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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008725
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】筆記具用油性インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/17 20140101AFI20240112BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C09D11/17
B43K7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110833
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】篠原 隆一
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA03
4J039AD07
4J039BE02
4J039BE12
4J039EA29
4J039EA48
4J039GA27
(57)【要約】
【課題】本発明では、紙繊維の巻き込みが抑制され、かつ良好な筆記性及び発色性を有する、新規な筆記具用油性インク組成物を提供する。
【解決手段】本発明の筆記具用油性インク組成物は、
黒字、赤字、及び青字用筆記具のための油性インク組成物であり、
着色材、白色又は無色の蛍光染料、樹脂、及び有機溶剤を少なくとも含有しており、
前記蛍光染料の含有率が、前記筆記具用油性インク組成物の質量に対して、0.05~12.0質量%である、
筆記具用油性インク組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒字、赤字、及び青字用筆記具のための油性インク組成物であり、
着色材、白色又は無色の蛍光染料、樹脂、及び有機溶剤を少なくとも含有しており、
前記蛍光染料の含有率が、前記筆記具用油性インク組成物の質量に対して、0.05~12.0質量%である、
筆記具用油性インク組成物。
【請求項2】
剪断速度300~1000s-1の条件で測定した、第一法線応力差が、4000Pa以下である、請求項1に記載の筆記具用油性インク組成物。
【請求項3】
粘度が、300~5000mPa・sである、請求項1又は2に記載の筆記具用油性インク組成物。
【請求項4】
前記樹脂が、ポリビニルブチラールである、請求項1又は2に記載の筆記具用油性インク組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の筆記具用油性インク組成物が充填されている、筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用油性インク組成物、特にボールペン用油性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールペン用油性インキ組成物は、着色剤と有機溶剤と樹脂等により構成されている。また、このようなボールペン用油性インキ組成物を用いる油性ボールペンでは、インキがボールを介して紙面に転写して描線を得るという機構に起因して、ボールペンチップの外面へインキの付着、インキのペン先への拡張濡れ、ボタ落ち(ボテ)などの課題が存在している。このような課題を解決するため、ボールペン用油性インキ組成物に関して種々の提案がされている。
【0003】
特許文献1では、少なくとも色材、樹脂、重合度900(計算分子量60,000)以上の高重合度ポリブチルビニラールを0.01~1.5重量%含み、25℃での蒸気圧が0.001mmHg以上であるアルコール、多価アルコール、グリコールエーテルから選ばれる溶剤を全溶剤の50%以上占める主溶剤として含むことを特徴とするボールペン用油性インキ組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2では、25℃における第一法線応力が、剪断速度が500s-1以上3000s-1以下の範囲で5000Pa以上であるボールペン用インキが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-263612号公報
【特許文献2】特開2004-107596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のボールペン用インキでは、筆記時に、ペン先チップの回転により、紙繊維がボールハウス内に巻き込まれることがあり、その結果、描線のカスレなどの筆記不良が生じることがあった。
【0007】
そこで、本発明では、紙繊維の巻き込みが抑制され、かつ良好な筆記性及び発色性を有する、新規な筆記具用油性インク組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉黒字、赤字、及び青字用筆記具のための油性インク組成物であり、
着色材、白色又は無色の蛍光染料、樹脂、及び有機溶剤を少なくとも含有しており、
前記蛍光染料の含有率が、前記筆記具用油性インク組成物の質量に対して、0.05~12.0質量%である、
筆記具用油性インク組成物。
〈態様2〉剪断速度300~1000s-1の条件で測定した、第一法線応力差が、4000Pa以下である、態様1に記載の筆記具用油性インク組成物。
〈態様3〉粘度が、300~5000mPa・sである、態様1又は2に記載の筆記具用油性インク組成物。
