(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087313
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】ルームエアコンディショナーの微生物除去方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/18 20060101AFI20240624BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20240624BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20240624BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20240624BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240624BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240624BHJP
A01N 31/02 20060101ALI20240624BHJP
A01N 25/06 20060101ALI20240624BHJP
A61L 101/34 20060101ALN20240624BHJP
【FI】
A61L2/18
A61L9/01 M
A61L9/14
C11D7/26
A01P1/00
A01P3/00
A01N31/02
A01N25/06
A61L101:34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202067
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】仲田 恋
(72)【発明者】
【氏名】阿部 滉平
(72)【発明者】
【氏名】山名 一綱
(72)【発明者】
【氏名】河野 三美
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
4H003
4H011
【Fターム(参考)】
4C058AA19
4C058BB07
4C058DD07
4C058JJ08
4C058JJ24
4C180AA07
4C180AA10
4C180AA19
4C180CB01
4C180EB06X
4C180EB08X
4C180LL06
4C180MM08
4H003DA12
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB04
4H003EB06
4H003ED02
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA34
4H011AA02
4H011BA01
4H011BB03
4H011BC18
4H011DA21
(57)【要約】
【課題】上面に空気取り入れ口を有するエアコンの室内機の隅々に除菌剤を到達させてカビや菌等の微生物を除去できると共に、高湿度のみならず低湿度の室内環境においても除菌性能を発現することができるエアコンの微生物除去方法を提供する。
【解決手段】上面に空気取り入れ口を有するルームエアコンディショナーの室内機に上側から除菌剤を噴霧する微生物除去方法であり、ルームエアコンディショナーの室内機の体積当たり1回の噴霧量が70~500g/m3以下であり、1週間当たり2回以上10回以下で分割して噴霧する、ルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に空気取り入れ口を有するルームエアコンディショナーの室内機に上側から除菌剤を噴霧する微生物除去方法であり、ルームエアコンディショナーの室内機の体積当たり1回の噴霧量が70~500g/m3以下であり、1週間当たり2回以上10回以下で分割して噴霧する、ルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
【請求項2】
さらに、1週間の総噴霧量が280~2000g/m3以下である請求項1に記載のルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
【請求項3】
前記除菌剤が下記一般式(A1)または下記一般式(A2)で表される化合物から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載のルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
HO-R1-OH …(A1)
(R1:2価の脂肪族炭化水素基(炭素数2~20))
R2―OH …(A2)
(R2:炭化水素基、一部が酸素元素で置換される炭化水素基(炭素数1~10))
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルームエアコンディショナーの微生物除去方法に関する。更に詳しくは、主として家庭用として使用される、室内機が壁掛け型であるルームエアコンディショナー(以下「エアコン」という場合がある。)の上面の空気取り入れ口に除菌剤を連続的ではなく間欠的に噴霧し、微生物を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンの室内機内部は、結露水の発生により湿潤状態にあることが多いこと、またほこりや汚れが溜まりやすいことから、カビや菌が発生しやすい。そのため、エアコン始動時や運転時にカビ臭などの悪臭やほこりがいっしょに送風され、生活者の健康に悪影響を与えることがある。
そこで、エアコンの室内機内部の汚れや悪臭の対策として、エアコン用のスプレー製品や超音波ミスト発生装置で消臭液をエアコンの室内機内部に噴霧し、エアコンの室内機と室内の消臭を行うことが知られている。
【0003】
