共重合ポリエステル樹脂の酸価
0.5gの試料にジオキサン/水(9/1、体積比)を加え、加熱還流後、クレゾールレッドを指示薬とし、KOHメタノール溶液(濃度:100mol/m)で滴定し、その滴定量から酸価を求めた。
【0081】
(4)共重合ポリエステル樹脂のヘイズと色調b値
共重合ポリエステル樹脂を固形分濃度30質量%になるように酢酸エチルに溶解させ、日本電色工業社製のSpectral Haze Meter SH7000にて測定を行った。
【0082】
(5)ガラス転移点(Tg)、融解ピーク熱量
JIS-K 7121に従って、熱流束示差走査熱量測定装置(日立ハイテクサイエンス社製 DSC7020)を用い、-40℃から200℃まで、10℃/分で昇温させたチャートから、ガラス転移点を求めた。昇温時の融解温度のピーク面積を、融解ピーク熱量として求めた。
【0083】
実施例1
リサイクルポリエステル原料(使用済み製品からなる再生PETフレーク)79.2質量部をエステル化反応器に仕込み、続いてエステル化反応器の撹拌機を回した状態でエチレングリコール(EG)4.7質量部とネオペンチルグリコール(NPG)58.7質量部を投入した。エステル化反応器(以後「ES缶」と表記する。)の内温降下が止まったところより、39.2質量部のリサイクルポリエステル原料(使用済み製品からなる再生PETフレーク)を約30分かけて定量投入したのち、イソフタル酸(IPA)17.1質量部とセバシン酸(SEA)62.3質量部を投入した。
このとき、グリコール成分、ジカルボン成分およびリサイクルポリエステル原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比(以下「G/A」と表記することがある。)が1.22となるように投入した。その後、260℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、エステル化反応器と重縮合反応器との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットして重縮合反応器(以後PC缶と表記)へ圧送した。このとき、解重合体を前記フィルターに通過させて濾液を回収した。
PC缶において、前記濾液に重縮合触媒として酢酸亜鉛を得られるポリエステル樹脂の酸成分1モルに対して、6.0×10-4molを添加した。
次に、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPaまで減圧していき、その後、所定の分子量に到達するまで280℃で重縮合反応を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂は、Tgが5℃、ヘイズが3.7%であった。融解ピーク熱量は非検出であった。
【0084】
実施例2、4~8
製造条件を表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、共重合ポリエステル樹脂を得た。
【0085】
【表1】
【0086】
実施例3
リサイクルポリエステル原料を未採用ポリエステル(ポリエステル製品を製造する工程で発生した未採用ポリエステル)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、共重合ポリエステル樹脂を得た。
【0087】
実施例9~11、13,14
樹脂組成が表2に記載したものとなるように、エステル化反応缶への原料の投入量を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、共重合ポリエステル樹脂を得た。
なお、表1および表2中に記載の略語は下記を示す。
TPA;テレフタル酸
PTMG:ポリテトラメチレングリコール(分子量1000)
IX1010:イルガノックス1010(BASF社の酸化防止剤、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン)
【0088】
実施例12
使用済み製品からなる再生PETフレーク81.5質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコール(EG)10.3質量部とネオペンチルグリコール(NPG)63.7質量部を投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、20.1質量部の使用済み製品からなる再生PETフレークを約30分かけて定量投入したのち、イソフタル酸(IPA)87.9質量部を投入した。
このとき、リサイクルポリエステル原料を、G/Aが1.24となるように投入した。その後、240℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、エステル化反応器と重縮合反応器との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した。このとき、解重合体を前記フィルターに通過させて濾液を回収した。
PC缶において、前記濾液に重縮合触媒として三酸化アンチモンを得られるポリエステル樹脂の酸成分1モルに対して、2.5×10-4molと、リン酸トリエチルを1.9×10-4molを添加した。
次に、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPaまで減圧していき、その後、数平均分子量が19000に到達するまで280℃で重縮合反応を行った後、ネオペンチルグリコールを2.2質量部添加して、270℃で1時間解重合反応を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂は、Tgが58℃、ヘイズが3.9%であった。
【0089】
比較例1~8
製造条件を表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0090】
得られた共重合ポリエステル樹脂の組成、特性、評価結果を表2に示す。
【表2】
【0091】
表2に示したように、実施例1~14で得られた本発明の共重合ポリエステル樹脂は、酢酸エチルに溶解し、溶液としたときのヘイズが好ましい範囲であり、透明性に優れるものであった。
【0092】
比較例1では、解重合反応温度が低すぎたため、解重合反応が十分に進行しなかったことから、重縮合反応を行うことができず、共重合ポリエステル樹脂を得ることができなかった。
比較例2で得られた共重合ポリエステル樹脂は、解重合反応温度が高すぎたため、解重合体の溶融粘度が低くなりすぎ、(2)の工程での濾過効率が悪く再生原料由来の異物が多いことから、溶液としたときのヘイズが高くなり、透明性に劣るものであった。
比較例3では、重縮合温度が低すぎたため、重合反応が十分に進行せず、共重合ポリエステル樹脂を得ることができなかった。
比較例4では、重縮合温度が高すぎたため、熱分解が進みやすく、共重合ポリエステル樹脂を得ることができなかった。
比較例5では、解重合反応を行う際の全グリコール成分/全酸成分のモル比が低かったため、解重合反応が十分に進行しなかったことから、重縮合反応を行うことができず、共重合ポリエステル樹脂を得ることができなかった。
比較例6では、解重合反応を行う際の全グリコール成分/全酸成分のモル比が高かったため、異物の析出が効率よく行われず、(2)の工程において異物をもれなく濾過することができず、(3)の工程の重縮合反応後に異物が析出し、樹脂溶液としたときのヘイズが高くなり、透明性に劣るものであった。
比較例7では、フィルターの濾過粒度が低かったため、異物による目詰まりが生じ、重縮合反応を行うことができなかった。
比較例8では、フィルターの濾過粒度が高かったため、解重合体中の異物を十分に除去できず、得られる共重合ポリエステル樹脂は、樹脂溶液としたときのヘイズが高くなり、透明性に劣るものであった。