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特開2024-87265洗浄機の溶剤回収方法、洗浄機の溶剤回収装置および洗浄機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087265
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】洗浄機の溶剤回収方法、洗浄機の溶剤回収装置および洗浄機
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/04 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
B08B3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201994
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】516045159
【氏名又は名称】株式会社クリンビー
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和彦
【テーマコード(参考)】
3B201
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB01
3B201BB02
3B201BB12
3B201BB14
3B201BB77
3B201BB83
3B201CB15
3B201CC15
3B201CD11
3B201CD22
(57)【要約】
【課題】有機溶剤を洗浄剤として用いる洗浄機における溶剤蒸気ロスを実質的に零にできる洗浄機の溶剤回収方法および回収装置を提供すること。
【解決手段】洗浄機1の処理室2から排出される排気は、溶剤回収装置20の縦置き式の溶剤回収タンク21に導入される。溶剤回収タンク21の内部の鉛直方向に長い溶剤回収路22に沿って鉛直方向に流れる排気からは、そこに含まれている溶剤蒸気が自重により降下して、タンク底側には、濃度が高く圧縮状態の溶剤蒸気の層が形成される。この部分の溶剤蒸気が冷却コイルによって冷却されて凝縮して、排気から効率良く分離除去される。洗浄機1の処理室2から大気中に排出される溶剤蒸気を実質的に零にできる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を洗浄剤として用いる洗浄機において発生する溶剤蒸気を含む排気から、前記溶剤蒸気を分離して回収する洗浄機の溶剤回収方法であって、
水平方向に比べて鉛直方向に長い溶剤回収路を配置し、
前記溶剤回収路における少なくとも前記鉛直方向の下端の側の部位に、溶剤冷却部を配置し、
前記溶剤回収路に沿って前記鉛直方向に前記排気を流して、前記排気に含まれる前記溶剤蒸気を、前記溶剤冷却部によって冷却すると共に自重により降下させ、
前記鉛直方向の下端の側の部位に、前記鉛直方向の上端の側の部位に比べて濃度の高い圧縮状態の前記溶剤蒸気の層を形成し、当該溶剤蒸気を、前記溶剤冷却部により冷却凝縮させて前記排気から分離回収し、
前記溶剤回収路の前記鉛直方向の下端側の部位に溜る前記溶剤蒸気が、所定の濃度あるいは圧縮状態となるように、前記溶剤回収路の前記鉛直方向の長さを設定することを特徴とする洗浄機の溶剤回収方法。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄機の溶剤回収方法において、
前記溶剤回収路における前記鉛直方向の下端の側の部位から、前記溶剤蒸気を含む前記排気を前記溶剤回収路に導入し、
前記溶剤回収路に沿って前記鉛直方向に前記排気を上昇させ、
前記溶剤回収路における前記鉛直方向の上端の側の部位から、前記溶剤蒸気が分離除去された後の前記排気を外部に排出する
洗浄機の溶剤回収方法。
【請求項3】
洗浄剤として有機溶剤を用いてワークの洗浄を行う1槽式の洗浄槽あるいは多槽式の洗浄槽を備えた洗浄機から排出される溶剤蒸気を含む排気から前記溶剤蒸気を冷却凝縮により分離して回収する溶剤回収装置であって、
