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特開2024-87247居住者判別システムおよびプログラム、ならびに、バイタル情報管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087247
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】居住者判別システムおよびプログラム、ならびに、バイタル情報管理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/117 20160101AFI20240624BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
A61B5/117 100
A61B5/00 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201953
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西口 絵里子
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA07
4C038VB01
4C038VB35
4C038VC01
4C117XA07
4C117XB02
4C117XB11
4C117XE13
4C117XE15
4C117XJ18
4C117XJ52
4C117XL01
4C117XQ18
(57)【要約】
【課題】居住者(見守り対象者)のプライバシー保護および負担軽減を両立可能な居住者判別システムを提供する。
【解決手段】居住者判別システムは、複数の居住者が定常的に利用する居住スペースに設置され、居住スペース内の人の存在を検知する非接触センサ(2a~2f)と、非接触センサからの信号に基づいて、非接触センサにより検知された検知人物の人物評価情報として、身体的特徴、および、少なくとも居住スペース内での滞在情報を含む生活パターン対応情報を検出する検出手段(42)と、検出手段により検出された人物評価情報を、複数の居住者それぞれの居住者特定情報と照合することにより、検知人物がどの居住者であるかを判別する判別手段(34)とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の居住者が定常的に利用する居住スペースに設置され、前記居住スペース内の人の存在を検知する非接触センサと、
前記非接触センサからの信号に基づいて、前記非接触センサにより検知された検知人物の人物評価情報として、身体的特徴、および、少なくとも前記居住スペース内での滞在情報を含む生活パターン対応情報を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記人物評価情報を、前記複数の居住者それぞれの居住者特定情報と照合することにより、前記検知人物がどの居住者であるかを判別する判別手段とを備える、居住者判別システム。
【請求項2】
前記居住スペースに含まれる複数の部屋のそれぞれに、前記非接触センサが設置されており、
前記検出手段により検出された前記部屋内での滞在情報を含む滞在履歴情報を記憶する履歴記憶手段をさらに備え、
前記判別手段は、前記履歴記憶手段に記憶された前記滞在履歴情報を用いて、前記検知人物がどの居住者であるかを遡って判別する、請求項1に記載の居住者判別システム。
【請求項3】
前記判別手段は、前記各非接触センサによる反応状態の推移に基づいて同一人物と推定された個人ごとに、前記人物評価情報を前記居住者特定情報と照合することにより、居住者の判別を行う、請求項2に記載の居住者判別システム。
【請求項4】
前記人物評価情報は、動作的特徴をさらに含む、請求項1に記載の居住者判別システム。
【請求項5】
前記非接触センサは、バイタル情報を検知するバイタルセンサである、請求項1に記載の居住者判別システム。
【請求項6】
居住スペースを定常的に利用する複数の居住者のバイタル情報を管理するバイタル情報管理システムであって、
前記居住スペース内の人のバイタル情報を非接触で検知するバイタルセンサと、
前記バイタルセンサからの信号に基づいて、前記バイタルセンサにより検知された検知人物の人物評価情報として、身体的特徴、および、少なくとも前記居住スペース内での滞在情報を含む生活パターン対応情報を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記人物評価情報を、前記複数の居住者それぞれの居住者特定情報と照合することにより、前記検知人物がどの居住者であるかを判別する判別手段と、