〈態様4〉前記樹脂が、ポリビニルブチラールである、態様1~3のいずれか一項に記載の筆記具用油性インク組成物。
〈態様5〉態様1~4のいずれか一項に記載の筆記具用油性インク組成物が充填されている、筆記具。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紙繊維の巻き込みが抑制され、かつ良好な筆記性及び発色性を有する、新規な筆記具用油性インク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《筆記具用油性インク組成物》
本発明の筆記具用油性インク組成物は、
黒字、赤字、及び青字用筆記具のための油性インク組成物であり、
着色材、白色又は無色の蛍光染料、樹脂、及び有機溶剤を少なくとも含有しており、
前記蛍光染料の含有率が、前記筆記具用油性インク組成物の質量に対して、0.05~12.0質量%である、
筆記具用油性インク組成物である。
【0011】
本発明者らは、上記の構成によれば、白色又は無色の蛍光染料を含有させることにより、予想外にも、粘度を適度に大きくしつつ、低い第一法線応力差(回転中心に集まろうとする力)を得ることができ、その結果、適度な粘度によって良好な筆記性を提供しつつ、低い第一法線応力差によって紙繊維の巻き込みが抑制される、新規な筆記具用油性インク組成物を提供することができることを見出した。
【0012】
理論に拘束されることを望まないが、これは、蛍光染料の特異な構造、特に共役二重結合及び平面構造の存在により、粘度を適度に大きくしつつ、第一法線応力差の増加が抑制されることによると考えられる。また、白色又は無色の蛍光染料の使用によれば、黒字、赤字、及び青字用筆記具のための油性インク組成物において好ましくない着色を与えず、したがって良好な発色性を提供しつつ、粘度及び第一法線応力を調節することができる。
【0013】
なお、従来、濃い色の筆記具のための油性インク組成物、特に黒字、赤字、及び青字用筆記具のための油性インク組成物においては、一般的に白色又は無色の蛍光染料は使用されていなかった。
【0014】
ここで、第一法線応力差とは、測定対象物に対してせん断をかけた場合に測定対象物のせん断方向に対して垂直に働く応力のことである。具体的には、インク組成物中の絡み合った高分子化合物は、回転により回転中心に巻き付き、回転中心に集まろうとするので、回転中心の圧力が高くなり、回転面を広げようとする力が発生する。この広げようとする力を、第一法線応力差という。すなわち、第一法線応力差が大きいインクは、組成中の高分子化合物の絡まりが強いインキである。
【0015】
上記の構成を有する筆記具用油性インク組成物の剪断速度300~1000s-1の条件で測定した第一法線応力差は、4000Pa以下、3500Pa以下、3200Pa以下、3000Pa以下、2800Pa以下、2700Pa以下、又は2600Pa以下であることができる。具体的には、この第一法線応力差は、測定装置(MCR 102、Anton Paar社)を用いて、以下の条件で測定することができる。
温度:25℃
コーンプレート:CP-25-1
測定位置:測定プレートから0.052mm上部
測定時間:2分間
測定間隔:0.5秒毎
剪断速度の測定範囲:0.01~10000s-1 (対数的に変化)
【0016】
上記の構成を有する筆記具用油性インク組成物の粘度は、300mPa・s以上、400Pa・s以上、500mPa・s以上、600mPa・s以上、700mPa・s以上、800mPa・s以上、900mPa・s以上、又は1000mPa・s以上であることができ、また5000mPa・s以下、4000mPa・s以下、3000mPa・s以下、2800mPa・s以下、2500mPa・s以下、2300mPa・s以下、2100mPa・s以下、2000mPa・s以下、1800mPa・s以下、1500mPa・s以下、又は1300mPa・s以下であることができる。
【0017】
この粘度は、温度25℃、剪断速度5rpmの条件で測定したものであり、公知の粘度測定機、例えばTVE-20H(東機産業)で、Rレンジ相当のレギュラーコーンを用いて測定することができる。
【0018】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0019】
〈着色材〉
着色材としては、黒色、赤色、又は青色の着色材を用いることができる。また、これらの着色剤に加え、他の色を呈する補助的な着色材を更に用いてもよい。これらの着色材は、単独で用いてもよく、又は混合して用いてもよい。
【0020】
黒色の着色剤としては、ダイレクトブラック154、ニグロシンNB等の黒色染料、及びカーボンブラック、チタンブラック、鉄黒、タルク等の黒色顔料を用いることができる。
【0021】
赤色の着色剤としては、アシッドレッド、エオシン、フロキシン等の赤色染料、及びべんがら、朱、カドミウムレッド等の無機系赤色顔料、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド245等の有機系赤色顔料を用いることができる。
【0022】
青色の着色剤としては、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ダイレクトスカイブルー5B等の青色染料、及びコバルトブルー、群青、紺青等の無機系青色顔料、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー27等の有機系青色顔料を用いることができる。
【0023】
着色剤としては、上記の着色剤に加え、補助的な染料又は顔料を用いることができる。
