(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087266
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】埋設環境分類マップ作成装置、埋設管老朽度予測装置、埋設環境分類マップ作成方法、埋設管老朽度予測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240624BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20240624BHJP
E03F 3/02 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/20
E03F3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201995
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 優一
(72)【発明者】
【氏名】奥村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 新平
【テーマコード(参考)】
2D063
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2D063BA14
2D063BA37
5L049CC06
5L049CC15
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】埋設管の老朽度のより正確な予測を可能にする埋設管老朽度予測装置を提供する。
【解決手段】埋設管老朽度予測装置1は、埋設管老朽度算出部132を備える。埋設管老朽度算出部132は、最適化埋設環境分類マップ58aによって特定される埋設管の各々の埋設環境と、埋設管老朽度予測モデルとから、埋設管の各々の老朽度を算出する。最適化埋設環境分類マップ58aは、一般埋設環境分類マップ56aの一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって作成されている。一部の地盤は、埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データ53に基づいて選択されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋設管の地図である管路マップと一般に入手可能な地盤マップとから、前記管路マップに対応する地域の一般埋設環境分類マップを作成する第1マップ作成部と、
地盤選択部と、最適化埋設環境分類マップ生成部とを含む第2マップ作成部とを備え、
前記地盤選択部は、前記埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データに基づいて、前記一般埋設環境分類マップの一部の地盤を選択し、
前記最適化埋設環境分類マップ生成部は、前記一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって、前記地域に最適化された埋設環境分類マップを生成する、埋設環境分類マップ作成装置。
【請求項2】
前記第2マップ作成部は、前記最適化された埋設環境分類マップを出力する最適化埋設環境分類マップ出力部を含む、請求項1に記載の埋設環境分類マップ作成装置。
【請求項3】
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生していない第1地盤を含む、請求項1または請求項2に記載の埋設環境分類マップ作成装置。
【請求項4】
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生した第2地盤を含む、請求項1または請求項2に記載の埋設環境分類マップ作成装置。
【請求項5】
埋設管の地図である管路マップに対応する地域に最適化された埋設環境分類マップによって特定される前記埋設管の各々の埋設環境と、前記埋設管の各々の埋設期間に関する第1情報と、前記埋設管の各々の管厚に関連する第2情報と、埋設管老朽度予測モデルとから、前記埋設管の各々の老朽度を算出する埋設管老朽度算出部を備え、
前記最適化された埋設環境分類マップは、前記地域の一般埋設環境分類マップの一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって作成されており、
前記一般埋設環境分類マップは、前記管路マップと一般に入手可能な地盤マップとから作成されており、
前記一部の地盤は、前記埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データに基づいて、前記一般埋設環境分類マップから選択されている、埋設管老朽度予測装置。
【請求項6】
前記埋設管の各々の前記老朽度を示す地図である埋設管老朽度予測マップを出力する埋設管老朽度予測結果出力部をさらに備える、請求項5に記載の埋設管老朽度予測装置。
【請求項7】
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生していない第1地盤を含む、請求項5または請求項6に記載の埋設管老朽度予測装置。
【請求項8】
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生した第2地盤を含む、請求項5または請求項6に記載の埋設管老朽度予測装置。
【請求項9】
前記埋設管の各々の前記老朽度は、単位時間及び単位距離当たりに前記埋設管の各々に漏水事故が発生する確率である、請求項5または請求項6に記載の埋設管老朽度予測装置。
【請求項10】
埋設管の地図である管路マップと一般に入手可能な地盤マップとから、前記管路マップに対応する地域の一般埋設環境分類マップを作成するステップと、
前記埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データに基づいて、前記一般埋設環境分類マップの一部の地盤を選択するステップと、
前記一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって、前記地域に最適化された埋設環境分類マップを生成するステップとを備える、埋設環境分類マップ作成方法。
【請求項11】
前記最適化された埋設環境分類マップを出力するステップをさらに備える、請求項10に記載の埋設環境分類マップ作成方法。
【請求項12】
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生していない第1地盤を含む、請求項10または請求項11に記載の埋設環境分類マップ作成方法。
【請求項13】
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生した第2地盤を含む、請求項10または請求項11に記載の埋設環境分類マップ作成方法。
【請求項14】
埋設管の地図である管路マップに対応する地域に最適化された埋設環境分類マップによって特定される前記埋設管の各々の埋設環境と、前記埋設管の各々の埋設期間に関する第1情報と、前記埋設管の各々の管厚に関連する第2情報と、埋設管老朽度予測モデルとから、前記埋設管の各々の老朽度を算出するステップを備え、
前記最適化された埋設環境分類マップは、前記地域の一般埋設環境分類マップの一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって作成されており、
前記一般埋設環境分類マップは、前記管路マップと一般に入手可能な地盤マップとから作成されており、
前記一部の地盤は、前記埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データに基づいて、前記一般埋設環境分類マップから選択されている、埋設管老朽度予測方法。
【請求項15】
前記埋設管の各々の前記老朽度を示す地図である埋設管老朽度予測マップを出力するステップをさらに備える、請求項14に記載の埋設管老朽度予測方法。
【請求項16】
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生していない第1地盤を含む、請求項14または請求項15に記載の埋設管老朽度予測方法。
【請求項17】
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生した第2地盤を含む、請求項14または請求項15に記載の埋設管老朽度予測方法。
【請求項18】
前記埋設管の各々の前記老朽度は、単位時間及び単位距離当たりに前記埋設管の各々に漏水事故が発生する確率である、請求項14または請求項15に記載の埋設管老朽度予測方法。
【請求項19】
請求項10または請求項11に記載の前記埋設環境分類マップ作成方法の各ステップをプロセッサに実行させる、プログラム。
【請求項20】
請求項14または請求項15に記載の前記埋設管老朽度予測方法の各ステップをプロセッサに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、埋設環境分類マップ作成装置、埋設管老朽度予測装置、埋設環境分類マップ作成方法、埋設管老朽度予測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
水道管のような管が、土壌に埋設されている。管を長期間使用している間に、管は腐食する。特開2007-107882号公報(特許文献1)は、埋設管の腐食予測方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、埋設管の老朽度のより正確な予測を可能にする埋設環境分類マップ作成装置、埋設管老朽度予測装置、埋設環境分類マップ作成方法、埋設管老朽度予測方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の埋設環境分類マップ作成装置は、第1マップ作成部と、第2マップ作成部とを備える。第1マップ作成部は、埋設管の地図である管路マップと一般に入手可能な地盤マップとから、管路マップに対応する地域の一般埋設環境分類マップを作成する。第2マップ作成部は、地盤選択部と、最適化埋設環境分類マップ生成部とを含む。地盤選択部は、埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データに基づいて、一般埋設環境分類マップの一部の地盤を選択する。最適化埋設環境分類マップ生成部は、当該一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって、管路マップに対応する地域に最適化された埋設環境分類マップを生成する。
【0006】
本開示の埋設管老朽度予測装置は、埋設管老朽度算出部を備える。埋設管老朽度算出部は、埋設管の地図である管路マップに対応する地域に最適化された埋設環境分類マップによって特定される埋設管の各々の埋設環境と、埋設管の各々の埋設期間に関する第1情報と、埋設管の各々の管厚に関連する第2情報と、埋設管老朽度予測モデルとから、埋設管の各々の老朽度を算出する。最適化された埋設環境分類マップは、管路マップに対応する地域の一般埋設環境分類マップの一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって作成されている。一般埋設環境分類マップは、管路マップと一般に入手可能な地盤マップとから作成されている。一部の地盤は、埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データに基づいて、一般埋設環境分類マップから選択されている。
【0007】
本開示の埋設環境分類マップ作成方法は、埋設管の地図である管路マップと一般に入手可能な地盤マップとから、管路マップに対応する地域の一般埋設環境分類マップを作成するステップと、埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データに基づいて、一般埋設環境分類マップの一部の地盤を選択するステップと、一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって、管路マップに対応する地域に最適化された埋設環境分類マップを生成するステップとを備える。
【0008】
本開示の埋設管老朽度予測方法は、埋設管の地図である管路マップに対応する地域に最適化された埋設環境分類マップによって特定される埋設管の各々の埋設環境と、埋設管の各々の埋設期間に関する第1情報と、埋設管の各々の管厚に関連する第2情報と、埋設管老朽度予測モデルとから、埋設管の各々の老朽度を算出するステップとを備える。最適化された埋設環境分類マップは、地域の一般埋設環境分類マップの一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって作成されている。一般埋設環境分類マップは、管路マップと一般に入手可能な地盤マップとから作成されている。一部の地盤は、埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データに基づいて、一般埋設環境分類マップから選択されている。
【0009】
本開示のプログラムは、本開示の埋設環境分類マップ作成方法の各ステップをプロセッサに実行させる。
【0010】
本開示のプログラムは、本開示の埋設管老朽度予測方法の各ステップをプロセッサに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の埋設環境分類マップ作成装置、埋設管老朽度予測装置、埋設環境分類マップ作成方法、埋設管老朽度予測方法及びプログラムによれば、埋設管の老朽度のより正確な予測が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態の埋設管老朽度予測装置のハードウェア構成を示す概略図である。
【
図2】実施の形態の埋設管老朽度予測装置の機能的構成を説明するブロック図である。
【
図3】実施の形態の埋設管老朽度予測装置の対応表作成部の機能的構成を説明するブロック図である。
