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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087257
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】AIインカム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/015 20230101AFI20240624BHJP
【FI】
G06Q30/015
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201983
(22)【出願日】2022-12-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 開催日: 令和4年11月25日 集会名、開催場所:第4回スタートアップ・アトツギベンチャーと企業をつなぐスタ★アトピッチJapan 東京ブロックA会場(東京都千代田区丸の内2丁目4-1 丸ビルホール&コンファレンススクエア) ウェブサイトの掲載日: 令和4年12月 ウェブサイトのアドレス:https://staatpitch.nikkei.co.jp/block/04/single.php?id=b04a_16#singleMv
(71)【出願人】
【識別番号】522359420
【氏名又は名称】株式会社Layer’s Shift
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】枚田 正章
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB08
5L049BB08
(57)【要約】
【課題】
従来技術における問題点を解決した、小売業店舗において使用可能なインカムシステムを提供すること。
【解決手段】
情報通信網を通じて互いに接続された複数のクライアント端末、及び、情報処理サーバーからなるインカムシステムであって、
質問情報の音声的入力を可能とするクライアント端末、入力された質問音声データを、受信し、他のクライアント端末、及び/又は第2の情報処理サーバーへ音声データとして送信可能とする第1の情報処理サーバー、第1の情報処理サーバーからの音声データを受信し、回答情報を蓄積する第3の情報処理サーバーとの協働のもと、回答情報の抽出及び提供を可能とし、抽出され提供可能とされた回答情報を音声データとして第1の情報処理サーバーへ送信する第2の情報処理サーバーを有することを特徴とするインカムシステム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報通信網を通じて互いに接続された複数のクライアント端末、及び、情報処理サーバーからなるインカムシステムであって、
質問情報の音声的入力を可能とするクライアント端末、入力された質問音声データを、受信し、他のクライアント端末、及び/又は第2の情報処理サーバーへ音声データとして送信可能とする第1の情報処理サーバー、第1の情報処理サーバーからの音声データを受信し、回答情報を蓄積する第3の情報処理サーバーとの協働のもと、回答情報の抽出及び提供を可能とし、抽出され提供可能とされた回答情報を音声データとして第1の情報処理サーバーへ送信する第2の情報処理サーバーを有することを特徴とするインカムシステム。
【請求項2】
第2の情報処理サーバーが機械学習部を有しており、質問情報に対する回答情報の抽出及び提供を機械学習により行うことを特徴とする請求項1に記載のインカムシステム。
【請求項3】
第3の情報処理サーバーと情報通信網を通じて接続される第4の情報処理サーバーが設けられており、この第4の情報処理サーバーに事前情報が蓄積されており、当該事前情報が、第3の情報サーバーへと送信可能とされていることを特徴とする請求項2に記載のインカムシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AIによる自動応答機能を有するインカムシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、小売店の大型化が進む一方、店舗内に配置される店員は減少傾向にあり、商品を購入したい客が店舗を訪れたとしても、接客対応してくれる店員をなかなかつかまえられないという問題が存在する。また、店舗で店員を見つけ商品に関する問い合わせ・質問等をしても全てが解決できるわけではない。多くの小売店舗は、商品群ごとに異なる売り場別の担当者制度で運用されているため、店員・担当者は、自身が担当する売り場・商品以外のことを質問されても答えられないからである。このような問題は特に、売り場面積が広い店舗、規模の大きい小売店で顕著となる。
