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特開2024-87298電力変換装置およびその制御方法ならびに交流電車用電源回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087298
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】電力変換装置およびその制御方法ならびに交流電車用電源回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
H02M7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202050
(22)【出願日】2022-12-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「SiC スイッチングモジュールの高性能化とその応用開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】521344607
【氏名又は名称】ネクスファイ・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟木 剛
(72)【発明者】
【氏名】福田 典子
(72)【発明者】
【氏名】中村 孝
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 佑太
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006BB05
5H006CA02
5H006CA12
5H006DA02
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
(57)【要約】
【課題】双方向の交流-直流変換およびPFC制御が可能なブリッジレスの電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置3Aは、第1ノード11に入出力される交流電圧V1と第2ノード13に入出力される直流電圧V2とが同符号になる交流電圧の半周期に、インダクタ16の第1端を第1ノード11に接続してインダクタ16の第2端を基準ノード15に接続する第1制御状態と、インダクタ16の第1端を基準ノード15に接続してインダクタ16の第2端を第2ノード13に接続する第2制御状態とを交互に繰り返す。電力変換装置3Aは、交流電圧V1と直流電圧V2とが異符号になる交流電圧V1の半周期に、インダクタ16の第1端を第1ノード11と第2ノード13とに交互に接続し、インダクタ16の第2端を基準ノード15に接続する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電位が与えられる基準ノードと、
第1ノードおよび第2ノードと、
インダクタと、
前記インダクタの第1端と前記第1ノードとの間に接続された第1スイッチと、
前記インダクタの前記第1端と前記基準ノードとの間に接続された第2スイッチと、
前記インダクタの第2端と前記第2ノードとの間に接続された第3スイッチと、
前記インダクタの前記第2端と前記基準ノードとの間に接続された第4スイッチと、
前記インダクタの前記第1端と前記第2ノードとの間に接続された第5スイッチと、
制御部とを備え、
前記第1ノードにおいて前記基準電位に対して正および負に変化する交流電圧が入出力され、前記第2ノードにおいて前記基準電位に対して正または負の直流電圧が入出力されることにより、前記交流電圧と前記直流電圧との間で双方向の変換を行う交流-直流変換動作において、前記制御部は、前記交流電圧と前記直流電圧とが同符号になる前記交流電圧の半周期に第1のスイッチングモードで前記第1~第5スイッチを制御し、前記交流電圧と前記直流電圧とが異符号になる前記交流電圧の半周期に第2のスイッチングモードで前記第1~第5スイッチを制御し、
前記第1のスイッチングモードにおいて、前記制御部は、前記第5スイッチを常時開にするとともに、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチを閉にして前記第2スイッチおよび前記第3スイッチを開にする第1制御状態と、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチを開にして前記第2スイッチおよび前記第3スイッチを閉にする第2制御状態とを交互に繰り返し、
前記第2のスイッチングモードにおいて、前記制御部は、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチを常時開にし、前記第4スイッチを常時閉にし、前記第1スイッチおよび前記第5スイッチに相補的に開閉を繰り返させる、電力変換装置。
【請求項2】
基準電位が与えられる基準ノードと、
第1ノードおよび第2ノードと、
インダクタと、
前記インダクタの第1端と前記第1ノードとの間に接続された第1スイッチと、
前記インダクタの前記第1端と前記基準ノードとの間に接続された第2スイッチと、
前記インダクタの第2端と前記第2ノードとの間に接続された第3スイッチと、
前記インダクタの前記第2端と前記基準ノードとの間に接続された第4スイッチと、
前記インダクタの前記第2端と前記第1ノードとの間に接続された第5スイッチと、
制御部とを備え、
前記第1ノードにおいて前記基準電位に対して正および負に変化する交流電圧が入出力され、前記第2ノードにおいて前記基準電位に対して正または負の直流電圧が入出力されることにより、前記交流電圧と前記直流電圧との間で双方向の変換を行う交流-直流変換動作において、前記制御部は、前記交流電圧と前記直流電圧とが同符号になる前記交流電圧の半周期に第1のスイッチングモードで前記第1~第5スイッチを制御し、前記交流電圧と前記直流電圧とが異符号になる前記交流電圧の半周期に第2のスイッチングモードで前記第1~第5スイッチを制御し、
前記第1のスイッチングモードにおいて、前記制御部は、前記第5スイッチを常時開にするとともに、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチを閉にして前記第2スイッチおよび前記第3スイッチを開にする第1制御状態と、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチを開にして前記第2スイッチおよび前記第3スイッチを閉にする第2制御状態とを交互に繰り返し、
