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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087300
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20240624BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20240624BHJP
【FI】
G01S7/02 216
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202052
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸上 高明
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB09
5J070AB18
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AD05
5J070AD08
5J070AD17
5J070AE01
5J070AE07
5J070AE09
5J070AF03
5J070AK22
(57)【要約】
【課題】レーダ装置における物標の検知精度を向上する。
【解決手段】レーダ装置は、第1偏波を放射する第1送信アンテナ、及び、第1偏波と異なる第2偏波を放射する第2送信アンテナを含む複数の送信アンテナと、ドップラシフト量と符号系列との組み合わせに対応する位相回転量が付与された送信信号を、複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、を具備する。複数の送信アンテナのそれぞれに対して、ドップラシフト量及び前記符号系列の少なくとも一方が異なる組み合わせが対応付けられ、第1送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量及び符号系列の第1パターンと、第2送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量及び符号系列の第2パターンと、が異なる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の偏波を放射する第1の送信アンテナ、及び、前記第1の偏波と異なる第2の偏波を放射する第2の送信アンテナを含む複数の送信アンテナと、
ドップラシフト量と符号系列との組み合わせに対応する位相回転量が付与された送信信号を、前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、
を具備し、
前記複数の送信アンテナのそれぞれに対して、前記ドップラシフト量及び前記符号系列の少なくとも一方が異なる前記組み合わせが対応付けられ、
前記第1の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量及び符号系列の第1のパターンと、前記第2の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量及び符号系列の第2のパターンと、が異なる、
レーダ装置。
【請求項2】
前記複数の送信アンテナの数は、前記組み合わせの総数よりも少ない、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、ドップラシフト量の間隔に関し、
前記第1の送信アンテナにより送信される前記送信信号のドップラ多重数と、前記第2の送信アンテナにより送信される前記送信信号のドップラ多重数と、が同じであり、
前記第1の送信アンテナに対応付けられるドップラシフト量の間隔のうち少なくとも一つは、前記第2の送信アンテナに対応付けられるドップラシフト量の間隔と異なる、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、ドップラ多重数に関し、
前記第1の送信アンテナにより送信される前記送信信号のドップラ多重数と、前記第2の送信アンテナにより送信される前記送信信号のドップラ多重数とは異なる、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、前記ドップラシフト量の間隔の順序に関し、
前記第1の送信アンテナに対応付けられる前記ドップラシフト量間の複数の第1のドップラシフト間隔と、前記第2の送信アンテナに対応付けられる前記ドップラシフト量間の複数の第2のドップラシフト間隔と、が同じであり、
前記複数の第1のドップラシフト間隔のドップラ周波数軸上での順序は、前記複数の第2のドップラシフト間隔のドップラ周波数軸上での順序と異なる、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、前記符号系列に関し、
複数の前記組み合わせにおいて、前記第1の送信アンテナに対応付けられる前記符号系列のドップラ周波数軸上での順序と、前記第2の送信アンテナに対応付けられる前記符号系列のドップラ周波数軸上での順序と、は異なる、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、前記符号系列による符号多重数に関し、
複数の前記組み合わせにおいて、前記第1の送信アンテナに対応付けられる前記符号系列による前記符号多重数のドップラ周波数軸上での順序と、前記第2の送信アンテナに対応付けられる前記符号系列による前記符号多重数のドップラ周波数軸上での順序と、は異なる、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項8】
複数の前記組み合わせにおいて、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナの少なくとも一方に関して、少なくとも1つの前記ドップラシフト量に対応付けられる前記符号系列による符号多重数は、他の前記ドップラシフト量に対応付けられる前記符号系列による符号多重数と異なる、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記第1の偏波及び前記第2の偏波の何れか一方の偏波を用いて、前記送信信号が物標に反射した反射波信号を受信する受信アンテナと、
前記反射波信号に基づいて前記物標の方向推定を行う方向推定回路と、を更に具備する、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項10】
前記第1の偏波を受信する第1の受信アンテナ、及び、前記第2の偏波を受信する第2の受信アンテナを含み、前記送信信号が物標に反射した反射波信号を受信する複数の受信アンテナと、
前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナそれぞれで受信した前記反射波信号に対して、前記物標の方向推定を個別に行う方向推定回路と、を更に具備する、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項11】
前記複数の送信アンテナのうち、前記送信信号の多重送信に用いる送信アンテナの組み合わせは、前記送信信号の送信周期、前記符号系列の符号長に対応する周期、又は、前記レーダ装置における測定周期毎に切り替わる、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項12】
第1の偏波を放射する第1の送信アンテナ、前記第1の偏波と異なる第2の偏波を放射する第2の送信アンテナ、および、前記第1の偏波及び前記第2の偏波と異なる第3の偏波を放射する第3の送信アンテナを含む複数の送信アンテナと、
ドップラシフト量と符号系列との組み合わせに対応する位相回転量が付与された送信信号を、前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、
を具備し、
前記複数の送信アンテナのそれぞれに対して、前記ドップラシフト量及び前記符号系列の少なくとも一方が異なる前記組み合わせが対応付けられ、
前記第1の送信アンテナ及び前記第3の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量及び符号系列の第3のパターンと、前記第2の送信アンテナ及び前記第3の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量及び符号系列の第4のパターンと、が異なる、
レーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高分解能が得られるマイクロ波又はミリ波を含む波長の短いレーダ送信信号を用いたレーダ装置の検討が進められている。レーダ装置として、例えば、受信部に加え、送信部にも複数のアンテナ(アレーアンテナ)を備え、送受信アレーアンテナを用いた信号処理によりビーム走査を行う構成(MIMO(Multiple Input Multiple Output)レーダと呼ぶこともある)が提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開第2019/0064337号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2020/0363497号明細書
【特許文献3】特開2008-304417号公報
【特許文献4】特表2011-526371号公報
【特許文献5】特開2011-119344号公報
【特許文献6】特開2020-204603号公報
【特許文献7】特開2020-092247号公報
【特許文献8】特開2020-148754号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J. Li, and P. Stoica, "MIMO Radar with Colocated Antennas", Signal Processing Magazine, IEEE Vol. 24, Issue: 5, pp. 106-114, 2007
【非特許文献2】M. Kronauge, H.Rohling,"Fast two-dimensional CFAR procedure", IEEE Trans. Aerosp. Electron. Syst., 2013, 49, (3), pp. 1817-1823
【非特許文献3】Direction-of-arrival estimation using signal subspace modeling Cadzow, J.A.; Aerospace and Electronic Systems, IEEE Transactions on Volume: 28 , Issue: 1 Publication Year: 1992 , Page(s): 64 - 79
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レーダ装置(例えば、MIMOレーダ)において物標(又はターゲット)を検知する方法について十分に検討されていない。
【0006】
本開示の非限定的な実施例は、物標の検知精度を向上するレーダ装置の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、第1の偏波を放射する第1の送信アンテナ、及び、前記第1の偏波と異なる第2の偏波を放射する第2の送信アンテナを含む複数の送信アンテナと、ドップラシフト量と符号系列との組み合わせに対応する位相回転量が付与された送信信号を、前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、を具備し、前記複数の送信アンテナのそれぞれに対して、前記ドップラシフト量及び前記符号系列の少なくとも一方が異なる前記組み合わせが対応付けられ、前記第1の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量及び符号系列の第1のパターンと、前記第2の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量及び符号系列の第2のパターンと、が異なる。
【0008】
なお、これらの包括的または具体的な実施例は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施例によれば、レーダ装置における物標の検知精度を向上できる。
【0010】
本開示の一実施例における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】符号化ドップラ多重送信の一例を示す図
図2】符号化ドップラ多重送信における受信信号の一例を示す図
図3】符号化ドップラ多重送信の一例を示す図
図4】レーダ装置の構成例を示すブロック図
図5】チャープ信号を用いた場合の送信信号の一例を示す図
図6】ドップラシフト量及び符号系列の設定例を示す図
図7】符号化ドップラ位相回転量の設定例の設定例を示す図
図8】符号化ドップラ多重送信における受信信号の一例を示す図
図9】符号化ドップラ位相回転量の設定例の設定例を示す図
図10】符号化ドップラ多重送信における受信信号の一例を示す図
図11】符号化ドップラ位相回転量の設定例の設定例を示す図
図12】符号化ドップラ多重送信における受信信号の一例を示す図
図13】符号化ドップラ位相回転量の設定例の設定例を示す図
図14】符号化ドップラ多重信号の分離の動作例を示すフローチャート
図15】レーダ受信部の構成例を示すブロック図
図16】符号化ドップラ位相回転量の設定例の設定例を示す図
図17】符号化ドップラ多重送信における受信信号の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[偏波レーダについて]
例えば、異なる偏波の電波を放射するアンテナ、あるいは異なる偏波の電波を受信するアンテナの使用により、レーダ検出性能又は識別性能を向上させる技術がある(例えば、特許文献1又は特許文献2を参照)。複数の偏波を用いるレーダ装置は、例えば、「偏波レーダ(Polarimetric radar)」とも呼ばれる。
【0013】
例えば、特許文献1又は特許文献2には、垂直偏波あるいは水平偏波を用いるアンテナで送信信号を送信し、垂直偏波あるいは水平偏波を用いるアンテナで受信した信号を用いて、物体を検出し識別する方法が開示されている。また、特許文献1には、例えば、左旋円偏波あるいは右旋円偏波を用いるアンテナで送信信号を送信し、左旋円偏波あるいは右旋円偏波を用いるアンテナで受信した信号を用いて、物体を検出し識別する方法が開示されている。なお、垂直偏波又は水平偏波を含む直線偏波、あるいは、左旋円偏波又は右旋円偏波を含む円偏波といった偏波を用いるアンテナを「偏波アンテナ」とも呼ぶ。
【0014】
このような偏波レーダは、複数の異なる種類の偏波アンテナ(例えば、偏波送信アンテナあるいは偏波受信アンテナ)を用いる。
【0015】
以下では、複数の異なる種類の偏波アンテナを用いるMIMOレーダ(例えば、「偏波MIMOレーダ」とも呼ぶ)における多重送信方法について着目する。
【0016】
例えば、複数の送信アンテナを用いたMIMOレーダの多重送信方法の例として、時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)送信(例えば、特許文献3、4を参照)、又は、ドップラ多重(DDM:Doppler Division Multiplexing)送信が挙げられる(例えば、特許文献5を参照)。
【0017】
時分割多重送信又はドップラ多重送信は、割り当てた送信時間又はドップラ周波数領域を用いて、複数の送信アンテナからの送信信号に対応する反射波を分離できる。その一方で、時分割多重送信及びドップラ多重送信では、送信アンテナ数が増加すると、ドップラ周波数の検出範囲が狭まりやすい。例えば、時分割多重及びドップラ多重分割では、検出可能なドップラ周波数範囲は、-1/(2Nt×Tr)≦fd<1/(2Nt×Tr)となり、送信アンテナ数に反比例してドップラ周波数の検出範囲が狭まる。ここで、Ntは送信アンテナ数であり、Trは送信信号の送信周期である。
【0018】
[符号化ドップラ多重送信について]
特許文献6(例えば、特許文献6の図1)には、ドップラ多重と符号多重とを組み合わせた多重送信方法(以下、「符号化ドップラ多重送信」又は「Coded DDM送信(CDDM送信と略記する)」と呼ぶ)について開示されている。
【0019】
例えば、図1では、レーダ送信波(例えば、チャープ信号)が送信周期Tr毎に送出する場合を示す。図1では、3個の送信アンテナ(例えば、Tx#1~Tx#3)に対して、符号長Loc=2の直交符号(例えば、code#1, code#2)で符号多重した信号を、2個のドップラ多重(DDM)信号(例えば、DOP1, DOP2)を用いて送信する場合における、送信ドップラ周波数及び符号の割り当ての一例を示す。図1の例では、符号多重数NCM=2、ドップラ多重数NDM=2である。
【0020】
符号に基づく位相回転は、例えば、チャープ信号に付与する動作を、符号長回の送信周期Loc×Tr(図1では、2送信周期(2Tr))で巡回的に繰り返すことにより行われる。この際、DDM信号に基づく位相回転は、符号長Locの符号を付与する符号長回の送信周期(図1では、2送信周期(2Tr))において一定とする。例えば、DDM信号に基づく位相回転は、2Tr送信周期毎に変化させて付与されてよい。
【0021】
例えば、図1では、割り当てる送信ドップラシフト量は、それぞれDOP1=0、DOP2=-1/( 4Tr)[Hz]に設定される。例えば、m番目の送信周期毎にDOP1が付与されるため、位相回転Φ1(m)=ΔΦ1×(floor(m/Loc)+1)が、レーダ送信波(チャープ信号)に付与される。また、m番目の送信周期毎にDOP2が付与されるため、位相回転Φ2(m)=ΔΦ2×(floor(m/Loc) +1)が、レーダ送信波に付与される。ここで、ΔΦ1=0、ΔΦ2=-πである。ドップラ多重間隔はΔfd=1/(4Tr)である。また、符号長2の直交符号は、例えば、Code1=[1, 1]及びCode2=[1, -1]が用いられてよい。図1では、例えば、Tx#1~Tx#3に対して、ドップラ多重信号及び符号を組み合わせた符号化ドップラ多重信号(CDDM信号)として、それぞれ、DopCode#1=(DOP2,Code1)、DopCode#2=(DOP2,Code2)、DopCode#3 = (DOP1,Code1)が割り当てられ送信される。なお、floor[x]は実数xを超えない最大の整数を出力する関数である。
【0022】
ここで、DopCode#nは、n番目のTx#nに対するCDDM信号の割り当てを表す(ドップラシフト量DOPndmと符号Codencmを用いた割り当てを表す)。n=1~Ntであり、ndmは、1~NDMの範囲の整数値であり、ncmは1~NCMの範囲の整数値をとる。Nt個の送信アンテナに対し、DOPndmとCodencmの組み合わせが異なるCDDM信号を割り当てる。
【0023】
これらの同時多重送信した信号は、レーダ装置(例えば、受信信号処理部)において受信される。レーダ装置は、例えば、レーダ反射波受信信号を、送信する符号の要素毎の受信信号毎に、個別のドップラ解析部(例えば、V-FFT#1, #2,~, #Loc)にてドップラ周波数解析し、ドップラ周波数解析の出力に基づいて、符号多重分離及びドップラ多重分離することにより、多重送信信号を分離受信する。例えば、符号長Loc=2の場合、符号の要素数は2であり、レーダ装置は、奇数番目の送信信号毎の受信信号及び偶数番目の送信信号毎に、個別のドップラ解析部(V-FFT#1, #2)にてドップラ周波数解析した出力に基づいて、符号多重分離及びドップラ多重分離することにより、多重送信信号を分離受信する。
【0024】
ここで、レーダ装置(例えば、ドップラ解析部)では符号長Locの送信周期(図1では、Loc=2より、2送信周期(2Tr))の受信信号が用いられるため、±1/(2 Loc Tr) (図1では±1/(4Tr))を超えるドップラ周波数は、折り返して検出される。レーダ反射波受信信号に折り返しの周波数範囲の成分が含まれるか否かは、例えば、特許文献6に開示されるように、DDM信号間の符号多重数を不均一として、複数送信アンテナから多重送信することにより検出可能である。これにより、レーダ装置は、折り返し無しでドップラ周波数検出できるドップラ周波数範囲(最大ドップラ)を±1/(2Tr)に広げることができ、送信アンテナの判定も可能となる。
【0025】
例えば、図1では、ドップラシフト量DOP1における符号多重数は1であり、DOP2における符号多重数は2であり、DDM信号間の符号多重数は不均一に設定される。レーダ装置は、送信アンテナを割り当てない未使用の符号とドップラ信号との組み合わせのCDDM信号(図1ではDopCode= (DOP1, Code2))を用いて、多重送信された信号に対する分離受信信号に基づいて、レーダ反射波受信信号に折り返しの周波数範囲の成分が含まれるか否かを検出する(以下、「折り返し判定」とも呼ぶ)。
【0026】
例えば、図2の(a)は、図1に示すCDDM信号に対して、物標のドップラ周波数fdtgが0の場合に、Code1及びCode2のそれぞれで分離した場合の受信ドップラ信号を示す。Codeで分離される受信DDM信号には、DOP1とDOP2とのドップラ多重間隔Δfdに一致するドップラ周波数間隔の2つのドップラ周波数における受信レベルが高く検出され、レーダ装置は、これらの成分をTx#1及びTx#3の受信信号と判定できる。また、Code2で分離される受信ドップラ信号には、受信ドップラ周波数fd=-1/(4Tr)において、高い受信レベルの1つのドップラ周波数が検出される。なお、検出されたドップラ周波数に対する、DOP1とDOP2とのドップラ多重間隔Δfdに一致するドップラ周波数間隔のドップラ周波数(受信ドップラ周波数fd=0)の受信レベルが、ノイズレベル程度である。
【0027】
このことから、図2の(a)では、レーダ装置は、Code2で分離される受信ドップラ信号において検出される高い受信レベルの1つのドップラ周波数の成分を、Tx#2の受信信号と判定できる。また、レーダ装置は、それぞれの送信アンテナに対する送信時のドップラシフト量からのずれ量が、物標のドップラ周波数となるため、物標のドップラ周波数を確定できる。
【0028】
また、例えば、図2の(b)では、図1に示すCDDM信号に対して、物標のドップラ周波数fdtg=-1/(2Tr)の場合に、Code1及びCode2のそれぞれで分離した場合の受信ドップラ信号を示す。Code2で分離される受信ドップラ信号には、DOP1とDOP2とのドップラ多重間隔Δfdに一致するドップラ周波数間隔の2つのドップラ周波数における受信レベルが高く検出され、レーダ装置は、これらの成分をTx#1及びTx#3の受信信号と判定できる。また、Code1で分離される受信ドップラ信号には、高い受信レベルの1つのドップラ周波数が検出される。なお、検出されたドップラ周波数に対する、DOP1とDOP2とのドップラ多重間隔Δfdに一致するドップラ周波数間隔のドップラ周波数(受信ドップラ周波数fd=0)の受信レベルがノイズレベル程度である。
【0029】
このことから、図2の(b)では、レーダ装置は、Code1で分離される受信ドップラ信号において検出される高い受信レベルの1つのドップラ周波数の成分を、Tx#2の受信信号と判定できる。また、レーダ装置は、それぞれの送信アンテナに対する送信時のドップラシフト量からのずれ量が、物標のドップラ周波数となることから、物標のドップラ周波数を確定できる。
【0030】
なお、物標のドップラ周波数が-1/(2Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)あるいは1/(4Tr)≦fdtg<1/(2Tr)の場合、ドップラ解析部(例えば、V-FFT#1及びV-FFT#2)では、折り返されたドップラ周波数が観測される。実際のドップラ周波数は、ドップラ解析部(V-FFT#1及びV-FFT#2)において検出されるドップラ周波数に対し、2Trの送信周期間で2π位相が異なるため、V-FFT#1とV-FFT#2との間の検出時間差Tr間では、πの位相回転が加わる。したがって、符号長Loc=2では、レーダ装置は、図2の(b)のように、Code1の分離においてCode2に対応する受信信号が判定される場合、ドップラ周波数の折り返し有りと判定できる。
【0031】
このようなCDDM信号の分離受信処理により、レーダ装置は、ドップラ周波数範囲±1/(2Tr)においてレーダ反射波のドップラ周波数の推定が可能となる。このように、CDDM送信することにより、検出可能なドップラ周波数範囲を±1/2Trにまで拡大される。例えば、特許文献5と比較して、検出可能なドップラ周波数範囲はNt倍に拡大される。
【0032】
[偏波MIMOレーダへの符号化ドップラ多重(CDDM)送信の適用について]
上述したように、符号化ドップラ多重を用いるMIMOレーダでは、例えば、物標からの反射波の符号分離後の受信ドップラ周波数の受信電力に基づいて、物標のドップラ周波数を推定する符号化ドップラ多重信号の分離処理(以下、「符号化ドップラ多重分離」あるいは「CDDM分離」と呼ぶ)を行う。
【0033】
このため、偏波MIMOレーダに、CDDMを適用する場合には、以下のことが想定され得る。
【0034】
偏波MIMOレーダでは、例えば、送受信アンテナの偏波に依存して、反射波の受信レベルが大きく変動する現象が発生し得る。偏波MIMOレーダにおいて、異なる偏波の送信アンテナを用いる場合、或る偏波の送信アンテナからの反射波受信レベルに対し、別の偏波の送信アンテナからの反射波受信レベルが大きく減衰する可能性がある。そのため、偏波MIMOレーダにおいて、CDDMを用いて多重送信する場合、異なる偏波の送信アンテナ間における反射波受信レベルの差(あるいは比)が大きくなることによって、CDDM分離が困難となり得る。CDDM分離が困難になると、MIMOレーダにおける物標の検出性能の劣化、あるいは、CDDM分離を誤り、ドップラ誤推定又は測角性能の劣化が発生し得る。
【0035】
以下、CDDMを適用する偏波MIMOレーダにおいてCDDM分離が困難となる例を説明する。
【0036】
ここでは、一例として、左旋円偏波(以下、「LC」とも表す)及び右旋円偏波(以下、「RC」とも表す)の両方の偏波毎に、各2個の送信アンテナを用いてMIMOレーダを構成(各々LC-2Tx及びRC-2Txと表記)する場合(例えば、送信アンテナ数Nt=4)について説明する。例えば、左旋円偏波に対応する偏波アンテナを「LC偏波アンテナ」(例えば、LC偏波送信アンテナ、又は、LC偏波受信アンテナ)と呼び、右旋円偏波に対応する偏波アンテナを「RC偏波アンテナ」(例えば、RC偏波送信アンテナ、又は、RC偏波受信アンテナ)と呼ぶ。
【0037】
例えば、MIMOレーダが1回反射波(物体での反射が1回である反射波)を、LC偏波受信アンテナを用いて受信する場合について説明する。RC偏波送信アンテナからの送信信号に対応する反射波信号(例えば、「RC偏波送信アンテナに対応する受信信号」とも呼ぶ)はRC偏波としての受信信号となり、RC偏波送信アンテナに対応する受信信号をLC偏波受信アンテナで受信する場合は、交差偏波での受信となる。このため、RC偏波送信アンテナに対応する受信信号のLC偏波受信アンテナでの受信レベルは、LC偏波送信アンテナからの送信信号に対応する反射波信号(例えば、「LC偏波送信アンテナに対応する受信信号」とも呼ぶ)の受信レベルと比較して小さい受信レベル(アンテナの交差偏波識別度に依存し、例えば、10dB以上小さい受信レベル)となる。例えば、RC偏波送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルは、受信品質(例えば、Signal to Noise Ratio(SNR))によっては、ノイズレベル以下となり、MIMOレーダにおいてドップラ周波数ピーク検出も困難になり得る。
