(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008731
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 43/20 20180101AFI20240112BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20240112BHJP
F21W 103/60 20180101ALN20240112BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240112BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240112BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20240112BHJP
【FI】
F21S43/20
F21W103:20
F21W103:60
F21Y115:10
F21Y115:30
F21Y101:00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110842
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智之
(72)【発明者】
【氏名】多田 渉平
(72)【発明者】
【氏名】松本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】北澤 由希子
(57)【要約】
【課題】光源と透光部材とを備えた車両用灯具において、透光部材を厚肉にすることなく路面照射機能を持たせるようにする。
【解決手段】透光部材40の構成として、光源30の灯具前方に位置する中心領域40Aを、光源30からの出射光を偏向制御するレンズ部として構成し、その周囲に位置する周辺領域40Bを、入射面40B1と全反射面40B2と出射面40B3とを備えた構成とする。これにより光源30からの出射光を透光部材40により灯具前方へ向けて効率良く照射するようにする。その上で、透光部材40において光源30の灯具前方斜め下方に位置する領域を、光源30からの出射光を灯具前方斜め下方の路面へ向けて偏向制御する路面照射用レンズ部40Dとして構成する。これにより、透光部材40が部分的に厚肉にならないようにした上で、路面照射用レンズ部40Dからの出射光によって車両近傍の路面を照射するようにする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、上記光源の灯具前方側に配置された透光部材と、を備えた車両用灯具において、
上記透光部材は、上記光源の灯具前方に位置する中心領域と、上記中心領域の周囲に位置する周辺領域とを備えており、
上記中心領域は、上記光源からの出射光を偏向制御するレンズ部として構成されており、
上記周辺領域は、上記光源からの出射光を入射させる入射面と、上記入射面から入射した光を灯具前方へ向けて全反射させる全反射面と、上記全反射面で全反射した光を灯具前方へ向けて出射させる出射面とを備えており、
上記透光部材は、上記光源に対して灯具前方斜め下方に位置する領域が上記光源からの出射光を灯具前方斜め下方の路面へ向けて偏向制御する路面照射用レンズ部として構成されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記路面照射用レンズ部は、上記光源からの出射光を車両旋回方向へ向けて偏向制御するように構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
上記路面照射用レンズ部は、上記中心領域と上記周辺領域との境界位置に形成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記周辺領域における上記路面照射用レンズ部よりも灯具前方斜め下方に位置する領域の前面が、上記周辺領域における一般領域の前面よりも灯具後方側に変位している、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
【請求項5】
上記周辺領域における上記路面照射用レンズ部よりも灯具前方斜め下方に位置する領域の後面に、灯具後方へ向けて延びるボス部が形成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、透光部材を備えた車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用灯具の構成として、光源とその灯具前方側に配置された透光部材とを備えたものが知られている。
【0003】
「特許文献1」には、このような車両用灯具として、その点灯により運転者の意思(具体的には車両の右左折等の動作意思)を周囲に報知するという本来の機能に加えて、車両近傍の路面を照射する機能を備えたフロントターンシグナルランプが記載されている。
