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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087262
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】ストリーク管
(51)【国際特許分類】
   H01J 31/50 20060101AFI20240624BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H01J31/50 D
G01J1/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201991
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183081
【弁理士】
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 大志
(72)【発明者】
【氏名】石原 良俊
(72)【発明者】
【氏名】田村 春樹
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA11
2G065AA12
2G065BA23
2G065BC22
2G065CA30
(57)【要約】
【課題】時間分解能を効果的に向上させることができるストリーク管を提供する。
【解決手段】一実施形態のストリーク管は、入射面板と出力面板とを有する容器と、光電面と、掃引電極と、光電面と掃引電極との間に設けられ、電子を集束させる電子レンズを形成し、それぞれ電子が通過する開口部が設けられた複数の電極と、複数の電極の少なくとも1つに印加される電位を制御する制御部と、を備える。複数の電極は、入射面板に最も近い位置に配置される第1電極と、出力面板に最も近い位置に配置される第2電極と、第1電極及び第2電極の間に第1電極及び第2電極から離間して配置される第3電極と、を有する。制御部は、第3電極に、第1電極の電位及び第2電極の電位よりも高い電位を印加する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射面板と出力面板とを有する容器と、
前記容器内に設けられ、前記入射面板から入射した被計測光に応じて電子を放出する光電面と、
前記容器内に設けられ、前記出力面板に沿った掃引方向に互いに対向する一対の板状電極からなり、前記電子を前記掃引方向に掃引する掃引電極と、
前記光電面と前記掃引電極との間に設けられ、前記電子を集束させる電子レンズを形成し、それぞれ前記電子が通過する開口部が設けられた複数の電極と、
前記複数の電極の少なくとも1つに印加される電位を制御する制御部と、を備え、
前記複数の電極は、前記入射面板に最も近い位置に配置される第1電極と、前記出力面板に最も近い位置に配置される第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極の間に前記第1電極及び前記第2電極から離間して配置される第3電極と、を有し、
前記制御部は、前記第3電極に、前記第1電極の電位及び前記第2電極の電位よりも高い電位を印加する、ストリーク管。
【請求項2】
前記第1電極は、前記第2電極と同電位である、請求項1に記載のストリーク管。
【請求項3】
前記電子レンズと前記掃引電極との間に設けられ、前記掃引方向において前記複数の電極の各々の前記開口部の幅よりも小さい幅を有する第1スリットを有する第1スリット部材を更に備え、
前記制御部は、前記掃引電極に印加される電位を制御することにより、前記掃引電極の掃引開始時において、前記一対の板状電極のうちの一方である第1板状電極に正電位を印加すると共に、前記一対の板状電極のうちの他方である第2板状電極に負電位を印加し、
前記掃引方向における前記第1スリットの中心は、前記電子レンズの中心を通り前記掃引方向に直交する中心面に対して前記第1板状電極が位置する側に前記中心面から離間した位置に配置されている、請求項1に記載のストリーク管。
【請求項4】
前記第1スリット部材は、前記第2電極と同電位である、請求項3に記載のストリーク管。
【請求項5】
前記電子レンズと前記入射面板との間に設けられ、前記掃引方向において前記複数の電極の各々の前記開口部の幅よりも小さい幅を有する第2スリットを有する第2スリット部材を更に備え、
前記制御部は、前記掃引電極に印加される電位を制御することにより、前記掃引電極の掃引開始時において、前記一対の板状電極のうちの一方である第1板状電極に正電位を印加すると共に、前記一対の板状電極のうちの他方である第2板状電極に負電位を印加し、
前記掃引方向における前記第2スリットの中心は、前記電子レンズの中心を通り前記掃引方向に直交する中心面に対して前記第2板状電極が位置する側に前記中心面から離間した位置に配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のストリーク管。
【請求項6】
前記第2スリット部材と前記入射面板との間に設けられ、前記電子を通過させるための開口が設けられたアパーチャー電極を更に備え、
前記第2スリット部材は、前記アパーチャー電極及び前記第1電極の少なくとも一方と同電位である、請求項5に記載のストリーク管。
【請求項7】
前記入射面板は、前記被計測光が入射する光入射面と、前記光入射面とは反対側に位置し前記光電面が形成された光電面形成面と、を有し、
前記光電面形成面は、前記光入射面側に向かって窪んだ曲面状に形成されている、請求項1に記載のストリーク管。
【請求項8】
前記制御部は、前記掃引電極に印加される電位を制御することにより、前記掃引電極の掃引開始時において、前記一対の板状電極のうちの一方である第1板状電極に正電位を印加すると共に、前記一対の板状電極のうちの他方である第2板状電極に負電位を印加し、
前記電子レンズの中心を通り前記掃引方向に直交する中心面に対向する前記第1板状電極の内側面における前記入射面板に最も近い端部と前記中心面との距離は、前記中心面に対向する前記第2板状電極の内側面における前記入射面板に最も近い端部と前記中心面との距離よりも短い、請求項1に記載のストリーク管。
【請求項9】
前記一対の板状電極は、前記一対の板状電極の間における前記電子の走行速度と同期して印加される電位が変化するように構成された進行波型電極である、請求項1に記載のストリーク管。
【請求項10】
入射面板と出力面板とを有する容器と、
前記容器内に設けられ、前記入射面板から入射した被計測光に応じて電子を放出する光電面と、
前記容器内に設けられ、前記出力面板に沿った掃引方向に互いに対向する一対の板状電極からなり、前記電子を前記掃引方向に掃引する掃引電極と、
前記光電面と前記掃引電極との間に設けられ、前記電子を集束させる電子レンズを形成し、それぞれ前記電子が通過する開口部が設けられた複数の電極と、
前記掃引電極に印加される電位と前記複数の電極の少なくとも1つに印加される電位とを制御する制御部と、
前記電子レンズと前記掃引電極との間に設けられ、前記掃引方向において前記複数の電極の各々の前記開口部の幅よりも小さい幅を有する第1スリットを有する第1スリット部材と、
前記電子レンズと前記入射面板との間に設けられ、前記掃引方向において前記複数の電極の各々の前記開口部の幅よりも小さい幅を有する第2スリットを有する第2スリット部材と、を備え、
前記制御部は、前記掃引電極の掃引開始時において、前記一対の板状電極のうちの一方である第1板状電極に正電位を印加し、前記一対の板状電極のうちの他方である第2板状電極に負電位を印加し、
前記掃引方向における前記第1スリットの中心は、前記電子レンズの中心を通り前記掃引方向に直交する中心面に対して前記第1板状電極が位置する側に前記中心面から離間した位置に配置されており、
前記掃引方向における前記第2スリットの中心は、前記中心面に対して前記第2板状電極が位置する側に前記中心面から離間した位置に配置されている、ストリーク管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ストリーク管に関する。
【背景技術】
【0002】
光を伴う短時間の現象を捕捉するための装置として、ストリーク管(例えば、特許文献1参照)が知られている。特許文献1に開示されたストリーク管は、光電面で発生した電子を集束させる電子集束系と掃引電極との間に、1次元集束レンズを形成する3つの付加電極が管軸方向に沿って配置された構造を有している。このストリーク管では、時間分解能の改善を図るために、3つの付加電極のうち両外側に配置された第1付加電極及び第3付加電極にグランド電位(0V)が印加され、第1付加電極と第3付加電極との間に配置された第2付加電極にマイナスの電位(例えば、-350V又は-500V)が印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5824328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、高エネルギー分野(例えば、高エネルギー加速器電子ビームの研究、超短パルス光源の開発等)、科学計測分野(例えば、材料開発研究分野における分子ダイナミクスの計測等)等において、極めて短時間に生じる発光現象を捉える超高速光計測のニーズが高まっている。すなわち、上記したストリーク管(例えば、時間分解能が悪化しがちであるシンクロスキャン掃引を行う構成等)において、より一層の時間分解能の向上が求められている。
【0005】
そこで、本開示の一側面は、時間分解能を効果的に向上させることができるストリーク管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の[1]~[10]のストリーク管を含む。
【0007】
[1]
入射面板と出力面板とを有する容器と、
前記容器内に設けられ、前記入射面板から入射した被計測光に応じて電子を放出する光電面と、
前記容器内に設けられ、前記出力面板に沿った掃引方向に互いに対向する一対の板状電極からなり、前記電子を前記掃引方向に掃引する掃引電極と、