【0038】
図3は、偏波MIMOレーダにおいてCDDM送信される信号の例を示す図である。図3において、異なる偏波送信アンテナとして、LC偏波の送信アンテナ及びRC偏波の送信アンテナをそれぞれ2個用いて、合計4個のTx#1~#4を用いてMIMOレーダを構成する。ここで、Tx#1及びTx#2はLC偏波の送信アンテナとし、Tx#3及びTx#4はRC偏波の送信アンテナとする。また、図3の例では、受信アンテナはLC偏波受信アンテナを用いて受信する。
【0039】
例えば、4個のTx#1~#4に対して、図3の(a)に示すように、ドップラ多重数NDM=3、符号多重数NCM=2を用いたCDDM信号が割り当てられる。CDDMは、各送信アンテナに対して、互いに異なるDDM信号(DOP、DOP2、及びDOP3の何れか)と符号(Code1及びCode2の何れか)との組を割り当てる。
【0040】
また、図3において、黒丸(●)はLC偏波送信アンテナ(Tx#1及びTx#2)のCDDM信号の割り当てを示し、Tx#1、Tx#2には、DopCode#1=(DOP、Code)、DopCode#2=(DOP2、Code)の組がそれぞれ割り当てられる。また、図3において、白丸(○)はRC偏波送信アンテナ(Tx#3及びTx#4)のCDDM信号の割り当てを示し、Tx#3、Tx#4には、DopCode#3=(DOP3、Code2)、DopCode#4=(DOP、Code2)の組がそれぞれ割り当てられる。
【0041】
例えば、図3の(a)に示すようにCDDM信号が割り当てられ、LC偏波受信アンテナが1回反射波を受信する場合、図3の(b)に示すように、LC偏波送信アンテナに対応する受信信号(L)と比較して、RC偏波送信アンテナに対応する受信信号(R)の受信レベルが小さくなる可能性があり得る。ここで、図3において、黒丸(●)及び白丸(○)の大きさは受信電力を表す。黒丸(●)及び白丸(○)のサイズが小さいほど、受信電力が小さい(例えば、ノイズレベル程度に受信電力が小さい)ことを表す。
【0042】
また、例えば、MIMOレーダが2回反射波(物体での反射が2回である反射波)を、LC偏波受信アンテナを用いて受信する場合について説明する。LC偏波受信アンテナで受信される、LC偏波送信アンテナに対応する受信信号は、2回反射であるために、LC偏波からRC偏波としての受信信号となり、LC偏波受信アンテナでの受信は、交差偏波での受信となる。このため、LC偏波送信アンテナに対応する受信信号のレベルは、RC偏波送信アンテナに対応する受信信号と比較して小さい受信レベル(アンテナの交差偏波識別度に依存し、例えば、10dB以上小さい受信レベル)となる。例えば、LC偏波送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルは、受信品質(SNR)によっては、ノイズレベル以下となり、MIMOレーダにおいてドップラ周波数ピーク検出も困難になり得る。
【0043】
例えば、図3の(a)に示すようにCDDM信号が割り当てられ、LC偏波受信アンテナが2回反射波を受信する場合、図3の(c)に示すように、RC偏波送信アンテナに対応する受信信号(R)と比較して、LC偏波送信アンテナに対応する受信信号(L)の受信レベルが小さくなる可能性があり得る。
【0044】
ここで、MIMOレーダは、物標からの反射波のドップラ周波数、及び、その反射回数が事前に不明な場合、例えば、図3の(b)又は(c)に示す受信レベルに基づいて、RC偏波送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下したか、LC偏波送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下したかを判別することは困難である。また、例えば、MIMOレーダは、図3の(b)又は(c)に示す受信レベルに基づいて、検出されるドップラ周波数のピークが、CDDM送信に用いる何れの送信アンテナに対応する信号であるかを判別することは困難である。このため、MIMOレーダは、CDDM信号の分離が困難となり、物標からの反射波(例えば、「物標反射波」と呼ぶ)のドップラ周波数fdtgを、-1/(2Tr)≦fdtg < 1/(2Tr)の範囲で確定することが困難となる。
【0045】
例えば、物標反射波が1回反射波であり、ドップラ周波数fdtg=0の場合(RC偏波送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルがノイズレベル程度に低下する図3の(b)の上段のケースi)と、物標反射波が2回反射であり、ドップラ周波数fdtg=-1/(2Tr)+Δfdの場合(LC偏波送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルがノイズレベル程度に低下するケース)とはそれぞれ、Codeでの符号分離後の受信ドップラ周波数において、DOPとDOP2とにピーク周波数が同様に観測される。このため、これらのケースでのCDDM分離の結果は一意の応答とならず、レーダ装置は、これらのケースを判別することが困難となる。
【0046】
このように、符号化ドップラ多重MIMOレーダでは、各送信アンテナに割り当てられるCDDM信号の受信レベルが同程度であり、送信アンテナが割り当てられない符号化ドップラ信号の受信レベルがノイズレベル程度に十分に低いことを前提に、多重送信信号の分離処理が行われる。CDDMを用いる偏波MIMOレーダでは、図3の(b)、(c)のように、CDDMの分離処理での前提が崩れる場合があり、CDDM分離処理を誤る可能性がある。
【0047】
本開示の非限定的な実施例では、符号化ドップラ多重(CDDM)送信を用いた偏波MIMOレーダの検出性能を向上する方法について説明する。
【0048】
なお、ここでは、左旋円偏波(LC)及び右旋円偏波(RC)の両方の偏波毎に2個の送信アンテナを用いてMIMOレーダを構成する場合(例えば、送信アンテナ数Nt=4)の例について説明したが、偏波MIMOレーダにおいて用いる偏波はこれらに限定されない。
【0049】
例えば、偏波MIMOレーダにおいて、直交関係となる異なる直線偏波が適用されてもよい。例えば、左旋円偏波(LC)の代わりに垂直偏波を適用し、右旋円偏波(RC)の代わりに水平偏波を適用するように、直線で互いに直交偏波となる関係の偏波が適用されてもよい。このような垂直偏波及び水平偏波の送信アンテナを用いてレーダ送信波が送信される場合、レーダ送信波が物標において反射する際の入射角が、ブリュースター角に近いほど、垂直偏波及び水平偏波の何れか一方の偏波の反射波は、他方の偏波と比較して弱い反射波受信レベルとなり得る。MIMOレーダにおいて、例えば、このような反射波が、垂直偏波又は水平偏波の何れかに対応する偏波受信アンテナを用いて受信される場合、垂直偏波及び水平偏波の何れか一方の偏波送信アンテナに対応する受信信号は、交差偏波での受信となり、他方の偏波送信アンテナに対応する受信信号と比較して小さい受信レベル(アンテナの交差偏波識別度に依存し、例えば、10dB以上小さい受信レベル)となり得る。受信レベルが低下する受信信号は、受信品質(SNR)によっては、ノイズレベル以下となり、MIMOレーダにおいてドップラ周波数ピーク検出も困難になり得る。
【0050】
例えば、左旋円偏波(LC)の代わりに垂直偏波を適用し、右旋円偏波(RC)の代わりに水平偏波を適用し、図3の(a)のようにCDDM信号を割り当てた場合、図3の(b)又は図3の(c)のような受信信号となり得る。
【0051】
垂直偏波及び水平偏波の送信アンテナを用いる場合でも、MIMOレーダは、例えば、図3の(b)又は(c)に示す受信レベルに基づいて、水平偏波送信アンテナからの送信信号の受信レベルが低下したか、垂直偏波送信アンテナからの送信信号の受信レベルが低下したかを判別することは困難である。このため、例えば、MIMOレーダは、CDDM信号の分離が困難となり、物標反射波のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd < 1/(2Tr)の範囲で確定することが困難となる。
【0052】
以下、本開示の一実施例に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
【0053】
以下では、レーダ装置において、送信ブランチにおいて、複数の送信アンテナから同時に多重された異なる送信信号を送出し、受信ブランチにおいて、各送信信号を分離して受信処理を行う構成(例えば、MIMOレーダ構成)について説明する。
【0054】
また、以下では、一例として、チャープ(chirp)パルスのような周波数変調したパルス波を用いたレーダ方式(例えば、チャープパルス送信(fast chirp modulation)とも呼ぶ)の構成について説明する。ただし、変調方式は、周波数変調に限定されない。例えば、本開示の一実施例は、パルス列を位相変調又は振幅変調して送信するパルス圧縮レーダを用いたレーダ方式についても適用可能である。
【0055】
また、レーダ装置は、例えば、ドップラ多重送信を行う。更に、レーダ装置は、例えば、ドップラ多重送信においてドップラ多重数分の異なる位相回転(例えば、位相シフト)を付与した信号(以下、「ドップラ多重(DDM)送信信号」と呼ぶ)を、符号化(例えば、CDM(Code Division Multiplexing))して、多重送信する(以下、「符号化ドップラ多重(Coded Doppler Division Multiplexing(CDDM))と呼ぶ)。
【0056】
[レーダ装置の構成]
図4のレーダ装置10は、レーダ送信部(送信ブランチ)100と、レーダ受信部(受信ブランチ)200と、を有する。
【0057】
レーダ送信部100は、レーダ信号(レーダ送信信号)を生成し、複数の送信アンテナ(例えば、Nt個)によって構成される送信アンテナ部109(例えば、送信アレーアンテナ)を用いて、レーダ送信信号を規定された送信周期(以下、「レーダ送信周期」と呼ぶ)にて送信する。
【0058】
レーダ受信部200は、物標(ターゲット。図示せず)により反射したレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202-1~202-Naを含む受信アンテナ部202(例えば、受信アレーアンテナ)を用いて受信する。レーダ受信部200は、各受信アンテナにおいて受信した反射波信号を信号処理し、例えば、物標の有無検出又は反射波信号の到来距離、ドップラ周波数(例えば、相対速度)、及び到来方向の推定を行い、推定結果に関する情報(例えば、測位情報)を出力する。
【0059】
なお、レーダ装置10は、例えば、車両といった移動体に搭載されてよく、レーダ受信部200の測位出力(推定結果に関する情報)は、例えば、衝突安全性を高める先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)又は自動運転システムといった制御装置ECU(Electronic Control Unit)(図示なし)に接続され、車両駆動制御又は警報発呼制御に利用されてもよい。
【0060】
また、レーダ装置10は、例えば、路側の電柱又は信号機といった比較的高所の構造物(図示なし)に取り付けられてよい。また、レーダ装置10は、例えば、通行する車両又は歩行者の安全性を高める支援システム又は不審者の侵入防止システム(図示なし)におけるセンサとして利用されてもよい。また、レーダ受信部200の測位出力は、例えば、安全性を高める支援システム又は不審者侵入防止システムにおける制御装置(図示なし)に接続され、警報発呼制御又は異常検出制御に利用されてもよい。なお、レーダ装置10の用途はこれらに限定されず、他の用途に利用されてもよい。
【0061】
また、物標はレーダ装置10が検出する対象の物体であり、例えば、車両(4輪及び2輪を含む)、人、ブロック又は縁石などを含む。
【0062】
[レーダ送信部100の構成]
レーダ送信部100は、レーダ送信信号生成部101と、位相回転量設定部105と、位相回転部108と、送信アンテナ部109と、を有する。
【0063】
レーダ送信信号生成部101は、レーダ送信信号を生成する。レーダ送信信号生成部101は、例えば、送信信号生成制御部102、変調信号発生部103及びVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発信器)104を有する。以下、レーダ送信信号生成部101における各構成部について説明する。
【0064】
送信信号生成制御部102は、例えば、レーダ送信周期毎の送信信号発生タイミングを設定し、設定した送信信号発生タイミングに関する情報を、変調信号発生部103及び位相回転量設定部105(例えば、ドップラシフト設定部106)に出力する。ここで、レーダ送信周期をTrとする。
【0065】
変調信号発生部103は、送信信号生成制御部102から入力されるレーダ送信周期Tr毎の送信信号発生タイミングに関する情報に基づいて、例えば、のこぎり歯形状の変調信号を周期的に発生させる。
【0066】
VCO104は、変調信号発生部103から入力される変調信号に基づいて、例えば、図5に示すようなレーダ送信信号(レーダ送信波)として、周波数変調信号(以下、例えば、周波数チャープ信号又はチャープ信号と呼ぶ)を位相回転部108、及び、レーダ受信部200(後述するミキサ部204)へ出力する。
【0067】
位相回転量設定部105は、送信信号生成制御部102から入力されるレーダ送信周期Tr毎の送信信号発生タイミングに関する情報に基づいて、位相回転部108におけるレーダ送信周期Tr毎にレーダ信号に付与する位相回転量(例えば、CDDM送信に対応する位相回転量)を設定する。位相回転量設定部105は、例えば、ドップラシフト設定部106と、符号化部107と、を有する。
【0068】
ドップラシフト設定部106は、例えば、レーダ送信周期Tr毎の送信信号発生タイミングに関する情報に基づいて、レーダ送信信号(例えば、チャープ信号)に対して付与するドップラシフト量に対応する位相回転量を設定する。
【0069】
符号化部107は、例えば、レーダ送信周期Tr毎の送信信号発生タイミングに関する情報に基づいて、符号化に対応する位相回転量を設定する。符号化部107は、例えば、ドップラシフト設定部106から入力される位相回転量と符号化に対応する位相回転量とに基づいて、位相回転部108に対する位相回転量を算出し、位相回転部108に出力する。また、符号化部107は、例えば、符号化に用いる符号系列(例えば、直交符号系列の各要素)に関する情報をレーダ受信部200(例えば、出力切替部209)に出力する。
【0070】
位相回転部108は、VCO104から入力されるチャープ信号に対して、符号化部107から入力される位相回転量を付与し、位相回転後の信号を送信アンテナ部109に出力する。例えば、位相回転部108は、位相器及び位相変調器等を含む(図示せず)。位相回転部108の出力信号は、規定された送信電力に増幅され各送信アンテナから空間に放射される。例えば、レーダ送信信号は、ドップラシフト量と符号系列との組み合わせに対応する位相回転量が付与されることにより、複数の送信アンテナから多重送信される。
【0071】
次に、位相回転量設定部105における位相回転量の設定方法の一例を説明する。
【0072】
ドップラシフト設定部106は、ドップラシフト量DOPndmを付与するための位相回転量φndmを設定して、符号化部107へ出力する。ここで、ndm=1~NDMである。NDMは、異なるドップラシフト量の設定数であり、以下では、「ドップラ多重数」と呼ぶ。
【0073】
レーダ装置10では、符号化部107による符号化を併用するため、ドップラ多重数NDMは、多重送信に用いる送信アンテナの数Ntよりも少なく設定してよい。なお、ドップラ多重数NDMは2以上とする。
【0074】
DOP1、DOP2,~,DOPN_DM(「N_DM」は「NDM」とも表される)としては、例えば、等間隔のドップラシフト量が設定されてもよく、或いは、不等間隔のドップラシフト量が設定されてもよい。各DOP1,DOP2,~,DOPN_DMは、後述する符号化部107による符号化を併用するため、例えば、0≦DOP1,DOP2,~,DOPN_DM<1/(TrLoc)を満たすように設定されてよい。あるいは、DOP1,DOP2,~,DOPN_DMは、例えば、式(1)を満たすように設定されてもよい。
【数1】
【0075】
また、例えば、DOP1,DOP2,~,DOPN_DM間において最小のドップラシフト間隔ΔfMinIntervalは次式(2)を満たしてよい。なお、ドップラシフト間隔(又は、ドップラ多重間隔、ドップラ間隔とも記載)は、DOP1,DOP2,~,DOPN_DMのうちの任意の2つのドップラシフト量の差分の絶対値で定義されてよい。ここで、Locは符号要素数を表す。例えば、Locは、符号化部107において用いられる符号の符号長を表す。
【数2】
【0076】
また、各DOP1,DOP2,~,DOPN_DMを付与するための位相回転量φndmは、例えば、次式(3)のように割り当てられてよい。
【数3】
【0077】
なお、間隔が等間隔でΔfMinIntervalとなるドップラシフト量が設定される場合(以下、「等間隔ドップラシフト量設定」と呼ぶ)、DOPndmを付与するための位相回転量φndmは、例えば、次式(4)のように割り当てられる。
【数4】
【0078】
なお、最小ドップラシフト間隔ΔfMinIntervalが狭いほど、DDM信号間の干渉が発生しやすくなり、ターゲット検出精度が低減(例えば、劣化)する可能性が高くなるため、式(2)の制約条件を満たす範囲において、ドップラシフト量の間隔をより拡げることが好適になる。例えば、式(2)において等号が成り立つ場合(例えば、ΔfMinInterval=1/(Tr NDM LOC))は、DDM信号間のドップラ領域における間隔を最大限に拡げることができる(以下、「最大等間隔ドップラシフト量設定」と呼ぶ)。この場合、DOP1,DOP2,~,DOPN_DMは、0以上2π未満の位相回転範囲をNDM個に等分割して、それぞれ異なる位相回転量が割り当てられる。例えば、DOPndmを付与するための位相回転量φndmは、次式(5)のように割り当てられる。なお、以下では、角度はラジアン単位で示している。
【数5】
【0079】
なお、DOP1,DOP2,~,DOPN_DMを付与する位相回転量の割り当ては、このような割り当て方法に限定されない。例えば、位相回転量の割り当てテーブルを用いて、DOP1,DOP2,~, DOPN_DMに対して位相回転量φ12,~,φN_DM(ただし、「N_DM」はNDMに相当する)をランダム的に割り当ててもよい。
【0080】
また、等間隔ドップラシフト量設定において、式(4)でΔfMinInterval=1/(Tr(NDM+Nint)LOC)に設定されることにより、次式(6)のような位相回転量の設定を用いてもよい。ここで、Nintは整数値をとる。
【数6】
【0081】
符号化部107は、ドップラシフト設定部106から入力されるNDM個のドップラシフト量を付与する位相回転量φ1,~,φN_DMのそれぞれに対して、1個、又は、NCM個以下の複数の符号系列に基づく位相回転量を設定する。また、符号化部107は、ドップラシフト量及び符号系列の双方に基づく位相回転量、例えば、符号化したドップラ多重信号(CDDM信号)を生成する「符号化ドップラ位相回転量」(以下では、CDP量と略記する)を設定し、位相回転部108に出力する。
【0082】
以下、符号化部107における動作の一例について説明する。
【0083】
例えば、符号化部107は、符号長Locからなる符号数(例えば、符号多重数)NCM個の相互に相関が低い符号系列あるいは無相関となる符号系列を用いることが好適であり、例えば、直交符号系列を用いる。なお、直交符号系列を構成する符号要素には、実数に限らず、複素数値が含まれてもよい。
【0084】
以下では、符号長LocからなるNCM個の直交符号系列をCodencm={OCncm(1), OCncm(2),~, OCncm(Loc))と表記する。OCncm(noc)は第ncm番目の直交符号系列Codencmにおけるnoc番目の符号要素を表す。ここでnocは符号要素のインデックスであり、noc=1~Locである。
【0085】
符号化部107において用いる直交符号系列は、例えば、Walsh-Hadamard-符号でもよい。符号化部107は、符号数NCM個の直交符号系列を生成可能な所定の符号長LOCを用いて直交符号系列を生成する。
【0086】
符号化部107において、ドップラシフト設定部106から入力されるndm番目のドップラシフト量DOPndmを用いたDDM信号を符号化する際の符号多重数(以下、符号化ドップラ多重数と呼ぶ)を「NCDDM(ndm)」と表記する。ここで、ndm=1~NDMである。
【0087】
符号化部107は、例えば、DDM信号を符号化する際の符号化ドップラ多重数NCDDM(1), NCDDM(2),~, 及びNCDDM(NDM)の総和が、多重送信に用いる送信アンテナの数Ntと等しくなるように符号化ドップラ多重数NCDDM(ndm)を設定する。これにより、レーダ装置10は、Nt個の送信アンテナを用いてドップラ領域及び符号領域における多重送信(以下、符号化ドップラ多重送信(CDDM送信)と呼ぶ)が可能となる。
【0088】
さらに、符号化部107は、例えば、最大等間隔ドップラシフト量設定を含む等間隔ドップラシフト量設定を用いて、符号化ドップラ多重数NCDDM(1), NCDDM(2),~, NCDDM (NDM)に関して、1以上NCM個以下の範囲の異なる符号化ドップラ多重数を含むように設定してもよい。例えば、符号化部107は、符号化ドップラ多重数の全てにおいて符号数NCM個とせずに、少なくとも1つのDOPndmに対応する符号化ドップラ多重数NCDDM(ndm)をNCM個より小さく設定する。よって、DOPndmと直交符号系列との複数の組み合わせにおいて、少なくとも1つのDOPndmに対応付けられる直交符号系列による多重数(符号化ドップラ多重数)NCDDM(ndm)は、他のドップラシフト量に対応付けられる符号化ドップラ多重数と異なってよい。例えば、符号化部107は、DDM信号に対する符号化ドップラ多重数を不均一に設定する。この設定により、レーダ装置10は、例えば、特許文献6及び特許文献7に記載された受信処理における折り返し判定処理によって、±1/2Trのドップラ範囲に亘って、複数の送信アンテナからCDDM送信された信号を個別に分離して受信できる。
【0089】
符号化部107は、第m番目の送信周期Trにおいて、第ndm番目のドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量φndmに対して、次式(7)に示すCDP量ψndc(ndm), ndm(m)を設定して、位相回転部108に出力する。
【数7】
【0090】
ここで、下付き添え字の「ndc(ndm)」は、ドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量φndmに対する符号化ドップラ多重数NCDDM(ndm)以下のインデックスを表す。例えば、ndc(ndm)=1,~, NCDDM(ndm)である。また、angle[x]は実数xのラジアン位相を出力する演算子であり、例えば、angle[1]=0、angle[-1]=π、angle[j]=π/2である。
【0091】
例えば、式(7)に示すように、CDP量ψndc(ndm),ndm(m)は、符号化に用いる符号長Loc回の送信周期の期間においてドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量を一定(例えば、式(7)の第1項)にし、符号化で用いる符号Codendc(ndm)のLoc個の各符号要素OCndc(ndm)(1),~,OCndc(ndm)(Loc)の各々に対応する位相回転量を付与する(式(7)の第2項目)。
【0092】
また、符号化部107は、送信周期(Tr)毎に、直交符号要素インデックスOC_INDEXをレーダ受信部200(後述する出力切替部209)に出力する。OC_INDEXは、直交符号系列Codendc(ndm)の要素を指示する直交符号要素インデックスであり、送信周期(Tr)毎に、次式(8)のように、1からLocの範囲で巡回的に可変する。
【数8】
【0093】
ここで、mod(x, y)はモジュロ演算子であり、xをyで割った後の余りを出力する関数である。また、m=1~Ncである。Ncはレーダ測位に用いる送信周期数(以下では、「レーダ送信信号送信回数」と呼ぶ)である。また、レーダ送信信号送信回数Ncは、Locの整数倍(Ncode倍)となるように設定される。例えば、Nc=Loc×Ncodeである。
【0094】
次に、符号化部107において、DDM信号に対する符号化ドップラ多重数NCDDM(ndm)を不均一に設定する方法の一例について説明する。
【0095】
例えば、符号化部107は、下記の条件を満たす直交符号系列数(例えば、符号多重数又は符号数)NCMを設定する。例えば、直交符号系列数NCM及びドップラ多重数NDMは、多重送信に用いる送信アンテナの数Ntに対して、以下の関係を満たす。
(直交符号系列数NCM)×(ドップラ多重数NDM)>多重送信に用いる送信アンテナ数Nt
【0096】
次に、CDP量ψndc(ndm), ndm(m)の設定例について説明する。
【0097】
例えば、符号化部107において、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=3、ドップラ多重数NDM=2、符号多重数NCM=2とし、符号長Loc=2の直交符号系列Code1={1,1}、Code2={1,-1}を用いる場合について説明する。この場合、例えば、図6に示すように、符号化ドップラ多重数をNCDDM(1)=1、NCDDM(2)=2とすると、符号化部107は、CDP量ψ1, 1(m), ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)を設定して、位相回転部108に出力する。例えば、CDP量ψ1, 1(m)を設定する場合、符号化部107は、次式(9)のような設定を行う。なお、図6において、「〇」は使用されるドップラシフト量と直交符号を表し、「×」は使用されないドップラシフト量と直交符号の割り当てを表す。
【数9】
【0098】
以上、位相回転量設定部105における位相回転量の設定方法について説明した。
【0099】
図4において、位相回転部108は、位相回転量設定部105において設定されたCDP量ψndc(ndm), ndm(m)に基づいて、レーダ送信信号生成部101から入力されるチャープ信号に対して、送信周期Tr毎に位相回転量を付与する。ここで、ndm=1~NDMであり、ndc(ndm)=1~NCDDM(ndm)である。
【0100】
Nt個の位相回転部108からの出力(例えば、符号化ドップラ多重信号(CDDM信号)と呼ぶ)は、規定された送信電力に増幅後に、送信アンテナ部109のNt個の送信アンテナからそれぞれ空間に放射される。
【0101】