水平方向に比べて鉛直方向に長い溶剤回収路と、
前記溶剤回収路における少なくとも前記鉛直方向の下端の側の部位に配置した溶剤冷却部と、
を備えており、
前記溶剤回収路に沿って前記鉛直方向に流れる前記排気に含まれる前記溶剤蒸気が自重により降下して、前記鉛直方向の下端側の部位に、所定の濃度あるいは圧縮状態の前記溶剤蒸気の層が形成されるように、前記溶剤回収路の前記鉛直方向の長さが設定されていることを特徴とする洗浄機の溶剤回収装置。
【請求項4】
請求項3に記載の洗浄機の溶剤回収装置において、
前記溶剤回収路における前記鉛直方向の下端の側の部位に、前記溶剤蒸気を含む前記排気を導入する導入口が連通しており、
前記溶剤回収路における前記鉛直方向の上端の側の部位に、前記溶剤蒸気が分離除去された後の前記排気を外部に排出する排出口が連通しており、
前記溶剤回収路の下端には、前記溶剤蒸気の凝縮液を外部に排出する溶剤回収口が配置されている洗浄機の溶剤回収装置。
【請求項5】
洗浄剤として有機溶剤を用いてワークの浸漬洗浄および蒸気洗浄を行う1槽式の洗浄槽あるいは多槽式の洗浄槽を備えた洗浄機において、
前記洗浄槽から排出される溶剤蒸気を含む排気から前記溶剤蒸気を分離して回収する溶剤回収装置を備えており、
前記溶剤回収装置は、請求項3または4に記載の溶剤回収装置であることを特徴とする洗浄機。
【請求項6】
請求項5に記載の洗浄機において、
前記洗浄槽での前記蒸気洗浄に用いる溶剤蒸気を発生する蒸気発生器を備えており、
前記溶剤回収装置は、前記洗浄槽および前記蒸気発生器から排出される前記溶剤蒸気を含む排気から前記溶剤蒸気を分離して回収する洗浄機。
【請求項7】
大気側から密閉された状態で、洗浄剤としてフッ素系溶剤を用いてワークの洗浄および乾燥を行うワンバス式の密閉型真空洗浄乾燥機であって、
前記洗浄剤を貯留した貯留槽と、
前記洗浄剤の蒸気を発生する蒸気発生器と、
前記貯留槽から供給される前記洗浄剤を用いたワークの浸漬洗浄、前記蒸気発生器から供給される前記洗浄剤の蒸気を用いたワークの蒸気洗浄、および、洗浄後の前記ワークの真空乾燥を行う真空洗浄乾燥槽と、
前記真空洗浄乾燥槽の真空引きを行う真空ドライポンプと、
前記真空洗浄乾燥槽から前記洗浄剤を前記貯留槽に戻す洗浄剤還流手段と、
前記洗浄剤を蒸留再生する蒸留再生器と、
前記真空乾燥時に前記真空ドライポンプによって前記真空洗浄乾燥槽から排出される排気から、当該排気に含まれている前記溶剤蒸気を分離して回収する溶剤回収装置と、
前記の各部の駆動を制御する制御装置と、
を備えており、
前記溶剤回収装置は、請求項3または4に記載の溶剤回収装置であることを特徴とするワンバス式の密閉型真空洗浄乾燥機。
【請求項8】
請求項7に記載のワンバス式の密閉型真空洗浄乾燥機において、
さらに、圧力吸収タンクを備えており、
前記制御装置は、
前記ワークが投入されて密閉された前記真空洗浄乾燥槽の内圧が、大気圧の状態から所定の真空度となるまで前記真空ドライポンプによって真空引きし、当該真空ドライポンプの排気を大気側に放出する動作制御機能と、
真空引き後の前記真空洗浄乾燥槽に前記圧力吸収タンクを連通させ、前記真空洗浄乾燥槽および前記圧力吸収タンクを前記真空度よりも低い真空度の減圧状態にし、前記圧力吸収タンクを閉じる動作制御機能と、
前記真空洗浄乾燥槽を前記真空ドライポンプによって真空引きすることで行われる前記真空乾燥時には、前記圧力吸収タンクを開き、前記真空洗浄乾燥槽から排出される排気を、大気側に放出せずに、前記溶剤回収装置に通して前記溶剤蒸気を分離した後に前記圧力吸収タンクに回収する動作制御機能と、
を備えており、
