(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087304
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】柱梁接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20240624BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
E04B1/58 508P
E04B1/30 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202057
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 綾香
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 好徳
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊司
(72)【発明者】
【氏名】馬場 拓也
(72)【発明者】
【氏名】河野 達也
(72)【発明者】
【氏名】奥 伸之
(72)【発明者】
【氏名】本田 栞
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 将吾
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB01
2E125AB12
2E125AC01
2E125AC15
2E125AG43
2E125AG45
2E125BB02
2E125BB12
2E125CA06
(57)【要約】
【課題】鉄筋コンクリート柱に対して鉄骨梁を接合する柱梁接合部を備えた柱梁接合構造において、鉄骨梁直下の室内空間側の意匠性や機能性の悪化を回避しながら、柱梁接合部の破損時であっても鉄骨梁の落下を防止するための落下防止部を設けることでフェールセーフ機能を付加する。
【解決手段】落下防止部5が、鉄筋コンクリート柱10において柱梁接合部3よりも上方側に位置する柱側連結部分14と鉄骨梁20における梁側連結部分24とを鉄骨梁20の上方側から連結する連結具50と、当該連結具50において柱側連結部分14に対する梁側連結部分24の鉛直方向への変位を阻止しながら柱側連結部分14に対する梁側連結部分24の鉄骨梁20の軸方向への変位を許容する軸方向変位許容部60と、を有して構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート柱に対して鉄骨梁を接合する柱梁接合部と、当該柱梁接合部の破損時における前記鉄骨梁の落下を防止する落下防止部とを備えた柱梁接合構造であって、
前記落下防止部が、前記鉄筋コンクリート柱において前記柱梁接合部よりも上方側に位置する柱側連結部分と前記鉄骨梁における梁側連結部分とを前記鉄骨梁の上方側から連結する連結具と、当該連結具において前記柱側連結部分に対する前記梁側連結部分の鉛直方向への変位を阻止しながら前記柱側連結部分に対する前記梁側連結部分の前記鉄骨梁の軸方向への変位を許容する軸方向変位許容部と、を有して構成されている柱梁接合構造。
【請求項2】
前記連結具が、前記柱側連結部分に固定された柱側連結部材と、前記梁側連結部分に固定された梁側連結部材と、当該柱側連結部材と当該梁側連結部材とを連結ボルトにより接合するボルト接合部と、からなり、
前記ボルト接合部において、前記柱側連結部材と前記梁側連結部材とが、前記鉄骨梁の軸方向に沿って相対変位自在に重ね合わせられた状態で、それら部材を前記鉄骨梁の軸方向の直交方向に貫通する前記連結ボルトにより接合されており、
前記柱側連結部材及び前記梁側連結部材の少なくとも一方側において前記連結ボルトが挿通されるボルト挿通孔が、前記鉄骨梁の軸方向に長尺な長孔に形成されて前記軸方向変位許容部として機能する請求項1に記載の柱梁接合構造。
【請求項3】
前記柱側連結部材が、前記鉄筋コンクリート柱の側面に対してアンカーボルトにより定着されて前記鉄骨梁の幅方向に垂直な平板状の柱側ガセットプレートで構成されており、