なお、以下では、CDP量ψndc(ndm), ndm(m)を付与する位相回転部108を、「位相回転部PROT#[ndc(ndm), ndm]」とも表記する。同様に、位相回転部PROT#[ndc(ndm), ndm]の出力を空間に放射する送信アンテナを、「送信アンテナTx#[ndc(ndm), ndm]」とも表記する。ここで、ndm=1~NDMであり、ndc(ndm) =1~NCDDM(ndm)である。あるいは、Nt個の送信アンテナは、Tx#1、Tx#2、~、Tx#Ntとも表記する。Tx#1、Tx#2、~、Tx#Ntから送信されるレーダ送信信号に付与されるCDP量は、予め既知のテーブルなどを用いて関係付けることも可能である。例えば、CDP量ψndc(ndm), ndm(m)が判定(あるいは検出)されることで、送信アンテナの判定(あるいは検出)が可能となる。
【0102】
例えば、図6に示す例の場合、符号化部107から位相回転部108に対して、CDP量ψ1, 1(m), ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)が送信周期毎に入力される。
【0103】
例えば、位相回転部PROT#[1, 1]は、レーダ送信信号生成部101で送信周期毎に生成されたチャープ信号cp(t)に対して、第m番目の送信周期毎において位相回転量ψ1, 1(m)を付与した信号exp[jψ1, 1(m)]cp(t)を出力する。また、位相回転部PROT#[1, 1]の出力は、送信アンテナTx#[1, 1]から出力される。ここでcp(t)は送信周期毎のチャープ信号を表す。同様に、位相回転部PROT#[1, 2]の出力は、Tx#[1, 2]から出力され、位相回転部PROT#[2, 2]の出力は、Tx#[2, 2]から出力される。
【0104】
以上、CDP量ψndc(ndm), ndm(m)の設定例について説明した。
【0105】
また、本実施の形態では、ドップラ多重信号に対する符号化ドップラ多重数NCDDM(ndm)を不均一に設定する場合、ドップラシフト量DOPndmと直交符号系列Codencmとの組み合わせにおいて、各ドップラシフト量DOPndmに対応する直交符号系列Codencmの多重数(例えば、符号化ドップラ多重数NCDDM(ndm))は異なってよい。
【0106】
また、本実施の形態では、ドップラ多重信号に対する符号化ドップラ多重数NCDDM(ndm)を均一に設定する場合、DOPndmと直交符号系列Codencmとの組み合わせにおいて、DOPndmそれぞれに対応する直交符号系列Codencmの多重数(例えば、符号化ドップラ多重数NCDDM(ndm))は同一でよい。この場合、DOPndmと直交符号系列との複数の組み合わせの数と、送信アンテナNt個と、が同数となってもよい(例えば、NDM×NCM=Ntとしてもよい)。
【0107】
また、本実施の形態では、例えば、送信アンテナ部109のTx#1~Tx#Ntは、少なくとも2種類の異なる偏波の送信アンテナを含み、偏波レーダを構成する。例えば、Tx#1~Tx#Ntは、異なる偏波として互いに直交偏波となる関係の送信アンテナを含んでよい。また、複数の偏波のうち少なくとも一つの偏波の送信アンテナは複数個あってよく、他の偏波の送信アンテナは少なくとも一つあってよい。
【0108】
レーダ装置10(例えば、位相回転量設定部105)は、例えば、異なる偏波の送信アンテナを考慮して、送信アンテナ毎に異なるCDP量ψndc(ndm), ndm(m)を設定する。レーダ装置10(例えば、位相回転部108)は、このように設定されたCDP量ψndc(ndm), ndm(m)をチャープ信号に付与して、送信アンテナ部105に出力してよい。
【0109】
これにより、異なる偏波の送信アンテナに対応する受信信号間において受信レベルが大きく異なる場合(例えば、受信レベル差あるいは受信レベル比が閾値以上の場合)でも、レーダ装置10は、符号化ドップラ多重信号の分離を可能とし、測位性能及びレーダ検出性能の劣化を防ぐ(動作例については後述する)。
【0110】
以下、少なくとも2種類の異なる偏波の送信アンテナを含む偏波MIMOレーダを構成する場合のレーダ送信部100における位相回転量設定部105の動作例について説明する。
【0111】
なお、送信アンテナ数Nt≧3、ドップラ多重数NDM≧2、符号多重数NCM≧2であり、Nt<NDM×NCMである。このように、複数の送信アンテナの数Ntは、ドップラシフト量と符号系列との組み合わせの総数(NDM×NCM)よりも少なくてもよい。なお、これに限らず、Ntは、ドップラシフト量と符号系列との組み合わせの総数(NDM×NCM)と同数でもよい。
【0112】
また、送信アンテナに含まれる異なる偏波数(以下、送信偏波数と呼ぶ)を「NPL」と表記する。また、第qの偏波を「PLq」と記載する。qは、送信偏波数NPL内の整数値(例えば、q=1~NPLの何れか)である。
【0113】
また、PLq偏波の送信アンテナ数を「NPLq」と表記する。NPLq≧1であり、各PLq偏波の送信アンテナの総和はNt個である。例えば、NPL=2の場合、PL1偏波の送信アンテナ数NPL1≧1、PL2偏波の送信アンテナ数NPL2≧1であり、NPL1+NPL2=Ntである。
【0114】
また、PLq偏波の送信アンテナに割り当てられるドップラ多重数を「NDM_PLq」と表記する。ここで、NDM_PLq≦NDMである。例えば、NPL=2の場合、NDM_PL1、NDM_PL2≦NDMである。
【0115】
レーダ装置10は、異なるPL1偏波及びPL2偏波の送信アンテナをそれぞれNPL1, NPL2個含み、少なくとも2つの偏波を用いる。レーダ装置10(例えば、偏波MIMOレーダ)のレーダ送信部100における位相回転量設定部105は、DDM信号に対する符号化ドップラ多重数NCDDM(ndm)を不均一に設定し、かつ、下記の条件1を満たすCDP量ψndc(ndm), ndm(m)を設定する。ここで、ndm=1~NDMであり、ndc(ndm)=1~NCDDM(ndm)である。
【0116】
<条件1>
例えば、PL1偏波の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量及び符号系列のパターン(例えば、符号化ドップラ多重(CDDM)パターンと、PL2偏波の送信アンテナに対して割り当てられるCDDMパターンとを異ならせる。例えば、位相回転量設定部105は、PL1偏波の送信アンテナ及びPL2偏波の送信アンテナのそれぞれに、異なるドップラ多重(DDM)パターン(例えば、ドップラシフト量の割り当てパターン)の条件、異なる符号多重(CDM)パターン(例えば、DDM信号間で異なる符号多重数)の条件、あるいは、DDM及びCDMの異なるパターンの条件を満たすCDP量ψndc(ndm), ndm(m)を設定する。
【0117】
例えば、異なるDDMパターンの条件は、以下の何れか一つの条件(例えば、「条件1A」又は「条件1の1A」とも呼ぶ)でもよい。
1A)異なるドップラ多重信号パターン条件:
(A-1)各偏波に対応するドップラ多重数(例えば、各偏波の送信アンテナから送信される送信信号のドップラ多重数)が同一であり(例えば、NDM_PL1=NDM_PL2。ただし、NDM_PL1=NDM_PL2≧2)、各偏波において異なるドップラシフト間隔(例えば、各偏波の送信アンテナに対応付けられるドップラシフト量の間隔)を含む。
(A-2)偏波毎のドップラ多重数(例えば、各偏波の送信アンテナから送信される送信信号のドップラ多重数)が異なる(NDM_PL1≠NDM_PL2)。
(A-3)NDM_PL1≧3、NDM_PL2≧3の場合に、偏波毎のドップラシフト間隔において、同一のドップラシフト間隔を含む場合に、ドップラシフト間隔の順序が異なる(巡回不一致)。
【0118】
また、例えば、異なるCDMパターンの条件は、以下の何れか一つの条件(例えば、「条件1B」とも呼ぶ)でもよい。
(B-1)各ドップラ多重信号に割り当てる符号間隔(例えば、符号インデックス間隔)が異なる(巡回不一致)。
(B-2)各ドップラ多重信号に割り当てる符号多重数が異なる(巡回不一致)。
【0119】
また、位相回転量設定部105は、例えば、更に、以下の条件2を満たすようにCDP量ψndc(ndm), ndm(m)を設定してもよい。
【0120】
<条件2>
同一偏波の送信アンテナから送信される信号は、ドップラ多重信号間において不均一となる符号多重数によって多重送信され、符号多重数は、1からNCM-1以下の範囲の何れかを含む(NCM=2の場合、符号多重数1を含む)。例えば、ドップラシフト量及び符号系列の複数の組み合わせにおいて、PL1偏波及びPL2偏波の少なくとも一方の送信アンテナに関して、少なくとも1つのドップラシフト量に対応付けられる符号系列による符号多重数は、他のドップラシフト量に対応付けられる符号系列による符号多重数と異なる。
【0121】
例えば、条件1のA-3では、PL1偏波の送信アンテナとPL2偏波の送信アンテナとで、割り当てられるドップラシフト量の複数の間隔のそれぞれの値(例えば、ドップラシフト間隔の組み合わせ)が同一である場合、PL1偏波の送信アンテナに対応する複数のドップラシフト間隔のドップラ周波数軸上での順序と、PL2偏波の送信アンテナに対応する複数のドップラシフト間隔のドップラ周波数軸上の順序と、が異なってよい。例えば、PL1偏波の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量の間隔をドップラ周波数軸の小さい方から順に並べた配列に含まれる各間隔の組み合わせと、PL2偏波の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量の間隔をドップラ周波数軸の小さい方から順に並べた配列に含まれる各間隔の組み合わせとが一致し、かつ、第1の配列と第2の配列とは、円順列において異なる配列である。条件1のA-3を満たす場合、PL1偏波の送信アンテナのドップラシフト間隔、及び、PL2偏波の送信アンテナのドップラシフト間隔は、何れか一方をドップラ周波数領域において巡回シフトしても一致しない(巡回不一致となる)。
【0122】
また、例えば、条件1のB-1では、PL1偏波の送信アンテナに対応付けられる符号系列のドップラ周波数軸上での順序と、PL2偏波の送信アンテナに対応付けられる符号系列のドップラ周波数軸上での順序と、が異なってよい。例えば、PL1偏波の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量に対応する符号系列のインデックスをドップラ周波数軸の小さい方から順に並べた配列と、PL2偏波の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量に対応する符号系列のインデックスをドップラ周波数軸の小さい方から順に並べた配列とは、円順列において異なる配列である。条件1のB-1を満たす場合、PL1偏波の送信アンテナの各ドップラシフト量に対応する符号系列のインデックス、及び、PL2偏波の送信アンテナの各ドップラシフト量に対応する符号系列のインデックスは、何れか一方をドップラ周波数領域において巡回シフトしても一致しない(巡回不一致となる)。
【0123】
また、例えば、条件1のB-2では、PL1偏波の送信アンテナに対応付けられる符号系列による符号多重数のドップラ周波数軸上での順序と、PL2偏波の送信アンテナに対応付けられる符号系列による符号多重数のドップラ周波数軸上での順序と、が異なってよい。例えば、PL1偏波の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量に対応する符号多重数をドップラ周波数軸の小さい方から順に並べた配列と、PL2偏波の送信アンテナに割り当てられるドップラシフト量に対応する符号多重数をドップラ周波数軸の小さい方から順に並べた配列とは、円順列において異なる配列である。条件1のB-2を満たす場合、PL1偏波の送信アンテナの各ドップラシフト量に対応する符号多重数、及び、PL2偏波の送信アンテナの各ドップラシフト量に対応する符号多重数は、何れか一方をドップラ周波数領域において巡回シフトしても一致しない(巡回不一致となる)。
【0124】
レーダ装置10は、上記条件1を満たすようなCDP量を送信アンテナに付与することにより、以下のような効果が得られる。
【0125】
例えば、受信信号におけるドップラ周波数は、上記のような送信時の符号化ドップラ位相回転に加え、未知となる物標のドップラ周波数が加わる。そのため、各ドップラ多重信号間の間隔を維持したまま、それらのドップラ周波数が正方向又は負方向に変化する可能性がある。例えば、条件1の1Aを満たすことにより、レーダ装置10は、PL1偏波の送信アンテナに割り当てられる符号化ドップラ多重信号を受信し、PL2偏波の送信アンテナに割り当てられるCDDM信号を受信しない場合と、PL2偏波の送信アンテナに割り当てられるCDDM信号を受信し、PL1偏波の送信アンテナに割り当てられるCDDM信号を受信しない場合とで、ドップラ多重信号の間隔又はドップラ多重数(例えば、DDMパターン)が異なるため、これらの判別が可能となる。
【0126】
また、例えば、条件1の1Bを満たすことにより、レーダ装置10は、PL1偏波の送信アンテナに割り当てられるCDDM信号を受信し、PL2偏波の送信アンテナに割り当てられるCDDM信号を受信しない場合と、PL2偏波の送信アンテナに割り当てられるCDDM信号を受信し、PL1偏波の送信アンテナに割り当てられるCDDM信号を受信しない場合とで、各ドップラ多重信号を符号分離した後に、受信レベルが高くなる符号間隔又は符号多重数(例えば、CDMパターン)が異なるため、これらの判別が可能となる。
【0127】
よって、位相回転量設定部105によるCDP量の設定が条件1を満たすことにより、異なる偏波の送信アンテナに対応する受信信号間において受信レベルが大きく異なる場合でも、レーダ装置10は、CDDM信号の分離を可能とし、測位性能及びレーダ検出性能の劣化を防ぐことができる。
【0128】
また、位相回転量設定部105によるCDP量の設定が、条件1に加え、条件2を満たすことにより、レーダ装置10において検出可能なドップラ周波数範囲は、-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲となり、1送信アンテナの場合のドップラ検出範囲と同等の範囲に拡大できる(例については後述する)。
【0129】
例えば、レーダ装置10によるCDDM送信において、条件1及び条件2の双方を満たしてもよく、条件1を満たし、条件2を満たさなくてもよい。例えば、条件1を満たし、条件2を満たさないケースとして、以下の3つのケースが挙げられる。
【0130】
ケース1は、PL1偏波及びPL2偏波の何れとも条件2を満たさないケースであり、検出可能なドップラ周波数範囲fdは、-1/(2 Tr)≦fd <1/(2Tr)の範囲、あるいは、-1/(2Loc NDM_PL1Tr)≦fd <1/(2Loc NDM_PL1Tr)の範囲あるいは、-1/(2Loc NDM_PL2Tr)≦fd <1/(2Loc NDM_PL2Tr)の範囲となる。ケース2は、PL2偏波が条件2を満たさないケースであり、検出可能なドップラ周波数範囲fdは、-1/(2Tr)≦fd <1/(2Tr)の範囲あるいは-1/(2Loc NDM_PL2Tr)≦fd < 1/(2Loc NDM_PL2Tr)の範囲となる。ケース3は、PL1偏波が条件2を満たさないケースであり、検出可能なドップラ周波数範囲fdは、-1/(2 Tr)≦fd <1/(2Tr)の範囲あるいは-1/(2Loc NDM_PL1Tr)≦fd <1/(2 Loc NDM_PL1Tr)の範囲である。
【0131】
ケース1~3の何れのケースでも、Nt>Loc NDM_PL1あるいはNt>Loc NDM_PL2を満たすことにより、検出可能なドップラ周波数範囲を、等間隔ドップラ多重の場合のドップラ検出範囲-1/(2NtTr)≦fd <1/(2NtTr)よりも拡大できる。
【0132】
以下、位相回転量設定部105におけるCDP量の設定例について説明する。
【0133】
なお、以下では、Tx#n1及びTx#n2に付与するドップラシフト量の間隔をドップラシフト間隔「Δfd(n1, n2)」と表記する。ここで、Δfd(n1, n2)は、Tx#n1に付与されるドップラシフト量DOPn1を基準としたTx#n2に付与されるドップラシフト量DOPn2との間隔(DOPn2-DOPn1)を表す。なお、ドップラシフト間隔Δfd(n1, n2)が負値となる場合(例えば、(DOPn2-DOPn1)<0となる場合)は、後述するドップラ解析部210での観測範囲である-1/(2 Loc Tr)以上、かつ、1/(2 Loc Tr)未満の範囲での折り返しを考慮して、Δfd(n1, n2)=1/Loc Tr-Δfd(n1, n2)を用いてドップラシフト間隔Δfd(n1, n2)を算出し、正値として表す。以降の説明におけるドップラシフト間隔Δfd(n1, n2)の記載も同様の表記を用いる。
【0134】
<設定例1>
設定例1は、条件1(異なるCDMパターン条件を満たす)、及び、条件2を満たす場合のCDP量の設定例である。図7は、送信アンテナ数Nt=4、NPL1=2、NPL2=2の場合の位相回転量設定部105におけるCDP量の設定例を示す。図7において、黒丸(●)はPL1偏波の送信アンテナ(Tx#1及びTx#2)のCDDM信号の割り当てを示し、白丸(○)はPL2偏波の送信アンテナ(Tx#3及びTx#4)のCDDM信号の割り当てを示す。
【0135】
また、図7において、ドップラ多重数NDM=3であり、ドップラシフト設定部106は、3つのDOP1~DOPを、例えば、式(5)に示す最大等間隔ドップラシフト量設定を用いて設定してよく、DOP1=0を付与する位相回転量φ1=0、DOP2=Δfdを付与する位相回転量φ2=2π/3、DOP3=-Δfdを付与する位相回転量φ3=4π/3(φ3=-2π/3としてもよい)となる。図7に示すように、DDM信号間の間隔(ドップラ多重間隔、ドップラシフト間隔、あるいはドップラ間隔とも呼ぶ)Δfdは等間隔となり、Δfd=1/(6Tr)である。
【0136】
また、図7において、符号多重数NCM=2であり、符号化部107は、符号長Loc=2の、直交符号系列であるCode1={1,1}、Code2={1,-1}を用いる。また、後述する設定例2~3においても符号多重数NCM=2であり、同様の符号を用いてもよい。
【0137】
図7では、送信アンテナ数Nt=4、ドップラ多重数NDM=3、符号多重数NCM=2であり、Nt<NDM×NCMであるので、位相回転量設定部105は、DDM信号に対する符号化ドップラ多重数NCDDM(ndm)を不均一に設定できる(ここで、ndm=1~NDM)。
【0138】
図7に示すように、符号化部107において、ドップラシフト設定部106から入力される3つのDOP1~DOPを用いたDDM信号に対する符号化ドップラ多重数は、それぞれ、NCDDM(1)=1, NCDDM(2)=1, NCDDM(3)=2である。このように、位相回転量設定部105は、DDM信号に対する符号化ドップラ多重数を不均一に設定する。
【0139】
また、図7では、ドップラシフト設定部106は、PL1偏波のTx#1及びTx#2に対して、ドップラ多重数NDM=3のDDM信号のうち、例えば、DOP1、DOPを用いたDDM信号を割り当てる(NDM_PL1=2)。また、符号化部107は、PL1偏波のTx#1及びTx#2に割り当てたDOP1、DOPに対して、Code2、Code1をそれぞれ割り当てる。以下では、このような割り当てを、位相回転量設定部105は、PL1偏波のTx#1及びTx#2のそれぞれに対して、CDP量ψ2, 1(m)、ψ1, 3(m)を設定すると表記する。また、図7では、ドップラシフト設定部106は、PL2偏波の送信アンテナTx#3及びTx#4に対して、ドップラ多重数NDM=3のドップラ多重信号のうち、例えば、ドップラシフト量DOP2、DOPを用いたドップラ多重信号を割り当てる(NDM_PL2=2)。例えば、位相回転量設定部105は、PL2偏波のTx#3及びTx#4のそれぞれに対して、CDP量ψ2, 2(m)、ψ2, 3(m)を設定する。
【0140】
図7において、PL1偏波の送信アンテナ、及び、PL2偏波の送信アンテナに対して、ドップラシフト設定部106が割り当てるドップラ多重数は、NDM_PL1=NDM_PL2=2であり、同一である。また、PL1偏波のTx#1及びTx#2に割り当てられるDDM信号のドップラシフト間隔は、Δfd(1,2)=Δ2fd、Δfd(2,1)=Δfdであり、PL2偏波のTx#3及びTx#4に割り当てられるDDM信号のドップラシフト間隔は、Δfd(3,4)=Δfd、Δfd(4,3)=2Δfdであり、同一である。
【0141】
よって、図7に示すCDP量の設定は、条件1AのDDMパターン条件の何れにも合致しない。
【0142】
また、図7において、DOP1~DOPを用いたDDM信号のそれぞれに対する、PL1偏波の送信アンテナに対して割り当てられる符号は、[Code2、割り当て無し、Code1]であり、各DDM信号に割り当てられる符号多重数は、0又は1である。
【0143】
なお、以降、ドップラシフト量DOP1~DOP3を用いたDDM信号のそれぞれに対する、PL1偏波の送信アンテナに対して割り当てられる符号Indexを、「CiPL1=(2,*,1)」のように記載する。CiPL1において、「*」は符号の割り当てが無い場合を表す。また、一つのDDM信号に対して複数の符号が割り当てられる場合は、「&」を用いて表す。例えば、一つのDDM信号に対してCode1とCode2とが割り当てられる場合は、「1&2」のように表記する。符号Indexは「符号間隔」とも呼ぶ。
【0144】
また、以降、ドップラシフト量DOP1~DOP3を用いたDDM信号のそれぞれに対する、PL1偏波の送信アンテナに対して割り当てられる符号多重数を「NcPL1=(1,0,1)」(図7の場合)のように記載する。
【0145】
図7において、DOP1~DOPを用いたDDM信号のそれぞれに対する、PL2偏波の送信アンテナに対して割り当てられる符号は、[割り当て無し、Code2、Code2]であり、各DDM信号に割り当てられる符号多重数は、0又は1である。なお、PL1偏波と同様に、DOP1~DOPを用いたDDM信号のそれぞれに対する、PL2偏波の送信アンテナに対して割り当てられる符号Indexを、「CiPL2=(*,2,2)」と表記する。また、DOP1~DOP3を用いたDDM信号のそれぞれに対する、PL2偏波の送信アンテナに対して割り当てられる符号多重数を「NcPL2=(0,1,1)」のように記載する。
【0146】
このように、PL1偏波の送信アンテナ、及び、PL2偏波の送信アンテナに対して、各DDM信号に割り当てられる符号多重数は、NcPL1=(1,0,1)及びNcPL2=(0,1,1)であり、巡回一致となるため、条件1のB-2を満たさない。
【0147】
その一方で、PL1偏波の送信アンテナ、及び、PL2偏波の送信アンテナに対して、各DDM信号に割り当てられる符号Indexは、CiPL1=(2,*,1)及びCiPL2=(*,2,2)であり、異なる(又は、巡回不一致となる。以降、符号INDEX間隔が異なるとも表現する)。
【0148】
また、物標のドップラ周波数が-1/(2Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)あるいは1/(4Tr)≦fdtg<1/(2 Tr)の場合、後述するドップラ解析部210では折り返したドップラ周波数が観測される。この場合の符号IndexはCiPL1alias=(1,*,2)、及び、CiPL2alias=(*,1,1)となり、異なる(巡回不一致となる)。よって、図7の例では、物標のドップラ周波数が-1/(2Tr)≦fdtg<-1/(2Tr)の範囲において、符号Indexは巡回不一致となり、符号間隔が異なる。したがって、偏波間において各DDM信号に割り当てられる符号間隔が異なるので、条件1のB-1を満たし、異なるCDMパターン条件に合致する。
【0149】
以上より、図7に示すCDP量の設定は、条件1を満たす設定例である。
【0150】
また、図7では、PL1偏波の送信アンテナにおいて各DDM信号に割り当てられる符号多重数は、NcPL1=(1,0,1)であり、PL2偏波の送信アンテナにおいて各DDM信号に割り当てられる符号多重数は、NcPL2=(0,1,1)であり、両方ともDDM信号間で不均一となる符号多重数で多重送信され、符号多重数は、1からNCM -1以下の範囲に含まれる。
【0151】
よって、図7の例では、同一偏波(例えば、PL1偏波及びPL2偏波のそれぞれ)の送信アンテナから送信される信号は、DDM信号間において不均一となる符号多重数で多重送信され、符号多重数は、1からNCM-1以下の範囲に含まれる。したがって、図7に示すCDP量の設定は、PL1偏波及びPL2偏波の双方において条件2を満たす設定例である。
【0152】
以下、図7に示すような位相回転量設定部105におけるCDP量の設定に基づき、例えば、PL1偏波を左旋円偏波(LC)とし、PL2偏波を右旋円偏波(RC)とする送信アンテナ部109を用いて、また、受信アンテナ部202が、LC偏波(PL1偏波)アンテナを用いる場合のドップラ解析部210の出力における受信信号の例について説明する。
【0153】
図8は、或る距離インデックスにおける物標反射波のドップラ解析部210の出力例を示す。例えば、物標反射波にはfdtgの物標のドップラ周波数が含まれる。したがって、レーダ装置10は、レーダ送信部100において設定したドップラシフト量からfdtg分のドップラシフトを受けた信号を受信する。図8では、一例として、物標反射波のドップラ周波数fdtg=0の場合、及び、fdtg=-1/(2Tr)の場合を示す。
【0154】
なお、図8において、黒丸(●)及び白丸(○)の大きさで受信電力を表している。黒丸(●)及び白丸(○)のサイズが小さいほど、受信電力が小さい(例えば、ノイズレベル程度に受信電力が小さい)ことを表す(以下の設定例でも同様の標記を用いる)。
【0155】
ここで、レーダ送信波が物標に反射した反射波が、多数の散乱波を含む場合あるいは多数の反射回数となる反射波である場合、反射波には、多様な偏波が含まれ得る。このため、レーダ装置10における受信信号の受信レベルは、異なる偏波送信アンテナ(例えば、PL1偏波の送信アンテナ及びPL2偏波の送信アンテナ)に対応する受信信号間で差が大きくなりにくい。よって、レーダ装置10は、RC偏波(PL2偏波)の送信アンテナに対応する受信信号、及び、LC偏波(PL1偏波)の送信アンテナに対応する受信信号を、ほぼ同程度の受信レベルで受信する。
【0156】
例えば、図7に示すCDP量の設定において、受信アンテナの偏波(例えば、LC偏波(PL1偏波))に対して交差偏波となる物標反射波を含まない場合、図8の(a)のような受信信号が得られる。図8の(a)に示すように、Tx#1及びTx#2(PL1偏波)、Tx#3及びTx#4(PL2偏波)のそれぞれに対応する受信信号の受信レベルはほぼ同程度である。
【0157】
また、例えば、レーダ送信波が物標により正反射(例えば、凹凸の少ない面からの鏡面反射)した反射波をレーダ装置10が受信する場合(例えば、1回正反射)の受信レベルは、偏波送信アンテナ間で異なり得る。例えば、LC偏波(PL1偏波)の送信アンテナに対応する受信信号は、LC偏波(PL1偏波)の受信アンテナと同一偏波の信号となる。その一方で、例えば、RC偏波(PL2偏波)の送信アンテナに対応する受信信号は、LC偏波(PL1偏波)の受信アンテナと交差偏波の信号となる。そのため、RC偏波(PL2偏波)の送信アンテナに対応する受信信号は、LC偏波(PL1偏波)の送信アンテナに対応する受信信号と比較して小さい受信レベル(アンテナの交差偏波識別度に依存し、例えば、10dB以上小さい受信レベル)となり得る。例えば、受信SNRによっては、RC偏波(PL2偏波)の送信アンテナに対応する受信信号は、ノイズレベル以下となり、レーダ装置10では、ドップラ周波数のピーク検出が困難になる。