前記光電面と前記掃引電極との間に設けられ、前記電子を集束させる電子レンズを形成し、それぞれ前記電子が通過する開口部が設けられた複数の電極と、
前記複数の電極の少なくとも1つに印加される電位を制御する制御部と、を備え、
前記複数の電極は、前記入射面板に最も近い位置に配置される第1電極と、前記出力面板に最も近い位置に配置される第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極の間に前記第1電極及び前記第2電極から離間して配置される第3電極と、を有し、
前記制御部は、前記第3電極に、前記第1電極の電位及び前記第2電極の電位よりも高い電位を印加する、ストリーク管。
【0008】
上記ストリーク管では、電子レンズを形成する複数の電極のうち両端部に位置する第1電極及び第2電極よりも内側に配置された第3電極に対して、第1電極の電位及び第2電極の電位よりも高い電位が印加される。ここで、仮に第3電極に第1電極及び第2電極よりも低い電位を印加した場合には、第3電極の電子入射側の開口部付近に電子の速度を減速させる電子減速領域が形成されてしまう。これに対して、第3電極に第1電極及び第2電極よりも高い電位が印加される上記ストリーク管によれば、上記のような電子減速領域が形成されることを抑制し、第3電極の電子入射側の開口部付近を通過する電子を加速させることができる。さらに、電子レンズを通過する電子群のうち、電子レンズの中心面から離れた軌道を通る電子ほど電位差による加速作用を強く受けることになる。その結果、電子群が電子レンズを通過することで生じる、電子レンズ通過後の電子群の各電子間の速度差(すなわち、掃引電極までの到達時間差)を小さくすることができる。したがって、上記ストリーク管によれば、時間分解能を効果的に向上させることができる。
【0009】
[2]
前記第1電極は、前記第2電極と同電位である、[1]のストリーク管。
【0010】
第1電極と第2電極とを同電位にすることにより、時間分解能をより一層効果的に向上させることができる。
【0011】
[3]
前記電子レンズと前記掃引電極との間に設けられ、前記掃引方向において前記複数の電極の各々の前記開口部の幅よりも小さい幅を有する第1スリットを有する第1スリット部材を更に備え、
前記制御部は、前記掃引電極に印加される電位を制御することにより、前記掃引電極の掃引開始時において、前記一対の板状電極のうちの一方である第1板状電極に正電位を印加すると共に、前記一対の板状電極のうちの他方である第2板状電極に負電位を印加し、
前記掃引方向における前記第1スリットの中心は、前記電子レンズの中心を通り前記掃引方向に直交する中心面に対して前記第1板状電極が位置する側に前記中心面から離間した位置に配置されている、[1]又は[2]のストリーク管。
【0012】
第1板状電極と第2板状電極と間の領域のうち中心面よりも第2板状電極が位置する側における電子入射側の領域は、掃引開始時において負の電場が生じることにより、電子が減速され易い減速領域となる。一方、第1板状電極と第2板状電極と間の領域のうち中心面よりも第1板状電極が位置する側における電子入射側の領域は、掃引開始時において正の電場が生じることにより、電子が加速され易い加速領域となる。上記構成によれば、電子レンズを通過した電子群のうち上記減速領域に向かう電子群(すなわち、中心面よりも第2板状電極が位置する側に離間した周辺部を通過する電子)の一部を遮断し、上記減速領域に進入する電子の数を減らすことができる。これにより、第1板状電極と第2板状電極との間に進入する電子群の速度及び進行方向(角度)のばらつきを抑制できる。その結果、出力面板に到達する電子群の掃引方向(時間方向)の空間的な拡がりを抑制でき、時間分解能を向上させることができる。
【0013】
[4]
前記第1スリット部材は、前記第2電極と同電位である、[3]のストリーク管。
【0014】
第1スリット部材と第2電極とを同電位にすることにより、時間分解能をより一層効果的に向上させることができる。
【0015】
[5]
前記電子レンズと前記入射面板との間に設けられ、前記掃引方向において前記複数の電極の各々の前記開口部の幅よりも小さい幅を有する第2スリットを有する第2スリット部材を更に備え、
前記制御部は、前記掃引電極に印加される電位を制御することにより、前記掃引電極の掃引開始時において、前記一対の板状電極のうちの一方である第1板状電極に正電位を印加すると共に、前記一対の板状電極のうちの他方である第2板状電極に負電位を印加し、
前記掃引方向における前記第2スリットの中心は、前記電子レンズの中心を通り前記掃引方向に直交する中心面に対して前記第2板状電極が位置する側に前記中心面から離間した位置に配置されている、[1]~[4]のいずれかのストリーク管。
【0016】
上記構成によれば、電子レンズに入射する電子群のうち中心面よりも第1板状電極が位置する側に離間した周辺部を通過する電子の一部を遮断することができる。これにより、電子群が電子レンズを通過することで生じる、第1板状電極と第2板状電極との間に進入する電子群の速度及び進行方向(角度)のばらつき(すなわち、掃引電極までの到達時間のばらつき)を抑制できる。その結果、出力面板に到達する電子群の掃引方向(時間方向)の空間的な拡がりを抑制でき、時間分解能を向上させることができる。
【0017】
[6]
前記第2スリット部材と前記入射面板との間に設けられ、前記電子を通過させるための開口が設けられたアパーチャー電極を更に備え、
前記第2スリット部材は、前記アパーチャー電極及び前記第1電極の少なくとも一方と同電位である、[5]のストリーク管。
【0018】
第2スリット部材をアパーチャー電極及び第1電極の少なくとも一方と同電位にすることにより、時間分解能をより一層効果的に向上させることができる。
【0019】
[7]
前記入射面板は、前記被計測光が入射する光入射面と、前記光入射面とは反対側に位置し前記光電面が形成された光電面形成面と、を有し、
前記光電面形成面は、前記光入射面側に向かって窪んだ曲面状に形成されている、[1]~[6]のいずれかのストリーク管。
【0020】
上記構成によれば、電子の進行方向(すなわち、入射面板から出力面板に向かう方向)において、光電面の中央に近い位置から放出される電子のフォーカスポイントと、光電面の中央から離れた位置から放出される電子のフォーカスポイントとの距離差を小さくすることができる。その結果、光電面における電子放出位置(すなわち、光電面における被計測光の入射位置)の違いによる空間方向(掃引方向及び電子の進行方向に直交する方向)における解像度(空間分解能)を向上させることができる。
【0021】
[8]
前記制御部は、前記掃引電極に印加される電位を制御することにより、前記掃引電極の掃引開始時において、前記一対の板状電極のうちの一方である第1板状電極に正電位を印加すると共に、前記一対の板状電極のうちの他方である第2板状電極に負電位を印加し、
前記電子レンズの中心を通り前記掃引方向に直交する中心面に対向する前記第1板状電極の内側面における前記入射面板に最も近い端部と前記中心面との距離は、前記中心面に対向する前記第2板状電極の内側面における前記入射面板に最も近い端部と前記中心面との距離よりも短い、[1]~[7]のいずれかのストリーク管。
【0022】
上記構成によれば、電子レンズを通過した電子群を、掃引開始時に正電位が印加される第1板状電極に近い領域(加速領域)に好適に誘導できるとともに、掃引開始時に負電位が印加される第2板状電極に近い領域(減速領域)に入射する電子を減少させることができる。これにより、電子群が電子レンズを通過することで生じる、電子間の掃引電極までの到達時間のばらつきが低減される。その結果、より一層効果的に時間分解能を向上させることができる。
【0023】
[9]
前記一対の板状電極は、前記一対の板状電極の間における前記電子の走行速度と同期して印加される電位が変化するように構成された進行波型電極である、[1]~[8]のいずれかのストリーク管。
【0024】
上記構成によれば、掃引電極間を通過する電子の速度に合わせて、掃引電極間に伝播する電位を印加することができる。これにより、電子群のより精密な掃引制御が可能になるため、より一層効果的に時間分解能を向上させることができる。
【0025】
[10]
入射面板と出力面板とを有する容器と、
前記容器内に設けられ、前記入射面板から入射した被計測光に応じて電子を放出する光電面と、
前記容器内に設けられ、前記出力面板に沿った掃引方向に互いに対向する一対の板状電極からなり、前記電子を前記掃引方向に掃引する掃引電極と、
前記光電面と前記掃引電極との間に設けられ、前記電子を集束させる電子レンズを形成し、それぞれ前記電子が通過する開口部が設けられた複数の電極と、
前記掃引電極に印加される電位と前記複数の電極の少なくとも1つに印加される電位とを制御する制御部と、
前記電子レンズと前記掃引電極との間に設けられ、前記掃引方向において前記複数の電極の各々の前記開口部の幅よりも小さい幅を有する第1スリットを有する第1スリット部材と、
前記電子レンズと前記入射面板との間に設けられ、前記掃引方向において前記複数の電極の各々の前記開口部の幅よりも小さい幅を有する第2スリットを有する第2スリット部材と、
を備え、
前記制御部は、前記掃引電極の掃引開始時において、前記一対の板状電極のうちの一方である第1板状電極に正電位を印加し、前記一対の板状電極のうちの他方である第2板状電極に負電位を印加し、
前記掃引方向における前記第1スリットの中心は、前記電子レンズの中心を通り前記掃引方向に直交する中心面に対して前記第1板状電極が位置する側に前記中心面から離間した位置に配置されており、
前記掃引方向における前記第2スリットの中心は、前記中心面に対して前記第2板状電極が位置する側に前記中心面から離間した位置に配置されている、ストリーク管。
【0026】
上記構成によれば、上述した[2]及び[5]の両方の効果を得ることができるため、時間分解能を効果的に向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本開示の一側面によれば、時間分解能を効果的に向上させることができるストリーク管を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態のストリーク管の構造を模式的に示す断面図である。
