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特開2024-87311漏洩量判定装置、漏洩量判定プログラムおよび漏洩量判定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087311
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】漏洩量判定装置、漏洩量判定プログラムおよび漏洩量判定システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/24 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
G01M3/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202064
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】大泉 晶
(72)【発明者】
【氏名】森 貴洋
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA36
2G067BB26
2G067CC04
2G067DD13
2G067EE09
2G067EE13
(57)【要約】
【課題】プロセス機器の漏洩量の判定(推定)精度を広い範囲で良好に維持することができる漏洩量判定装置等を提供する。
【解決手段】プロセス流体の流通を制御するプロセス機器におけるプロセス流体の漏洩量を判定する漏洩量判定装置であって、プロセス機器で測定された超音波に基づいて、多項回帰式を用いてプロセス機器の漏洩量を算出する算出手段、を備える。算出手段は、第1多項回帰式を用いて算出した第1漏洩量が所定値以上の場合には、第1漏洩量をプロセス機器の漏洩量とし、第1漏洩量が所定値未満の場合には、第2多項回帰式を用いて算出した第2漏洩量を該プロセス機器の漏洩量とする。第1多項回帰式は、プロセス機器で想定される漏洩範囲内での漏洩量の算出が対象であり、第2多項回帰式は、漏洩範囲の最小値以上から所定値未満の範囲内での漏洩量の算出が対象である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス流体の流通を制御するプロセス機器におけるプロセス流体の漏洩量を判定する漏洩量判定装置であって、
前記プロセス機器で測定された超音波に基づいて、多項回帰式を用いて該プロセス機器の漏洩量を算出する算出手段、
を備え、
前記算出手段は、第1多項回帰式を用いて算出した第1漏洩量が所定値以上の場合には、該第1漏洩量を前記プロセス機器の漏洩量とし、該第1漏洩量が所定値未満の場合には、第2多項回帰式を用いて算出した第2漏洩量を該プロセス機器の漏洩量とし、
前記第1多項回帰式は、前記プロセス機器で想定される漏洩範囲内での漏洩量の算出が対象であり、
前記第2多項回帰式は、前記漏洩範囲の最小値以上から前記所定値未満の範囲内での漏洩量の算出が対象であることを特徴とする漏洩量判定装置。
【請求項2】
前記第1多項回帰式は、前記漏洩範囲内におけるプロセス機器の超音波のデータと該超音波に基づく該プロセス機器の漏洩量のデータとを含む教師データで学習された学習モデルを用いて決定され、
前記第2多項回帰式は、前記漏洩範囲の最小値以上から前記所定値未満の範囲内におけるプロセス機器の超音波のデータと該超音波に基づく該プロセス機器の漏洩量とを含む教師データで学習された学習モデルを用いて決定されたことを特徴とする請求項1に記載の漏洩量判定装置。
【請求項3】
前記プロセス機器の識別情報を取得する取得手段を、さらに備え、
前記算出手段は、前記識別情報に対応する前記第1多項回帰式及び前記第2多項回帰式を記憶部から取得し、前記漏洩量を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の漏洩量判定装置。
【請求項4】
プロセス流体の流通を制御するプロセス機器におけるプロセス流体の漏洩量を判定する漏洩量判定装置のコンピュータを、
前記プロセス機器で測定された超音波に基づいて、多項回帰式を用いて該プロセス機器の漏洩量を算出する演算手段、
として機能させ、
前記算出手段は、第1多項回帰式を用いて算出した第1漏洩量が所定値以上の場合には、該第1漏洩量を前記プロセス機器の漏洩量とし、該第1漏洩量が所定値未満の場合には、第2多項回帰式を用いて算出した第2漏洩量を該プロセス機器の漏洩量とし、
前記第1多項回帰式は、前記プロセス機器で想定される漏洩範囲内での漏洩量の算出が対象であり、
前記第2多項回帰式は、前記漏洩範囲の最小値以上から前記所定値未満の範囲内での漏洩量の算出が対象であることを特徴とする漏洩量判定プログラム。