【0024】
補助的な着色染料としては、水に溶解又は分散する全ての染料を用いることができ、例えば、ウォーターイエロー#6-C等の酸性染料;,バイオレットBB等の直接染料;ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料などが挙げられる。
【0025】
補助的な着色顔料としては、上記の顔料以外の顔料を用いることができる。
【0026】
このような無機系顔料としては、例えば、酸化クロム、酸化鉄黄、ビリジアン、カドミウムイエロー、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、バライト粉、マンガンバイオレット、真鍮粉等を用いることができる。
【0027】
このような有機系顔料としては、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。このような有機系顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット50、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0028】
これらの着色材は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらの色材のうち、水に分散する顔料や、樹脂粒子顔料、疑似顔料、白色系プラスチック顔料、多層コーティングした顔料、熱変色性顔料、光変色性粒子等の平均粒子径は、ボール径、インク組成・粘度などにより変動するが、平均粒子径が0.02~6μmのものが望ましい。この平均粒子径は、例えば0.02μm以上、0.05μm以上、0.07μm以上、0.10μm以上、0.20μm以上、0.30μm以上、0.50μm以上、0.70μm以上、又は0.90μm以上であってよく、また6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、又は1μm以下であってよい。
【0029】
これらの着色材の含有量は、インクの描線濃度に応じて適宜増減することが可能であるが、筆記具用油性インク組成物全量に対して、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上、0.9質量%以上、又は1.0質量%以上であってよく、また40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であることが好ましい。
【0030】
着色剤のうち、黒色、赤色、青色の着色材の含有率は、着色材の合計質量に対して、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は100質量%以上であってよい。
【0031】
〈蛍光染料〉
蛍光染料は、無色又は白色の蛍光染料である。蛍光染料は、概して、共役二重結合を有し、かつ平面構造を有する染料であり、無色又は白色の蛍光染料は、このような染料のうち、電子供与性基を有し、かつNO、-N=N-などの強い電子吸引基を有しない。このような蛍光染料としては、無色又は白色の蛍光染料を指し示すものとして商業的に入手可能な蛍光染料を用いることができる。
【0032】
蛍光染料の含有率は、筆記具用油性インク組成物の質量に対して、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.20質量%以上、0.30質量%以上、0.40質量%以上、0.50質量%以上、0.60質量%以上、0.70質量%以上、0.80質量%以上、又は0.90質量%以上であり、かつ12.0質量%以下、10.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、又は5.0質量%以下であることが、上記の第一法線応力を得る観点から好ましい。
【0033】
〈樹脂〉
樹脂としては、塗膜の固着のために用いることができる随意の樹脂を用いることができ、例えばスルホアミド樹脂、マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、エステルガム、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ロジン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、尿素樹脂等、及びこれらの誘導体を用いることができる。
【0034】
本発明の筆記具用油性インク組成物中の樹脂の含有率は、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であることが、十分な固着性を得る観点から好ましく、また50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、7質量%以下、又は5質量%以下であることが、インクの粘度が過剰に高くなることを抑制する観点から好ましい。
【0035】
〈樹脂:ポリビニルブチラール〉
ポリビニルブチラールは、ポリビニルアルコールにブチルアルデヒドを反応させることにより生成した(コ)ポリマーである。具体的には、この樹脂は、以下の式で表されるコポリマーである。
【化1】
【0036】
ポリビニルブチラールの質量平均分子量は、10,000以上、20,000以上、30,000以上、又は35,000以上であってよく、また、150,000以下、140,000以下、130,000以下、120,000以下、110,000以下、100,000以下、90,000以下、80,000以下、70,000以下、又は60,000以下であることが、筆記具用油性インク組成物としての粘度と固着性とのバランスの観点から好ましい。
