(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087317
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240624BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202073
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史宏
(72)【発明者】
【氏名】田邉 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】濱埜 晃嗣
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 宏義
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770AA21
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770FA04
5H770JA11W
5H770JA17W
5H770JA18Z
5H770LA01W
5H770QA01
5H770QA02
5H770QA22
5H770QA33
5H770QA37
(57)【要約】
【課題】小型化と安定動作とを両立できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】平滑コンデンサ21は、直流電圧の高側電位を出力し、平滑コンデンサ22は、平滑コンデンサ21に直列に接続され、直流電圧の低側電位を出力する。インバータ回路103は、平滑コンデンサ21,22から出力される直流電圧を交流電圧に変換する。制御回路104は、インバータ回路103を制御する。主回路基板61には、インバータ回路103が実装される。平滑コンデンサ21,22のそれぞれは、最長サイズを定める軸方向が主回路基板61の面方向と略平行になるように配置されている。平滑コンデンサ21は、平滑コンデンサ22よりも制御回路104から離れた位置に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧の高側電位を出力する第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサに直列に接続され、前記直流電圧の低側電位を出力する第2のコンデンサと、
前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサから出力される前記直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路を制御する制御回路と、
前記インバータ回路が実装される第1の基板と、
を備え、
前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサのそれぞれは、最長サイズを定める軸方向が前記第1の基板の面方向と略平行になるように配置されており、
前記第1のコンデンサは、前記第2のコンデンサよりも前記制御回路から離れた位置に配置されている、
電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
さらに、前記第1の基板に実装され、外部からの交流電圧を整流して前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサを充電する整流回路を備え、
前記第1のコンデンサは、前記外部からの交流電圧の正の半周期で充電され、
前記第2のコンデンサは、前記外部からの交流電圧の負の半周期で充電される、
電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記制御回路は、前記第1の基板に実装され、
前記第1のコンデンサは、前記第2のコンデンサよりも前記第1の基板から離れた位置に配置されている、
電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサのそれぞれは、同一の面に正極端子と負極端子とを備えている、
電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置において、
さらに、前記第1の基板の面に対する略垂直方向を面方向として配置される第2の基板を備え、
前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサは、前記第2の基板に実装されている、
電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置において、
前記第2の基板には、突起部が形成されており、
前記第1の基板には、前記突起部に嵌合する開口部が形成されている、
電力変換装置。
【請求項7】
請求項5に記載の電力変換装置において、
前記第1のコンデンサまたは前記第2のコンデンサの前記正極端子および前記負極端子は、それぞれ、前記第2の基板と、電線とを介して前記第1の基板に電気的に接続されている、