図2図1のストリーク管における、アパーチャー電極の一部、第2スリット部材、1次元電子レンズ、及び第1スリット部材を模式的に示す斜視断面図である。
図3図1のストリーク管の掃引電極に印加される掃引電圧の例を示す図である。
図4】比較例及び実施例の各々の1次元電子レンズの作用を模式的に示す図である。
図5】比較例及び実施例の各々の光電面の作用を模式的に示す図である。
図6】比較例及び実施例の各々の光電面の作用を模式的に示す図である。
図7】1次元電子レンズの変形例を模式的に示す断面図である。
図8】第2実施形態のストリーク管の構造を模式的に示す断面図である。
図9図8のストリーク管における、アパーチャー電極の一部、第2スリット部材、1次元電子レンズ、及び第1スリット部材を模式的に示す斜視断面図である。
図10】比較例のストリーク管の時間分解能解析の結果を模式的に示す図である。
図11】第1実施例のストリーク管の時間分解能解析の結果を模式的に示す図である。
図12】第2実施例のストリーク管の時間分解能解析の結果を模式的に示す図である。
図13】比較例のストリーク管及び第2実施形態のストリーク管の時間分解能の測定結果を示す図である。
図14】掃引電極の第1変形例及び第2変形例を模式的に示す図である。
図15】掃引電極の第3変形例を模式的に示す図である。
図16】メインフォーカス電極の変形例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0030】
[第1実施形態]
図1図7を参照して、第1実施形態のストリーク管1Aについて説明する。図1は、ストリーク管1Aの、管軸Aを含み、掃引電極6の偏向板(板状電極6a,6b)に垂直な面に沿った断面図である。図1に示されるように、ストリーク管1Aは、容器2と、メッシュ電極3と、メインフォーカス電極4と、アパーチャー電極5と、掃引電極6と、光電面7と、蛍光面8と、1次元電子レンズ9と、第1スリット部材11と、第2スリット部材12と、高圧電源13と、電圧分配回路14と、メインフォーカス電極用電圧源15と、第3電極用電圧源16と、掃引電圧発生部17と、設定信号発生部18(制御部)と、PINフォトダイオード19と、遅延回路20と、を備える。
【0031】
容器2は、円筒状に形成されている。上述したストリーク管1Aの管軸Aは、容器2の中心軸である。管軸Aに沿った方向における容器2の一端面には、被計測光Lが入射される透光性材料からなる入射面板2aが固定されている。入射面板2aは、被計測光Lが入射する光入射面2a1と、光入射面2a1とは反対側に位置する光電面形成面2a2と、を有している。管軸Aに沿った方向における容器2の他端面には、出力像が出射される透光性材料からなる出力面板2bが固定されている。なお、以下の説明においては、容器2の管軸Aに沿った方向をZ軸方向とし、掃引電極6の板状電極6a(第1板状電極)及び板状電極6b(第2板状電極)が互いに対向し且つZ軸方向に直交する方向(掃引方向)をX軸方向とし、Z軸方向及びX軸方向に直交する方向(空間方向)をY軸方向とする。
【0032】
容器2の内部において、入射面板2aの内側の面である光電面形成面2a2は、光入射面2a1側に向かって窪んだ曲面状に形成されており、その上に光電面7が設けられている。換言すれば、光電面形成面2a2上に、出力面板2bから入射面板2aに向かって凸な曲面状に形成された光電面7が設けられている。一例として、光電面形成面2a2に曲面状の凹部が設けられており、光電面7は、Z軸方向の厚みが略一定であり且つ当該凹部に沿った曲面状に形成されている。光電面7は、管軸Aに対して回転対称(軸対称)な形状を有している。例えば、光電面7の入射面(入射面板2a(光電面形成面2a2)に対向する面)及び出射面(出力面板2bに対向する面)は、球面状又は放物面状に形成されてもよい。光電面7は、いわゆる透過型の光電陰極であり、入射面板2aから入射した被計測光Lに応じて電子(光電子)を蛍光面8(出力面板2b)に向けて放出する。容器2の内部において、出力面板2bの内側の面には、蛍光面8が設けられている。蛍光面8は、光電面7によって放出された電子の入射に応じて、その電子の入射分布に応じた出力像(ストリーク像)を外部にむけて放出する。
【0033】
メッシュ電極3は、円筒状電極の光電面7側の端部がメッシュ状の電極によって覆われた形状を有する電子ビーム加速用の電極である。メッシュ電極3の中心軸は、容器2の管軸Aと略一致している。メッシュ電極3は、容器2の内部において光電面7に隣接して配置されている。メッシュ電極3は、入射面板2aにY軸方向に沿った線状の光学像が入射した場合にその光学像とメッシュとの角度が略45度を成すように、すなわち、メッシュがX軸(Y軸)に対して45度を成すように配置される。これにより、出力像におけるモワレを防ぐことができる。このメッシュの間隔は、例えば、1,000本/インチに設定される。
【0034】
メインフォーカス電極4は、軸対称の円筒状電極である。メインフォーカス電極4の中心軸は、容器2の管軸Aと略一致している。メインフォーカス電極4は、容器2の内部においてメッシュ電極3に隣接して配置されている。メインフォーカス電極4は、メッシュ電極3とアパーチャー電極5との間に配置されている。
【0035】
アパーチャー電極5は、メインフォーカス電極4に対してメッシュ電極3が位置する側とは反対側において、メインフォーカス電極4に隣接して配置されている。アパーチャー電極5は、管軸Aと略一致する中心軸を有する円筒状電極5aと、円筒状電極5aの蛍光面8側の端部に形成された円板状電極5bと、を有している。円板状電極5bの中心部には、電子を通過させるためのアパーチャー5c(開口)が設けられている。
【0036】
メッシュ電極3、メインフォーカス電極4、及びアパーチャー電極5は、光電面7から放出された電子を蛍光面8に向けて集束させるための軸対称電子レンズを形成する円筒状電極群(電子集束系)である。このような電子集束系を実現するために、光電面7には所定の負電位(例えば、-3kV)が印加され、メッシュ電極3には所定の正電位(例えば、+3KV)が印加され、メインフォーカス電極4には正極性の高電位が印加され、アパーチャー電極5及び蛍光面8にはグランド電位(0V)が印加される。これにより、メッシュ電極3とメインフォーカス電極4との間、及び、メインフォーカス電極4とアパーチャー電極5との間に、メッシュ電極3によってZ軸方向に加速された電子ビームを蛍光面8上に集束させるための2次元電子レンズ(容器2の管軸Aに対して対称なレンズ)が形成される。メインフォーカス電極4に印加される電位の大きさは、電子ビームが蛍光面8上に最適に集束されるように調整可能とされている。メッシュ電極3、メインフォーカス電極4、及びアパーチャー電極5の円筒部の内径は、例えば20mmである。
【0037】
1次元電子レンズ9(電子レンズ)は、アパーチャー電極5及び後述する第2スリット部材12のスリット12aを通過した電子をX軸方向に集束させる。すなわち、1次元電子レンズ9は、管軸Aを含みX軸に垂直な平面(中心面CS)上に電子を集束させるように構成されている。
【0038】
掃引電極6は、出力面板2bに沿った掃引方向(X軸方向)に互いに対向する一対の板状電極(板状電極6a,6b)を有している。板状電極6a,6bは、中心面CSを挟んでX軸方向に互いに対向している。図1に示されるように、一例として、板状電極6aは、入射面板2aから出力面板2bに向かうにつれて中心面CSから遠ざかるように、中心面CSに対して傾斜するように配置されている。板状電極6bは、中心面CSに対して平行に配置されている。板状電極6a,6bに掃引電圧が印加されることにより、掃引電極6を通過する電子群がX軸方向に掃引される。
【0039】
図2は、アパーチャー電極5、第2スリット部材12、1次元電子レンズ9、及び第1スリット部材11を模式的に示す斜視断面図である。図1及び図2に示されるように、アパーチャー電極5と掃引電極6との間には、第2スリット部材12、1次元電子レンズ9、及び第1スリット部材11が、この順に配置されている。
【0040】
図2に示されるように、1次元電子レンズ9は、複数(本実施形態では3枚)の円板状の電極(第1電極9a、第2電極9b、及び第3電極9c)を有している。第1電極9aは、入射面板2aに最も近い位置に配置されている。第2電極9bは、出力面板2bに最も近い位置に配置されている。第3電極9cは、第1電極9aと第2電極9bとの間に第1電極9a及び第2電極9bから離間して配置されている。第1電極9a、第2電極9b、及び第3電極9cは、出力面板2bに沿った状態でZ軸方向(容器2の管軸Aに沿った方向)に空間的に分離して配置されている。
【0041】
第1電極9aには、Z軸方向に貫通する開口部10aが設けられている。Z軸方向から見た場合に、開口部10aは、第1電極9aの掃引方向(X軸方向)の略中央部(すなわち、中心面CSを含む領域)においてY軸方向(掃引方向に垂直な方向)に延びる横長の形状を有する。第2電極9b及び第3電極9cにも、第1電極9aの開口部10aと同様の開口部10b及び10cが設けられている。開口部10a,10b,10cの中心は、容器2の管軸A上に位置している。
【0042】
開口部10a,10b,10cのY軸方向の長さのX軸方向の幅に対する倍率は、1次元電子レンズ9を効率よく機能させる観点から3倍以上であることが好ましい。開口部10a,10b,10cの倍率が3倍以上の場合には、開口部10a,10b,10cの長さ方向(Y軸方向)の両端の電位が影響して不要なY軸方向の電子レンズ作用が生じることを防止することができる。例えば、第1電極9a,第2電極9b,第3電極9cの各々の厚さ(Z軸方向の長さ)は、3mmに設定され、各開口部10a,10b,10cの開口幅(X軸方向の幅)は4mmに設定され、各開口部10a,10b,10cのY軸方向の長さは25mmに設定され、第1電極9a、第2電極9b、及び第3電極9cの間隔は3mmに設定される。また、開口部10a,10b,10cのY軸方向の両端部は、図2に示されるような円弧状に形成されていてもよいし、直線状に形成されてもよい。