前記第2のスイッチングモードにおいて、前記制御部は、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチを常時開にし、前記第2スイッチを常時閉にし、前記第3スイッチおよび前記第5スイッチに相補的に開閉を繰り返させる、電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1のスイッチングモードにおいて、前記第1制御状態と前記第2制御状態との間に、前記第1スイッチおよび前記第3スイッチを開にして前記第2スイッチおよび前記第4スイッチを閉にする第3制御状態を実行する、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1ノードにおいて前記基準電位に対して正または負の第1の直流電圧が入出力され、前記第2ノードにおいて前記基準電位に対して正または負の第2の直流電圧が入出力されることにより、前記第1の直流電圧と前記第2の直流電圧との間で双方向の変換を行う直流-直流変換動作において、前記制御部は、前記第1の直流電圧と前記第2の直流電圧とが同符号の場合に前記第1のスイッチングモードで前記第1~第5スイッチを制御し、前記第1の直流電圧と前記第2の直流電圧とが異符号の場合に前記第2のスイッチングモードで前記第1~第5スイッチを制御する、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1ノードにおいて前記基準電位に対して正および負に変化する第1の交流電圧が入出力され、前記第2ノードにおいて前記基準電位に対して正および負に変化する第2の交流電圧が入出力されることにより、前記第1の交流電圧と前記第2の交流電圧との間で双方向の変換を行う交流-交流変換動作において、前記制御部は、前記第1の交流電圧と前記第2の交流電圧とが同符号になる期間において、前記第1のスイッチングモードで前記第1~第5スイッチを制御し、前記第1の交流電圧と前記第2の交流電圧とが異符号になる期間において、前記第2のスイッチングモードで前記第1~第5スイッチを制御する、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記インダクタの前記第2端と前記第1ノードとの間に接続された第6スイッチをさらに備え、
前記制御部は、前記第1のスイッチングモードおよび前記第2のスイッチングモードにおいて、さらに前記第6スイッチを常時開にし、
前記制御部は、前記交流-直流変換動作で前記交流電圧と前記直流電圧とが異符号になる前記交流電圧の半周期において、前記第2のスイッチングモードに代えて第3のスイッチングモードで前記第1~第6スイッチを制御可能であり、
前記第3のスイッチングモードにおいて、前記制御部は、前記第1スイッチ、前記第4スイッチ、および前記第5スイッチを常時開にし、前記第2スイッチを常時閉にし、前記第3スイッチおよび前記第6スイッチに相補的に開閉を繰り返させる、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1ノードが交流電圧または直流電圧が供給される架線に接続され、前記基準ノードがレールに接続される、請求項4に記載の電力変換装置を備え、前記電力変換装置は、前記架線から交流電圧が供給される場合に前記交流-直流変換動作を実行し、前記架線から直流電圧が供給される場合に前記直流-直流変換動作を実行し、
さらに、前記電力変換装置の前記第2ノードから出力される直流電圧を3相交流電圧に変換し、前記変換された3相交流電圧をモータに供給するインバータを備えた交流電車用電源回路。
【請求項8】
電力変換装置の制御方法であって、
前記電力変換装置は、
基準電位が与えられる基準ノードと、
第1ノードおよび第2ノードと、
インダクタと、
前記インダクタの第1端および第2端と、前記基準ノード、前記第1ノードおよび前記第2ノードとの間の接続を切り替える切替回路とを含み、
前記制御方法は、
前記第1ノードにおいて前記基準電位に対して正および負に変化する交流電圧が入出力され、前記第2ノードにおいて前記基準電位に対して正または負の直流電圧が入出力されることにより、前記交流電圧と前記直流電圧との間で双方向の変換を行う交流-直流変換動作において、
前記交流電圧と前記直流電圧とが同符号になる前記交流電圧の半周期に、前記切替回路を第1のスイッチングモードで制御するステップと、
前記交流電圧と前記直流電圧とが異符号になる前記交流電圧の半周期に、前記切替回路を第2のスイッチングモードで制御するステップとを備え、
前記切替回路を前記第1のスイッチングモードで制御するステップは、前記インダクタの前記第1端を前記第1ノードに接続し、前記インダクタの前記第2端を前記基準ノードに接続する第1制御状態と、前記インダクタの前記第1端を前記基準ノードに接続し、前記インダクタの前記第2端を前記第2ノードに接続する第2制御状態とを交互に繰り返すステップを含み、
前記切替回路を前記第2のスイッチングモードで制御するステップは、前記インダクタの前記第1端を前記第1ノードと前記第2ノードとに交互に接続し、前記インダクタの前記第2端を前記基準ノードに接続するか、または前記インダクタの前記第1端を前記基準ノードに接続し、前記インダクタの前記第2端を前記第1ノードと前記第2ノードとに交互に接続するステップを含む、電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置およびその制御方法ならびに交流電車用電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
入力交流電圧が全波整流された全波整流電圧と出力直流電圧との大小関係に基づいてスイッチングモードを切り替えるPFC(Power Factor Correction:力率改善)コンバータが知られている。たとえば、特開2016-032350号公報(特許文献1)に開示された電力変換装置は、全波整流電圧が出力直流電圧よりも小さいときに昇圧モードで動作し、全波整流電圧が出力直流電圧よりも大きいときに降圧モードで動作し、全波整流電圧が出力直流電圧に等しいときに昇降圧モードで動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-032350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献の電力変換装置では、全波整流用のブリッジ回路が設けられているために、損失が比較的大きく、双方向電力潮流制御ができない。本開示の目的の一つは、交流電力と直流電力との間の双方向変換が可能なブリッジレスの電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態の電力変換装置は、基準電位が与えられる基準ノードと、第1ノードおよび第2ノードと、インダクタと、第1スイッチと、第2スイッチと、第3スイッチと、第4スイッチと、第5スイッチと、制御部とを備える。第1スイッチは、インダクタの第1端と第1ノードとの間に接続される。第2スイッチは、インダクタの第1端と基準ノードとの間に接続される。第3スイッチは、インダクタの第2端と第2ノードとの間に接続される。