【請求項5】
プロセス流体の流通を制御するプロセス機器におけるプロセス流体の漏洩量を判定する漏洩量判定システムであって、
前記プロセス機器の超音波を測定する測定手段、
前記プロセス機器で測定された超音波に基づいて、多項回帰式を用いて該プロセス機器の漏洩量を算出する算出手段、
を備え、
前記算出手段は、第1多項回帰式を用いて算出した第1漏洩量が所定値以上の場合には、該第1漏洩量を前記プロセス機器の漏洩量とし、該第1漏洩量が所定値未満の場合には、第2多項回帰式を用いて算出した第2漏洩量を該プロセス機器の漏洩量とし、
前記第1多項回帰式は、前記プロセス機器で想定される漏洩範囲内での漏洩量の算出が対象であり、
前記第2多項回帰式は、前記漏洩範囲の最小値以上から前記所定値未満の範囲内での漏洩量の算出が対象であることを特徴とする漏洩量判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プロセス機器におけるプロセス流体の漏洩量を判定する漏洩量判定装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント等の建造物に設置された複数のセンサの情報から、機械学習により漏洩量を含む漏洩状況が判定される流体漏洩検知システムの構成がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-63955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の実施形態では、機械学習を用いているが、漏洩状況(例えば漏洩量が少ない場合)によっては、判定(推定)される漏洩量の精度が低い場合もあり、精度の向上が求められている。
【0005】
この発明は、プロセス機器の漏洩量の判定(推定)精度を広い範囲で良好に維持することができる漏洩量判定装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供される漏洩量判定装置は、プロセス流体の流通を制御するプロセス機器におけるプロセス流体の漏洩量を判定する漏洩量判定装置であって、プロセス機器で測定された超音波に基づいて、多項回帰式を用いてプロセス機器の漏洩量を算出する算出手段、を備える。算出手段は、第1多項回帰式を用いて算出した第1漏洩量が所定値以上の場合には、第1漏洩量をプロセス機器の漏洩量とし、第1漏洩量が所定値未満の場合には、第2多項回帰式を用いて算出した第2漏洩量を該プロセス機器の漏洩量とする。第1多項回帰式は、プロセス機器で想定される漏洩範囲内での漏洩量の算出が対象であり、第2多項回帰式は、漏洩範囲の最小値以上から所定値未満の範囲内での漏洩量の算出が対象である。
【0007】
上記第1多項回帰式は、漏洩範囲内におけるプロセス機器の超音波のデータと該超音波に基づくプロセス機器の漏洩量のデータとを含む教師データで学習された学習モデルを用いて決定され、上記第2多項回帰式は、漏洩範囲の最小値以上から所定値未満の範囲内におけるプロセス機器の超音波のデータと超音波に基づくプロセス機器の漏洩量とを含む教師データで学習された学習モデルを用いて決定されるようにしてもよい。
【0008】
上記プロセス機器の識別情報を取得する取得手段を、さらに備え、上記算出手段は、識別情報に対応する第1多項回帰式及び第2多項回帰式を記憶部から取得し、漏洩量を算出するようにしてもよい。
【0009】
本発明の第2の側面によって提供される漏洩量判定プログラムは、プロセス流体の流通を制御するプロセス機器におけるプロセス流体の漏洩量を判定する漏洩量判定装置のコンピュータを、プロセス機器で測定された超音波に基づいて、多項回帰式を用いて該プロセス機器の漏洩量を算出する演算手段、として機能させる、算出手段は、第1多項回帰式を用いて算出した第1漏洩量が所定値以上の場合には、第1漏洩量をプロセス機器の漏洩量とし、第1漏洩量が所定値未満の場合には、第2多項回帰式を用いて算出した第2漏洩量をプロセス機器の漏洩量とする。第1多項回帰式は、プロセス機器で想定される漏洩範囲内での漏洩量の算出が対象であり、第2多項回帰式は、漏洩範囲の最小値以上から所定値未満の範囲内での漏洩量の算出が対象である。
【0010】