前記判別手段による判別結果に応じて、前記バイタルセンサの検知信号から測定されたバイタル測定データを前記居住者ごとに分類する分類手段と、
前記分類手段により分類されたバイタル測定データを、前記居住者ごとに記憶する測定データ記憶手段とを備える、バイタル情報管理システム。
【請求項7】
複数の居住者が定常的に利用する居住スペースに設置された非接触センサからの信号に基づいて、前記非接触センサにより検知された検知人物の人物評価情報として、身体的特徴、および、少なくとも前記居住スペース内での滞在情報を含む生活パターン対応情報を検出するステップと、
検出された前記人物評価情報を、前記複数の居住者それぞれの居住者特定情報と照合することにより、前記検知人物がどの居住者であるかを判別するステップとをコンピュータに実行させる、居住者判別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の居住者が定常的に利用する居住スペース(住宅、高齢者施設など)において、居住スペース内の人物がどの居住者であるかを判別する居住者判別システムおよびプログラム、ならびに、居住者判別システムを利用したバイタル情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者などの見守り対象者の健康状態を把握するために、バイタルセンサで見守り対象者のバイタル情報を常時測定することが一般的に行われている。
【0003】
バイタル情報を健康管理に利用する技術として、特開2017-062573号公報(特許文献1)には、ユーザの生活パターンを評価し、バイタル情報を含めた生活パターンの画像情報をユーザに提示する生活パターン評価システムが開示されている。
【0004】
また、バイタル情報の被測定者を特定する技術としては、特開2018-023768号公報(特許文献2)に、個人認証可能な測定機器から個人認証機能を有しない測定機器に個人認証情報を承継する被測定者特定システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-062573号公報
【特許文献2】特開2018-023768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
共通の居住スペースに複数の見守り対象者(居住者)が居住しているケースにおいて、居住スペース内の人がどの見守り対象者かを判別するために、カメラによる撮影画像やウェアラブルセンサによるセンシングデータが用いられることがある。
【0007】
しかしながら、撮影画像を用いる場合、見守り対象者のプライバシー侵害が懸念される。また、日常生活下でウェアラブルセンサを装着することは、身体的な負担が大きい。
【0008】
一方で、見守り対象者が測定前に自身を特定するための情報を入力する(たとえば、専用のボタンを押したり、マイクに向かって名前を言ったりする)ことも考えられるが、面倒である上に、入力ミスや入力漏れが生じる可能性があり、望ましくない。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、居住者(見守り対象者)のプライバシー保護および負担軽減を両立可能な居住者判別システムおよびプログラム、ならびに、バイタル情報管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のある局面に従う居住者判別システムは、複数の居住者が定常的に利用する居住スペースに設置され、居住スペース内の人の存在を検知する非接触センサと、非接触センサからの信号に基づいて、非接触センサにより検知された検知人物の人物評価情報として、身体的特徴、および、少なくとも居住スペース内での滞在情報を含む生活パターン対応情報を検出する検出手段と、検出手段により検出された人物評価情報を、複数の居住者それぞれの居住者特定情報と照合することにより、検知人物がどの居住者であるかを判別する判別手段とを備える。
【0011】
好ましくは、居住スペースに含まれる複数の部屋のそれぞれに、非接触センサが設置されており、居住者判別システムは、検出手段により検出された部屋内での滞在情報を含む滞在履歴情報を記憶する履歴記憶手段をさらに備える。判別手段は、履歴記憶手段に記憶された滞在履歴情報を用いて、検知人物がどの居住者であるかを遡って判別することが望ましい。