【0003】
また、図8に示すように、小売業のスタッフ教育には、(1)店舗に立つまえに行われるべき教育と、(2)店舗に立つようになってからも継続的に行われるべき教育が存在する。すなわち店舗に立つ前には、「商品」、「販売」、「会計」、「会社の基本」、「接客」など基本的なことを覚えてから初めて店頭に出る。業種によっては配送などの他の知識も事前に覚えておく必要がある。
【0004】
他方で、店舗に出てからも、毎週・毎月など定期的に発売される新商品に関する商品知識を補完していく必要や、テレビやSNSで取り上げあれた場合、番組と紹介された商品を紐づけて覚えることや店内オペレーションの変更があった際には、それを覚えていく必要も存在する。
【0005】
つまり、売り場に立つスタッフ・店員としては、覚えることが多く大変であるという状況に加え、客からの質問・問い合わせに答えられないと客を怒らせてしまう、クレームを受けてしまうという問題を抱えている。そもそも全ての商品情報を記憶することは困難であるので、情報端末等で検索して対応するという方法もあるが、検索しても必要な情報になかなかたどりつけないという問題もある。
【0006】
小売業を営む経営者としては、スタッフ・店員の採用が困難であるという状況に加えて、このような教育に必要となるコストを負担しなければならないにもかかわらず、売り場にスタッフ・店員がいない・少ない状況を改善しないと、顧客が自社から離れてしまうという問題を抱えている。更に接客は個人の経験と能力に大きく委ねられているため、チェーン全体の接客のレベルを上げていくことが非常に難しい課題として存在する。
【0007】
経営上の問題としては、スタッフ・店員の負担が過大であると、職員が離職してしまうという問題も存在する。離職が発生すると、せっかく教育に多くの費用負担を投じたとしても、それを回収できず損失が発生してしまう事態すら発生しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2020/116531
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上述した問題点を解決するための、小売業店舗において使用可能なインカムシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、情報通信網を通じて互いに接続された複数のクライアント端末、及び、情報処理サーバーからなるインカムシステムであって、質問情報の音声的入力を可能とするクライアント端末、入力された質問音声データを、受信し、他のクライアント端末、及び/又は第2の情報処理サーバーへ音声データとして送信可能とする第1の情報処理サーバー、第1の情報処理サーバーからの音声データを受信し、回答情報を蓄積する第3の情報処理サーバーとの協働のもと、回答情報の抽出及び提供を可能とし、抽出され提供可能とされた回答情報を音声データとして第1の情報処理サーバーへ送信する第2の情報処理サーバーを有することを特徴とするインカムシステムにより解決される。
【0011】
有利な発展型では、第2の情報処理サーバーが機械学習部を有しており、質問情報に対する回答情報の抽出及び提供を機械学習により行うことが考えられる。
【0012】
またさらなる発展型では、第3の情報処理サーバーと情報通信網を通じて接続される第4の情報処理サーバーが設けられており、この第4の情報処理サーバーに事前情報が蓄積されており、当該事前情報が、第3の情報サーバーへと送信可能とされていることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかるシステムの全体図
図2】本発明を構成する各要素のハードウェア構成の図
図3】第1の情報処理サーバーのソフトウェア構成の一例を示す図
図4】第2の情報処理サーバーのソフトウェア構成の一例を示す図