本発明の第3の側面によって提供される漏洩量判定システムは、プロセス流体の流通を制御するプロセス機器におけるプロセス流体の漏洩量を判定する漏洩量判定システムであって、プロセス機器の超音波を測定する測定手段、プロセス機器で測定された超音波に基づいて、多項回帰式を用いて該プロセス機器の漏洩量を算出する算出手段、を備える。算出手段は、第1多項回帰式を用いて算出した第1漏洩量が所定値以上の場合には、第1漏洩量をプロセス機器の漏洩量とし、第1漏洩量が所定値未満の場合には、第2多項回帰式を用いて算出した第2漏洩量をプロセス機器の漏洩量とする。第1多項回帰式は、プロセス機器で想定される漏洩範囲内での漏洩量の算出が対象であり、第2多項回帰式は、漏洩範囲の最小値以上から所定値未満の範囲内での漏洩量の算出が対象である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、漏洩量に応じて2つの多項回帰式を段階的に適用してプロセス機器の漏洩量を判定(推定)しているので、漏洩量の判定精度を広い範囲で良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施形態に係る漏洩量判定システムの構成図である。
図2】この発明の実施形態に係る診断機の外観図である。
図3】この発明の実施形態に係るプロセス機器の一例を示す概略図である。
図4】この発明の実施形態に係る判定処理を示すフローチャートである。
図5】プロセス機器の実流量(実際の漏洩量)と実流量及び推定した漏洩量との相対誤差との関係を示すグラフである。
図6】プロセス機器の実流量(実際の漏洩量)と実流量及び推定した漏洩量との相対誤差との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照してこの発明の実施形態に係る漏洩量判定システム(漏洩量判定装置、漏洩量判定プログラム)について説明する。なお、この発明の構成は、実施形態に限定されるものではない。また、以下で説明するフローを構成する各種処理の順序は、処理内容に矛盾等が生じない範囲で順不同である。
【0014】
図1は、この発明の実施形態に係る漏洩量判定システム100の概略図である。漏洩量判定システム100は、診断機10、端末装置(管理端末)20及びサーバ装置30等を有している。診断機10及び端末装置20は、例えば、ブルートゥース(登録商標)等の通信方式によって、通信可能範囲において無線通信が可能である。端末装置20及びサーバ装置30は、インターネット等の通信ネットワークNを介して通信可能に接続されている。
【0015】
漏洩量判定システム100は、プロセス機器におけるプロセス流体の漏洩量を判定(推定)する。本実施形態では、検査員等が診断機10を用いて測定したプロセス機器の超音波に基づいて漏洩量が判定される。また、本実施形態の漏洩量の判定には、漏洩量に応じて、2つの多項回帰式(第1多項回帰式及び第2多項回帰式)が段階的に適用される。詳細は後述する。
【0016】
プロセス流体とは、化学プラントを流通する原料、中間体、製品及び廃棄物の少なくとも一つを含む流体であると定義する。すなわち、プロセス流体とは、反応工程における反応物質や分離工程における分離対象の混合物などに対して直接に供給される物質、またはこれらの工程から直接に排出される物質に係る流体をいう。したがって、化学プラントにおいて用いられる流体であっても、化学プラントにおける生産活動において補助的に使用される流体(計装エアー、蒸気、冷媒、作動油など)は、プロセス流体の範疇に含めない。
【0017】
プロセス流体の例として、水素、硫化水素、飽和炭化水素(メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタンなど)、不飽和炭化水素(エチレン、プロピレン、1-ブテン、シス-2-ブテン、トランス-2-ブテン、1-ペンテン、シス-2-ペンテン、トランス-2-ペンテン、2-メチル-1-ブテンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエンなど)などが挙げられる。ただし、プロセス流体は、上記の例に限定されない。また、プロセス流体は、混合物であってもよい。
【0018】
また、プロセス機器とは、プロセス流体の流通を制御する機器であると定義する。具体的には、開閉弁、制御弁、安全弁、破裂板などが該当する。これらの例のうち、開閉弁及び制御弁は、グローブ弁、ゲート弁、ボール弁等の公知の方式の弁として実装される。
【0019】
本実施形態では、フレアロス等のプロセス機器の内漏れの漏洩量が判定される。漏洩量の判定は、診断機10によって行われる。例えば、検査員によるプロセス機器の診断作業時に漏洩量の判定が行われる。内漏れは、例えば、プロセス機器の弁部のエロージョンやゴミ噛み等により末端バルブの閉弁機能が十分に発揮できていない場合などに発生する。プロセス機器において内漏れが発生した場合、人の聴覚では聞き分けることのできない超音波が発生する。診断機10は、このプロセス機器の超音波を測定し、測定した超音波に基づいて漏洩量を判定する。
【0020】
〈診断機の構成〉
図2は、診断機10の外観図である。診断機10は、漏洩量判定装置として機能し、プロセス機器の超音波を測定してプロセス流体の漏洩量の判定を行う。診断機10は、超音波測定部11、演算部12、記憶部13、RFIDタグリーダ14及び通信部15等を有する。