前記排気を回収した後の前記圧力吸収タンクの内圧が、大気圧未満の減圧状態に維持されるように、当該圧力吸収タンクの内容積および前記真空度が設定されていることを特徴とするワンバス式の密閉型真空洗浄乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素系溶剤などの有機溶剤を洗浄剤として用いる洗浄機から発生する排気に含まれる溶剤蒸気を回収する洗浄機の溶剤回収方法および溶剤回収装置に関する。また、本発明は、当該溶剤回収装置を備えた洗浄機、特に、大気側から密閉された状態で、洗浄剤としてフッ素系溶剤を用いてワークの洗浄および乾燥を行うワンバス式の密閉型真空洗浄乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶剤、例えば、フッ素系溶剤を洗浄剤として用いて各種の電子部品等を洗浄する洗浄機が知られている。このような洗浄機として、本願人はワンバス式真空洗浄機(商品名:FLOVA)を製造販売している(非特許文献1)。ワンバス式真空洗浄機は、従来の3槽式洗浄機によって行われているワークの粗超音波洗浄、仕上げ超音波洗浄、蒸気洗浄および真空乾燥を、ワンバスの中で、溶剤を出し入れしながら全自動で行うものである。洗浄から乾燥まで密閉された同一の洗浄槽の中で行われ、また、ワークの投入、取出しのために洗浄槽を開放した際もフッ素系溶剤が大気に暴露しないので、溶剤蒸気ロスを大幅に削減できる。
【0003】
このような密閉型のワンバス式真空洗浄乾燥機を含め、有機溶剤を用いた洗浄機においては、近年における環境保護の高まりから、機外への溶剤蒸気の流出ロスの更なる低減が要求される。このためには、機外に排出される前に、排気に含まれている溶剤蒸気を確実に分離除去する必要がある。
【0004】
排気から溶剤蒸気を分離除去する方法として、溶剤蒸気を含む排気を、冷却コイルを配置した流路に流して、溶剤蒸気を凝縮温度よりも低温にして冷却コイル表面などに有機溶剤を凝縮させて分離するものが知られている(特許文献1、2、3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01-115402号公報
【特許文献2】特開平04-256471号公報(図3
【特許文献3】特開平03-89984号公報
【特許文献4】実開平04-137729号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“フッ素系ワンバス式真空洗浄機 FLOVA”,[online],株式会社クリンビー,[平成4年10月12日検索],インターネット,<URL:https://www.cleanvy.co.jp/businesses/businesses-363/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1の発明が解決しようとする問題点の欄、特許文献2の段落0028において指摘されているように、有機溶剤を冷却して凝縮させることで分離回収する冷却凝縮式の溶剤回収機構は、一般に、溶剤蒸気の凝縮効率が低く、有機溶剤の回収効率が悪い。特許文献3、4においては、有機溶剤の蒸気を含む排気を、吸着分離式の溶剤回収機構および冷却凝縮式の溶剤回収機構の双方に通すことで、有機溶剤蒸気の回収効率を高めている。
【0008】
本発明の目的は、溶剤蒸発ロスを実質的に零にできるように、洗浄機から発生する排気に含まれる溶剤蒸気を、高い効率で、冷却凝縮により分離回収できるようにした洗浄機の溶剤回収方法および溶剤回収装置を提供することにある。
また、本発明の目的は、当該溶剤回収装置により溶剤蒸気を回収することで、溶剤蒸発ロスを実質的に零にできるようにした洗浄機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、有機溶剤を洗浄剤として用いる洗浄機において発生する溶剤蒸気を含む排気から、前記溶剤蒸気を分離して回収する洗浄機の溶剤回収方法および溶剤回収装置において、
水平方向に比べて鉛直方向に長い溶剤回収路を配置し、
前記溶剤回収路における少なくとも前記鉛直方向の下端の側の部位に、冷却コイル等を備えた溶剤冷却部を配置し、
前記溶剤回収路に沿って前記鉛直方向に前記排気を流して、前記排気に含まれる前記溶剤蒸気を、前記溶剤冷却部によって冷却すると共に自重により降下させ、
前記鉛直方向の下端の側の部位に、前記鉛直方向の上端の側の部位に比べて濃度の高い圧縮状態の前記溶剤蒸気の層を形成し、当該溶剤蒸気を、前記溶剤冷却部による冷却によって凝縮させることで前記排気から分離回収し、