特許文献1では、上面に空気取り入れ口を有するルームエアコンディショナーの室内機に上側から液体薬剤を噴霧する噴霧器と、液体薬剤を10~40g/時間の噴霧量で噴霧する噴霧方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、上面に空気取り入れ口を有するエアコンの室内機や、この室内機が設置された室内を汚すことなく、液体薬剤のミストを室内機内の隅々に到達させ、かつ充分に作用させることができる。しかし、液体薬剤を単位時間あたり一定量の噴霧量で噴霧する噴霧方法では、高湿度の室内環境の除菌性能は発現するが、低湿度の室内環境では除菌性能が不十分であった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みて、上面に空気取り入れ口を有するエアコンの室内機の隅々に除菌剤を到達させてカビや菌等の微生物を除去できると共に、高湿度のみならず低湿度の室内環境においても除菌性能を発現することができるエアコンの微生物除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]上面に空気取り入れ口を有するルームエアコンディショナーの室内機に上側から除菌剤を噴霧する微生物除去方法であり、ルームエアコンディショナーの室内機の体積当たり1回の噴霧量が70~500g/m3以下であり、1週間当たり2回以上10回以下で分割して噴霧する、ルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
[2]さらに、1週間の総噴霧量が280~2000g/m3以下である請求項1に記載のルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
[3]前記除菌剤が下記一般式(A1)または下記一般式(A2)で表される化合物から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載のルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のルームエアコンディショナーの微生物除去方法によれば、上面に空気取り入れ口を有するエアコンの室内機の隅々に除菌剤を到達させてカビや菌等の微生物を除去できると共に、高湿度のみならず低湿度の室内環境においても除菌性能を発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のルームエアコンディショナーの微生物除去方法は、エアコンの室内機上面における空気取り入れ口に向けて、空気取り入れ口の上方に噴出部を配置した噴霧器から除菌剤を噴霧する微生物除去方法である。
なお、本発明における「微生物」とはカビや菌等であり、「微生物除去」とは、微生物を減らすこと、微生物の繁殖を防止すること、微生物を死滅させること、のいずれか又はこれらの組み合わせを意味する。
【0011】
<除菌剤>
本発明の一実施形態に係るルームエアコンディショナーの微生物除去方法に用いる除菌剤は以下成分に加え、水を含有する。
【0012】
微生物除去作用を有する除菌剤としては、グリコール類、アルコール類、グリコールエーテル類、フェノール類、カルボン酸、四級アンモニウム塩、非環式アルデヒド類、天然物、塩素系化合物、金属錯体や金属のイオン化水溶液が挙げられる。
【0013】
グリコール類は、下記一般式(A1)で表される化合物である。
HO-R1-OH …(A1)
式(A1)中、R1は、炭素数2~20の2価の脂肪族炭化水素基である。R1の炭素数は、2~9が好ましく、2~4がより好ましい。
【0014】
グリコール類の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、trans-2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、イソプレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,17-ヘプタデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,19-ノナデカンジオール、1,20-イコサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール、1,2-オクタデカンジオールなどが挙げられる。
【0015】
なかでも、蒸気圧が適切な範囲であることから、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、trans-2-ブテン-1,4-ジオールが好ましく、プロピレングリコールがより好ましい。
【0016】
アルコール類は、下記一般式(A2)で表される化合物である。
R2―OH …(A2)
式(A2)中、R2は炭化水素基を表す。炭化水素基の一部が酸素原子で置換されていてもよい。R2の炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。
【0017】
アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、3-メトキシー3-メチル-1-ブタノールなどが挙げられる。
なかでも、蒸気圧が適切な範囲であり、臭気の問題が少ない点から、3-メトキシー3-メチル-1-ブタノールが好ましい。
【0018】
グリコールエーテル類は、下記一般式で表される化合物である。
R3O-(R4O)m-H
式中、R3は炭素数1以上の炭化水素基を表し、R4は炭素数2以上のアルキレン基を表し、mは1以上の整数である。
R3の炭素数は、1~11が好ましく、6~11がより好ましい。R4の炭素数は、2~5が好ましく、2~3がより好ましい。
【0019】