【0037】
ここで、質量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。
【0038】
ポリビニルブチラールの水酸基の含有率は、37mol%以下、35mol%以下、30mol%以下、29mol%以下、28mol%以下、27mol%以下、又は26mol%以下であってよく、特に26mol%以下であることが、得られた塗膜の耐擦過性を高める観点から好ましい。このアセタール化度は、20mol%以上、又は22mol%以上であってよい。
【0039】
上記水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(mol%)で表した値である。アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(mol%)で表した値である。
【0040】
上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0041】
〈有機溶剤〉
有機溶剤としては、例えば芳香族類、アルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、炭化水素類、エステル類等を用いることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、又は組み合わせて用いてもよい。
【0042】
有機溶剤の少なくとも一部は、芳香族類であることが、白色又は無色の蛍光染料を溶解させる観点から好ましい。また、この観点から、有機溶剤は、グリコールエーテル類及び芳香族類の混合溶媒であることが好ましい。芳香族類の含有率は、有機溶剤の質量に対して、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上、0.9質量%以上、又は1.0質量%以上であってよく、また5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.5質量%以下であってよい。
【0043】
芳香族類としては、例えばベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、フタル酸ブチル、フタル酸エチルヘキシル、フタル酸トリデシル、トリメリット酸エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート等を用いることができる。
【0044】
アルコール類としては、例えばエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、3-ペンタノール、tert-アミルアルコール、n-ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、ノナノール、n-デカノール、ウンデカノール、n-デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール等を用いることができる。
【0045】
多価アルコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、3-メチル-1,3ブタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3プロパンジオール、1,3ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等を用いることができる。
【0046】
グリコールエーテル類としては、例えば、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテルジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等を用いることができる。
【0047】
炭化水素類としては、例えばヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状炭化水素類を用いることができる。
【0048】
エステル類としては、例えばプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、トリメチル酢酸プロピル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、カプリル酸トリグリセライド、クエン酸トリブチルアセテート、オキシステアリン酸オクチル、プロピレングリコールモノリシノレート、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、3-メトキシブチルアセテート等を用いることができる。
【0049】
〈他の成分〉
他の成分としては、例えば、分散剤、レべリング剤、防錆剤、防腐剤、潤滑剤、表面調整剤等が挙げられる。レべリング剤としては、例えばフッ素系界面活性剤、シリコーンオイル、リン酸エステル系界面活性剤等を用いることができる。表面調整剤としては、シリコン系表面調整剤等を用いることができる。
【0050】
《筆記具》
筆記具は、上記の筆記具用油性インク組成物を含有している。筆記具は、インク貯蔵部、筆記部及び保持部を具備していてよく、この場合、インク貯蔵部には、油性インクが貯蔵されていてよい。筆記具は、ボールペンであってよい。
【0051】
〈インク貯蔵部〉
インク貯蔵部には、上記の筆記具用油性インク組成物が貯蔵されている。