前記溶剤回収路の前記鉛直方向の下端側の部位に溜る前記溶剤蒸気が、所定の濃度あるいは圧縮状態となるように、前記溶剤回収路の前記鉛直方向の長さを設定することを特徴としている。
【0010】
例えば、溶剤回収路における前記鉛直方向の下端の側の部位から、前記溶剤蒸気を含む前記排気を前記溶剤回収路に導入し、前記溶剤回収路に沿って前記鉛直方向に前記排気を上昇させ、前記溶剤回収路における前記鉛直方向の上端の側の部位から、前記溶剤蒸気が分離除去された後の前記排気を外部に排出することが望ましい。
【0011】
次に、本発明は、洗浄剤として有機溶剤を用いてワークの浸漬洗浄および蒸気洗浄を行う1槽式の洗浄槽あるいは多槽式の洗浄槽を備えた洗浄機において、
前記洗浄槽から排出される溶剤蒸気を含む排気から前記溶剤蒸気を分離して回収する溶剤回収装置として、上記構成の溶剤回収装置を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、鉛直方向に長い溶剤回収路に沿って溶剤蒸気を含む排気を流すことで、溶剤蒸気が自重により降下して溶剤回収路の下端側の部位に、濃度の高い圧縮状態の溶剤蒸気の層が形成され、この状態の溶剤蒸気が溶剤冷却部によって冷却されて凝縮する。また、自重により溶剤回収路の下端側の部位に降下した溶剤蒸気は凝縮して体積が減少するので、溶剤回収路内の溶剤蒸気は、その下端側の部位の方が上端側の部位よりも減圧状態になり、この上下の圧力差によって、溶剤回収路内における溶剤蒸気の溶剤冷却部に向けての移動が継続あるいは促進される。このようにして、溶剤回収路内において、自重および圧力差により溶剤蒸気の溶剤冷却部への移動が促進されるので、溶剤回収路の下端側の部位において、溶剤蒸気を、継続して効率良く凝縮できる。よって、排気からの溶剤蒸気の分離回収効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用した3槽式の洗浄機の主要部分を示す概略構成図である。
図2】本発明を適用した密閉型のワンバス式の真空洗浄乾燥機の主要部分の構成を示す概略構成図である。
図3図1の真空洗浄乾燥機の動作手順および機内各部の圧力変化を示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して本発明を適用した実施の形態を説明する。各実施の形態は本発明の適用例を示すものであり、本発明を実施の形態の構成に限定することを意図したものではない。また、以下の実施の形態では、有機溶剤としてフッ素系溶剤を使用しているが、使用可能な有機溶剤は、フッ素系溶剤以外でも良く、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、その他の揮発性の非水系溶剤を使用することができる。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る洗浄機の主要部分を示す概略構成図である。洗浄機1は、ワーク洗浄乾燥用の処理室2を備えており、処理室2の上側部分の両側には、洗浄対象のワークを搬入する搬入口(図示せず)および洗浄乾燥後のワークを搬出する搬出口(図示せず)が備わっている。
【0016】
処理室2の内部における底面側の部分には、溶剤を貯留する第1洗浄槽3が配置されている。第1洗浄槽3の隣には同じく溶剤を貯留する第2洗浄槽4が配置されている。第2洗浄槽4に対して、第1洗浄槽3とは反対側には、蒸気発生槽5が隣接配置されている。例えば、第1、第2洗浄槽3、4は共に超音波洗浄槽であり、第1洗浄槽3が粗洗浄槽であり、第2洗浄槽4が仕上げ洗浄槽であり、第2洗浄槽4からオーバーフローした溶剤が第1洗浄槽3に流れ込む。また、第1洗浄槽3における予め設定した溶剤液面高さ位置に設けた連通口を介して、蒸気発生槽5に溶剤が供給される。
【0017】
第1洗浄槽3には第1溶剤循環回路6が付設されており、第2洗浄槽4には第2溶剤循環回路7が付設されている。第1溶剤循環回路6は、第1洗浄槽3に貯留されている粗溶剤を、粗溶剤ポンプおよび粗溶剤フィルタを介して循環させることでろ過再生する。同様に、第2溶剤循環回路7は、第2洗浄槽4に貯留されている仕上溶剤を、仕上溶剤ポンプおよび仕上溶剤フィルタを介して循環させることで、ろ過再生する。