【
図4】実施の形態の埋設管老朽度予測装置の第2マップ作成部の機能的構成を説明するブロック図である。
【
図5】実施の形態の埋設管老朽度予測装置の適応度算出部の機能的構成を説明するブロック図である。
【
図6】実施の形態の埋設管老朽度予測装置の記憶部の機能的構成を説明するブロック図である。
【
図7】調査管データのデータ構造の例を示す図である。
【
図9】地盤情報-地盤ID-腐食速度-埋設環境対応表のデータ構造の例を示す図である。
【
図10】埋設環境と腐食速度との間の関係を表す箱ひげ図を示す図である。
【
図12】埋設管属性データのデータ構造の例を示す図である。
【
図13】漏水事故データのデータ構造の例を示す図である。
【
図16】公称管厚データのデータ構造の例を示す図である。
【
図17】漏水事故率予測モデルを用いた推定漏水事故率の算出例を示す図である。
【
図18】埋設管老朽度予測結果(埋設管老朽度予測テーブル)の例を示す図である。
【
図19】埋設管老朽度予測結果(埋設管老朽度予測マップ)の例を示す図である。
【
図20】実施の形態の対応表作成方法のフローチャートを示す図である。
【
図21】実施の形態の最適化統合マップの作成方法のフローチャートを示す図である。
【
図22】実施の形態の最適化統合マップを作成するステップのフローチャートを示す図である。
【
図23】埋設環境分類の最適化の候補となる地盤IDを選択するステップのフローチャートを示す図である。
【
図24】埋設環境分類の変更が不要な地盤IDを除外するステップの一例のフローチャートを示す図である。
【
図25】推定漏水事故件数を算出するステップのフローチャートを示す図である。
【
図26】第1前処理済埋設管データのデータ構造の例を示す図である。
【
図27】第1前処理済埋設管データを作成するステップのフローチャートを示す図である。
【
図28】埋設環境分類の最適化の候補として選択された地盤IDの埋設環境分類を、機械学習によって最適化するステップのフローチャートを示す図である。
【
図29】複数の埋設環境マップ候補の各々の遺伝子の例を示す図である。
【
図30】新たな世代の集団を生成するステップのフローチャートを示す図である。
【
図31】現世代の集団を構成する各個体の適応度を算出するステップのフローチャートを示す図である。
【
図32】第2前処理済埋設管データのデータ構造の例を示す図である。
【
図33】第2前処理済埋設管データを作成するステップのフローチャートを示す図である。
【
図34】個体の推定漏水事故率結果のデータ構造の例を示す図である。
【
図36】実施の形態の埋設管老朽度予測方法のフローチャートを示す図である。
【
図37】推定漏水事故率を算出するステップのフローチャートを示す図である。
【
図38】第3前処理済埋設管データのデータ構造の例を示す図である。
【
図39】第3前処理済埋設管データを作成するステップのフローチャートを示す図である。
【
図40】埋設管老朽度予測モデルを用いた埋設管の老朽度の算出例を示す図である。
【
図41】実施の形態の変形例の埋設管老朽度予測システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0014】
図1から
図6を参照して、埋設管老朽度予測装置1を説明する。埋設管老朽度予測装置1は、埋設管の老朽度を予測する装置である。本実施の形態では、埋設管老朽度予測装置1は、埋設環境分類マップ作成装置2及び対応表作成装置3でもある。埋設環境分類マップ作成装置2は、最適化埋設環境分類マップ58a(
図15を参照)を作成する装置である。対応表作成装置3は、地盤情報-地盤ID-腐食速度-埋設環境対応表46(以下、単に「対応表46」という。
図9を参照。)を作成する装置である。
【0015】
<ハードウエア構成>
【0016】
図1を参照して、埋設管老朽度予測装置1のハードウェア構成を説明する。埋設管老朽度予測装置1は、入力装置11と、プロセッサ12と、メモリ13と、ディスプレイ14と、ネットワークコントローラ16と、記憶媒体ドライブ17と、ストレージ19とを含む。
【0017】
入力装置11は、各種の入力操作を受け付ける。入力装置11は、例えば、キーボード、マウスまたはタッチパネルである。
【0018】
ディスプレイ14は、埋設管老朽度予測装置1における処理に必要な情報などを表示する。ディスプレイ14は、例えば、最適化統合マップ58(
図15を参照)並びに埋設管老朽度予測結果65(
図18及び
図19を参照)を表示する。ディスプレイ14は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electroluminescence)ディスプレイである。
【0019】
プロセッサ12は、後述するプログラムを実行することによって、埋設管老朽度予測装置1の機能の実現に必要な処理を実行する。プロセッサ12は、例えば、CPUまたはGPUなどで構成される。
【0020】
メモリ13は、プロセッサ12がプログラムを実行するにあたって、プログラムコードまたはワークメモリなどを一時的に格納する記憶領域を提供する。メモリ13は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリデバイスである。
【0021】
ネットワークコントローラ16は、インターネットまたはイントラネットのような通信ネットワーク(図示せず)を介して、外部装置(図示せず)との間でプログラムまたはデータを送受信する。例えば、ネットワークコントローラ16は、通信ネットワークを介して、最適化統合マップ58(
図15を参照)並びに埋設管老朽度予測結果65(
図18及び
図19を参照)を、外部装置に送信する。ネットワークコントローラ16は、通信ネットワークを介して、埋設管データ50(
図11及び
図12を参照)を、顧客(例えば、水道事業体)から受信してもよい。ネットワークコントローラ16は、例えば、イーサネット(登録商標)、無線LANまたはBluetooth(登録商標)などの任意の通信方式に対応している。
【0022】
記憶媒体ドライブ17は、記憶媒体18に格納されているプログラムまたはデータを読み出す装置である。記憶媒体ドライブ17は、さらに、記憶媒体18にプログラムまたはデータを書き込む装置であってもよい。記憶媒体18は、非一過的(non-transitory)な記憶媒体であり、プログラムまたはデータを不揮発的に格納する。記憶媒体18は、例えば、光学ディスク(例えば、CD-ROMまたはDVD-ROM)などの光学記憶媒体、フラッシュメモリまたはUSBメモリなどの半導体記憶媒体、FD(Floppy Disk)もしくはストレージテープなどの磁気記憶媒体、または、MO(Magneto-Optical)ディスクなどの光磁気記憶媒体である。
【0023】
ストレージ19は、例えば、ハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリデバイスである。ストレージ19は、調査管データ40(
図7を参照)、地盤マップ42(
図8を参照)、対応表46(
図9を参照)、埋設管データ50(
図11及び
図12を参照)、一般統合マップ56(
図14を参照)、最適化統合マップ58(
図15を参照)、公称管厚データ60(
図16を参照)、漏水事故率予測モデル28(
図6、
図17及び
図40を参照)、埋設管老朽度予測結果65、及び、プロセッサ12において実行されるプログラムなどを格納する。このプログラムは、埋設環境分類マップ作成プログラム31(
図6を参照)と、埋設管老朽度予測プログラム32(
図6を参照)と、対応表作成プログラム33(
図6を参照)とを含む。
【0024】
埋設環境分類マップ作成プログラム31(
図6を参照)、埋設管老朽度予測プログラム32(
図6を参照)及び対応表作成プログラム33(
図6を参照)のような、埋設管老朽度予測装置1の機能を実現するためのプログラムは、非一過的な記憶媒体18に格納されて流通し、ストレージ19にインストールされてもよい。埋設環境分類マップ作成プログラム31、埋設管老朽度予測プログラム32及び対応表作成プログラム33のような、埋設管老朽度予測装置1の機能を実現するためのプログラムは、インターネットまたはイントラネットを介して、埋設管老朽度予測装置1にダウンロードされてもよい。
【0025】
本実施の形態では、汎用コンピュータ(プロセッサ12)が、プログラムを実行することによって、埋設管老朽度予測装置1の機能を実現する例を示す。埋設管老朽度予測装置1の機能の全部または一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)のような集積回路を用いて実現されてもよい。
【0026】
<機能構成>
【0027】
図2から
図19を参照して、埋設管老朽度予測装置1の機能構成の例を説明する。
図2を参照して、埋設管老朽度予測装置1は、記憶部20と、対応表作成部90と、埋設管データ受付部99と、マップ作成部100と、埋設管老朽度予測部130とを含む。
【0028】
<記憶部20>
【0029】
記憶部20は、ストレージ19(
図1を参照)または記憶媒体18(
図1を参照)によって実現される。
図6を参照して、記憶部20は、調査管データ記憶部21と、地盤マップデータベース部22と、対応表記憶部23と、埋設管データ記憶部24と、マップ記憶部25と、公称管厚データベース部26と、漏水事故率予測モデル記憶部27と、埋設管老朽度予測結果記憶部29と、プログラム記憶部30とを含む。
【0030】
図6及び
図7を参照して、調査管データ記憶部21には、調査管データ40が記憶されている。調査管は、例えば、水道管である。調査管は、土壌に埋設されている。調査管データ40は、例えば、日本全国の多数の調査地点(例えば、約6000調査地点)において管を試掘することによって得られる管の調査データである。調査管データ40は、調査番号、調査地点の住所、土壌の種類及び土壌比抵抗、調査管の腐食深さ及び布設年、並びに、調査年を含む。調査地点の住所は、調査管が埋設されている地点の住所である。土壌の種類は、調査管が埋設されている土壌の種類である。土壌比抵抗は、調査管が埋設されている土壌の比抵抗である。調査年は、調査管の腐食深さを調査した年である。調査管データ40は、例えば、記憶媒体18(
図1を参照)によって、または、インターネットもしくはイントラネットのような通信ネットワークを通じて、提供される。
【0031】
図6及び
図8を参照して、地盤マップデータベース部22には、地盤マップ42が記憶されている。地盤マップ42は、例えば、表層地質
図43と、地形分類
図44とを含む。表層地質
図43は、地表の地質を示す地図である。表層地質
図43は、例えば、大分類と、小分類とを含む。地形分類
図44は、地形を示す地図である。地形分類
図44は、例えば、大分類と、小分類とを含む。表層地質
図43及び地形分類
図44は、国土交通省などの公的機関などから提供されており、一般に入手可能である。
【0032】
図6及び
図9を参照して、対応表記憶部23には、対応表46が記憶されている。対応表46は、調査管データ40と、地盤マップ42とから作成される。対応表46では、地盤情報と地盤IDと代表的腐食速度と埋設環境とが互いに対応付けられている。
【0033】
地盤情報は、例えば、調査地点の住所(
図7を参照)における表層地質と地形との組み合わせである。地盤IDは、地盤情報に対応して割り当てられる。地盤ID毎の代表的腐食速度は、例えば、地盤ID毎の平均腐食速度または地盤ID毎の腐食速度の中央値である。地盤ID毎の平均腐食速度は、同一の地盤IDが割り当てられた調査管の腐食速度の平均値である。地盤ID毎の腐食速度の中央値は、同一の地盤IDが割り当てられた調査管の腐食速度の50パーセンタイル値である。
【0034】
対応表46では、調査管データ40は、土壌の種類(
図7を参照)及び土壌比抵抗(
図7を参照)に基づいて、埋設環境A-Dの四つの埋設環境に分類されている。埋設環境Aは、1500Ω・cm未満の土壌比抵抗を有する土壌または埋設管に対して当該土壌と等価な腐食性を有する土壌を表す。埋設環境Bは、1500Ω・cm以上の土壌比抵抗を有する粘土系土壌または埋設管に対して当該粘土系土壌と等価な腐食性を有する土壌を表す。埋設環境Cは、1500Ω・cm以上の土壌比抵抗を有するシルト系土壌または埋設管に対して当該シルト系土壌と等価な腐食性を有する土壌を表す。埋設環境Dは、1500Ω・cm以上の土壌比抵抗を有する砂系土壌または埋設管に対して当該砂系土壌と等価な腐食性を有する土壌を表す。
【0035】
以下の二つの理由により、管が埋設されている土壌は、埋設環境A-Dの四つの埋設環境に分類されている。第一の理由は、本発明者は、調査管データ40を分析したところ、
図10に示されるように、埋設環境A-Dと管の腐食速度との間に統計的に有意な相関があることを発見したからである。第二の理由は、四つの埋設環境A-Dを有する調査データの数は、調査データの総数の大部分(80%以上)を占めているからである。
【0036】
図10に示されるように、埋設環境Aに分類される土壌の腐食速度の中央値は、全ての埋設環境A-Dの中央値の中で、最も大きい。埋設環境Aは、全ての埋設環境A-Dの中で、埋設管に対する腐食性が最も高い。埋設環境Bに分類される土壌の腐食速度の中央値は、全ての埋設環境A-Dの中央値の中で、二番目に大きい。埋設環境Bに分類される土壌の腐食速度の中央値は、全ての埋設環境A-Dの中央値の中で、三番目に小さい。埋設環境Bは、埋設環境Aよりも埋設管に対する腐食性が低く、かつ、埋設環境C及び埋設環境Dよりも埋設管に対する腐食性が高い。埋設環境Cに分類される土壌の腐食速度の中央値は、全ての埋設環境A-Dの中央値の中で、二番目に小さい。埋設環境Cは、埋設環境A及び埋設環境Bよりも埋設管に対する腐食性が低く、かつ、埋設環境Dよりも埋設管に対する腐食性が高い。埋設環境Dに分類される土壌の腐食速度の中央値は、全ての埋設環境A-Dの中央値の中で、最も小さい。埋設環境Dは、全ての埋設環境A-Dの中で、埋設管に対する腐食性が最も低い。
【0037】
図6及び
図11から
図13を参照して、埋設管データ記憶部24には、埋設管データ50(