電力変換装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記第1のコンデンサは、接合部材を介して前記第1の基板に物理的に接合されている、
電力変換装置。
【請求項9】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記第1のコンデンサと前記第2のコンデンサとは、接合部材を介して互いに物理的に接合されている、
電力変換装置。
【請求項10】
請求項1に記載の電力変換装置において、
さらに、前記第1の基板に電気的に接続される第3の基板を備え、
前記制御回路は、前記第3の基板に実装され、
前記第1のコンデンサは、前記第2のコンデンサよりも前記第3の基板から離れた位置に配置されている、
電力変換装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電力変換装置において、
前記第3の基板は、前記第1の基板の面に対する略垂直方向を面方向として配置されている、
電力変換装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電力変換装置において、
前記第1のコンデンサは、前記第2のコンデンサよりも前記第1の基板から離れた位置に配置されている、
電力変換装置。
【請求項13】
請求項12に記載の電力変換装置において、
さらに、前記第1の基板の面に対する略垂直方向を面方向として配置される第2の基板を備え、
前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサは、前記第2の基板に実装されている、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、例えば、モータ等の負荷に交流電力を供給する電力変換装置に関する。
【技術分野】
【0002】
モータ駆動用電力変換装置は、一般的に、交流電圧を直流電圧に変換する整流部、直流電圧を平滑する平滑コンデンサ、直流電圧を交流電圧に逆変換するインバータ回路で構成される。整流部は、交流電圧の電圧値によって主に2種類の回路方式が用いられ、交流電圧が200Vを超える場合は全波整流回路、交流電圧が100V~120V程度の場合は倍電圧整流回路が用いられる。倍電圧整流回路を用いると、交流電圧のピーク値の約2倍の直流電圧を得ることができる。
【0003】
2種類の回路方式、すなわち全波整流回路および倍電圧整流回路を兼用する構成として、特許文献1には、モータの回転速度に応じて全波整流、倍電圧整流を切り替えるモータ駆動用電力変換装置が記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される電力変換装置は、特許文献1の
図1に示されるスイッチを導通させることで、倍電圧整流回路を動作させるものとなっている。当該
図1に示されるように、倍電圧整流回路は、直流電圧の高側電位ノードと交流電源との間に接続された第1電解コンデンサと、交流電源と直流電圧の低側電位ノードとの間に接続された第2電解コンデンサとを備える。また、特許文献1の
図7には、インバータ回路と第1、第2電解コンデンサとの位置関係が記されている。第1、第2電解コンデンサは、インバータ回路が実装された基板上に、第1、第2電解コンデンサの高さ方向が基板の面に対する垂直方向となるように実装されている。
【0006】
倍電圧整流回路は、動作原理上、交流電圧の正負いずれかの半周期内でのみ電解コンデンサを充電する。このため、倍電圧整流回路を用いると、交流電圧の正負どちらでも充電する全波整流回路を用いる場合と比べて、リップル電流が大きくなり得る。これに伴い、同一出力容量の全波整流回路と倍電圧整流回路とに同一静電容量の電解コンデンサを適用した場合、倍電圧整流回路の方が電解コンデンサの発熱が大きくなる傾向にある。そのため、同一出力容量の整流回路で比較した場合、倍電圧整流回路に用いる電解コンデンサの静電容量は、全波整流回路に用いる電解コンデンサの静電容量に比べて大きく設計するのが一般的となっている。
【0007】
なお、倍電圧整流回路に用いられる電解コンデンサは、全波整流回路に用いられる電解コンデンサに比べて耐圧を約半分にできる。ただし、電力変換装置の仕様によっては、このような耐圧低減による電解コンデンサの体積の減少分よりも、前述した静電容量が大きくなることによる体積の増加分の方が、大きくなり得る。一般的に、電解コンデンサは、静電容量が大きくなるほど径方向、若しくは高さ方向が大きくなる。このため、倍電圧整流回路を備えた電力変換装置において、特許文献1に示されるような方向に電解コンデンサを実装した場合、電解コンデンサの径方向、若しくは高さ方向のサイズアップや、別途平滑コンデンサを配置することによる基板面積の増大に起因して、電力変換装置のサイズが大きくなるおそれがあった。
【0008】