第4スイッチは、インダクタの第2端と基準ノードとの間に接続される。第5スイッチは、インダクタの第1端と第2ノードとの間に接続される。第1ノードにおいて基準電位に対して正および負に変化する交流電圧が入出力され、第2ノードにおいて基準電位に対して正または負の直流電圧が入出力されることにより、交流電圧と直流電圧との間で双方向の変換を行う交流-直流変換動作において、制御部は、交流電圧と直流電圧とが同符号になる交流電圧の半周期に第1のスイッチングモードで第1~第5スイッチを制御し、交流電圧と直流電圧とが異符号になる交流電圧の半周期に第2のスイッチングモードで第1~第5スイッチを制御する。ここで、第1のスイッチングモードにおいて、制御部は、第5スイッチを常時開にするとともに、第1スイッチおよび第4スイッチを閉にして第2スイッチおよび第3スイッチを開にする第1制御状態と、第1スイッチおよび第4スイッチを開にして第2スイッチおよび第3スイッチを閉にする第2制御状態とを交互に繰り返す。第2のスイッチングモードにおいて、制御部は、第2スイッチおよび第3スイッチを常時開にし、第4スイッチを常時閉にし、第1スイッチおよび第5スイッチに相補的に開閉を繰り返させる。
【発明の効果】
【0006】
上記のブリッジレス電力変換装置によれば、交流電圧の半周期ごとに第1のスイッチングモードと第2のスイッチングモードとを切り替えて第1~第5スイッチを制御することにより、交流電圧と直流電圧との間で双方向の変換が可能になる。さらに、PFC制御および高調波除去用のローパスフィルタ(平滑用コンデンサなど)と組み合わせることにより、原理的には力率0.999およびTHD(全高調波歪み:Total Harmonic Distortion)2~3%の電力変換が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】回路方式1を有する電力変換装置の構成図である。
図2図1の電力変換装置の交流-直流変換動作を説明するための図である。
図3図1の第1から第5スイッチの具体的構成を示す回路図である。
図4】回路方式2を有する電力変換装置の構成図である。
図5図4の電力変換装置の交流-直流変換動作を説明するための図である。
図6】回路方式3を有する電力変換装置の構成図である。
図7図6の電力変換装置の交流-直流変換動作を説明するための図である。
図8図1図4、および図6に示す電力変換装置の交流-直流変換動作における制御方法を示すフローチャートである。
図9】電力変換装置の力行動作(臨界モード制御)における実験結果を示す図である。
図10】電力変換装置の回生動作(臨界モード制御)における実験結果を示す図である。
図11】電力変換装置の力行動作(連続モード制御)における実験結果を示す図である。
図12】電力変換装置の交流-交流変換動作を説明するための図である。
図13】電力変換装置の交流-交流変換動作における制御方法を示すフローチャートである。
図14】交流電車用電源回路の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、以下の説明において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰り返さない場合がある。
【0009】
<実施の形態1>
実施の形態1では、双方向ブリッジレスPFCコンバータとして3つの回路方式を提案する。さらに、力行動作および回生動作の場合の実験結果を示す。本開示では、交流電圧を直流電圧に変換する順変換の場合を力行動作と称し、直流電圧を交流電圧に変換する逆変換の場合を回生動作と称する。力行動作と回生動作とを合わせて交流-直流変換動作と称する。なお、本回路方式によれば、双方向の直流-直流変換動作も可能である。
【0010】
[回路方式1]
(構成)
図1は、回路方式1を有する電力変換装置の構成図である。図1に示すように、電力変換装置3Aは、第1ノード(node)対11,12と、第2ノード対13,14と、インダクタ16と、第1~第5スイッチSa~Seとを備える。
【0011】
第1ノード対11と12の間に単相の交流電源1が接続される。第2ノード対13と14との間には、力行動作の場合に負荷が接続され、回生動作の場合には等価的な直流電源2が接続される。第1ノード12と第2ノード14とは配線によって直結され、基準電位として接地電位(0V)が与えられる。
【0012】
以下、基準電位が与えられる第1ノード12と第2ノード14とを総称して基準ノード15と称する。この場合、第1ノード11には基準電位に対して正および負に変化する交流電圧V1が入力されるか(力行動作)、または第1ノード11は当該交流電圧V1を出力する(回生動作)。第2ノード13は基準電位に対して正または負の直流電圧V2を出力するか(力行動作)、または第2ノード13には当該直流電圧V2が入力される(回生動作)。
【0013】
スイッチSaは、インダクタ16の第1端17と第1ノード11との間に接続される。スイッチSbは、インダクタ16の第1端17と基準ノード15との間に接続される。スイッチScは、インダクタ16の第2端18と第2ノード13との間に接続される。スイッチSdは、インダクタ16の第2端18と基準ノード15との間に接続される。スイッチSeは、インダクタ16の第1端17と第2ノード13との間に接続される。
【0014】
スイッチSa~Seは、たとえば、高電圧を高速にスイッチングできるパワー半導体素子を用いて構成される。図3を参照して後述するように、スイッチSa~Seは、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を用いて構成してもよいし、MESFET(Metal Semiconductor FET)、バイポーラトランジスタ、またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などを用いてもよい。バイポーラトランジスタおよびIGBTなどの場合には、各パワー半導体素子はそれぞれに逆並列に接続された環流ダイオードとともに用いられる。また、これらのパワー半導体素子の材料として、Si、SiC、またはGaNなどを用いてもよい。
【0015】
電力変換装置3Aは、さらに、第1および第2の電圧検出器21,22と、電流検出器23とを備える。電圧検出器21は、第1ノード対11と12との間の電圧V1(交流電圧の瞬時値)を検出する。電圧検出器22は、第2ノード対13と14との間の電圧V2(直流電圧)を検出する。電流検出器23は、インダクタ16に流れるインダクタ電流Iを検出する。電力変換装置3Aは、さらに、第1ノード11に流れる電流I1を検出する電流検出器24、および第2ノード13に流れる電流I2を検出する電流検出器25を備えていてもよい。
【0016】