図5】第3の情報処理サーバーのソフトウェア構成の一例を示す図
図6】第4の情報処理サーバーのソフトウェア構成の一例を示す図
図7】クライアント端末のソフトウェア構成の一例を示す図
図8】小売業の店舗スタッフが受けるべき教育の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明にかかるAIを用いたインカムシステム(以後、AIインカムシステムと称する)の全体図を示す。図1に見て取れるように、本発明にかかるAIインカムシステムには、複数のクライアント端末、及び第1―第4の情報処理サーバーを有している。各クライアント端末及び情報処理サーバーの間は、一般的な情報通信網(インターネット通信網など)により有線的及び/又は無線的に接続されている。以下、クライアント端末及び各情報処理サーバーのハードウェア的及びソフトウェア的構成及び機能を説明する。
【0015】
[クライアント端末のハードウェア構成]
図1に示されるように、本発明にかかるAIインカムシステムには、複数のクライアント端末が含まれている。これらクライアント端末は、AIインカムシステムを使用するユーザー、主として小売店の店舗の店員によって使用されるためのものである。クライアント端末は、たとえばスマートフォン、タブレット端末、パソコンなどの情報通信端末であることが可能である。
【0016】
クライアント端末は、図2に示すように、情報処理を行うCPU、記憶装置としてのSSD/HDD、一時的記憶メモリであるRAM、不揮発性記憶メモリであるROM、入力装置、出力装置(表示装置)、外部インターフェース、通信インターフェースからなっている。
【0017】
CPUは、ROMやSSD/HDDなどの記憶装置からプログラムやデータを読み出し、処理を実行する役割を担う。図2に記載される端末(コンピュータ)全体の制御や、コンピュータやスマートフォンとしての機能を実現する演算装置である。本発明にかかるインカム機能を実現するプログラムが当該CPUにより実行される。
【0018】
SSD/HDDは、プログラムやデータを格納している不揮発性の記憶装置である。格納されるプログラムとしては、基本ソフトウェアであるOS(オペレーションシステム)、OS上で各種機能を実現するアプリケーションソフトウェアがある。本発明にかかるインカム機能を実現するためのプログラムが当該SSD/HDDなどに格納される。なおSSD/HDDは、あくまで記憶装置の一例であり、これに代わる代替技術の採用を妨げるものでない。
【0019】
RAMは、プログラムやデータを一時的に保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。本発明にかかるインカム機能を実現するためのプログラムがSSD/HDDなどから読み出され、一時的にRAM上に書き込まれ、これがCPUにより実行されたり、本発明にかかるプログラムの実行において必要となるデータを一時的に保持したりするために使用される。
【0020】
ROMは、サーバー端末、クライアント端末などを実現するコンピュータの電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。ROMには、図2のコンピュータが起動時に実行されるBIOS、OS設定、各種プログラムやデータなどが格納されていることが可能である。
【0021】
入力装置には、2種類の入力装置、つまり音声入力装置(マイク)と、指示入力装置が存在する。図2のコンピュータ・スマートフォンに対するユーザーからの指示を入力し、又はユーザーの音声を入力する可能とするための装置である。指示を入力するための入力装置として、キーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなどが考えられる。本発明にかかるプログラムを実施する際、ユーザーからの各種指示の入力を可能とする機能を有する。音声入力装置は、図2の装置(小ピュータ、スマートフォンなど)に組み込まれているこことも可能である他、コンピュータ・スマートフォンと有線・無線接続可能なヘッドセットなどのように別体式に構成されている外部入力装置であることも可能である。
【0022】