【0043】
第1スリット部材11は、電子の進行方向(Z軸正方向)における1次元電子レンズ9の下流側に設けられている。すなわち、第1スリット部材11は、1次元電子レンズ9と掃引電極6との間に設けられている。本実施形態では、一例として、第1スリット部材11は、第2電極9bの外面(蛍光面8に対向する面)に接触するように設けられている。すなわち、第1スリット部材11と第2電極9bとは電気的に接続されており、同電位となっている。また、第1スリット部材11は、円板状に形成されている。第1スリット部材11は、Z軸方向に貫通するスリット11a(第1スリット)を有する。スリット11aの掃引方向における中心は、開口部10a,10b,10cの中心と同様に、管軸A上に位置している。第1スリット部材11は、例えば、ステンレス、アルミニウム等の金属材料によって形成されている。
【0044】
第2スリット部材12は、電子の進行方向における1次元電子レンズ9の上流側に設けられている。すなわち、第1スリット部材11は、1次元電子レンズ9と入射面板2aとの間(より具体的には、第1電極9aとアパーチャー電極5との間)に設けられている。本実施形態では、一例として、第2スリット部材12は、アパーチャー電極5の円板状電極5bの外面(蛍光面8に対向する面)に接触するように設けられている。すなわち、第2スリット部材12とアパーチャー電極5とは電気的に接続されており、同電位となっている。また、第2スリット部材12は、第1スリット部材11と同様に、円板状に形成されている。第2スリット部材12は、Z軸方向に貫通するスリット12a(第2スリット)を有する。スリット12aの掃引方向における中心は、開口部10a,10b,10cの中心と同様に、管軸A上に位置している。第2スリット部材12は、例えば、ステンレス、アルミニウム等の金属材料によって形成されている。
【0045】
スリット11aの掃引方向(X軸方向)の幅は、好ましくは、0.5mm~1.5mmであり、本実施形態では、一例として、0.8mmである。スリット12aの掃引方向(X軸方向)の幅は、好ましくは、0.8mm~1.5mmであり、本実施形態では、一例として、1.2mmである。すなわち、スリット11a,12aの掃引方向(X軸方向)の幅は、いずれも上述した複数の電極(第1電極9a、第2電極9b、及び第3電極9c)の各々の開口部10a,10b,10cの掃引方向の幅よりも小さい。また、スリット11aの掃引方向の幅は、スリット12aの掃引方向の幅以下とされることが好ましく、本実施形態においては、スリット11aの掃引方向の幅は、スリット12aの掃引方向の幅よりも小さい。スリット11aは、1次元電子レンズ9を通過した電子群の一部を遮断し、掃引電極6へと向かう電子群の範囲を絞る役割を果たす。スリット12aは、アパーチャー電極5のアパーチャー5cを通過した電子群の一部を遮断し、1次元電子レンズ9へと向かう電子群の範囲を絞る役割を果たす。
【0046】
次に、図1を再度参照しながら、ストリーク管1Aの電圧制御系について説明する。第1電極9a及び第2電極9bは、容器2内で互いに電気的に接続されると共に、アパーチャー電極5に電気的に接続されている。すなわち、第1電極9a、第2電極9b、及びアパーチャー電極5は、同電位となっている。また、第3電極9cは、外部から任意の電位Vcを印加可能なように構成されている。
【0047】
アパーチャー電極5及び蛍光面8は、グランド電位が印加される(接地される)ことにより0Vに設定される。これにより、第1電極9a及び第2電極9bの電位が0Vに設定される。それと同時に、高圧電源13により発生される電圧が電圧分配回路14によって分圧されることにより、光電面7に-3kVの電位が印加され、メッシュ電極3に+3kVの電位が印加される。また、メインフォーカス電極用電圧源15がメインフォーカス電極4に接続され、メインフォーカス電極用電圧源15からメインフォーカス電極4に正極性の高電圧が印加される。さらに、第3電極用電圧源16が1次元電子レンズ9の第3電極9cに接続され、第3電極用電圧源16から第3電極9cに予め設定した電位Vcが印加される。メインフォーカス電極用電圧源15及び第3電極用電圧源16により出力される電圧は調整可能にされている。
【0048】
掃引電極6の板状電極6a,6bには、掃引電圧発生部17が接続されている。掃引電圧発生部17により、板状電極6a,6bのそれぞれに、逆極性(プッシュプル)の掃引電圧Vd1(t)、Vd2(t)が供給される。掃引電圧Vd1(t)、Vd2(t)は、時間的に変化する電圧であり、互いに逆極性の電圧になるように設定される。本実施形態では、後述する設定信号発生部18は、掃引電極6の掃引開始時において、板状電極6aに正電位を印加し、板状電極6bに負電位を印加するように構成されている。
【0049】
図3は、掃引電極6に印加される掃引電圧の例を示す図である。図3の(A)は、シンクロスキャン方式における掃引電圧Vd1(t)及びVd2(t)の一例である。図3の(A)に示されるように、シンクロスキャン方式でストリーク管1Aを動作させる場合には、高周波(例えば、50~200MHz程度)の正弦高周波電圧である掃引電圧Vd1(t)及びVd2(t)が板状電極6a,6bに印加される。図3の(A)に示されるように、Vd1(t)とVd2(t)とは、半波長(波長wの1/2)だけずれており、位相が逆とされている。例えば、高速で繰り返し発生する光を観測する場合、上記シンクロスキャン方式において、掃引周波数を被計測光の繰り返しと同期させることにより、蛍光面8上の同一位置にストリーク像を重ね合わせる(積算する)ことができる。これにより、微弱な発光現象でも高いS/N比で測定することができる。図3の(A)の例では、Vd1(t)及びVd2(t)の極性が入れ替わる前後のタイミング(図3の(A)における時間間隔s、電位変動幅hの領域)に合わせて電子群が掃引電極6を通過するように、後述する設定信号発生部18によって掃引電圧Vd1(t)及びVd2(t)が設定される。一方、図3の(B)に示されるように、単発掃引方式でストリーク管1Aを動作させる場合には、掃引電圧Vd1(t)及びVd2(t)は、斜状に1回だけ変化するように制御されてもよい。
【0050】
第3電極用電圧源16及び掃引電圧発生部17には、設定信号発生部18が接続されている。設定信号発生部18からの信号により、第3電極用電圧源16の出力する電圧値、及び掃引電圧発生部17が生成する掃引電圧の周期、傾斜等が変更可能である。すなわち、設定信号発生部18は、掃引電極6に印加される電位と1次元電子レンズ9(複数の電極)の少なくとも1つ(第3電極9c)に印加される電位とを制御する。設定信号発生部18は、掃引電圧の変化に連動して、1次元電子レンズ9の第3電極9cに印加される電圧値を設定し、掃引電圧の変化に関するパラメータ(例えば、上述したシンクロスキャン方式の場合における周波数、単発掃引方式の場合に斜状に変化する電圧の傾き等)及び第3電極9cに印加される電圧値を示す設定値を、それぞれ掃引電圧発生部17及び第3電極用電圧源16に出力する。
【0051】
PINフォトダイオード19は、容器2の外側において、被計測光Lの入射を検知してトリガ信号を生成する。遅延回路20は、PINフォトダイオード19により生成されたトリガ信号を遅延させて掃引電圧発生部17に出力する。掃引電圧発生部17は、トリガ信号の発生タイミングに合わせて掃引電圧Vd1(t)、Vd2(t)を掃引電極6に印加する。PINフォトダイオード19及び遅延回路20により、被計測光Lの入射に応じて光電面7において発生した電子群が掃引電極6を通過するタイミングに合わせて、掃引電極6に対して掃引電圧を印加することが可能に構成されている。
【0052】
次に、ストリーク管1Aの動作の一例について説明する。最初に、掃引電極6の板状電極6a,6bと1次元電子レンズ9の第1電極9a及び第2電極9bにグランド電位(Va=Vb=0kV)を印加し、第3電極9cに+600V~+1kVの範囲内の電位(本実施形態では、+700V)である電位Vcを印加した状態で、図示しないハーフミラー、スリット板、及び光学レンズを経由させて被計測光Lを入射面板2a上に結像させることにより、Y軸方向に沿った線状光学像を光電面7上に入射させる。このとき、メインフォーカス電極用電圧源15の出力電位を+6kV~+10kVの範囲内の所定電位(本実施形態では、+7kV)に調整することにより、蛍光面8上に静止した線状光学像を焦点の合った状態で得ることができる。メインフォーカス電極4によって形成される電子レンズは軸対称電子レンズであるので、線状光学像の線方向に垂直な方向(掃引方向、X軸方向)にも、その線方向(空間方向、Y軸方向)にも焦点の合った状態で電子群が集束される。
【0053】
次に、掃引電圧発生部17によって掃引電圧を発生させて蛍光面8上で電子群を掃引させた場合、蛍光面8上において線状光学像の強度の時間変化に対応した輝度分布(ストリーク像)が得られる。この時、設定信号発生部18は、掃引速度に応じた最適な掃引電圧が板状電極6a,6bに印加されるように、掃引電圧発生部17を制御する。
【0054】
図4は、比較例及び実施例の各々の1次元電子レンズの作用を模式的に示す図である。図4の(A)は、比較例のストリーク管における1次元電子レンズ9の、管軸Aを含むXZ平面に沿った断面を模式的に示している。図4の(B)は、実施例(すなわち、本実施形態のストリーク管1Aの構成を備えたストリーク管)における1次元電子レンズ9の、管軸Aを含むXZ平面で沿った断面を模式的に示している。
【0055】
図4の(A)に示される比較例では、第1電極9aの電位Va及び第2電極9bの電位Vbよりも低い電位Vcが、第3電極9cに印加されている。例えば、第1電極9a及び第2電極9bに印加される電位Va及びVbをグランド電位(0V)に設定し、第3電極9cに印加される電位を負電位(例えば、-350V、-500V等)に設定する場合について考える。
【0056】