【0021】
超音波測定部11は、プロセス機器の超音波を測定する測定手段である。超音波測定部11は、図2に示すように、棒状の探針10aの先端に設けられている。探針10aを診断対象のプロセス機器である診断対象機器に接触させることで(例えば図3参照)、超音波測定部11による超音波測定が実施可能となる。超音波測定部11には、公知の超音波検出素子(例えば圧電素子)が含まれる。
【0022】
超音波測定部11によって測定された超音波(測定値)は、データとして記憶部13に記憶される。記憶部13は、例えば、半導体メモリ(フラッシュメモリ等)である。
【0023】
演算部12は、測定された超音波に基づいてプロセス機器のプロセス流体の漏洩量を算出する算出手段である。演算部12は、CPU、メモリ(RAM)等を含む。
【0024】
RFIDタグリーダ14は、各プロセス機器に取り付けられたRFIDタグから、当該プロセス機器の管理番号(識別情報)を読み取る取得手段である。読み取られた管理番号により、検査対象のプロセス機器が特定される。
【0025】
通信部15は、ブルートゥース(登録商標)等に対応する通信回路を有し、各種の情報を、端末装置(通信部24)と送受信する。例えば、測定された超音波の測定データ、及び、演算部12により演算処理された演算処理データ(例えば漏洩量)を端末装置20(通信部24)に送信する。
【0026】
なお、ブルートゥース(登録商標)による通信方式を適用しているが、特にこれに限定されるものではない。端末装置20と通信可能であれば、Wi-Fi(登録商標)等の種々の通信方式を適用可能である。
【0027】
また、診断機10は、入力を受付可能な入力ボタン16、及び、検査員に対して情報を表示可能な液晶ディスプレイ17を有する。入力ボタン16は、液晶ディスプレイ17に表示される情報を切り替える操作などの入力を受け付ける。液晶ディスプレイ17には、測定された超音波のデータ、漏洩量等の演算部12による演算処理(算出処理)の結果、及び、作業に必要な種々の情報が表示される。
【0028】
〈端末装置の構成〉
端末装置20は、例えば、携帯可能なタブレット型コンピュータである。端末装置20は、検査員が診断機10とともに携帯し、検査対象機器のプロセス機器の診断結果報告画面などの各種情報(例えば漏洩量)を表示する。端末装置20は、タッチパネル21、記憶部22、演算部23及び通信部24等を有する。
【0029】
タッチパネル21は、液晶パネル等の表示部及びタッチパッドの入力部等から構成される。タッチパネル21は、検査員に対する入出力インターフェースとして機能する。また、タッチパネル21は、プロセス機器の診断結果報告画面を表示する。記憶部22には、診断機10から受信した各種データに加えて、診断対象の各プロセス機器に係る各種の情報が記憶される。記憶部22は、半導体メモリ(例えばフラッシュメモリ)である。
【0030】
演算部23は、記憶部22に記憶された各種データ及び各種情報に基づいて、タッチパネル21に表示する診断結果報告画面を生成する。診断結果報告画面には、プロセス機器に関する各種情報が含まれる。検査員は、診断結果報告画面において、漏洩量等の各種情報を視認できる。演算部23は、CPU、メモリ(RAM)等を含む。
【0031】
通信部24は、ブルートゥース(登録商標)及びWi-Fi(登録商標)等に対応する通信回路を有する。通信部24は、診断機10(通信部15)と各種の情報を送受信する。端末装置20は、受信したデータを、記憶部22に記憶する。また、通信部24は、ネットワークNを介してサーバ装置30(通信部33)と各種の情報を送受信する。
【0032】
〈サーバ装置の構成〉
サーバ装置30は、通信部33を介して端末装置20(通信部24)と各種の情報を送受信し、漏洩量等のプロセス機器の各種の情報を記憶・管理する。サーバ装置30は、記憶部31、演算部32及び通信部33等を有する。
【0033】
記憶部31は、ハードディスク等の大容量記憶装置である。記憶部31は、プロセス機器の各種の情報を記憶する。本実施形態では、漏洩量判定システム100において、サーバ装置30の記憶部31に記憶された情報がマスターデータとしての位置づけを有する。プロセス機器の各種の情報は、プロセス機器の管理番号に対応付けて記憶されている。
【0034】
演算部32は、記憶部31に記憶された各種の情報を更新する。例えば、新たにプロセス機器の診断結果を受信した場合、該当するプロセス機器の情報に、新たな診断結果を追加する。演算部32は、CPU、メモリ(RAM)等を含む。
【0035】
通信部33は、Wi-Fi(登録商標)等に対応する通信回路を有する。通信部33は、ネットワークNを介して端末装置20(通信部24)と各種の情報を送受信する。