出力装置にも、2種類の出力装置、つまり音声出力装置(スピーカー)と表示装置が存在している。表示装置は、いわゆるディスプレイ、モニターである。図2のコンピュータがノートPCやデスクトップPCとして実現されている場合には、表示出力用のディスプレイとして形成されていることが可能であり、タブレット端末、スマートフォンなどとして実現されている場合には、表示装置が入力装置と一体式に例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどとして形成されていることが可能である。音声出力装置(スピーカー)は、図2のコンピュータ・スマートフォンなどに組み込まれていることも可能である他、コンピュータ・スマートフォンなどと有線・無線接続可能なヘッドセットなどのように別体式に構成されている外部出力装置であることも可能である。
【0023】
外部インターフェースは、外部装置との接続インターフェースである。外部装置としては、例えば記憶媒体などが考えられる。記憶媒体としては、一般的なSSD/HDDのほか、メモリリカード、USBメモリなどが考えられる。このような記憶媒体は、コンピュータ内部の記憶媒体の要領が不足した際や、外部とプログラムやデータのやり取りを行う際などに用いられる。
【0024】
通信インターフェースは、本発明にかかるAIインカムシステムにおいて情報通信網(インターネット通信網など)に接続するためのインターフェースである。図2のコンピュータ・スマートフォンなどは、この通信インターフェースを介してデータ通信、情報通信を行うことが可能であるよう構成されている。
【0025】
[情報処理サーバーのハードウェア構成]
図1に示されるように、本発明にかかるAIインカムシステムには、複数の情報処理サーバーが含まれている。図1の実施例においては、第1―第4の情報処理サーバーが表されている。各情報処理サーバーは、現在可能な一般的な情報処理・情報通信を行うことができるコンピューターとして実施されていることが可能であり、上述したクライアント端末と同様又は類似の構成、例えば図2に示される構成を有していることが可能である。
【0026】
[各情報処理サーバーの機能・役割]
第1の情報処理サーバーは、図1の実施例において、第1の情報処理サーバーはクライアント端末との協働によりいわゆるインカム機能を実現する役割を有している。このため第1の情報処理サーバーは、複数のクライアント端末と情報通信網を通じて接続されており、クライアント端末を通じて入力された音声データを受信し、当該データを別のクライアント端末に送信することが可能に構成されている。
【0027】
第1の情報処理サーバーは、上述した機能の他に、各クライアント端末から受信した情報・音声データ(問合せデータ)を、第2の情報処理サーバーに引き渡し(送信し)、これに対応して第二の情報処理サーバーから受け取った情報・音声データ(回答データ)を適切なクライアント端末に送信する機能・役割を有している。
【0028】
第2の情報処理サーバーは、第1の情報処理サーバーと協働して、各クライアント端末より求められた回答を抽出し、これを各クライアント端末に提供する回答抽出提供サーバーとしての機能・役割を有している。第2の情報処理サーバーによる回答の抽出及び提供はいわゆるAIによる機械学習によって行われるよう構成されている。この他、第2の情報処理サーバーは、第1の情報処理サーバーより受信した音声データ(会話データ)をテキスト化し保存する機能を有していることも可能である。当該保存は、第2の情報処理サーバー内、及び/又はまたは後述する第3の情報処理サーバー内に行われることが可能である。
【0029】
第3の情報処理サーバーは、情報蓄積サーバーとしての機能・役割を有する。前述した第2の情報処理サーバー(回答抽出提供サーバー)は、この情報蓄積サーバー(第3の情報処理サーバー)と接続されており、第3の情報処理サーバー内に蓄積された情報の中から適切な回答を抽出することが可能であるよう構成されている。第3の情報処理サーバー(情報蓄積サーバー)内に蓄積されるべき情報は、後述する第4の情報処理サーバーからアップロード可能であるよう構成されている。
【0030】
第4の情報処理サーバーは、事前情報蓄積サーバーとしての機能を有する。前述した第3の情報処理サーバー、つまり情報蓄積サーバーに蓄積されるべき情報を、予め保存・保管しておくためのサーバーである。これには例えばテキスト情報としての、マニュアル、商品仕様書、その他の情報が含まれることが可能である。またデータ情報として、在庫情報、新商品情報、その他の情報がこれに含まれることも可能である。
