(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087302
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】スポーツ用パンツ
(51)【国際特許分類】
A41D 1/08 20180101AFI20240624BHJP
A41D 1/06 20060101ALI20240624BHJP
A41H 43/02 20060101ALI20240624BHJP
A41D 27/24 20060101ALI20240624BHJP
A41D 27/20 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
A41D1/08
A41D1/06 501Z
A41D1/06 L
A41D1/06 Z
A41H43/02
A41D27/24 Z
A41D27/20 A
A41D1/06 N
A41D1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202055
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000108258
【氏名又は名称】ゼット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】坂本 貫巨
(72)【発明者】
【氏名】入江 俊明
【テーマコード(参考)】
3B035
【Fターム(参考)】
3B035AA07
3B035AA16
3B035AC15
(57)【要約】
【課題】スポーツ用パンツの縫製を比較的容易に行えるようにしながらも、このスポーツ用パンツを着用した競技者に不要なストレスがかかることを防止できるようにする。
【解決手段】後身頃20を構成する脇線側後身頃部30と内股線側後身頃部40は、それらの股上部分31,41を縫合する股上側縫合線L4Aが、股上線Lr上の大腿部の左右中心部位からヒップラインLh上のヒップトップ部分Htを通るように股ぐり線L3側に湾曲した後、上側縫合線部L4bが、股ぐり線L3から離れる方向に湾曲して股ぐり線L3から離れる側の端部にわたるように形成され、股上部分31,41には、脇線側後身頃部30と内股線側後身頃部40が後身頃用縫合線L4で縫合されて後身頃20が縫製されるときに、後身頃20の股上部21を、基本姿勢をとった競技者の臀部を立体的に覆うように外方に膨出させる切替え部50が備えられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の前身頃と左右の後身頃とを縫合して縫製されるスポーツ用パンツであって、
競技者が膝を曲げて腰を落とした状態で上半身を前傾させた基本姿勢に応じた形状を基本形状とするにあたり、左右の前記後身頃は、前記前身頃に脇線で縫合される脇線側後身頃部と、前記前身頃に内股線で縫合される内股線側後身頃部とを後身頃用縫合線で縫合して縫製され、
前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部は、それらの股上部分を縫合する前記後身頃用縫合線の股上側縫合線が、股上線上における大腿部の左右中心部位からヒップライン上のヒップトップ部分を通るように前記内股線側後身頃部の股ぐり線側に湾曲した後、前記股上側縫合線の上側縫合線部が、前記股ぐり線から離れる方向に湾曲して前記股ぐり線から離れる側の端部にわたるように形成され、
前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部の前記股上部分には、前記脇線側後身頃部と前記内股線側後身頃部とが前記後身頃用縫合線で縫合されて前記後身頃が縫製されるときに、当該後身頃の股上部を、前記基本姿勢をとった競技者の臀部を立体的に覆うように外方に膨出させる切替え部が備えられているスポーツ用パンツ。
【請求項2】
前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部の前記股上部分は、前記上側縫合線部が、前記股ぐり線側から離れる方向に湾曲した後、前記股ぐり線から離れるほど腰部側端部に近づく前上がり状態で、前記脇線側の横ベルトループ縫合部位と前記股ぐり線側の後ベルトループ縫合部位との間を通って前記腰部側端部に至るように形成され、
前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部は、それらの縫合前にそれらの前記股上部分の縫合基準点が合わせられたときに、それらの腰部側の端部間に形成される略V字状の空間と、それらの前記ヒップトップ部分の周辺に形成される重畳部とが、前記切替え部となるように形成されている請求項1に記載のスポーツ用パンツ。
【請求項3】
前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部の前記股上部分は、前記上側縫合線部が、前記股ぐり線側から離れる方向に湾曲した後、腰部に沿うようにして前記股ぐり線から離れながら脇線側端部に至るように形成され、
前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部は、それらの縫合前にそれらの前記股上部分の縫合基準点が合わせられたときに、前記腰部に近い前記脇線側の端部間に形成される略V字状の空間と、当該空間に隣接する前記股ぐり線側の位置に形成される第1重畳部と、それらの前記ヒップトップ部分の周辺に形成される第2重畳部とが、前記切替え部となるように形成されている請求項1に記載のスポーツ用パンツ。
【請求項4】
前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部は、それらの股下部分が膝線で膝頭側に突出するくの字状に形成されている請求項1又は2に記載のスポーツ用パンツ。
【請求項5】