【0036】
なお、サーバ装置30に対しては、端末装置20以外の他の端末装置(不図示)からもアクセスでき、記憶部31に記憶された各種の情報を、他の端末装置からも閲覧できる。例えば、検査員が診断機10及び端末装置20を用いてプロセス機器の診断作業を行い、その診断結果をサーバ装置30に記憶させると、当該プロセス機器の管理者が診断結果を他の端末装置から閲覧できる。
【0037】
〈漏洩判定システムの運転方法〉
診断作業において、検査員は、診断機10および端末装置20を携帯しつつ移動し、プラント内に設置された各プロセス機器を一つずつ診断していく。以下、診断作業に関して、主として、漏洩量の判定に必要な作業について説明する。
【0038】
本実施形態では、検査対象とするプロセス機器は、二次側がフレアスタックに接続されている。例えば、プロセス機器で内漏れが発生している場合、プロセス機器のプロセス流体は、そのままフレアスタックに流出してしまい、製品および生産機会の損失に直結する。
【0039】
検査員は、診断対象のプロセス機器(以下、診断対象機器という。)に到達すると、最初に、診断機10のRFIDタグリーダ14により、診断対象機器に取り付けられたRFIDタグを読み取る。これにより、演算部12は、診断対象機器の管理番号を取得する。
【0040】
取得された管理番号は、端末装置20に送信される。端末装置20の演算部23は、診断機10から受信した管理番号をキーとして、診断対象機器に関するデータが端末装置20の記憶部22に存在するか否かを検索する。該当するデータが存在する場合は、タッチパネル21に、診断対象機器に関する診断結果報告画面が表示される。
【0041】
また、演算部12が診断対象機器の管理番号を取得すると、液晶ディスプレイ17に、診断対象機器の測定を行うべき旨の指示が表示される。
【0042】
検査員が、診断機10の探針10aを診断対象機器の本体に押し当てることで診断が開始される。例えば、一定期間(例えば150秒間)、診断機10の探針10aを診断対象機器の本体に押し当てる。例えば、診断対象機器としてバルブVの診断を行う場合、図3に示すように、診断機10の探針10aをバルブVの一次側に押し当てればよい。これにより、超音波測定部11による超音波測定が行われ、演算部12は測定結果を取得する。また、測定結果は記憶部13に記憶される。
【0043】
なお、本実施形態では、一度の診断(超音波測定)において、所定期間(例えば15秒間)の超音波の測定を1回とし、この測定が複数回(例えば10回)行われる。
【0044】
演算部12は、超音波の測定結果を取得した場合、判定処理の実行を開始する。図4は、判定処理のフローチャートを示す。判定処理では、主として、超音波を測定した診断対象機器のプロセス流体の漏洩量の判定が行われる。
【0045】
演算部12は、第1算出処理を実行する(ステップS10)。第1算出処理では、第1多項回帰式を用いて漏洩量が算出される。なお、本実施形態の多項回帰式は、超音波と漏洩量との関係を多項回帰分析により求めた回帰式である。第1多項回帰式は、プロセス機器の管理番号に対応付けて記憶部13に記憶される。演算部12は、管理番号に基づいて、診断対象機器用の第1多項回帰式を記憶部13から取得する。なお、図3で例示したバルブVの場合、後述する第1多項回帰式(1)が取得される。
【0046】
第1算出処理において、演算部12は、超音波の1回の測定結果に対してFFT(Fast Fourier Transformation)を実行して周波数成分に分解したデータを取得する。そして、一度の超音波測定における10回分の測定結果をそれぞれ分解したデータを取得する。その後、演算部12は、分解したデータの10回分の平均値を算出する。次に、演算部12は、分解したデータの平均値を独立変数として、第1多項回帰式から診断対象機器の漏洩量(第1漏洩量)を算出する。
【0047】
次に、演算部12は、第1漏洩量が判定値(所定値)未満であるか否かを判断する(ステップS11)。判定値は、第1多項回帰式を用いて算出(推定)された漏洩量が小さい場合に、漏洩量の再推定を行うか否かを判断するための値である。判定値は、プロセス機器の管理番号に対応付けて記憶部13に記憶される。演算部12は、管理番号に基づいて、診断対象機器用の判定値を記憶部13から取得する。
【0048】
判定値以上であった場合(ステップS11:NO)、演算部12は、第1漏洩量を診断対象機器の漏洩量と判定して記憶部13に記憶する第1決定処理を実行し(ステップS14)、判定処理を終了する。
【0049】