【0012】
具体的には、判別手段は、各非接触センサによる反応状態の推移に基づいて同一人物と推定された個人ごとに、人物評価情報を居住者特定情報と照合することにより、居住者の判別を行うことが望ましい。
【0013】
人物評価情報は、動作的特徴をさらに含んでいてもよい。
【0014】
好ましくは、非接触センサは、バイタル情報を検知するバイタルセンサである。
【0015】
この発明の他の局面に従うバイタル情報管理システムは、居住スペースを定常的に利用する複数の居住者のバイタル情報を管理する。バイタル情報管理システムは、居住スペース内の人のバイタル情報を非接触で検知するバイタルセンサと、バイタルセンサからの信号に基づいて、バイタルセンサにより検知された検知人物の人物評価情報として、身体的特徴、および、少なくとも居住スペース内での滞在情報を含む生活パターン対応情報を検出する検出手段と、検出手段により検出された人物評価情報を、複数の居住者それぞれの居住者特定情報と照合することにより、検知人物がどの居住者であるかを判別する判別手段と、判別手段による判別結果に応じて、バイタルセンサの検知信号から測定されたバイタル測定データを居住者ごとに分類する分類手段と、分類手段により分類されたバイタル測定データを、居住者ごとに記憶する測定データ記憶手段とを備える。
【0016】
この発明のさらに他の局面に従う居住者判別プログラムは、複数の居住者が定常的に利用する居住スペースに設置された非接触センサからの信号に基づいて、非接触センサにより検知された検知人物の人物評価情報として、身体的特徴、および、少なくとも居住スペース内での滞在情報を含む生活パターン対応情報を検出するステップと、検出された人物評価情報を、複数の居住者それぞれの居住者特定情報と照合することにより、検知人物がどの居住者であるかを判別するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、見守り対象者(居住者)のプライバシー保護および負担軽減を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係るバイタル情報管理システムの概要を示す模式図である。
図2】本発明の実施の形態における管理サーバの機能構成を示すブロック図である。
図3】(A)は、測定履歴情報のデータ構造例を示す図であり、(B)は、滞在履歴情報のデータ構造例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における測定・検出処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態における判別・分類処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態の住宅内における各センサの反応状態(人の検知の有無)の変化を時間軸に沿って示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
<バイタル情報管理システムの概要>
図1は、本実施の形態に係るバイタル情報管理システム1の概要を示す模式図である。
【0021】
バイタル情報管理システム1は、たとえば住宅9に居住している複数の居住者P1,P2のバイタル情報を管理する。本実施の形態では、居住者P1,P2の双方が見守り対象者であると仮定する。住宅9は、居住者P1,P2の居住スペースであり、トイレ91、洗面室92、キッチン93、ダイニング94、リビング95、および寝室96など、複数の部屋を含む。各部屋は、機能ごとに区切られた空間であり、隣り合う部屋間の壁の有無は問わない。
【0022】
バイタル情報管理システム1は、住宅9内の人の存在を検知する非接触センサ2a~2fと、非接触センサ2a~2fの各々と有線または無線で接続された管理サーバ3とを備えている。本実施の形態では、部屋91~96のそれぞれに、非接触センサ2a~2fが1つずつ設置されている。なお、以下の説明において、非接触センサ2a~2fにより検知された人を「検知人物」という。
【0023】
非接触センサ2a~2fは、典型的には、ミリ波センサなどのバイタルセンサである。管理サーバ3は、非接触センサ2a~2fからの信号に基づいて、居住者P1,P2のバイタル情報を測定し、測定したバイタル情報を管理する。
【0024】