【0004】
この「特許文献1」に記載された車両用灯具の透光部材は、光源の灯具前方に位置する中心領域とその周囲に位置する周辺領域とを備えており、かつ、その中心領域は光源からの出射光を偏向制御するレンズ部として構成されており、その周辺領域は、光源からの出射光を入射させる入射面と、この入射面から入射した光を灯具前方へ向けて全反射させる全反射面と、この全反射面で全反射した光を灯具前方へ向けて出射させる出射面とを備えた構成となっている。
【0005】
そして、この「特許文献1」に記載された透光部材においては、周辺領域の全反射面で全反射した光の一部を、その前面でさらに下向きに全反射させた後に、周辺領域から出射させることにより、車両近傍の路面を照射するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記「特許文献1」に記載された車両用灯具のように、フロントターンシグナルランプとしての灯具本来の機能に加えて路面照射機能を持たせることにより、周囲への報知機能を高めることが可能となる。
【0008】
しかしながら、上記「特許文献1」に記載された車両用灯具においては、路面照射を行うために、透光部材の周辺領域における前後両面で2回全反射させた後に出射させる構成となっているので、透光部材が部分的に厚肉になってしまう。
【0009】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、光源と透光部材とを備えた車両用灯具において、透光部材を厚肉にすることなく路面照射機能を持たせることができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、透光部材の構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0011】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
光源と、上記光源の灯具前方側に配置された透光部材と、を備えた車両用灯具において、
上記透光部材は、上記光源の灯具前方に位置する中心領域と、上記中心領域の周囲に位置する周辺領域とを備えており、
上記中心領域は、上記光源からの出射光を偏向制御するレンズ部として構成されており、
上記周辺領域は、上記光源からの出射光を入射させる入射面と、上記入射面から入射した光を灯具前方へ向けて全反射させる全反射面と、上記全反射面で全反射した光を灯具前方へ向けて出射させる出射面とを備えており、
上記透光部材は、上記光源に対して灯具前方斜め下方に位置する領域が上記光源からの出射光を灯具前方斜め下方へ向けて偏向制御する路面照射用レンズ部として構成されている、ことを特徴とするものである。
【0012】
上記「車両用灯具」の種類は特に限定されるものではなく、例えばフロントターンシグナルランプやバックアップランプ等が採用可能である。
【0013】
上記「車両用灯具」が装着される車両の種類は特に限定されるものではなく、例えば二輪車や四輪車等が採用可能である。
【0014】
上記「光源」の種類は特に限定されるものではなく、例えば発光ダイオードや白熱バルブあるいはレーザーダイオード等が採用可能である。
【0015】
上記「路面照射用レンズ部」は、光源に対して灯具前方斜め下方に位置する領域に配置されていれば、その具体的な位置は特に限定されるものではなく、例えば、灯具正面視において光源の真下に配置されていてもよいし光源の真下から左右方向にずれた位置に配置されていてもよい。
【0016】
上記「路面照射用レンズ部」は、光源からの出射光を灯具前方斜め下方へ向けて偏向制御するように構成されていれば、その具体的な構成については特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
本願発明に係る車両用灯具は、光源の灯具前方側に配置された透光部材の構成として、光源の灯具前方に位置する中心領域とその周囲に位置する周辺領域とを備えており、かつ、その中心領域は光源からの出射光を偏向制御するレンズ部として構成されており、その周辺領域は、光源からの出射光を入射させる入射面と、この入射面から入射した光を灯具前方へ向けて全反射させる全反射面と、この全反射面で全反射した光を灯具前方へ向けて出射させる出射面とを備えた構成となっているので、光源からの出射光を透光部材により灯具前方へ向けて効率良く照射することができる。そしてこれにより、車両用灯具の点灯による運転者の意思(例えば車両の右左折等の動作意思)を周囲に報知することができる。
【0018】
その上で、透光部材は、光源に対して灯具前方斜め下方に位置する領域が、光源からの出射光を灯具前方斜め下方の路面へ向けて偏向制御する路面照射用レンズ部として構成されているので、この路面照射用レンズ部からの出射光によって車両近傍の路面を照射するという路面照射機能を車両用灯具に持たせることができ、これにより周囲への報知機能を高めることができる。