【0031】
[各情報処理サーバーのソフトウェア構成]
次に、図3に基づいて第1の情報処理サーバーのソフトウェア構成を説明する。上述の通り、第1の情報処理サーバーは、第1の情報処理サーバーはクライアント端末との協働によりいわゆるインカム機能を実現する役割を有している。このため、第1の情報処理サーバーは、クライアント端末からの音声情報(音声データ)を受信、当該受信した音声情報(音声データ)を別のクライアント端末へと送信するための音声情報送受信部を有している。
【0032】
また、第1の情報処理サーバーはID情報送受信部を有している。ID情報送受信部は、クライアント端末から送信されるID情報を受信可能なように構成されている。後述するとおり、当該ID情報には各クライアント端末固有の情報が含まれており、上述した音声情報(音声データ)がどのクライアント端末から送信されたものであるかを判別するのに役立つ。
【0033】
第1の情報処理サーバーは、更に、通話チャンネル形成部を有している。通話チャンネル形成部により形成される通話チャンネルは、特定グループに属するユーザーのみが属することが可能であるよう構成される。これによって、第1の情報処理サーバーにより実現されるインカム機能は、自店舗内のみの通話、ブロック内通話、エリア内通話、全国通話など、通話可能な領域を段階的・階層的に拡大・縮小可能なよう構成されている。自店舗内の特定人物のみとの通話が可能とされるような通話チャネルを形成することももちろん考えられる。
【0034】
第1の情報処理サーバー内には、通話内容判断部が設けられている。通話内容判断部は、音声情報送受信部が受信した、クライアント端末から送信されてくる音声情報内の内容を判断・処理するために設けられている。例えば、音声情報内に特定の音声列(文字列)が存在するかどうかを確認可能に構成されている。例えば、クライアント端末を使用するユーザーが特定のキーワード「AIインカム」を発声すると、通話内容判断部は、通話チャネル形成部に対して指示を発するよう構成されていることが可能である。この場合、通話チャネル形成部は、当該指示に従い後述するAIインカム専用チャネルを形成し、当該チャネルにこのユーザーを割り当てる。
【0035】
通話内容判断部によって判断・処理されるキーワードは、複数設定されることが可能であるよう構成されていることも可能である。例えば、キーワードとして「質問」、「ありがとう」等を設定しておくことが考えられる。この場合、上述したAIインカム専用チャンネル中に、これらのキーワードをユーザーが発することにより、所定の動作が行われるよう設定しておくことが可能である。当該所定の動作については後述する。
【0036】
第1の情報処理サーバーは、この後説明する第2の情報処理サーバーと情報通信網を介して接続されており、第2の情報処理サーバーに対して音声情報送受信部を通じて音声情報(音声データ)を送信可能であるよう構成されている。
【0037】
続いて、図4に基づいて第2の情報処理サーバーについて説明する。図4に表されるように第2の情報処理サーバーは、音声情報受信部、回答抽出部、音声情報送信部、機械学習部、学習情報送信部を有している。図4に見て取れるとおり、第2の情報処理サーバーは、情報通信網を介して第1の情報処理サーバー、第3の情報処理サーバーと接続されている。
【0038】
第2の情報処理サーバーの音声情報受信部は、第1の情報処理サーバーからの音声情報(音声データ)を受信することができるように構成されている。そして、第2の情報処理サーバーの音声情報受信部は、受け取った音声情報を、同じく第2の情報処理サーバー内にもうけられる回答抽出部に引き渡すよう構成されている。回答抽出部は、受け取った音声情報の内容を判断するよう構成されている。判断した音声情報内に質問が含まれる場合、第2の情報処理サーバーの回答抽出部は、後述する第3の情報処理サーバー内のテキスト情報をクロールし、テキスト情報中に前記質問の回答として適当な情報がないかを検索する。回答な情報として適当な情報を発見すると、回答抽出部は、これを回答として抽出し、音声データ化した上で、音声情報送信部に引き渡す。音声情報送信部は、受け取った音声データを第1の情報処理サーバーに送信し、第1の情報処理サーバーはこの音声データを、適切なクライアント端末へと送信する。第1の情報処理サーバーによるクライアント端末への音声情報(回答情報)の送信は、第1の情報処理サーバーの音声情報送受信部を通じて行われる。