前記梁側連結部材が、前記鉄骨梁の上フランジの上面に対して固定されて前記鉄骨梁の幅方向に垂直な平板状の梁側ブラケットで構成されており、
前記柱側ガセットプレートと前記梁側ブラケットとが、前記ボルト接合部において前記鉄骨梁の幅方向に重ね合わされた状態で前記鉄骨梁の幅方向に貫通する前記連結ボルトにより接合されている請求項2に記載の柱梁接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート柱に対して鉄骨梁を接合する柱梁接合部と、当該柱梁接合部の破損時における前記鉄骨梁の落下を防止する落下防止部とを備えた柱梁接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート柱に対して鉄骨梁を接合する柱梁接合部を備えた柱梁接合構造では、地震時において鉄骨梁から鉄筋コンクリート柱に過大な軸力が伝達されることで上記柱梁接合部の特にコンクリート部分が破損する可能性がある。よって、このような柱梁接合構造では、柱梁接合部の破損時であっても鉄骨梁の落下を防止するための落下防止部を設けることでフェールセーフ機能を付加することが望まれる(例えば特許文献1を参照)。
特許文献1記載の柱梁接合構造では、落下防止部として、鉄筋コンクリート柱における柱梁接合部の下方側の側面に鉄骨梁の端部が載せられる所謂アゴ部が、鉄骨梁の軸方向に沿って突出形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の柱梁接合構造では、鉄骨梁の下方側において鉄筋コンクリート柱の側面から突出するアゴ部が上記落下防止部として形成されているので、当該鉄骨梁直下の室内空間では、当該アゴ部が見えることで美観を損ねたり、アゴ部を天井材で隠す場合にはその天井材をアゴ部の下方側に設置する必要があるために天井高を充分に高くとれなかったり、というように、鉄骨梁直下の室内空間側の意匠性や機能性が悪化するという問題が生じる。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、鉄筋コンクリート柱に対して鉄骨梁を接合する柱梁接合部を備えた柱梁接合構造において、鉄骨梁直下の室内空間側の意匠性や機能性の悪化を回避しながら、柱梁接合部の破損時であっても鉄骨梁の落下を防止するための落下防止部を設けることでフェールセーフ機能を付加することできる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、鉄筋コンクリート柱に対して鉄骨梁を接合する柱梁接合部と、当該柱梁接合部の破損時における前記鉄骨梁の落下を防止する落下防止部とを備えた柱梁接合構造であって、
前記落下防止部が、前記鉄筋コンクリート柱において前記柱梁接合部よりも上方側に位置する柱側連結部分と前記鉄骨梁における梁側連結部分とを前記鉄骨梁の上方側から連結する連結具と、当該連結具において前記柱側連結部分に対する前記梁側連結部分の鉛直方向への変位を阻止しながら前記柱側連結部分に対する前記梁側連結部分の前記鉄骨梁の軸方向への変位を許容する軸方向変位許容部と、を有して構成されている点にある。
【0006】
本構成によれば、柱梁接合部の破損時であっても鉄骨梁の落下を防止するための落下防止部を設けることでフェールセーフ機能を付加することができる。即ち、上記落下防止部は、地震時において鉄骨梁から鉄筋コンクリート柱に過大な軸力が伝達される場合であっても、鉄筋コンクリート柱の柱側連結部分と鉄骨梁の梁側連結部分とを連結する連結具において上記軸方向変位許容部により柱側連結部分に対する梁側連結部分の鉄骨梁の軸方向への変位が許容されることで、その過大な軸力の殆どを柱梁接合部で負担させて、当該軸力が連結具へ伝達されることを抑制し、当該連結具の破損を回避することができる。そして、当該過大な軸力の負担により柱梁接合部が破損した場合であっても、上記連結具において上記軸方向変位許容部により柱側連結部分に対する梁側連結部分の鉛直方向への変位が阻止されることで、破損が回避された連結具により好適に鉄骨梁の落下を防止することができる。