また、一般的に、電解コンデンサのケース電位は、負極端子電位と正極端子電位の間の不定電位となる。このため、例えば、インバータ回路の電流検出信号やゲート信号等、直流電圧の低側電位を基準に生成される弱電信号の配線が、直流電圧の高側電位を出力する第1電解コンデンサに近接した場合、ケース電位と弱電信号の電位と間に高い電位差が生じる。その結果、弱電信号に大きなノイズが重畳することで、誤動作が生じるおそれがあった。そして、このような誤動作の問題は、電力変換装置のサイズが小さくなるほど、より顕著になり得る。
【0009】
本発明は、このようなことに鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、小型化と安定動作とを両立できる電力変換装置を提供することにある。
【0010】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施の形態における電力変換回路は、第1および第2のコンデンサと、インバータ回路と、制御回路と、第1の基板とを備える。第1のコンデンサは、直流電圧の高側電位を出力し、第2のコンデンサは、第1のコンデンサに直列に接続され、直流電圧の低側電位を出力する。インバータ回路は、第1のコンデンサおよび第2のコンデンサから出力される直流電圧を交流電圧に変換する。制御回路は、インバータ回路を制御する。第1の基板には、インバータ回路が実装される。第1および第2のコンデンサのそれぞれは、最長サイズを定める軸方向が第1の基板の面方向と略平行になるように配置されている。第1のコンデンサは、第2のコンデンサよりも制御回路から離れた位置に配置されている。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すると、電力変換装置において、小型化と安定動作とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1による電力変換装置の概略構成例を示す回路図である。
【
図2】
図1における制御回路の構成例を示す回路図である。
【
図3】
図1に示される電力変換装置の外形例を示す鳥瞰図である。
【
図4】
図3に示される電力変換装置を別方向から見た側面図である。
【
図5】実施の形態2による電力変換装置において、
図3とは異なる外形例を示す鳥瞰図である。
【
図6】
図5に示される電力変換装置を別方向から見た側面図である。
【
図7】
図5において、コンデンサ基板の主回路基板への物理的な固定方法の一例を示す図である。
【
図8】実施の形態3による電力変換装置において、
図5とは異なる外形例を示す鳥瞰図である。
【
図9】
図8に示される電力変換装置を別方向から見た側面図である。
【
図10】実施の形態4による電力変換装置において、
図8とは異なる外形例を示す鳥瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
(実施の形態1)
<電力変換装置の回路構成>
図1は、実施の形態1による電力変換装置の概略構成例を示す回路図である。
図1に示される電力変換装置1は、整流回路101と、平滑コンデンサユニット102と、インバータ回路103と、制御回路104と、突入電流制限回路105とを備える。平滑コンデンサユニット102は、直流電圧の高側電位VPを出力する平滑コンデンサ(第1のコンデンサ)21と、平滑コンデンサ21に直列に接続され、直流電圧の低側電位VNを出力する平滑コンデンサ(第2のコンデンサ)22とを備える。
【0016】
整流回路101は、外部からの交流電圧2を、ダイオード11,12を用いて整流し、整流した直流電圧で平滑コンデンサユニット102内の平滑コンデンサ21,22を充電する。平滑コンデンサユニット102は、整流回路101から入力された直流電圧を平滑する。インバータ回路103は、平滑コンデンサユニット102から出力される直流電圧を交流電圧に変換する。制御回路104は、インバータ回路103を制御する。
【0017】
図1に示されるように接続された整流回路101および平滑コンデンサユニット102は、一般的に、倍電圧整流回路と呼ばれている。交流電圧2の正の半周期では、ダイオード11が導通して平滑コンデンサ21が充電され、交流電圧2の負の半周期では、ダイオード12が導通して平滑コンデンサ22が充電される。
【0018】
このように、平滑コンデンサ21,22が交互に充電される結果、例えば、交流電圧2の実効値が100Vである場合、平滑コンデンサ21,22のそれぞれの両端電圧は、交流電圧2のピーク電圧である141V程度となる。これにより、平滑コンデンサユニット102から出力される直流電圧、すなわち、低側電位VNを基準とした高側電位VPの電圧は、平滑コンデンサ21,22の両端電圧の合計値である282V程度となる。
【0019】
このような電力変換装置1に適用される平滑コンデンサ21,22には、フィルムコンデンサやセラミックコンデンサ等、種々のコンデンサを適用可能である。ただし、大きな静電容量により直流電圧を平滑する観点や、高耐圧を得る観点で、平滑コンデンサ21,22には、電解コンデンサが用いられる場合が多い。そこで、実施の形態では、平滑コンデンサ21,22は、主に、電解コンデンサであるものとして説明する。
【0020】
インバータ回路103は、スイッチング素子31~36を備え、負荷の一例であるモータ3に交流電力を出力する。