【0039】
第2の情報処理サーバーは、更に、機械学習部を有している。機械学習部は第2の情報処理サーバー内で回答抽出部と接続されており、回答抽出部による回答抽出の態様に応じた機械学習を行うよう構成されている。このため機械学習部は、音声データ音声データ(会話データ)をテキスト化する機能を有するよう構成されていることが可能である。テキスト化された情報は学習情報として学習情報送信部に引き渡されるよう構成されている。学習情報送信部は、受け取った当該テキスト化された学習情報を、第3の情報処理サーバーに送信することができるよう構成されている。第3の情報処理サーバー内では、このようなテキスト化された学習情報、特に回答できなかった案件に関する情報がリスト化され保存されることが可能に構成されている。
【0040】
続いて図5に基づいて第3の情報処理サーバーについて説明する。第3の情報処理サーバーは、上述したとおり、図5に見て取れる通り、第3の情報処理サーバーは、情報蓄積サーバーとしての機能・役割を有する。この第3の情報処理サーバー内を、第2の情報処理サーバーがクロールし、必要な回答情報を検索可能に構成されていることで、本発明にかかるAIインカム機能が実現される。
【0041】
図5に見て取れる通り、第3の情報処理サーバーは、事前情報受信部、API連携部、学習情報受信部、情報処理部、情報蓄積部、そして情報送信部を有している。図5に見て取れる通り、第3の情報処理サーバーは、情報通信網を介して第2の情報処理サーバー、第4の情報処理サーバーと有線的・無線的に接続されている。
【0042】
事前情報受信部は、後述する第4の情報処理サーバー内にある事前情報を受信可能なように構成されている。第4の情報処理サーバー内に保存される事前情報とは、商品に関するマニュアル・商品仕様書・その他の情報などのいわゆるテキスト情報である。第4の情報処理サーバーから、事前情報を受け取った事前情報受信部は、当該事前情報を情報蓄積部に引き渡し、事前情報を受け取った情報蓄積部は、当該事前情報を適宜蓄積するよう構成されている。
【0043】
第3の情報処理サーバー内にはAPI連携部が設けられている。API連携部は、第3の情報処理サーバー内に存在する、商品の在庫情報・新商品情報・その他の情報などのいわゆるデータ情報を第4の情報処理サーバーとの連携により自動的に受信するよう構成されていることが可能である。
【0044】
第3の情報処理サーバー内には、更に、学習情報受信部が設けられている。学習情報受信部は、第2の情報処理サーバーの機械学習部により生成された学習情報を受信することができるように構成されている。
【0045】
第3の情報処理サーバー内には、更に、情報処理部が設けられている。情報処理部は、事前情報受信部、API連携部、学習情報受信部が受け取った情報を、適宜、情報蓄積部に引き渡し、そこに蓄積するように構成されている。
【0046】
第3の情報処理サーバー内には、更に、情報送信部が設けられている。情報送信部は、情報蓄積部内の情報を、第2の情報処理サーバーからの要求にしたがい適宜送信することができるように構成されている。
【0047】
最後の情報処理サーバーとして第4の情報処理サーバーについて、図6を参照しつつ説明する。第4の情報処理サーバーは、上述したとおり、事前情報蓄積サーバーとしての機能を有する。前述した第3の情報処理サーバー、つまり情報蓄積サーバーに蓄積されるべき情報を、予め保存・保管しておくためのサーバーである。このため、第4の情報処理サーバー内には、事前情報蓄積部、事前情報送信部、そしてAPI連携部が設けられている。
【0048】
事前情報蓄積部内に蓄積される情報には、テキスト情報としての、マニュアル、商品仕様書、その他の情報が含まれることが可能であり、またデータ情報として、在庫情報、新商品情報、その他の情報がこれに含まれることも可能である。
【0049】
第4の情報処理サーバー内には、更に、事前情報送信部が設けられている。事前情報送信部は、事前情報蓄積部内に蓄積されている事前情報、より具体的には商品に関するマニュアル・商品仕様書・その他の情報などのいわゆるテキスト情報を第3の情報処理サーバーの事前情報受信部に対して送信することができるよう構成されている。