更に、上記落下防止部が有する連結具は、鉄筋コンクリート柱において柱梁接合部よりも上方側に位置する柱側連結部分と、鉄骨梁における梁側連結部分とを、鉄骨梁の上方側から連結するものであるので、鉄骨梁直下の室内空間に対しては適切に隠蔽されて干渉が抑制されたものとなる。よって、鉄骨梁直下の室内空間では、連結具が隠蔽されることにより美観の悪化を抑制でき、更には、天井材を設置する場合であっても当該天井材を鉄骨梁にできるだけ近づけて設置して天井高を充分に高くとることができる。
従って、本発明により、鉄筋コンクリート柱に対して鉄骨梁を接合する柱梁接合部を備えた柱梁接合構造において、鉄骨梁直下の室内空間側の意匠性や機能性の悪化を回避しながら、柱梁接合部の破損時であっても鉄骨梁の落下を防止するための落下防止部を設けることでフェールセーフ機能を付加することできる技術を提供することができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記連結具が、前記柱側連結部分に固定された柱側連結部材と、前記梁側連結部分に固定された梁側連結部材と、当該柱側連結部材と当該梁側連結部材とを連結ボルトにより接合するボルト接合部と、からなり、
前記ボルト接合部において、前記柱側連結部材と前記梁側連結部材とが、前記鉄骨梁の軸方向に沿って相対変位自在に重ね合わせられた状態で、それら部材を前記鉄骨梁の軸方向の直交方向に貫通する前記連結ボルトにより接合されており、
前記柱側連結部材及び前記梁側連結部材の少なくとも一方側において前記連結ボルトが挿通されるボルト挿通孔が、前記鉄骨梁の軸方向に長尺な長孔に形成されて前記軸方向変位許容部として機能する点にある。
【0008】
本構成によれば、上記落下防止部において、鉄筋コンクリート柱の柱側連結部分に固定された柱側連結部材と、鉄骨梁の梁側連結部分に固定された梁側連結部材とを、ボルト接合部にてそれらを貫通する連結ボルトにより接合する形態で、鉄筋コンクリート柱の柱側連結部分と鉄骨梁の梁側連結部分とを連結する連結具を構成することができる。
そして、このような構成を採用する場合には、柱側連結部材と梁側連結部材とを鉄骨梁の軸方向に沿って相対変位自在に重ね合わせた状態で、それらを鉄骨梁の軸方向の直交方向に貫通する連結ボルトにより接合すると共に、その連結ボルトのボルト挿通孔を、柱側連結部材及び梁側連結部材の少なくとも一方側において鉄骨梁の軸方向に長尺な長孔に形成するという簡素で合理的な構成を採用するだけで、当該ボルト挿通孔を上述した軸方向変位許容部として機能させることができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記柱側連結部材が、前記鉄筋コンクリート柱の側面に対してアンカーボルトにより定着されて前記鉄骨梁の幅方向に垂直な平板状の柱側ガセットプレートで構成されており、
前記梁側連結部材が、前記鉄骨梁の上フランジの上面に対して固定されて前記鉄骨梁の幅方向に垂直な平板状の梁側ブラケットで構成されており、
前記柱側ガセットプレートと前記梁側ブラケットとが、前記ボルト接合部において前記鉄骨梁の幅方向に重ね合わされた状態で前記鉄骨梁の幅方向に貫通する前記連結ボルトにより接合されている点にある。
【0010】
本構成によれば、鉄筋コンクリート柱の柱側連結部分に固定された柱側連結部材を、鉄筋コンクリート柱の側面に対してアンカーボルトにより定着されて鉄骨梁の幅方向に垂直な平板状の柱側ガセットプレートで構成することができる。一方、鉄骨梁の梁側連結部分に固定された梁側連結部材を、鉄骨梁の上フランジの上面に対して固定されて鉄骨梁の幅方向に垂直な平板状の梁側ブラケットで構成することができる。これら柱側ガセットプレート及び梁側ブラケットは、共に鉄骨梁の幅方向に垂直な平板状であることから、ボルト接合部において、そのままの状態で鉄骨梁の幅方向に重ね合わせて、鉄骨梁の軸方向に沿って相対変位自在な状態とすることができる。
そして、ボルト接合部において、柱側ガセットプレートと梁側ブラケットとを鉄骨梁の幅方向に貫通する連結ボルトにより接合するにあたり、柱側連結部材及び梁側連結部材の少なくとも一方側の連結ボルトのボルト挿通孔を鉄骨梁の軸方向に長尺な長孔に形成することで、当該ボルト挿通孔を上述した軸方向変位許容部として機能させることができる。