【0158】
例えば、図7に示すCDP量の設定において、受信アンテナの偏波(例えば、LC偏波(PL1偏波))に対してRC偏波(PL2偏波)が交差偏波となる、物標反射波を含む場合、図8の(b)のような受信信号が得られる。図8の(b)に示すように、Tx#3及びTx#4(PL2偏波)に対応する受信信号の受信レベルは、Tx#1及びTx#2(PL1偏波)に対応する受信信号の受信レベルと比較して小さくなる。
【0159】
また、例えば、レーダ送信波が物標により正反射した反射波が、更に、路面などで正反射した反射波をレーダ装置10が受信する場合(例えば、2回正反射)の受信レベルは、偏波送信アンテナ間で異なり得る。例えば、RC偏波(PL2偏波)の送信アンテナに対応する受信信号は、LC偏波(PL1偏波)の受信アンテナと同一偏波の信号となる。その一方で、例えば、LC偏波(PL1偏波)の送信アンテナに対応する受信信号は、LC偏波(PL1偏波)の受信アンテナと交差偏波の信号となる。そのため、LC偏波(PL1偏波)の送信アンテナに対応する受信信号は、RC偏波(PL2偏波)の送信アンテナに対応する受信信号と比較して小さい受信レベル(アンテナの交差偏波識別度に依存し、例えば、10dB以上小さい受信レベル)となり得る。例えば、受信SNRによっては、LC偏波(PL1偏波)の送信アンテナからの受信信号は、ノイズレベル以下となり、レーダ装置10では、ドップラ周波数のピーク検出が困難になる。
【0160】
例えば、図7に示すCDP量の設定において、受信アンテナの偏波(例えば、LC偏波(PL1偏波))に対してLC偏波(PL1偏波)が交差偏波となる、物標反射波を含む場合、図8の(c)のような受信信号が得られる。図8の(c)に示すように、Tx#1及びTx#2(PL1偏波)に対応する受信信号の受信レベルは、Tx#3及びTx#4(PL2偏波)に対応する受信信号の受信レベルと比較して小さくなる。
【0161】
例えば、図8の(a)に示すように、受信アンテナの偏波に対して交差偏波となる物標反射波を含まない場合、レーダ装置10は、RC偏波(PL2偏波)の送信アンテナ(Tx#3及びTx#4)、及び、LC偏波(PL1偏波)の送信アンテナ(Tx#1及びTx#2)のそれぞれに対応する受信信号を、ほぼ同レベル、あるいは、数dB~6dB程度内の範囲で受信する。ここで、図8の(a)では、RC偏波(PL2偏波)の送信アンテナ及びLC偏波(PL1偏波)の送信アンテナから構成されるNt本のTx#1~Tx#4から送信される信号は、各DDM信号に対する符号化ドップラ多重数NCDDM(ndm)を不均一となるCDP量を用いてCDDM送信される。よって、レーダ装置10は、既存の符号化ドップラ多重信号の分離動作(例えば、特許文献7を参照)に基づいて符号化ドップラ多重信号を分離可能となる。
【0162】
また、図8の(b)及び図8の(c)に示すように、受信アンテナの偏波に対して交差偏波となる物標反射波を含む場合、レーダ装置10は、PL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合(図8の(b))と、PL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合(図8の(c))とで、互いに異なるCDDM信号(例えば、条件1のB-1を満たすCDDM信号)を受信する。
【0163】
例えば、図8の(b)のi)は、PL2偏波が交差偏波となる物標反射波のドップラ周波数がfdtg=0である受信信号を示す。レーダ装置10では、物標のドップラ周波数に応じて、各DDM信号がドップラ周波数軸に巡回シフトされて受信される。各DDM信号に割り当てられる符号Indexは、物標のドップラ周波数が-1/(4Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)であり、CiPL1=(2,*,1)となる。
【0164】
また、図8の(b)のii)は、PL2偏波が交差偏波となる物標反射波のドップラ周波数がfdtg=-1/(2Tr)である受信信号を示す。レーダ装置10では、物標のドップラ周波数に応じて、各DDM信号がドップラ周波数軸に巡回シフトされて受信される。各DDM信号に割り当てられる符号Index は、物標のドップラ周波数が-1/(2Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)あるいは1/(4Tr)≦fdtg<1/(2Tr)であり、CiPL1alias=(1,*,2)となる。
【0165】
また、例えば、図8の(c)のi)は、PL1偏波が交差偏波となる物標反射波のドップラ周波数がfdtg=0である受信信号を示す。レーダ装置10では、物標のドップラ周波数に応じて、各DDM信号がドップラ周波数軸に巡回シフトされて受信される。各DDM信号に割り当てられる符号Index は、物標のドップラ周波数が-1/(4Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)であり、CiPL2 =(*,2,2)となる。
【0166】
また、図8の(c)のii)は、PL1偏波が交差偏波となる物標反射波のドップラ周波数がfdtg=-1/(2Tr)である受信信号を示す。レーダ装置10では、物標のドップラ周波数に応じて、各DDM信号がドップラ周波数軸に巡回シフトされて受信される。各DDM信号に割り当てられる符号Index は、物標のドップラ周波数が-1/(2Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)あるいは1/(4Tr)≦fdtg<1/(2Tr)であり、CiPL2alias=(*,1,1)となる。
【0167】
このように、受信アンテナの偏波に対して交差偏波となる物標反射波を含む場合、レーダ装置10は、PL1偏波の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下する場合と、PL2偏波の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下する場合とで、各DDM信号が物標のドップラ周波数によってドップラ周波数軸に巡回シフトされて受信されても、互いに異なるパターン(例えば、符号Index又は符号間隔のパターン)のCDDM信号となる反射波信号を受信する。
【0168】
これにより、レーダ装置10は、例えば、検出した符号分離後のドップラ周波数のピークに基づいて、PL1偏波の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したか、PL2偏波の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したかを、後述する符号化ドップラ多重分離部212において判別可能となる。
【0169】
また、例えば、PL1偏波のDDM信号は、DDM信号間で不均一となる符号多重数NcPL1=(1,0,1)で多重送信されている(例えば、3つのDDM信号に対し、符号多重数は0又は1であるため、不均一であるCDDM送信とみなせる)。よって、例えば、符号化ドップラ多重分離部212による判別結果により、受信信号が、LC偏波(PL1偏波)の送信アンテナに対応する受信信号であると判別された場合、レーダ装置10は、既存の符号化ドップラ多重信号の分離動作を用いて、CDDM信号を分離可能となる。
【0170】
同様に、例えば、PL2偏波のDDM信号は、DDM信号間で不均一となる符号多重数NcPL2=(0,1,1)で多重送信されている(例えば、3つのDDM信号に対し、符号多重数は0か1であるため、不均一であるCDDM送信とみなせる)。よって、例えば、符号化ドップラ多重分離部212による判別結果により、受信信号が、PL2偏波の送信アンテナに対応する受信信号であると判別された場合、レーダ装置10は、既存の符号化ドップラ多重信号の分離動作を用いて、CDDM信号を分離可能となる。
【0171】
このような符号化ドップラ多重分離部212の動作により、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲で確定でき、それぞれのCDDM信号に対する送信アンテナを対応付けた出力を得ることができる。
【0172】
<設定例2>
設定例2は、条件1(異なるCDMパターン条件(B-1及びB-2)を満たす)、及び、条件2を満たす場合のCDP量の設定例である。図9は、送信アンテナ数Nt=6、NPL1=3、NPL2=3の場合の位相回転量設定部105におけるCDP量の設定例を示す。図9において、黒丸(●)はPL1偏波の送信アンテナ(Tx#1~#3)のCDDM信号の割り当て、白丸(○)はPL2偏波の送信アンテナ(Tx#4~#6)のCDDM信号の割り当てを示す。また、図9において、ドップラ多重数NDM=4であり、ドップラシフト設定部106は、4つのDOP1~DOP4を、例えば、式(5)に示す最大等間隔ドップラシフト量設定を用いて設定してよい。図9において、DOP1=0、DOP2=Δfd、DOP3=-2Δfd、DOP4=-Δfdを付与する位相回転量は、それぞれφ1=0、φ2=π/2、φ3=-π、φ4=3π/2(φ4=-π/2としてもよい)となる。図9に示すようにドップラ多重間隔Δfdは等間隔となり、Δfd=1/(8Tr)である。
【0173】
図9では、送信アンテナ数Nt=6、ドップラ多重数NDM=4、符号多重数NCM=2であり、Nt<NDM×NCMであるので、位相回転量設定部105は、ドップラ多重信号に対する符号化ドップラ多重数NCDDM(ndm)を不均一に設定できる(ここで、ndm=1~NDM)。
【0174】
図9に示すように、符号化部107において、ドップラシフト設定部106から入力される4つのDOP1~DOP4を用いたDDM信号に対する符号化ドップラ多重数の設定は、それぞれ、NCDDM(1)=1, NCDDM(2)=2, NCDDM(3)=2, NCDDM(4)=1である。このように位相回転量設定部105は、DDM信号に対する符号化ドップラ多重数を不均一に設定する。
【0175】
また、図9では、ドップラシフト設定部106は、PL1偏波の送信アンテナTx#1~#3に対して、ドップラ多重数NDM=4のドップラ多重信号のうち、例えば、ドップラシフト量DOP1、DOP2を用いたドップラ多重信号を割り当てる(NDM_PL1=2)。位相回転量設定部105は、PL1偏波のTx#1~#3のそれぞれに対して、CDP量ψ1, 1(m)、ψ1,2(m) 、ψ2, 2(m)を設定する。
【0176】
また、図9では、ドップラシフト設定部106は、PL2偏波の送信アンテナTx#4~#6に対して、ドップラ多重数NDM=4のドップラ多重信号のうち、例えば、ドップラシフト量DOP3、DOP4を用いたドップラ多重信号を割り当てる(NDM_PL2=2)。例えば、位相回転量設定部105は、PL2偏波のTx#4~#6のそれぞれに対して、CDP量ψ1, 3(m)、ψ2, 3(m) 、ψ1, 4(m)を設定する。
【0177】
図9において、PL1偏波、及び、PL2偏波の送信アンテナに対して、ドップラシフト設定部106が割り当てるドップラ多重数は、NDM_PL1=NDM_PL2=2であり、同一である。また、PL1偏波のTx#1~#3に割り当てられるDDM信号のドップラシフト間隔は、Δfd(1,2)=Δfd、Δfd(2,1)=3Δfdであり、PL2偏波のTx#4~#6に割り当てられるDDM信号のドップラシフト間隔はΔfd(3,4)=Δfd、Δfd(4,3)=3Δfdであり、同一(巡回一致)である。
【0178】
よって、図9に示すCDP量の設定は、条件1AのDDMパターン条件の何れにも合致しない。
【0179】
また、図9において、DOP1~DOP4を用いたDDM信号のそれぞれに対する、PL1偏波の送信アンテナ、及び、PL2偏波の送信アンテナのそれぞれに対して割り当てられる符号Indexは、CiPL1=(1,1&2,*,*)、CiPL2=(*,*,1&2,1)であり、巡回不一致となり、符号INDEX間隔が異なるため、条件1のB-1を満たす。
【0180】
また、図9において、DOP1~DOP4を用いたDDM信号のそれぞれに対する、PL1偏波の送信アンテナ、及び、PL2偏波の送信アンテナのそれぞれに対して割り当てられる符号多重数は、NcPL1=(1,2,0,0), NcPL2=(0,0,2,1)であり、巡回不一致となり、符号多重数が異なるため、条件1のB-2を満たす。
【0181】
なお、物標のドップラ周波数が-1/(2Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)あるいは1/(4Tr)≦fdtg<1/(2Tr)の場合、後述するドップラ解析部210では折り返したドップラ周波数が観測される。この場合の符号IndexはCiPL1alias=(2,1&2,*,*)、CiPL2alias=(*,*,1&2,2)となり、異なる(巡回不一致となる)。よって、図9の例では、物標のドップラ周波数が-1/(2Tr)≦fdtg<-1/(2Tr)の範囲において、符号Indexは巡回不一致となり、符号間隔が異なる。したがって、条件1のB-1及びB-2を満たし、異なるCDMパターン条件に合致する。
【0182】
以上より、図9に示すCDP量の設定は、条件1を満たす設定例である。
【0183】
また、図9では、PL1偏波の送信アンテナにおいて各DDM信号に割り当てられる符号多重数は、NcPL1=(1,2,0,0)であり、PL2偏波の送信アンテナにおいて各DDM信号に割り当てられる符号多重数は、NcPL2=(0,0,2,1)であり、両者ともDDM信号間で不均一となる符号多重数で多重送信され、符号多重数は、1からNCM-1以下の範囲に含まれる。
【0184】
よって、図9の例では、同一偏波(例えば、PL1偏波及びPL2偏波のそれぞれ)の送信アンテナから送信される信号は、DDM信号間において不均一となる符号多重数で多重送信され、符号多重数は、1からNCM-1以下の範囲に含まれる。したがって、図9に示すCDP量の設定は、PL1偏波及びPL2偏波の双方において条件2を満たす設定例である。
【0185】
図9に示すCDP量の設定により、受信アンテナの偏波に対して交差偏波となる物標反射波を含まない場合、レーダ装置10は、PL1偏波の送信アンテナ及びPL2偏波の送信アンテナのそれぞれに対応する受信信号を、ほぼ同レベル、あるいは、数dB~6dB程度内の範囲で受信する。ここで、図9では、PL1偏波の送信アンテナ及びPL2偏波の送信アンテナから構成されるNt(=6)本の送信アンテナから送信される信号は、各DDM信号に対する符号化ドップラ多重数を不均一とするCDP量を用いてCDDM送信される。よって、レーダ装置10は、既存の符号化ドップラ多重信号の分離動作(例えば、特許文献7を参照)に基づいて符号化ドップラ多重信号を分離可能となる。
【0186】
また、例えば、図9に示すCDP量の設定において、受信アンテナの偏波に対して交差偏波となる物標反射波を含む場合、レーダ装置10は、図10の(a)のようにPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合と、図10の(b)のようにPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合とで、互いに異なるCDDM信号(例えば、条件1のB-1及びB-2を満たすCDDM信号)を受信する。
【0187】
例えば、図10の(a)は、PL2偏波が交差偏波となる物標反射波のドップラ周波数がfdtg=0である受信信号の例を示す。レーダ装置10では、物標のドップラ周波数に応じて、各DDM信号がドップラ周波数軸に巡回シフトされて受信される。各DDM信号に割り当てられる符号Indexは、物標のドップラ周波数が-1/(4Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)の場合、CiPL1=(1,1&2,*,*)となる。また、物標のドップラ周波数が-1/(2Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)あるいは1/(4Tr)≦fdtg<1/(2Tr)の場合、各DDM信号に割り当てられる符号IndexはCiPL1alias=(2,1&2,*,*)となる。
【0188】
また、例えば、図10の(b)は、PL1偏波が交差偏波となる物標反射波のドップラ周波数がfdtg=0である受信信号の例を示す。レーダ装置10では、物標のドップラ周波数に応じて、各DDM信号がドップラ周波数軸に巡回シフトされて受信される。各DDM信号に割り当てられる符号Index は、物標のドップラ周波数が-1/(4Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)の場合、CiPL2=(*,*,1&2,1)となる。また、物標のドップラ周波数が-1/(2Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)あるいは1/(4Tr)≦fdtg<1/(2Tr)の場合、各DDM信号に割り当てられる符号IndexはCiPL2alias=(*,*,1&2,2)となる。
【0189】
このように、受信アンテナの偏波(例えば、LC偏波)に対して交差偏波となる物標反射波を含む場合、レーダ装置10は、PL1偏波の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下する場合と、PL2偏波の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下する場合とで、各DDM信号が物標のドップラ周波数によってドップラ周波数軸に巡回シフトされて受信されても、互いに異なるパターン(例えば、符号Index又は符号間隔のパターン)のCDDM信号となる反射波信号を受信する。
【0190】
これにより、レーダ装置10は、例えば、検出した符号分離後のドップラ周波数のピークに基づいて、PL1偏波(例えば、LC偏波)の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したか、PL2偏波(例えば、RC偏波)の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したかを、後述する符号化ドップラ多重分離部212において判別可能となる。
【0191】
また、例えば、PL1偏波のDDM信号は、ドップラ多重間で不均一となる符号多重数NcPL1=(1,2,0,0)で多重送信されている(例えば、4つのDDM信号に対し、符号多重数は0、1又は2であるため、不均一であるCDDM送信とみなせる)。よって、例えば、符号化ドップラ多重分離部212による判別結果により、受信信号が、PL1偏波の送信アンテナに対応する受信信号であると判別された場合、レーダ装置10は、既存の符号化ドップラ多重信号の分離動作を用いて、符号化ドップラ多重信号を分離可能となる。
【0192】
同様に、例えば、PL2偏波のDDM信号は、ドップラ多重間で不均一となる符号多重数NcPL2=(0,0,2,1)で多重送信されている(例えば、4つのDDM信号に対し、符号多重数は0、1又は2であるため、不均一であるCDDM送信とみなせる)。よって、例えば、符号化ドップラ多重分離部212による判別結果により、受信信号が、PL2偏波の送信アンテナに対応する受信信号であると判別された場合、レーダ装置10は、既存の符号化ドップラ多重信号の分離動作を用いて、CDDM信号を分離可能となる。
【0193】
このような符号化ドップラ多重分離部212の動作により、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲で確定でき、それぞれのCDDM信号に対する送信アンテナを対応付けた出力を得ることができる。
【0194】
<設定例3>
設定例3は、条件1(異なるCDMパターン条件)を満たし、条件2を満たさない場合のCDP量の設定例である。図11は、送信アンテナ数Nt=3、NPL1=2、NPL2=1の場合の位相回転量設定部105におけるCDP量の設定例を示す。図11において、黒丸(●)はPL1偏波の送信アンテナ(Tx#1及びTx#2)のCDDM信号の割り当て、白丸(○)はPL2偏波の送信アンテナ(Tx#3)のCDDM信号の割り当てを示す。
【0195】
また、図11において、ドップラ多重数NDM=2であり、ドップラシフト設定部106は、2つのDOP1、DOP2を、例えば、式(5)に示す最大等間隔ドップラシフト量設定を用いて設定してよい。図11において、DOP1=0を付与する位相回転量φ1=0となり、DOP2=-Δfdを付与する位相回転量φ2=-πとなる。図11に示すように、ドップラ多重間隔Δfdは等間隔となり、Δfd=1/(4Tr)である。
【0196】
図11では、送信アンテナ数Nt=3、ドップラ多重数NDM=2、符号多重数NCM=2であり、Nt<NDM×NCMであるので、位相回転量設定部105は、DDM信号に対する符号化ドップラ多重数NCDDM(ndm)を不均一に設定できる(ここで、ndm=1~NDM)。
【0197】
図11に示すように、符号化部107において、ドップラシフト設定部106から入力される2つのDOP1、DOP2を用いたDDM信号に対する符号化ドップラ多重数は、NCDDM(1)=1, NCDDM(2)=2である。このように、位相回転量設定部105は、DDM信号に対する符号化ドップラ多重数を不均一に設定する。
【0198】
また、図11では、ドップラシフト設定部106は、PL1偏波のTx#1及びTx#2に対して、ドップラ多重数NDM=2のDDM信号のうち、例えば、DOP、DOP2を用いたDDM信号を割り当てる(NDN_PL1=2)。例えば、位相回転量設定部105は、PL1偏波のTx#1及びTx#2に対して、CDP量ψ1, 1(m)、ψ1, 2(m)をそれぞれ設定する。
【0199】
また、図11では、ドップラシフト設定部106は、PL2偏波のTx#3に対して、ドップラ多重数NDM=2のDDM信号のうち、例えば、DOP2を用いたDDM信号を割り当て(NDM_PL2=1)、位相回転量設定部105は、PL2偏波のTx#3に対して、CDP量ψ2, 2(m)を設定する。
【0200】
図11において、PL1偏波の送信アンテナ、及び、PL2偏波の送信アンテナに対して、ドップラシフト設定部106が割り当てるドップラ多重数は、NDM_PL1=2、NDM_PL2=1であり、異なるドップラ多重数である。よって、図11に示すCDP量の設定は、条件1のA-2の異なるDDMパターン条件に合致する。
【0201】
また、図11において、DOP1、DOP2を用いたDDM信号のそれぞれに対する、PL1偏波の送信アンテナ、及び、PL2偏波の送信アンテナのそれぞれに対して割り当てられる符号Indexは、CiPL1=(1,1)、CiPL2=(*,2)であり、巡回不一致となり、符号INDEX間隔が異なる。また、物標のドップラ周波数が-1/(2Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)あるいは1/(4Tr)≦fdtg<1/(2Tr)の場合、後述するドップラ解析部210では折り返したドップラ周波数が観測される。この場合の符号IndexはCiPL1alias=(2,2)、CiPL2alias=(*,1)となり、巡回不一致となる。したがって、物標のドップラ周波数が-1/(2Tr)≦fdtg<-1/(2Tr)の範囲で、符号Indexは巡回不一致となり、符号間隔が異なるので、条件1のB-1を満たす。
【0202】
また、図11において、DOP1、DOP2を用いたDDM信号のそれぞれに対する、PL1偏波の送信アンテナ、及び、PL2偏波の送信アンテナのそれぞれに対して割り当てられる符号多重数は、NcPL1=(1,1), NcPL2=(0,1)であり、巡回不一致となり、符号多重数が異なり、条件1のB-2を満たす。よって、図11に示すCDP量の設定は、条件1のB-1及びB-2を満たし、異なるCDMパターン条件に合致する。
【0203】
以上より、図11に示すCDP量の設定は、条件1を満たす設定例である。
【0204】
また、図11では、PL1偏波の送信アンテナにおいて、各DDM信号に割り当てられる符号多重数は、NcPL1=(1,1)であり、DDM信号間で均一となる符号多重数で多重送信される。
【0205】
その一方で、図11では、PL2偏波の送信アンテナにおいて、各DDM信号に割り当てられる符号多重数は、NcPL2=(0,1)であり、DDM信号間で不均一となる符号多重数で多重送信され、符号多重数は、1からNCM-1以下の範囲に含まれる。
【0206】
よって、図11の例では、PL2偏波の送信アンテナから送信される信号は、DDM信号間において不均一となる符号多重数で多重送信され、符号多重数は、1からNCM-1以下の範囲に含まれ、PL1偏波の送信アンテナから送信される信号は、各DDM信号に割り当たられる符号多重数が均一となる。したがって、図11に示すCDP量の設定は、PL2偏波において条件2を満たし、PL1偏波において条件2を満たさない設定例である。
【0207】
図11に示すCDP量の設定により、受信アンテナの偏波に対して交差偏波となる物標反射波を含まない場合、レーダ装置10は、PL1偏波の送信アンテナ及びPL2偏波の送信アンテナのそれぞれに対応する受信信号を、ほぼ同レベル、あるいは、数dB~6dB程度内の範囲で受信する。ここで、図11では、PL1偏波の送信アンテナ及びPL2偏波の送信アンテナから構成されるNt(=3)本の送信アンテナから送信される信号は、各DDM信号に対する符号化ドップラ多重数を不均一とするCDP量を用いてCDDM送信される。よって、レーダ装置10は、既存の符号化ドップラ多重信号の分離動作(例えば、特許文献7を参照)に基づいて符号化ドップラ多重信号を分離可能となる。
【0208】
また、例えば、図11に示すCDP量の設定において、受信アンテナの偏波に対して交差偏波となる物標反射波を含む場合、レーダ装置10は、図12の(a)に示すようにPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合と、図12の(b)に示すようにPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合とで互いに異なるCDDM信号(例えば、条件1の1A及び1Bを満たすCDDM信号)を受信する。
【0209】
例えば、図12の(a)は、PL2偏波が交差偏波となる物標反射波のドップラ周波数がfdtg=0である受信信号の例を示す。レーダ装置10では、物標のドップラ周波数に応じて、各DDM信号がドップラ周波数軸に巡回シフトされて受信される。各DDM信号に割り当てられる符号Indexは、物標のドップラ周波数が-1/(4Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)の場合、CiPL1=(1,1)となり、-1/(2Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)あるいは1/(4Tr)≦fdtg<1/(2Tr)の場合、各DDM信号に割り当てられる符号IndexはCiPL1alias=(2,2)となる。
【0210】
また、例えば、図12の(b)は、PL1偏波が交差偏波となる物標反射波のドップラ周波数がfdtg=0である受信信号の例を示す。レーダ装置10では、物標のドップラ周波数に応じて、各DDM信号がドップラ周波数軸に巡回シフトされて受信される。各DDM信号に割り当てられる符号Indexは、物標のドップラ周波数が-1/(4Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)の場合、CiPL2=(*,2)となり、-1/(2Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)あるいは1/(4Tr)≦fdtg<1/(2Tr)の場合、各DDM信号に割り当てられる符号IndexはCiPL2alias=(*,1)となる。