図11及び
図12を参照)と漏水事故データ53(
図13を参照)とが記憶されている。埋設管の用途は調査管の用途と同じであり、埋設管は、例えば、水道管である。埋設管は、土壌に埋設されている。
【0038】
埋設管データ50は、例えば、管路マップ51(
図11を参照)と、埋設管属性データ52(
図12を参照)とを含む。
【0039】
図11を参照して、管路マップ51は、顧客が管理する埋設管の地図であり、埋設管の管路IDと、埋設管の住所(埋設場所)とを含む。管路マップ51では、埋設管の管路IDと埋設管の住所とが互いに対応付けられており、埋設管の管路ID毎に、埋設管の住所が地図に表示されている。
【0040】
図12を参照して、埋設管属性データ52は、埋設管の埋設期間に関する第1情報と、埋設管の管厚に関連する第2情報とを含む。埋設管属性データ52は、例えば、埋設管の管路ID及び管路長と、第1情報としての埋設管の布設年と、第2情報としての埋設管の呼び径、接合形式及び管厚の種類とを含む。埋設管属性データ52では、管路ID、布設年、呼び径、接合形式、管厚の種類及び管路長が、互いに対応付けられている。埋設管の布設年は、埋設管が布設(埋設)された年である。接合形式として、A形、K形、T形またはNS形等を例示することができる。管厚の種類として、1種、2種または3種等を例示することができる。管路長は、埋設管の長さである。
【0041】
図13を参照して、漏水事故データ53は、埋設管の各々の漏水事故の過去実績である。漏水事故データ53は、例えば、漏水事故マップ54と、漏水事故データ収集期間55の始期及び終期とを含む。漏水事故マップ54は、管路マップ51に漏水事故データ収集期間55内に漏水事故が発生した地点が示されたマップである。
【0042】
マップ記憶部25には、管路マップ51に対応する地域の一般統合マップ56(
図14を参照)と、管路マップ51に対応する地域の最適化統合マップ58(
図15を参照)とが記憶されている。
【0043】
図14を参照して、一般統合マップ56は、管路マップ51と、管路マップ51に対応する地域の一般埋設環境分類マップ56aと、管路マップ51に対応する地域の地盤IDマップ56bとが統合されたマップである。一般埋設環境分類マップ56aは、管路マップ51に対応する地域の埋設環境を示すマップである。地盤IDマップ56bは、管路マップ51に対応する地域の地盤IDを示すマップである。
【0044】
図15を参照して、最適化統合マップ58は、管路マップ51と、管路マップ51に対応する地域の最適化埋設環境分類マップ58aと、管路マップ51に対応する地域の地盤IDマップ56bとが統合されたマップである。最適化埋設環境分類マップ58aは、漏水事故データ53を用いて、一般埋設環境分類マップ56aの埋設環境分類を最適化することによって生成される。
【0045】
図6及び
図16を参照して、公称管厚データベース部26には、公称管厚データ60が記憶されている。公称管厚データ60は、例えば、管の布設年、呼び径、接合形式、管厚の種類及び公称管厚を含む。公称管厚データ60では、管の布設年、呼び径、接合形式、管厚の種類及び公称管厚が互いに対応付けられている。管の公称管厚は、管の規格管厚である。
【0046】
図6を参照して、漏水事故率予測モデル記憶部27には、埋設環境及び公称管厚に応じて互いに異なる複数の漏水事故率予測モデル28が記憶されている。漏水事故率予測モデル28は、例えば、埋設環境A用の漏水事故率予測モデルと、埋設環境B用の漏水事故率予測モデルと、埋設環境C用の漏水事故率予測モデルと、埋設環境D用の漏水事故率予測モデルとを含む。埋設環境A用の漏水事故率予測モデルと、埋設環境B用の漏水事故率予測モデルと、埋設環境C用の漏水事故率予測モデルと、埋設環境D用の漏水事故率予測モデルとは、各々、公称管厚に応じた複数の漏水事故率予測モデルを含む。
図17に、複数の漏水事故率予測モデル28の例を示す。複数の漏水事故率予測モデル28は、特に限定されないが、例えば、特開2021-56224号公報に開示された漏水事故率予測モデルであってもよいし、公益財団法人水道技術研究センターによって提供される埋設管の漏水事故率推定式であってもよい。
【0047】
公益財団法人水道技術研究センターによって提供される埋設管の漏水事故率推定式は、以下の式(1)によって与えられる。yは管の漏水事故率(件/km/年)を表し、C1は管の仕様に関する補正係数を表し、C2は管の口径に関する補正係数を表し、C3は管が埋設されている地盤条件に関する補正係数を表し、f(T)は管種別の標準事故率曲線を表す。f(T)は、以下の式(2)によって与えられる。Tは管の埋設期間を表し、係数a及び係数bは経年時の漏水事故率の上昇程度を表す管種別の係数を表す。
【0048】
y=C1・C2・C3・f(T) (1)
【0049】
f(T)=a・Tb (2)
【0050】
図6を参照して、埋設管老朽度予測結果記憶部29には、埋設管老朽度予測結果65が記憶されている。埋設管老朽度予測結果65は、埋設管老朽度予測テーブル66(
図18を参照)であってもよいし、埋設管老朽度予測マップ67(
図19を参照)であってもよいし、その両方であってもよい。
【0051】
プログラム記憶部30には、埋設管老朽度予測装置1の機能を実現するためのプログラムが記憶されている。埋設管老朽度予測装置1の機能を実現するためのプログラムは、例えば、埋設環境分類マップ作成プログラム31と、埋設管老朽度予測プログラム32と、対応表作成プログラム33とを含む。
【0052】
<対応表作成部90>
【0053】
図2及び
図3を参照して、対応表作成部90は、調査管データ40(
図7を参照)及び一般に入手可能な地盤マップ42(
図8を参照)から、対応表46(
図9を参照)を作成する。対応表作成部90は、腐食速度算出部91と、地盤情報取得部92と、地盤ID割当部93と、代表的腐食速度算出部94と、埋設環境分類部95と、対応表生成部96と、対応表出力部97とを含む。
【0054】
腐食速度算出部91は、は、調査番号(
図7を参照)毎に、調査管の腐食速度を算出する。例えば、腐食速度算出部91は、調査年(
図7を参照)と調査管の布設年(
図7を参照)との差を、当該調査管の埋設期間として算出する。腐食速度算出部91は、調査管の腐食深さ(
図7を参照)を調査管の埋設期間で割ることによって、調査管の腐食速度を算出する。
【0055】
地盤情報取得部92は、調査管データ40(
図7を参照)と地盤マップデータベース部22とを参照して、調査地点の住所(
図7を参照)における地盤情報を得る。地盤ID割当部93は、地盤情報(例えば、表層地質と地形との組み合わせ)に対応して地盤IDを割り当てる。
【0056】
代表的腐食速度算出部94は、地盤ID毎に代表的腐食速度を算出する。地盤ID毎の代表的腐食速度は、例えば、地盤ID毎の平均腐食速度または地盤ID毎の腐食速度の中央値である。地盤ID毎の代表的腐食速度が地盤ID毎の平均腐食速度であるとき、代表的腐食速度算出部94は、同一の地盤IDが割り当てられた調査管の腐食速度の平均値を算出する。地盤ID毎の代表的腐食速度が地盤ID毎の腐食速度の中央値であるとき、代表的腐食速度算出部94は、同一の地盤IDが割り当てられた調査管の腐食速度の50パーセンタイル値を算出する。
【0057】
埋設環境分類部95は、土壌の種類(
図7を参照)及び土壌比抵抗(
図7を参照)に基づいて、調査管データ40を、埋設環境A-Dの四つの埋設環境に分類する。対応表生成部96は、地盤情報と地盤IDと代表的腐食速度と埋設環境とを互いに対応づけて、対応表46(
図9を参照)を作成する。対応表出力部97は、対応表46を、対応表記憶部23(
図6を参照)に出力する。
【0058】
<埋設管データ受付部99>
【0059】
図2を参照して、埋設管データ受付部99は、顧客から、埋設管データ50(
図11及び
図12を参照)と漏水事故データ53(
図13を参照)とを受け付ける。埋設管データ50と漏水事故データ53とは、例えば、記憶媒体18(
図1を参照)によって、または、インターネットもしくはイントラネットのような通信ネットワークを通じて、顧客から提供される。埋設管データ受付部99は、埋設管データ50及び漏水事故データ53を、埋設管データ記憶部24(
図6を参照)に出力する。埋設管データ50及び漏水事故データ53は、予めストレージ19(
図1を参照)に格納されてもよい。
【0060】
<マップ作成部100>
【0061】
図2を参照して、マップ作成部100は、第1マップ作成部101と、第2マップ作成部102とを含む。
【0062】
<第1マップ作成部101>
【0063】
図2を参照して、第1マップ作成部101は、管路マップ51(
図11を参照)と地盤マップ42(
図8を参照)と対応表46(
図9を参照)とから一般統合マップ56(
図14を参照)を作成する。
【0064】
具体的には、第1マップ作成部101は、埋設管データ記憶部24(
図6を参照)から、管路マップ51(
図11を参照)を読み出す。第1マップ作成部101は、地盤マップデータベース部22(
図6及び
図8を参照)から、管路マップ51に対応する地域の地盤マップ42(例えば、表層地質
図43及び地形分類
図44)を読み出す。第1マップ作成部101は、対応表記憶部23から、対応表46(
図9を参照)を読み出す。第1マップ作成部101は、管路マップ51に、管路マップ51に対応する地域の埋設環境と地盤IDとを重ね合わせて、一般統合マップ56(
図14を参照)を作成する。
【0065】
一般統合マップ56は、管路マップ51と、管路マップ51に対応する地域の一般埋設環境分類マップ56aと、管路マップ51に対応する地域の地盤IDマップ56bとが統合されたマップである。一般埋設環境分類マップ56aは、管路マップ51に対応する地域の埋設環境を示すマップである。地盤IDマップ56bは、管路マップ51に対応する地域の地盤IDを示すマップである。第1マップ作成部101は、一般統合マップ56を、マップ記憶部25(
図6を参照)に出力する。
【0066】
<第2マップ作成部102>
【0067】
図2及び
図4を参照して、第2マップ作成部102は、一般統合マップ56(一般埋設環境分類マップ56a)の埋設環境分類を最適化することによって、管路マップ51に対応する地域の最適化統合マップ58(
図15を参照)を作成する。第2マップ作成部102は、地盤選択部103と、最適化埋設環境分類マップ生成部110と、最適化統合マップ生成部116と、最適化統合マップ出力部118とを含む。
【0068】
図4を参照して、地盤選択部103は、一般統合マップ56に含まれる全ての地盤IDのうち、埋設環境分類の最適化の候補となる地盤IDを選択する。
図4を参照して、地盤選択部103は、データ前処理部104と、推定漏水事故件数算出部105と、漏水事故実件数算出部106と、判定部107とを含む。
【0069】
データ前処理部104(
図4を参照)は、一般統合マップ56(
図14を参照)、埋設管データ50(
図11及び
図12を参照)及び漏水事故データ53(
図13を参照)から、第1前処理済埋設管データ70(
図26を参照)を作成する。
【0070】
図4を参照して、推定漏水事故件数算出部105は、後述する地盤IDの第2暫定候補毎に、漏水事故データ収集期間55(
図13を参照)における単位時間当たりの推定漏水事故件数を算出する。単位時間当たりの推定漏水事故件数は、単位時間当たりに、地盤IDの第2暫定候補の各々において発生する漏水事故の推定件数である。例えば、単位時間は1年であり、推定漏水事故件数の単位は、件/年である。
【0071】
図4を参照して、漏水事故実件数算出部106は、後述する地盤IDの第2暫定候補毎に、漏水事故データ収集期間55(
図13を参照)における単位時間当たりの漏水事故実件数を算出する。例えば、単位時間は1年であり、単位時間当たりの漏水事故実件数は、漏水事故データ収集期間55内に地盤IDの第2暫定候補の各々において発生した漏水事故実件数の年平均であり、単位時間当たりの漏水事故実件数の単位は、件/年である。
【0072】
図4を参照して、判定部107は、後述する地盤IDの第2暫定候補毎に、推定漏水事故件数と漏水事故実件数との間の差が基準値以下であるか否かを判定する。判定部107は、上記差が基準値以下である地盤IDを、地盤IDの第2暫定候補から除外する。判定部107は、上記差が基準値超である地盤IDを、地盤IDの第2暫定候補に残す。
【0073】
図4を参照して、最適化埋設環境分類マップ生成部110は、地盤選択部103によって選択された地盤IDの埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって、最適化埋設環境分類マップ58aを生成する。
図4を参照して、最適化埋設環境分類マップ生成部110は、初期集団生成部111と、適応度算出部112と、判定部113と、新世代集団生成部114とを含む。
【0074】
初期集団生成部111は、一般埋設環境分類マップ56aのうち、地盤選択部103によって選択された地盤IDの埋設環境分類をランダムに変更することによって、複数の埋設環境分類マップ候補により構成される初期集団を生成する。複数の埋設環境分類マップ候補の全体は「集団」と呼ばれる。
【0075】
適応度算出部112は、初期集団または新たな世代の集団(以下、初期集団と新たな世代の集団とをまとめて「現世代の集団」と呼ぶ。)を構成する各個体の適応度を算出する。「個体」は、現世代の集団を構成する複数の埋設環境マップ候補の各々である。個体は、複数の遺伝子によって構成されている。
図29に示されるように、例えば、複数の遺伝子は、各々、ステップS21において選択された地盤IDの埋設環境分類の変更段階数である。
図5を参照して、適応度算出部112は、修正統合マップ作成部120と、データ前処理部121と、推定漏水事故率算出部122と、推定漏水事故率結果作成部123と、残る漏水事故件数算出部124と、管更新率算出部125とを含む。
【0076】