【0050】
第4の情報処理サーバー内には、更に、API連携部が設けられている。API連携部は、事前情報蓄積部内に蓄積されている事前情報、より具体的には、商品の在庫情報・新商品情報・その他の情報などのいわゆるデータ情報を、第3の情報処理サーバーのAPI連携部に対して自動送信するよう構成されている。
【0051】
最後に、本発明に係るAIインカムシステムにおけるクライアント端末について、図7を参照しつつ説明する。クライアント端末は、本発明にかかるAIインカムシステムにおいて複数もうけられており、各クライアント端末は、上述したとおり第1の情報処理サーバーを介して相互に通話可能に構成されている。このため、各クライアント端末は、音声情報入力部、音声情報送信部、音声情報受信部、そして音声情報出力部を有している。更に各クライアント端末は、ID情報生成部を有している。
【0052】
音声情報入力部は、クライアント端末の入力装置(音声入力装置、マイク)との協働のもと、ユーザーによって発せられる会話・質問・回答情報(信号)を音声データとして入力することを実現する部分である。音声情報入力部により入力された音声データには、ID情報生成部により生成されるID情報を付与される。ID情報が付与された音声データは、音声情報入力部から音声情報送信部に引き渡される。音声情報送信部は、情報通信網を通じて、第1の情報処理サーバーの音声情報送受信部に対して音声データを、そしてID情報送受信部に対してID情報を送信する。
【0053】
他方で、各クライアント端末は、第1の情報処理サーバーからの音声情報・音声データを受信可能であるよう、音声情報受信部を有している。この音声情報受信部は、情報通信網を介して第1の情報処理サーバーから送られてくる音声データを受信する。音声情報受信部は、受け取った音声データを音声情報出力部に引き渡す。音声情報出力部は、クライアント端末の出力装置との協働のもと、音声データをユーザーが出力装置を通じて聞き取ることが可能な音響信号として出力するよう構成されている。
【0054】
[システム全体の動作]
図1に基づき、本発明にかかるシステム全体の動作を説明する。図1には、例として3人の店舗スタッフが描かれている。当該店舗スタッフのうち、一番下に描かれた女性スタッフは、接客をしている。この接客中の店舗スタッフが、例えば客から問い合わせ・質問、「このお皿はオーブンで使えますか?」等の質問を受けたとする。当該接客中のスタッフはこの質問に対する回答を持ち合わせていない。そこで、当該接客中のスタッフは、自身が保有するクライアント端末を通じて質問を音声データとして入力する。入力された音声データ(質問データ)は、第1の情報処理サーバーへと送られる。第1の情報処理サーバー内の通話内容判断部により、当該音声データが質問データであることが確認されると、第1の情報処理サーバーは、当該音声データを介して第2の情報処理サーバーへと送信する。第2の情報処理サーバーは、第3の情報処理サーバー中をクロールし当該質問に対する回答を検索する。適切な回答が見つかると、第2の情報処理サーバーは、当該回答情報を音声データ化(回答データ化)し、音声情報として第1の情報処理サーバーへと送信し、第1の情報処理サーバーは、これをクライアント端末へと送信する。これによって、接客中のスタッフは適切な回答を瞬時に得ることが可能となる。
【0055】
[その他の機能・インカム機能]
続いて本発明に係るシステム全体によって達成される個々の機能について説明する。本発明にかかるAIインカムシステムによって、ある店舗のスタッフが受けた質問に対して、他店舗のスタッフが回答を提供する、つまり他店舗のスタッフがAIインカムシステムを通じて他店舗の顧客を接客することが可能となる。上述した通り、各クライアント端末は、第一の情報通信サーバーと情報通信網、例えばインターネット通信網を通じて互いに接続され、音声情報(音声データ)を送受信可能に構成されている。そして受信した音声情報(音声データ)は、音声出力装置(ハードウェア)・音声情報出力部(ソフトウェア)によってユーザーにより聞き取ることが可能である。第1の情報処理サーバーにはチャネル形成部が設けられているので、適当なチャネルを設定することにより、他の店舗のスタッフに接続することが可能である。
【0056】
[その他の機能・売り場表示機能]