【0211】
このように、受信アンテナの偏波(例えば、LC偏波)に対して交差偏波となる物標反射波を含む場合、レーダ装置10は、PL1偏波の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下する場合と、PL2偏波の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下する場合とで、各DDM信号が物標のドップラ周波数によってドップラ周波数軸に巡回シフトされて受信されても、互いに異なるパターン(例えば、ドップラ多重数、符号間隔、又は、符号多重数のパターン)のCDDM信号となる反射波信号を受信する。
【0212】
これにより、レーダ装置10は、例えば、検出した符号分離後のドップラ周波数のピーク(例えば、ピークの数)に基づいて、PL1偏波(例えば、LC偏波)の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したか、PL2偏波(例えば、RC偏波)の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したかを、後述する符号化ドップラ多重分離部212において判別可能となる。
【0213】
また、例えば、PL1偏波のDDM信号は、ドップラ多重間で均一となる符号多重数NcPL1=(1,1)で多重送信されている(例えば、2つのDDM信号に対し、符号多重数は1であるため、均一であるCDDM送信とみなせる)。よって、例えば、符号化ドップラ多重分離部212による判別結果により、受信信号が、PL1偏波の送信アンテナに対応する受信信号であると判別される場合、レーダ装置10は、既存のドップラ多重信号の分離動作(例えば、特許文献5を参照)を用いて、ドップラ多重信号を分離可能となる。この場合、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2 Loc NDM_PL1 Tr)≦fd<1/(2 Loc NDM_PL1 Tr)の範囲で確定でき、それぞれのCDDM信号に対する送信アンテナを対応付けた出力を得ることができる。
【0214】
また、例えば、PL2偏波のDDM信号は、ドップラ多重間で不均一となる符号多重数NcPL2=(0,1)で多重送信されている(例えば、2つのDDM信号に対し、符号多重数は0又は1であるため、不均一であるCDDM送信とみなせる)。よって、例えば、符号化ドップラ多重分離部212による判別結果により、受信信号が、PL2偏波の送信アンテナに対応する受信信号であると判別される場合、レーダ装置10は、既存の符号化ドップラ多重信号の分離動作を用いて、CDDM信号を分離可能となる。
【0215】
このような符号化ドップラ多重分離部212の動作により、レーダ装置10は、受信信号が、PL1偏波の送信アンテナに対応する受信信号であると判別される場合には、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2 Loc NDM_PL1 Tr)≦fd<1/(2 Loc NDM_PL1 Tr)の範囲で確定でき、それぞれのCDDM信号に対する送信アンテナを対応付けた出力を得ることができる。また、レーダ装置10は、受信信号が、PL1偏波の送信アンテナに対応する受信信号であると判別される場合以外の判別では、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2 Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲で確定でき、それぞれのCDDM信号に対する送信アンテナを対応付けた出力を得ることができる。
【0216】
<設定例4>
上述した設定例1~3では、符号多重数NCM=2の符号を用いる設定例について説明したが、符号多重数はNCM=2に限定されず、他の値でもよい。例えば、図13に示すように符号多重数NCM=4が設定されてもよい。
【0217】
設定例4は、符号長4で条件1(異なるDDMパターン条件及びCDMパターン条件)及び、条件2を満たす設定例である。以下、符号多重数NCM=4の場合の位相回転量設定部105におけるCDP量の設定例について説明する。
【0218】
図13は、送信アンテナ数Nt=6、NPL1=3、NPL2=3の場合の位相回転量設定部105におけるCDP量の設定例を示す。図13において、黒丸(●)はPL1偏波の送信アンテナ(Tx#1~#3)のCDDM信号の割り当てを示し、白丸(○)はPL2偏波の送信アンテナ(Tx#4~#6)のCDDM信号の割り当てを示す。
【0219】
また、図13において、ドップラ多重数NDM=2であり、ドップラシフト設定部106は、2つのDOP1、DOP2を、例えば、式(5)に示す最大等間隔ドップラシフト量設定を用いて設定してよい。図13において、DOP1=0を付与する位相回転量φ1=0、DOP2=-Δfdを付与する位相回転量φ2=-πとなる。図13に示すように、ドップラ多重間隔Δfdは等間隔となり、Δfd=1/(4Tr )である。
【0220】
また、図13において、符号多重数NCM=4であり、符号化部107は、例えば、Walsh-Hadamard-符号の符号長Loc=4の、直交符号系列であるCode1={1, 1, 1, 1}、Code2={1, -1, 1, -1}、Code3={1, 1, -1, -1}、Code4={1, -1, -1, 1}を用いる。
【0221】
図13では、位相回転量設定部105は、PL1偏波のTx#1~Tx#3のそれぞれに対して、CDP量ψ1, 1(m)、ψ1, 2(m)、ψ2, 2(m)を設定し、PL2偏波のTx#4~Tx#6のそれぞれに対して、CDP量ψ2, 1(m)、ψ3, 1(m)、ψ4, 1(m)を設定する。よって、図13において、PL1偏波の送信アンテナ及びPL2偏波の送信アンテナに対して、ドップラシフト設定部106が割り当てるドップラ多重数は、NDM_PL1=2、NDM_PL2=1であり、異なるドップラ多重数である。よって、図13に示すCDP量の設定は、条件1のA-2の異なるDDMパターン条件に合致する。
【0222】
また、図13において、DOP1、DOP2を用いたDDM信号のそれぞれに対する、PL1偏波の送信アンテナ及びPL2偏波の送信アンテナに対して割り当てられる符号Indexは、CiPL1=(1,1&2)及びCiPL2=(2&3&4,*)であり、巡回不一致となり、符号INDEX間隔が異なる。また、図13において、DOP1、DOP2を用いたDDM信号のそれぞれに対する、PL1偏波及びPL2偏波の送信アンテナに対して割り当てられる符号多重数は、NcPL1=(1,2)及びNcPL2=(3,0)であり、巡回不一致となり、符号多重数が異なる。したがって、図13に示すCDP量の設定は、条件1のB-1及びB-2を満たし、異なるCDMパターン条件に合致する。
【0223】
以上より、図13に示すCDP量の設定は、条件1を満たす設定例である。
【0224】
また、図13では、PL1偏波の送信アンテナにおいて各DDM信号に割り当てられる符号多重数は、NcPL1=(1,2)であり、PL2偏波の送信アンテナにおいて各DDM信号に割り当てられる符号多重数は、NcPL2=(3,0)であり、両者ともDDM信号間で不均一となる符号多重数で多重送信され、符号多重数は、1からNCM-1(=3)以下の範囲に含まれる。
【0225】
よって、図13では、PL1偏波及びPL2偏波の送信アンテナから送信される信号は、DDM信号間において不均一となる符号多重数で多重送信され、符号多重数は、1からNCM-1以下の範囲に含まれる。したがって、図13に示すCDP量の設定は、PL1偏波及びPL2偏波の双方において条件2を満たす設定例である。
【0226】
以上、位相回転量設定部105におけるCDP量の設定例について説明した。
【0227】
[レーダ受信部200の構成]
図4において、レーダ受信部200は、Na個の受信アンテナRx#1~Rx#Naを含む受信アンテナ部202を備える。また、レーダ受信部200は、Na個のアンテナ系統処理部201-1~201-Naと、CFAR(Constant False Alarm Rate)部211と、符号化ドップラ多重分離部212と、方向推定部213と、を有する。なお、Na個のアンテナ系統処理部201-1~201-Naと、CFAR部211と、符号化ドップラ多重分離部212と、方向推定部213と、をまとめて、受信回路と称してもよい。なお、受信回路は、送信信号が物標(ターゲット)で反射した反射波信号を用いてターゲットの方向推定を行う。
【0228】
受信アンテナ部202の受信アンテナRx#1~Rx#Naは、物標(ターゲット)で反射したレーダ送信信号である反射波信号を受信し、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力する。
【0229】
各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部206とを有する。
【0230】
Na個の受信アンテナRx#1~Rx#Naにおいて受信された各信号は、それぞれNa個の受信無線部203に出力される。また、Na個の受信無線部203からの出力信号は、それぞれNa個の信号処理部206に出力される。
【0231】
受信無線部203は、ミキサ部204と、LPF(low pass filter)205と、を有する。ミキサ部204は、受信した反射波信号と、レーダ送信信号生成部101から入力される、送信信号であるチャープ信号とのミキシングを行う。受信無線部203は、例えば、ミキサ部204の出力にLPF205を通過させる。これにより、反射波信号の遅延時間に応じた周波数となるビート信号が出力される。例えば、送信信号(レーダ送信波)である送信チャープ信号(送信周波数変調波)の周波数と、受信信号(レーダ反射波)である受信チャープ信号(受信周波数変調波)の周波数との差分周波数がビート周波数として得られる。
【0232】
各アンテナ系統処理部201-z(ただし、z=1~Naの何れか)の信号処理部206は、AD変換部207と、ビート周波数解析部208と、出力切替部209と、ドップラ解析部210と、を有する。
【0233】
LPF205から出力された信号(例えば、ビート信号)は、信号処理部206において、AD変換部207によって、離散的にサンプリングされた離散サンプルデータに変換される。
【0234】
ビート周波数解析部208は、送信周期Tr毎に、規定された時間範囲(レンジゲート)において得られたNdata個の離散サンプルデータを周波数解析処理(例えば、FFT処理)する。これにより、信号処理部206では、反射波信号(レーダ反射波)の遅延時間に応じたビート周波数にピークが現れる周波数スペクトラムが出力される。
【0235】
ここで、第m番目のチャープパルス送信によって得られる第z番目の信号処理部206におけるビート周波数解析部208から出力されるビート周波数応答を「RFT(fb, m)」で表す。ここで、fbはビート周波数インデックスを表し、FFTのインデックス(ビン番号)に対応する。例えば、fb=0,~,(Ndata/2)-1であり、z=1~Naであり、m=1~NCである。ビート周波数インデックスfbが小さいほど、反射波信号の遅延時間が小さい(例えば、物標との距離が近い)ビート周波数を示す。
【0236】
また、ビート周波数インデックスfbは、次式(10)を用いて距離情報R(fb)に変換できる。そのため、以下では、ビート周波数インデックスfbを「距離インデックスfb」と呼ぶ。
【数10】
【0237】
ここで、Bwは、チャープ信号におけるレンジゲート内での周波数変調帯域幅を表し、C0は光速度を表す。また、式(10)において、C0/(2Bw)は、距離分解能を表す。
【0238】
出力切替部209は、位相回転量設定部105の符号化部107から入力される直交符号要素インデックスOC_INDEXに基づいて、送信周期毎のビート周波数解析部208の出力を、Loc個のドップラ解析部210のうち、OC_INDEX番目のドップラ解析部210に選択的に切り替えて出力する。
【0239】
信号処理部206は、Loc個のドップラ解析部210-1~210-Locを有する。例えば、第noc番目のドップラ解析部210には、出力切替部209によってLoc回の送信周期(Loc×Tr)毎にデータが入力される。このため、第noc番目のドップラ解析部210は、Nc回の送信周期のうち、Ncode回の送信周期のデータ(例えば、ビート周波数解析部208から入力されるビート周波数応答RFT(fb, m))を用いて、距離インデックスfb毎にドップラ解析を行う。ここでnocは符号要素のインデックスであり、noc=1~Locである。
【0240】
例えば、Ncodeが2のべき乗値である場合、ドップラ解析においてFFT処理を適用できる。この場合、FFTサイズはNcodeであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は±1/(2Loc×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/(Ncode×Loc×Tr)であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs = -Ncode/2,~, 0,~,Ncode/2-1である。
【0241】
以下では、一例として、Ncodeが2のべき乗値である場合について説明する。なお、Ncodeが2のべき乗でない場合には、例えば、ゼロ埋めしたデータを含めることで2のべき乗個のデータサイズ(FFTサイズ)としてFFT処理が可能である。
【0242】
例えば、第z番目の信号処理部206のドップラ解析部210の出力VFT noc(fb, fs)は、次式(11)に示される。なお、jは虚数単位であり、z=1~Naである。
【数11】
【0243】
以上、信号処理部206の各構成部における処理について説明した。
【0244】
[CFAR部211の動作例]
図4において、CFAR部211は、第1~第Na番目の信号処理部206それぞれのLoc個のドップラ解析部210の出力を用いて、CFAR処理(例えば、適応的な閾値判定)を行い、ピーク信号を与える距離インデックス(以下、fb_cfと表記する)及びドップラ周波数インデックス(以下、fs_cfと表記する)を抽出する。CFAR部211は、例えば、第1~第Na番目の信号処理部206のドップラ解析部210の出力VFTz noc(fb, fs)を電力加算し、距離軸とドップラ周波数軸(相対速度に相当)とからなる2次元のCFAR処理、又は、1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理を行う(例えば、非特許文献2に開示された処理が適用されてよい。)。
【0245】
DOPndmを付与するための位相回転量φndmとして、例えば、式(5)を用いる場合、ドップラ解析部210の出力におけるドップラ周波数領域のドップラシフト量の間隔は等間隔となり、ドップラ周波数インデックスの間隔でドップラシフト量の間隔ΔFDを表すと、ΔFD=Ncode/NDMとなる。そのため、ドップラ解析部210の出力において、ドップラ周波数領域では、各DDM信号に対して、ΔFDの間隔でピークがそれぞれ検出される。
【0246】
したがって、CFAR部211は、ドップラ解析部210の各出力に対して、ドップラシフト量の間隔ΔFDの範囲で分割し、分割した各範囲に対して、次式(12)に示すように、ドップラ多重した各信号ピーク位置を電力加算(例えば、「ドップラ領域圧縮」と呼ぶ)した後に、CFAR処理(例えば、「ドップラ領域圧縮CFAR処理」と呼ぶ)を行ってよい。受信処理におけるここで、fsc=-ΔFD/2,…,- ΔFD/2-1である。例えば、ΔFD=Ncode/NDMの場合は、fsc=Ncode/(2NDM),…,Ncode/(2NDM)-1である。なお、ドップラ領域圧縮CFAR処理については、例えば、特許文献6及び特許文献7に記載されており、その詳細説明は省略する。
【数12】
【0247】
ドップラ領域圧縮CFAR処理を用いたCFAR部211は、例えば、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となるfb_cf、fsc_cf、及び、NDM個のDDM信号のドップラ周波数インデックス(fsc_cf+(nfd-ceil(NDM/2)-1)×ΔFD)における受信電力情報PowerFT(fb_cf, fsc_cf+(nfd-ceil(NDM/2)-1)×ΔFD)、nfd=1,…,NDMを符号化ドップラ多重分離部212に出力する。
【0248】
[符号化ドップラ多重分離部212の動作例]
次に、図4に示す符号化ドップラ多重分離部212の動作例について説明する。なお、以下では、CFAR部211において、ドップラ領域圧縮CFAR処理を用いた場合の符号化ドップラ多重分離部212の処理の一例について説明する。図14は、符号化ドップラ多重分離部212における分離動作の例を示すフローチャートである。
【0249】
<ステップA-1>
符号化ドップラ多重分離部212は、受信アンテナの偏波に対して交差偏波となる物標反射波を含まない場合を想定して、Nt個のCDDM信号に対する符号化ドップラ多重分離処理を行う。
【0250】
例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、CFAR部211から入力されるfb_cf、fsc_cf、及び、NDM個のDDM信号のドップラ周波数インデックスにおける受信電力情報に基づいて、ドップラ解析部210の出力を用いて、Nt個のCDDM送信された信号を分離し、送信アンテナの判別(例えば、判定又は識別)、及び、ドップラ周波数(例えば、ドップラ速度又は相対速度)の判別を行う。
【0251】
上述したように、位相回転量設定部105の符号化部107は、最大等間隔ドップラシフト量の設定を含む等間隔ドップラシフト量の設定を用いる場合、例えば、NDM個の符号化ドップラ多重数NCDDM(1), NCDDM(2),…, NCDDM(NDM)の全てをNCM個に設定せず、少なくとも1つの符号化ドップラ多重数をNCM個より小さい値に設定(不均一に設定)する。
【0252】
例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、(1)符号分離処理を行い、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定したCDDM信号(例えば、多重送信に用いない未使用のCDDM信号)を検出し、折り返し判定を行う。その後、符号化ドップラ多重分離部212は、(2)折り返し判定結果に基づいて、多重送信に用いたCDDM信号のドップラ符号分離処理を行う。
【0253】
このような符号化ドップラ多重分離部212の動作は、既存の符号化ドップラ多重送信を用いたMIMOレーダにおける符号化ドップラ多重分離部と同様な動作であり、例えば、特許文献7に記載されているので、その詳細な動作説明は省略する。
【0254】
なお、最大等間隔ドップラシフト量設定を含む等間隔ドップラシフト量設定として、例えば、NDM個の符号化ドップラ多重数NCDDM(1), NCDDM(2),~, NCDDM(NDM)の全てをNCM個に設定せず、少なくとも1つの符号化ドップラ多重数をNCM個より小さい値に設定する場合、上述した符号化ドップラ多重分離部212の動作により、-1/(2Tr) ≦ fd <1/(2Tr)の範囲で推定した物標のドップラ周波数が検出可能となる(例えば、特許文献7を参照)。
【0255】
<ステップA-2>
符号化ドップラ多重分離部212は、Nt個のCDDM信号が正常に検出されたか否かを判定する。符号化ドップラ多重分離部212は、Nt個のCDDM信号が正常に検出される場合はステップA-3の処理を行い、正常に検出されない場合はステップB-1の処理を行う。
【0256】
例えば、ステップA-1の処理において、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波あるいはPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合、Nt個のCDDM信号が正常に検出されない可能性がある。
【0257】
例えば、2つのPL1偏波及びPL2偏波の送信アンテナを用いて偏波MIMOレーダを構成し、位相回転量設定部105の設定がNDM_PL1<NDM、あるいは、NDM_PL2<NDMであり、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波あるいはPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合、NDM個のDDM信号のドップラ周波数インデックスにおける受信電力間において、所定値以上に受信電力が異なるか、あるいは、ノイズレベル程度に受信電力が小さい成分が含まれることになる。このような場合、符号化ドップラ多重分離部212は、NDM個よりも少ないCDDM信号を検出するため、正常な検出でないと判定し、ステップB-1の処理を行う。
【0258】
また、例えば、PL1偏波の送信アンテナに対して、位相回転量設定部105の設定がNDM_PL1=NDMであり、受信アンテナの偏波に対してPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合、あるいは、PL2偏波の送信アンテナに対して、位相回転量設定部105の設定がNDM_PL2=NDMであり、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合、NDM個のDDM信号のドップラ周波数インデックスにおける受信電力間において、所定範囲内の受信電力が受信されることになる。この場合、符号分離処理の際に、多重送信に用いない未使用のCDDM信号が、想定している(NCM×NDM-Nt)個よりも多くなるため、符号化ドップラ多重分離部212は、折り返し判定に失敗し、Nt個のCDDM信号を正常に検出することが困難となる。したがって、符号化ドップラ多重分離部212は、多重送信に用いない未使用のCDDM信号が、想定している(NCM×NDM-Nt)個よりも多く検出され場合には正常な検出でないと判定し、ステップB-1の処理を行う。
【0259】
<ステップA-3>
符号化ドップラ多重分離部212は、折り返し判定結果に基づいて、多重送信に用いたCDDM信号のCDDM分離処理を行った受信信号Yz(fb_cf,fsc_cf,ncm,ndm)を、fb_cf及び fsc_cfと共に、方向推定部213へ出力する。
【0260】
ここで、Yz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)は、第z番のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210のfb_cf及びfsc_cf、における、DOPndm及び直交符号Codendc(ndm)を用いたCDDM信号の分離した出力(例えば、CDDM分離結果)である。例えば、Yz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)は、送信アンテナTx#[ndc(ndm), ndm]から送信され、物標により反射されて、第z番のアンテナ系統処理部201で受信された受信信号を表す。なお、z=1~Naであり、ncm=1~NCMである。また、ndm=1~NDMであり、ndc(ndm)=1~NCDDM(ndm)である。
【0261】
また、符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、検出された物標のドップラ周波数に関する情報を方向推定部213へ出力してもよい。
【0262】
なお、条件2を満たす場合、符号化ドップラ多重分離部212は、折り返し判定結果を用いることにより、-1/(2Tr) ≦ fd <1/(2Tr)の範囲で推定した物標のドップラ周波数を検出できる。
【0263】
<ステップB-1>
符号化ドップラ多重分離部212は、受信アンテナ偏波に対してPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合を想定して、NPL1個のCDDM信号に対するCDDM分離処理を行う。
【0264】
例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、CFAR部211から入力されるfb_cf、fsc_cf、及び、NDM個のDDM信号のドップラ周波数インデックスにおける受信電力情報に基づいて、ドップラ解析部210の出力を用いて、NPL1個のCDDM送信された信号を分離し、送信アンテナの判別(例えば、判定又は識別)、及び、ドップラ周波数(例えば、ドップラ速度又は相対速度)の判別を行う。
【0265】
ここで、NDM個のDDM信号のドップラ周波数インデックスにおける受信電力間で、所定値以上に受信電力が異なる場合、あるいは、ノイズレベル程度に受信電力が小さい成分が(NDM-NDM_PL1)個含まれる場合がある。なお、位相回転量設定部105の設定が、NDM=NDM_PL1である場合は、ノイズレベル程度に受信電力が小さい成分は含まれない。
【0266】
したがって、符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、NDM個のDDM信号のドップラ周波数インデックスにおける受信電力間で、電力上位のNDM_PL1個のDDM信号を抽出する。
【0267】
例えば、抽出した電力上位のNDM_PL1個のDDM信号のドップラ多重間隔が、PL1偏波の送信アンテナに割り当てられるドップラ多重間隔に一致する場合、符号化ドップラ多重分離部212は、(1)符号分離処理を行い、PL1偏波の送信アンテナに割り当てられるCDDM信号から、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定したCDDM信号(例えば、PL1偏波の送信アンテナの多重送信に用いない未使用のCDDM信号)を検出し、折り返し判定を行う。その後、符号化ドップラ多重分離部212は、(2)折り返し判定結果に基づいて、多重送信に用いたCDDM信号のドップラ符号分離処理を行う。
【0268】
このような符号化ドップラ多重分離部212の動作は、既存の符号化ドップラ多重送信を用いたMIMOレーダにおける符号化ドップラ多重分離部と同様な動作であり、例えば、特許文献7に記載されているので、その詳細な動作説明は省略する。
【0269】
なお、CDP量の設定が条件2を満たすことにより、例えば、上述した符号化ドップラ多重分離部212の動作により、-1/(2Tr) ≦ fd <1/(2Tr)の範囲で推定した物標のドップラ周波数が検出可能となる(例えば、特許文献7を参照)。
【0270】
<ステップB-2>
符号化ドップラ多重分離部212は、PL1偏波に対応するNPL1個の送信アンテナに対して割り当てられるNPL1個のCDDM信号が正常に検出されるかを判定する。符号化ドップラ多重分離部212は、NPL1個のCDDM信号が正常に検出される場合はステップB-3の処理を行い、正常に検出されない場合はステップC-1の処理を行う。位相回転量設定部105によるCDP量の設定が条件1を満たすことで、以下のような判定処理が可能となる。
【0271】