【0018】
処理室2の内部において、その上下方向の中ほどの高さ位置には、処理室内周面に沿って、上下方向に筒状に巻かれた冷却コイル8が配置されている。処理室2の内部において、第1、第2洗浄槽3、4の溶剤液面から冷却コイル8の下端近傍位置までの間の領域が、蒸気洗浄領域9である。蒸気洗浄領域9には、下側の蒸気発生槽5で生成される蒸気溶剤が供給され、ワークに対して蒸気洗浄が施される。
【0019】
蒸気洗浄領域9の上側において、冷却コイル8の下側近傍位置から、冷却コイル8の上側近傍位置までの間の領域が、冷却乾燥領域10となっている。下側の蒸気洗浄領域9から上側の冷却乾燥領域10に上昇した蒸気溶剤は、冷却コイル8によって冷却されてその表面に凝縮して液化する。この結果、ワークに付着していた溶剤蒸気が除去され、冷却乾燥領域内においてワークが乾燥する。液化した溶剤は、水分離器11を介して水分が分離されて再生される。再生された溶剤は第2洗浄槽4に戻される。
【0020】
冷却コイル8の上側の冷却乾燥領域10は、処理室2の上端側の側面に取り付けた排気通路12の一端に連通している。処理室2の冷却乾燥領域10に上昇した蒸気溶剤を含む排気は、排気通路12を通って、溶剤回収装置20に導入される。溶剤回収装置20は、溶剤蒸気を含む排気から溶剤蒸気を冷却凝縮により分離して回収する。排気から回収された溶剤蒸気の凝縮液は、第1洗浄槽3に戻される。
【0021】
溶剤回収装置20は、水平方向に比べて鉛直方向に長い溶剤回収タンク21を備えており、この溶剤回収タンク21の内部空間が、鉛直方向に長い溶剤回収路22となっている。溶剤回収タンク21の鉛直方向の下端の側の部位は、冷媒を循環させる冷却コイルが内蔵された溶剤冷却部23となっている。排気通路12を通って、溶剤回収タンク21の溶剤回収路22の鉛直方向の上端側の部位に導入された排気に含まれる溶剤蒸気は、その自重により降下する。この結果、溶剤回収路22における鉛直方向の下端側の部位には、上端側の部位に比べて濃度が高く圧縮された状態の溶剤蒸気の層が形成される。この状態の溶剤蒸気が溶剤冷却部23の冷却コイルによって冷却されることで、溶剤蒸気が効率良く冷却凝縮される。また、溶剤蒸気は、溶剤回収路22の下端側の部位における冷却凝縮により体積が減少するので、その上端側の部位よりも下端側の部位が減圧状態になる。この上下の圧力差により、溶剤回収路22内における溶剤蒸気の降下が継続あるいは促進される。
【0022】
ここで、溶剤回収路22に沿って鉛直方向に流れる排気に含まれる溶剤蒸気が自重により降下して、鉛直方向の下端側の部位に、目標とする濃度あるいは圧縮状態の溶剤蒸気の層が形成されるように、少なくとも溶剤回収路22の鉛直方向の長さが設定されている。
【0023】
以上説明したように、本例の洗浄機1には冷却凝縮式の溶剤回収装置20が付設されている。溶剤回収装置20の鉛直方向に長い溶剤回収路22に溶剤蒸気を含む排気を流すことで、溶剤蒸気が自重により降下して下端側の部位に濃度の高い圧縮状態の溶剤蒸気の層が形成され、この溶剤蒸気を冷却して凝縮させることで、効率良く溶剤蒸気を排気から分離回収できる。また、冷却凝縮による体積減少に起因して生じる上下の圧力差により溶剤蒸気の降下が促進され、これも相俟って、溶剤蒸気の溶剤冷却部23への移動が効率良く行われる。よって、溶剤回収装置20を用いることで、従来のように、冷却凝縮式の溶剤回収機構と、吸着式の溶剤回収機構とを併用することなく、排気から効率良く溶剤蒸気を分離回収できる。
【0024】
なお、本例の洗浄機1では、粗超音波洗浄および仕上げ超音波洗浄を行っている。超音波洗浄以外の洗浄方法を採用してもよいことは勿論である。また、本例では洗浄槽を2槽としてあるが、1槽式(ワンバス式)あるいは3槽以上の多槽式とすることもできる。例えば、3槽の洗浄槽を配置し、第1洗浄槽において煮沸洗浄を行い、第2洗浄槽において超音波洗浄を行い、第3洗浄槽において浸漬洗浄を行い、この後に、蒸気洗浄および乾燥を行う4槽式とすることができる。
【0025】
(実施の形態2)