図5を参照して、修正統合マップ作成部120は、個体に対応する修正統合マップを作成する(ステップS50)。具体的には、修正統合マップ作成部120は、一般統合マップ56(一般埋設環境分類マップ56a)に含まれる地盤IDのうち、個体に含まれる非ゼロの遺伝子に対応する地盤IDの埋設環境分類を、当該非ゼロの遺伝子によって表現される埋設環境分類の変更段階数分変更する。こうして、個体に対応する修正統合マップが作成される。
【0077】
図5を参照して、データ前処理部121は、修正統合マップ、埋設管属性データ52(
図12を参照)及び漏水事故データ53(
図13を参照)から、第2前処理済埋設管データ74(
図32を参照)を作成する。
【0078】
図5を参照して、推定漏水事故率算出部122は、修正統合マップに含まれる管路ID毎に、埋設管の推定漏水事故率を算出する。具体的には、推定漏水事故率算出部122は、第2前処理済埋設管データ74(
図32を参照)から、管路IDと、当該管路IDに対応する修正埋設環境及び公称管厚とを読み出す。推定漏水事故率算出部122は、漏水事故率予測モデル記憶部27(
図6を参照)に記憶されている複数の漏水事故率予測モデル28(
図6を参照)のうち、読み出された修正埋設環境及び公称管厚に適した漏水事故率予測モデル28を選択する。
【0079】
推定漏水事故率算出部122は、第2前処理済埋設管データ74から、管路IDと、当該管路IDに対応する埋設期間Tmとを読み出す。推定漏水事故率算出部122は、選択された漏水事故率予測モデル28に埋設期間Tmを入力して、管路ID毎に、漏水事故データ収集期間55の中間期における推定漏水事故率Rmを算出する。推定漏水事故率は、単位時間及び単位距離当たりに発生する漏水事故の推定件数である。推定漏水事故率Rmの単位は、例えば、件/年/kmである。
【0080】
図5を参照して、推定漏水事故率結果作成部123は、個体の推定漏水事故率結果76(
図34を参照)を作成する。具体的には、推定漏水事故率結果作成部123は、修正統合マップに含まれる管路IDと推定漏水事故率R
mと管路長(
図12を参照)とを互いに対応付けて、推定漏水事故率結果76を作成する。
【0081】
図5を参照して、残る漏水事故件数算出部124は、漏水事故データ53に含まれる漏水事故の総件数から、漏水事故データ収集期間55の始期に、推定漏水事故率R
mが高い順に個体の推定漏水事故率結果76に含まれる管路IDの一部を新しい管に更新したときに、未然に発生を防ぐことができた漏水事故の件数を差し引くことによって、残る漏水事故件数を算出する。
【0082】
図5を参照して、管更新率算出部125は、漏水事故データ収集期間55の始期に更新された管路長を、個体の推定漏水事故率結果76に含まれる管路IDの総管路長で割ることによって、管更新率を算出する。
【0083】
図4を参照して、判定部113は、新たな世代の集団の生成を終了するための終了判定を行う。判定部113は、終了条件が満たされているか否かを判定する。終了条件は、例えば、所定の世代数(例えば、50世代)連続して、集団のうち最も適応度が高い個体が同一であることである。
【0084】
図4を参照して、新世代集団生成部114は、終了条件が満たされていない場合に、新たな世代の集団を生成する。
【0085】
図4を参照して、最適化統合マップ生成部116は、管路マップ51と最適化埋設環境分類マップ58aと地盤IDマップ56bとを統合して、最適化統合マップ58(
図15を参照)を生成する。
【0086】
図4を参照して、最適化統合マップ出力部118は、最適化統合マップ58を、マップ記憶部25(
図6を参照)に出力する。最適化統合マップ出力部118は、最適化統合マップ58を、ディスプレイ14(
図1を参照)、記憶媒体18(
図1を参照)またはストレージ19(
図1を参照)の少なくとも一つに出力する。
【0087】
図2を参照して、埋設管老朽度予測部130は、埋設管の老朽度(例えば、推定漏水事故率)を予測する。埋設管老朽度予測部130は、データ前処理部131と、埋設管老朽度算出部132と、埋設管老朽度予測結果生成部133と、埋設管老朽度予測結果出力部134とを含む。
【0088】
データ前処理部131は、最適化統合マップ58(
図15を参照)及び埋設管属性データ52(
図12を参照)から、最適化統合マップ58に含まれる管路IDについて、第3前処理済埋設管データ78(
図38を参照)を作成する。
【0089】
埋設管老朽度算出部132は、最適化統合マップ58に含まれる管路ID毎に、老朽度を算出する。老朽度は、例えば、推定漏水事故率である。推定漏水事故率は、単位時間及び単位距離当たりに発生する漏水事故の推定件数である。推定漏水事故率の単位は、例えば、件/年/kmである。
【0090】
埋設管老朽度予測結果生成部133は、埋設管老朽度予測結果65(
図18及び
図19を参照)を生成する。埋設管老朽度予測結果65は、埋設管老朽度予測テーブル66(
図18を参照)であってもよいし、埋設管老朽度予測マップ67(
図19を参照)であってもよいし、その両方であってもよい。埋設管老朽度予測マップ67では、管路ID毎に、埋設管の老朽度(例えば、推定漏水事故確率)が地図に示されている。埋設管老朽度予測テーブル66では、管路IDと老朽度(例えば、推定漏水事故率)とが互いに対応付けられている。
【0091】
埋設管老朽度予測結果出力部134(
図2を参照)は、埋設管老朽度予測結果65(
図18及び
図19を参照)を、埋設管老朽度予測結果記憶部29(
図6を参照)に出力する。埋設管老朽度予測結果出力部134は、埋設管老朽度予測結果65を、
図1に示されるディスプレイ14、記憶媒体18またはストレージ19の少なくとも一つに出力する。
【0092】
<対応表46の作成方法>
【0093】
図20を参照して、対応表46の作成方法を説明する。対応表46の作成は、対応表作成部90によって行われる。
【0094】
腐食速度算出部91は、調査番号毎に、調査管の腐食速度を算出する(ステップS1)。具体的には、腐食速度算出部91は、調査管データ記憶部21(
図6)から、調査管データ40(
図7を参照)を読み出す。腐食速度算出部91は、調査年(
図7を参照)と調査管の布設年(
図7を参照)との差を、当該調査管の埋設期間として算出する。腐食速度算出部91は、調査管の腐食深さ(
図7を参照)を調査管の埋設期間で割ることによって、調査管の腐食速度を算出する。
【0095】
地盤情報取得部92は、調査地点の住所(
図7を参照)における地盤情報を得る(ステップS2)。具体的には、地盤情報取得部92は、調査管データ記憶部21(
図6)から調査管データ40(
図7を参照)を読み出すとともに、地盤マップデータベース部22(
図6を参照)から地盤マップ42を読み出す。地盤情報取得部92は、調査管データ40(
図7を参照)と地盤マップデータベース部22とを参照して、調査地点の住所(
図7を参照)における地盤情報を得る。地盤ID割当部93は、地盤情報(例えば、表層地質と地形との組み合わせ)に対して地盤IDを割り当てる(ステップS3)。
【0096】
代表的腐食速度算出部94は、地盤ID毎に代表的腐食速度を算出する(ステップS4)。地盤ID毎の代表的腐食速度は、例えば、地盤ID毎の平均腐食速度または地盤ID毎の腐食速度の中央値である。地盤ID毎の代表的腐食速度が地盤ID毎の平均腐食速度であるとき、代表的腐食速度算出部94は、同一の地盤IDが割り当てられた調査管の腐食速度の平均値を算出する。地盤ID毎の代表的腐食速度が地盤ID毎の腐食速度の中央値であるとき、代表的腐食速度算出部94は、同一の地盤IDが割り当てられた調査管の腐食速度の50パーセンタイル値を算出する。
【0097】
埋設環境分類部95は、土壌の種類(
図7を参照)及び土壌比抵抗(
図7を参照)に基づいて、調査管データ40を、埋設環境A-Dに分類する(ステップS5)。対応表生成部96は、地盤情報と地盤IDと代表的腐食速度と埋設環境とを互いに対応づけて、対応表46(
図9を参照)を生成する(ステップS6)。対応表出力部97は、対応表46を、対応表記憶部23(
図6を参照)に出力する(ステップS7)。対応表46は、対応表記憶部23に格納される。
【0098】
<最適化統合マップ58の作成方法>
【0099】
図21から
図35を参照して、最適化埋設環境分類マップ58a(
図15を参照)を含む最適化統合マップ58(
図15を参照)の作成方法を説明する。最適化統合マップ58の作成方法は、埋設管データ受付部99(
図2を参照)及びマップ作成部100(
図2を参照)によって行われる。
【0100】
図21を参照して、本実施の形態の最適化埋設環境分類マップ58aの作成方法は、顧客から、埋設管データ50(
図11及び
図12を参照)と漏水事故データ53(
図13を参照)とを受け付けるステップ(ステップS11)と、一般統合マップ56(
図14を参照)を作成するステップ(ステップS12)と、最適化統合マップ58(
図15を参照)を作成するステップ(ステップS13)とを含む。
【0101】
図21を参照して、埋設管データ受付部99(
図2を参照)は、顧客から、埋設管データ50(
図11及び
図12を参照)と漏水事故データ53(
図13を参照)とを受け付ける(ステップS11)。埋設管データ50は、例えば、管路マップ51(
図11を参照)と、埋設管属性データ52(
図12を参照)とを含む。埋設管データ受付部99は、埋設管データ50と漏水事故データ53とを、埋設管データ記憶部24(
図6を参照)に出力する。埋設管データ50と漏水事故データ53とは、埋設管データ記憶部24に記憶される。
【0102】
図21を参照して、第1マップ作成部101(
図2を参照)は、一般統合マップ56(
図14を参照)を作成する(ステップS12)。
【0103】
具体的には、第1マップ作成部101は、埋設管データ記憶部24(
図6を参照)から、管路マップ51(
図11を参照)を読み出す。第1マップ作成部101は、地盤マップデータベース部22(
図6及び
図8を参照)から、管路マップ51に対応する地域の地盤マップ42(例えば、表層地質
図43及び地形分類
図44)を読み出す。第1マップ作成部101は、対応表記憶部23から、対応表46(
図9を参照)を読み出す。第1マップ作成部101は、管路マップ51に、管路マップ51に対応する地域の埋設環境と地盤IDとを重ね合わせて、一般統合マップ56(
図14を参照)を作成する。
【0104】
一般統合マップ56は、管路マップ51と、管路マップ51に対応する地域の一般埋設環境分類マップ56aと、管路マップ51に対応する地域の地盤IDマップ56bとが統合されたマップである。一般埋設環境分類マップ56aは、管路マップ51に対応する地域の埋設環境を示すマップである。地盤IDマップ56bは、管路マップ51に対応する地域の地盤IDを示すマップである。第1マップ作成部101は、一般統合マップ56(
図14を参照)を、マップ記憶部25に出力する。一般統合マップ56は、マップ記憶部25に格納される。
【0105】
図21を参照して、第2マップ作成部102(
図2を参照)は、漏水事故データ53を用いて、一般統合マップ56(一般埋設環境分類マップ56a)の埋設環境分類を最適化することによって、最適化統合マップ58(
図15を参照)を作成する(ステップS13)。
【0106】
図22を参照して、ステップS13を詳しく説明する。ステップS13は、一般埋設環境分類マップ56aに含まれる全ての地盤IDのうち、埋設環境分類の最適化の候補となる地盤IDを選択するステップ(ステップS20)と、ステップS20において選択された地盤IDの埋設環境分類を機械学習によって最適化して、最適化埋設環境分類マップ58aを生成するステップ(ステップS21)と、最適化統合マップ58を生成するステップ(ステップS22)と、最適化統合マップ58を出力するステップ(ステップS23)とを含む。
【0107】
図23を参照して、ステップS20を詳しく説明する。
【0108】
第2マップ作成部102(
図2を参照)は、マップ記憶部25(
図6を参照)から、一般統合マップ56を読み出す。地盤選択部103(
図4を参照)は、一般統合マップ56(一般埋設環境分類マップ56a)に含まれる全ての地盤IDのうち、埋設環境分類の変更の必要性がある地盤IDの暫定候補を選択する(ステップS24)。
【0109】
例えば、一般統合マップ56(一般埋設環境分類マップ56a)において相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類(例えば、埋設環境Aまたは埋設環境B)が与えられている地盤IDにおいて、漏水事故データ53(
図13を参照)上で漏水事故データ収集期間55(
図13を参照)内に漏水事故が発生していない場合には、当該地盤IDの埋設環境分類を、埋設管に対する腐食性がより低い埋設環境分類(例えば、埋設環境Cまたは埋設環境Dなど)に変更する必要性がある。そこで、地盤選択部103(
図4を参照)は、一般統合マップ56(一般埋設環境分類マップ56a)と漏水事故データ53とを参照して、一般統合マップ56(一般埋設環境分類マップ56a)において相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類(例えば、埋設環境Aまたは埋設環境B)が与えられている地盤IDのうち、漏水事故データ53上で漏水事故データ収集期間55内に漏水事故が発生していない地盤IDを、埋設環境分類の変更の必要性がある地盤IDの第1暫定候補として選択する。
【0110】
相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類は、複数の埋設環境分類(例えば、埋設環境分類A-D)のうち最も低い腐食性を示す埋設環境分類(例えば、埋設環境D)よりも高い腐食性を示す埋設環境分類である。相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類は、例えば、複数の埋設環境分類(例えば、埋設環境分類A-D)のうち最も高い腐食性を示す埋設環境分類(例えば、埋設環境A)と、複数の埋設環境分類(例えば、埋設環境分類A-D)のうち二番目に高い腐食性を示す埋設環境分類(例えば、埋設環境B)とを含む。
【0111】