一方、判定値未満であった場合(ステップS11:YES)、演算部12は、第2算出処理を実行する(ステップS12)。第2算出処理では、第2多項回帰式を用いて漏洩量が算出される。第2多項回帰式は、プロセス機器の管理番号に対応付けて記憶部13に記憶される。演算部12は、管理番号に基づいて、診断対象機器用の第2多項回帰式を記憶部13から取得する。なお、図3で例示したバルブVの場合、後述する第2多項回帰式(2)が取得される。そして、第2算出処理において、演算部12は、第1算出処理において算出された平均値を独立変数として、第2多項回帰式から診断対象機器の漏洩量(第2漏洩量)を算出する。
【0050】
その後、演算部12は、第2漏洩量を診断対象機器の漏洩量と判定して記憶部13に記憶する第2決定処理を行って(ステップS13)、判定処理を終了する。
【0051】
なお、第1多項回帰式、第2多項回帰式及び判定値の詳細については後述する。
【0052】
判定処理が終了すると、診断機10は、超音波の測定結果及び漏洩量等の診断結果を、端末装置20に送信する。端末装置20は、これらの情報を受信し、診断結果を受信した日時を診断日として記憶部22に記憶する。また、演算部23がこれらの情報を取得し、漏洩量等が含まれるように診断結果報告画面を更新する。
【0053】
また、端末装置20は、記憶部22に記憶された診断結果等の各種の情報を、適宜サーバ装置30に送信する。サーバ装置30は、取得した診断結果等をマスターデータとして記憶部31に記憶する。
【0054】
なお、上述の判定処理では、第1漏洩量を算出した後に第2漏洩量が算出されるが、2つの漏洩量の算出を合わせて(同一タイミングで)実行してもよい。この場合、合わせて算出された第1漏洩量及び第2漏洩量のうちからいずれを診断対象機器の漏洩量とするかを、第1漏洩量と判定値とに基づいて決定すればよい。
【0055】
〈多項回帰式及び判定値〉
上述したように、本実施形態の多項回帰式は、超音波と漏洩量との関係を多項回帰分析により求めた回帰式である。
【0056】
第1多項回帰式は、プロセス機器で想定される漏洩範囲内での漏洩量の算出が対象である。すなわち、第1多項回帰式は、想定される漏洩範囲で最適化されている。例えば、図3で例示したバルブVの場合、想定される漏洩範囲は、0(l/min)以上、100(l/min)未満の範囲である。なお、0(l/min)は、プロセス流体が漏洩していない状態である。漏洩範囲は、プロセス機器の種別等によって異なる。
【0057】
一方、第2多項回帰式は、上記漏洩範囲の最小値以上、所定値未満の範囲内での漏洩量の算出が対象である。すなわち、第2多項回帰式は、漏洩範囲の最小値以上、所定値未満の範囲で最適化されている。所定値は、上記漏洩範囲の最大値よりも小さい値であり、上記判定値に該当する。すなわち、第2多項回帰式は、上記漏洩範囲の最小値以上、判定値未満の範囲で最適化され、漏洩量が少ない(判定値未満)場合に適用される。
【0058】
本実施形態では、第1多項回帰式を用いて算出された漏洩量(第1漏洩量)が少なかった(判定値未満だった)場合、第2多項回帰式を用いて漏洩量(第2漏洩量)が算出される。例えば、図3で例示したバルブVの場合、判定値が10(l/min)であり、0(l/min)以上、10(l/min)未満の範囲で最適化された第2多項回帰式が適用される。この場合、第1多項回帰式を用いて算出された第1漏洩量が10(l/min)未満であれば、第2多項回帰式を適用して漏洩量が再推定される。
【0059】
上述のように二段階で漏洩量を判定するのは、漏洩量が少ない場合において、上記漏洩範囲で最適化された第1多項回帰式を用いて漏洩量を算出するよりも、漏洩量の少ない範囲で最適化された第2多項回帰式を用いて漏洩量を算出する方が漏洩量の判定精度(精度)がより高いためである。
【0060】
例えば、図3で例示したバルブVの場合、0(l/min)以上、100(l/min)未満で最適化された第1多項回帰式のみを用いて漏洩量を判定した場合、図5に示すような相対誤差となる。図5は、実流量(実際の漏洩量)と、実流量及び推定した漏洩量の相対誤差との関係を示すグラフである。縦軸の「誤差」は、推定した漏洩量の実流量に対する相対誤差をパーセントで示し、0%に近いほど誤差が小さい。図5の「系列1」は、超音波を所定期間測定してFFTを行って第1多項回帰式から算出した漏洩量の相対誤差を示す。図5では、同一の実流量において、上記の測定を複数回(例えば10回)行って、各測定回における相対誤差を系列1として示している。
【0061】
また、図5の「系列2」は、同一の実流量における系列1の相対誤差の平均値を示している。さらに、図5の閾値A及び閾値Bは、相対誤差として許容すべき範囲を示している。すなわち、相対誤差が閾値Aと閾値Bとの間の範囲であれば、算出された漏洩量は精度が高いといえる。したがって、図5に示すように、実流量が0(l/min)以上、10(l/min)未満(漏洩量が少ない)場合、平均値(系列2)であっても閾値A,Bの範囲から外れることもあり、第1多項回帰式を用いた漏洩量の判定では精度が高くない。