図1に示されるスイッチング素子31~36は、代表例としてIGBTで構成されるが、MOSFET等の他のパワー半導体トランジスタで構成されてもよい。制御回路104は、モータ3やスイッチング素子31~36に流れる電流を検出し、モータ3を所望の動作とするようにスイッチング素子31~36に駆動信号を出力する。
【0021】
突入電流制限回路105は、限流抵抗51およびリレー52を備え、交流電圧2の投入時における平滑コンデンサ21,22への充電電流、すなわち大きな突入電流を制限する目的で設けられる。交流電圧2の投入直後等、直流電圧の高側電位VPと低側電位VNとの電位差が所定の値より低い場合、リレー52は、オフ状態に制御される。その結果、平滑コンデンサ21,22は、限流抵抗51による制限された電流で充電される。その後、平滑コンデンサ21,22が所定の電圧値以上に充電されると、リレー52はオン状態に制御される。なお、リレー52は、サイリスタ等の別の素子に置き換え可能である。
【0022】
先に述べた通り、平滑コンデンサ21は、交流電圧2の正の半周期で充電され、平滑コンデンサ22は、交流電圧2の負の半周期で充電される。従って、リレー52がオン状態であると仮定すると、平滑コンデンサ21は、直流電圧の高側電位VPと交流電圧2との間を平滑し、平滑コンデンサ22は、交流電圧2と直流電圧の低側電位VNとの間を平滑する。
【0023】
一般的に、電解コンデンサのケース電位は、電解コンデンサの負極端子電位と正極端子電位との間の不定電位となる。このため、平滑コンデンサ21のケース電位は、直流電圧の高側電位VPと交流電圧2の間の大きさとなり、平滑コンデンサ22のケース電位は、交流電圧2と直流電圧の低側電位VNの間の大きさとなる。一例として、直流電圧が282Vである場合、直流電圧の低側電位VNを基準とすると、平滑コンデンサ22のケース電位は0Vから141Vの間の値となり、平滑コンデンサ21のケース電位は、141Vから282Vの間の値となる。
【0024】
図2は、
図1における制御回路104の構成例を示す回路図である。
図2に示される制御回路104は、電流検出抵抗41と、増幅回路42と、マイクロコントローラ43と、ゲートドライバ44とを備える。電流検出抵抗41は、インバータ回路103に流れる電流を、例えば~1V程度の電圧信号に変換し、当該電圧信号を増幅回路42に出力する。増幅回路42は、入力された電圧信号を数V程度まで増幅し、それを電流検出信号としてマイクロコントローラ43に出力する。
【0025】
マイクロコントローラ43は、入力された電流検出信号に基づき、数V程度の駆動信号をゲートドライバ44に出力する。ゲートドライバ44は、マイクロコントローラ43からの駆動信号に基づき、例えば、十数V程度のゲート信号をインバータ回路103に出力する。増幅回路42やマイクロコントローラ43は、図示は省略されるが、例えば、直流電圧の低側電位VNを基準とした数V程度の電源電圧によって動作する。
【0026】
この様に、インバータ回路103は、直流電圧の低側電位VNを基準に282V程度の電圧を扱う強電部であるのに対し、制御回路104は、直流電圧の低側電位VNを基準に数~十数V程度の電圧を扱う弱電部である。なお、マイクロコントローラ43やゲートドライバ44の電源電圧は、例えば、図示しない電源回路によって別途生成される。
【0027】
<電力変換装置の外形>
図3は、
図1に示される電力変換装置の外形例を示す鳥瞰図であり、
図4は、
図3に示される電力変換装置を別方向から見た側面図である。
図3および
図4に示される電力変換装置1aは、
図1に示した構成例に対し、主要な大型部品として、主回路基板(第1の基板)61、主回路端子台62、電線71~73、および過電圧保護素子81が追加されている。また、
図3および
図4では、互いに直交する方向を、幅方向W、奥行方向D、高さ方向Hとし、幅方向Wおよび高さ方向Hで定められる面方向を、主回路基板61の面方向に定めている。
図4には、奥行方向Dおよび高さ方向Hで定められる面を側面とした場合の外形例が示される。
【0028】
主回路基板(第1の基板)61には、整流回路101、インバータ回路103、制御回路104、限流抵抗51、リレー52、主回路端子台62、および過電圧保護素子81が実装される。これらは、主回路基板61上の配線パターンを介して適宜接続されている。主回路端子台62には、交流電圧2の入力端子や、モータ3への出力端子といった主回路電流を通電するための端子が設けられる。主回路端子台62に入力された交流電圧2は、主回路基板61上の配線パターンを介して、一方は整流回路101に、他方は、限流抵抗51およびリレー52、すなわち突入電流制限回路105にそれぞれ伝送される。
【0029】