例えば、ステップB-1の処理において、受信アンテナの偏波に対してPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含まない場合、NPL1個のCDDM信号が正常に検出されない可能性がある。
【0272】
符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、抽出した電力上位のNDM_PL1個のDDM信号と、他の電力下位の(NDM-NDM_PL1)個のDDM信号との間で、所定レベル以上の電力差(あるいは電力比)とならない場合、受信アンテナの偏波に対してPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含まないと判定し、ステップC-1の処理を行う(位相回転量設定部105によるCDP量の設定が条件1Aの(A-2)を満たす場合、このような判定処理が可能となる)。
【0273】
また、抽出した電力上位のNDM_PL1個のDDM信号のドップラ多重間隔が、PL1偏波の送信アンテナに割り当てたドップラ多重間隔に一致しない場合、符号化ドップラ多重分離部212は、受信アンテナの偏波に対してPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含まないと判定し、ステップC-1の処理を行う(位相回転量設定部105によるCDP量の設定が条件1Aの(A-1)または(A-3)を満たす場合、このような判定処理が可能となる)。
【0274】
また、例えば、PL1偏波の送信アンテナに対して、位相回転量設定部105の設定がNDM_PL1=NDM_PL2とする。この場合、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合、NDM個のDDM信号のドップラ周波数インデックスにおける受信電力間において、所定範囲内の受信電力が受信されることになる。このような場合、符号分離処理の際に、想定しているNPL1個のCDDM信号の符号間隔あるいは符号多重数と異なる信号が得られるため、符号化ドップラ多重分離部212は、折り返し判定に失敗し、NPL1個のCDDM信号を正常に検出することが困難となる。このような場合、符号化ドップラ多重分離部212は、NPL1個のCDDM信号に対する正常な検出ではないと判定し、ステップC-1の処理を行う(位相回転量設定部105によるCDP量の設定が条件1Bの(B-1)または(B-2)を満たす場合、このような判定処理が可能となる)。
【0275】
<ステップB-3>
符号化ドップラ多重分離部212は、ステップB-2の処理結果に基づいて、PL1偏波に対応するNPL1個の送信アンテナの多重送信に用いたCDDM信号の符号化ドップラ多重分離処理を行った受信信号YPL1z(fb_cf,fsc_cf,ncm,ndm)を、fb_cf及びドップラ周波数インデックス fsc_cfと共に、方向推定部213へ出力する。
【0276】
ここで、YPL1z(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)は、第z番のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210のfb_cf及びfsc_cfにおける、DOPndm及び直交符号Codendc(ndm)を用いたCDDM信号の分離した出力(例えば、CDDM分離結果)である。例えば、YPL1z(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)は、PL1偏波に対応するNPL1個の送信アンテナTx#[ndc(ndm), ndm]から送信され、物標により反射されて、第z番のアンテナ系統処理部201で受信された受信信号を表す。なお、z=1~Naであり、ndm=1~NDMであり、ndc(ndm)=1~NCDDM(ndm)であり、PL1偏波に対応するNPL1個の送信アンテナに割り当てた信号以外はゼロとして出力される。
【0277】
また、符号化ドップラ多重分離部212は、検出された物標のドップラ周波数を方向推定部213へ出力してもよい。
【0278】
なお、条件2を満たす場合、符号化ドップラ多重分離部212は、折り返し判定結果を用いることにより、-1/(2Tr) ≦ fd <1/(2Tr)の範囲で推定した物標のドップラ周波数を検出できる。
【0279】
<ステップC-1>
符号化ドップラ多重分離部212は、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合を想定して、NPL2個のCDDM信号のCDDM分離処理を行う。
【0280】
例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、CFAR部211の出力であるfb_cf、fsc_cf、及び、NDM個のDDM信号のドップラ周波数インデックスにおける受信電力情報に基づいて、ドップラ解析部210の出力を用いて、NPL2個のCDDM送信された信号を分離し、送信アンテナ判別(例えば、判定又は識別)、及び、ドップラ周波数(例えば、ドップラ速度又は相対速度)の判別を行う。
【0281】
ここで、NDM個のDDM信号のドップラ周波数インデックスにおける受信電力間で、所定値以上に受信電力が異なる場合、あるいはノイズレベル程度に受信電力が小さい成分が(NDM-NDM_PL2)個含まれる可能性がある。なお、位相回転量設定部105の設定が、NDM=NDM_PL2である場合は、ノイズレベル程度に受信電力が小さい成分は含まれない。
【0282】
したがって、符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、NDM個のDDM信号のドップラ周波数インデックスにおける受信電力間で、電力上位のNDM_PL2個のDDM信号を抽出する。
【0283】
例えば、抽出した電力上位のNDM_PL2個のDDM信号のドップラ多重間隔が、PL2偏波の送信アンテナに割り当てられるドップラ多重間隔に一致する場合、符号化ドップラ多重分離部212は、(1)符号分離処理を行い、PL2偏波の送信アンテナに割り当てられるCDDM信号から、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定したCDDM信号(例えば、PL2偏波の送信アンテナの多重送信に用いない未使用のCDDM信号)を検出し、折り返し判定を行う。その後、符号化ドップラ多重分離部212は、(2)折り返し判定結果に基づいて、多重送信に用いたCDDM信号のドップラ符号分離処理を行う。
【0284】
このような符号化ドップラ多重分離部212の動作は、既存の符号化ドップラ多重送信を用いたMIMOレーダにおける符号化ドップラ多重分離部と同様な動作であり、例えば、特許文献7に記載されているので、その詳細な動作説明は省略する。
【0285】
なお、CDP量の設定が条件2を満たすことにより、例えば、上述した符号化ドップラ多重分離部212の動作により、-1/(2Tr) ≦ fd <1/(2Tr)の範囲で推定した物標のドップラ周波数が検出可能となる(例えば、特許文献7を参照)。
【0286】
<ステップC-2>
符号化ドップラ多重分離部212は、PL2偏波に対応するNPL2個の送信アンテナに対して割り当てられるNPL2個のCDDM信号が正常に検出されるかを判定する。符号化ドップラ多重分離部212は、NPL2個のCDDM信号が正常に検出される場合はステップC-3の処理を行い、正常に検出されない場合は、受信信号に雑音成分が多い(例えば、SNRが低い)、又は、干渉成分を含む信号とみなし、ステップDの処理を行う。
【0287】
符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、抽出した電力上位のNDM_PL2個のDDM信号と、他の電力下位の(NDM-NDM_PL2)個のDDM信号との間において、所定レベル以上の電力差(あるいは電力比)とならない場合、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含まないと判定し、ステップDの処理を行う。
【0288】
また、抽出した電力上位のNDM_PL2個のDDM信号のドップラ多重間隔が、PL2偏波の送信アンテナに割り当てたドップラ多重間隔に一致しない場合、符号化ドップラ多重分離部212は、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含まないと判定し、ステップDの処理を行う。また、符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、抽出した電力上位のNDM_PL2個のDDM信号に対し、符号分離処理を施して得られる信号の受信電力を基に、想定しているNPL2個のCDDM信号の符号間隔あるいは符号多重数と一致するかを判定する。一致しない場合、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含まないと判定し、ステップDの処理を行う。
【0289】
<ステップC-3>
符号化ドップラ多重分離部212は、ステップC-2の処理結果に基づいて、PL2偏波に対応するNPL2個の送信アンテナの多重送信に用いたCDDM信号のCDDM分離処理を行った受信信号YPL2z(fb_cf,fsc_cf,ncm,ndm)を、fb_cf及び fsc_cfと共に、方向推定部213へ出力する。
【0290】
ここで、YPL2z(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)は、第z番のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210のfb_cf及びfsc_cfにおける、DOPndm及び直交符号Codendc(ndm)を用いたCDDM信号の分離した出力(例えば、CDDM分離結果)である。例えば、YPL2z(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)は、PL2偏波に対応するNPL2個の送信アンテナTx#[ndc(ndm), ndm]から送信され、物標により反射されて、第z番のアンテナ系統処理部201で受信された受信信号を表す。なお、z=1~Naであり、ndm=1~NDMであり、ndc(ndm)=1~NCDDM(ndm)であり、PL2偏波に対応するNPL2個の送信アンテナに割り当てた信号以外はゼロとして出力する。
【0291】
また、符号化ドップラ多重分離部212は、検出された物標のドップラ周波数を方向推定部213へ出力してもよい。
【0292】
なお、条件2を満たす場合、符号化ドップラ多重分離部212は、折り返し判定結果を用いることにより、-1/(2Tr) ≦ fd <1/(2Tr)の範囲で推定した物標のドップラ周波数を検出できる。
【0293】
<ステップD>
符号化ドップラ多重分離部212は、ステップC-2の条件を満たさない場合、受信信号が雑音成分又は干渉成分であると判定し方向推定部213への出力を行わなくてもよい。
【0294】
以上、符号化ドップラ多重分離部212の動作例について説明した。
【0295】
なお、CFAR部211から入力されるfb_cf、ドップラ周波数インデックスfsc_cf、及び、受信電力情報が複数ある場合、符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、距離インデックス、ドップラ周波数インデックス、及び、受信電力情報のそれぞれに対して上述したCDDM分離の動作を複数回行ってもよい。
【0296】
[方向推定部213の動作例]
次に、図4に示す方向推定部213の動作例について説明する。
【0297】
方向推定部213は、例えば、符号化ドップラ多重分離部212から入力される信号(例えば、fb_cf、CDDM分離処理を行った受信信号Yz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)あるいはYPLqz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)に基づいて、物標の方向推定処理を行う。ここで、q=1~NPLである。
【0298】
なお、CDDM分離処理が行われる受信信号Yz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)は、CDP量ψndc(ndm), ndm(m)を用いた送信アンテナからの受信信号であるので、Tx#1、Tx#2、~、Tx#Ntに対応付けることができる。したがって、以下では、受信信号Yz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)におけるCDP量ψndc(ndm), ndm(m)に対して、Tx#1~Tx#Ntの何れかに対応付けられた「YTz(fb_cf,fsc_cf,nt)」とも表記できる。ここで、nt=1~Ntである。
【0299】
同様に、受信信号YPLqz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)におけるCDP量ψndc(ndm), ndm(m)に対し、Tx#1~Tx#Ntの何れかに対応付けられた「YPLTz(fb_cf,fsc_cf,nt)」とも表記できる。
【0300】
以下、方向推定部213の動作例1及び動作例2について説明する。
【0301】
<方向推定部213の動作例1>
動作例1では、例えば、方向推定部213は、fb_cf及びCDDM分離処理を行った受信信号Yz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)に基づいて、方向推定部213の仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cf、fsc_cf)を生成し、方向推定処理を行う。
【0302】
ここで、符号化ドップラ多重分離部212から入力される情報は、CDDM分離処理を行った受信信号Yz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)を含む場合、Nt個の送信アンテナに対するCDDM分離受信信号を含む。よって、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cf、fsc_cf)は、送信アンテナ数Ntと受信アンテナ数Naとの積であるNt×Na個の要素を含む。方向推定部213は、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cf、fsc_cf)を用いて、物標からの反射波信号に対して各送受アンテナ間の位相差に基づく方向推定を行う。
【0303】
方向推定部213は、例えば、偏波送信アンテナ毎の方向推定処理を行うため、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cf、fsc_cf)から、同一偏波の送信アンテナに対応する受信信号を抽出し、PLq偏波の送信アンテナによる仮想受信アレー相関ベクトルhPLq(fb_cf, fsc_cf)を生成する。ここで、hPLq(fb_cf, fsc_cf)は、NPLq×Na個の要素を含む列ベクトルである。
【0304】
方向推定部213は、例えば、PLq偏波の送信アンテナによる仮想受信アレー相関ベクトルhPLq(fb_cf, fsc_cf)を用いて、方向推定評価関数PH-PLqu, fb_cf, fsc_cf)における方位方向θuを所定の角度範囲内で可変してPLq偏波の空間プロファイルを算出する。
【0305】
方向推定部213は、算出したPLq偏波毎の空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向を、PLq偏波の到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力してよい。ここで、q=1~NPLである。
【0306】
なお、方向推定評価関数値PH-PLqu, fb_cf, fsc_cf)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種の方法がある。例えば、非特許文献3に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
【0307】
また、矩形の格子状に配置されたMIMO仮想受信アンテナ配置を用いることで、方位方向及び仰角方向の到来方向推定も可能である。例えば、方向推定部213は、異なる偏波の送信アンテナ毎に、到来方向推定値として方位方向及び仰角方向を算出して、測位出力としてもよい。なお、後述する方向推定部213の動作例2でも同様な適用が可能である。
【0308】
以上の動作により、レーダ装置10の方向推定部213は、例えば、測位出力として、fb_cf及びCDDM分離処理を行った受信信号Yz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)に基づいて、到来方向推定値を出力してよい。また、方向推定部213は、更に、測位出力とし、fb_cf、及び、物標のドップラ周波数推定値を出力してもよい。なお、後述する方向推定部213の動作例2においても同様な適用が可能である。
【0309】
また、fb_cfは、式(10)を用いて距離情報に変換して出力されてもよい。なお、後述する方向推定部213の動作例2においても同様な適用が可能である。
【0310】
また、符号化ドップラ多重分離部212から入力される情報(例えば、fb_cf、及び、CDDM分離処理を行った受信信号Yz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm))が複数ある場合、方向推定部213は、それらに対して、上述した処理と同様に到来方向推定値を算出し、測位結果を出力してもよい。なお、後述する方向推定部213の動作例2においても同様な適用が可能である。
【0311】
<方向推定部213の動作例2>
動作例2では、例えば、方向推定部213は、fb_cf及びCDDM分離処理を行った受信信号YPLqz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)に基づいて、方向推定部213の仮想受信アレー相関ベクトルhq(fb_cf、fsc_cf,ndc(ndm),ndm)を生成し、PLq偏波の送信アンテナからの受信信号に基づいて方向推定処理を行う。
【0312】
方向推定部213は、CDDM分離処理を行った受信信号YPLqz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm), ndm)と一致するqに対応するPLq偏波の方向推定処理を行う点が、動作例1の動作と異なる。この場合の動作は、動作例1の動作におけるYz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)を、受信信号YPLqz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm), ndm)に置き換えた処理と同様となるため、その動作の詳細説明を省略する。
【0313】
以上の動作により、レーダ装置10の方向推定部213は、例えば、測位出力として、fb_cf、PLq偏波の送信アンテナからの受信信号であるCDDM分離処理を行った受信信号YPLqz (fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)に基づきPLq偏波による到来方向推定値を出力してよい。
【0314】
以上、方向推定部213の動作例1及び動作例2について説明した。
【0315】
方向推定部213は、以上のような動作により、符号化ドップラ多重分離部212の分離動作に応じた出力に基づいて方向推定処理を行うことができる。例えば、方向推定部213は、受信アンテナの偏波に対して交差偏波となる物標反射波を含まない場合、受信アンテナの偏波に対してPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合、及び、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合のそれぞれに応じた符号化ドップラ多重分離部212の出力に基づいて、方向推定処理を行うことができる。
【0316】
また、例えば、受信アンテナの偏波に対して交差偏波となる物標反射波を含まない場合、方向推定部213は、送信アンテナに含まれる偏波毎の方向推定処理を行うことが可能となる。また、例えば、受信アンテナの偏波に対してPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合、方向推定部213は、PL1偏波送信の方向推定処理を行うことが可能となる。また、例えば、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合、方向推定部213は、PL2偏波送信の方向推定処理を行うことが可能となる。
【0317】
このような方向推定部213の動作により、送信偏波毎の方向推定処理結果、又は、反射波の状況に応じて、一部の送信偏波に対する方向推定結果が得られ、送信偏波に依存した方向推定結果が得られる。送信偏波により物標からの反射波の応答は変動し得るため、レーダ装置10は、このようなに送信偏波に依存した方向推定結果に基づいて、物標の検出性能又は識別性能を向上できる。
【0318】
以上、方向推定部213の動作例について説明した。
【0319】
以上のように本実施の形態では、レーダ装置10は、CDDMを用いる偏波送信MIMOレーダにおいて、位相回転量設定部105において少なくとも条件1を満たす偏波間で異なるCDDM信号(例えば、DDMパターン及びCDMパターンの少なくとも一つが異なる信号)を割り当てる。これにより、レーダ装置10は、異なる偏波の送信アンテナに対応する反射波間の受信レベルが大きく異なる場合でも、符号化ドップラ多重分離部212において送信アンテナを判別でき、CDDM分離が可能となる。よって、本実施の形態によれば、物標検出性能の劣化、又は、ドップラ周波数の誤推定又は測角性能の劣化を抑制できる。
【0320】
また、例えば、位相回転量設定部105におけるCDDM信号の割り当てにおいて、上述した条件1及び条件2を満たすことによって、レーダ装置10では、異なる偏波の送信アンテナに対応する反射波間の受信レベルが大きく異なる場合でも、検出可能なドップラ周波数範囲fdが-1/(2Tr)≦fd < 1/(2Tr)の範囲となり、1送信アンテナを用いる場合と同様のドップラ周波数範囲に拡大できる。
【0321】
よって、本実施の形態によれば、符号化ドップラ多重送信を用いた偏波MIMOレーダの検出性能を向上できる。
【0322】
また、本実施の形態では、レーダ装置10は、複数の偏波(例えば、PL1偏波及びPL2偏波)の何れか一方の偏波を用いて、レーダ送信信号が物標に反射した反射波信号を受信する受信アンテナを備える。そして、レーダ装置10は、受信アンテナで受信した反射波信号に基づいて方向推定を行う。これにより、レーダ装置10は、受信アンテナの偏波と交差偏波の関係となる反射波を含む場合でも、DDM信号に対応する送信アンテナを判別でき、ドップラ周波数の曖昧性を解決できる。また、本実施の形態では、受信アンテナが同一偏波の受信アンテナであっても、CDDM分離が可能であり、レーダ受信部200において異なる種類の偏波受信アンテナを付加的に用いなくてよく、受信アンテナ数を削減できる。
【0323】
(変形例1)
上述した実施の形態では、一例として、受信アンテナ部202の複数の受信アンテナが、同一の偏波の受信アンテナである場合のCFAR部211、符号化ドップラ多重分離部212、及び、方向推定部213の動作例について説明した。
【0324】
受信アンテナ部202の複数の受信アンテナには、異なる偏波の受信アンテナが含まれてもよい。変形例1では、受信アンテナ部202の複数の受信アンテナが異なる偏波の受信アンテナを含む場合のCFAR部、符号化ドップラ多重分離部、及び、方向推定部の動作例について説明する。
【0325】
例えば、複数の受信アンテナに異なる偏波の受信アンテナが含まれる場合、異なる偏波毎に物標反射波の受信レベルが大きく異なる可能性があり得る。このため、例えば、レーダ装置10は、異なる偏波の受信アンテナに対応するドップラ解析部210の出力(例えば、各偏波の受信アンテナそれぞれで受信した反射波信号)に対して個別に、CFAR処理、ドップラ分離処理、及び、方向推定処理を行ってよい。なお、方向推定処理は、複数の偏波の受信アンテナによるドップラ分離処理の出力を用いて行われてもよい。
【0326】
以下では、一例として、受信アンテナ部202の受信アンテナRx#1~Rx#Naに、少なくとも2つの異なる偏波の受信アンテナが含まれる場合について説明する。
【0327】
例えば、2つの異なる偏波を「RxPL1偏波」及び「RxPL2偏波」と表記する。また、Na個の受信アンテナのうち、RxPL1偏波の受信アンテナ数をNRxPL1個とし、RxPL2偏波の受信アンテナ数をNRxPL2個とする。ここで、NRxPL1+NRxPL2=Naである。
【0328】
図15は、変形例1に係るレーダ装置10のうち、レーダ受信部200aのCFAR部211a、符号化ドップラ多重分離部212a、及び、方向推定部213aの構成例を示すブロック図である。図15では、一例として、受信アンテナRx#1~Rx#NRxPL1がRxPL1偏波の受信アンテナであり、Rx#NRxPL1+1~Rx#NaがRxPL2偏波の受信アンテナである。なお、受信アンテナの番号と偏波との関係は図15に示す例に限定されない。
【0329】
また、図15に示すように、同一偏波の受信アンテナ毎のピーク検出結果を用いたドップラ多重分離が可能であり、また、2つの異なる偏波の受信アンテナ間の電力加算演算が行われなくてもよいので、レーダ受信部200aにおける演算量の削減効果が得られる。
【0330】
例えば、Na個のドップラ解析部210の出力のうち、第1~第NRxPL1のドップラ解析部210の出力は、RxPL1偏波の受信アンテナの受信信号に対応し、RxPL1偏波の受信信号に対するCFAR処理を行う第1CFAR部211a-1に入力される。
【0331】
また、例えば、Na個のドップラ解析部210の出力のうち、第Rx#NRxPL1+1~第Naのドップラ解析部210の出力は、RxPL2偏波の受信アンテナの受信信号に対応し、RxPL2偏波の受信信号に対するCFAR処理を行う第2CFAR部211a-2に入力される。
【0332】
第1符号化ドップラ多重分離部212a-1は、例えば、第1CFAR部211a-1から入力されるfb_cf、fsc_cf、及び、NDM個のDDM信号のドップラ周波数インデックス(fsc_cf+ (nfd-ceil(NDM/2)-1)×ΔFD)における受信電力情報PowerFTRxPL1(fb_cf, fsc_cf+(nfd-ceil(NDM/2)-1)×ΔFD)(ただし、nfd=1~NDM)に基づいて、RxPL1偏波の受信アンテナの受信信号となる第1~第NRxPL1のドップラ解析部210の出力を用いて、Nt個のCDDM送信された信号を分離し、送信アンテナ109の判別(例えば、判定又は識別とも呼ぶ)、及び、ドップラ周波数(例えば、ドップラ速度又は相対速度)の判別を行う。第1符号化ドップラ多重分離部212a-1の動作は、図4の符号化ドップラ多重分離部212と比較して、第1~第NRxPL1のドップラ解析部210の出力に基づく受信電力情報を用いる点が異なり、これ以外の動作は、符号化ドップラ多重分離部212の動作と同様でよい。
【0333】