更に、本発明に係るシステムに、外部出力装置として外部ディスプレイ・デジタルサイネージ等の画像出力装置を設けておくことも考えられる。また、更に、外部入力装置として売り場設置型のマイク等の音声入力装置を設けておくことも考えられる。当該画像出力装置及び音声入力装置は、例えば一つのクライアント端末と接続された出力装置・入力装置として構成されていることが可能である。その際、クライアント端末には、ソフトウェア構成として画像出力部が設けられていることが考えられる。当該画像出力装置、及び画像出力部を通じて、例えば、店舗内の特定の商品の売り場が表示可能に構成されていることが考えられる。このため、第3の情報処理サーバーにおいては、情報蓄積部内に、そのような売り場情報を画像情報として蓄積しておくよう構成されている。このような構成を通じて、店舗を訪れた顧客は、例えば当該音声入力装置(売り場設置型のマイク等)に直接「インテリア売り場はどこ?」等の質問を入力することが可能となり、これに対応して本発明に係るAIインカムシステムは、現在地点から質問をうけたインテリア売り場までの道筋を案内する画像を、デジタルサイネージ等の画像出力装置を通じて表示することが可能となる。このためには、売り場名・区画(場所)等の情報を第3の情報処理サーバーに蓄積しておく必要がある。
【0057】
[その他の機能・スタッフの自己学習機能]
本発明に係るシステムを用いることにより、店舗スタッフは顧客の質問に回答可能となるのみならず、自己学習を行うことも可能となる。顧客が知りたい情報・質問のみならず、自ら知りたい情報・質問を入力することにより、当該質問に対する適切な回答が得られるからである。これによって、例えば店舗スタッフは、(1)店舗内の商品を整理しながら、(2)店舗内の商品知識の習得を行うことが可能となる。従来、これらはそれぞれ別の作業であった。商品整理は、例えばもくもくと衣類を畳む整理陳列するという作業であったし、商品知識習得は、事務所内で紙やPC上の資料を眺めることにより行うことが多かった。しかしながら、本発明にかかるシステムを通じて、これら別々の作業を同時に行うことが可能となる。事務所での作業時間が減ることにより売り場に出る時間が増加するという意味においてもメリットがある。
【0058】
[その他の機能・会話のテキスト化機能]
上述した通り、本発明に係るAIインカムシステムを通した会話は全てテキスト化されていく。テキスト化された情報は、以下2つを目的として利用されることが可能である。(1)入力されたが、適切な回答が抽出・提供されなかった質問をリスト化(データベース化)し、事後の対応に備える(担当者による回答の準備を行うなど)、(2)店舗全体の課題の抽出に活用する。誰もそこに課題があると思っていない店舗での会話をテキスト化することで当該店舗の課題を改善するソリューション提案を行う事を可能とする。
【0059】
[その他の機能・接客時間短縮によるコスト削減]
本発明にかかるAIインカムシステムを用いることにより、(1)店舗での接客時間の短縮、(2)店舗スタッフの事前教育時間の短縮、(3)最新のアップデート情報を店舗スタッフが習得する時間の短縮が図られることが可能となる。これによって店舗全体として大幅なコスト削減に通じる。
【0060】
[その他の機能・回答率向上による機会損失の減少]
本発明にかかるAIインカムシステムを用いることにより、顧客からの質問に適切な回答を提供できる確率が大幅に向上する。これは、顧客からの質問に回答を提供できずに当該顧客が店舗を去ってしまう、いわゆる機会損失を大幅に減ずることを可能とする。
【0061】
[その他の機能・各店舗における接客レベルの向上]
接客という行為の質は個人の経験と能力に委ねられることが多い。本発明にかかるAIインカムシステムを用いることにより、今日入社・入店したばかりのアルバイトでも、一定のレベルの接客を行うことが可能となる。
【0062】
[その他の機能・ID情報の活用]
更に、ID情報(社員番号等)を活用することにより、本発明に係るシステムを利用するスタッフの特定が可能となる。これによって、個人毎に種々の定性情報・定量情報を取得することが可能となる。また、ID情報が活用されていることによって、上述した自己学習機能の利用状況などから個人の努力も可視化が可能となる。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8