【0019】
その際、路面照射用レンズ部は光源からの出射光を偏向制御する構成となっているので、透光部材に路面照射機能が付与されたことによって上記従来の車両用灯具のように透光部材が部分的に厚肉になってしまわないようにすることができる。
【0020】
このように本願発明によれば、光源と透光部材とを備えた車両用灯具において、透光部材を厚肉にすることなく路面照射機能を持たせることができる。
【0021】
上記構成において、さらに、路面照射用レンズ部として、光源からの出射光を車両旋回方向へ向けて偏向制御するように構成されたものとすれば、車両用灯具がフロントターンシグナルランプ等である場合において、その点灯によって運転者の意思(すなわち車両の右左折等の動作意思)をより分かりやすく周囲に報知することができる。
【0022】
上記構成において、さらに、路面照射用レンズ部が中心領域と周辺領域との境界位置に形成された構成とすれば、光源からの出射光を車両前方路面へ向けて効率良く照射することができる。
【0023】
上記構成において、さらに、透光部材として、周辺領域における路面照射用レンズ部よりも灯具前方斜め下方に位置する領域の前面が、周辺領域における一般領域の前面よりも灯具後方側に変位している構成とすれば、路面照射用レンズ部からの出射光が透光部材に再入射しまうのを未然に防止することができる。したがって、透光部材への再入射によって迷光が発生してしまうのを未然に防止することができ、これにより車両用灯具の路面照射機能が不用意に損なわれてしまわないようにすることができる。
【0024】
上記構成において、さらに、透光部材として、周辺領域における路面照射用レンズ部よりも灯具前方斜め下方に位置する領域の後面に、灯具後方へ向けて延びるボス部が形成された構成とすれば、車両用灯具の配光機能が損なわれないようにした上で、透光部材のランプボディ等に対する位置決め支持が容易に行われるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す正面図
【
図5】上記車両用灯具が搭載された車両を、その後方側から見た状態で透視的に示す図
【
図6】上記実施形態の変形例を示す、
図1と同様の図
【
図7】上記変形例に係る車両用灯具が搭載された車両を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0027】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す正面図である。また、
図2は
図1のII-II線断面図であり、
図3は
図1のIII-III線断面図である。
【0028】
図1~3において、Xで示す方向が車両用灯具10としての「前方」(車両としても「前方」)であり、Yで示す方向が車両用灯具10としての「左方向」(車両としても「左方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。
図4においても同様である。
【0029】
図1~3に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、車両(具体的には二輪車(
図5参照))の左前部に配置されるフロントターンシグナルランプであって、ランプボディ12と、このランプボディ12の前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に、灯具前後方向に延びる光軸Axを有する灯具ユニット20が収容された構成となっている。
【0030】
灯具ユニット20は、光軸Ax上に配置された光源30と、この光源30の灯具前方側に配置された透光部材40と、これらの灯具後方側に配置されたホルダー50とを備えた構成となっている。
【0031】
光源30は、発光素子(具体的にはアンバー色に発光する発光ダイオード)で構成されており、その発光面30aを灯具正面方向へ向けた状態で基板32に搭載されている。基板32は、光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びるように配置された状態で透光部材40に支持されている。
【0032】
透光部材40は、無色透明の樹脂製部材(例えばアクリル(PMMA)樹脂やポリカーボネート(PC)樹脂等の射出成形品)であって、灯具正面視において光軸Axを中心とする円形の外形形状を有している。この透光部材40はホルダー50に支持されており、このホルダー50はランプボディ12に支持されている。
【0033】
透光部材40は、光軸Axを中心とする中心領域40Aと、この中心領域40Aの周囲に位置する周辺領域40Bと、この周辺領域40Bの周囲に位置する外周環状領域40Cと、光軸Axの左斜め下方(灯具正面視では右斜め下方)に位置する路面照射用レンズ部40Dと、この路面照射用レンズ部40Dの左斜め下方に位置する後方変位領域40Eとを備えている。