また、図1に示すように、第1ノード対11と12との間および第2ノード対13と14との間に、それぞれ平滑用コンデンサ31,32を設けるのが望ましい。これにより、高調波が除去できるので、PFC制御の際に力率をさらに高めることができる。
【0017】
電力変換装置3Aは、さらに、電圧検出器21,22と電流検出器23~25との各検出値に基づいて、スイッチSa~Seのスイッチングを制御する制御部20を備える。制御部20は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを含むマイクロコンピュータに基づいて構成されていてもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)によって構成されていてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用の回路によって構成されていてもよい。もしくは、制御部20は、上記の2つ以上の組み合わせによって構成されていてもよい。
【0018】
(交流-直流変換動作)
図2は、図1の電力変換装置の交流-直流変換動作を説明するための図である。図2では、交流電圧V1および直流電圧V2の時間波形と、それに対応するスイッチSa~Seの開閉動作が概念的に示されている。制御部20は、交流電圧V1の瞬時値と直流電圧V2とが同符号か異符号かに基づいて、スイッチSa~Seの開閉を制御する。具体的に、電力変換装置3Aは以下の2つのスイッチングモードを有する。
【0019】
なお、以下の説明において、インダクタ16の第1端17から第2端18に流れるインダクタ電流Iの方向を正方向とし、逆方向を負方向とする。後述する図5および図7においても同様である。
【0020】
(1)第1のスイッチングモード
交流電圧V1の瞬時値が直流電圧V2と同符号となる交流電圧V1の正の半周期(時刻t1からt2の期間)において、制御部20は、スイッチSeを常時開にするとともに、スイッチSaおよびスイッチSdを閉にしてスイッチSbおよびスイッチScを開にする第1制御状態(区間T1)と、スイッチSaおよびスイッチSdを開にしてスイッチSbおよびスイッチScを閉にする第2制御状態(区間T3)とを交互に繰り返す。
【0021】
さらに、制御部20は、第1制御状態と第2制御状態との間に、スイッチSaおよびスイッチScを開にしてスイッチSbおよびスイッチSdを閉にする第3制御状態(区間T2,T4)を実行するのが望ましい。第3制御状態は、交流電圧V1の両極間および直流電圧V2の両極間の短絡を防止するためのデッドタイムを与えるために設けられる。デッドタイムを含めると、制御部20は、第1のスイッチングモードでは、図2の区間T1から区間T4までのスイッチング動作を繰り返し実行する。
【0022】
第1のスイッチングモードにおける電力変換装置3Aは、入力電圧の極性と出力電圧の極性とが反転しない、いわゆる非反転昇降圧コンバータとして動作する。
【0023】
具体的に、力行動作の第1制御状態(Sa:閉、Sb:開、Sc:開、Sd:閉、Se:開)の場合、電流は、交流電源1(正の半周期)、スイッチSa、インダクタ16、スイッチSd、交流電源1の順に流れる。力行動作の第2制御状態(Sa:開、Sb:閉、Sc:閉、Sd:開、Se:開)の場合、電流は、インダクタ16、スイッチSc、負荷(直流電源2)、スイッチSb、インダクタ16の順に流れる。力行動作の第3制御状態(Sa:開、Sb:閉、Sc:開、Sd:閉、Se:開)の場合、電流は、インダクタ16、スイッチSd、スイッチSb、インダクタ16の順に流れる。このように、第1のスイッチングモードにおける力行動作の場合、インダクタ電流Iは正方向に流れる。
【0024】
一方、第1のスイッチングモードにおける回生動作の第1制御状態(Sa:閉、Sb:開、Sc:開、Sd:閉、Se:開)の場合、電流は、インダクタ16、スイッチSa、交流電源1、スイッチSd、インダクタ16の順に流れる。回生動作の第2制御状態(Sa:開、Sb:閉、Sc:閉、Sd:開、Se:開)の場合、電流は、直流電源2、スイッチSc、インダクタ16、スイッチSb、直流電圧V2の順に流れる。回生動作の第3制御状態(Sa:開、Sb:閉、Sc:開、Sd:閉、Se:開)の場合、電流は、インダクタ16、スイッチSb、スイッチSd、インダクタ16の順に流れる。このように、第1のスイッチングモードにおける回生動作の場合、インダクタ電流Iは負方向に流れる。
【0025】
(2)第2のスイッチングモード
交流電圧V1の瞬時値が直流電圧V2と異符号となる交流電圧V1の負の半周期(時刻t2からt3の期間)において、制御部20は、スイッチSbおよびスイッチScを常時開にし、スイッチSdを常時閉にし、スイッチSaおよびスイッチSeに相補的に開閉を繰り返させる。すなわち、第2のスイッチングモードでは、制御部20は、図2の区間T5およびT6のスイッチング動作を繰り返し実行する。
【0026】
第2のスイッチングモードにおける電力変換装置3Aは、入力電圧の極性と出力電圧の極性とが反転する、いわゆる昇降圧コンバータとして動作する。なお、本開示では、非反転昇降圧コンバータと明確に区別するために、反転昇降圧コンバータとも称する。
【0027】
具体的に力行動作の場合には、スイッチSaが閉でスイッチSeが開のとき(図2の区間T5)、電流は、交流電源1(負の半周期)、スイッチSd、インダクタ16、スイッチSa、交流電源1の順に流れる。逆に、スイッチSaが開でスイッチSeが閉のとき(図2の区間T6)、電流は、インダクタ16、スイッチSe、負荷(直流電源2)、スイッチSd、インダクタ16の順に流れる。このように、インダクタ電流Iは負方向に流れる。
【0028】
一方、第2のスイッチングモードにおける回生動作の場合には、スイッチSaが閉でスイッチSeが開のとき(図2の区間T5)、電流は、インダクタ16、スイッチSd、交流電源1(負の半周期)、スイッチSa、インダクタ16の順に流れる。逆に、スイッチSaが開でスイッチSeが閉のとき(図2の区間T6)、電流は、直流電源2、スイッチSe、インダクタ16、スイッチSd、直流電源2の順に流れる。このように、インダクタ電流Iは正方向に流れる。
【0029】
制御部20は、さらに、第1および第2のスイッチングモードに共通して、高調波成分を低減させるためにPFC制御を行う。具体的に、制御部20は、インダクタ電流Iの検出値が所望の電流波形になるように開閉動作させるスイッチの開閉タイミングを制御する。これにより、第1ノード11を流れる交流電流I1の波形を正弦波に近付けるように、結果として交流電流I1が正弦波の交流電圧V1に相似形になるようにする。このインダクタ電流Iの制御方法には、連続モード制御、不連続モード制御、および臨界モード制御の3つの制御方法が知られており、そのいずれを用いてもよい。さらに、インダクタ電流Iを、交流電流I1の検出値または直流電流I2の検出値に基づいて制御してもよい。
【0030】