更に、上記柱側ガセットプレートと上記梁側ブラケットとを連結ボルトにより接合してなる連結具において、鉄骨梁の軸方向に沿って長孔に形成されたボルト挿通孔により柱側ガセットプレートに対する梁側ブラケットの鉄骨梁の軸方向への変位が許容されることで、鉄骨梁に生じた過大な軸力が伝達されることが抑制される。よって、柱側ガセットプレートを鉄筋コンクリート柱の側面に対して定着させるためのアンカーボルトを、柱梁接合部において鉄骨梁を鉄筋コンクリート柱の側面に対して定着させるためのアンカーボルトよりも低強度で簡素なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態にかかる柱梁接合構造の詳細構成を示す正面図
【
図2】本実施形態にかかる柱梁接合構造の詳細構成を示す左側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について
図1~
図3に基づいて説明する。
本実施形態の柱梁接合構造(以下「本柱梁接合構造」と呼ぶ。)は、鉄筋コンクリート柱10に対してH形鋼からなる鉄骨梁20を接合する柱梁接合部3と、当該柱梁接合部3の破損時における鉄骨梁20の落下を防止する落下防止部5とを備えたものとして構成されている。尚、本柱梁接合構造は、体育館などの建物において、屋根仕上げ材8等を支持するために天井側に設置された鉄骨梁20を鉄筋コンクリート柱10に接合するものとして構成されている。
【0013】
柱梁接合部3では、鉄筋コンクリート柱10の鉄骨梁20側の側面12に定着された梁接合用ガセットプレート30が有する接合プレート部30Aに対して鉄骨梁20のウェブ23を同一平面上で突き合わせた状態として、それらを一対の梁接合用スプライスプレート33で挟み込んで複数の高力ボルト34にて締結する形態で、鉄筋コンクリート柱10に対して鉄骨梁20が接合されている。
梁接合用ガセットプレート30は、鉄筋コンクリート柱10の側面12に対して複数のアンカーボルト31及びナット32により定着されて鉄骨梁20の幅方向に垂直な平板状のものとして構成されている。即ち、梁接合用ガセットプレート30は、鉄骨梁20のウェブ23と同一平面上に延びる接合プレート部30Aと、鉄筋コンクリート柱10の側面12に添って設けられたベースプレート部30Bとを有し、接合プレート部30Aにおける鉄筋コンクリート柱10側の基端部をベースプレート部30Bに溶接接合して、平面視でT字状の部材として構成されている。そして、ベースプレート部30Bが鉄筋コンクリート柱10に埋め込まれた複数のアンカーボルト31及びナット32により鉄筋コンクリート柱10の側面12に固定される形態で、梁接合用ガセットプレート30は、鉄筋コンクリート柱10の側面12に定着されている。尚、ベースプレート部30Bと鉄筋コンクリート柱10の側面12との間にはグラウト材15が充填されている。
【0014】
本柱梁接合構造は、鉄骨梁20直下の室内空間R側の意匠性や機能性の悪化を回避しながら、柱梁接合部3の破損時であっても鉄骨梁20の落下を防止するための落下防止部5を設けることでフェールセーフ機能を付加することできるものとして構成されており、その詳細について以下に説明を加える。
【0015】
落下防止部5は、連結具50と軸方向変位許容部60とを有して構成されている。
連結具50は、鉄筋コンクリート柱10における柱側連結部分14と鉄骨梁20における梁側連結部分24とを連結するものとして構成されている。
軸方向変位許容部60は、連結具50において柱側連結部分14に対する梁側連結部分24の鉛直方向(
図1~
図3における下向き方向)への変位を阻止しながら柱側連結部分14に対する梁側連結部分24の鉄骨梁20の軸方向(
図1,3における左右方向、
図2における奥行き方向)への変位を許容するものとして構成されている。
【0016】
この構成により、本柱梁接合構造では、柱梁接合部3の破損時であっても鉄骨梁20の落下を防止するための落下防止部5を設けることでフェールセーフ機能が付加されたことになる。即ち、地震時には、鉄骨梁20から鉄筋コンクリート柱10に過大な軸力が伝達されて、例えば鉄筋コンクリート柱10におけるアンカーボルト32埋設部分が破損する恐れがある。そのような柱梁接合部3の破損が生じても、柱梁接合部3とは別に設けられた落下防止部5では、鉄筋コンクリート柱10の柱側連結部分14と鉄骨梁20の梁側連結部分24とを連結する連結具50において、上記軸方向変位許容部60により、柱側連結部分14に対する梁側連結部分24の鉄骨梁20の軸方向への変位が許容される。すると、その過大な軸力の殆どが柱梁接合部3で負担されることになるので、当該軸力が連結具50へ伝達されることが抑制されて、当該連結具50の破損が回避される。よって、破損が回避された連結具50により好適に鉄骨梁20の落下が防止されることになる。