前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部は、それらの股下部分を縫合する前記後身頃用縫合線の股下側縫合線が、大腿部の左右中心部位を通る直線で前記股上線と裾部側端部とにわたるように形成されている請求項4に記載のスポーツ用パンツ。
【請求項6】
ポケット部が前記脇線側後身頃部における前記脇線側に寄せた位置に備えられている請求項1又は2に記載のスポーツ用パンツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球用やソフトボール用のユニフォームパンツなどに適用されるスポーツ用パンツに関し、詳しくは、左右の前身頃と左右の後身頃とを縫合して縫製されるスポーツ用パンツに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術としては、例えば、胴部及び脚部を含み、前記胴部の股ぐり部から縦方向に伸びる体幹部縫製線を含むスポーツ用パンツにおいて、前記胴部を構成する片側胴部と、前記脚部を構成する片側脚部とが1枚の連続した生地で構成され、前記1枚の連続した生地の縫製線が、腰背面から大殿筋の上部及び側面を通り、大腿筋を横断して膝の側面付近を通るようにすることで、投球動作の際に、挙げた足の大腿内側のパンツ部分の衣服圧を軽減して突っ張り感を改善する技術がある。
更に、上記のスポーツ用パンツにおいて、前記縫製線が、腰背面から大殿筋の上部を通り、体幹部縫製線から見て外に向かって膨らんだ第1曲線部と、大殿筋の側面を通り、下に向かって膨らんだ第2曲線部とを含むことで、大殿筋を通る生地部分が、外部に向かって突出する状態に立体縫製されるようにして、股関節屈曲時に、臀部から大腿部内側を経て大腿部前面(膝上部)にかけて発生する張力を緩和する技術がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、スポーツ用パンツにおける片側胴部と片側脚部とを1枚の連続した生地で構成するための縫製線が、第1の曲線部と第2の曲線部とを含むことにより、大殿筋を通る生地部分を外部に向かって突出するように立体縫製することができ、これにより、股関節屈曲時に臀部から大腿部内側を経て大腿部前面(膝上部)にかけて発生する張力を緩和することができるものの、第1の曲線部が腰背面から大殿筋の上部を通ることにより、縫製線の股上側端部が、人目につきやすい胴部における腰背面の股ぐり部に位置するようになっている。そのため、左右の片側胴部の股ぐり部を体幹部縫製線で縫合する場合に、股ぐり部に位置する左右の縫製線の股上側端部が上下に位置ズレしないように股ぐり部を縫合するのにかなりの労力を要することになり、この縫合を含むスポーツ用パンツの縫製を容易にする上において改善の余地がある。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、スポーツ用パンツの縫製を比較的容易に行えるようにしながらも、このスポーツ用パンツを着用した競技者に不要なストレスがかかることを防止できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、左右の前身頃と左右の後身頃とを縫合して縫製されるスポーツ用パンツであって、
競技者が膝を曲げて腰を落とした状態で上半身を前傾させた基本姿勢に応じた形状を基本形状とするにあたり、左右の前記後身頃は、前記前身頃に脇線で縫合される脇線側後身頃部と、前記前身頃に内股線で縫合される内股線側後身頃部とを後身頃用縫合線で縫合して縫製され、
前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部は、それらの股上部分を縫合する前記後身頃用縫合線の股上側縫合線が、股上線上における大腿部の左右中心部位からヒップライン上のヒップトップ部分を通るように前記内股線側後身頃部の股ぐり線側に湾曲した後、前記股上側縫合線の上側縫合線部が、前記股ぐり線から離れる方向に湾曲して前記股ぐり線から離れる側の端部にわたるように形成され、
前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部の前記股上部分には、前記脇線側後身頃部と前記内股線側後身頃部とが前記後身頃用縫合線で縫合されて前記後身頃が縫製されるときに、当該後身頃の股上部を、前記基本姿勢をとった競技者の臀部を立体的に覆うように外方に膨出させる切替え部が備えられている点にある。
【0007】
本構成によると、脇線側後身頃部及び内股線側後身頃部の股上部分には前述した切替え部が備えられていることにより、脇線側後身頃部と内股線側後身頃部とを後身頃用縫合線で縫合して後身頃を縫製すれば、後身頃の股上部を、前述した基本姿勢をとった競技者の臀部を立体的に覆うように外方に膨出させることができる。そして、後身頃用縫合線の股上側縫合線が前述したようにヒップトップ部分を通ることにより、後身頃の股上部を前述した膨出形状に保つ保形性を高めることができる。これらの点から、競技者が前述した基本姿勢をとった場合に、スポーツ用パンツの臀部側が突っ張って競技者に不要なストレスを与えることを防止できる。
【0008】
そして、股上側縫合線の股上側が内股線側後身頃部の股ぐり線から離れる側の端部にわたることにより、脇線側後身頃部の股上部分と内股線側後身頃部の股上部分とを股上側縫合線で縫合する際に、内股線側後身頃部における股上部分の腰部側を脇線側後身頃部の股上部分に寄せることが可能になる。これにより、競技者が前述した基本姿勢をとった場合に前傾する腰の背部に内股線側後身頃部における股上部分の腰部側を容易にフィットさせることが可能になる。
【0009】
しかも、股上側縫合線の股上側が内股線側後身頃部の股ぐり線から離れる側の端部にわたることで、股上側縫合線の股上側端部が股ぐり線上には位置しないことから、左右それぞれの前身頃と後身頃とを縫合して縫製された左右の半身部を股ぐり線で縫合する際に、股上側縫合線の股上側端部が股ぐり線上に位置する場合のような股上側端部同士の位置ズレを気にすることなく、比較的容易に左右の半身部を股ぐり線で縫合することができる。