図4において、中心軌道Tcは、被計測光Lの入射に応じて光電面7で発生した電子群のうち管軸Aに沿った中心面CSを通過して1次元電子レンズ9に到達する電子の軌道(管軸Aを含むXZ平面に投影したもの)を示している。周辺軌道Tpは、上記電子群のうち中心面CSから離間した周辺部を通過して1次元電子レンズ9に到達する電子の軌道(管軸Aを含むXZ平面に投影したもの)を示している。位置Pcは、中心軌道Tcに沿って移動する電子が1次元電子レンズ9(第2電極9b)の開口部10bを通過した直後の時点tにおける上記電子の位置を示している。位置Ppは、周辺軌道Tpに沿って移動する電子の時点tにおける位置を示している。
【0057】
図4の(A)に示される比較例においては、上述した通り、第3電極9cに対して第1電極9a及び第2電極9bに印加される電位Va及びVbよりも低い負の電位Vcが印加されている。そのため、第3電極9cの開口部10cの電子入射側付近には電子減速領域が形成され、開口部10cの電子出射側付近には電子加速領域が形成される。そのため、電位Va及びVbと電位Vcとの電位差によって生じる電場により、特に第1電極9aと第3電極9cとの間の領域を通過する電子に対して、第3電極9cの開口部10cの電子入射側付近において電子の進行方向(光電面7から蛍光面8へと向かう方向)とは逆向きの成分(減速成分)を有する外力Fが作用する。このように、1次元電子レンズ9に入射した電子群を最初に電子減速領域(すなわち、開口部10cの電子入射側付近に形成される領域)に入射させた場合には、1次元電子レンズ9の中心面CSから離れた軌道を通る電子ほど、減速に伴う速度差を生みながら、1次元電子レンズ9による集束作用によって中心面CSに近づくため、第3電極9cの開口部10cの電子出射側付近に形成される電子加速領域を通過する際の効果(電子間の速度差を低減する効果)が殆どなくなってしまう。さらに、中心面CSに沿った中心軌道Tcに沿って移動する電子よりも中心面CSから離れた周辺部の周辺軌道Tpに沿って移動する電子の方が、上述した外力Fの影響(減速作用)を受け易い。このため、中心軌道Tcに沿って移動する電子と周辺軌道Tpに沿って移動する電子との速度差が比較的大きくなる。このような速度差が大きくなると、光電面7において同時に発生した電子群の蛍光面8への到達時間差が大きくなるため、ストリーク管の時間分解能が損なわれる。
【0058】
これに対し、図4の(B)に示される実施例においては、上述した通り、第3電極9cに対して第1電極9a及び第2電極9bに印加される電位Va及びVbよりも高い正の電位Vcが印加されている。そのため、第3電極9cの開口部10cの電子入射側付近には電子加速領域が形成され、開口部10cの電子出射側付近には電子減速領域が形成される。そのため、電位Va及びVbと電位Vcとの電位差によって生じる電場により、特に第1電極9aと第3電極9cとの間の領域を通過する電子に対して、第3電極9cの開口部10cの電子入射側付近において電子の進行方向(光電面7から蛍光面8へと向かう方向)と同じ向きの成分(加速成分)を有する外力Fが作用する。このように、1次元電子レンズ9に入射した電子群を最初に電子加速領域(すなわち、開口部10cの電子入射側付近に形成される領域)に入射させた場合には、電子の軌道(特に1次元電子レンズ9の中心面CSから離れた軌道)が1次元電子レンズ9の中心面CSに近づき過ぎることを抑制できるため、電子間の速度差を効果的に低減できる。また、電子群が比較例(図4の(A))よりも速度を増した状態で開口部10cの電子出射側付近の電子減速領域をより短時間で通過することが可能となる。すなわち、電子間の速度差を大きくする要因となる電子減速領域の影響を比較例よりも低減できる。以上述べた作用により、実施例によれば、1次元電子レンズ9を通過する電子群の速度差を小さくすることができる。さらに、中心面CSに沿った中心軌道Tcに沿って移動する電子よりも中心面CSから離れた周辺部の周辺軌道Tpに沿って移動する電子の方が、上述した外力Fの影響(加速作用)を受け易い。このため、中心軌道Tcに沿って移動する電子と周辺軌道Tpに沿って移動する電子との速度差が比較的小さくなる。その結果、実施例によれば、光電面7において同時に発生した電子群の蛍光面8への到達時間差を比較例よりも小さくできるため、比較例よりも高い時間分解能を得ることができる。
【0059】
また、周辺軌道Tpを通過する電子群は、1次元電子レンズ9よりも手前の電子集束系においても、中心軌道Tcを通過する電子群に対して迂回する経路(すなわち、中心軌道Tcに沿った経路よりも長い経路)を通過してきている。そのため、1次元電子レンズ9に入射する時点において、周辺軌道Tpを通過する電子群は、中心軌道Tcを通過する電子群に対して若干遅延する可能性がある。ストリーク管1Aにおいては、第3電極9cに対し第1電極9a及び第2電極9bに印加される電位Va及びVbよりも高い電位Vcを印加する構成を採用することにより、中心軌道Tcを通過する電子群に対する周辺軌道Tpを通過する電子群の遅延が適切に補正される。つまり、周辺軌道Tpを通過する電子群を、中心軌道Tcを通過する電子群に適切に追いつかせることができる。これにより、光電面7において同時に発生した電子群の蛍光面8への到達時間差を小さくでき、ストリーク管1Aの高時間分解能化を図ることができる。
【0060】
[第1実施形態の作用効果]
以上述べたように、ストリーク管1Aでは、1次元電子レンズ9を形成する複数の電極(本実施形態では一例として、第1電極9a、第2電極9b、及び第3電極9c)のうち両端部に位置する第1電極9a及び第2電極9bよりも内側に配置された第3電極9cに対して、第1電極9aの電位Va及び第2電極9bの電位Vbよりも高い電位Vcが印加される。ここで、仮に、上述した比較例のように第3電極9cに第1電極9a及び第2電極9bよりも低い電位を印加した場合には、第3電極9cの開口部10cの電子入射側付近に電子の速度を減速させる電子減速領域(図4の(A)に示されるように電子の進行方向とは逆向きの成分を含む外力Fが作用する領域)が形成されてしまう。これに対して、第3電極9cに第1電極9a及び第2電極9bよりも高い電位Vcが印加される本実施形態の構成によれば、図4の(B)に示されるように、上記のような電子減速領域が形成されることを抑制し、第3電極9cの開口部10cの電子入射側付近を通過する電子を加速させることができる。さらに、1次元電子レンズ9を通過する電子群のうち、1次元電子レンズ9の中心面CSから離れた軌道を通る電子ほど電位差による加速作用を強く受けることになる。その結果、電子群が1次元電子レンズ9を通過することで生じる、1次元電子レンズ9通過後の電子群の各電子間の速度差(すなわち、掃引電極6までの到達時間差)を小さくすることができる。したがって、ストリーク管1Aによれば、時間分解能を効果的に向上させることができる。
【0061】
また、第1電極9aは、第2電極9bと同電位である。上記構成によれば、時間分解能をより一層効果的に向上させることができる。より具体的には、第1電極9aと第2電極9bとを同電位にすることにより、第3電極9cの周りに形成される電子レンズ(すなわち、第3電極9cが形成する電界によって電子レンズ作用を生じさせる領域)を局在化させる(すなわち、第3電極9cの近傍に形成する)ことができる。これにより、1次元電子レンズ9の中心面CS付近を通過する電子よりも中心面CSから離れた軌道を通過する電子ほど、電位差による加速作用を強く受けることになる。その結果、中心面CS付近を通過する電子と中心面CSから離れた軌道を通過する電子との速度差(すなわち、掃引電極6までの到達時間差)をより効果的に低減できるため、上述した時間分解能向上効果を高めることができる。
【0062】
また、第1スリット部材11は、第2電極9bと同電位である。上記構成によれば、時間分解能をより一層効果的に向上させることができる。仮に、第2電極9bと第1スリット部材11とを別電位にした場合、第1スリット部材11のスリット11a(開口部)付近に、掃引電極6が形成する電界と混在する不要な電子レンズ(すなわち、1次元電子レンズ9によって形成される電子レンズとは別に1次元電子レンズ9と掃引電極6との間に形成される電子レンズ作用を生じさせる領域)が形成され得る。このような不要な電子レンズは、時間分解能特性に影響を及ぼす。これに対して、第2電極9bと第1スリット部材11とを同電位にすることにより、掃引電極6が形成する電界から第1スリット部材11を確実に分離できるため、上述したような不要な電子レンズが形成されることを防止できる。その結果、時間分解能特性を安定化させることができる。
【0063】
また、第2スリット部材12は、アパーチャー電極5及び第1電極9aの少なくとも一方(本実施形態では両方)と同電位である。上記構成によれば、時間分解能をより一層効果的に向上させることができる。より具体的には、第2スリット部材12と第1電極9aとを同電位にした場合には、第3電極9cの周りに形成される電子レンズを効果的に局在化させることができるため、上述した第1電極9aと第2電極9bとを同電位にした場合と同様の効果を促進させることができる。また、第2スリット部材12とアパーチャー電極5とを同電位にした場合には、第3電極9cの周りに形成される電子レンズの局在化がやや緩和されてしまうものの、その代わりに、第1電極9aの電子入射側の開口付近にも電子加速領域を形成することが可能となる。このように、前者の構成(第2スリット部材12と第1電極9aとを同電位にする構成)によれば、狭い領域(第3電極9c周りの局在化した領域)での加速作用の効率化によって時間分解能の向上を図ることができる。一方、後者の構成(第2スリット部材12とアパーチャー電極5とを同電位にする構成)によれば、広い領域での加速作用の効率化によって時間分解能の向上を図ることができる。また、上述したように、後者の構成によって前者の構成の効果がやや緩和されてしまうものの、両方の構成を備える場合には、上述した前者の構成及び後者の構成の各々の効果をバランス良く得ることができる。
【0064】