また、一般統合マップ56(一般埋設環境分類マップ56a)において相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類(例えば、埋設環境B、埋設環境Cまたは埋設環境D)が与えられている地盤IDにおいて、漏水事故データ53(
図13を参照)上で漏水事故データ収集期間55(
図13を参照)内に漏水事故が発生している場合には、該地盤IDの埋設環境分類を、埋設管に対する腐食性がより高い埋設環境分類(例えば、埋設環境Aなど)に変更する必要性がある。そこで、地盤選択部103(
図4を参照)は、一般統合マップ56(一般埋設環境分類マップ56a)と漏水事故データ53とを参照して、一般統合マップ56(一般埋設環境分類マップ56a)において相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類(例えば、埋設環境B、埋設環境Cまたは埋設環境D)が与えられている地盤IDのうち、漏水事故データ53上で漏水事故データ収集期間55内に漏水事故が発生している地盤IDを、埋設環境分類の変更の必要性がある地盤IDの第2暫定候補として選択する。
【0112】
相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類は、複数の埋設環境分類(例えば、埋設環境分類A-D)のうち最も高い腐食性を示す埋設環境分類(例えば、埋設環境A)よりも低い腐食性を示す埋設環境分類である。相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類は、例えば、複数の埋設環境分類(例えば、埋設環境分類A-D)のうち最も低い腐食性を示す埋設環境分類(例えば、埋設環境D)と、複数の埋設環境分類(例えば、埋設環境分類A-D)のうち二番目に低い腐食性を示す埋設環境分類(例えば、埋設環境C)と、複数の埋設環境分類(例えば、埋設環境分類A-D)のうち三番目に低い腐食性を示す埋設環境分類(例えば、埋設環境B)とを含む。
【0113】
図23を参照して、地盤選択部103(
図4を参照)は、地盤IDの暫定候補から、埋設環境分類の変更が不要な地盤IDを除外する(ステップS25)。例えば、一般統合マップ56(一般埋設環境分類マップ56a)において相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類(例えば、埋設環境A)が付与されているが漏水事故データ53(
図13を参照)上で漏水事故データ収集期間55(
図13を参照)内に漏水事故が発生していない地盤IDであっても、埋設管に対する腐食性が高いことが明らかな地盤IDについては、埋設環境分類の変更は不要である。そこで、地盤選択部103は、一般統合マップ56(一般埋設環境分類マップ56a)と対応表46(
図9を参照)とを参照して、代表的腐食速度が基準腐食速度以上である地盤IDを、埋設管に対する腐食性が高いことが明らかな地盤IDとして、地盤IDの第1暫定候補から除外する。
【0114】
また、漏水事故率予測モデル28を用いて算出された、漏水事故データ収集期間55(
図13を参照)における単位時間当たりの推定漏水事故件数と、漏水事故データ53から得られる、漏水事故データ収集期間55における単位時間当たりの漏水事故実件数との間の差が基準値以下である地盤IDも、埋設環境分類の変更は不要である。そこで、地盤選択部103(
図4を参照)は、漏水事故率予測モデル28を用いて算出された、漏水事故データ収集期間55における単位時間当たりの推定漏水事故件数と、漏水事故データ53から得られる、漏水事故データ収集期間55における単位時間当たりの漏水事故実件数との間の差が基準値以下である地盤IDを、地盤IDの第2暫定候補から除外する。
【0115】
具体的には、
図24を参照して、推定漏水事故件数算出部105(
図4を参照)は、漏水事故率予測モデル28(
図6及び
図17を参照)及び一般統合マップ56(
図14を参照)を用いて、地盤IDの第2暫定候補毎に、漏水事故データ収集期間55における単位時間当たりの推定漏水事故件数を算出する(ステップS26)。
図25を参照して、ステップS26を詳しく説明する。
【0116】
データ前処理部104(
図4を参照)は、地盤IDの第2暫定候補、一般統合マップ56(
図14を参照)、埋設管データ50(
図11及び
図12を参照)及び漏水事故データ53(
図13を参照)から、地盤IDの第2暫定候補に含まれる管路IDについて第1前処理済埋設管データ70(
図26を参照)を作成する(ステップS31)。
図27を参照して、ステップS31を詳しく説明する。
【0117】
データ前処理部104は、地盤IDの第2暫定候補を参照して、埋設管データ記憶部24(
図6を参照)から、地盤IDの第2暫定候補に含まれる管路IDの埋設管属性データ52(
図12を参照)及び漏水事故データ53(
図13を参照)を読み出す(ステップS35)。
【0118】
データ前処理部104(
図4を参照)は、地盤IDの第2暫定候補に含まれる管路ID毎に、漏水事故データ収集期間55(
図13を参照)の始期と終期の間の中間期における埋設管の埋設期間T
mを算出する(ステップS36)。具体的には、データ前処理部104は、漏水事故データ収集期間55の始期と漏水事故データ収集期間55の終期との和を二で割ることによって、漏水事故データ収集期間55の中間期を算出する。データ前処理部104は、地盤IDの第2暫定候補に含まれる管路ID毎に、漏水事故データ収集期間55の中間期と埋設管の布設年(
図12を参照)との間の差を、漏水事故データ収集期間55の中間期における埋設管の埋設期間T
mとして算出する。
【0119】
データ前処理部104は、地盤IDの第2暫定候補に含まれる管路ID毎に、埋設管の公称管厚を特定する(ステップS37)。具体的には、データ前処理部104は、公称管厚データベース部26(
図6を参照)から公称管厚データ60(
図16を参照)を読み出す。データ前処理部104は、埋設管属性データ52の布設年、呼び径、接合形式及び管厚の種類(
図12を参照)と公称管厚データ60とを参照して、地盤IDの第2暫定候補に含まれる管路ID毎に、埋設管の公称管厚を特定する。
【0120】
データ前処理部104は、地盤IDの第2暫定候補及び一般統合マップ56(
図14を参照)を参照して、地盤IDの第2暫定候補に含まれる管路ID毎に、埋設管の埋設環境(以下、「第1埋設環境」という。)を特定する(ステップS38)。
【0121】
データ前処理部104は、管路ID、埋設期間T
m、公称管厚、第1埋設環境及び管路長(
図12を参照)を組み合わせて、地盤IDの第2暫定候補に含まれる管路IDについて第1前処理済埋設管データ70(
図26を参照)を生成する(ステップS39)。
【0122】
図25を参照して、推定漏水事故件数算出部105(
図4を参照)は、地盤IDの第2暫定候補に含まれる管路ID毎に、埋設管の推定漏水事故率R
mを算出する(ステップS32)。
【0123】
具体的には、推定漏水事故件数算出部105は、第1前処理済埋設管データ70から、管路IDと、当該管路IDに対応する第1埋設環境及び公称管厚とを読み出す。推定漏水事故件数算出部105は、漏水事故率予測モデル記憶部27に記憶されている複数の漏水事故率予測モデル28のうち、読み出された第1埋設環境及び公称管厚に適した漏水事故率予測モデル28を選択する。例えば、読み出された第1埋設環境が埋設環境Bでありかつ読み出された公称管厚が7.5mmである場合、
図17の埋設環境Bの曲線が、読み出された第1埋設環境及び公称管厚に適した漏水事故率予測モデル28である。
【0124】
推定漏水事故件数算出部105は、第1前処理済埋設管データ70から、管路IDと、当該管路IDに対応する埋設期間T
mとを読み出す。推定漏水事故件数算出部105は、選択された漏水事故率予測モデル28に埋設期間T
mを入力して、管路ID毎に、漏水事故データ収集期間55の中間期における推定漏水事故率R
mを算出する(
図17を参照)。推定漏水事故率R
mの単位は、例えば、件/年/kmである。
【0125】
図25を参照して、推定漏水事故件数算出部105(
図4を参照)は、地盤IDの第2暫定候補毎に、漏水事故データ収集期間55における単位時間当たりの推定漏水事故件数を算出する(ステップS33)。例えば、単位時間は1年であり、推定漏水事故件数の単位は、件/年である。具体的には、推定漏水事故件数算出部105は、第1前処理済埋設管データ70(
図26を参照)から、地盤IDの第2暫定候補に含まれる管路IDと、当該管路IDに対応する管路長とを読み出す。推定漏水事故件数算出部105は、各管路IDの推定漏水事故率R
mと各管路IDの管路長との積を算出する。推定漏水事故件数算出部105は、地盤IDの第2暫定候補の各々について、当該積の和を算出する。こうして、推定漏水事故件数算出部105は、地盤IDの第2暫定候補毎に、漏水事故データ収集期間55における単位時間当たりの推定漏水事故件数を算出する。
【0126】
図24を参照して、漏水事故実件数算出部106(
図4を参照)は、一般統合マップ56と漏水事故データ53とを参照して、地盤IDの第2暫定候補毎に、漏水事故データ収集期間55における単位時間当たりの漏水事故実件数を算出する(ステップS27)。例えば、単位時間は1年であり、単位時間当たりの漏水事故実件数は、漏水事故データ収集期間55内に各地盤IDにおいて発生した漏水事故実件数の年平均であり、単位時間当たりの漏水事故実件数の単位は、件/年である。
【0127】
具体的には、漏水事故実件数算出部106は、地盤IDの第2暫定候補と漏水事故データ53とを参照して、地盤IDの第2暫定候補毎に、漏水事故データ収集期間55内に発生した漏水事故実件数を算出する。漏水事故実件数算出部106は、漏水事故データ収集期間55内に発生した地盤ID毎の漏水事故実件数を、漏水事故データ収集期間55で割る。こうして、漏水事故実件数算出部106は、地盤IDの第2暫定候補毎に、漏水事故データ収集期間55における単位時間当たりの漏水事故実件数を算出する。
【0128】
図24を参照して、判定部107(
図4を参照)は、地盤IDの第2暫定候補毎に、ステップS26において算出された推定漏水事故件数と、ステップS27において算出された漏水事故実件数との間の差が基準値以下であるか否かを判定する(ステップS28)。判定部107は、上記差が基準値以下である地盤IDを、地盤IDの第2暫定候補から除外する(ステップS29)。判定部107は、上記差が基準値超である地盤IDを、地盤IDの第2暫定候補に残す(ステップS30)。こうして、地盤選択部103は、一般統合マップ56に含まれる全ての地盤IDのうち、埋設環境分類の最適化の候補となる地盤IDを選択する。
【0129】
図22を参照して、ステップS21は、最適化埋設環境分類マップ生成部110によって行われる。
図22及び
図28から
図35を参照して、ステップS21を詳しく説明する。ステップS21における機械学習の例として、遺伝的アルゴリズム、進化的アルゴリズムもしくは群知能のような進化計算法、貪欲法、近傍探索法、局所探索法または数理最適化法などが用いられ得る。こうして、最適化された埋設環境分類が反映された最適化埋設環境分類マップ58a(
図15を参照)が作成される。一例として、遺伝的アルゴリズムを用いた、最適化埋設環境分類マップ58aの作成方法を説明する。
【0130】
図28を参照して、初期集団生成部111は、一般埋設環境分類マップ56aのうち、ステップS20(
図22を参照)において選択された地盤IDの埋設環境分類をランダムに変更することによって、複数の埋設環境分類マップ候補により構成される初期集団を生成する(ステップS40)。複数の埋設環境マップ候補の各々は、「個体」と呼ばれる。個体は、複数の遺伝子によって構成されている。
図29に示されるように、例えば、複数の遺伝子は、各々、ステップS21において選択された地盤IDの埋設環境分類の変更段階数である。
【0131】
具体的には、ある地盤IDの埋設環境分類を埋設環境Bから埋設環境Aに変更する場合のように、ある地盤IDの埋設環境分類を埋設管に対する腐食性が一段階高い埋設環境分類に変更する場合、1の遺伝子として表現する。ある地盤IDの埋設環境分類を埋設環境Cから埋設環境Dに変更する場合のように、ある地盤IDの埋設環境分類を埋設管に対する腐食性が一段階低い埋設環境分類に変更する場合、-1の遺伝子として表現する。ある地盤IDの埋設環境分類を埋設環境Cから埋設環境Aに変更する場合のように、ある地盤IDの埋設環境分類を埋設管に対する腐食性が二段階高い埋設環境分類に変更する場合、2の遺伝子として表現する。ある地盤IDの埋設環境分類を埋設環境Bから埋設環境Dに変更する場合のように、ある地盤IDの埋設環境分類を埋設管に対する腐食性が二段階低い埋設環境分類に変更する場合、-2の遺伝子として表現する。
【0132】
図28を参照して、適応度算出部112(
図4を参照)は、ステップS40において生成される初期集団またはステップS43において生成される新たな世代の集団(以下、初期集団と新たな世代の集団とをまとめて「現世代の集団」と呼ぶ。)を構成する各個体の適応度を算出する(ステップS41)。適応度の例は、後に説明する。
【0133】
判定部113(
図4を参照)は、新たな世代の集団の生成を終了するための終了判定を行う。判定部113は、終了条件が満たされているか否かを判定する(ステップS42)。終了条件は、例えば、所定の世代数(例えば、50世代)連続して、集団のうち最も適応度が高い個体が同一であることである。
【0134】
ステップS42において終了条件が満たされない場合、新世代集団生成部114は、新たな世代の集団を生成する(ステップS43)。
図30を参照して、ステップS43の例を説明する。
【0135】
ステップS44では、新世代集団生成部114(
図4を参照)は、現世代の集団の中から次世代の親となる複数の個体を選択する。例えば、新世代集団生成部114は、現世代の集団を構成する個体のうち適応度が高い個体を選択し、現世代の集団を構成する個体のうち適応度が低い個体を淘汰(削除)する(エリート戦略)。
【0136】
ステップS45では、新世代集団生成部114(