【0010】
その結果、前述した基本姿勢に応じた形状を基本形状とするスポーツ用パンツの縫製を比較的容易に行えるようにしながらも、このスポーツ用パンツを着用した競技者が前述した基本姿勢をとったときのフィット感を向上させることができるとともに、競技者が前述した基本姿勢をとっている間、競技者に不要なストレスがかかるのを防止することができる。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部の前記股上部分は、前記上側縫合線部が、前記股ぐり線側から離れる方向に湾曲した後、前記股ぐり線から離れるほど腰部側端部に近づく前上がり状態で、前記脇線側の横ベルトループ縫合部位と前記股ぐり線側の後ベルトループ縫合部位との間を通って前記腰部側端部に至るように形成され、
前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部は、それらの縫合前にそれらの前記股上部分の縫合基準点が合わせられたときに、それらの前記腰部側の端部間に形成される略V字状の空間と、それらの前記ヒップトップ部分の周辺に形成される重畳部とが、前記切替え部となるように形成されている点にある。
【0012】
本構成によると、後身頃用縫合線の股上側縫合線は、前述したように股ぐり線側から離れる方向に湾曲した後に腰部側端部に至ることにより、股上線上における大腿部の左右中心部位から腰部側端部にわたって上下向きに形成されることになる。これにより、例えば、股上側縫合線が、股ぐり線側から離れる方向に湾曲した後に脇線側端部に至るように形成される場合に比較して、股上側縫合線での脇線側後身頃部の股上部分と内股線側後身頃部の股上部分との縫合を容易にすることができる。
【0013】
又、前述した略V字状の空間と重畳部とが前述した切替え部となることにより、脇線側後身頃部と内股線側後身頃部とを後身頃用縫合線で縫合して後身頃を縫製すると、略V字状の空間が詰まるとともに重畳部の重なりが解消されることで、内股線側後身頃部における股上部分の腰部側を脇線側後身頃部の股上部分に寄せるようにしながら、後身頃の股上部におけるヒップトップ部分の周辺を、前述した基本姿勢をとった競技者の臀部のヒップトップ周辺を立体的に覆う状態に外方に膨出させることができる。
【0014】
しかも、前述したように、上側縫合線部が股ぐり線から離れるほど腰部側端部に近づく前上がり状態で腰部側端部に至ることにより、例えば、上側縫合線部が股ぐり線に沿う状態で腰部側端部に至る場合に比較して、脇線側後身頃部及び内股線側後身頃部の股上部分における腰部側の端部を縫合する上側縫合線部を長くすることができるとともに、その縫合で詰められる前述した略V字状の空間を長く形成することができる。これにより、内股線側後身頃部における股上部分の腰部側を脇線側後身頃部の股上部分に更に好適に寄せることができるとともに、後身頃の股上部におけるヒップトップ部分の周辺をより好適に外方に膨出させることができる。
【0015】
そして、このように縫製された後身頃を使用してスポーツ用パンツを縫製することにより、このスポーツ用パンツを着用した競技者が前述した基本姿勢をとった場合には、前傾する腰の背部に内股線側後身頃部の腰部側をより好適にフィットさせることができるとともに、競技者の臀部におけるヒップトップ周辺に、後身頃のヒップトップ部分の周辺を、競技者のヒップトップ周辺を立体的に覆う状態で好適にフィットさせることができる。
【0016】
その結果、後身頃の縫製を容易に行えるようにしながらも、この後身頃を使用して縫製したスポーツ用パンツを着用した競技者が前述した基本姿勢をとったときのフィット感をより好適に向上させることができるとともに、競技者が前述した基本姿勢をとっている間、競技者に不要なストレスがかかるのをより効果的に防止することができる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部の前記股上部分は、前記上側縫合線部が、前記股ぐり線側から離れる方向に湾曲した後、腰部に沿うようにして前記股ぐり線から離れながら脇線側端部に至るように形成され、
前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部は、それらの縫合前にそれらの前記股上部分の縫合基準点が合わせられたときに、前記腰部に近い前記脇線側の端部間に形成される略V字状の空間と、当該空間に隣接する前記股ぐり線側の位置に形成される第1重畳部と、それらの前記ヒップトップ部分の周辺に形成される第2重畳部とが、前記切替え部となるように形成されている点にある。
【0018】
本構成によると、前述した略V字状の空間と第1重畳部と第2重畳部とが前述した切替え部となることにより、脇線側後身頃部と内股線側後身頃部とを後身頃用縫合線で縫合して後身頃を縫製すると、腰部に近い略V字状の空間が詰まるとともに第1重畳部の重なりが解消されることで、内股線側後身頃部における股上部分の腰部側を脇線側後身頃部の股上部分に寄せるようにしながら、後身頃の股上部における腰部に近い脇線側を、前述した基本姿勢をとった競技者の臀部における横側部の周辺を立体的に覆う状態に横外方に膨出させることができる。又、第2重畳部の重なりが解消されることで、後身頃の股上部におけるヒップトップ部分の周辺を、前述した基本姿勢をとった競技者の臀部におけるヒップトップ周辺を立体的に覆う状態に外方に膨出させることができる。
【0019】
そして、このように縫製された後身頃を使用してスポーツ用パンツを縫製することにより、このスポーツ用パンツを着用した競技者が前述した基本姿勢をとった場合には、前傾する腰の背部に内股線側後身頃部の腰部側を好適にフィットさせることができるとともに、競技者の臀部における横側部の周辺やヒップトップの周辺に、後身頃の股上部における腰部に近い脇線側やヒップトップ部分の周辺を、競技者の臀部における横側部周辺やヒップトップ周辺を立体的に覆う状態で好適にフィットさせることができる。