次に、第1実施形態の他の作用効果として、本実施形態の光電面7の効果について説明する。図5の(A)は、比較例のストリーク管501の容器2内の構造をX軸正方向からの視点で模式的に示す図であり、図5の(B)は、実施例(第1実施形態のストリーク管1A)の容器2内の構造をX軸正方向からの視点で模式的に示す図である。
【0065】
ストリーク管501は、XY平面に略平行な平面状(平板状)の光電面507を備える点において、入射面板2aに向かって凸な曲面状を有する光電面7を備えるストリーク管1Aと異なる。
【0066】
図5の(A)及び(B)において、被計測光L1,L2,L3は、入射面板2aのそれぞれ異なるY座標に入射する被計測光L(Y軸方向に延びる線状光学像)の代表的な成分である。上記被計測光L1,L2,L3が光電面7,507に衝突することによって、出力面板2bに向けて電子群を放出させる。電子ビームB1,B2,B3は、それぞれ、上記被計測光L1,L2,L3の入射に応じて光電面7,507で発生する電子の、光電面7,507から蛍光面8に到達するまでの経路群の概形を表す。説明を簡略にするため、被計測光L1,L2,L3及び電子ビームB1,B2,B3のX軸方向の座標については、ここでは考慮しない。
【0067】
図5に示されるように、被計測光L1,L2,L3が発生させる電子群は、光電面7,507から蛍光面8に向かうまでの間にアパーチャー電極5の円板状電極5bのアパーチャー5cを通過する必要があることから、電子ビームB1,B2,B3は、容器2の中央付近において交差する。すなわち、被計測光L1,L2,L3が発生させる電子群のY座標の順序関係は、光電面7,507から蛍光面8に向かうまでの間に入れ替わる。
【0068】
従って、図5の(A)に示されるストリーク管501のように光電面507がXY平面に平行な平面状である場合、管軸AからY方向に離間して入射する被計測光L1,L3が発生させる電子群の経路は、管軸Aの近傍で入射する被計測光L2に比べて長くなる。これに対し、図5の(B)に示されるストリーク管1Aのように光電面7を入射面板2aに向かって凸な曲面状とすることにより、上記電子群の蛍光面8までの経路長の差を低減することができる。
【0069】
図6の(A)は、図5の(A)に示したストリーク管501の蛍光面8を含む部分の拡大図であり、図6の(B)は、図5の(B)に示したストリーク管1Aの蛍光面8を含む部分の拡大図である。
【0070】
図6の(A)及び(B)に示される焦点線FLは、各電子ビームB1,b2,B3の拡がりが最も小さくなる点(フォーカスポイント)を結んだ曲線である。図6に示されるように、管軸Aに沿った最も経路の短い電子ビームB2の蛍光面8での拡がりが最小になるようにピントを調整した場合、電子ビームB1,B3のフォーカスポイントは蛍光面8から遠ざかることになる。すなわち、電子ビームB1,B3の経路長と電子ビームB2の経路長が互いに異なることから、電子ビームB2のフォーカスポイントに蛍光面8が位置するように調整した場合、電子ビームB1,B3のフォーカスポイントが蛍光面8から離れてしまう。その結果、図6の(A)に示されるように、比較例のストリーク管501では、中心部から離れた周辺部の電子ビームB1,B3の蛍光面8での拡がり幅Wが大きくなってしまい、空間分解能が損なわれてしまう可能性がある。
【0071】
一方、図6の(B)に示される実施例(第1実施形態のストリーク管1A)のように、入射面板2aに向かって凸な曲面を有する光電面7を採用した場合、電子ビームB1,B3の経路長と電子ビームB2の経路長との差を比較例よりも小さくすることができる。すなわち、図6の(B)に示される実施例の焦点線FLの曲率は、図6の(A)に示される比較例の焦点線FLの曲率よりも小さくなる(緩やかになる)。その結果、実施例によれば、電子ビームB1,B3の蛍光面8での拡がり幅Wを比較例よりも抑えることができ、空間分解能を向上させることができる。言い換えれば、電子の進行方向(すなわち、入射面板2aから出力面板2bに向かう方向)において、光電面7の中央に近い位置から出力面板2bに向けて放出される電子(すなわち、電子ビームB2)のフォーカスポイントと、光電面7の中央から離れた位置から出力面板2bに向けて放出される電子(すなわち、電子ビームB1,B3)のフォーカスポイントとの距離差を小さくすることができる。その結果、光電面7における電子放出位置(すなわち、光電面7における被計測光Lの入射位置)の違いによる空間方向(Y軸方向)における解像度(空間分解能)を向上させることができる。
【0072】
また、上記構成によって中心部を通る電子ビームB2と周辺部を通る電子ビームB1,B3との経路長の差を小さくすることにより、各電子ビームB1,B2,B3を構成する電子群間の蛍光面8への到達時間差のばらつきを抑制することも期待できる。その結果、各電子ビームB1,B2,B3を構成する電子群の蛍光面8上における電子密度の低下を抑制することができる。したがって、上記構成によれば、空間分解能の向上と共に時間分解能の向上を図ることもできる。
【0073】
[第1実施形態の変形例]
1次元電子レンズ9は4枚以上の電極で構成されていてもよい。すなわち、第1電極9aと第2電極9bとの間に、上述した第3電極9cを含む2以上の電極が配置されてもよい。
【0074】
図7は、変形例に係る1次元電子レンズ709を模式的に示す図である。図7に示されるように、1次元電子レンズ709は、入射面板2aに最も近い位置に配置される第1電極9aと、出力面板2bに最も近い位置に配置される第2電極9bと、第1電極9a及び第2電極9bの間に第1電極9a及び第2電極9bから離間して配置される第3電極9cと、を有し、更に、第2電極9b及び第3電極9cの間に第2電極9b及び第3電極9cから離間して配置される他の電極9dを有する。
【0075】
第1電極9a、第2電極9b、第3電極9c、及び他の電極9dには、それぞれ、電位Va,Vb,Vc,Vdが印加される。このとき、「Vc>Va」かつ「Vc>Vb」が満たされていればよい。例えば、印加される電位の大小関係として、「Vd>Vc>Va=Vb」,「Vc=Vd>Va=Vb」,「Vc>Va=Vb=Vd」,「Vc>Va=Vb>Vd」等の態様を取り得る。また、他の電極9dは、2枚以上配置されてもよい。また、他の電極9dは、第1電極9a及び第2電極9bに印加される電位Va,Vbよりも高い電位Vdを印加される電極(すなわち、第3電極9cと同様の役割を果たす電極)として機能してもよい。すなわち、1次元電子レンズは、上述した電位の要件を満たす電極(第3電極)を複数有してもよい。また、図7に示されるように、1次元電子レンズを構成する各電極の幅(Z軸方向の長さ)は、互いに異なっていてもよい。各電極の開口部10a~10dの開口幅(X軸方向の幅)も、互いに異なっていてもよい。
【0076】
[第2実施形態]
図8図13を参照して、第2実施形態のストリーク管1Bについて説明する。図8は、ストリーク管1Bの、管軸Aを含み、掃引電極6の偏向板(板状電極6a,6b)に垂直な面に沿った断面図である。図9は、ストリーク管1Bにおける、アパーチャー電極5、第2スリット部材12B、1次元電子レンズ9、及び第1スリット部材11Bを模式的に示す斜視断面図である。
【0077】
図8及び図9に示されるように、ストリーク管1Bの第1スリット部材11B及び第2スリット部材12Bは、以下の点において、第1実施形態のストリーク管1Aの第1スリット部材11及び第2スリット部材12と相違している。
【0078】
第1スリット部材11Bは、掃引方向(X軸方向)におけるスリット11aの中心が中心面CS(1次元電子レンズ9の中心を通り掃引方向に直交する平面)に対して板状電極6a(掃引開始時に正電位を印加される電極)が位置する側に中心面CSから離間した位置に配置されている。すなわち、第1スリット部材11Bは、ストリーク管1Aの第1スリット部材11よりもX軸正方向に僅かにスライド(平行移動)した位置に配置されている。本実施形態では、一例として、第1スリット部材11Bのスリット11aの中心は、中心面CSよりもX軸正方向に0.1mm~0.7mmの範囲内の距離(本実施形態では、0.3mm)だけ離間(偏心)した位置に配置されている。
【0079】
第2スリット部材12Bは、掃引方向(X軸方向)におけるスリット12aの中心が中心面CSに対して板状電極6b(掃引開始時に負電位を印加される電極)が位置する側に中心面CSから離間した位置に配置されている。すなわち、第2スリット部材12Bは、ストリーク管1Aの第2スリット部材12よりもX軸負方向に僅かにスライド(平行移動)した位置に配置されている。本実施形態では、一例として、第2スリット部材12Bのスリット12aの中心は、中心面CSよりもX軸負方向に0.1mm~0.5mmの範囲内の距離(本実施形態では、0.2mm)だけ離間(偏心)した位置に配置されている。
【0080】
ここで、掃引電極6の板状電極6a,6b間の領域のうち中心面CSよりも板状電極6bが位置する側における電子入射側の領域は、掃引開始時において負の電場が生じることにより、電子が減速され易い減速領域となる。一方、掃引電極6の板状電極6a,6b間の領域のうち中心面CSよりも板状電極6aが位置する側における電子入射側の領域は、掃引開始時において正の電場が生じることにより、電子が加速され易い加速領域となる。
【0081】
上述したようにX軸正方向に偏心するように配置された第1スリット部材11Bを設けることにより、1次元電子レンズ9を通過した電子群のうち上記減速領域に向かう電子群(すなわち、中心面CSよりもX軸負方向側に大きく離間した周辺部を通過する電子)の一部を遮断し、上記減速領域に進入する電子の数を減らすことができる。これにより、板状電極6a,6b間に進入する電子群の速度及び進行方向(角度)のばらつき(すなわち、蛍光面8への到達時間のばらつき)を抑制できる。その結果、蛍光面8に到達する電子群の掃引方向(時間方向)の空間的な拡がりを抑制でき、時間分解能を向上させることができる。より具体的には、電子群が掃引電極6の電子入射側の領域を通過する際、掃引開始時において正電位が印加される板状電極6aに近い領域(加速領域)を通過する電子は、上記正電位に起因する電場により、入射面板2aから出力面板2bに向かう方向に加速作用を受ける。他方、掃引開始時において負電位が印加される板状電極6bに近い領域(減速領域)を通過する電子は、出力面板2bから入射面板2aに向かう方向に減速作用を受ける。加速領域に入射する電子と減速領域に入射する電子との間における加速・減速作用の違いは、電子が蛍光面8に到達する位置のばらつきを生じ得る。上述した第1スリット部材11Bによれば、1次元電子レンズ9を通過する電子群のうち、掃引電極6の板状電極6bに近い減速領域に入射しようとする電子を遮断することができる。これにより、電子が蛍光面8に到達する到達位置のばらつきを低減でき、時間分解能を向上させることができる。