第1のスイッチングモードにおいて連続モード制御を行う場合において、開閉スイッチをPWM(Pulse Width Modulation)制御した場合の通流率をDとすると、区間T2および区間T4のデッドタイムを無視できる場合には、第1ノード対11と12との間の電圧V1と第2ノード対13と14との間の電圧V2との比は、
V2/V1=D/(1-D) …(1)
で表される。また、第2のスイッチングモードにおいて連続モード制御を行う場合において、開閉スイッチの通電率をDとすると、電圧V1と電圧V2との比は、
V2/V1=-D/(1-D) …(2)
で表される。したがって、入力電圧に応じて通流率Dを変更することにより、所望の出力電圧を得ることができる。臨界モード制御および不連続モード制御の場合も同様に、通流率Dの制御により、所望の出力電圧を得ることができる。
【0031】
なお、前述のように、電力変換装置3Aは、第1のスイッチングモードにおいて非反転昇降圧コンバータとして動作し、第2のスイッチングモードにおいて(反転)昇降圧コンバータとして動作する。したがって、これらの回路を利用したPFC制御で実現されている力率=0.999およびTHD=2~3%は、本実施形態の電力変換装置3Aにおいても実現可能である。
【0032】
(具体的構成例)
次に、図1のスイッチSa~SeをNチャネルのパワーMOSFET(以下、NMOSFETと記載する)で構成した例について、図3を参照して説明する。パワーMOSFETの材料として炭化ケイ素(SiC)を用いると、シリコン(Si)製のパワーMOSFETに比べて、高耐圧、低損失、高速動作が期待されるので望ましい。なお、他の種類の半導体素子を用いた場合も図3と同様の構成とすることができる。たとえば、IGBTを用いた場合には、パワーMOSFETの寄生ダイオードに代えて逆並列に接続された環流ダイオードが設けられる。
【0033】
図3は、図1の第1から第5スイッチの具体的構成を示す回路図である。図3に示すように、第1から第5スイッチSa~Seの各々は、ソースからドレインの方向を逆方向にした2個のNMOSFETを直列に接続する(以下、「逆直列接続」と称する)ことによって構成される。これによって、スイッチSa~Seの各々を開状態(オフ状態)にしたときに、寄生ダイオードを介して電流が流れないようにできる。
【0034】
具体的に、図3において、スイッチSaは逆直列接続された2個のNMOSFETNMa1,NMa2によって構成される。同様に、スイッチSbは逆直列接続されたNMOSFETNMb1,NMb2によって構成され、スイッチScは逆直列接続されたNMOSFETNMc1,NMc2によって構成され、スイッチSdは逆直列接続されたNMOSFETNMd1,NMd2によって構成され、スイッチSeは逆直列接続されたNMOSfETNMe1,NMe2によって構成される。
【0035】
たとえば、図3のスイッチSbの場合、NMOSFETNMb1のソースSは、基準ノード15に接続され、NMOSFETNMb1のドレインDは、NMOSFETNMb2のドレインDに接続される。NMOSFETNMb2のソースSはインダクタ16の第1端17に接続される。この場合、NMOSFETNMb1の寄生ダイオードPDとNMOSFETNMb2の寄生ダイオードPDとは逆方向になるので、NMOSFETNMb1,NMb2がオフ状態のときに、それぞれの寄生ダイオードPDを介して電流が流れないようにできる。なお、NMOSFETNMb1,NMb2を図3の場合と逆方向に接続してもよい。すなわち、図3のようにドレインD同士を直結するようにNMOSFETNMb1,NMb2を直列接続しても、逆にソースS同士を直結するようにNMOSFETNMb1,NMb2を直列接続してもよい。いずれの場合もNMOSFETNMb1,NMb2がオフ状態のときに、それぞれの寄生ダイオードPDを介した電流の流れを防止できる。
【0036】
スイッチSa~Sfの各々を構成する2個のNMOSFETのゲートには、基本的には同じハイレベル(Hレベル)またはロウレベル(Lレベル)の信号が入力される。ただし、環流ダイオードとして動作させるスイッチについては、一方のゲート信号をHレベルにし、他方のゲート信号をLレベルにすることによりダイオード動作させてもよい。なお、この場合も、環流ダイオードでの電圧降下を避けるためには、当該スイッチを構成する2個のNMOSFETに同じ信号を入力することにより、いわゆる同期整流させたほうが望ましい。
【0037】
[回路方式2]
(構成)
図4は、回路方式2を有する電力変換装置の構成図である。図4の電力変換装置3Bは、第5スイッチSeの接続が図1の電力変換装置3Aの場合と異なる。すなわち、図1の電力変換装置3Aの場合には、スイッチSeはインダクタ16の第1端17と第2ノード13との間に接続されていたのに対し、図4の電力変換装置3Bの場合には、スイッチSeはインダクタ16の第2端18と第1ノード11との間に接続される。図4のその他の点は図1の場合と同様であるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。なお、図4では、平滑用コンデンサ31,32の図示を省略している。
【0038】
(交流-直流変換動作)
図5は、図4の電力変換装置の交流-直流変換動作を説明するための図である。図5では、図2の場合と同様に、交流電圧V1および直流電圧V2の時間波形と、それに対応するスイッチSa~Seの開閉動作が概念的に示されている。図5に示すように、第1のスイッチングモード(時刻t1からt2の期間)の場合のスイッチSa~Seの開閉動作は、図2の場合と同様であるので、説明を繰り返さない。
【0039】
以下、第2のスイッチングモード、すなわち、交流電圧V1の瞬時値が直流電圧V2と異符号となる交流電圧V1の負の半周期(時刻t2からt3の期間)の場合について説明する。この場合、制御部20は、スイッチSaおよびスイッチSdを常時開にし、スイッチSbを常時閉にし、スイッチScおよびスイッチSeに相補的に開閉を繰り返させる。すなわち、第2のスイッチングモードでは、制御部20は、図5の区間T5およびT6のスイッチング動作を繰り返し実行する。
【0040】
第2のスイッチングモードにおける電力変換装置3Bは、入力電圧の極性と出力電圧の極性とが反転する、いわゆる昇降圧コンバータとして動作する。
【0041】
具体的に力行動作の場合には、スイッチSeが閉でスイッチScが開のとき(図5の区間T5)、電流は、交流電源1(負の半周期)、スイッチSb、インダクタ16、スイッチSe、交流電源1の順に流れる。逆に、スイッチSeが開でスイッチScが閉のとき(図5の区間T6)、電流は、インダクタ16、スイッチSc、負荷(直流電源2)、スイッチSb、インダクタ16の順に流れる。このように、インダクタ電流Iは正方向に流れる。
【0042】