【0052】
インク貯蔵部は、インクを貯蔵し、かつ筆記部にインクを供給することができる物であれば、任意の物を用いることができ、コレクター構造(インク保持機構)を備えた直液式であってもよく、又は中綿式のボールペンであってもよい。
【0053】
〈筆記部〉
筆記部は、ボールペンチップを先端部に有する筆記部であることができる。
【0054】
ボールペンチップは、ボール、及びボールを回転自在に抱持しているホルダーで構成されていてよい。ボールは、ボールペンのボールに用いられる随意の材料で構成されていてよく、例えばステンレス鋼、超硬合金、セラミックス等で構成されていてよい。またボールペンチップの形状は特に限定されず、例えば砲弾形状、ニードル形状などであってよい。
【0055】
〈保持部〉
保持部は、本発明の筆記具を手で保持することを可能とする部分であってよく、インク貯蔵部を収納できる中空構造を有していてよい。保持部は、例えば円筒状、多角筒状等の形状を有していてよい。
【実施例0056】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0057】
《筆記具用油性インク組成物の作製》
表1に記載の材料を、表1に示す質量部で混合させて、実施例1~11及び比較例1~2の筆記具用油性インク組成物を作製した。
【0058】
表1で言及している材料の詳細は以下のとおりである。
黒色顔料:Printex #35、デグサ株式会社
赤色顔料:Pigment Red 254、デグサ株式会社
青色顔料:Pigmet Blue 60、デグサ株式会社
黒色染料A:バリファーストブラック#3830、オリエント化学工業株式会社
黒色染料B:スピンブラックGMHスペシャル、保土ヶ谷化学工業株式会社
黄色染料:スピロンイエロー C-GNH、保土ヶ谷化学工業株式会社
青紫色染料A:バリファーストバイオレット#1701、オリエント化学工業株式会社
青紫色染料B:スピロンバイオレット C-RH、保土ヶ谷化学工業
白色蛍光染料A:MPI-609、日本蛍光株式会社
白色蛍光染料B:AIZEN MP-1、保土ヶ谷化学工業株式会社
白色蛍光染料C:FM-109、シンロイヒ株式会社
PVB-A:エスレックB BH-3、積水化学株式会社、水酸基約34mol%、分子量約110,000
PVB-B:エスレックB BL-1、積水化学株式会社、水酸基約36mol%、分子量約19,000
フュームドシリカ:AEROSIL R972、日本アエロ株式会社
リン系界面活性剤:フォスファノール LB-400、東邦化学工業株式会社
【0059】
《インクの物性の評価》
〈粘度〉
温度25℃の条件で、TVE-20H Rレンジ相当レギュラーコーン5rpmで、作製したインクの粘度を測定した。
【0060】
〈第一法線応力差〉
測定装置(MCR 102、Anton Paar社)を用いて、作製したインクの第一法線応力差を測定した。測定条件は以下のとおりである:
温度:25℃
コーンプレート:CP-25-1
測定位置:測定プレートから0.052mm上部
測定時間:2分間
測定間隔:0.5秒毎
剪断速度の測定範囲:0.01~10000s-1 (対数的に変化)
【0061】
《ボールペンとしての評価》
作製した上記の各インク組成物を、ボールペンに充填し、以下の評価を行った。
【0062】
〈紙繊維巻き込み〉
JIS S6039に準拠した筆記試験機(ミニテック筆記試験機、三菱鉛筆)を用い、筆記速度4m/分、筆記角度40°、筆記加重2.35N及び筆記距離25mの筆記条件で、藁半紙上に螺旋筆記することにより強制的に紙繊維を巻き込ませた。そして再度、前記試験と同様の条件で筆記試験を実施し、描線のカスレの状態を目視により確認することにより、紙繊維巻き込み性を確認した。更に、前記の試験と同様の条件で筆記試験を実施し、巻き込んだ紙繊維の排出性を確認した。
【0063】
評価基準は以下のとおりである。
A:紙繊維巻き込みがなく、描線状態も良好であった。
B:やや紙繊維を巻き込みがあり、若干の描線のカスレが確認された。
C:紙繊維を巻き込むが、概ね紙繊維を排出でき、描線にカスレが見られるが、筆記できた。
D:紙繊維を巻き込み、紙繊維を排出できず、筆記できなかった。
【0064】
〈筆記性〉
PPC用紙に手書きで螺旋筆記したときの、筆記感を下記の基準で官能評価した。評価基準は以下のとおりである。
A:紙への引っかかり感がなく滑るように滑らかな書き味であった
B:紙への引っかかり感がなく滑らかな書き味であった
C:やや紙への引っかかり感があるものの概ね滑らかな書き味であった
D:紙への引っかかり感があり滑らかな書き味ではない。
【0065】
〈発色性〉
PPC用紙に手書きで1cm*1cmの四角になるように塗りつぶし、発色性を下記の基準で官能評価した。
A:くすみなく鮮やかで、高い発色性。
B:若干くすみが見られ、やや低い発色性。
C:顕著なくすみが見られ、発色性が極めて低い。
【0066】
実施例及び比較例の各構成及び評価結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1から、筆記具用油性インク組成物の質量に対して、0.05~12.0質量%の白色又は無色の蛍光染料を含有している実施例の筆記具用油性インク組成物は、紙繊維の巻き込みが抑制され、かつ良好な筆記性及び発色性を有する筆記具用油性インク組成物であることが理解できよう。
【0069】
なお、実施例の筆記具用油性インク組成物の第一法線応力差は、剪断速度300~1000s-1のいずれにおいても、4000Paを下回っていることが理解できよう。