【0082】
また、上述したようにX軸負方向に偏心するように配置された第2スリット部材12Bを設けることにより、1次元電子レンズ9に入射する電子群のうち中心面CSよりもX軸正方向側に大きく離間した周辺部を通過する電子の一部を遮断することができる。これにより、板状電極6a,6b間に進入する電子群の速度及び進行方向(角度)のばらつき(すなわち、蛍光面8への到達位置のばらつき)を抑制できる。その結果、蛍光面8に到達する電子群の掃引方向(時間方向)の空間的な拡がりを抑制でき、時間分解能を向上させることができる。また、1次元電子レンズ9の中心面CSに対して離間した周辺経路を通る電子は、中心面CS付近の中心経路を通過する電子と比較して、走行距離が長くなる。すなわち、周辺経路の経路長は中心経路の経路長よりも長くなる。そのため、中心面CSから離間した周辺経路を通過する電子は、中心面CS付近の中心経路を通過する電子に比べ、蛍光面8に到達する時間に遅れが生じ得る。このため、結果として、蛍光面8への電子の到達位置にばらつきが生じ得る。上記構成によれば、1次元電子レンズ9に入射しようとする電子群のうち、周辺経路を通過する電子を第2スリット部材12によって1次元電子レンズ9の手前で遮断することができる。これにより、電子が蛍光面8に到達する到達位置のばらつきを低減でき、時間分解能を向上させることができる。
【0083】
さらに、上述したストリーク管1Aの構成C1(すなわち、第3電極9cに、第1電極9aの電位Va及び第2電極9bの電位Vbよりも高い電位Vcを印加する構成)とストリーク管1Bの構成C2(すなわち、第1スリット部材11B及び第2スリット部材12Bの構成C2)とを組み合わせることにより、より一層効果的に時間分解能の向上を図ることができる。より具体的には、上記構成C1を採用した場合、電位Vcを電位Va,Vbよりも低くする従来構成を採用した場合よりも、1次元電子レンズ9を通過する電子群が加速されるため、1次元電子レンズ9による集光効果が低減するおそれがある。つまり、上記構成C1では、上記従来構成よりも、1次元電子レンズ9を通過する電子群の軌道が拡がり易くなるおそれがある。そこで、上記構成C2によって、中心面CSから離間した周辺部を通過する電子群の一部を遮断することにより、好適に時間分解能の向上を図ることができる。すなわち、上記構成C1によって1次元電子レンズ9内を通過する電子群の速度差を低減しつつ、上記構成C1によって従来よりも拡がり易くなった電子群のうち周辺部の電子群を上記構成C2によって遮断することにより、高時間分解能化を好適に図ることができる。
【0084】
次に、図10図12を参照して、ストリーク管1Bの効果について補足する。図10は、比較例のストリーク管(以下、単に「比較例」という。)の時間分解能試験の結果を模式的に示す図である。図11は、第1実施例のストリーク管(以下、単に「第1実施例」という。)の時間分解能試験の結果を模式的に示す図である。図12は、第2実施例のストリーク管(以下、単に「第2実施例」という。)の時間分解能解析(シミュレーション)の結果を模式的に示す図である。
【0085】
図10に示される比較例は、上述した構成C1,C2の両方を備えていない。すなわち、比較例は、第1実施形態のストリーク管1Aと同様の第1スリット部材11及び第2スリット部材12(すなわち、スリット11a,12aの中心が管軸Aと重なるように配置されたスリット部材)を備えている。また、比較例では、第1電極9a及び第2電極9bには、「Va=Vb=0V(GND)」を印加し、第3電極9cには、電位Va,Vbよりも低い電位Vc(=-500V)を印加した。
【0086】
図11に示される第1実施例は、上述した構成C2を備える一方で構成C1を備えていない。すなわち、第1実施例は、第2実施形態のストリーク管1Bと同様の第1スリット部材11B及び第2スリット部材12Bを備えている。また、第1実施例では、比較例と同様に、第1電極9a及び第2電極9bには、「Va=Vb=0V(GND)」を印加し、第3電極9cには、電位Va,Vbよりも小さい電位Vc(=-500V)を印加した。
【0087】
図12に示される第2実施例は、上述した構成C1及び構成C2の両方を備えている。すなわち、第2実施例は、第2実施形態のストリーク管1Bと同様の第1スリット部材11B及び第2スリット部材12Bを備えている。また、第2実施例では、第1電極9a及び第2電極9bには、「Va=Vb=0V(GND)」を印加し、第3電極9cには、電位Va,Vbよりも高い電位Vc(=+700V)を印加した。
【0088】
なお、上述した以外の測定条件(例えば、光電面7の種類、被計測光Lの種類等)は、比較例、第1実施例、及び第2実施例において同一とした。
【0089】
(比較例)
図10を参照して、比較例について説明する。図10において、経路曲線R1は、掃引電極6に入射する電子(すなわち、板状電極6a,6b間の空間に進入する電子)のうち、中心面CSからX軸正方向に最も離れた周辺経路を通過する電子の経路曲線である。経路曲線R2は、掃引電極6に入射する電子のうち、中心面CSからX軸負方向に最も離れた周辺経路を通過する電子の経路曲線である。すなわち、経路曲線R1は第2スリット部材12のスリット12aの上端近傍を通過する経路であり、経路曲線R2はスリット12aの下端近傍を通過する経路である。
【0090】
掃引電極6の板状電極6a,6b間の空間において、中心面CSよりも板状電極6aに近い側の領域を加速領域AFと表し、中心面CSよりも板状電極6bに近い側の領域を減速領域DFと表す。掃引開始時において、板状電極6aには正電位が印加され、板状電極6bには負電位が印加される。これにより生じる電場の効果によって、加速領域AFに入射した電子は出力面板2bの方向に加速させられる傾向にあり、減速領域DFに入射する電子は入射面板2aの方向に減速させられる傾向にある。時間分解能を向上させる観点から、光電面7で同時に発生した電子群の経路の違いによる蛍光面8への到達時間の差を小さくすることが好ましく、このためには、なるべく加速領域AFに入る電子の割合を大きくすることが好ましい。言い換えれば、加速領域AFに進入する電子との速度差が大きくなる電子(減速領域DFに進入する電子)をなるべく減らすことが好ましい。
【0091】
図10に示されるように、経路曲線R1を通過する電子は、最初から加速領域AFに進入するのに対し、経路曲線R2を通過する電子は、最初に減速領域DFに入射する。そのため、掃引電極6内の空間に進入した直後の電子群の分布は、概ね電子群EG1に示すような、加速領域AF及び減速領域DFに跨った分布となる。減速領域DFに入射した電子群は加速領域AFに対して相対的に減速作用を受けるため、その後の電子群の分布は電子群EG2のように、Z方向に延びた分布となる。すなわち、電子群の速度差(Z軸方向の拡がり)が比較的大きくなる。このような電子群の速度差は、電子が蛍光面8に衝突する際のX座標のズレとして顕れる。そのため、加速領域AFに進入する電子の割合をなるべく多くする(すなわち、減速領域DFに進入する電子の割合をなるべく少なくする)ことが、ストリーク管の時間分解能の向上を図る観点から好ましい。比較例には、このような観点から改善の余地があるといえる。
【0092】
図10の右端に描写される折れ線グラフLCは、蛍光面8に衝突した電子の衝突点のX座標の分布を示す。この折れ線グラフLCのX軸方向の分散が小さいほど、ストリーク管の時間分解能が高いことを示す。図10に示される比較例で解析された時間分解能TR1は、約600fsであった。
【0093】
(第1実施例)
次に、図11を参照して、第1実施例について説明する。図11に示されるように、第1実施例では、比較例においてスリット12aの上端近傍を通過していた電子の経路曲線R1は、X軸負方向に偏心させられた第2スリット部材12Bによって遮断される。また、比較例において第1スリット部材11のスリット11aの下端近傍を通過していた電子の経路曲線R2は、X軸正方向に偏心させられた第1スリット部材11Bのスリット11aの下端によって遮断される。これにより、掃引電極6に入射する電子のうち、中心面CSからX軸正方向に最も離れた周辺経路を通過する電子の経路曲線R3は、比較例の経路曲線R1よりも中心面CSに近い内側を通ることになる。また、掃引電極6に入射する電子のうち、中心面CSからX軸負方向に最も離れた周辺経路を通過する電子の経路曲線R4は、比較例の経路曲線R2よりも中心面CSに近い内側を通ることになる。
【0094】
すなわち、第1実施例では、中心面CSからX軸方向に離間した周辺部を通過する電子が第1スリット部材11B及び第2スリット部材12Bによって効果的に遮断される。これにより、掃引電極6内を通過する電子群のX軸方向の分布幅が小さくなる。より具体的には、図11に示されるように、第1実施例の電子群EG1のX軸方向の幅は、図10に示される比較例の電子群EG1のX軸方向の幅よりも小さくなる。また、第1実施例では、比較例よりも、減速領域DFに進入する電子の割合が小さくなる。すなわち、掃引電極6に入射する電子群は、第1スリット部材11B及び第2スリット部材12Bによって絞られると共に、効果的に加速領域AFに導かれる。このため、その後の電子群EG2の分布も、図10に示される比較例と比べてZ軸方向にそれほど延びた形状とはならず、蛍光面8に衝突する電子の衝突位置のX座標の分散が小さく抑えられる。その結果、第1実施例では、比較例よりも高い時間分解能TR2(=約500fs)が解析結果として得られた。なお、図11の折れ線グラフLCの図示エリアに示される破線は、比較例(図10)の折れ線グラフLCの位置を示している。