図4を参照)は、ステップS44において選択された個体から二つの個体を選択し、当該二つの個体の間で遺伝子を入れ替える交叉処理を実行する。遺伝子が組み換えられた新たな個体が生成される。ステップS45において生成される個体の数は、例えば、ステップS44において淘汰(削除)された個体の数に等しい。こうして、新世代集団生成部114は、ステップS44において選択された個体とステップS45において生成された新たな個体とによって構成される新たな集団を生成する。交叉処理の手法としては、例えば、一点交叉法、多点交叉法または一様交叉法などのような公知の方法を用いることができる。
【0137】
ステップS46では、新世代集団生成部114(
図4を参照)は、ステップS45において生成された新たな集団を構成する個体に対して、所定の確率で遺伝子をランダムに入れ替える突然変異処理を行う。突然変異処理の手法としては、公知の手法を用いることができる。こうして、新たな世代の集団が生成される。
【0138】
それから、ステップS41に戻って、適応度算出部112(
図4を参照)は、新たな世代の集団を構成する各個体の適応度を算出する。そして、ステップS42の終了条件が満たされるまで、ステップS41及びステップS43を繰り返し実行する。
【0139】
ステップS42において終了条件が満たされた場合、最適化埋設環境分類マップ生成部110(
図4を参照)は、現世代の集団を構成する個体の中で最も適応度が高い個体を選択する(ステップS47)。最適化埋設環境分類マップ生成部110は、一般埋設環境分類マップ56aに含まれる地盤IDのうち、ステップS47において選択された個体に含まれる非ゼロの遺伝子に対応する地盤IDの埋設環境分類を、当該非ゼロの遺伝子によって表現される埋設環境分類の変更段階数分変更する。こうして、最適化された埋設環境分類が反映された最適化埋設環境分類マップ58a(
図15を参照)が作成される。
【0140】
図22を参照して、最適化統合マップ生成部116(
図4を参照)は、管路マップ51と最適化埋設環境分類マップ58aと地盤IDマップ56bとを統合して、最適化統合マップ58(
図15を参照)を生成する(ステップS22)。ステップS23では、最適化統合マップ出力部118(
図4を参照)は、最適化統合マップ58を、マップ記憶部25(
図6を参照)に出力する。最適化統合マップ58は、マップ記憶部25に格納される。最適化統合マップ出力部118は、最適化統合マップ58を、ディスプレイ14(
図1を参照)、記憶媒体18(
図1を参照)またはストレージ19(
図1を参照)の少なくとも一つ出力する。
【0141】
図31から
図35を参照して、現世代の集団を構成する各個体の適応度を算出するステップ(ステップS41)を詳しく説明する。
【0142】
図31を参照して、修正統合マップ作成部120(
図5を参照)は、個体に対応する修正統合マップを作成する(ステップS50)。具体的には、修正統合マップ作成部120は、一般統合マップ56に含まれる地盤IDのうち、個体に含まれる非ゼロの遺伝子に対応する地盤IDの埋設環境分類を、当該非ゼロの遺伝子によって表現される埋設環境分類の変更段階数分変更する。こうして、個体に対応する修正統合マップが作成される。
【0143】
図31を参照して、データ前処理部121(
図5を参照)は、修正統合マップ、埋設管属性データ52(
図12を参照)及び漏水事故データ53(
図13を参照)から、修正統合マップに含まれる管路IDについて、第2前処理済埋設管データ74(
図32を参照)を作成する(ステップS51)。第2前処理済埋設管データ74は、第1前処理済埋設管データ70(
図26を参照)と同様の方法によって作成されるが、一般統合マップ(
図14を参照)に代えて、修正統合マップに基づいて作成される。そのため、第2前処理済埋設管データ74は、第1前処理済埋設管データ70(
図26を参照)の第1埋設環境に代えて、修正統合マップに含まれる修正埋設環境を含む。
【0144】
具体的には、
図33を参照して、データ前処理部121(
図5を参照)は、修正統合マップを参照して、埋設管データ記憶部24(
図6を参照)から、修正統合マップに含まれる管路IDの埋設管属性データ52及び漏水事故データ53を読み出す(ステップS60)。
【0145】
データ前処理部121(
図5を参照)は、修正統合マップに含まれる管路ID毎に、漏水事故データ収集期間55の始期と終期の間の中間期における埋設管の埋設期間T
mを算出する(ステップS61)。具体的には、データ前処理部121は、漏水事故データ収集期間55の始期と漏水事故データ収集期間55の終期との和を二で割ることによって、漏水事故データ収集期間55の中間期を算出する。データ前処理部121は、修正統合マップに含まれる管路ID毎に、漏水事故データ収集期間55の中間期と埋設管の布設年(
図12を参照)との間の差を、漏水事故データ収集期間55の中間期における埋設管の埋設期間T
mとして算出する。
【0146】
データ前処理部121(
図5を参照)は、修正統合マップに含まれる管路ID毎に、埋設管の公称管厚を特定する(ステップS62)。具体的には、データ前処理部121は、公称管厚データベース部26(
図6を参照)から公称管厚データ60(
図16を参照)を読み出す。データ前処理部121は、埋設管属性データ52の布設年、呼び径、接合形式及び管厚の種類(
図12を参照)と公称管厚データ60とを参照して、修正統合マップに含まれる管路ID毎に、埋設管の公称管厚を特定する。
【0147】
データ前処理部121(
図5を参照)は、修正統合マップを参照して、修正統合マップに含まれる管路ID毎に、埋設管の修正埋設環境を特定する(ステップS63)。
【0148】
データ前処理部121(
図5を参照)は、管路ID、埋設期間T
m、公称管厚及び修正埋設環境を組み合わせて、修正統合マップに含まれる管路IDについて第2前処理済埋設管データ74(
図32を参照)を生成する(ステップS64)。
【0149】
図31を参照して、推定漏水事故率算出部122(
図5を参照)は、修正統合マップに含まれる管路ID毎に、推定漏水事故率R
mを算出する(ステップS52)。具体的には、推定漏水事故率算出部122は、第2前処理済埋設管データ74(
図32を参照)から、管路IDと、当該管路IDに対応する修正埋設環境及び公称管厚とを読み出す。推定漏水事故率算出部122は、漏水事故率予測モデル記憶部27(
図6を参照)に記憶されている複数の漏水事故率予測モデル28(
図6を参照)のうち、読み出された修正埋設環境及び公称管厚に適した漏水事故率予測モデル28を選択する。
【0150】
推定漏水事故率算出部122は、第2前処理済埋設管データ74から、管路IDと、当該管路IDに対応する埋設期間Tmとを読み出す。推定漏水事故率算出部122は、選択された漏水事故率予測モデル28に埋設期間Tmを入力して、管路ID毎に、漏水事故データ収集期間55の中間期における推定漏水事故率Rmを算出する。推定漏水事故率Rmの単位は、例えば、件/年/kmである。
【0151】
図31を参照して、推定漏水事故率結果作成部123は、修正統合マップを参照して、埋設管データ記憶部24(
図6を参照)から、修正統合マップに含まれる管路IDの管路長(
図12を参照)を読み出す。推定漏水事故率結果作成部123は、管路IDと推定漏水事故率R
mと管路長(
図12を参照)とを互いに対応付ける。こうして、推定漏水事故率結果作成部123は、個体の推定漏水事故率結果76(
図34を参照)を作成する(ステップS53)。
【0152】
図31を参照して、個体の推定漏水事故率結果76(
図34を参照)及び漏水事故データ53(
図13を参照)を参照して、漏水事故データ収集期間55の始期に、推定漏水事故率R
mが高い順に個体の推定漏水事故率結果76に含まれる管路IDの少なくとも一部を新しい管に更新した時に残る漏水事故件数と、推定漏水事故率R
mが高い順に個体の推定漏水事故率結果76に含まれる管路IDの少なくとも一部を新しい管に更新した時の管路更新率とを算出する(ステップS54)。残る漏水事故件数及び管路更新率の算出方法の例を説明する。
【0153】
漏水事故データ収集期間55(
図13を参照)の始期に、推定漏水事故率R
mが高い順に個体の推定漏水事故率結果76(
図34を参照)に含まれる管路IDの一部を新しい管に更新すると仮定した場合、この管の更新によって、漏水事故データ53に含まれる漏水事故の一部の発生を未然に防ぐことができる。
【0154】
そこで、残る漏水事故件数算出部124(
図5を参照)は、漏水事故データ53(
図13を参照)に含まれる漏水事故の総件数から、漏水事故データ収集期間55の始期に、推定漏水事故率R
mが高い順に個体の推定漏水事故率結果76に含まれる管路IDの一部を新しい管に更新したときに、未然に発生を防ぐことができた漏水事故の件数を差し引くことによって、残る漏水事故件数を算出する。管更新率算出部125(
図5を参照)は、漏水事故データ収集期間55の始期に更新された管路長を、個体の推定漏水事故率結果76に含まれる管路IDの総管路長で割ることによって、管更新率を算出する。
【0155】
図31を参照して、適応度算出部112(
図4を参照)は、個体の適応度を算出する(ステップS55)。具体的には、適応度算出部112は、管路更新率と残る漏水事故件数との間の関係を示すグラフ(
図35を参照)を作成する。このグラフの横軸は管路更新率であり、このグラフの縦軸は残る漏水事故件数である。縦軸と横軸と管路更新率と残る漏水事故件数との間の関係を示す線とによって囲まれる面積S(
図35の斜線部)が小さい程、個体に対応する修正統合マップが実際の埋設環境をよりよく反映していると考えられる。そこで、適応度算出部112は、面積Sの逆数を、個体の適応度として算出する。
【0156】
<埋設管老朽度予測方法>
【0157】
図36から
図40を参照して、本実施の形態の埋設管老朽度予測方法を説明する。埋設管老朽度予測方法は、埋設管老朽度予測部130によって行われる。埋設管の老朽度の一例は、推定漏水事故率である。
【0158】
図36を参照して、埋設管老朽度予測部130は、最適化統合マップ58(
図15を参照)と埋設管老朽度予測モデル(例えば、漏水事故率予測モデル28(
図6及び
図40を参照))とを用いて、管路ID毎に老朽度(例えば、推定漏水事故率)を算出する(ステップS70)。ステップS70において算出される老朽度(例えば、推定漏水事故率)は、現在年における管路ID毎の老朽度(例えば、推定漏水事故率)であってもよいし、将来年における管路ID毎の老朽度(例えば、推定漏水事故率)であってもよいし、その両方であってもよい。ステップS70を詳しく説明する。
【0159】
図37を参照して、データ前処理部131(
図2を参照)は、最適化統合マップ58(
図15を参照)及び埋設管属性データ52(
図12を参照)から、最適化統合マップ58に含まれる管路IDについて、第3前処理済埋設管データ78(
図38を参照)を作成する(ステップS71)。
【0160】
具体的には、
図39を参照して、データ前処理部131は、マップ記憶部25(
図6を参照)から最適化統合マップ58を読み出す。データ前処理部131は、埋設管データ記憶部24(
図6を参照)から、最適化統合マップ58を参照して、最適化統合マップ58に含まれる管路IDの埋設管属性データ52を読み出す(ステップS72)。
【0161】
データ前処理部131(
図2を参照)は、最適化統合マップ58に含まれる管路ID毎に、埋設管の埋設期間を算出する(ステップS73)。例えば、現在年における管路ID毎の推定漏水事故率を算出する場合には、データ前処理部131は、最適化統合マップ58に含まれる管路ID毎に、現在年と埋設管の布設年(
図12を参照)との間の差を、埋設管の埋設期間T
3として算出する。将来年における管路ID毎の推定漏水事故率を算出する場合には、データ前処理部131は、最適化統合マップ58に含まれる管路ID毎に、将来年と埋設管の布設年(
図12を参照)との間の差を、埋設管の埋設期間T
4として算出する。
【0162】
データ前処理部131(
図2を参照)は、最適化統合マップ58に含まれる管路ID毎に、埋設管の公称管厚を特定する(ステップS74)。具体的には、データ前処理部131は、公称管厚データベース部26(
図6を参照)から公称管厚データ60(
図16を参照)を読み出す。データ前処理部131は、埋設管属性データ52の布設年、呼び径、接合形式及び管厚の種類(
図12を参照)と公称管厚データ60とを参照して、最適化統合マップ58に含まれる管路ID毎に、埋設管の公称管厚を特定する。
【0163】
データ前処理部131(
図2を参照)は、最適化統合マップ58を参照して、最適化統合マップ58に含まれる管路ID毎に、埋設管の埋設環境(第2埋設環境)を特定する(ステップS75)。
【0164】
データ前処理部131(
図2を参照)は、管路ID、埋設期間(例えば、埋設期間T
3,T
4)、公称管厚及び第2埋設環境を組み合わせて、最適化統合マップ58に含まれる管路IDについて第3前処理済埋設管データ78(
図38を参照)を生成する(ステップS76)。
【0165】
図37を参照して、埋設管老朽度算出部132は、最適化統合マップ58に含まれる管路ID毎に、老朽度(例えば、推定漏水事故率)を算出する(ステップS77)。
【0166】
具体的には、埋設管老朽度算出部132は、第3前処理済埋設管データ78(
図38を参照)から、管路IDと、当該管路IDに対応する第2埋設環境及び公称管厚とを読み出す。埋設管老朽度算出部132は、漏水事故率予測モデル記憶部27に記憶されている複数の漏水事故率予測モデル28(
図6及び
図40を参照)のうち、読み出された第2埋設環境及び公称管厚に適した漏水事故率予測モデル28を選択する。例えば、読み出された第2埋設環境が埋設環境Bでありかつ読み出された公称管厚が7.5mmである場合、
図40の埋設環境Bの曲線が、読み出された第2埋設環境及び公称管厚に適した漏水事故率予測モデル28である。
【0167】
埋設管老朽度算出部132は、第3前処理済埋設管データ78(
図38を参照)から、管路IDと、当該管路IDに対応する埋設期間(例えば、埋設期間T
3,T
4)とを読み出す。埋設管老朽度算出部132は、選択された漏水事故率予測モデル28に埋設管の埋設期間(