【0017】
連結具50において、鉄筋コンクリート柱10における柱梁接合部3よりも上方側に位置する箇所が上記柱側連結部分14とされている。一方、鉄骨梁20における上フランジ22の上面に位置する箇所が梁側連結部分24とされている。そして、連結具50は、上記柱側連結部分14と上記梁側連結部分24とを鉄骨梁20の上方側から連結するものとして、鉄骨梁20と屋根仕上げ材8との間の空間に収容されている。この構成により、連結具50は、鉄骨梁20直下の室内空間Rに対して、適切に隠蔽されて干渉が抑制されたものとなる。すると、鉄骨梁20直下の室内空間Rでは、連結具50が隠蔽されることで美観の悪化が抑制されている。更に、室内空間Rにおける連結具50との干渉が抑制されていることで、当該室内空間Rの天井材9は、鉄骨梁20の下面にできるだけ近づけて設置されており、結果、室内空間Rの天井高が充分に高くとられている。
【0018】
連結具50は、柱側連結部分14に固定された柱側ガセットプレート51(柱側連結部材の一例)と、梁側連結部分24に固定された梁側ブラケット52(梁側連結部材の一例)と、当該柱側ガセットプレート51の接合プレート部51Aと梁側ブラケット52とを連結ボルト56により接合するボルト接合部55と、から構成されている。
【0019】
柱側ガセットプレート51は、鉄筋コンクリート柱10の側面12に対して複数のアンカーボルト16及びナット17により定着されて鉄骨梁20の幅方向に垂直な平板状のものとして構成されている。即ち、上述した梁接合用ガセットプレート30と同様に、柱側ガセットプレート51は、鉄骨梁20のウェブ23と同一平面上に延びる接合プレート部51Aと、鉄筋コンクリート柱10の側面12における柱梁接合部3よりも上方側の柱側連結部分14に添って設けられたベースプレート部51Bとを有し、接合プレート部51Aにおける鉄筋コンクリート柱10側の基端部をベースプレート部51Bに溶接接合して、平面視でT字状の部材として構成されている。そして、ベースプレート部51Bが鉄筋コンクリート柱10に埋め込まれた複数のアンカーボルト16及びナット17により鉄筋コンクリート柱10の側面12に固定される形態で、柱側ガセットプレート51は、鉄筋コンクリート柱10の側面12における柱側連結部分14に定着されている。尚、ベースプレート部51Bと鉄筋コンクリート柱10の側面12との間にはグラウト材15が充填されている。
【0020】
一方、梁側ブラケット52は、鉄骨梁20の上フランジ22上面に対して溶接により固定されて鉄骨梁20の幅方向に垂直な平板状のものとして構成されている。即ち、梁側ブラケット52は、その下端部である溶接部26が鉄骨梁20の上フランジ22の上面に溶接接合される形態で、鉄骨梁20のおける梁側連結部分24に固定されている。
【0021】
上記ボルト接合部55では、柱側ガセットプレート51の接合プレート部51Aと梁側ブラケット52とが、共に鉄骨梁20の軸方向且つ鉛直方向に延びる姿勢で、鉄骨梁20の軸方向に沿って相対変位自在に重ね合わされている。そして、これら接合プレート部51Aと梁側ブラケット52は、上述のように重ね合わされた状態で、鉄骨梁20の軸方向の直交方向に貫通する上下2本の連結ボルト56により接合されている。尚、連結ボルト56の数や配置は、接合強度や構造上のレイアウトなどを考慮して適宜変更可能である。
【0022】
更に、柱側ガセットプレート51及び梁側ブラケット52の少なくとも一方側において上記連結ボルト56が挿通されるボルト挿通孔52aが、鉄骨梁20の軸方向に長尺な長孔に形成されている。具体的には、