グリコールエーテル類の具体例としては、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノヘプチルエーテル、プロピレングリコールモノオクチルエーテル、プロピレングリコールモノオクチルエーテル、プロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノノニルエーテル、ジプロピレングリコールモノノニルエーテル、プロピレングリコールモノデシルエーテル、ジプロピレングリコールモノデシルエーテル、プロピレングリコールモノイソデシルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソデシルエーテル、プロピレングリコールモノウンデシルエーテル、ジプロピレングリコールモノウンデシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘプチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノノニルエーテル、ジエチレングリコールモノノニルエーテル、エチレングリコールモノデシルエーテル、ジエチレングリコールモノデシルエーテル、エチレングリコールモノイソデシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソデシルエーテル、エチレングリコールモノウンデシルエーテル、ジエチレングリコールモノウンデシルエーテルが挙げられる。
【0020】
なかでも、微生物除去効果の観点から、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノオクチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルがより好ましい。
【0021】
フェノール類は、ベンゼン環に水酸基を1つ有する化合物である。
フェノール類の具体例としては、3-メチルー4-イソプロピルメチルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、4-アリル-2-メトキシフェノール、5-イソプロピル-2-メチルフェノール、オルトフェニルフェノール、4-クロロフェノール、4-クロロ-3-メチルフェノール4-クロロ-3,5-ジメチルフェノールなどが挙げられる。
【0022】
カルボン酸は、下記一般式で表される化合物である。
R5―COOR6
式中、R5は炭化水素基を表す。R5の炭素数は、1~8が好ましく、1~3がより好ましい。R6は水素もしくはナトリウム、カリウム、カルシウムを表す。
カルボン酸の具体例としては、プロパン酸、プロパン酸ナトリウム、プロパン酸カルシウム、オクタン酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0023】
四級アンモニウム塩としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼントニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0024】
非環式アルデヒド類は、分子内に環構造を有さず、かつアルデヒド基を有する化合物である。
非環式アルデヒド類の具体例としては、シトラール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、トリメチルヘキシルアルデヒド、トランス-2-ヘキサナール、2,6-ノナジエール、シス-4-デセナールなどが挙げられる。
【0025】
天然物としては、キトサン、ロズマリン酸、エピガロカテキン3-ガレート水和物(カテキン)、アリルイソチオシアネート、シンナムアルデヒド、ヒノキチオールなどが挙げられる。
塩素系化合物としては、次亜塩素酸水、亜塩素酸水(エースネット社製、要時生成亜塩素酸水MA-T)などが挙げられる。
金属錯体や金属のイオン化水溶液としては、銀、亜鉛、チタン、銅などが挙げられる。
【0026】
これらの中でも、室内機への影響や室内の汚染などを生じにくいことから、溶剤類が好ましく、グリコール類、アルコール類、グリコールエーテル類がより好ましい。
微生物除去作用を有する除菌剤が溶剤類である場合、水溶性であることが好ましい。水溶性とは、25℃の水1Lに対して10g以上(1質量%)が透明に溶解することを意味する。水溶性であることにより、除菌剤が均一になり、ムラなく溶剤を噴霧することができる。
【0027】
除菌剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で他の成分を含有させてもよい。他の成分としては、抗菌剤、殺菌剤、消毒剤、消臭剤、防臭剤、芳香剤、抗ウイルス剤などが挙げられる。
【0028】
微生物除去作用を有する除菌剤は、1種類単独で用いられてもよいし、2種類以上が組み合わされて用いられてもよい。
水以外の除菌剤の含有量は、5~75質量%であり、5~60質量%であることが好ましく、20~45質量%であることがより好ましい。除菌剤の含有量が下限値以下では、微生物除去性が低下する。除菌剤の含有量が上限値以上では、噴霧性が低下する。
【0029】
<エアコンシステム>
本実施形態のエアコンシステムは、特開2021-186807号公報で開示されるルームエアコンディショナーと噴霧器と同様の構成で設置する。
【0030】
<噴霧方法>
本実施形態の噴霧方法は、噴霧器に収容した電池から超音波発振器に電力を供給し、超音波振動子を振動させることにより、除菌剤を噴霧する。具体的には、吸液芯によりタンクから吸い上げられた除菌剤を、振動のエネルギーによりミスト化して、噴出部から噴霧する。
【0031】
噴霧する際、エアコンは駆動状態でもよいが、停止状態であることが好ましい。本実施形態では、室内機の空気取り入れ口に上側から除菌剤を噴霧するので、室内機内の送風用ファンが駆動していなくても、噴霧された液体薬剤のミストは、自重で、室内機の内部に到達することができる。
エアコンが停止状態であれば、除菌剤のミストは、室内機の内部に長時間留まることができるため、除菌剤による微生物除去の効果を発揮しやすい。
【0032】
本実施形態では、除菌剤の噴霧は、連続的に行わず間欠的に行う。間欠的に行うことにより、室内機の空気取り入れ口のフィルター部分に溜まるミストが蒸発しやすくなり、内部にミストが取り込まれやすくなることから、低湿度環境下でもエアコン対象面まで十分にミストが到達し、室内環境の湿度の影響を受けずに、微生物除去の効果を発揮しやすい。