第2符号化ドップラ多重分離部212a-2は、例えば、第2CFAR部211a-2の出力であるfb_cf、fsc_cf、及び、NDM個のDDM信号のドップラ周波数インデックス(fsc_cf+(nfd-ceil(NDM/2)-1)×ΔFD)における受信電力情報PowerFTRxPL2(fb_cf, fsc_cf+(nfd-ceil(NDM/2)-1)×ΔFD)(ただし、nfd=1~NDM)に基づいて、RxPL2偏波の受信アンテナの受信信号となる第NRxPL1+1~第Naのドップラ解析部210の出力を用いて、Nt個のCDDM送信された信号を分離し、送信アンテナ109の判別(例えば、判定又は識別とも呼ぶ)、及び、ドップラ周波数(例えば、ドップラ速度又は相対速度)の判別を行う。第2符号化ドップラ多重分離部212a-2は、図4の符号化ドップラ多重分離部212と比較して、第NRxPL1+1~第Naのドップラ解析部210の出力に基づく受信電力情報を用いる点が異なり、これ以外の動作は、符号化ドップラ多重分離部212の動作と同様でよい。
【0334】
次に、第1方向推定部213a-1及び第2方向推定部213a-2の動作例について説明する。以下では、第1方向推定部213a-1及び第2方向推定部213a-2を、「第y方向推定部213a」として表記して一括して説明する。ここで、y=1又は2である。第y方向推定部213aは、例えば、第y符号化ドップラ多重分離部212aから入力される信号に基づいて、物標の方向推定処理を行う。
【0335】
以下、第y方向推定部213aの動作例1及び動作例2について説明する。
【0336】
<第y方向推定部213aの動作例1>
例えば、第y方向推定部213aは、第y符号化ドップラ多重分離部212aから入力される信号であるfb_cf及びCDDM分離処理を行った受信信号Yz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)に基づいて、第y方向推定部213aの仮想受信アレー相関ベクトルhRxPLy(fb_cf, fb_comp_cf)を生成し、方向推定処理を行う。ここで、y=1又は2である。
【0337】
仮想受信アレー相関ベクトルhRxPLy(fb_cf, fb_comp_cf)は、送信アンテナ数NtとRxPLy偏波の受信アンテナ数NRxPLyとの積であるNt×NRxPLy個の要素を含む。第y方向推定部213aは、仮想受信アレー相関ベクトルhRxPLy(fb_cf, fb_comp_cf)を用いて、物標からの反射波信号に対して各送受アンテナ間の位相差に基づく方向推定を行う。
【0338】
第y方向推定部213aは、例えば、偏波送信アンテナ毎の方向推定処理を行うため、仮想受信アレー相関ベクトルhRxPLy(fb_cf, fsc_cf)から、同一偏波の送信アンテナに対応する受信信号を抽出し、PLq偏波の送信アンテナによる仮想受信アレー相関ベクトルhPLq, RxPLy(fb_cf, fsc_cf)を生成する。ここで、hPLq, RxPLy(fb_cf, fsc_cf)は、NPLq×NRxPLy個の要素を有する列ベクトルである。
【0339】
第y方向推定部213aは、例えば、PLq偏波の送信アンテナによる仮想受信アレー相関ベクトルhPLq, RxPLy(fb_cf, fsc_cf)を用いて方向推定処理し、PLq偏波毎のRxPLy偏波の受信アンテナによる到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力してよい。
【0340】
以上の動作により、第y方向推定部213aは、例えば、測位出力として、第y符号化ドップラ多重分離部212aから入力される信号であるfb_cf、及び、CDDM分離処理を行った受信信号Yz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)における異なる偏波送信アンテナ毎に、RxPLy偏波の受信アンテナによる到来方向推定値を出力してよい。また、第y方向推定部213aは、更に、測位出力としてfb_cfを出力してよい。
【0341】
<第y方向推定部213aの動作例2>
例えば、第y方向推定部213aは、第y符号化ドップラ多重分離部212aから入力されるfb_cf、及び、CDDM分離処理を行った受信信号YPLqz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)に基づいて、PLq偏波の送信アンテナによる仮想受信アレー相関ベクトルh PLq,RxPLy(fb_cf, fsc_cf)を生成し、方向推定処理を行う。第y方向推定部213aは、例えば、CDDM処理を行った受信信号YPLqz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)と一致するqに対応する偏波(PLq偏波)の方向推定処理を行う。
【0342】
第y方向推定部213aは、CDDM処理を行った受信信号YPLqz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)と一致するqに対応する偏波(PLq偏波)の方向推定処理を行う点が、動作例1の動作と異なる。この場合の動作は、動作例1の動作における受信信号Yz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)を、受信信号YPLqz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm), ndm)に置き換えた処理を行うことと同様な処理となるため、その動作の詳細説明を省略する。
【0343】
以上の動作により、第y方向推定部213aは、例えば、第y符号化ドップラ多重分離部212aから入力されるfb_cf、及び、CDDM分離処理を行った受信信号YPLqz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)におけるPLq偏波の送信アンテナからの受信信号に基づいて、PLq偏波送信に対するRxPLy偏波の受信アンテナによる到来方向推定値を測位出力として出力してよい。また、第y方向推定部213aは、更に、測位出力として、fb_cfを出力してよい。
【0344】
以上、第y方向推定部213aの動作例1及び動作例2について説明した。
【0345】
第y方向推定部213aは、以上のような動作により、送信偏波毎のRxPLy偏波の受信アンテナによる方向推定処理の結果、又は、反射波の状況に応じて、一部の送信偏波に対するRxPLy偏波の受信アンテナによる方向推定結果を得ることができ、送信偏波アンテナ及び受信偏波アンテナに依存した方向推定結果を得ることができる。送信偏波及び受信偏波により物標からの反射波の応答は変動し得るため、レーダ装置10は、このようなに送受偏波に依存した方向推定結果に基づいて、物標の検出性能又は識別性能を向上できる。
【0346】
なお、ここでは、第y方向推定部213aは、第y符号化ドップラ多重分離部212aから入力される信号(例えば、fb_cf、CDDM分離処理を行った受信信号Yz(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)又はfsc_cf)と、これらの距離及びドップラ分離インデックスに該当するドップラ解析部210の出力に基づいて、物標の方向推定処理を行う場合について説明したが、これに限定されない。
【0347】
例えば、第y方向推定部213aは、第1符号化ドップラ多重分離部212a-1から入力される信号と、第2符号化ドップラ多重分離部212a-2から入力される信号とに基づいて、物標の方向推定処理を行ってもよい。
【0348】
例えば、第y方向推定部213aは、第1符号化ドップラ多重分離部212a-1から入力される信号を用いて、PL1偏波の送信アンテナから送信され、RxPL1偏波の受信アンテナで受信された受信信号による仮想受信アレー相関ベクトルhPL1, RxPL1(fb_cf, fsc_cf)を算出する。また、第y方向推定部213aは、第2符号化ドップラ多重分離部212a-2から入力される信号を用いて、PL2偏波の送信アンテナから送信され、RxPL2偏波の受信アンテナで受信された受信信号による仮想受信アレー相関ベクトルhPL2, RxPL2(fb_cf, fsc_cf)を算出する。そして、第y方向推定部213aは、仮想受信アレー相関ベクトルhPL1, RxPL1(fb_cf, fsc_cf)及び仮想受信アレー相関ベクトルhPL2, RxPL2(fb_cf, fsc_cf)に基づいて、物標の方向推定処理を行ってもよい。
【0349】
又は、例えば、第y方向推定部213aは、第1符号化ドップラ多重分離部212a-1から入力される信号を用いて、PL2偏波の送信アンテナから送信され、RxPL1偏波の受信アンテナで受信された受信信号による仮想受信アレー相関ベクトルhPL2, RxPL1(fb_cf, fsc_cf)を算出する。また、第y方向推定部213aは、第2符号化ドップラ多重分離部212a-2から入力される信号を用いて、PL1偏波の送信アンテナから送信され、RxPL2偏波の受信アンテナで受信された受信信号による仮想受信アレー相関ベクトルhPL1, RxPL2(fb_cf, fsc_cf)を算出する。そして、第y方向推定部213aは、仮想受信アレー相関ベクトルhPL2, RxPL1(fb_cf, fsc_cf)及びhPL1, RxPL2(fb_cf, fsc_cf)に基づき物標の方向推定処理をしてもよい。
【0350】
(変形例2)
上述した実施の形態では、異なる偏波の送信偏波として、直交偏波の関係となるPL1偏波及びPL2偏波の2つの偏波の例を用いて説明したが、これに限定されず、偏波の数は3つ以上でもよい。例えば、直交偏波の関係となるPL1偏波及びPL2偏波の2つの偏波に加え、PL1偏波及びPL2偏波と異なる他の偏波の送信アンテナを用いてもよい。
【0351】
例えば、レーダ装置10(例えば偏波MIMOレーダ)は、直交偏波の関係となる2つの偏波を含む3つ以上の異なる偏波の送信アンテナを含むNt個の送信アンテナを用いてよい。
【0352】
以下では、第1の偏波を「PL1偏波」と記載し、第2の偏波を「PL2偏波」と記載する。第qの偏波を「PLq偏波」と記載する。また、直交偏波となる関係の異なる偏波の組み合わせは、例えば、PL1偏波及びPL2偏波とし、右旋円偏波と左旋円偏波、水平偏波と垂直偏波、右斜め45°偏波と左斜め45°偏波を用いてよい。
【0353】
また、送信アンテナ数Nt≧3とする。例えば、ドップラ多重数NDM≧2、符号多重数NCM≧2とする。例えば、Nt<NDM×NCMである。また、PLq偏波の送信アンテナ数を「NPLq」と表記する。ここで、PLq偏波アンテナ数NPLq≧1であり、NPL1+NPL2+~+NPL_NPL=Nt、q=1~NPLである。例えば、送信アンテナには、NPL1個のPL1偏波アンテナ、及び、NPL2個のPL2偏波アンテナを含み、NPL1+NPL2<Ntとなる。また、PLq偏波の送信アンテナに割り当てられるドップラ多重数を「NDM_PLq」と表記する。ここで、NDM_PLq≦NDMである。
【0354】
レーダ装置10は、例えば、Nt個の送信アンテナを用いて、CDDM送信を行う。
【0355】
また、レーダ装置10は、互いに交差偏波となるPL1偏波及びPL2偏波の送信アンテナ、及び、PL1偏波及びPL2偏波と異なる偏波の送信アンテナを含むNt個の送信アンテナに対して、後述する条件1a及び条件2aを満たすCDDM送信を用いてNt個の送信アンテナから同時多重送信を行う。
【0356】
条件1a及び条件2aは、例えば、直交偏波の関係となるPL1偏波及びPL2偏波の2つの偏波に加え、PL1偏波及びPL2偏波と異なる他の偏波の送信アンテナを含む場合の条件である。例えば、直交偏波の関係となるPL1偏波及びPL2偏波の2つの偏波の送信アンテナ以外に、他の異なる偏波の送信アンテナを含まない場合には、条件1a及び条件2aは、条件1及び条件2と等価な条件となる。
【0357】
例えば、直交偏波の関係となるPL1偏波及びPL2偏波による送信アンテナそれぞれからのレーダ送信信号に対応する反射波は、受信アンテナ部202に対して互いに交差偏波の関係となるため、受信信号の受信レベルが大きく異なるケースがあり得る。その一方で、Nt個の送信アンテナのうち、PL1偏波及びPL2偏波アンテナと異なる他の偏波の送信アンテナは、PL1偏波及びPL2偏波とは直交偏波の関係とならない。このため、他の偏波の送信アンテナからのレーダ送信信号に対応する反射波は、PL1偏波及びPL2偏波の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルに対して、受信信号の受信レベルが大きく異なりにくい。
【0358】
よって、例えば、条件1aでは、条件1の「PL1偏波の送信アンテナ」の代わりに、「PL2偏波を除く偏波送信アンテナ(例えば、(Nt-NPL2)個の送信アンテナ)」とする条件を適用してよい。同様に、条件1aでは、条件1の「PL2偏波の送信アンテナ」の代わりに、「PL1偏波を除く偏波送信アンテナ(例えば、(Nt-NPL1)個の送信アンテナ)」とする条件を適用してよい。
【0359】
また、例えば、条件2aでは、条件2の「同一偏波の送信アンテナ」の代わりに、「PL2偏波アンテナを除く偏波送信アンテナ、及び、PL1偏波アンテナを除く偏波送信アンテナのそれぞれ」とする条件を適用してよい。
【0360】
例えば、条件1a及び条件2aは、以下のように規定されてよい。
【0361】
<条件1a>
例えば、位相回転量設定部105は、PL2偏波を除く偏波送信アンテナ、及び、PL1偏波を除く偏波送信アンテナのそれぞれに、異なるDDMパターン(例えば、ドップラシフト量の割り当てパターン)の条件、異なるCDMパターン(例えば、DDM信号間で異なる符号多重数)の条件、あるいは、ドップラ多重及び符号多重の異なるパターンの条件を満たすCDP量ψndc(ndm), ndm(m)を設定する。
【0362】
<条件2a>
PL2偏波アンテナを除く偏波送信アンテナ、及び、PL1偏波アンテナを除く偏波送信アンテナから送信される信号のそれぞれは、DDM信号間において不均一となる符号多重数によって多重送信され、符号多重数は、1からNCM-1以下の範囲の何れかを含む。
【0363】
レーダ装置10は、上記条件1aを満たすようなCDP量を送信アンテナに付与することにより、以下のような効果が得られる。
【0364】
例えば、受信信号におけるドップラ周波数は、上記のような送信時の符号化ドップラ位相回転に加え、未知となる物標のドップラ周波数が加わる。そのため、各DDM信号間の間隔は維持したまま、それらのドップラ周波数が正方向あるいは負方向に変化する可能性がある。例えば条件1aの1A(例えば、A-1、A-2及びA-3の少なくとも一つ)を満たすことにより、レーダ装置10は、PL1偏波の送信アンテナに割り当てられるCDDM信号を受信しない場合と、PL2偏波の送信アンテナに割り当てられたCDDM信号を受信しない場合とで、DDM信号の間隔又はドップラ多重数が異なるため、これらの判別が可能となる。
【0365】
また、例えば、条件1aの1B(例えば、B-1又はB-2の少なくとも一つ)を満たすことにより、レーダ装置10は、PL1偏波の送信アンテナに割り当てられるCDDM信号を受信しない場合と、PL2偏波の送信アンテナに割り当てられるCDDM信号を受信しない場合とで、各DDM信号を符号分離した後に、受信レベルが高くなる符号間隔又は符号多重数が異なるため、これらの判別が可能となる。
【0366】
よって、位相回転量設定部105によるCDP量の設定が条件1aを満たすことにより、異なる偏波の送信アンテナに対応する受信信号間において受信レベルが大きく異なる場合でも、レーダ装置10は、CDDM信号の分離を可能とし、測位性能及びレーダ検出性能の劣化を防ぐことができる。
【0367】
また、位相回転量設定部105によるCDP量の設定が、条件1aに加え、条件2aを満たすことにより、レーダ装置10において検出可能なドップラ周波数範囲は、-1/(2Tr)≦fd<1/(2Tr)の範囲となり、1送信アンテナの場合のドップラ検出範囲と同等の範囲に拡大できる。
【0368】
以下、位相回転量設定部105におけるCDP量の設定例について説明する。
【0369】
<設定例5>
図16は、送信アンテナ数Nt=6、NPL1=2、NPL2=2、NPL3=3の場合の位相回転量設定部105におけるCDP量の設定例を示す。
【0370】
図16において、黒丸はPL1偏波の送信アンテナ(Tx#1及びTx#2)のCDDM信号の割り当てを示し、白丸はPL2偏波2の送信アンテナ(Tx#3及びTx#4)のCDDM信号の割り当てを示し、網掛け丸はPL3偏波(例えば、垂直(V)偏波)の送信アンテナ(Tx#5及びTx#6)のCDDM信号の割り当てを示す。例えば、PL1偏波とPL2偏波とは、互いに直交偏波の関係となる偏波とする。例えば、PL1偏波はLC偏波であり、PL2偏波はRC偏波でもよい。また、PL3偏波は、PL1偏波及びPL2偏波に対して直交偏波とならない偏波(例えば、垂直(V)偏波)でよい。
【0371】
また、図16において、ドップラ多重数NDM=4であり、ドップラシフト設定部106は、4つのDOP1~DOP4を、例えば、式(5)に示した最大等間隔ドップラシフト量設定を用いて設定してよい。図16において、DOP1=0を付与する位相回転量φ1=0、DOP2=Δfdを付与する位相回転量φ2=π/2、DOP3=-2Δfdを付与する位相回転量φ3=π、DOP4=-Δfdを付与する位相回転量φ4=3π/2(φ4=-π/2としてもよい)となる。図16に示すように、DDM信号間の間隔(ドップラ多重間隔)Δfdは等間隔となり、Δfd=1/(8Tr)である。
【0372】
また、図16において、符号多重数NCM=2であり、符号化部107は、例えば、符号長Loc=2の直交符号系列であるCode1={1,1}、Code2={1,-1}を用いる。
【0373】
図16では、送信アンテナ数Nt=6、ドップラ多重数NDM=4、符号多重数NCM=2であり、Nt<NDM×NCMであるので、位相回転量設定部105は、DDM信号に対する符号化ドップラ多重数NCDDM(ndm)を不均一に設定できる(ここで、ndm=1~NDM)。
【0374】
図16に示すように、符号化部107において、ドップラシフト設定部106から入力される4つのDOP1~DOP4を用いたDDM信号に対する符号化ドップラ多重数は、それぞれ、NCDDM(1)=2, NCDDM(2)=1, NCDDM(3)=2, NCDDM(4)=1である。このように、位相回転量設定部105は、DDM信号に対する符号化ドップラ多重数を不均一に設定する。
【0375】
また、図16では、ドップラシフト設定部106は、PL1偏波の送信アンテナTx#1及びTx#2に対して、ドップラ多重数NDM=4のドップラ多重信号のうち、例えば、ドップラシフト量DOP2、DOP3を用いたドップラ多重信号を割り当て(NDM_PL1=2)、PL2偏波のTx#3及びTx#4に対して、ドップラ多重数NDM=4のドップラ多重信号のうち、例えば、ドップラシフト量DOP3、DOP4を用いたドップラ多重信号を割り当て(NDM_PL2=2)、そして、PL3偏波のTx#5及びTx#6に対して、ドップラ多重数NDM=4のドップラ多重信号のうち、例えば、ドップラシフト量DOP1を用いたドップラ多重信号を割り当てる(NDM_PL2=1)。
【0376】
例えば、位相回転量設定部105は、PL1偏波のTx#1及びTx#2の各々に対して、CDP量ψ2, 2(m)、ψ1, 3(m)を、PL2偏波のTx#3及びTx#4の各々に対して、CDP量ψ2, 3(m)、ψ2, 4(m)を、そして、PL3偏波のTx#5及びTx#6の各々に対し、CDP量ψ1, 1(m)、ψ2, 1(m)を設定する。
【0377】
例えば、図16において、送信アンテナのうち、PL2偏波の送信アンテナを除く送信アンテナ(PL1偏波及びPL3偏波の送信アンテナ)に対して、ドップラシフト設定部106が割り当てるドップラ多重数は3であり、PL1偏波の送信アンテナを除く送信アンテナ(PL2偏波及びPL3偏波の送信アンテナ)に対して、ドップラシフト設定部106が割り当てるドップラ多重数は3であり、同一である。
【0378】
また、PL2偏波の送信アンテナを除く送信アンテナに割り当てられるDDM信号のドップラシフト間隔はΔfd(1,2)=Δfd、Δfd(2,3)=Δfd、Δfd(3,1)=2Δfdであり、PL1偏波の送信アンテナを除く送信アンテナに割り当てられるDDM信号のドップラシフト間隔はΔfd(1,3)=2Δfd、Δfd(3,4)=Δfd、Δfd(4,1)=Δfdであり、巡回一致となり同一であるので、条件1aの1Aの異なるDDMパターン条件に合致しない。
【0379】
なお、DOP1~DOP4に対して、PL2偏波の送信アンテナを除く送信アンテナ(PL1偏波及びPL3偏波の送信アンテナ)に割り当てられる符号Indexを、「CiNoPL2」と表記する。図16の場合、CiNoPL2=(2,1,1,*)である。また、DOP1~DOP4に対して、PL1偏波の送信アンテナを除く送信アンテナ(PL2偏波及びPL3偏波の送信アンテナ)に割り当てられる符号Indexを、「CiNoPL1」と表記する。図16の場合、CiNoPL1=(2,*,1,1)である。
【0380】
また、DOP1~DOP4に対して、PL2偏波の送信アンテナを除く送信アンテナ(PL1偏波及びPL3偏波の送信アンテナ)に割り当てられる符号多重数を、「NcNoPL2」と表記する。図16の場合、NcNoPL2=(2,1,1,0)である。また、DOP1~DOP4に対して、PL1偏波の送信アンテナを除く送信アンテナ(PL2偏波及びPL3偏波の送信アンテナ)に割り当てられる符号多重数を、「NcNoPL1」と表記する。図16の場合、NcNoPL1=(2,0,1,1)である。
【0381】
このように、PL2偏波の送信アンテナを除く送信アンテナ、及び、PL1偏波の送信アンテナを除く送信アンテナに対して、各DDM信号に割り当てられる符号Indexは、CiNoPL2=(2,1,1,*)、CiNoPL1=(2,*,1,1)であり、巡回不一致となり、符号INDEX間隔が異なるため、条件1aのB-1を満たす。
【0382】
また、PL2偏波の送信アンテナを除く送信アンテナ、及び、PL1偏波の送信アンテナを除く送信アンテナに対して、各DDM信号に割り当てられる符号多重数は、NcNoPL2=(2,1,1,0), NcNoPL1=(2,0,1,1)であり、巡回不一致となり、条件1aのB-2を満たす。
【0383】
また、物標のドップラ周波数が-1/(2Tr)≦fdtg<-1/(4Tr)あるいは1/(4Tr)≦fdtg<1/(2Tr)の場合、ドップラ解析部210では折り返したドップラ周波数が観測される。この場合の符号IndexはCiNoPL2alias=(1,2,2,*)、CiNoPL1alias=(1,*,2,2)となり、異なる(巡回不一致となる)。よって、図16の例では、物標のドップラ周波数が-1/(2Tr)≦fdtg<-1/(2Tr)の範囲において、符号Index は巡回不一致となり、符号間隔が異なる。したがって、条件1aの1Bを満たし、異なるCDMパターン条件に合致する。
【0384】
以上より、図16に示すCDP量の設定は、条件1aを満たす設定例である。
【0385】
また、図16では、PL2偏波の送信アンテナを除く送信アンテナにおいて各DDM信号に割り当てられる符号多重数は、NcNoPL2=(2,1,1,0)であり、PL1偏波の送信アンテナを除く送信アンテナにおいて各DDM信号に割り当てられる符号多重数は、NcNoPL1=(2,0,1,1)であり、両方ともDDM信号間で不均一となる符号多重数で多重送信し、符号多重数は、1からNCM-1以下の範囲に含まれる。
【0386】
よって、図16の例では、PL2偏波の送信アンテナを除く送信アンテナ及びPL1偏波の送信アンテナを除く送信アンテナのそれぞれから送信される信号は、DDM信号間において不均一となる符号多重数で多重送信され、符号多重数は、1からNCM-1以下の範囲に含まれる。したがって、図16に示すCDP量の設定は、条件2aを満たす設定例である。
【0387】
図16に示すCDP量の設定により、受信アンテナの偏波に対して交差偏波となる物標反射波を含まない場合、レーダ装置10は、PL1偏波の送信アンテナ(Tx#1及びTx#2)、PL2偏波の送信アンテナ(Tx#3及びTx#4)及び、PL3偏波の送信アンテナ(Tx#5及びTx#6)のそれぞれに対応する受信信号を、ほぼ同レベル、あるいは、数dB~6dB程度内の範囲で受信する。ここで、図16では、PL1偏波の送信アンテナ、PL2偏波の送信アンテナ及びPL3偏波の送信アンテナから構成されるNt(=6)本のTx#1~Tx#6から送信される信号は、各DDM信号に対する符号化ドップラ多重数を不均一とするCDP量を用いて多重送信される。よって、レーダ装置10は、既存の符号化ドップラ多重信号の分離動作に基づいて符号化ドップラ多重信号を分離可能となる。
【0388】
また、図16に示すCDP量の設定において、受信アンテナの偏波に対して交差偏波となる物標反射波を含む場合、レーダ装置10は、図17の(a)のようにPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合と、図17の(b)のようにPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合とで互いに異なるCDDM信号(例えば、条件1aの1Bを満たすCDDM信号)を受信する。
【0389】
このように、例えば、受信アンテナの偏波に対して交差偏波となる物標反射波を含む場合、レーダ装置10は、図17の(a)のようにPL2偏波の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下する場合(例えば、PL2偏波の送信アンテナを除く送信アンテナに対応する反射波を受信する場合に相当)と、図17の(b)のようにPL1偏波の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベルが低下する場合(例えば、PL1偏波の送信アンテナを除く送信アンテナに対応する反射波を受信する場合に相当)とで、互いに異なるパターンのドップラ周波数成分を含む反射波信号を受信する。
【0390】
これにより、レーダ装置10は、例えば、検出したドップラ周波数のピークに基づいて、PL1偏波の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したか、PL2偏波の送信アンテナに対応する受信信号の受信レベル低下が発生したかを、符号化ドップラ多重分離部212において判別可能となる。
【0391】
例えば、PL2偏波を除く偏波のDDM信号は、NDM個のDDM信号間で、不均一となる符号多重数で多重送信されている(符号多重数は、1からNCM -1の範囲を含む)。よって、例えば、符号化ドップラ多重分離部212による判別結果により、受信信号が、PL2偏波の送信アンテナを除く偏波送信アンテナによる送信信号に対応する受信信号であると判別された場合、レーダ装置10は、既存の符号化ドップラ多重信号の分離動作を用いて、符号化ドップラ多重信号を分離可能となる。
【0392】
同様に、例えば、PL1偏波を除く偏波のDDM信号は、NDM個のDDM信号間で、不均一となる符号多重数で多重送信されている(符号多重数は、1からNCM-1の範囲を含む)。よって、例えば、符号化ドップラ多重分離部212による判別結果により、受信信号が、PL1偏波の送信アンテナを除く偏波送信アンテナによる送信信号に対応する受信信号であると判別された場合、レーダ装置10は、既存の符号化ドップラ多重信号の分離動作を用いて、符号化ドップラ多重信号を分離可能となる。