ここで、住宅9に複数の居住者P1,P2が居住している場合、各居住者P1,P2のバイタル情報を管理するためには、測定したバイタル情報がどの居住者のものかを判別しなければならない。本実施の形態では、バイタルセンサである非接触センサ2a~2fによって、バイタル情報の測定と、居住者(被測定者)の判別とを行う。すなわち、居住者P1,P2を判別するためのセンサが、居住者P1,P2のバイタル情報を測定するためのセンサを兼ねている。
【0025】
以下の説明において、非接触センサ2a~2fを「バイタルセンサ2a~2f」という。また、これらの各々を特定する必要がない場合には、単に「バイタルセンサ2」と称する。
【0026】
バイタルセンサ2は、検知人物に対してタグ付けをする機能を有しているものの、検知人物が検知対象エリア(当該センサ2が設置された部屋)から離れるとタグ付けが初期化される。そのため、本実施の形態の管理サーバ3は、全てのバイタルセンサ2の反応状況(人の検知の有無)を監視しながら、バイタルセンサ2の検知信号から検出される「人物評価情報」と、複数の居住者P1、P2それぞれの「居住者特定情報」とに基づいて、検知人物がどの居住者P1,P2であるかを判別する。
【0027】
居住者特定情報は、居住者P1,P2を特定するための情報であり、居住者P1,P2それぞれの身体的特徴、および、生活パターン情報を含む。身体的特徴は、たとえば心臓の位置高さ、身長、などに相当する。生活パターン情報は、各居住者P1,P2の生活パターンを特定するための情報であり、たとえば、i)ダイニングでの座席位置、ii)寝室のベッド位置、iii)帰宅時刻、iv)就寝・起床時刻、v)外出時刻、vi)キッチン滞在時間、vii)洗面室滞在時間、など複数の項目を含む。項目i),ii)は部屋内での滞在位置を示す。滞在位置として、リビングでの座席位置(テレビを見る位置)などをさらに含んでもよい。項目vi),vii)は部屋内での滞在時間を示す。
【0028】
居住者特定情報には、居住者P1,P2の歩く速度などを示す動作的特徴がさらに含まれてもよい。本実施の形態では、居住者特定情報が、身体的特徴、生活パターン情報、および動作的特徴の全てを含むものとする。
【0029】
人物評価情報は、検知人物の区別的特徴を示す評価情報であり、居住者特定情報に対応する情報を含む。本実施の形態において、人物評価情報は、身体的特徴、生活パターン対応情報、および、動作的特徴を含む。生活パターン対応情報は、上述の項目i)~vii)に対応する情報を含む。
【0030】
ここで、人物評価情報は、他のセンサ2の反応状況等を考慮することなく得られる一次情報だけでなく、他のセンサ2の反応状況等を考慮して得られる二次情報を含むことが望ましい。一次情報は、身体的特徴と、生活パターン対応情報のうちの部屋内滞在情報(居住スペースでの滞在情報)とを含む。部屋内滞在情報は、少なくとも滞在位置を含み、滞在時間をさらに含む。滞在位置は、上記項目i),ii)に対応し、たとえば部屋内で所定時間(たとえば5分)以上、留まっている位置を表わす。滞在時間は、上記項目vi),vii)に対応し、たとえば各部屋への入室時刻と退室時刻とにより特定される。二次情報は、生活パターン対応情報のうち上記項目iii)~v)に対応する情報(帰宅時刻・就寝時刻・起床時刻・外出時刻)と、動作的特徴とを含む。
【0031】
<管理サーバの機能構成>
図2は、管理サーバ3の機能構成を示すブロック図である。
【0032】
管理サーバ3は、バイタルセンサ2a~2fの信号を入力する入力部31と、入力部31を介して得られる信号の演算処理を行う演算部32とを備えている。演算部32は、入力信号に基づいて検知人物のバイタル情報(たとえば血圧、心拍数など)を測定(算出)する測定部41と、検知人物の人物評価情報を検出する検出部42とを含む。測定部41による測定結果(バイタル測定データ)、および、検出部42による一次情報の検出結果(滞在検出データ)が、それぞれ、測定履歴情報52および滞在履歴情報53として、履歴DB(データベース)33に記憶される。測定履歴情報52は、たとえば一日分のバイタル測定データを含む。滞在履歴情報53もまた、たとえば一日分の滞在検出データを含む。
【0033】
図3(A)は、測定履歴情報52のデータ構造例を示す図である。測定履歴情報52は、測定番号を見出しとした複数のバイタル測定データを含む。測定番号は、バイタルセンサ2が人を検知するごとに採番される。バイタル測定データは、たとえば血圧データおよび心拍データの少なくとも一方を含む。なお、測定履歴情報52は、後述する部屋IDや時刻情報をさらに含んでいてもよい。