一方、第2のスイッチングモードにおける回生動作の場合には、スイッチSeが閉でスイッチScが開のとき、電流は、インダクタ16、スイッチSb、交流電源1(負の半周期)、スイッチSe、インダクタ16の順に流れる。逆に、スイッチSeが開でスイッチScが閉のとき、電流は、直流電源2、スイッチSc、インダクタ16、スイッチSb、直流電源2の順に流れる。このように、インダクタ電流Iは負方向に流れる。
【0043】
さらに、制御部20は、回路方式1の場合と同様に第1および第2のスイッチングモードに共通して、高調波成分を低減させるためにPFC制御を行う。
【0044】
(具体的構成例)
回路方式2の場合も、図3の場合と同様にNMOSFETを用いて電力変換装置3Bを構成できる。ただし、回路方式2の場合には、スイッチSbおよびスイッチScは、開状態のときに寄生ダイオードを介して導通する可能性がないので、図3のNMOSFETNMb1およびNMOSFETNMc1のみによって構成できる。スイッチSa,Sd,Seの各々は、ソースからドレインの方向を逆方向にした2個のNMOSFETを直列に接続することによって構成される。
【0045】
[回路方式3]
(構成)
図6は、回路方式3を有する電力変換装置の構成図である。図6の電力変換装置3Cは、第6スイッチSfをさらに含む点で図1の電力変換装置3Aと異なる。スイッチSfは、インダクタ16の第2端18と第1ノード11との間に接続される。図6のその他の点は図1の場合と同様であるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。なお、図6では、平滑用コンデンサ31,32の図示を省略している。
【0046】
(交流-直流変換動作)
図7は、図6の電力変換装置の交流-直流変換動作を説明するための図である。図7では、図2および図5の場合と同様に、交流電圧V1および直流電圧V2の時間波形と、それに対応するスイッチSa~Sfの開閉動作が概念的に示されている。
【0047】
図7に示す回路方式3の電力変換装置3Cの動作は、図2に示す回路方式1の電力変換装置3Aの動作と、図5に示す回路方式2の電力変換装置3Bの動作とを組み合わせたものである。
【0048】
具体的に、制御部20は、第1のスイッチングモード(時刻t1からt2の期間)において、スイッチSe,Sfを常時開にする。スイッチSa~Sdの開閉状態は、図2の回路方式1および図5の回路方式2の場合と同様であるので説明を繰り返さない。
【0049】
第2のスイッチングモード、すなわち、交流電圧V1の瞬時値が基準電位(0V)よりも低い負電圧となる期間(時刻t2からt3の期間)においては、図2に示す回路方式1の場合と同様に制御することもできるし、図5に示す回路方式2の場合と同様に制御することもできる。
【0050】
具体的に、図7においてその1として示すように、制御部20は、スイッチSdを常時閉にし、スイッチSb,Sc,Sfを常時開にし、スイッチSa,Seについて相補的に開閉を繰り返させてもよい。この場合、電力変換装置3Cは、回路方式1の電力変換装置3Aと同様に動作する。
【0051】
もしくは、図7においてその2として示すように、制御部20は、スイッチSbを常時閉にし、スイッチSa,Sd,Seを常時開にし、スイッチSc,Sfについて相補的に開閉を繰り返させてもよい。この場合、回路方式2の電力変換装置3BにおいてスイッチSeをスイッチSfと読み替えることにより、電力変換装置3Cは、回路方式2の電力変換装置3Bと同様に動作する。
【0052】
さらに、制御部20は、回路方式1の場合と同様に第1および第2のスイッチングモードに共通して、高調波成分を低減させるためにPFC制御を行う。
【0053】
(具体的構成例)
回路方式3の場合も、図3の場合と同様にNMOSFETを用いて電力変換装置3Cを構成できる。具体的に、スイッチSa~Sfの各々は、ソースからドレインの方向を逆方向にした2個のN型MOSFETを直列に接続することによって構成される。
【0054】
[直流-直流変換動作]
図1図4図6に示す電力変換装置3A~3Cは、直流-直流変換動作を実行することもできる。直流-直流変換動作の場合、電力変換装置3A~3Cは、第1ノードにおいて基準電位に対して正または負の第1の直流電圧が入出力され、第2ノードにおいて基準電位に対して正または負の第2の直流電圧が入出力されることにより、第1の直流電圧と第2の直流電圧との間で双方向の変換を行う。
【0055】
より詳細には、制御部20は、上記の第1の直流電圧と第2の直流電圧とが同符号の場合に前述の第1のスイッチングモードでスイッチSa~Se(Sf)を制御し、第1の直流電圧と第2の直流電圧とが異符号の場合に前述の第2のスイッチングモードでスイッチSa~Se(Sf)を制御する。
【0056】
[交流-直流変換動作における電力変換装置3A~3Cの制御方法のまとめ]
以下、交流-直流変換動作における電力変換装置3A~3Cの制御方法について、これまでの説明を総括して統一的に説明する。具体的に、図1図4および図6の電力変換装置3A~3Cのいずれの場合も、インダクタ16の第1端17および第2端18と、第1ノード11、第2ノード13、および基準ノード15との間の接続を切り替える切替回路10A~10Cを備えると考えることができる。
【0057】
図8は、図1図4および図6に示す電力変換装置の切替回路の制御方法を示すフローチャートである。制御部20は、電圧検出器21の検出値に基づいて、現時点において、交流電圧V1の瞬時値と直流電圧V2とが同符号(すなわち、直流電圧>0として、交流電圧>0)であるか(ステップS10)、または交流電圧V1の瞬時値と直流電圧V2とが異符号(すなわち、直流電圧>0として、交流電圧<0)であるか(ステップS30)を判定する。
【0058】
現時点において、交流電圧V1の瞬時値と直流電圧V2とが同符号の場合(ステップS10でYES)、制御部20は、第1のスイッチングモードで(すなわち、電力変換装置3A~3Cが非反転昇降圧コンバータとして動作するように)切替回路10A~10Cを制御する(ステップS20)。
【0059】
より詳細には、第1のスイッチングモードにおいて、制御部20は、インダクタ16の第1端17を第1ノード11に接続してインダクタ16の第2端18を基準ノード15に接続する第1制御状態と、インダクタ16の第1端17を基準ノード15に接続してインダクタ16の第2端18を第2ノード13に接続する第2制御状態とを繰り返す。制御部20は、第1制御状態と第2制御状態との間に、インダクタ16の第1端17および第2端18を共に基準ノード15に接続する第3制御状態を実行してもよい。
【0060】
現時点において、交流電圧V1の瞬時値と直流電圧V2とが異符号の場合(ステップS30でYES)、制御部20は、第2のスイッチングモードで(すなわち、電力変換装置3A~3Cが昇降圧コンバータとして動作するように)切替回路10A~10Cを制御する(ステップS40)。
【0061】