図2は、本発明を適用したフッ素系溶剤を用いてワークの洗浄および乾燥を行うワンバス式の密閉型真空洗浄乾燥機の主要構成を示す概略構成図である。密閉型真空洗浄乾燥機100は、洗浄剤としてフッ素系溶剤(以下、単に「溶剤」という。)を貯留した貯留槽である真空バッファタンク120、溶剤蒸気の生成および溶剤の蒸留再生を行う蒸留再生・蒸気発生器130、ワークに溶剤を用いた浸漬洗浄および溶剤蒸気を用いた蒸気洗浄を施し、洗浄後のワークを真空乾燥させるための真空洗浄乾燥槽140、真空洗浄乾燥槽140を真空引きする真空ドライポンプ150、真空洗浄乾燥槽140から真空バッファタンク120に溶剤を還流させる溶剤還流回路160、溶剤蒸気を回収する溶剤回収装置170、および、機内各部の内圧を大気圧未満の状態に維持するために付設した圧力吸収タンク180を備えている。
【0026】
溶剤の貯留槽である真空バッファタンク120は、内部に、仕上洗浄用溶剤を貯留する仕上溶剤槽121と、粗洗浄用溶剤を貯留する粗溶剤槽122とを備え、仕上溶剤槽121の溶剤がオーバーフローして隣接の粗溶剤槽122に流れ込むようになっている。蒸留再生・蒸気発生器130は、縦置きの筒状容器131の内部において、その底側はヒーター132が配置された溶剤貯留部133となっており、貯留部上側は溶剤蒸気発生部134となっており、上端側は溶剤蒸気凝縮用の冷却コイル135が配置された溶剤凝縮部136となっている。発生する溶剤蒸気は真空洗浄乾燥槽140に供給され、溶剤凝縮部136において得られる溶剤の凝縮液は、熱交換器190、水分分離器210を介して、真空バッファタンク120の仕上溶剤槽121に回収されるようになっている。
【0027】
真空洗浄乾燥槽140は、真空バッファタンク120の下方の位置に配置されており、上端に開閉蓋141が取り付けられており、開閉蓋141を開けて、洗浄対象のワーク(図示せず)を入れたバスケット142を出し入れ可能である。真空洗浄乾燥槽140の内部の底には超音波発生器143が配置されている。真空洗浄乾燥槽140には、真空バッファタンク120の仕上溶剤槽121および粗溶剤槽122のそれぞれから溶剤が供給される。真空洗浄乾燥槽140に供給された溶剤は、溶剤還流回路160によってろ過再生されて真空バッファタンク120に戻る。溶剤還流回路160は、真空洗浄乾燥槽140に供給された粗溶剤を、粗溶剤バッファタンク161、粗溶剤ポンプ162および粗溶剤フィルタ163を介して粗溶剤槽122に戻り、真空洗浄乾燥槽140に供給された仕上溶剤を、仕上溶剤バッファタンク164、仕上溶剤ポンプ165および仕上溶剤フィルタ166を介して仕上溶剤槽121に戻す。
【0028】
真空ドライポンプ150は、その吸入口151がバルブを介して真空洗浄乾燥槽140に連通可能である。真空ドライポンプ150の吐出口152は、大気側および蒸留再生・蒸気発生器130に、それぞれバルブを介して連通可能である。
【0029】
溶剤回収装置170は、縦置きの溶剤回収タンク171を備え、溶剤回収タンク171の内部には、鉛直方向に長い溶剤回収路172が形成されている。溶剤回収タンク171の下端部には排気入口173が配置され、溶剤回収タンク171の下側部分は、その内部に上下方向に冷却コイルが配置された溶剤冷却部174となっており、溶剤回収タンク171の上端部には排気出口175が配置されている。溶剤回収タンク171の溶剤回収路172の下端の側の部位に連通している排気入口173は、蒸留再生・蒸気発生器130の溶剤蒸気発生部134に連通している。溶剤回収路172の上端側の部位に連通している排気出口175はバルブを介して圧力吸収タンク180に連通可能である。圧力吸収タンク180はバルブを介して真空洗浄乾燥槽140に連通可能である。
【0030】
図3は、密閉型真空洗浄乾燥機100のワーク洗浄乾燥動作および機内各部の圧力変化を示す説明図である。真空洗浄乾燥槽140における動作サイクルは、ワーク投入、真空引き、粗溶剤の給液、粗洗浄である粗真空超音波浸漬洗浄、粗溶剤の排液、仕上溶剤の給液、仕上洗浄である仕上真空超音波浸漬洗浄、仕上溶剤の排液、減圧蒸気洗浄、液抜き、真空乾燥、および、真空解除・ワーク取出しの各工程を含む。