【0034】
中心領域40A、周辺領域40Bおよび外周環状領域40Cは、灯具正面視において光軸Axを中心とする同心円状の外形形状を有しているが、路面照射用レンズ部40および後方変位領域40Eが位置する部分は欠けた状態で形成されている。
【0035】
図1、2に示すように、中心領域40Aは、光源30からの出射光を偏向制御するレンズ部として構成されている。具体的には、この中心領域40Aは、前面40Aaが光軸Axを中心とする凸曲面状に形成されており、後面40Abが光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びる平面状に形成されている。その際、この中心領域40Aの前面40Aaは横長楕円面状の表面形状を有しており、これにより光源30からの出射光を上下方向よりも左右方向に大きく拡がる光として灯具前方へ向けて出射させるようになっている。
【0036】
周辺領域40Bは、光源30からの出射光を入射させる入射面40B1と、この入射面40B1から入射した光を灯具前方へ向けて全反射させる全反射面40B2と、この全反射面40B2で全反射した光を灯具前方へ向けて出射させる出射面40B3とを備えている。
【0037】
入射面40B1は、中心領域40Aの後面40Abの外周縁から灯具後方側へ向けて突出する環状面で構成されている。この入射面40B1は、凸曲線状の断面形状で円環状に形成されており、これにより光軸Axを含む平面内において光源30からの出射光を略平行光として入射させるようになっている。
【0038】
全反射面40B2は、光軸Axを中心にして灯具前方側へ拡がる円錐面状に形成されており、これにより光軸Axを含む平面内において入射面40B1からの反射光を略平行光のまま灯具正面方向へ反射させるようになっている。
【0039】
出射面40B3は、光軸Axを中心にして同心円状に区分けされた上でさらに放射状に区分けされた複数のセグメントに、凸球面状の複数のレンズ素子40B3sが割り付けられた構成となっている。その際、出射面40B3は、外周側に位置するセグメントが灯具前方側に変位するようにして3重に区分けされている。そして、出射面40B3は、各レンズ素子40B3sにおいて、入射面40B1から略平行光として到達した反射光を径方向および周方向に拡散する光として灯具前方へ出射させるように構成されている。
【0040】
外周環状領域40Cは、光軸Axと直交する鉛直面に沿って略平板状に延びるように形成されている。この外周環状領域40Cは装飾用の領域であって、光源30からの出射光に対する制御機能は有していない。
【0041】
外周環状領域40Cの後面40Cbは、平面状に形成されており、その外周縁部には灯具後方へ向けて突出する環状フランジ部40Ccが構成されている。
【0042】
外周環状領域40Cの前面40Caは、光軸Axを中心にして同心円状および放射状に区分けされた複数のセグメントに、凸球面状の複数のレンズ素子40Csが割り付けられた構成となっている。各レンズ素子40Csは、周辺領域40Bの出射面40B3を構成している各レンズ素子40B3sよりも小さいサイズを有している。
【0043】
図1、3に示すように、路面照射用レンズ部40Dは、光源30からの出射光を灯具前方斜め下方の路面へ向けて偏向制御するように構成されている。
【0044】
具体的には、路面照射用レンズ部40Dは、光源30の発光中心を通るようにして灯具正面方向に対して左斜め下方に延びる光軸Ax1を有する集光レンズとして構成されており、これにより灯具正面方向に対して左斜め下方に位置する路面を照射するように構成されている。すなわち、路面照射用レンズ部40Dは、車両左折時に光源30からの出射光を車両旋回方向へ向けて偏向制御するように構成されている。
【0045】
路面照射用レンズ部40Dは、中心領域40Aと周辺領域40Bとの境界位置に形成されている。この路面照射用レンズ部40Dは、前面40Daが球面で後面40Dbが平面の平凸レンズで構成されており、その光軸Ax1は光軸Axに対して30~50°程度(例えば40°程度)の挟角をなすようにして延びている。
【0046】
後方変位領域40Eは装飾用の領域であって、光源30からの出射光に対する制御機能は有していない。この後方変位領域40Eは、その前面40Eaが周辺領域40Bの出射面40B3(すなわち周辺領域40Bにおける一般領域の前面)よりも灯具後方側に変位した状態で、路面照射用レンズ部40Dから左斜め下方へ向けて略扇状に拡がるように形成されている。この前面40Eaには、複数のレンズ素子40Esが凸曲線状の断面形状で路面照射用レンズ部40Dから左斜め下方へ向けて放射状に延びるようにして形成されている。そしてこれにより後方変位領域40Eは、路面照射用レンズ部40Dからの出射光が不用意に入射してしまわないようにした上で、透光部材40の後方空間を見えにくくし、その見映えが損なわれてしまわないようになっている。