図38を参照)を入力して、管路ID毎に老朽度(例えば、推定漏水事故率)を算出する(
図40を参照)。推定漏水事故率は、単位時間及び単位距離当たりに発生する漏水事故の推定件数である。推定漏水事故率の単位は、例えば、件/年/kmである。埋設管老朽度算出部132は、現在年における管路ID毎の老朽度(例えば、推定漏水事故率R
3)を算出してもよいし、将来年における管路ID毎の老朽度(例えば、推定漏水事故率R
4)を算出してもよいし、その両方を算出してもよい。
【0168】
埋設管老朽度予測結果生成部133は、埋設管老朽度予測結果65を生成する(ステップS80)。埋設管老朽度予測結果65は、埋設管老朽度予測テーブル66(
図18を参照)であってもよいし、埋設管老朽度予測マップ67(
図19を参照)であってもよいし、その両方であってもよい。
【0169】
具体的には、埋設管老朽度予測結果生成部133は、管路IDと埋設管の老朽度(例えば、推定漏水事故率)と埋設管の老朽度が算出された時期(例えば、現在年または将来年)とを互いに対応付けて、埋設管老朽度予測テーブル66(
図18を参照)を作成する。埋設管老朽度予測結果生成部133は、埋設管データ記憶部24(
図6を参照)から、管路マップ51(
図11を参照)を読み出す。埋設管老朽度予測結果生成部133は、管路ID毎の埋設管の老朽度(例えば、推定漏水事故率)と埋設管の老朽度が算出された時期(例えば、現在年または将来年)とを管路マップ51に反映させて、埋設管老朽度予測マップ67(
図19を参照)を作成する。
【0170】
図36を参照して、ステップS81では、埋設管老朽度予測結果出力部134(
図2を参照)は、埋設管老朽度予測結果65を、埋設管老朽度予測結果記憶部29に出力する。埋設管老朽度予測結果65は、埋設管老朽度予測結果記憶部29に格納される。埋設管老朽度予測結果出力部134(
図2を参照)は、埋設管老朽度予測結果65を、
図1に示されるディスプレイ14、記憶媒体18またはストレージ19の少なくとも一つに出力する。
【0171】
埋設環境分類マップ作成プログラム31(
図6を参照)は、本実施の形態の埋設環境分類マップ作成方法をプロセッサ12(
図1を参照)に実行させる。マップ作成部100(
図2を参照)は、埋設環境分類マップ作成プログラム31をプロセッサ12によって実行することによって実現される。
【0172】
埋設管老朽度予測プログラム32(
図6を参照)は、本実施の形態の埋設管老朽度予測方法をプロセッサ12(
図1を参照)に実行させる。埋設管老朽度予測部130(
図2を参照)は、埋設管老朽度予測プログラム32をプロセッサ12によって実行することによって実現される。
【0173】
対応表作成プログラム33(
図6を参照)は、本実施の形態の対応表作成方法をプロセッサ12(
図1を参照)に実行させる。対応表作成部90(
図2を参照)は、対応表作成プログラム33をプロセッサ12によって実行することによって実現される。
【0174】
本実施の形態のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一過的なコンピュータ可読記録媒体、例えば記憶媒体18)は、埋設環境分類マップ作成プログラム31、埋設管老朽度予測プログラム32及び対応表作成プログラム33のようなプログラムが記録されてもよい。
【0175】
(変形例)
【0176】
図41を参照して、本実施の形態の変形例では、本実施の形態の埋設管老朽度予測装置1の機能は、埋設管老朽度予測システム7によって実現されてもよい。埋設管老朽度予測システム7は、埋設管老朽度予測装置1bと、埋設環境分類マップ作成装置2と、対応表作成装置3と、埋設管データ受付装置4と、記憶装置5とを含む。埋設管老朽度予測装置1bと埋設環境分類マップ作成装置2と対応表作成装置3と埋設管データ受付装置4と記憶装置5とは、インターネットまたはイントラネットのような通信ネットワーク6を通して、互いに通信可能に接続されている。埋設管老朽度予測装置1b、埋設環境分類マップ作成装置2、対応表作成装置3及び埋設管データ受付装置4の各々のハードウエア構成は、
図1に示されているハードウエア構成と同じである。記憶装置5は、例えば、ハードディスクまたは記憶媒体ドライブ17を含む。
【0177】
対応表作成装置3は、対応表作成部90(
図2を参照)の機能を有している。対応表作成装置3は、対応表46を作成する。埋設管データ受付装置4は、埋設管データ受付部99の機能を有している。埋設管データ受付装置4は、顧客から埋設管データ50を受け付ける。記憶装置5は、記憶部20の機能を有している。
【0178】
埋設環境分類マップ作成装置2は、マップ作成部100(
図2を参照)の機能を有している。埋設環境分類マップ作成装置2は、第1マップ作成部101と、第2マップ作成部102とを含む。
【0179】
埋設管老朽度予測装置1bは、埋設管老朽度予測部130の機能を有している。具体的には、埋設管老朽度予測装置1bは、データ前処理部131と、埋設管老朽度算出部132と、埋設管老朽度予測結果生成部133と、埋設管老朽度予測結果出力部134とを含む。
【0180】
本実施の形態及びその変形例では、埋設環境分類の数を埋設環境A-Dの四つとしたが、埋設環境分類の数は四つに限られない。
【0181】
本実施の形態の埋設環境分類マップ作成装置2、埋設管老朽度予測装置1、埋設環境分類マップ作成方法、埋設管老朽度予測方法及びプログラムの効果を説明する。
【0182】
本実施の形態の埋設環境分類マップ作成装置2は、第1マップ作成部101と、第2マップ作成部102とを備える。第1マップ作成部101は、埋設管の地図である管路マップ51と一般に入手可能な地盤マップ42とから、管路マップ51に対応する地域の一般埋設環境分類マップ56aを作成する。第2マップ作成部102は、地盤選択部103と、最適化埋設環境分類マップ生成部110とを含む。地盤選択部103は、埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データ53に基づいて、一般埋設環境分類マップ56aの一部の地盤を選択する。最適化埋設環境分類マップ生成部110は、当該一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって、管路マップ51に対応する地域に最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を作成する。
【0183】
そのため、埋設管の老朽度のより正確な予測を可能にする最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を提供することができる。
【0184】
本実施の形態の埋設環境分類マップ作成装置2では、第2マップ作成部102は、最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を出力する最適化埋設環境分類マップ出力部(最適化統合マップ出力部118)を含む。
【0185】
そのため、顧客が埋設管の更新計画を立案することを容易にする埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を、顧客に提供することができる。
【0186】
本実施の形態の埋設環境分類マップ作成装置2では、当該一部の地盤は、一般埋設環境分類マップ56aにおいて相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、漏水事故データ53において漏水事故が発生していない第1地盤を含む。
【0187】
そのため、埋設管の老朽度のより正確な予測を可能にする最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を提供することができる。
【0188】
本実施の形態の埋設環境分類マップ作成装置2では、当該一部の地盤は、一般埋設環境分類マップ56aにおいて相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、漏水事故データ53において漏水事故が発生した第2地盤を含む。
【0189】
そのため、埋設管の老朽度のより正確な予測を可能にする最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を提供することができる。
【0190】
本実施の形態の埋設管老朽度予測装置1,1bは、埋設管老朽度算出部132を備える。埋設管老朽度算出部132は、埋設管の地図である管路マップ51に対応する地域に最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)によって特定される埋設管の各々の埋設環境と、埋設管の各々の埋設期間に関する第1情報(例えば、埋設管の布設年)と、埋設管の各々の管厚に関連する第2情報(例えば、埋設管の各々の呼び径、接合形式及び管厚の種類)と、埋設管老朽度予測モデル(例えば、漏水事故率予測モデル28)とから、埋設管の各々の老朽度(例えば、推定漏水事故率)を算出する。最適化された埋設環境分類マップは、管路マップ51に対応する地域の一般埋設環境分類マップ56aの一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって作成されている。一般埋設環境分類マップ56aは、管路マップ51と一般に入手可能な地盤マップ42とから作成されている。一部の地盤は、埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データ53に基づいて、一般埋設環境分類マップ56aから選択されている。
【0191】
そのため、管路マップ51に対応する地域に最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を用いて、埋設管の老朽度の予測が可能になる。
【0192】
本実施の形態の埋設管老朽度予測装置1,1bは、埋設管の各々の老朽度(例えば、推定漏水事故率)を示す地図である埋設管老朽度予測マップ67を出力する埋設管老朽度予測結果出力部134をさらに備える。
【0193】
そのため、顧客が埋設管の更新計画を立案することを容易にする埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を、顧客に提供することができる。
【0194】
本実施の形態の埋設管老朽度予測装置1,1bでは、一部の地盤は、一般埋設環境分類マップ56aにおいて相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、漏水事故データ53において漏水事故が発生していない第1地盤を含む。
【0195】
そのため、管路マップ51に対応する地域に最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を用いて、埋設管の老朽度のより正確な予測が可能になる。
【0196】
本実施の形態の埋設管老朽度予測装置1,1bでは、一部の地盤は、一般埋設環境分類マップ56aにおいて相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、漏水事故データ53において漏水事故が発生した第2地盤を含む。
【0197】
そのため、管路マップ51に対応する地域に最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を用いて、埋設管の老朽度のより正確な予測が可能になる。
【0198】
本実施の形態の埋設管老朽度予測装置1,1bでは、埋設管の各々の老朽度は、単位時間及び単位距離当たりに埋設管の各々に漏水事故が発生する確率(推定漏水事故率)である。
【0199】
そのため、管路マップ51に対応する地域に最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を用いて、埋設管の老朽度のより正確な予測が可能になる。
【0200】
本実施の形態の埋設環境分類マップ作成方法は、埋設管の地図である管路マップ51と一般に入手可能な地盤マップ42とから、管路マップ51に対応する地域の一般埋設環境分類マップ56aを作成するステップ(ステップS12)と、埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データ53に基づいて、一般埋設環境分類マップ56aの一部の地盤を選択するステップと、一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって、管路マップ51に対応する地域に最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を作成するステップ(ステップS21)とを備える。
【0201】
そのため、埋設管の老朽度のより正確な予測を可能にする最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を提供することができる。
【0202】
本実施の形態の埋設環境分類マップ作成方法は、最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を出力するステップ(ステップS23)をさらに備える。
【0203】
そのため、顧客が埋設管の更新計画を立案することを容易にする埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を、顧客に提供することができる。
【0204】
本実施の形態の埋設環境分類マップ作成方法では、一部の地盤は、一般埋設環境分類マップ56aにおいて相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、漏水事故データ53において漏水事故が発生していない第1地盤を含む。
【0205】
そのため、埋設管の老朽度のより正確な予測を可能にする最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を提供することができる。
【0206】