【0031】
ワーク投入工程では、洗浄対象のワークを入れたバスケット142を、大気開放した真空洗浄乾燥槽140に投入する。次の真空引き工程では、ワークが投入されて密閉された真空洗浄乾燥槽140を真空ドライポンプ150で真空引きし、第1真空度、例えば5kPaの減圧状態にする(時点T1~T2)。この後(時点T2において)、真空洗浄乾燥槽140を圧力吸収タンク180に連通させて、真空洗浄乾燥槽140から圧力吸収タンク180に負圧を供給して、双方を第1真空度よりも低い第2真空度、例えば50kPaの減圧状態にし、双方の間を遮断する。換言すると、前回の動作サイクルにおいて圧力吸収タンク180に回収されている排気を真空洗浄乾燥槽140に戻す。この後は、圧力吸収タンク180の封鎖状態を真空乾燥工程の開始時点(時点T10)まで維持する。
【0032】
真空引き工程の次の粗溶剤の給液工程では、第2真空度の真空洗浄乾燥槽140と、大気圧状態よりも僅かに低い減圧状態、例えば100kPaの内圧状態の真空バッファタンク120との間の圧力差と高低差を利用して、粗溶剤槽122に貯留されている粗溶剤を真空洗浄乾燥槽140に供給する(時点T2~T3)。閉鎖状態の圧力吸収タンク180を除き、真空洗浄乾燥槽140、真空バッファタンク120を含む各部は同一の減圧状態、例えば80kPaになる。この状態で、超音波発生器143が駆動されて、粗真空超音波浸漬洗浄工程が行われる(時点T3~T4)。この後の粗溶剤の排液工程では、溶剤還流回路160の粗溶剤ポンプ162を駆動して真空洗浄乾燥槽140から真空バッファタンク120の粗溶剤槽122に粗溶剤を回収する(時点T4~T5)。
【0033】
同様に、次の仕上溶剤の給液工程では、真空ドライポンプ150を駆動して真空洗浄乾燥槽140を真空引きして第2真空度の減圧状態に戻し、真空ドライポンプ150の排気を、蒸留再生・蒸気発生器130および、ここを介して真空バッファタンク120に送り込み、真空洗浄乾燥槽140と真空バッファタンク120との間に圧力差を形成して、仕上溶剤槽121から真空洗浄乾燥槽140に仕上溶剤を供給する(時点T5~T6)。この状態で、超音波発生器143が駆動されて、仕上真空超音波浸漬洗浄工程が行われる(時点T6~T7)。この後の仕上溶剤の排液工程では、溶剤還流回路160の仕上溶剤ポンプ165を駆動して真空洗浄乾燥槽140から真空バッファタンク120の仕上溶剤槽121に仕上溶剤を戻す(時点T7~T8)。
【0034】
次の減圧蒸気洗浄工程では、真空ドライポンプ150を間欠駆動して、真空洗浄乾燥槽140を減圧し、蒸留再生・蒸気発生器130において生成される溶剤蒸気を真空洗浄乾燥槽140に供給してワークを減圧蒸気洗浄する(時点T8~T9)。真空ドライポンプ150の排気は蒸留再生・蒸気発生器130に排出される。真空洗浄乾燥槽140、真空バッファタンク120等の内圧は、例えば、80kPaから90kPaに上がる。真空洗浄乾燥槽140において、溶剤蒸気は、ワークに凝縮して底に溜まる。次の液抜き工程では、真空洗浄乾燥槽140に溜まった溶剤蒸気の凝縮液を、仕上溶剤ポンプ165を駆動して、真空バッファタンク120の仕上溶剤槽121に回収する(時点T9~T10)。
【0035】
次の真空乾燥工程では、真空洗浄乾燥槽140を、真空ドライポンプ150、蒸留再生・蒸気発生器130、溶剤回収装置170を経由して、圧力吸収タンク180に連通させ、真空ドライポンプ150を駆動して、真空洗浄乾燥槽140を真空引きして、ワークの真空乾燥を行う(時点T10~T11)。真空ドライポンプ150の排気は、蒸留再生・蒸気発生器130および溶剤回収タンク171を介して、圧力吸収タンク180に回収される。
【0036】
ここで、排気に含まれる溶剤蒸気は、蒸留再生・蒸気発生器130の溶剤凝縮部136の冷却コイル135で凝縮し、真空バッファタンク120の仕上溶剤槽121に回収される。また、蒸留再生・蒸気発生器130を通過して溶剤回収タンク171の溶剤回収路172に流入した排気に含まれる残存溶剤蒸気は、冷却コイルによって冷却されて凝縮し、タンクの底に溜まり、溶剤蒸気が除去された排気が圧力吸収タンク180に回収される。圧力吸収タンク180は、排気を回収することで、第2真空度の減圧状態から大気圧に近い減圧状態になるが、大気圧以上にはならないように、内容積、第1真空度等が設定されている。