【0020】
その結果、このように縫製されたスポーツ用パンツを着用した競技者が前述した基本姿勢をとったときのフィット感を、より広い範囲でより好適に向上させられるようにしながら、競技者が前述した基本姿勢をとっている間、競技者に不要なストレスがかかるのをより効果的に防止することができる。
【0021】
本発明の第4特徴構成は、前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部は、それらの股下部分が膝線で膝頭側に突出するくの字状に形成されている点にある。
【0022】
本構成によると、脇線側後身頃部及び内股線側後身頃部の股下部分が前述したくの字状に形成されていることにより、脇線側後身頃部と内股線側後身頃部とを後身頃用縫合線で縫合して後身頃を縫製し、縫製した後身頃を使用してスポーツ用パンツを縫製すれば、脇線側後身頃部及び内股線側後身頃部の股下部分には当該股下部分を前述したくの字状に形成するための切替え部を備えることなく、又、その切替え部を備えることによる縫合の複雑化を招くことなく、前述した基本姿勢に即した形状を基本形状とするスポーツ用パンツを比較的容易に縫製することができる。
【0023】
その結果、前述した基本姿勢に即した形状を基本形状とするスポーツ用パンツの縫製を比較的容易に行えるようにしながらも、このスポーツ用パンツを着用した競技者が前述した基本姿勢をとっている間、競技者に不要なストレスがかかるのを防止することができる。
【0024】
本発明の第5特徴構成は、前記脇線側後身頃部及び前記内股線側後身頃部は、それらの股下部分を縫合する前記後身頃用縫合線の股下側縫合線が、大腿部の左右中心部位を通る直線で前記股上線と裾部側端部とにわたるように形成されている点にある。
【0025】
本構成によると、前述した後身頃用縫合線の股下側縫合線が、大腿部の左右中心部位を通る直線で股上線と裾部側端部とにわたることにより、スポーツ用パンツの股下部を前述したくの字状に保つ保形性を容易に高めることができる。これにより、競技者が前述した基本姿勢をとった場合に、スポーツ用パンツの膝頭側が突っ張って競技者に不要なストレスを与えることを防止できる。
【0026】
その結果、このスポーツ用パンツを着用した競技者が前述した基本姿勢をとっている間、競技者に不要なストレスがかかるのをより効果的に防止することができる。
【0027】
本発明の第6特徴構成は、ポケット部が前記脇線側後身頃部における前記脇線側に寄せた位置に備えられている点にある。
【0028】
本構成によると、脇線側後身頃部と内股線側後身頃部とを後身頃用縫合線で縫合して後身頃を縫製する場合に、その縫合がポケット部にて阻害されるのを回避することができ、これにより、後身頃の縫製を容易にすることができる。又、ポケット部が脇線側に寄ることで、ポケット部に対するバッティンググラブなどの出し入れが行い易くなる。
【0029】
その結果、ポケット部の利便性を向上させながら、後身頃の縫製を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態での野球用のユニフォームパンツの斜視図
【
図2】第1実施形態での野球用のユニフォームパンツの背面部
【
図3】第1実施形態での前身頃及び後身頃の生地裁断図
【
図5】第2実施形態での野球用のユニフォームパンツの斜視図
【
図6】第2実施形態での野球用のユニフォームパンツの背面部
【
図7】第2実施形態での前身頃及び後身頃の生地裁断図
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係るスポーツ用パンツを野球用のユニフォームパンツに適用した第1実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、本発明に係るスポーツ用パンツは、野球用のユニフォームパンツ以外にソフトボール用のユニフォームパンツやバスケットボール用などの各種のスポーツ用パンツに適用することができる。
【0032】
図1~2に示すように、本第1実施形態で例示する野球用のユニフォームパンツ1は、競技者が膝を曲げて腰を落とした状態で上半身を前傾させた基本姿勢に応じた形状を基本形状とするものであり、左右の前身頃10と左右の後身頃20とを縫合して縫製されている。具体的には、野球用のユニフォームパンツ1は、左右それぞれの前身頃10と後身頃20とを脇線L1及び内股線L2で縫合して左右の半身部1L,1Rを縫製した後、縫製した左右の半身部1L,1Rを股ぐり線L3で縫合することにより縫製されている。
【0033】
野球用のユニフォームパンツ1には股上部2と股下部3とが備えられ、股上部2の後側に左右のポケット部4が備えられ、股上部2の腰部5に、左右の前ベルトループ(図示せず)と左右の横ベルトループ6と後ベルトループ7とが備えられている。股下部3には左右の裾部8などが備えられている。
【0034】
図3に示すように、左右の前身頃10には、股上線Lrから上の股上部11と、股上線Lrから下の股下部12とが備えられている。前身頃10の股上部11には、腰部5の前半部を形成する腰部形成部13と、ファスナ(図示せず)が縫合されるファスナ縫合部14とが備えられている。腰部形成部13には、前ベルトループが縫合される前ベルトループ縫合部位13Aと、横ベルトループ6(
図1~2参照)の前半部側が縫合される横ベルトループ縫合部位13Bとが備えられている。前身頃10の股下部12には、裾部8の前半部を形成する裾部形成部15が備えられている。
【0035】
図1~4に示すように、野球用のユニフォームパンツ1は、前述した基本姿勢に応じた形状を基本形状とするにあたり、左右の後身頃20が、前身頃10に脇線L1で縫合される脇線側後身頃部30と、前身頃10に内股線L2で縫合される内股線側後身頃部40とを後身頃用縫合線L4で縫合して縫製されている。脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40には、股上線Lrから上の股上部分31,41と、股上線Lrから下の股下部分32,42とが備えられている。