【0393】
このような符号化ドップラ多重分離部212の動作により、レーダ装置10は、物標のドップラ周波数fdを、-1/(2Tr)≦fd < 1/(2Tr)の範囲で確定でき、それぞれのDDM信号に対する送信アンテナを対応付けた出力を得ることができる。
【0394】
以上、位相回転量設定部105におけるCDP量の設定例について説明した。
【0395】
[符号化ドップラ多重分離部212の動作例]
例えば、直交偏波の関係となるPL1偏波及びPL2偏波の2つの偏波に加え、PL1偏波及びPL2偏波と異なる他の偏波(例えば、PL3偏波)の送信アンテナを用いる場合、上述した位相回転量設定部105において設定されるCDP量が付与されるDDM信号は、以下のような符号化ドップラ多重分離部212の動作によって分離が可能となる。以下では、変形例2に係る符号化ドップラ多重分離部212の動作のうち、上述した実施の形態と異なる動作について説明する。
【0396】
変形例2では、図14に示す符号化ドップラ多重分離部212におけるCDDM信号の分離動作のうち、ステップBの動作及びステップCの動作が以下のように上述した実施の形態の動作と異なる。
【0397】
<ステップB-1>
図14に示す符号化ドップラ多重分離部212におけるCDDM信号の分離動作では、NPL1個のPL1偏波に対するCDDM分離処理としたが、変形例2では、(Nt-NPL2)個のPL2偏波を除く偏波送信アンテナのDDM信号に対するCDDM分離処理を行う点が異なる。それ以外は同様な動作となるので、その動作の説明は省略する。
【0398】
<ステップB-2>
符号化ドップラ多重分離部212は、PL2偏波の送信アンテナを除く(Nt-NPL2)個の送信アンテナに対して割り当てられる(Nt-NPL2)個の符号化ドップラ多重信号が正常に検出されるかを判定する。符号化ドップラ多重分離部212は、(Nt-NPL2)個の符号化ドップラ多重信号が正常に検出される場合はステップB-3の処理を行い、正常に検出されない場合はステップC-1の処理を行う。
【0399】
例えば、ステップB-1の処理において、受信アンテナの偏波に対してPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含まない場合、(Nt-NPL2)個の符号化ドップラ多重信号が正常に検出されない可能性がある。
【0400】
符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、抽出した電力上位のNDM_NotPL2個のDDM信号と、他の電力下位の(NDM-NDM_NotPL2)個のDDM信号との間において、所定レベル以上の電力差(あるいは電力比)とならない場合、受信アンテナの偏波に対してPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含まないと判定し、ステップC-1の処理を行う(位相回転量設定部105によるCDP量の設定が条件1aの(A-2)を満たす場合、このような判定処理が可能となる)。ここで、NDM_NotPL2は、PL2偏波の送信アンテナを除く送信アンテナに対して符号化ドップラ多重信号を割り当てるドップラ多重信号の数である。例えば、NDM_NotPL2は、PL2偏波の送信アンテナを除く送信アンテナに対して、NDM個のドップラ多重信号に割り当てられる符号多重数が1以上となるドップラ多重信号数である。例えば、図16の設定例では、NcNoPL2=(2,1,1,0)であり、NDM_NotPL2=3となる。
【0401】
また、抽出した電力上位のNDM_NotPL2個のDDM信号のドップラ多重間隔が、PL2偏波を除く偏波送信アンテナに割り当てられるドップラ多重間隔に一致しない場合、符号化ドップラ多重分離部212は、受信アンテナの偏波に対してPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含まないと判定し、ステップC-1の処理を行う(位相回転量設定部105によるCDP量設定が条件1aの(A-1)または(A-3)を満たす場合、このような判定処理が可能となる)。
【0402】
また、例えば、PL2偏波の送信アンテナを除く(Nt-NPL2)個の送信アンテナに対して、位相回転量設定部105の設定が、NDM_NotPL1=NDM_NotPL2とする。この場合、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合、NDM個のDDM信号のドップラ周波数インデックス(fsc_cf+(nfd-ceil(NDM/2)-1)×ΔFD)における受信電力PowerFT (fb_cf, fsc_cf+(nfd-ceil(NDM/2)-1)×ΔFD)間で、所定範囲内の受信電力が受信されることになる。このような場合、符号分離処理の際に、想定しているNDM_NotPL2個のCDDM信号の符号間隔あるいは符号多重数と異なる信号が得られるため、符号化ドップラ多重分離部212は、折り返し判定に失敗し、NDM_NotPL2個のCDDM信号を正常に検出することが困難となる。この場合、符号化ドップラ多重分離部212は、NDM_NotPL2個のCDDM信号に対する正常な検出ではないと判定し、ステップC-1の処理を行う(位相回転量設定部105によるCDP量設定が条件1aの(B-1)または(B-2)を満たす場合、このような判定処理が可能となる)。
【0403】
<ステップB-3>
符号化ドップラ多重分離部212は、ステップB-2の処理結果に基づいて、PL2偏波の送信アンテナを除く(Nt-NPL2)個の送信アンテナの多重送信に用いたCDDM信号のCDDM分離処理を行った受信信号YPL1z(fb_cf,fsc_cf,ncm,ndm)を、fb_cfと fsc_cfと共に、方向推定部213へ出力する。
【0404】
ここで、YPL1z(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)は、第z番のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210のfb_cf及びfsc_cfにおける、DOPndm及び直交符号Codendc(ndm)を用いたCDDM信号の分離した出力(例えば、CDDM分離結果)である。例えば、YPL1z(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)は、PL2偏波の送信アンテナを除く(Nt-NPL2)個のTx#[ndc(ndm), ndm]から送信され、物標により反射されて、第z番のアンテナ系統処理部201で受信された受信信号を表す。なお、z=1~Naであり、ndm=1~NDMであり、ndc(ndm)=1~NCDDM(ndm)であり、PL2偏波に対応するNPL2個の送信アンテナに割り当てた信号はゼロとして出力される。
【0405】
<ステップC-1>
符号化ドップラ多重分離部212は、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合を想定して、(Nt-NPL1)個のPL1偏波を除く偏波送信アンテナのCDDM信号に対するCDDM分離処理を行う。図14に示す符号化ドップラ多重分離部212におけるCDDM信号の分離動作では、NPL2個のPL2偏波に対するCDDM分離処理としたが、変形例2では、(Nt-NPL1)個のPL2偏波を除く偏波送信アンテナのDDM信号に対するCDDM分離処理を行う点が異なる。それ以外は同様な動作となるので、その動作の説明は省略する。
【0406】
<ステップC-2>
符号化ドップラ多重分離部212は、PL1偏波の送信アンテナを除く(Nt-NPL1)個の送信アンテナに対して割り当てられる(Nt-NPL1)個のCDDM信号が正常に検出されるかを判定する。符号化ドップラ多重分離部212は、(Nt-NPL1)個のCDDM信号が正常に検出される場合はステップC-3の処理を行い、また正常に検出されない場合は、受信信号に雑音成分が多い(例えば、SNRが低い)、又は、干渉成分を含む信号とみなし、ステップDの処理を行う。
【0407】
符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、抽出した電力上位のNDM_NotPL1個のDDM信号と、他の電力下位の(NDM-NDM_NotPL1)個のDDM信号との間において、所定レベル以上の電力差(あるいは電力比)とならない場合は、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含まないと判定し、ステップDの処理を行う。ここで、NDM_NotPL1は、PL1偏波の送信アンテナを除く送信アンテナに対して符号化ドップラ多重信号が割り当てられるドップラ多重信号の数である。例えば、NDM_NotPL1は、PL1偏波の送信アンテナを除く送信アンテナに対して、NDM個のドップラ多重信号に割り当てられる符号多重数が1以上となるドップラ多重信号数である。例えば、図16の設定例では、NcNoPL1=(2,0,1,1)であり、NDM_NotPL1=3となる。
【0408】
また、抽出した電力上位のNDM_NotPL1個のDDM信号のドップラ多重間隔が、PL1偏波を除く偏波送信アンテナに割り当てたドップラ多重間隔に一致しない場合、符号化ドップラ多重分離部212は、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含まないと判定し、ステップDの処理を行う。また、符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、抽出した電力上位のNDM_NotPL1個のDDM信号に対し、符号分離処理を施して得られる信号の受信電力を基に、想定している(Nt-NPL1)個のCDDM信号の符号間隔あるいは符号多重数と一致するかを判定する。符号化ドップラ多重分離部212は、一致しない場合、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含まないと判定し、ステップDの処理を行う。
【0409】
<ステップC-3>
符号化ドップラ多重分離部212は、ステップC-2の処理結果に基づいて、PL1偏波の送信アンテナを除く(Nt-NPL1)個の送信アンテナの多重送信に用いたCDDM信号のCDDM分離処理を行った受信信号YPL2z(fb_cf,fsc_cf,ncm,ndm)を、fb_cf及び fsc_cfと共に、方向推定部213へ出力する。
【0410】
ここで、YPL2z(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)は第z番のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210のfb_cf及びfsc_cfにおける、DOPndm及び直交符号Codendc(ndm)を用いたCDDM信号の分離した出力(例えば、CDDM分離結果)である。例えば、YPL2z(fb_cf,fsc_cf,ndc(ndm),ndm)は、PL1偏波の送信アンテナを除く(Nt-NPL1)個のTx#[ndc(ndm), ndm]から送信され、物標により反射されて、第z番のアンテナ系統処理部201で受信された受信信号を表す。なお、z=1~Naであり、ndm=1~NDMであり、ndc(ndm)=1~NCDDM(ndm)であり、偏波PL1に対応するNPL1個の送信アンテナに割り当てた信号はゼロとして出力される。
【0411】
また、符号化ドップラ多重分離部212は、検出された物標のドップラ周波数を方向推定部213へ出力してもよい。
【0412】
なお、条件2aを満たす場合、符号化ドップラ多重分離部212は、折り返し判定結果を用いることにより、-1/(2Tr) ≦ fd <1/(2Tr)の範囲で推定した物標のドップラ周波数を検出できる。
【0413】
以上、符号化ドップラ多重分離部212の動作例について説明した。
【0414】
[方向推定部213の動作例]
方向推定部213は、上述した実施の形態と同様に、符号化ドップラ多重分離部212の分離動作に応じた出力に基づいて方向推定処理を行ってよい。
【0415】
例えば、方向推定部213は、受信アンテナの偏波に対して交差偏波となる物標反射波を含まない場合、受信アンテナの偏波に対してPL2偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合、及び、受信アンテナの偏波に対してPL1偏波が交差偏波となる物標反射波を含む場合のそれぞれに応じた符号化ドップラ多重分離部212の出力に基づいて、方向推定処理を行うことができる。
【0416】
このような方向推定部213の動作により、送信偏波毎の方向推定処理結果、又は、反射波の状況に応じて、一部の送信偏波に対する方向推定結果が得られ、送信偏波に依存した方向推定結果が得られる。送信偏波により物標からの反射波の応答は変動し得るため、レーダ装置10は、このようなに送信偏波に依存した方向推定結果に基づいて、物標の検出性能又は識別性能を向上できる。
【0417】
以上、変形例2について説明した。
【0418】
以上、本開示の各実施の形態について説明した。
【0419】
[他の実施の形態]
(1)上述した実施の形態では、CDDM送信を用いる偏波MIMOレーダにおいて、異なる偏波送信アンテナを含むNt個の送信アンテナに対して、検出可能なドップラ周波数範囲を±1/(2Tr)範囲に拡大するために、DDM信号間の符号多重数を不均一に設定し、複数送信アンテナからCDDM送信することを前提条件とした。上記実施の形態では、更に、条件1及び条件2を満たすCDDM送信を適用することにより、偏波MIMOレーダの検出性能の向上を図る方法について説明した。例えば、想定する物標の移動速度が比較的低速である場合、又は、レーダ装置と物標との間の相対速度が狭い範囲に限定される場合は、上記前提条件を適用しなくてもよい。
【0420】
例えば、符号化部107は、最大等間隔ドップラシフト量設定よりも狭い間隔の等間隔ドップラシフト量設定(例えば、式(6))を用いて、符号化ドップラ多重数NCDDM(1) , NCDDM(2),~,NCDDM(NDM)を、1以上NCM個以下の範囲において全て同数の符号化ドップラ多重数を含むように設定してもよい。例えば、符号化部107は、符号化ドップラ多重数の全てにおいて符号数NCM個を設定してよい。よって、DOPndmと直交符号系列との複数の組み合わせにおいて、DOPndmそれぞれに対応付けられる直交符号系列による多重数(符号化ドップラ多重数)NCDDM(ndm)は同一でよい。例えば、符号化部107は、DDM信号に対する符号化ドップラ多重数を均一に設定してもよい。このような設定により、DDM信号が不等間隔ドップラ多重となる場合、例えば、特許文献8における折り返し判定を適用することができ、レーダ装置10は、±1/(2×Loc×Tr)のドップラ範囲に亘って、複数の送信アンテナからCDDM送信された信号を個別に分離して受信できる。このようなCDDM送信の設定を適用し、更に条件1を満たすCDDM送信の適用により、実施の形態1で説明した条件1による効果が得られ、偏波MIMOレーダの検出性能の向上を図ることができる。
【0421】
あるいは、符号化部107は、例えば、最大等間隔ドップラシフト量設定を用いて、符号化ドップラ多重数NCDDM(1), NCDDM(2),~,NCDDM(NDM)を、1以上NCM個以下の範囲において全て同数の符号化ドップラ多重数を含むように設定してもよい。例えば、符号化部107は、符号化ドップラ多重数の全てにおいて符号数NCM個を設定してよい。この場合、DOPndmと直交符号系列との複数の組み合わせの数と、送信アンテナNt個と、が同数となってもよい(例えば、NDM×NCM=Ntとしてもよい)。例えば、符号化部107は、DDM信号に対する符号化ドップラ多重数を均一に設定してもよい。この設定の場合、レーダ装置10の受信処理における折り返し判定処理が適用されない。また、レーダ装置10は、例えば、±1/(2Loc×NDM×Tr)のドップラ範囲に亘って、複数の送信アンテナ109からCDDM送信された信号を個別に分離して受信できる。このようなCDDM送信の設定を適用し、更に、条件1を満たすCDDM送信の適用により、実施の形態1で説明した条件1による効果が得られ、偏波MIMOレーダの検出性能の向上を図ることができる。
【0422】
(2)本開示の一実施例において、レーダ装置10が備える送信アンテナNt個のすべてを用いずに一部を用いて、本開示の一実施例における符号多重送信を行ってもよい。
【0423】
また、レーダ装置10が備える送信アンテナNt個の一部を用いて、上述した実施の形態における符号多重送信を適用する場合、レーダ装置10は、符号ドップラ多重送信に用いる送信アンテナの組み合わせ、及び、多重送信数の少なくとも一つを時分割に設定(又は、変更)して送信してもよい。この場合、例えば、レーダ装置10は、送信周期毎、又は、符号送信周期(例えば、符号系列の符号長に対応する周期)毎に、送信アンテナの組み合わせを時分割切り替えてもよい。または、例えば、レーダ装置10は、測定周期毎(Nc回のレーダ送信信号送信回数毎)に、送信アンテナの組み合わせ又は多重する送信アンテナ数を切り替えてもよい。このような動作を適用しても、上述した実施の形態の効果を同等に得ることができる。
【0424】
また、レーダ装置10が備える送信アンテナNt個のすべてを用いずに一部を用いて、上述した実施の形態における符号多重送信を適用する場合、レーダ装置10は、符号ドップラ多重送信に用いる送信アンテナの組み合わせを時分割に設定(例えば、変更)するともに、異なるチャープ信号を用いて送信してもよい。例えば、レーダ装置10は、チャープ信号の送信帯域、周波数掃引時間、中心周波数の少なくとも一つを変更して、あるいは、これらのパラメータを複数組み合わせて異なるチャープ信号を用いて送信してもよい。
【0425】
(3)本開示の一実施例に係るレーダ装置において、レーダ送信部及びレーダ受信部は、物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。また、本開示の一実施例に係るレーダ受信部において、方向推定部と、他の構成部とは、物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。
【0426】
(4)本開示の一実施例において用いた、送信アンテナ数Nt、受信アンテナ数Na、ドップラ多重数NDM、PLq偏波の送信アンテナ数NPLq、偏波数、ドップラシフト量、ドップラシフト間隔、符号多重数NCM、符号間隔(符号Index)といったパラメータの数値は一例であり、それらの値に限定されない。また、例えば、レーダ装置が具備している送信アンテナの一部を、送信アンテナ数Ntとして用いてよく、レーダ装置が具備している受信アンテナの一部を、受信アンテナ数Naとして用いてよい。
【0427】
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、図示しないが、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、およびRAM(Random Access Memory)等の作業用メモリを有する。この場合、上記した各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。但し、レーダ装置のハードウェア構成は、かかる例に限定されない。例えば、レーダ装置の各機能部は、集積回路であるIC(Integrated Circuit)として実現されてもよい。各機能部は、個別に1チップ化されてもよいし、その一部または全部を含むように1チップ化されてもよい。
【0428】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0429】
また、上述した実施の形態における「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0430】
上記各実施形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0431】
また、上記各実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力端子と出力端子を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0432】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
【0433】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0434】
<本開示のまとめ>
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、第1の偏波を放射する第1の送信アンテナ、及び、前記第1の偏波と異なる第2の偏波を放射する第2の送信アンテナを含む複数の送信アンテナと、ドップラシフト量と符号系列との組み合わせに対応する位相回転量が付与された送信信号を、前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、を具備し、前記複数の送信アンテナのそれぞれに対して、前記ドップラシフト量及び前記符号系列の少なくとも一方が異なる前記組み合わせが対応付けられ、前記第1の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量及び符号系列の第1のパターンと、前記第2の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量及び符号系列の第2のパターンと、が異なる。
【0435】
本開示の一実施例において、前記複数の送信アンテナの数は、前記組み合わせの総数よりも少ない。
【0436】
本開示の一実施例において、前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、ドップラシフト量の間隔に関し、前記第1の送信アンテナにより送信される前記送信信号のドップラ多重数と、前記第2の送信アンテナにより送信される前記送信信号のドップラ多重数と、が同じであり、前記第1の送信アンテナに対応付けられるドップラシフト量の間隔のうち少なくとも一つは、前記第2の送信アンテナに対応付けられるドップラシフト量の間隔と異なる。
【0437】
本開示の一実施例において、前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、ドップラ多重数に関し、前記第1の送信アンテナにより送信される前記送信信号のドップラ多重数と、前記第2の送信アンテナにより送信される前記送信信号のドップラ多重数とは異なる。
【0438】
本開示の一実施例において、前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、前記ドップラシフト量の間隔の順序に関し、前記第1の送信アンテナに対応付けられる前記ドップラシフト量間の複数の第1のドップラシフト間隔と、前記第2の送信アンテナに対応付けられる前記ドップラシフト量間の複数の第2のドップラシフト間隔と、が同じであり、前記複数の第1のドップラシフト間隔のドップラ周波数軸上での順序は、前記複数の第2のドップラシフト間隔のドップラ周波数軸上での順序と異なる。
【0439】
本開示の一実施例において、前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、前記符号系列に関し、複数の前記組み合わせにおいて、前記第1の送信アンテナに対応付けられる前記符号系列のドップラ周波数軸上での順序と、前記第2の送信アンテナに対応付けられる前記符号系列のドップラ周波数軸上での順序と、は異なる。
【0440】
本開示の一実施例において、前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、前記符号系列による符号多重数に関し、複数の前記組み合わせにおいて、前記第1の送信アンテナに対応付けられる前記符号系列による前記符号多重数のドップラ周波数軸上での順序と、前記第2の送信アンテナに対応付けられる前記符号系列による前記符号多重数のドップラ周波数軸上での順序と、は異なる。
【0441】
本開示の一実施例において、複数の前記組み合わせにおいて、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナの少なくとも一方に関して、少なくとも1つの前記ドップラシフト量に対応付けられる前記符号系列による符号多重数は、他の前記ドップラシフト量に対応付けられる前記符号系列による符号多重数と異なる。
【0442】
本開示の一実施例において、前記第1の偏波及び前記第2の偏波の何れか一方の偏波を用いて、前記送信信号が物標に反射した反射波信号を受信する受信アンテナと、前記反射波信号に基づいて前記物標の方向推定を行う方向推定回路と、を更に具備する。
【0443】
本開示の一実施例において、前記第1の偏波を受信する第1の受信アンテナ、及び、前記第2の偏波を受信する第2の受信アンテナを含み、前記送信信号が物標に反射した反射波信号を受信する複数の受信アンテナと、前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナそれぞれで受信した前記反射波信号に対して、前記物標の方向推定を個別に行う方向推定回路と、を更に具備する。
【0444】
本開示の一実施例において、前記複数の送信アンテナのうち、前記送信信号の多重送信に用いる送信アンテナの組み合わせは、前記送信信号の送信周期、前記符号系列の符号長に対応する周期、又は、前記レーダ装置における測定周期毎に切り替わる。
【0445】
本開示の一実施例において、第1の偏波を放射する第1の送信アンテナ、前記第1の偏波と異なる第2の偏波を放射する第2の送信アンテナ、および、前記第1の偏波及び前記第2の偏波と異なる第3の偏波を放射する第3の送信アンテナを含む複数の送信アンテナと、ドップラシフト量と符号系列との組み合わせに対応する位相回転量が付与された送信信号を、前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、を具備し、前記複数の送信アンテナのそれぞれに対して、前記ドップラシフト量及び前記符号系列の少なくとも一方が異なる前記組み合わせが対応付けられ、前記第1の送信アンテナ及び前記第3の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量及び符号系列の第3のパターンと、前記第2の送信アンテナ及び前記第3の送信アンテナに対して割り当てられるドップラシフト量及び符号系列の第4のパターンと、が異なる。
【産業上の利用可能性】
【0446】
本開示は、広角範囲を検知するレーダ装置として好適である。
【符号の説明】
【0447】
10 レーダ装置
100 レーダ送信部
101 レーダ送信信号生成部
102 送信信号生成制御部
103 変調信号発生部
104 VCO
105 位相回転量設定部
106 ドップラシフト設定部
107 符号化部
108 位相回転部
109 送信アンテナ部
200,200a レーダ受信部
201 アンテナ系統処理部
202 受信アンテナ部
203 受信無線部
204 ミキサ部
205 LPF
206 信号処理部
207 AD変換部
208 ビート周波数解析部
209 出力切替部
210 ドップラ解析部
211,211a CFAR部
212,212a 符号化ドップラ多重分離部
213,213a 方向推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17