【0033】
間欠的に噴霧を行う方法として、除菌剤を1週間のうち一定回数に分割し、一定量を噴霧する。噴霧回数はデジタルプログラムタイマー(PT70DW)(REVEX社製)に超音波噴霧器の電源プラグを接続することで、1週間を分割して噴霧する運転プログラムで設定することができる。噴霧量は超音波振動子に供給される除菌剤の量や超音波発振器の出力によって調整することが出来る。また、除菌剤の粘度も噴霧量に影響する。
一般的に超音波発振器の振動数が高いほど単位時間当たりの噴霧量は多くなる。また、超音波発振器の能力上限までは、除菌剤の供給量を増やすほど、単位時間当たりの噴霧量は多くなる。また、液粘度が高いと噴霧しづらくなり噴霧量が抑制されることが知られている。
【0034】
1回当たりの噴霧量は除菌剤の噴霧量を、エアコンの体積で除した値である。1回の噴霧量は70~500g/m3が好ましく、100~400g/m3がより好ましく、200~300g/m3がさらに好ましい。1回当たりの噴霧量が下限値以下では、ミストが蒸発しやすくなりエアコン対象面への除菌剤の付着量が少なく、微生物除去の効果が発揮できない。1回当たりの噴霧量が上限値以上では、フィルターにミストがトラップされ目詰まりが起き、微生物除去の効果が発揮できない。
【0035】
1週間当たりの噴霧回数は7日間で除菌剤を噴霧した回数を表す。微生物除去を効果的に発揮するため、除菌剤は1週間で偏りなく一定間隔で噴霧することが好ましい。1週間当たりの噴霧回数は2~10回が好ましく、3~7回がより好ましく、3~4回がさらに好ましい。1週間当たりの噴霧回数が下限値以下では、エアコン対象面への除菌剤の付着量が不十分となり、微生物除去の効果が低下する。1週間当たりの噴霧回数が上限値以上では、噴霧間隔が短くフィルターで目詰まりが起きるため、微生物除去の効果が低下する。
【0036】
1週間の総噴霧量は7日間で除菌剤を噴霧した総量を表す。1週間の総噴霧量は280~2000g/m3が好ましく、400~1600g/m3がより好ましく、600~1200g/m3がさらに好ましい。1週間の総噴霧量が下限値以下では、エアコン対象面への除菌剤の付着量が不十分となり、微生物除去の効果が低下する。1週間の総噴霧量が上限値以上では、フィルターにミストがトラップされ目詰まりが起き、微生物除去の効果が低下する。
【実施例0037】
除菌剤を噴霧器により、エアコンの室内機の空気取り入り口に向けて、種々の噴霧条件で噴霧し、微生物除去効果を評価した結果を表1~2に示す。表1~2中の各成分の含有量の単位は質量%である。
【0038】
[除菌剤]
(A1)-1:プロピレングリコール、株式会社ADEKA製、商品名「化粧用プロピレングリコール」
(A1)-2:エチレングリコール、関東化学株式会社製、商品名「エチレングリコール(鹿1級)」
(A2)-1:3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、株式会社クラレ製、商品名「ソルフィット」
(B):超純水
【0039】
[室内機]
DAIKIN社製ルームエアコン(F22UTES-W7)の室内機。
室内機全体の幅:77cm。
室内機全体の奥行き:23.5cm。
空気取り入れ口の幅:43cm。
空気取り入れ口の奥行き:14.5cm
【0040】
[微生物除去評価方法]
(供試用プラスチック板の作製)
ポテトデキストロース寒天(Difco社製)の斜面培地にて25°C、10日間培養したCladosporium cladosporioides HMC1064(浴室分離菌)を、滅菌した0.05%Tween80(関東化学製)水溶液にて約106CFU/mLの胞子液を調製した。次いで、該胞子液をプラスチック板(ポリプロピレン製板、25mm×25mm)に0.1mL接種し、室温にて4時間乾燥固定した(薄膜状、板上の菌数は約106CFU)
【0041】
(供試用プラスチック板の設置)
室温21℃、相対湿度30%、室温21℃、相対湿度70%の二条件で調温・調湿した6畳の密閉空間にて、供試用プラスチック板を室内機のクロスフローファン下の正面向かって右端の吹き出し口内側位置に3枚貼り付けた。
【0042】
(噴霧方法)
除菌剤を噴霧する運転プログラムはデジタルプログラムタイマー(PT70DW)(REVEX社製)を用いた。
超音波噴霧器の電源プラグをデジタルプログラムタイマーに接続し、超音波噴霧器がONになる時間を設定し、1時間動作後OFFになるようにタイマーを設定する。このOFF→ONに切り替わる時間の長さを調整することで、8週間の噴霧回数を制御した。
【0043】
(除菌活性値の測定方法)
噴霧後、6畳の密閉空間を24時間換気し、供試用プラスチック板3枚を回収した。回収した供試用プラスチック板にGPLP液体培地(日本製薬製)10mLを添加し菌を洗い出し、その液をポテトデキストロース寒天培地(三共化学薬品製)に塗抹接種して、25℃にて5日間培養した後のコロニー数を計測し、生菌数を算出し、その平均を求めた。
【0044】
対照として、作製後未処理のまま、室温21℃、相対湿度60%の条件で24時間保管した供試用プラスチック板3枚から菌を回収し、ポテトデキストロース寒天培地に塗抹接種して、25℃にて5日間培養した後のコロニー数を計測し、生菌数を算出し、その平均を求めた。生菌数は常用対数(lоg)に変換し、未処理の供試用プラスチック板の平均生菌数(常用対数)から処理後の平均生菌数(常用対数)を差し引いた値を平均除菌活性値とし、下記評価基準に従い、微生物除去効果を評価した。
【0045】
(評価基準)
◎◎◎:平均除菌活性値が3.0以上。
◎◎ :平均除菌活性値が2.5以上3.0未満。
◎ :平均除菌活性値が2.0以上2.5未満。
○ :平均除菌活性値が1.5以上2.0未満。
△ :平均除菌活性値が1.0以上1.5未満。
× :平均除菌活性値が1.0未満。
【0046】
【0047】