【0036】
図3~4に示すように、脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40の股上部分31,41には、腰部5の後半部を形成する腰部形成部33,43が備えられている。脇線側後身頃部30の股上部分31には、股上線LrとヒップラインLhとの間において後身頃用縫合線L4側から脇線L1側に凹入する凹入部位31Aと、ヒップラインLhから上側において内股線側後身頃部40の股上部分41に向けて膨出する膨出部位31Bとが含まれている。内股線側後身頃部40の股上部分41には、股上線LrとヒップラインLhとの間において脇線側後身頃部30の股上部分31に向けて膨出する膨出部位41Aと、ヒップラインLhから上側において脇線側後身頃部30の膨出部位31Bに応じて股ぐり線L3側に凹入する凹入部位41Bとが形成されている。脇線側後身頃部30の股上部分31には、前述したポケット部4が脇線側後身頃部30における脇線L1側に寄せた位置に備えられている。脇線側後身頃部30の腰部形成部33には、横ベルトループ6(
図1~2参照)の後半部側が縫合される横ベルトループ縫合部位33Aが備えられている。内股線側後身頃部40の腰部形成部43には、後ベルトループ7(
図1~2参照)の左半部又は右半部が縫合される後ベルトループ縫合部位43Aが備えられている。脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40の股下部分32,42には、裾部8の後半部を形成する裾部形成部34,44が備えられている。
【0037】
図1~4に示すように、後身頃用縫合線L4には、脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40の股上部分31,41を縫合する股上側縫合線L4Aと、脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40の股下部分32,42を縫合する股下側縫合線L4Bとが含まれている。股上側縫合線L4Aには、脇線側後身頃部30の凹入部位31Aと内股線側後身頃部40の膨出部位41Aとを縫合する下側縫合線部L4aと、脇線側後身頃部30の膨出部位31Bと内股線側後身頃部40の凹入部位41Bとを縫合する上側縫合線部L4bとが含まれている。
【0038】
脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40は、それらの股上部分31,41を縫合する後身頃用縫合線L4の股上側縫合線L4Aが、股上線Lr上における大腿部の左右中心部位からヒップラインLh上のヒップトップ部分Htを通るように内股線側後身頃部40の股ぐり線L3側に湾曲した後、股上側縫合線L4Aの上側縫合線部L4bが、股ぐり線L3から離れる方向に湾曲して股ぐり線L3から離れる側の端部である腰部側端部35,45にわたるように形成されている。具体的には、脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40の股上部分31,41において、上側縫合線部L4bが、股ぐり線L3側から離れる方向に湾曲した後、股ぐり線L3から離れるほど腰部側端部35,45に近づく前上がり状態で、脇線L1側の横ベルトループ縫合部位33Aと股ぐり線L3側の後ベルトループ縫合部位43Aとの間を通って腰部側端部35,45に至るように略くの字状に形成されている。又、脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40は、それらの股下部分32,42が膝線Lkで膝頭側に突出するくの字状に形成されるとともに、これらの股下部分32,42を縫合する後身頃用縫合線L4の股下側縫合線L4Bが、大腿部の左右中心部位を通る直線で股上線Lrと裾部側端部36,46とにわたるように形成されている。
【0039】
図4に示すように、脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40の股上部分31,41には、脇線側後身頃部30と内股線側後身頃部40とが後身頃用縫合線L4で縫合されて後身頃20が縫製されるときに、後身頃20の股上部21を、前述した基本姿勢をとった競技者の臀部を立体的に覆うように外方に膨出させる切替え部50が備えられている。
【0040】
脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40は、それらの縫合前にそれらの股上部分31,41の縫合基準点P1,P2が合わせられたときに、それらの腰部側の端部間に形成される略V字状の空間51と、それらのヒップトップ部分Htの周辺に形成される重畳部52とが、前述した切替え部50となるように形成されている。
【0041】
股上部分31,41の縫合基準点P1は、股上線Lr上又はその付近に位置する下側縫合基準点P1であり、脇線側後身頃部30の股上部分31における凹入部位31Aの下端部と、内股線側後身頃部40の股上部分41における膨出部位41Aの下端部とを縫合基準点とするものである。股上部分31,41の縫合基準点P2は、それらの股上部分31,41におけるヒップトップ部分Htよりも上側に位置する上側縫合基準点P2であり、脇線側後身頃部30の股上部分31における膨出部位31Bの頂部と、内股線側後身頃部40の股上部分41における凹入部位41Bの底部とを縫合基準点とするものである。
【0042】