より詳細には、第2のスイッチングモードにおいて、制御部20は、インダクタ16の第1端17を第1ノード11と第2ノード13とに交互に接続してインダクタ16の第2端18を基準ノード15に接続するか、またはインダクタ16の第2端18を第1ノード11と第2ノード13とに交互に接続してインダクタ16の第1端17を基準ノード15に接続する。
【0062】
なお、交流電圧が0の場合に、制御部20は、第1および第2のスイッチングモードの切り替えを行う(ステップS50)。
【0063】
[実験結果]
以下、図9図11を参照して、図4に示す回路方式2の電力変換装置3Bの実験結果について説明する。
【0064】
図9は、電力変換装置の力行動作(臨界モード制御)における実験結果を示す図である。図9では、上から順に、図4の電圧検出器21で測定される入力交流電圧V1の波形、電流検出器23で測定されるインダクタ電流Iの波形、電圧検出器22で測定される出力直流電圧V2の波形が示されている。図9に示す実験例では、臨界モードを用いてPFC制御が実行されている。
【0065】
図9に示すように、スイッチングモードの切り替え時である交流電圧=0の付近において、途切れなく滑らかに電圧および電流の制御できていることがわかる。また、スイッチングモードの切り替えは、交流電圧の正負判定によって行うことができるので、容易に制御できる。
【0066】
図10は、電力変換装置の回生動作(臨界モード制御)における実験結果を示す図である。図10では、上から順に、図4の電圧検出器21で測定される出力交流電圧V1の波形、電流検出器23で測定されるインダクタ電流Iの波形、電圧検出器22で測定される入力直流電圧V2の波形が示されている。図10に示す実験例では、臨界モードを用いてPFC制御が実行されている。
【0067】
図10に示すように、スイッチングモードの切り替え時である交流電圧=0付近において、途切れなく滑らかに電圧および電流の制御できていることがわかる。また、交流電圧=0付近のスイッチングモードの切り替え時において、制御のハンチングを起こさないために休止期間が設けられている。この休止期間では、スイッチSbおよびスイッチSdを閉にし、他のスイッチSa,Sc,Se,(Sf)を開にする前述の第3制御状態が実行され、インダクタ電流Iはほぼ0になる。休止期間の長さは図10の場合よりも短く設定してよい。
【0068】
図11は、電力変換装置の力行動作(連続モード制御)における実験結果を示す図である。図11では、上から順に、図4の電圧検出器21で測定される入力交流電圧V1の波形、電流検出器23で測定されるインダクタ電流Iの波形、電圧検出器22で測定される出力直流電圧V2の波形が示されている。図11に示す実験例では、連続モードを用いてPFC制御が実行されている。
【0069】
図11に示すように、スイッチングモードの切り替え時である交流電圧=0の付近において、途切れなく滑らかに電圧および電流の制御できていることがわかる。
【0070】
[実施の形態1の効果]
以上のとおり、実施の形態1では、図1図4図6に示す3つの回路方式の電力変換装置3A~3Cの構成を示した。電力変換装置3A~3Cは、全波整流回路を必要としないブリッジレスで構成されており、片極が接地されている単相交流電圧と直流電圧とを双方向に変換できる。また、PFC制御および高調波除去用のローパスフィルタ(平滑用コンデンサなど)と組み合わせることにより、原理的には、力率=0.999およびTHD=2~3%が実現可能である。
【0071】
また、電力変換装置3A~3Cは、直流電圧と直流電圧との双方向の変換も可能である。具体的に、第1ノード11において入出力される第1の直流電圧と、第2ノード13において入出力される第2の直流電圧とが同符号の場合には、前述の第1のスイッチングモード(すなわち、非反転昇降圧コンバータとして動作)によって直流-直流変換が可能である。一方、第1の直流電圧と第2の直流電圧とが異符号の場合には、前述の第2のスイッチングモード(すなわち、昇降圧コンバータとして動作)によって直流-直流変換が可能である。
【0072】
<実施の形態2>
実施の形態1で説明した電力変換装置3A~3Cを用いて交流-交流変換を行う場合について説明する。たとえば、交流-交流変換は簡易な周波数変換装置として利用できる。
【0073】
図12は、電力変換装置の交流-交流変換動作を説明するための図である。図12では、入力交流電圧を2倍の周波数の交流電圧に周波数変換して出力する例が示されている。入力交流電圧波形が実線で示され、出力交流電圧波形が破線で示されている。また、第2のスイッチングモードで入力交流電圧を変換する期間において、入力交流電圧を反転させた波形が一点鎖線で示されている。
【0074】
図12の区間S1では、入力電圧および出力電圧は共に正電圧である。この場合、制御部20は、実施の形態1で説明した第1のスイッチングモードでスイッチSa~Se(Sf)を制御することにより、入力交流電圧を出力交流電圧に変換する。すなわち、電力変換装置3A~3Cは、非反転昇降圧コンバータとして動作する。
【0075】
図12の区間S2では、入力電圧は正電圧であるのに対し、出力電圧は負電圧である。この場合、制御部20は、実施の形態1で説明した第2のスイッチングモードでスイッチSa~Se(Sf)を制御することにより、入力交流電圧を出力交流電圧に変換する。すなわち、電力変換装置3A~3Cは、(反転)昇降圧コンバータとして動作する。
【0076】
図12の区間S3では、入力電圧は負電圧であるのに対し、出力電圧は正電圧である。この場合、制御部20は、第2のスイッチングモードでスイッチSa~Se(Sf)を制御することにより、入力交流電圧を出力交流電圧に変換する。すなわち、電力変換装置3A~3Cは、(反転)昇降圧コンバータとして動作する。
【0077】
図12の区間S4では、入力電圧および出力電圧は共に負電圧である。この場合、制御部20は、第1のスイッチングモードでスイッチSa~Se(Sf)を制御することにより、入力交流電圧を出力交流電圧に変換する。すなわち、電力変換装置3A~3Cは、非反転昇降圧コンバータとして動作する。
【0078】
図13は、電力変換装置の交流-交流変換動作における制御方法を示すフローチャートである。以下、図1図4および図6に示す電力変換装置3A~3Cにおいて、第1ノード対11,12に交流電圧が入力され、第2ノード対13,14から周波数の異なる交流電圧を出力する場合について説明する。第1ノード対11,12に入力される交流電圧は、電圧検出器21によって検出される。
【0079】
図13を参照して、制御部20は、入力交流電圧の符号と出力交流電圧の符号とに基づいて、4つの動作モードのうちいずれに該当するかを判定する。すなわち、制御部20は、入力電圧および出力電圧がともに正の場合(ステップS100でYES)、入力電圧が正で出力電圧が負の場合(ステップS120でYES)、入力電圧および出力電圧がともに負の場合(ステップS140でYES)、入力電圧が負で出力電圧が正の場合(ステップS160でYES)のうちのどれに該当するかを判定する。