【0062】
なお、実流量が10(l/min)以上の場合での第1多項回帰式を用いての漏洩量(特に系列2)については、図5に示すように、閾値A,Bの範囲に含まれており精度が高い。
【0063】
一方、バルブVについて、図5の場合と同じ条件下において、0(l/min)以上、10(l/min)未満で最適化された第2多項回帰式を用いて漏洩量を判定した場合、図6で示すような相対誤差となる。図6は、実流量と、実流量及び推定した漏洩量の相対誤差との関係を示す図5と同様なグラフである。第2多項回帰式を用いて漏洩量を判定した場合、図5に示す結果と比較して精度が高い。
【0064】
なお、第2多項回帰式に関して、上記漏洩範囲の最小値以上から所定値未満の範囲における所定値は、プロセス機器の種別等によって異なる。第1多項回帰式において、精度が低くなる漏洩量の範囲を特定して所定値を決定すればよい。これにより、所定値と同じ値となる判定値も決定される。
【0065】
例えば、プロセス機器の想定される漏洩範囲において、最初に第1多項回帰式を決定する。次に、図5で例示したように第1多項回帰式を用いて相対誤差を検証し、相対誤差が大きい範囲を特定する。すなわち、第1多項回帰式に関して、漏洩範囲の最小値(0(l/min))以上から、どこまでが相対誤差が大きい範囲かを特定する。特定された範囲に基づいて所定値(判定値)を決定する。その後、漏洩範囲の最小値以上から所定値未満の範囲において第2多項回帰式を決定する。
【0066】
〈多項回帰式の生成〉
本実施形態では、第1多項回帰式及び第2多項回帰式が、学習モデルを用いて決定される。例えば、教師データを用いて学習モデルを学習させることで、多項回帰式の次元、回帰係数が決定される。
【0067】
本実施形態では、最初に、プロセス機器の想定される漏洩範囲において、学習モデルを用いて第1多項回帰式を決定する。次に、第1多項回帰式を用いて上述の相対誤差を検証し、漏洩範囲の最小値(0(l/min))以上から、どこまでが相対誤差が大きい範囲かを特定する。特定された範囲に基づいて所定値(判定値)を決定する。その後、漏洩範囲の最小値以上から所定値未満の範囲において、学習モデルを用いて第2多項回帰式を決定する。
【0068】
例えば、図3で例示したバルブVの場合、最初に、想定される漏洩範囲{0(l/min)以上、100(l/min)未満}において、学習モデルを用いて第1多項回帰式を決定する。そして、第1多項回帰式を用いて相対誤差を検証し、漏洩範囲の最小値(0(l/min))以上から10(l/min)未満までが相対誤差が大きい範囲であることを特定する。その後、漏洩範囲の最小値以上から所定値(10(l/min))未満の範囲において、学習モデルを用いて第2多項回帰式を決定する。
【0069】
本実施形態では、サーバ装置30の記憶部31に学習モデルのプログラムモジュールが記憶され、サーバ装置30の演算部32が学習モデルとして機能する。
【0070】
学習モデルは、例えば、入力層、中間層及び出力層等から構成されるニューラルネットワーク(Neural Network)である。入力層には、所定期間だけ測定した超音波の測定結果に対してFFTを実行して周波数成分に分解したデータが入力される。出力層は、上述の周波数成分に分化したデータが入力層に入力されると漏洩量を出力する。中間層では、多項回帰式を用いて漏洩量が出力層から出力されるように、各種パラメータ(重み等)が設定されている。
【0071】
以下、図3で例示したバルブVを例として学習モデルの学習(機械学習)について説明する。
【0072】
最初に、第1多項回帰式を生成するための学習モデルによる学習の実行について説明する。学習モデル(演算部32)は、第1多項回帰式用の教師データを取得する。教師データには、バルブVに関して、0(l/min)以上、100(l/min)未満において、所定期間だけ測定した超音波の測定結果に対してFFTを実行して周波数成分に分解したデータと、この測定結果に対応するプロセス流体の漏洩量(実流量)とが含まれる。本実施形態では、実際に測定されたデータが用いられるが、シミュレータによって生成されたデータを用いてもよい。なお、第1多項回帰式用の教師データは、記憶部31に記憶しておけばよい。
【0073】
次に、学習モデルは、学習処理を実行する。学習処理では、教師用の周波数成分に分解したデータを学習モデルに入力し、漏洩量を出力として取得する。学習モデルは、取得した漏洩量を、正解値(実流量)と比較し、中間層の重み等のパラメータを最適化する。具体的には、第1多項回帰式の次元、回帰係数が最適化されていく。全ての教師データによる学習処理が終了した場合、学習モデルの学習が終了する。これにより、学習モデルにおいて第1多項回帰式が最適化された状態となる。この最適化された第1多項回帰式が、診断機10(記憶部13)に記憶されている。