【0047】
図4は、
図2のIV方向矢視図である。なお、
図4においては光源30および基板32を2点鎖線で示している。
【0048】
図3、4に示すように、透光部材40における後方変位領域40Eの後面40Ebには、灯具後方へ向けて延びるボス部40Gが形成されている。
【0049】
また、周辺領域40Bの全反射面40B2における光軸Axの右斜め上方の位置(すなわち光軸Axに関してボス部40Gと対向する位置)には、灯具後方へ向けて延びる位置決めピン40Fが形成されている。
【0050】
一方、基板32には、位置決めピン40Fに対応する位置にピン挿通孔32aが形成されるとともに、ボス部40Gに対応する位置にボス挿通孔32bが形成されている。
【0051】
ピン挿通孔32aは、位置決めピン40Fの先端部の外径よりも僅かに大きい内径を有する丸孔として形成されている。また、ボス挿通孔32bは、ボス部40Gの中間部の外径よりも多少大きい長孔として形成されている。具体的には、ボス挿通孔32bは、光軸Axに関して周方向の幅がボス部40Gの中間部の外径よりも僅かに大きい値に設定されており、光軸Axに関して径方向の幅がボス部40Gの中間部の外径よりもある程度大きい値に設定されている。
【0052】
さらに、周辺領域40Bの全反射面40B2における位置決めピン40Fよりも光軸Ax側の位置には、基板32の前面に当接するための位置決め用突起部40Faが形成されており、また、後方変位領域40Eの後面40Ebにおけるボス部40Gの周方向両側の位置には、基板32の前面に当接するための1対の位置決め用突起部40Gaが形成されている。
【0053】
そして基板32は、そのピン挿通孔32aに位置決めピン40Fが挿入されるとともに、そのボス挿通孔32bにボス部40Gが挿入された状態で、その前面が位置決め用突起部40Faおよび1対の位置決め用突起部40Gaに当接することにより、透光部材40に対する位置決めがなされるようになっている。
【0054】
透光部材40は、外周環状領域40Cの環状フランジ部40Ccおよびボス部40Gの後端面をホルダー50に当接させた状態で、ボス部40Gにネジ60が締め付けられることにより、ホルダー50に固定支持されている。
【0055】
ホルダー50は、基板32を灯具後方側から囲むように形成されており、その外周前端面50aにおいて透光部材40の環状フランジ部40Ccに当接するように構成されている。また、ホルダー50には、ネジ60を挿通させるためのネジ挿通孔50bが形成されている。さらに、ホルダー50には、その外周前端面50aの近傍に外周フランジ部50cが形成されている。
【0056】
図1~3に示すように、透光カバー14およびランプボディ12は、いずれも略ドーム状に形成されており、灯具ユニット20を灯具前後両側から覆うように配置されている。そして、これら透光カバー14およびランプボディ12は、ホルダー50の外周フランジ部50cを灯具前後両側から挟持した状態で互いに固定されている。
【0057】
なお、
図1に示すように、ランプボディ12には、車両用灯具10を車両(
図5参照)に取り付けるための灯具取付部12aが形成されている。
【0058】
図5は、車両用灯具10を備えた車両2を、その後方側から見た状態で透視的に示す図である。
【0059】
図5においては、直線道路を走行中(または赤信号等で停止中)の車両(具体的には二輪車)2において、左側の車両用灯具10が点灯(正確には間欠的に点灯)している状態を示している。
【0060】
図5に示すように、車両用灯具10の点灯によって車両前方へ向けて光照射が行われるので、これにより車両2が次の交差点で左折予定であるという運転者4の動作意思が周囲に報知されることとなる。
【0061】
その際、車両用灯具10の透光部材40における路面照射用レンズ部40Dからの照射光によって、車両前方近傍の路面に路面配光パターンPが形成される。この路面配光パターンPは車両左斜め前方へ向けて略帯状に延びるアンバー色の配光パターンとして形成されるので、次の交差点が仮に見通しが悪く、左折先の道路にいる歩行者等からは車両2が視認できないような場合であっても、路面配光パターンPの先端部が視認されることによって、左折予定の車両2の存在が報知されることとなる。
【0062】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0063】