【0080】
入力電圧および出力電圧がともに正の場合(ステップS100でYES)、制御部20は、実施の形態1で説明した第1のスイッチングモードでスイッチSa~Se(Sf)を制御する(ステップS110)。すなわち、電力変換装置3A~3Cは、非反転昇降圧コンバータとして動作する。
【0081】
入力電圧が正で出力電圧が負の場合(ステップS120でYES)、制御部20は、実施の形態1で説明した第2のスイッチングモードでスイッチSa~Se(Sf)を制御する。すなわち、電力変換装置3A~3Cは、(反転)昇降圧コンバータとして動作する。
【0082】
入力電圧および出力電圧がともに負の場合(ステップS140でYES)、制御部20は、制御部20は、実施の形態1で説明した第1のスイッチングモードでスイッチSa~Se(Sf)を制御する(ステップS110)。すなわち、電力変換装置3A~3Cは、非反転昇降圧コンバータとして動作する。
【0083】
入力電圧が負で出力電圧が正の場合(ステップS160でYES)、制御部20は、実施の形態1で説明した第2のスイッチングモードでスイッチSa~Se(Sf)を制御する。すなわち、電力変換装置3A~3Cは、(反転)昇降圧コンバータとして動作する。なお、入力電圧が0または出力電圧が0の場合は、スイッチングモードの切り替えが行われる(ステップS180)。
【0084】
以上をまとめると、第1ノード11において基準電位に対して正および負に変化する第1の交流電圧が入出力され、第2ノード13において基準電位に対して正および負に変化する第2の交流電圧が入出力されることにより、第1の交流電圧と第2の交流電圧との間で双方向の変換を行う交流-交流変換動作が行われる。この場合、制御部20は、第1の交流電圧と第2の交流電圧とが同符号になる期間において、前述の第1のスイッチングモードでスイッチSa~Se(Sf)を制御することにより、電力変換装置3A~3Cを非反転昇降圧コンバータとして動作させる。制御部20は、第1の交流電圧と第2の交流電圧とが異符号になる期間において、前述の第2のスイッチングモードでスイッチSa~Se(Sf)を制御することにより、電力変換装置3A~3Cを(反転)昇降圧コンバータとして動作させる。
【0085】
<実施の形態3>
実施の形態3では、実施の形態1で説明した電力変換装置3A~3Cを交流電車用電源回路40に適用した例について説明する。以下の説明では、電力変換装置3A~3Cを総称して、電力変換装置3と記載する。
【0086】
図14は、交流電車用電源回路の構成例を示す回路図である。図14に示すように、交流電車用電源回路40は、実施の形態1で説明した電力変換装置3と、インバータ41とを備える。
【0087】
電力変換装置3の第1ノード11は架線51に接続され、電力変換装置3の第1ノード12(すなわち、基準ノード15)はレール52に接続される。架線51とレール52との間に単相交流電源1または直流電源1Aが接続される。これにより、架線51から交流電圧または直流電圧が供給される。電力変換装置3は、架線51から交流電圧が供給されている場合に交流-直流変換動作を行い、架線51から直流電圧が供給されている場合に直流-直流変換動作を行う。
【0088】
電力変換装置3の第2ノード13は、インバータ41の高電位側配線42Pに接続され、電力変換装置3の第2ノード14(すなわち、基準ノード15)は、インバータ41の低電位側配線42Nに接続される。
【0089】
インバータ41は、U相スイッチング素子43P,43Nと、V相スイッチング素子44P,44Nと、W相スイッチング素子45P,45Nと、各スイッチング素子に逆並列に接続されたフリーホイールダイオード47とを含む。U相スイッチング素子43P,43Nは、高電位側配線42Pと低電位側配線42Nとの間に互いに直列に接続される。同様に、V相スイッチング素子44P,44Nは、高電位側配線42Pと低電位側配線42Nとの間に互いに直列かつU相スイッチング素子43P,43Nの直列接続体と並列に接続される。同様に、W相スイッチング素子45P,45Nは、高電位側配線42Pと低電位側配線42Nとの間に互いに直列かつU相スイッチング素子43P,43Nの直列接続体と並列に接続される。U相スイッチング素子43P,43Nの中点46U、V相スイッチング素子44P,44Nの中点46V、およびW相スイッチング素子45P,45Nの中点46Wからモータ50に3相交流電力が供給される。
【0090】
上記の構成によれば、実施の形態1で説明した電力変換装置3によって架線51の電圧を降圧できるので、交流電車用電源回路40にトランスを設ける必要がなく、交流電車用電源回路40を軽量化できる。この点で本実施形態の交流電車用電源回路40は、降圧用の絶縁トランスが必要な既存のブリッジ付きPFC回路またはブリッジレスPFC回路を利用する場合よりも有利である。電力変換装置3においてPFC制御を行うことにより、饋電回路の力率を改善できる。電力変換装置3は、ブリッジレスで構成されているので、力行および回生の双方向電力潮流制御が可能である。電力変換装置3の第1ノード対11,12は片極が接地されているので、交流電気鉄道のレール52が接地されているという特徴をうまく利用できる。また、架線51に直流電圧が供給されている場合も交流電車用電源回路40をそのまま利用できる。なお、実施の形態1の電力変換装置3は、交流電車の電気回路方式に限らず、片極が接地された交流回路と直流回路との双方向電力変換に利用できる。
【0091】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この出願の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
1 単相交流電源、1A,2 直流電源、3,3A~3C 電力変換装置、10A~10C 切替回路、11,12 第1ノード、13,14 第2ノード、15 基準ノード、16 インダクタ、17 第1端、18 第2端、20 制御部、21,22 電圧検出器、23,24,25 電流検出器、31,32 平滑用コンデンサ、 40 交流電車用電源回路、41 インバータ、42N 低電位側配線、42P 高電位側配線、43N,43P,44N,44P,45N,45P スイッチング素子、46U,46V,46W 中点、47 フリーホイールダイオード、50 モータ、51 架線、52 レール、NMa1,NMa2~NMe1,NMe2 NMOSFET、D ドレイン、S ソース、PD 寄生ダイオード、I1 交流電流、I2 直流電流、I インダクタ電流、Sa~Sf スイッチ、V1 交流電圧、V2 直流電圧。
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