図3に示すように、柱側ガセットプレート51において上記連結ボルト56が挿通されるボルト挿通孔51aが丸穴に形成されており、梁側ブラケット52において上記連結ボルト56が挿通されるボルト挿通孔52aが鉄骨梁20の軸方向に長尺な長孔に形成されている。この構成により、連結具50において、ボルト挿通孔52aが上述した軸方向変位許容部60として機能して、柱側ガセットプレート51が固定された柱側連結部分14に対する梁側ブラケット52が固定された梁側連結部分24の鉛直方向への変位が阻止さると共に、当該柱側連結部分14に対する当該梁側連結部分24の鉄骨梁20の軸方向への変位を許容されることになる。すると、地震時において、鉄骨梁20に生じた過大な軸力が連結具50に伝達されることが抑制される。このことから、柱側ガセットプレート51を鉄筋コンクリート柱10の側面12に対して定着させるためのアンカーボルト16は、柱梁接合部3において鉄骨梁20を鉄筋コンクリート柱10の側面12に対して定着させるためのアンカーボルト31よりも低強度で簡素なものとすることができる。例えば、柱側ガセットプレート51のアンカーボルト16は、柱梁接合部3のアンカーボルト31と比べて、定着長は同じ20Dとしつつ径が小さいものを利用することができる。
【0023】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0024】
(1)上記実施形態では、落下防止部5において、鉄筋コンクリート柱10の柱側連結部分14に固定された柱側ガセットプレート51と、鉄骨梁20の梁側連結部分24に固定された梁側ブラケット52とを、鉄骨梁20の軸方向に沿って相対変位自在に重ね合わせられた状態で、それら部材を鉄骨梁20の軸方向の直交方向に貫通する前記連結ボルト56により接合する形態で、連結具50を構成したが、本発明において、当該連結具50は、鉄筋コンクリート柱10の柱側連結部分14と鉄骨梁20の梁側連結部分24とを連結するものであれば良く、適宜構成や形状等を改変することができる。
また、上記実施形態では、柱側ガセットプレート51側のボルト挿通孔51aを丸穴に形成すると共に、梁側ブラケット52側のボルト挿通孔52aを鉄骨梁20の軸方向に長尺な長孔に形成して、梁側ブラケット52側のボルト挿通孔52aを軸方向変位許容部60として機能させたが、逆に、梁側ブラケット52側のボルト挿通孔52aを丸穴に形成すると共に、柱側ガセットプレート51側のボルト挿通孔51aを鉄骨梁20の軸方向に長尺な長孔に形成して、柱側ガセットプレート51側のボルト挿通孔51aを軸方向変位許容部60として機能させても構わない。また、両側のボルト挿通孔51a,52aを長孔に形成しても構わない。
【0025】
(2)上記実施形態では、連結具50において鉄筋コンクリート柱10側の柱側連結部分14に固定された柱側連結部材を、鉄筋コンクリート柱10の側面12に対して複数のアンカーボルト16及びナット17により定着されて鉄骨梁20の幅方向に垂直な平板状の柱側ガセットプレート51で構成したが、本発明において、当該柱側連結部材は柱側連結部分14に固定されたものであれば良く、例えば柱側連結部分14の位置や状態などに応じて適宜構成や形状等を改変することができる。一方、連結具50において鉄骨梁20側の梁側連結部分24に固定された梁側連結部材を、鉄骨梁20の上フランジ22上面に対して溶接により接合されて鉄骨梁20の幅方向に垂直な平板状の梁側ブラケット52で構成したが、本発明において、当該梁側連結部材は、梁側連結部分24に固定されたものであれば良く、例えば梁側連結部分24の位置や状態などに応じて適宜構成や形状等を改変することができる。
また、上記実施形態では、連結具50のボルト接合部55において、柱側ガセットプレート51と梁側ブラケット52とを鉄骨梁20の幅方向に重ね合わされた状態で鉄骨梁20の幅方向に貫通する連結ボルト56により接合したが、その接合方法や接合位置などについても適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0026】
3 柱梁接合部
5 落下防止部
10 鉄筋コンクリート柱
12 側面
14 柱側連結部分
16 アンカーボルト
20 鉄骨梁
22 上フランジ
24 梁側連結部分
50 連結具
51 柱側ガセットプレート(柱側連結部材)
51a ボルト挿通孔
52 梁側ブラケット(梁側連結部材)
52a ボルト挿通孔(軸方向変位許容部)
55 ボルト接合部
56 連結ボルト
60 軸方向変位許容部