【0034】
図3(B)は、滞在履歴情報53のデータ構造例を示す図である。滞在履歴情報53は、滞在番号を見出しとした複数の滞在検出データを含む。滞在番号は、センサ2が人を検知するごとに採番される。そのため、滞在番号と測定番号とは1対1の関係である。
【0035】
滞在検出データは、部屋IDと、身体的特徴(たとえば心臓の高さ)と、滞在情報とを含む。滞在情報は、具体的には、滞在時間を示す時刻情報(入室時刻、退室時刻)、および、滞在位置を示す座標情報を含む。部屋IDは、反応したセンサ2が設定されている部屋を識別するための識別情報である。部屋IDに対応付けて記憶されるこれらの情報は、人物評価情報の一次情報である。なお、部屋IDに代えて、反応したセンサ2自体を識別するための識別情報(センサID)が記憶されてもよい。
【0036】
滞在履歴情報53の滞在番号は、履歴DB33内において、測定履歴情報52の測定番号と対応付けられて記憶される。本実施の形態では、図3(B)に示されるように、滞在履歴情報53に測定番号の項目が含まれている。これにより、同じ検知人物のバイタル測定データと滞在検出データとが紐付けられる。
【0037】
検出部42は、滞在履歴情報53に基づいて人物評価情報の二次情報を検出する。二次情報の検出方法の具体例については後述する。
【0038】
図3(B)では、滞在履歴情報53の滞在番号と個人番号とが関連付けられた状態が示されている。個人番号は、滞在履歴情報53に含まれる複数の滞在検出データが同一人物のデータか否かを示す情報であり、共通の人物に対し、共通の番号が付与される。個人番号の付与方法については後述する。
【0039】
再び図2を参照して、管理サーバ3は、居住者P1,P2の判別処理を行う判別部34と、判別部34による判別結果に応じてバイタル測定データを居住者P1,P2ごとに分類する分類部35と、分類部35により分類されたバイタル測定データを居住者P1,P2ごとに記憶するバイタルDB36とをさらに備えている。
【0040】
判別部34は、検出部42が検出した人物評価情報を、たとえば不揮発性のメモリ(図示せず)に記憶されている居住者特定情報51と照合することにより、検知人物がどの居住者P1,P2であるかを判別する。居住者特定情報51は、たとえば、図示しない操作部等により事前に入力されたものであってもよいし、検出部42による検出結果等を学習することにより定められたものであってもよい。
【0041】
判別部34は、たとえば1日1回、居住者P1,P2の判別処理を行う。判別部34は、滞在履歴情報53を用いて、検知人物がどの居住者P1,P2であるかを遡って判別する。判別部34による照合前に、検出部42が、滞在履歴情報53に基づいて人物評価情報の二次情報を検出するので、判別部34は、身体的特徴、上記項目i)~vii)を含む生活パターン対応情報、および、動作的特徴の全てを比較対象として、居住者P1,P2の判別を行う。
【0042】
また、判別部34による照合前に個人番号の割り当て処理を実行することにより、判別部34は、各バイタルセンサ2による反応状態の推移に基づいて同一人物と推定された個人ごとに、人物評価情報を居住者特定情報51と照合することにより、居住者の判別を行うことができる。
【0043】
分類部35は、判別部34による判別結果に応じて、測定履歴情報52に含まれる複数のバイタル測定データを居住者ごとに分類し、分類したバイタル測定データを、バイタルDB36内の対応するフォルダに格納する。
【0044】
管理サーバ3は、バイタルDB36に記憶された居住者P1,P2ごとのバイタル測定データを、外部装置(たとえば医療機関の端末など)等に出力する出力部37をさらに備えている。これにより、外部装置において、居住者P1,P2の健康状態を分析することが可能となる。なお、出力部37は、通信インターフェイスにより実現されてもよいし、記録媒体への読み書きを実行する駆動装置により実現されてもよい。
【0045】
上述の演算部32,判別部34、および分類部35の機能は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサがソフトウェアを実行することにより実現される。履歴記憶手段としての履歴DB33、および、測定データ記憶手段としてのバイタルDB36は、不揮発性の記憶装置により実現される。なお、履歴DB33またはバイタルDB36は、クラウド上の記憶領域であってもよい。