【0095】
(第2実施例)
次に、図12を参照して、第2実施例について説明する。上述したように、第2実施例は、第1実施例に加えて、第3電極9cに印加される電位Vcを第1電極9aに印加される電位Va及び第2電極9bに印加される電位Vbよりも高くする構成C1を備えている。このため、第2実施例では、比較例及び第1実施例と比較して、1次元電子レンズ9を通過する電子群が拡がり易くなるおそれがあるものの、上記構成C2(第1スリット部材11B及び第2スリット部材12B)によって、このような電子群の拡がりを効果的に抑制しつつ、上記構成C1,C2の両方の効果(すなわち、電子群の蛍光面8への到達時間のばらつきの低減)を得ることができる。その結果、第2実施例では、第1実施例よりも高い時間分解能TR3(=約350fs)が解析結果として得られた。なお、図12の折れ線グラフLCの図示エリアに示される破線は、比較例(図10)の折れ線グラフLCの位置を示している。
【0096】
図10図12に示されるように、比較例及び第1実施例の結果から、上述した構成C1,C2のうち構成C2のみを採用した場合においても、時間分解能の向上効果が得られることが確認された。さらに、第1実施例及び第2実施例の結果から、上述した構成C1を採用することにより、時間分解能を向上できることが確認された。
【0097】
図13は、上述した図10図12の時間分解能解析とは異なる条件(光電面7の種類等)を用いて、上述した第1実施例及び第2実施例の各々について複数回測定を実施した結果を示している。図13に示される結果からも、上述した構成C2のみを採用した場合よりも、構成C1,C2の両方を採用した場合の方が、時間分解能の向上効果が得られることが確認された。
【0098】
[変形例]
以上、本開示のいくつかの実施形態及びいくつかの変形例について説明したが、本開示は、上記の各実施形態及び各変形例で示した構成に限られない。各構成の材料及び形状には、上述した具体的な材料及び形状に限らず、上述した以外の様々な材料及び形状を採用することができる。また、上記の各実施形態及び各変形例に含まれる一部の構成は、適宜省略又は変更されてもよいし、任意に組み合わせることが可能である。
【0099】
例えば、掃引電極6の配置及び形状は、上記実施形態(図1等参照)に限られない。図14を参照して、掃引電極6のいくつかの変形例について説明する。なお、図14においては、上記実施形態で説明したスリット部材の図示を省略している。
【0100】
図14の(A)は、第1変形例に係る掃引電極6を備えるストリーク管1Cを模式的に示す図である。図14の(A)に示されるように、掃引電極6(板状電極6a,6b)は、1次元電子レンズ9の中心面CSに対して対称的に配置されてもよい。
【0101】
図14の(B)は、第2変形例に係る掃引電極6を備えるストリーク管1Dを模式的に示す図である。図14の(B)に示されるように、中心面CSに対向する板状電極6a(掃引電極6のうち掃引開始時に正電位を印加される電極)の内側面における入射面板2aに最も近い端部6a1と中心面CSとの距離d1は、中心面CSに対向する板状電極6b(掃引電極6のうち掃引開始時に負電位を印加される電極)の内側面における入射面板2aに最も近い端部6b1と中心面CSとの距離d2よりも短くされてもよい。図14の(B)の例では、ストリーク管1Dの掃引電極6は、ストリーク管1Cの掃引電極6をX軸負方向に若干平行移動させた位置に配置されている。上記構成によれば、掃引電極6の入射側開口のX軸方向の中心を、中心面CSよりも下方(掃引開始時に負電位が印加される板状電極6bに近づく方向)にずらすことができる。このような構成によれば、1次元電子レンズ9を通過した電子群を、掃引開始時に正電位が印加される板状電極6aに近い領域(すなわち、掃引電極6の入射側開口のX軸方向の中心位置よりも板状電極6aに近い加速領域AF)に好適に誘導できる。また、掃引開始時に負電位が印加される板状電極6bに近い領域(すなわち、掃引電極6の入射側開口のX軸方向の中心位置よりも板状電極6bに近い減速領域DF)に入射する電子を減少させることができる。これにより、電子間の蛍光面8に到達する到達位置のばらつきが低減される。その結果、より一層効果的に時間分解能を向上させることができる。
【0102】
また、本開示のストリーク管では、掃引電極における一対の板状電極は、一対の板状電極の間における電子の走行速度と同期して印加される電位が変化するように構成された進行波型電極であってもよい。図15は、このような構成を有する第3変形例に係る掃引電極6Eを備えるストリーク管1Eを模式的に示す図である。図15に示されるように、掃引電極6Eは、走行する電子と同期して電圧が伝播するようにジグザグに折り返すように形成された板状電極6Ea(第1板状電極)及び板状電極6Eb(第2板状電極)を有している。
【0103】
掃引電極6Eでは、掃引電極6E内を通過する電子の走行速度に合わせて、板状電極6Ea,6Ebの入射面板2aに最も近い端部61から出力面板2bに最も近い端部62に向かって伝播するように電位が印加される。上記構成によれば、掃引電極6E内の電子群のより精密な掃引制御が可能になるため、より一層効果的に時間分解能を向上させることができる。
【0104】
また、上記実施形態では、軸対象の円筒状に形成されたメインフォーカス電極4について説明したが、メインフォーカス電極の形状は、上記に限定されない。例えば、メインフォーカス電極は、アパーチャー電極5と同様に、出口側(アパーチャー電極5が位置する側)を絞った形状を有してもよい。図16は、このような形状を有する変形例に係るメインフォーカス電極4Fを有するストリーク管1Fを模式的に示す図である。メインフォーカス電極4Fは、管軸Aと略一致する中心軸を有する円筒状電極4Faと、円筒状電極4Faの蛍光面8側の端部に形成された円板状電極4Fbと、を有している。円板状電極4Fbの中心部には、電子を通過させるためのアパーチャー4Fc(開口)が設けられている。上記構成によれば、メインフォーカス電極4Fを電子群が通過する際、管軸Aから離間した経路を通過する電子を円板状電極4Fbによって遮断することにより、電子群の拡がりを好適に抑制できる。
【0105】
また、上記以外にも様々な変形が可能である。例えば、上述した板状電極6aと板状電極6bとの電圧制御は逆にされてもよい。すなわち、掃引開始時に板状電極6aに負電位が印加され、板状電極6bに正電位が印加されてもよい。この場合、第1スリット部材11B及び第2スリット部材12Bの偏心方向(X軸方向に沿ってシフトさせる方向)は、第2実施形態において説明した方向と逆にすればよい。
【0106】
また、ストリーク管において、第1スリット部材及び第2スリット部材の一方又は両方が省略されてもよい。また、第1スリット部材11,11Bは、第3電極9cから離間する位置に配置されてもよい。また、第2スリット部材12,12Bは、第1電極9aに接触するように配置されてもよいし、第1電極9aとアパーチャー電極5(円板状電極5b)との間において、第1電極9a及びアパーチャー電極5の両方と離間する位置に配置されてもよい。第2スリット部材12,12Bが第1電極9aに接触するように配置される場合、第2スリット部材12,12Bは、第1電極9aと同電位となる。
【0107】
また、第1スリット部材11B及び第2スリット部材12Bのシフト量は、適宜変更されてもよい。例えば、ストリーク管に用いられる光電面7の種類によって容器2内で放出される光電子のエネルギー分布及び角度分布が異なるため、光電面7の種類に応じて第2スリット部材12Bのシフト量を例えば0.1mm~0.4mmの範囲で適切に調整してもよい。このように光電面7の種類に応じて第2スリット部材12Bのシフト量を変更することにより、時間分解能を悪化させる要因となる電子群を第2スリット部材12Bによって好適に遮断することができる。また、本実施形態においては、設定信号発生部18が、第3電極用電圧源16及び掃引電圧発生部17の両方を制御しているが、第3電極用電圧源16及び掃引電圧発生部17は、それぞれ個別に用意された制御装置によって制御されてもよい。つまり、第3電極用電圧源16及び掃引電圧発生部17を制御する制御部は、単一の制御装置によって構成されてもよいし、複数の制御装置によって構成されてもよい。また、第3電極用電圧源16を制御する制御部は、第3電極用電圧源16のオンオフのみを制御するように構成されてもよい。また、本実施形態においては、各構成の給電に複数の電圧源を用いているが、単一の電圧源を用いて各構成に適した複数の電圧を発生させることで給電してもよい。
【0108】
また、本実施形態では、第1電極9aと第2電極9bとは、互いに電気的に接続されることによって同電位に設定されたが、第1電極9aと第2電極9bとを同電位にするための構成は、上記構成に限られない。例えば、第1電極9aと第2電極9bとは、互いに別の電源供給経路(例えば互いに異なる制御部)から同一の電位が供給されるように構成されてもよい。また、第1電極9aと第2電極9bとは、それぞれ個別に接地されてもよい。第1スリット部材11,11Bと第2電極9bとを同電位にするための構成、及び第2スリット部材12,12Bとアパーチャー電極5及び第1電極9aの少なくとも一方とを同電位にするための構成についても同様である。
【符号の説明】
【0109】
1A,1B,1C,1D,1E,1F…ストリーク管、2…容器、2a…入射面板、2b…出力面板、6,6E…掃引電極、6a,6Ea…板状電極(第1板状電極),6b,6Eb…板状電極(第2板状電極)、7…光電面、8…蛍光面、9…1次元電子レンズ、9a…第1電極、9b…第2電極、9c…第3電極、10a,10b,10c,10d…開口部、11,11B…第1スリット部材、12,12B…第2スリット部材、11a…スリット(第1スリット),12a…スリット(第2スリット)、18…設定信号発生部(制御部)、CS…中心面、L…被計測光。
図1
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