本実施形態に係る車両用灯具10は、光源30の灯具前方側に配置された透光部材40の構成として、光源30の灯具前方に位置する中心領域40Aとその周囲に位置する周辺領域40Bとを備えており、かつ、その中心領域40Aは光源30からの出射光を偏向制御するレンズ部として構成されており、その周辺領域40Bは、光源30からの出射光を入射させる入射面40B1と、この入射面40B1から入射した光を灯具前方へ向けて全反射させる全反射面40B2と、この全反射面40B2で全反射した光を灯具前方へ向けて出射させる出射面40B3とを備えた構成となっているので、光源30からの出射光を透光部材40により灯具前方へ向けて効率良く照射することができる。そしてこれにより、車両用灯具10の点灯による運転者4の意思(すなわち車両左折の動作意思)を周囲に報知することができる。
【0064】
その上で、透光部材40は、光源30に対して灯具前方斜め下方に位置する領域が、光源30からの出射光を灯具前方斜め下方の路面へ向けて偏向制御する路面照射用レンズ部40Dとして構成されているので、この路面照射用レンズ部40Dからの出射光によって車両近傍の路面を照射するという路面照射機能を車両用灯具10に持たせることができ、これにより周囲への報知機能を高めることができる。
【0065】
その際、路面照射用レンズ部40Dは光源30からの出射光を偏向制御する構成となっているので、透光部材40に路面照射機能が付与されたことによって透光部材40が部分的に厚肉になってしまわないようにすることができる。
【0066】
このように本実施形態によれば、光源30と透光部材40とを備えた車両用灯具10において、透光部材40を厚肉にすることなく路面照射機能を持たせることができる。
【0067】
特に、本実施形態に係る車両用灯具10はフロントターンシグナルランプであって、その透光部材40の路面照射用レンズ部40Dが光源30からの出射光を車両旋回方向へ向けて偏向制御するように構成されているので、その点灯によって運転者4の意思(すなわち車両2の右左折等の動作意思)をより分かりやすく周囲に報知することができる。
【0068】
しかも、この路面照射用レンズ部40Dは透光部材40の中心領域40Aと周辺領域40Bとの境界位置に形成されているので、光源30からの出射光を車両前方路面へ向けて効率良く照射することができる。
【0069】
また、本実施形態の透光部材40は、その路面照射用レンズ部40Dよりも灯具前方斜め下方に位置する後方変位領域40Eの前面40Eaが、周辺領域40Bの出射面40B3(すなわち周辺領域40Bにおける一般領域の前面)よりも灯具後方側に変位しているので、路面照射用レンズ部40Dからの出射光が透光部材40に再入射しまうのを未然に防止することができる。したがって、透光部材40への再入射によって迷光が発生してしまうのを未然に防止することができ、これにより車両用灯具10の路面照射機能が不用意に損なわれてしまわないようにすることができる。
【0070】
さらに、本実施形態の透光部材40は、その周辺領域40Bの後方変位領域40Eの後面40Ebに、灯具後方へ向けて延びるボス部40Gが形成されているので、車両用灯具10の配光機能が損なわれないようにした上で、透光部材40のランプボディ12に対する位置決め支持が容易に行われるようにすることができる。
【0071】
しかも、この後方変位領域40Eは、その前面40Eaが路面照射用レンズ部40Dから左斜め下方へ向けて略扇状に拡がるように形成されており、かつ、この前面40Eaには複数のレンズ素子40Esが凸曲線状の断面形状で路面照射用レンズ部40Dから左斜め下方へ向けて放射状に延びるようにして形成されているので、その後面40Ebにボス部40Gが形成されているにもかかわらず、その存在を灯具前方側からの目視で認識しにくくすることができる。そしてこれにより、透光部材40の見映えが損なわれてしまわないようにすることができる。
【0072】
上記実施形態においては、車両用灯具10が車両2の左前部に配置されるフロントターンシグナルランプである場合について説明したが、車両2の右前部に配置されるフロントターンシグナルランプである場合においても、上記実施形態の構成に対して左右対称の構成を採用することにより上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、四輪車等の左右前端部に配置されるフロントターンシグナルランプである場合においても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらには、リアターンシグナルランプやサイドターンシグナルランプ等である場合においても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0073】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0074】
図6は、本変形例に係る車両用灯具110を示す、
図1と同様の図である。また、
図7は、車両用灯具110が搭載された車両102を示す平面図である。
【0075】
なお、
図6、7において、Xで示す方向が車両用灯具10としての「前方」(車両としては「後方」)であり、Yで示す方向が車両用灯具10としての「左方向」(車両としては「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。