【0046】
<管理サーバの動作>
(測定・検出処理)
図4は、管理サーバ3の演算部32が実行する測定・検出処理を示すフローチャートである。図4に示す測定・検出処理は、センサ2ごとに(つまり、部屋ごとに)実行されるものとする。
【0047】
センサ2a~2fのうちのいずれか(たとえばキッチン93に設定されたセンサ2c)に人の反応が生じた場合、演算部32は、検知人物が対応の部屋(キッチン93)に入室したと判断し(ステップS1にてYES)、現在時刻を入室時刻として特定する(ステップS3)。演算部32は、たとえばこのタイミングで、測定番号および検知番号を採番する。
【0048】
センサ2により反応が継続している期間中、測定部41によるバイタル情報の測定(ステップS5)と、検出部42による身体的特徴および滞在位置の検出(ステップS7)とが並行して行われる(ステップS9にてNO)。測定部41が測定(算出)した血圧および心拍数の測定データは内部メモリに時系列に記録される。同様に、検出部42が検出した身体的特徴および滞在位置のデータ(人物評価情報の一次情報)が内部メモリに時系列に記録される。
【0049】
その後、センサ2の反応が無くなると、演算部32は、検知人物が退室したと判断し(ステップS9にてYES)、現在時刻を退室時刻として特定する(ステップS11)。そして、上記ステップS5の処理により得られたバイタル測定データ、および、ステップS3,S7,S11の処理により得られた滞在検出データを、履歴DB33に記録する(ステップS13)。
【0050】
具体的には、今回採番した測定番号を見出しとするバイタル測定データを、新たなレコードとして測定履歴情報52に追加する(図3(A)参照)。また、今回採番した滞在番号を見出しとする滞在検出データを、新たなレコードとして滞在履歴情報53に追加する(図3(B)参照)。
【0051】
なお、滞在検出データに含まれる身体的特徴は、検出部42が検出した値の最頻値であってもよいし平均値であってもよい。滞在検出データに含まれる滞在位置は、典型的には、検知人物が所定時間以上停止した位置(平面座標)を表わす。ここでの所定時間(閾値)は、部屋ごとに定められていてもよい。ただし、検知人物が部屋内で常時動く(歩く)ことも想定されるため、滞在位置の項目はブランク(NULL)であってもよい。
【0052】
履歴DB33への各種データの記録処理が終わると、ステップS1に戻り、上記処理を繰り返す。このような測定・検出処理がセンサ2ごとに実行されることにより、図3(A),(B)に示したような測定履歴情報52および滞在履歴情報53が履歴DB33に蓄積される。
【0053】
(判別・分類処理)
図5は、管理サーバ3の判別部34および分類部35が実行する判別・分類処理を示すフローチャートである。図5に示す判別・分類処理は、所定の判別タイミングとなった場合に開始されるものとする。所定の判別タイミングは、たとえば、全てのセンサ2に反応がなくなったとき、すなわち全居住者P1,P2が外出したときが想定される。あるいは、単純に、毎日同じ時刻(たとえば午後1時など)としてもよい。
【0054】
判別・分類処理については、図6を参照しながら説明する。図6は、各センサ2の反応状態(人の検知の有無)の変化を時間軸に沿って示す図である。図6の実線はセンサ2による反応が続いている状態を示している。
【0055】
図6の例では、全センサ2で反応がない状態が続いた後、19時45分頃から20時15分頃までキッチン93のセンサ2cに人(検知人物1という)の反応が生じている。キッチン93のセンサ2cに反応がある状態で、19時50分頃~21時15分頃までダイニング94のセンサ2dに人(検知人物2という)の反応が生じ、また、検知人物2の反応がある状態で、センサ2dで他の人(検知人物3という)の反応が生じている。図3(B)に示す滞在履歴情報53は、このような例に従った滞在検出データを記憶している。
【0056】
判別部34はまず、居住者P1,P2の人数と滞在履歴情報53の時刻情報(つまり、センサ2による反応状態の推移)に基づいて、判別タイミング以前に各センサ2が検知した検知人物の同一性を判断し、同一人物に対して同一の個人番号を割り当てる(ステップS21)。
【0057】