略V字状の空間51は、股上側縫合線L4A上における上側縫合基準点P2の直上方位置から腰部側端部35,45にわたるように形成されており、脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40の股上部分31,41が股上側縫合線L4Aにて縫合されることで詰められる。重畳部52は、脇線側後身頃部30の膨出部位31Bと内股線側後身頃部40の膨出部位41Aとが部分的に重なり合う部位であり、脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40の股上部分31,41が股上側縫合線L4Aにて縫合されることで重畳が解消される。重畳部52は、ヒップラインLh上において脇線側後身頃部30の膨出部位31Bと内股線側後身頃部40の膨出部位41Aとの重なり幅が最大になるように形成されている。
【0043】
以上の構成により、本第1実施形態で例示する野球用のユニフォームパンツ1においては、前述した切替え部50が脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40の股上部分31,41に備えられ、かつ、脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40の股下部分32,42が前述したくの字状に形成されることにより、脇線側後身頃部30と内股線側後身頃部40とを後身頃用縫合線L4で縫合して後身頃20を縫製し、縫製した後身頃20を使用して野球用のユニフォームパンツ1を縫製すれば、脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40の股下部分32,42には当該股下部分32,42を前述したくの字状に形成するための切替え部を備えることなく、又、その切替え部を備えることによる縫合の複雑化を招くことなく、前述した基本姿勢に即した形状を基本形状とする野球用のユニフォームパンツ1を比較的容易に縫製することができる。
【0044】
そして、この野球用のユニフォームパンツ1において、後身頃用縫合線L4は、その股上側縫合線L4Aの下側縫合線部L4aが、股上線Lr上における大腿部の左右中心部位からヒップラインLh上のヒップトップ部分Htを通るように内股線側後身頃部40の股ぐり線L3側に湾曲した後、股上側縫合線L4Aの上側縫合線部L4bが、股ぐり線L3から離れる方向に湾曲して脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40の腰部側端部35,45に至ることにより、股上線Lr上における大腿部の左右中心部位から腰部側端部35,45にわたって上下向きに形成されている。後身頃用縫合線L4の股下側縫合線L4Bは、大腿部の左右中心部位を通る直線で股上線Lrと裾部側端部36,46とにわたって上下向きに形成されている。つまり、後身頃用縫合線L4は、脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40の腰部側端部35,45と裾部側端部36,46とにわたって上下向きに形成されることになり、これにより、脇線側後身頃部30と内股線側後身頃部40とを後身頃用縫合線L4で縫合することによる後身頃20の縫製を容易にすることができる。
【0045】
しかも、股上側縫合線L4Aの上側縫合線部L4bが内股線側後身頃部40の股ぐり線L3から離れて脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40の腰部側端部35,45に至ることで、股上側縫合線L4Aの股上側端部が股ぐり線L3上には位置しないことから、左右それぞれの前身頃10と後身頃20とを縫合して縫製された左右の半身部1L,1Rを股ぐり線L3で縫合する際に、例えば、股上側縫合線L4Aの股上側端部が股ぐり線L3上に位置する場合のような股上側端部同士の位置ズレを気にすることなく、比較的容易に左右の半身部1L,1Rを股ぐり線L3で縫合することができる。
【0046】
又、この野球用のユニフォームパンツ1においては、前述した略V字状の空間51と重畳部52とが前述した切替え部50となることにより、脇線側後身頃部30と内股線側後身頃部40とを後身頃用縫合線L4で縫合して後身頃20を縫製すると、略V字状の空間51が詰まるとともに重畳部52の重なりが解消されることで、内股線側後身頃部40における股上部分41の腰部側を脇線側後身頃部30の股上部分31に寄せるようにしながら、後身頃20の股上部21におけるヒップトップ部分Htの周辺を、前述した基本姿勢をとった競技者の臀部のヒップトップ周辺を立体的に覆う状態に外方に膨出させることができる。
【0047】
更に、前述したように、上側縫合線部L4bが股ぐり線L3から離れるほど腰部側端部35,45に近づく前上がり状態で腰部側端部35,45に至ることにより、例えば、上側縫合線部L4bが股ぐり線L3に沿う状態で腰部側端部35,45に至る場合に比較して、脇線側後身頃部30及び内股線側後身頃部40の股上部分31,41における腰部側の端部を縫合する上側縫合線部L4bを長くすることができるとともに、その縫合で詰められる前述した略V字状の空間51を長く形成することができる。これにより、内股線側後身頃部40における股上部分41の腰部側を脇線側後身頃部30の股上部分31に更に好適に寄せることができるとともに、後身頃20の股上部21におけるヒップトップ部分Htの周辺をより好適に外方に膨出させることができる。
【0048】
その上、後身頃用縫合線L4の股上側縫合線L4Aが前述したようにヒップトップ部分Htを通ることにより、後身頃20の股上部21を前述した膨出形状に保つ保形性を高めることができる。又、前述した後身頃用縫合線L4の股下側縫合線L4Bが、大腿部の左右中心部位を通る直線で股上線Lrと裾部側端部36,46とにわたることにより、野球用のユニフォームパンツ1の股下部3を前述したくの字状に保つ保形性を容易に高めることができる。
【0049】
これらの点から、この野球用のユニフォームパンツ1を着用した競技者が前述した基本姿勢をとった場合には、前傾する腰の背部に内股線側後身頃部40の腰部側を好適にフィットさせるとともに、競技者の臀部におけるヒップトップ周辺に、後身頃20のヒップトップ部分Htの周辺を、競技者のヒップトップ周辺を立体的に覆う状態で好適にフィットさせるようにしながら、野球用のユニフォームパンツ1の臀部側や膝頭側が突っ張って競技者に不要なストレスを与えることを防止できる。