【0037】
真空乾燥後の真空解除・ワーク取出し工程では、真空洗浄乾燥槽140を他の部位から遮断して、当該真空洗浄乾燥槽を大気開放して大気圧状態に戻す(時点T11)。この後は、真空洗浄乾燥槽140を開き、ワークの取り出しが行われる。真空洗浄乾燥槽140以外の部位の内圧は、大気圧よりも僅かに低い減圧状態に維持される。
【0038】
以上説明したように、本例の密閉型真空洗浄乾燥機100では、圧力吸収タンク180によって溶剤蒸気が流通する系内の圧力が大気圧未満に制御される。よって、ワークの搬入、搬出時のみ、真空洗浄乾燥槽140が大気開放され、系外に排気が排出されることがない。よって、溶剤蒸気ロスを低減できる。
【0039】
これに加えて、縦置きの溶剤回収タンク171を配置し、溶剤蒸気を含む排気を、タンク内の鉛直方向に長い溶剤回収路172に沿って鉛直方向に流すことで、自重により溶剤蒸気を降下させてタンク底側の部位(溶剤回収路の下端側の部位)に濃度の高い圧縮状態の溶剤蒸気の層を形成、この部分を冷却することで、効率良く、溶剤蒸気の冷却凝縮が行われる。また、溶剤蒸気は、溶剤回収路172の下端側の部位における冷却凝縮により体積が減少するので、その上端側の部位よりも下端側の部位が減圧状態になる。溶剤回収路172内に導入された溶剤蒸気は、自重および上下の圧力差の相乗効果により、下端側の溶剤冷却部174への移動(降下)が促進される。この結果、溶剤回収タンク171においては、その溶剤回収路172の下端側の部位への溶剤蒸気の移動が促進され、溶剤蒸気の冷却凝縮が効率良く行われる。よって、排気からの溶剤蒸気の分離回収効率を高めることができる。本例では、ワークの搬入、搬出時に大気開放される真空洗浄乾燥槽140から大気中に放出される排気を、実質的に溶剤蒸気が含まない状態にできる。これにより、溶剤蒸発ロスを実質的に零にできる真空洗浄乾燥機を実現できる。
【0040】
なお、本例においても、溶剤回収路172に沿って鉛直方向に流れる排気に含まれる溶剤蒸気が自重により降下して、鉛直方向の下端側の部位に、目標とする濃度あるいは圧縮状態の溶剤蒸気の層が形成されるように、少なくとも溶剤回収路172の鉛直方向の長さが設定される。
【0041】
また、本例の密閉型真空洗浄乾燥機100では、溶剤回収タンク171と圧力吸収タンク180とを別個に配置し、これらの間を配管によって接続している。これらを一つにまとめて、必要とされる内容積で、鉛直方向の長さを確保できるサイズの溶剤回収機能を備えた冷却機構付きの圧力吸収タンクを配置することも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 洗浄機
2 処理室
3 第1洗浄槽
4 第2洗浄槽
5 蒸気発生槽
6 第1溶剤循環回路
7 第2溶剤循環回路
8 冷却コイル
9 蒸気洗浄領域
10 冷却乾燥領域
11 水分離器
12 排気通路
20 溶剤回収装置
21 溶剤回収タンク
22 溶剤回収路
23 溶剤冷却部
100 密閉型真空洗浄乾燥機
120 真空バッファタンク
121 仕上溶剤槽
122 粗溶剤槽
130 蒸留再生・蒸気発生器
131 筒状容器
132 ヒーター
133 溶剤貯留部
134 溶剤蒸気発生部
135 冷却コイル
136 溶剤凝縮部
140 真空洗浄乾燥槽
141 開閉蓋
142 バスケット
143 超音波発生器
150 真空ドライポンプ
151 吸入口
152 吐出口
160 溶剤還流回路
161 粗溶剤バッファタンク
162 粗溶剤ポンプ
163 粗溶剤フィルタ
164 仕上溶剤バッファタンク
165 仕上溶剤ポンプ
166 仕上溶剤フィルタ
170 溶剤回収装置
171 溶剤回収タンク
172 溶剤回収路
173 排気入口
174 溶剤冷却部
175 排気出口
180 圧力吸収タンク
182 溶剤回収路
190 熱交換器
210 水分分離器
図1
図2
図3