図6に示す例では、検知人物1および検知人物2は、同じ時刻に異なる部屋で検知されている。そのため、検知人物1および検知人物2は別の人物であると推定され、それぞれに別の個人番号(Pa,Pb)が割り当てられる。一方、検知人物3のダイニング94への入室時刻が検知人物1のキッチン93からの退室時刻の直後であるため、検知人物1と検知人物3は同一人物と推定される。つまり、同一人物がキッチン93からダイニング94に移動したと推定される。この場合、検知人物3の個人番号として、検知人物1の個人番号と同じ番号(Pa)が割り当てられる(図3(B)参照)。
【0058】
図6では、同一人物の部屋の移動推移を点線で示している。つまり、図6の実線は、検知人物が連続して検知エリア(部屋)内にいることを示しているのに対し、点線は、時間的な観点で、検知エリア外に出た検知人物が他の検知エリアに移動したと推測されたことを示している。
【0059】
個人番号の割り当てが完了すると、検出部42が個人番号ごとに検知人物の移動速度を算出する(ステップS23)。移動速度は、動作的特徴の一つである。個人番号Paの人物の移動速度は、たとえばキッチン93からダイニング94までの距離、および、キッチン93の退室時刻とダイニング94の入室時刻との時間差に基づいて算出可能である。検出部42はまた、個人番号ごとに、帰宅時刻、就寝時刻、起床時刻、外出時刻を特定する。各個人番号において、最初の滞在検出データの入室時刻を帰宅時刻とみなし、最後の滞在検出データの退室時刻を外出時刻とみなすことができる。また、夕方7時以降の時間帯における寝室96への入室時刻を就寝時刻とみなし、朝5時以降の時間帯における寝室96からの退室時刻を起床時刻とみなすことができる。このようにして、人物評価情報の二次情報が得られる。
【0060】
判別部34は、個人番号単位で、検知人物の人物評価情報、すなわち身体的特徴、生活パターン対応情報、および動作的特徴を、居住者特定情報51と照合する(ステップS25)。身体的特徴および動作的特徴については、たとえば、個人番号ごとの平均値が、居住者P1,P2のどちらの数値に近いかを判定する。生活パターン対応情報については、たとえば、個人番号ごとに、i)ダイニングでの座席位置、ii)寝室のベッド位置、iii)帰宅時刻、iv)就寝・起床時刻、v)外出時刻、vi)キッチン滞在時間、vii)洗面室滞在時間の各項目が、居住者P1,P2の生活パターン情報のどちらに一致または近似するかを判定する。
【0061】
判別部34は、照合の結果、個人番号pa,pbが居住者P1,P2のどちらに対応するかを判定する(ステップS27)。たとえば、上記比較項目のうち7割以上の項目の数値が誤差範囲に収まっていれば、両者が一致していると判断することができる。これにより、各個人番号paで特定される人物のバイタル測定データがどの居住者P1,P2のものであるかを判別することができる。ここでは、個人番号paを割り当てられた検知人物の人物評価情報が居住者P1の情報と一致し、個人番号pbを割り当てられた検知人物の人物評価情報が居住者P2の情報と一致していると判断されたと仮定する。
【0062】
分類部35は、判別部34による判別結果に応じて、測定履歴情報52に記憶されているバイタル測定データを、バイタルDB3内の居住者ごとの確定フォルダに振り分けて格納する(ステップS29)。具体的には、分類部35は、個人番号paが付与された滞在検出データに対応付けられた測定番号(たとえばM001,M003,・・・)を特定し、特定した測定番号を見出しとするバイタル測定データを、バイタルDB36内の居住者P1用フォルダ(Aフォルダ)に格納する。また、個人番号pbが付与された滞在検出データに対応付けられた測定番号(たとえばM002,・・・)を特定し、特定した測定番号を見出しとするバイタル測定データを、バイタルDB36内の居住者P2用フォルダ(Bフォルダ)に格納する。これにより、各バイタル測定データがどの居住者P1,P2のものであるかを識別した状態で、バイタルDB36に記憶させることができる。
【0063】
以上で判別・分類処理は終了する。上述のように、管理サーバ3の判別部34は、各バイタルセンサ2による反応状態の推移に基づいて同一人物と推定された個人ごとに、人物評価情報を居住者特定情報51と照合して居住者P1,P2の判別を行うため、居住者P1,P2の判別精度を高めることができる。
【0064】
なお、判別部34の判別タイミングは1日1回に限定されない。たとえば、全居住者P1,P2の就寝時など、センサ2に反応がある期間中にも、適宜行うことができる。ただし、この判別方法は上述の判別方法に比べて判別精度が低下することが考えられるため、当該判別結果に基づくバイタル測定データの分類は、別のフォルダ(暫定フォルダ)に対して行われてもよい。