【0050】
そして、この野球用のユニフォームパンツ1においては、ポケット部4が脇線側後身頃部30における脇線L1側に寄せた位置に備えられていることにより、脇線側後身頃部30と内股線側後身頃部40とを後身頃用縫合線L4で縫合して後身頃20を縫製する場合に、その縫合がポケット部4にて阻害されるのを回避することができ、これにより、後身頃20の縫製を容易にすることができる。又、ポケット部4が脇線L1側に寄ることで、ポケット部4に対するバッティンググラブなどの出し入れが行い易くなる。
【0051】
その結果、前述した基本姿勢に応じた形状を基本形状とする野球用のユニフォームパンツ1の縫製を容易に行えるようにしながらも、この野球用のユニフォームパンツ1を着用した競技者が前述した基本姿勢をとったときのフィット感を好適に向上させることができるとともに、競技者が前述した基本姿勢をとっている間、競技者に不要なストレスがかかるのを効果的に防止することができる。
【0052】
前身頃10と脇線側後身頃部30と内股線側後身頃部40とのそれぞれには、ストレッチ性を有する生地が使用されており、これにより、野球用のユニフォームパンツ1を前述した基本形状に縫製しながらも、この野球用のユニフォームパンツ1を着用した競技者の前述した基本姿勢からの捕球動作や打撃動作などが行い易くなっている。
【0053】
〔第2実施形態〕
以下、本発明に係るスポーツ用パンツを野球用のユニフォームパンツに適用した第2実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、本第2実施形態で例示する野球用のユニフォームパンツは、上記の第1実施形態で例示した野球用のユニフォームパンツとは左右の後身頃における股上部の構成が異なるだけであることから、以下においては、後身頃の構成についてのみ説明する。
【0054】
図5~6に示すように、第2実施形態で例示する左右の後身頃60は、前身頃10に脇線L1で縫合される脇線側後身頃部70と、前身頃10に内股線L2で縫合される内股線側後身頃部80とを後身頃用縫合線L5で縫合して縫製されている。
図7に示すように、脇線側後身頃部70及び内股線側後身頃部80には、股上線Lrから上の股上部分71,81と、股上線Lrから下の股下部分72,82とが備えられている。内股線側後身頃部80の股上部分81のみに、腰部5の後半部を形成する腰部形成部83が備えられている。脇線側後身頃部70の股上部分71には、股上線LrとヒップラインLhとの間において後身頃用縫合線L5側から脇線L1側に凹入する凹入部位71Aと、ヒップラインLhから上側において内股線側後身頃部80の股上部分81に向けて膨出する膨出部位71Bとが含まれている。内股線側後身頃部80の股上部分81には、股上線LrとヒップラインLhとの間において脇線側後身頃部70の股上部分71に向けて膨出する第1膨出部位81Aと、ヒップラインLhから上側において脇線側後身頃部70の膨出部位71Bに応じて股ぐり線L3側に凹入する凹入部位81Bと、ヒップラインLhから上側において脇線側後身頃部70の膨出部位71Bに向けて膨出する第2膨出部位81Cとが形成されている。脇線側後身頃部70の股上部分71には、前述したポケット部4が脇線側後身頃部70における脇線L1側に寄せた位置に備えられている。内股線側後身頃部80の腰部形成部83には、横ベルトループ6(
図5~6参照)の後半部側が縫合される横ベルトループ縫合部位83Aと、後ベルトループ7(
図5~6参照)の左半部又は右半部が縫合される後ベルトループ縫合部位83Bとが備えられている。脇線側後身頃部70及び内股線側後身頃部80の股下部分72,82には、裾部8の後半部を形成する裾部形成部74,84が備えられている。
【0055】
図5~8に示すように、後身頃用縫合線L5には、脇線側後身頃部70及び内股線側後身頃部80の股上部分71,81を縫合する股上側縫合線L5Aと、脇線側後身頃部70及び内股線側後身頃部80の股下部分72,82を縫合する股下側縫合線L5Bとが含まれている。股上側縫合線L5Aには、脇線側後身頃部70の凹入部位71Aと内股線側後身頃部80の第1膨出部位81Aとを縫合する下側縫合線部L5aと、脇線側後身頃部70の膨出部位71Bと内股線側後身頃部80の凹入部位81B及び第2膨出部位81Cとを縫合する上側縫合線部L5bとが含まれている。
【0056】
脇線側後身頃部70及び内股線側後身頃部80は、それらの股上部分71,81を縫合する後身頃用縫合線L5の股上側縫合線L5Aが、股上線Lr上における大腿部の左右中心部位からヒップラインLh上のヒップトップ部分Htを通るように内股線側後身頃部80の股ぐり線L3側に湾曲した後、股上側縫合線L5Aの上側縫合線部L5bが、股ぐり線L3側から離れる方向に湾曲して、股ぐり線L3から離れる側の端部である脇線側端部75,85に至るように形成されている。具体的には、脇線側後身頃部70及び内股線側後身頃部80の股上部分71,81において、上側縫合線部L5bが、股ぐり線L3側から離れる方向に湾曲した後、腰部5の後半部を形成する内股線側後身頃部80の腰部形成部83に沿うようにして股ぐり線L3から離れながら脇線側端部75,85に至るように略つの字状に形成されている。又、脇線側後身頃部70及び内股線側後身頃部80は、それらの股下部分72,82が膝線Lkで膝頭側に突出するくの字状に形成されるとともに、これらの股下部分72,82を縫合する後身頃用縫合線L5の股下側縫合線L5Bが、大腿部の左右中心部位を通る直線で股上線Lrと裾部側端部76,86とにわたるように形成されている。
【0057】
図8に示すように、脇線側後身頃部70及び内股線側後身頃部80の股上部分71,81には、脇線側後身頃部70と内股線側後身頃部80とが後身頃用縫合線L5で縫合されて後身頃20が縫製されるときに、後身頃60の股上部61を、前述した基本姿勢をとった競技者の臀部を立体的に覆うように外方に膨出させる切替え部50が備えられている。