【0074】
また、第2多項回帰式を生成するための学習モデルによる学習の実行について説明する。第2多項回帰式に関しても、第1多項回帰式を用いた学習モデル(学習プログラムモジュール)が使用されるが、第1多項回帰式で学習済みの学習モデルではなく、学習前の状態での学習モデルが用いられる。
【0075】
学習モデルは、第2多項回帰式用の教師データを取得する。教師データには、バルブVに関して、0(l/min)以上、10(l/min)未満において、所定期間だけ測定した超音波の測定結果に対してFFTを実行して周波数成分に分解したデータと、この測定結果に対応するプロセス流体の漏洩量(実流量)とが含まれる。本実施形態では、実際に測定されたデータが用いられるが、シミュレータによって生成されたデータを用いてもよい。なお、第2多項回帰式用の教師データは、記憶部31に記憶しておけばよい。
【0076】
次に、学習モデルは、学習処理を実行する。学習処理では、教師用の周波数成分に分解したデータを学習モデルに入力し、漏洩量を出力として取得する。学習モデルは、取得した漏洩量を、正解値(実流量)と比較し、中間層の重み等のパラメータを最適化する。具体的には、第2多項回帰式の次元、回帰係数が最適化されていく。全ての教師データによる学習処理が終了した場合、学習モデルの学習が終了する。これにより、学習モデルにおいて第2多項回帰式が最適化された状態となる。この最適化された第2多項回帰式が、診断機10(記憶部13)に記憶されている。
【0077】
例えば、図3で例示したバルブVの場合、上述の学習モデルによる学習の実行によって下記の第1多項回帰式(1)及び第2多項回帰式(2)が生成される。
【0078】
【数1】
【0079】
なお、本実施形態では、第1多項回帰式及び第2多項回帰式の生成のために学習モデルが用いられ、診断機10による漏洩量の算出に学習モデルは用いられていないが、用いてもよい。例えば、診断機10において、上述の第1多項回帰式用に学習済の学習モデル(第一学習モデル)と、第2多項回帰式用に学習済の学習モデル(第二学習モデル)とを機能させ、図4に示す第1算出処理において第一学習モデルを用いて第1漏洩量を算出させ、第2算出処理において第二学習モデルを用いて第2漏洩量を算出させればよい。
【0080】
また、本実施形態では、教師データを用いて学習モデルが生成されるが、教師データを用いないモデルであってもよい。例えば、強化学習によって学習モデルが生成されるようにしてもよい。
【0081】
また、学習モデルには、CNN(Convolution Neural Network)、SVM(Support Vector Machine)、決定木など、種々の学習アルゴリズムに基づくモデル等を適用してもよい。
【0082】
また、サーバ装置30が学習モデルの学習を実行しなくてもよい。他の端末装置を用いて実行してもよい。
【0083】
以上のように、漏洩量に応じて2つの多項回帰式を段階的に適用してプロセス機器の漏洩量を判定(推定)しているので、漏洩量の判定精度を広い範囲で良好に維持できる。
【0084】
なお、上述の実施形態では、診断機が漏洩量を判定しているが、特にこれに限定されるものではない。端末装置又はサーバ装置が判定してもよい。この場合、診断機は、超音波の測定結果を、判定を行う装置に送信すればよい。
【0085】
上述の実施形態では、検査員が携帯した診断機を用いて超音波の測定をしていたが、超音波の測定装置をプロセス機器に設置して、定期的に診断結果をサーバ装置に送信するようにしてもよい。
【0086】
上述の実施形態では、診断機と端末装置とが区別されていたが、端末装置が診断機として機能してもよい。
【0087】
上述の実施形態では、学習モデルを用いて多項回帰式が生成さているが、学習モデルを用いなくてもよい。
【0088】
上述の実施形態では、プロセス機器のそれぞれについて、第1多項回帰式、第2多項回帰式、判定値が設けられているが、プロセス機器の種別毎に設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
プロセス機器のプロセス流体の漏洩量を好適に判定するのに有用である。
【符号の説明】
【0090】
10 診断機
11 超音波測定部(測定手段)
12 演算部(算出手段)
14 RFIDタグリーダ(取得手段)
20 端末装置
30 サーバ装置
32 演算部(学習モデル)
100 漏洩量判定システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6