【0065】
あるいは、判別部34は、リアルタイムで検知人物の判別処理を行ってもよい。この場合、判別部34は、人物評価情報の一次情報(身体的特徴、滞在情報)のみを、個人番号ごとに居住者特定情報51と照合することにより、居住者P1,P2の判別を行ってもよい。このようにすることで、反応中のバイタルセンサ2によるバイタル測定データが異常値を示した場合に、その人物を特定した状態で外部装置に通報することが可能である。また、反応中のバイタルセンサ2が設置された部屋IDを知らせることもできるので、居住者P1,P2の見守りを強化することができる。
【0066】
(変形例)
本実施の形態では、人物評価情報が、身体的特徴、生活パターン対応情報、および動作的特徴の全てを含むこととしたが、動作的特徴は含まなくてもよい。また、身体的特徴、および、生活パターン対応情報のうちの少なくとも一つを含んでいればよい。なお、居住者P1,P2の生活パターンが曜日(平日/休日)ごとに異なる場合には、居住者特定情報51の生活パターン情報が曜日ごとに定められていてもよい。
【0067】
本実施の形態では、バイタル情報を管理する管理サーバ3において、居住者P1,P2の判別処理を行うこととしたが、管理サーバ3とは別の装置(居住者判別装置)において、居住者P1,P2の判別処理が行われてもよい。
【0068】
また、本実施の形態では、居住者P1,P2を判別するための非接触センサ2a~2fが、設置エリア(部屋)内の人のバイタル情報を測定するためのセンサを兼ねていることとしたが、このような例に限定されない。たとえば、居住者P1,P2を判別するための非接触センサ2a~2fが、別のバイタルセンサにより実現されてもよいし、他種のセンサ(たとえば赤外線センサなど)により実現されてもよい。言い換えると、図1に示した非接触センサ2a~2fとは別に、バイタル情報を測定するためのバイタルセンサが設けられていてもよい。
【0069】
あるいは、バイタル情報の管理とは関係なく、単純に、非接触センサ2a~2fの検知信号に基づいて、住宅9内にいる人物がどの居住者P1,P2であるかを判別する居住者判別システムを、独立して提供することもできる。居住者判別システムは、非接触センサ2a~2fと、図2に示した検出部42、判別部34、および分類部35を含む居住者判別装置とを備えていればよい。
【0070】
本実施の形態では、住宅9に居住している居住者P1,P2を判別する例について説明したが、このような例に限定されず、複数の居住者が利用する高齢者施設などを対象とすることもできる。このような施設は、デイサービス施設であってもよい。そのため、「居住者」とは、対象の居住スペースに住む者に限定されず、対象の居住スペースで定常的に過ごす者を含む。また、「居住スペース」は、居住者が定常的に過ごす空間であればよい。
【0071】
また、本実施の形態では、居住スペースに含まれる複数の部屋のそれぞれに、非接触センサ2a~2fを設置することとしたが、一つの部屋(たとえばダイニング94など)にのみ非接触センサ2を設置してもよい。
【0072】
なお、上述の居住者判別方法などをプログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、CD-ROM(Compact Disc-ROM)などの光学媒体や、メモリカードなどのコンピュータ読取り可能な一時的でない(non-transitory)記録媒体にて記録させて提供することができる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0073】
本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0074】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
1 バイタル情報管理システム、2,2a~2f 非接触センサ(バイタルセンサ)、3 管理サーバ、9 住宅、31 入力部、32 演算部、34 判別部、35 分類部、37 出力部、41 測定部、42 検出部、51 居住者特定情報、52 測定履歴情報、53 滞在履歴情報、91~96 部屋、33 履歴DB(履歴記憶手段)、36 バイタルDB(測定データ記憶手段)、P1,P2 居住者。
図1
図2
図3
図4
図5
図6