【0058】
脇線側後身頃部70及び内股線側後身頃部80は、それらの縫合前にそれらの股上部分71,81の縫合基準点P3,P4が合わせられたときに、腰部5の後半部を形成する内股線側後身頃部80の腰部形成部83に近い脇線L1側の端部間に形成される略V字状の空間53と、この空間53に隣接する股ぐり線L3側の位置に形成される第1重畳部54と、それらのヒップトップ部分Htの周辺に形成される第2重畳部55とが、切替え部50となるように形成されている。
【0059】
股上部分71,81の縫合基準点P3は、股上線Lr上又はその付近に位置する下側縫合基準点P3であり、脇線側後身頃部70の股上部分71における凹入部位71Aの下端部と、内股線側後身頃部80の股上部分81における第1膨出部位81Aの下端部とを縫合基準点とするものである。股上部分71,81の縫合基準点P4は、それらの股上部分71,81におけるヒップトップ部分Htよりも上側に位置する上側縫合基準点P4であり、脇線側後身頃部70の股上部分71における膨出部位71Bの頂部と、内股線側後身頃部80の股上部分81における凹入部位81Bの底部とを縫合基準点とするものである。
【0060】
略V字状の空間53は、ポケット部4よりも上方の脇線L1側の端部間に形成されており、脇線側後身頃部70及び内股線側後身頃部80の股上部分71,81が股上側縫合線L5Aにて縫合されることで詰められる。第1重畳部54は、脇線側後身頃部70の膨出部位71Bと内股線側後身頃部80の第2膨出部位81Cとが部分的に重なり合う部位であり、又、第2重畳部55は、脇線側後身頃部70の膨出部位71Bと内股線側後身頃部80の第1膨出部位81Aとが部分的に重なり合う部位であり、これらは、脇線側後身頃部70及び内股線側後身頃部80の股上部分71,81が股上側縫合線L5Aにて縫合されることで重畳が解消される。第2重畳部55は、ヒップラインLh上において脇線側後身頃部70の膨出部位71Bと内股線側後身頃部80の第1膨出部位81Aとの重なり幅が最大になるように形成されている。
【0061】
以上の構成により、本第2実施形態で例示する野球用のユニフォームパンツ1においては、前述した略V字状の空間53と第1重畳部54と第2重畳部55とが前述した切替え部50となることにより、脇線側後身頃部70と内股線側後身頃部80とを後身頃用縫合線L5で縫合して後身頃60を縫製すると、内股線側後身頃部80の腰部形成部83に近い略V字状の空間53が詰まるとともに第1重畳部54の重なりが解消されることで、内股線側後身頃部80における股上部分81の腰部側を脇線側後身頃部70の股上部分71に寄せるようにしながら、後身頃60の股上部61における腰部形成部83に近い脇線L1側を、前述した基本姿勢をとった競技者の臀部における横側部の周辺を立体的に覆う状態に横外方に膨出させることができる。又、第2重畳部55の重なりが解消されることで、後身頃60の股上部61におけるヒップトップ部分Htの周辺を、前述した基本姿勢をとった競技者の臀部におけるヒップトップ周辺を立体的に覆う状態に外方に膨出させることができる。
【0062】
そして、このように縫製された後身頃60を使用して野球用のユニフォームパンツ1を縫製することにより、この野球用のユニフォームパンツ1を着用した競技者が前述した基本姿勢をとった場合には、前傾する腰の背部に内股線側後身頃部80の腰部側を好適にフィットさせることができるとともに、競技者の臀部における横側部の周辺やヒップトップの周辺に、後身頃60の股上部61における腰部に近い脇線L1側やヒップトップ部分Htの周辺を、競技者の臀部における横側部周辺やヒップトップ周辺を立体的に覆う状態で好適にフィットさせることができる。
【0063】
その結果、このように縫製された野球用のユニフォームパンツ1を着用した競技者が前述した基本姿勢をとったときのフィット感を、より広い範囲でより好適に向上させられるようにしながら、競技者が前述した基本姿勢をとっている間、競技者に不要なストレスがかかるのをより効果的に防止することができる。
【0064】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
【0065】
(1)上記の実施形態においては、野球用のユニフォームパンツ(スポーツ用パンツ)1として、
図3~4、
図7~8に示すように、脇線側後身頃部30,70及び内股線側後身頃部40,80の股下部分32,42,72,82が膝線Lkで膝頭側に突出するくの字状に形成されているものを例示したが、これに限らず、例えば、脇線側後身頃部30,70及び内股線側後身頃部40,80の股下部分32,42,72,82が直線状に形成されているものであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
4 ポケット部
5 腰部
10 前身頃
20 後身頃
21 股上部
30 脇線側後身頃部
31 股上部分
32 股下部分
33A 横ベルトループ縫合部位
35 腰部側端部
36 裾部側端部
40 内股線側後身頃部
41 股上部分
42 股下部分
43A 後ベルトループ縫合部位
45 腰部側端部
46 裾部側端部
50 切替え部
51 略V字状の空間
52 重畳部
53 略V字状の空間
54 第1重畳部
55 第2重畳部
60 後身頃
61 股上部
70 脇線側後身頃部
71 股上部分
72 股下部分
75 脇線側端部
76 裾部側端部
80 内股線側後身頃部
81 股上部分
82 股下部分
85 脇線側端部
86 裾部側端部
Ht ヒップトップ部分
L1 脇線
L3 股ぐり線
L4 後身頃用縫合線
L4A 股上側縫合線
L4b 上側縫合線部
L4B 股下側縫合線
L5 後身頃用縫合線
L5A 股上側縫合線
L5b 上側縫合線部
L5B 股下側縫合線
Lh ヒップライン
Lk 膝線
Lr 股上線
P1 縫合基準点
P2 縫合基準点
P3 縫合基準点
P4 縫合基準点