本実施の形態の埋設環境分類マップ作成方法では、一部の地盤は、一般埋設環境分類マップ56aにおいて相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、漏水事故データ53において漏水事故が発生した第2地盤を含む。
【0207】
そのため、埋設管の老朽度のより正確な予測を可能にする最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を提供することができる。
【0208】
本実施の形態の埋設管老朽度予測方法は、埋設管の地図である管路マップ51に対応する地域に最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)によって特定される埋設管の各々の埋設環境と、埋設管の各々の埋設期間に関する第1情報(例えば、埋設管の布設年)と、埋設管の各々の管厚に関連する第2情報(例えば、埋設管の各々の呼び径、接合形式及び管厚の種類)と、埋設管老朽度予測モデル(例えば、漏水事故率予測モデル28)とから、埋設管の各々の老朽度(例えば、推定漏水事故率)を算出するステップ(ステップS70)を備える。最適化された埋設環境分類マップは、地域の一般埋設環境分類マップ56aの一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって作成されている。一般埋設環境分類マップ56aは、管路マップ51と一般に入手可能な地盤マップ42とから作成されている。一部の地盤は、埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データ53に基づいて、一般埋設環境分類マップ56aから選択されている。
【0209】
そのため、管路マップ51に対応する地域に最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を用いて、埋設管の老朽度のより正確な予測が可能になる。
【0210】
本実施の形態の埋設管老朽度予測方法は、埋設管の各々の老朽度(例えば、推定漏水事故率)を示す地図である埋設管老朽度予測マップ67を出力するステップ(ステップS81)をさらに備える。
【0211】
そのため、顧客が埋設管の更新計画を立案することを容易にする埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を、顧客に提供することができる。
【0212】
本実施の形態の埋設管老朽度予測方法では、一部の地盤は、一般埋設環境分類マップ56aにおいて相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、漏水事故データ53において漏水事故が発生していない第1地盤を含む。
【0213】
そのため、管路マップ51に対応する地域に最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を用いて、埋設管の老朽度のより正確な予測が可能になる。
【0214】
本実施の形態の埋設管老朽度予測方法では、一部の地盤は、一般埋設環境分類マップ56aにおいて相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、漏水事故データ53において漏水事故が発生した第2地盤を含む。
【0215】
そのため、管路マップ51に対応する地域に最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を用いて、埋設管の老朽度のより正確な予測が可能になる。
【0216】
本実施の形態の埋設管老朽度予測方法では、埋設管の各々の老朽度は、単位時間及び単位距離当たりに埋設管の各々に漏水事故が発生する確率(推定漏水事故率)である。
【0217】
そのため、管路マップ51に対応する地域に最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を用いて、埋設管の老朽度のより正確な予測が可能になる。
【0218】
本実施の形態のプログラム(埋設環境分類マップ作成プログラム31)は、本実施の形態の埋設環境分類マップ作成方法の各ステップをプロセッサ12に実行させる。
【0219】
そのため、埋設管の老朽度のより正確な予測を可能にする最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を提供することができる。
【0220】
本実施の形態のプログラム(例えば、埋設管老朽度予測プログラム32)は、本実施の形態の埋設管老朽度予測方法の各ステップをプロセッサ12に実行させる。
【0221】
そのため、管路マップ51に対応する地域に最適化された埋設環境分類マップ(最適化埋設環境分類マップ58a)を用いて、埋設管の老朽度のより正確な予測が可能になる。
【0222】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0223】
(付記1)
埋設管の地図である管路マップと一般に入手可能な地盤マップとから、前記管路マップに対応する地域の一般埋設環境分類マップを作成する第1マップ作成部と、
地盤選択部と、最適化埋設環境分類マップ生成部とを含む第2マップ作成部とを備え、
前記地盤選択部は、前記埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データに基づいて、前記一般埋設環境分類マップの一部の地盤を選択し、
前記最適化埋設環境分類マップ生成部は、前記一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって、前記地域に最適化された埋設環境分類マップを生成する、埋設環境分類マップ作成装置。
(付記2)
前記第2マップ作成部は、前記最適化された埋設環境分類マップを出力する最適化埋設環境分類マップ出力部を含む、付記1に記載の埋設環境分類マップ作成装置。
(付記3)
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生していない第1地盤を含む、付記1または付記2に記載の埋設環境分類マップ作成装置。
(付記4)
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生した第2地盤を含む、付記1から付記3のいずれかに記載の埋設環境分類マップ作成装置。
(付記5)
埋設管の地図である管路マップに対応する地域に最適化された埋設環境分類マップによって特定される前記埋設管の各々の埋設環境と、前記埋設管の各々の埋設期間に関する第1情報と、前記埋設管の各々の管厚に関連する第2情報と、埋設管老朽度予測モデルとから、前記埋設管の各々の老朽度を算出する埋設管老朽度算出部を備え、
前記最適化された埋設環境分類マップは、前記地域の一般埋設環境分類マップの一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって作成されており、
前記一般埋設環境分類マップは、前記管路マップと一般に入手可能な地盤マップとから作成されており、
前記一部の地盤は、前記埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データに基づいて、前記一般埋設環境分類マップから選択されている、埋設管老朽度予測装置。
(付記6)
前記埋設管の各々の前記老朽度を示す地図である埋設管老朽度予測マップを出力する埋設管老朽度予測結果出力部をさらに備える、付記5に記載の埋設管老朽度予測装置。
(付記7)
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生していない第1地盤を含む、付記5または付記6に記載の埋設管老朽度予測装置。
(付記8)
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生した第2地盤を含む、付記5から付記7のいずれかに記載の埋設管老朽度予測装置。
(付記9)
前記埋設管の各々の前記老朽度は、単位時間及び単位距離当たりに前記埋設管の各々に漏水事故が発生する確率である、付記5から付記8のいずれかに記載の埋設管老朽度予測装置。
(付記10)
埋設管の地図である管路マップと一般に入手可能な地盤マップとから、前記管路マップに対応する地域の一般埋設環境分類マップを作成するステップと、
前記埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データに基づいて、前記一般埋設環境分類マップの一部の地盤を選択するステップと、
前記一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって、前記地域に最適化された埋設環境分類マップを生成するステップとを備える、埋設環境分類マップ作成方法。
(付記11)
前記最適化された埋設環境分類マップを出力するステップをさらに備える、付記10に記載の埋設環境分類マップ作成方法。
(付記12)
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生していない第1地盤を含む、付記10または付記11に記載の埋設環境分類マップ作成方法。
(付記13)
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生した第2地盤を含む、付記10から付記12のいずれかに記載の埋設環境分類マップ作成方法。
(付記14)
埋設管の地図である管路マップに対応する地域に最適化された埋設環境分類マップによって特定される前記埋設管の各々の埋設環境と、前記埋設管の各々の埋設期間に関する第1情報と、前記埋設管の各々の管厚に関連する第2情報と、埋設管老朽度予測モデルとから、前記埋設管の各々の老朽度を算出するステップを備え、
前記最適化された埋設環境分類マップは、前記地域の一般埋設環境分類マップの一部の地盤の埋設環境分類を機械学習によって最適化することによって作成されており、
前記一般埋設環境分類マップは、前記管路マップと一般に入手可能な地盤マップとから作成されており、
前記一部の地盤は、前記埋設管の各々の漏水事故の過去実績である漏水事故データに基づいて、前記一般埋設環境分類マップから選択されている、埋設管老朽度予測方法。
(付記15)
前記埋設管の各々の前記老朽度を示す地図である埋設管老朽度予測マップを出力するステップをさらに備える、付記14に記載の埋設管老朽度予測方法。
(付記16)
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に高い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生していない第1地盤を含む、付記14または付記15に記載の埋設管老朽度予測方法。
(付記17)
前記一部の地盤は、前記一般埋設環境分類マップにおいて相対的に低い腐食性を示す埋設環境分類が付与されており、かつ、前記漏水事故データにおいて漏水事故が発生した第2地盤を含む、付記14から付記16のいずれかに記載の埋設管老朽度予測方法。
(付記18)
前記埋設管の各々の前記老朽度は、単位時間及び単位距離当たりに前記埋設管の各々に漏水事故が発生する確率である、付記14から付記17のいずれかに記載の埋設管老朽度予測方法。
(付記19)
付記10から付記13のいずれかに記載の前記埋設環境分類マップ作成方法の各ステップをプロセッサに実行させる、プログラム。
(付記20)
付記14から付記18のいずれかに記載の前記埋設管老朽度予測方法の各ステップをプロセッサに実行させる、プログラム。
【0224】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0225】
1,1b 埋設管老朽度予測装置、2 埋設環境分類マップ作成装置、3 対応表作成装置、4 埋設管データ受付装置、5 記憶装置、6 通信ネットワーク、7 埋設管老朽度予測システム、11 入力装置、12 プロセッサ、13 メモリ、14 ディスプレイ、16 ネットワークコントローラ、17 記憶媒体ドライブ、18 記憶媒体、19 ストレージ、20 記憶部、21 調査管データ記憶部、22 地盤マップデータベース部、23 対応表記憶部、24 埋設管データ記憶部、25 マップ記憶部、26 公称管厚データベース部、27 漏水事故率予測モデル記憶部、28 漏水事故率予測モデル、29 埋設管老朽度予測結果記憶部、30 プログラム記憶部、31 埋設環境分類マップ作成プログラム、32 埋設管老朽度予測プログラム、33 対応表作成プログラム、40 調査管データ、42 地盤マップ、43 表層地質図、44 地形分類図、46 地盤情報-地盤ID-腐食速度-埋設環境対応表、50 埋設管データ、51 管路マップ、52 埋設管属性データ、53 漏水事故データ、54 漏水事故マップ、55 漏水事故データ収集期間、56 一般統合マップ、56a 一般埋設環境分類マップ、56b 地盤IDマップ、58 最適化統合マップ、58a 最適化埋設環境分類マップ、60 公称管厚データ、65 埋設管老朽度予測結果、66 埋設管老朽度予測テーブル、67 埋設管老朽度予測マップ、70 第1前処理済埋設管データ、74 第2前処理済埋設管データ、76 推定漏水事故率結果、78 第3前処理済埋設管データ、90 対応表作成部、91 腐食速度算出部、92 地盤情報取得部、93 地盤ID割当部、94 代表的腐食速度算出部、95 埋設環境分類部、96 対応表生成部、97 対応表出力部、99 埋設管データ受付部、100 マップ作成部、101 第1マップ作成部、102 第2マップ作成部、103 地盤選択部、104,121,131 データ前処理部、105 推定漏水事故件数算出部、106 漏水事故実件数算出部、107,113 判定部、110 最適化埋設環境分類マップ生成部、111 初期集団生成部、112 適応度算出部、114 新世代集団生成部、116 最適化統合マップ生成部、118 最適化統合マップ出力部、120 修正統合マップ作成部、122 推定漏水事故率算出部、123 推定漏水事故率結果作成部、124 漏水事故件数算出部、125 管更新率算出部、130 埋設管老朽度予測部、132 埋設管老朽度算出部、133 埋設管老朽度予測結果生成部、134 埋設管老朽度予測結果出力部。