【0076】
図6に示すように、本変形例に係る車両用灯具110の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、
図7に示すように、搭載対象となる車両102が四輪車であって、その車体後部の左右2箇所に配置されるバックアップランプとして構成されている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0077】
すなわち本変形例においても、車両用灯具110は、ランプボディ112と透光カバー114とで形成される灯室内に灯具ユニット120が収容された構成となっているが、透光カバー114は略平板状に形成されており、また、ランプボディ112は上記実施形態のランプボディ12のような灯具取付部12aを備えてはいない。
【0078】
本変形例の灯具ユニット120も、灯具前後方向に延びる光軸Ax上に光源130が配置されるとともに、その灯具前方側(すなわち車両後方側)に透光部材140が配置された構成となっている。
【0079】
本変形例の光源130も発光素子で構成されているが、白色に発光する発光ダイオードで構成されている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0080】
また、本変形例の透光部材140も、中心領域140Aと周辺領域140Bと外周環状領域140Cと路面照射用レンズ部140Dと後方変位領域140Eとを備えた構成となっているが、路面照射用レンズ部140Dおよび後方変位領域140Eの配置が上記実施形態の場合と異なっている。
【0081】
すなわち本変形例においては、路面照射用レンズ部140Dおよび後方変位領域140Eが光軸Axの真下に配置されている。
【0082】
そして、路面照射用レンズ部140Dは、光源130からの出射光を灯具正面方向の斜め下方に位置する路面(すなわち車両102の真後ろに位置する路面)へ向けて偏向制御するように構成されており、その光軸Axは灯具正面視において真下の方向へ延びている。
【0083】
本変形例の透光部材140においても、中心領域140A、周辺領域140Bおよび外周環状領域140Cの構成自体は上記実施形態の場合と同様であり、また、路面照射用レンズ部140Dおよび後方変位領域140Eの構成自体も上記実施形態の場合と同様である。
【0084】
なお、本変形例においても、ホルダー150の構成は上記実施形態の場合と同様である。
【0085】
図7においては、車両102が、左右1対の車両用灯具110を点灯させながら図示矢印方向へ後退している状態を示している。
【0086】
図7に示すように、左右1対の車両用灯具110の点灯によって車両後方へ向けて光照射が行われ、これにより車両102が後退していることが周囲に報知されるが、このとき透光部材140の路面照射用レンズ部140Dからの照射光によって、車両後方近傍の路面に左右1対の路面配光パターンP-1が形成される。各路面配光パターンP-1は、車両102の真後ろの方向へ向けて略帯状に延びる白色の配光パターンとして形成され、これにより車両102が後退していることがより明確に周囲に報知される。
【0087】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態と略同様の作用効果を得ることができる。すなわち、車両用灯具110の点灯による運転者の意思(すなわち車両後退の動作意思)を周囲に報知することができる。
【0088】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0089】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0090】
2、102 車両
4 運転者
10、110 車両用灯具
12、112 ランプボディ
12a 灯具取付部
14、114 透光カバー
20、120 灯具ユニット
30、130 光源
30a 発光面
32 基板
32a ピン挿通孔
32b ボス挿通孔
40、140 透光部材
40A、140A 中心領域
40Aa、40Ca、40Da、40Ea 前面
40Ab、40Cb、40Db、40Eb 後面
40B、140B 周辺領域
40B1 入射面
40B2 全反射面
40B3 出射面
40B3s レンズ素子
40C、140C 外周環状領域
40Cc 環状フランジ部
40Cs レンズ素子
40D、140D 路面照射用レンズ部
40E、140E 後方変位領域
40Es レンズ素子
40F 位置決めピン
40Fa、40Ga 位置決め用突起部
40G ボス部
50、150 ホルダー
50a 外周前端面
50b ネジ挿通孔
50c 外周フランジ部
60 ネジ
Ax、Ax1 光軸
P、P-1 路面配光パターン