主回路基板61において、整流回路101から出力される直流電圧の高側電位VPのノード、低側電位VNのノード、および突入電流制限回路105の出力ノードは、電線71~73を介して平滑コンデンサ21,22の正極端子および負極端子に接続される。具体的には、主回路基板61における高側電位VPのノードは、電線71を介して平滑コンデンサ21の正極端子に接続される。主回路基板61における低側電位VNのノードは、電線73を介して平滑コンデンサ22の負極端子に接続される。突入電流制限回路105の出力ノード、ひいては、交流電圧2の負極側のノードは、電線72を介して平滑コンデンサ21の負極端子および平滑コンデンサ22の正極端子に共通に接続される。
【0030】
また、主回路基板61において、直流電圧の高側電位VPおよび低側電位VNの各ノードは、主回路基板61上の配線パターンを介してインバータ回路103にも接続される。インバータ回路103から出力される3相の交流電圧は、主回路基板61上の配線パターンを介して主回路端子台62に伝送される。制御回路104は、この例では、主回路基板61上に実装され、
図2に示したように、直流電圧の低側電位VNのノードと、インバータ回路103と、図示しない電源電圧のノードとに、主回路基板61上の配線パターンを介して接続される。
【0031】
過電圧保護素子81は、静電気などの高電圧から半導体素子を保護する目的で設けられる。一例として、過電圧保護素子81は、整流回路101のダイオード11,12を保護する目的で、直流電圧の高側電位VPと低側電位VNとの間や、交流電圧2の線間等に接続されるバリスタ素子等である。
【0032】
ここで、例えば、特許文献1において、平滑コンデンサ21,22は、その最長サイズを定める軸方向が主回路基板61の面に対する略垂直方向となるように、主回路基板61上に配置される。特に、
図4に示されるように、同一の面に正極端子と負極端子とを備えた電解コンデンサを用いる場合、通常、このような配置になり得る。しかしながら、この場合、平滑コンデンサ21,22における最長サイズが増大すると、
図3における奥行方向Dのサイズが増大することで電力変換装置の大型化が生じ得る。
【0033】
そこで、
図3および
図4に示される電力変換装置1aでは、平滑コンデンサ21,22のそれぞれは、最長サイズを定める軸方向、この例では高さ方向Hが、主回路基板61の面方向と略平行になるように配置されている。これにより、
図3における奥行方向Dのサイズの増大を抑制でき、電力変換装置1aの小型化を実現できる。
【0034】
さらに、高側電位VPを出力する平滑コンデンサ21は、低側電位VNを出力する平滑コンデンサ22よりも制御回路104から離れた位置に配置されている。この例では、制御回路104は、主回路基板61に実装されているため、平滑コンデンサ21は、平滑コンデンサ22よりも主回路基板61から離れた位置に配置されている。具体的には、この例では、平滑コンデンサ21は、奥行方向Dにおいて、平滑コンデンサ22に積層搭載されている。
【0035】
前述したように、平滑コンデンサ21のケース電位は、直流電圧の高側電位VPと交流電圧2の間の大きさとなり、平滑コンデンサ22のケース電位は、交流電圧2と直流電圧の低側電位VNの間の大きさとなる。従って、制御回路104のように、直流電圧の低側電位VNを基準に動作する弱電部と、平滑コンデンサ21とが近接した場合、弱電部と平滑コンデンサ21のケースとの空間に、最低でも141V程度の電位差が生じ得る。その結果、平滑コンデンサ21から弱電部へ大きなノイズが伝搬され、制御回路104等の誤動作が生じるおそれがある。
【0036】
そこで、
図3および
図4に示されるように、平滑コンデンサ21を、主回路基板61から奥行方向Dに適切な距離を設けて配置することが有益となる。これにより、制御回路104等の誤動作を防止でき、前述した電力変換装置1の小型化に加えて、安定動作を実現することが可能になる。なお、ここでは、平滑コンデンサ21,22は、同一の面に正極端子と負極端子とを備えたが、場合によっては、対向する2個の面の一方に正極端子を、他方に負極端子を備えてもよい。この場合、
図4において、例えば、平滑コンデンサ21,22の右側に電線71,73が接続され、左側に電線72が接続されるような構成となる。
【0037】
また、
図3および
図4では、平滑コンデンサ21,22が奥行方向Dに積層搭載される例を示したが、平滑コンデンサ22よりも平滑コンデンサ21の方が制御回路104から離れた位置に配置される限り、平滑コンデンサ21,22の配置は適宜変更されてもよい。ただし、例えば、
図3において、制御回路104と平滑コンデンサ22と平滑コンデンサ21とを順に幅方向Wに並べた場合、主回路基板61の面積が大きくなり得る。一方、主回路基板61の面積は、電力変換装置1の適用先の都合で制約される場合がある。この観点では、平滑コンデンサ21,22は、奥行方向Dに並べることが望ましい。
【0038】
さらに、実施の形態1の方式は、平滑コンデンサ21,22が直列に接続される構成であれば、単相の倍電圧整流回路に限らず、三相全波整流回路等の他の回路に適用することも可能である。一例として、三相全波整流回路において、耐圧を容易に確保する観点から、400V耐圧仕様の1個の平滑コンデンサを、直列接続された200V耐圧仕様の2個の平滑コンデンサに置き換えたような構成にも適用され得る。この場合、
図4において、電線72は、平滑コンデンサ21の負極端子と平滑コンデンサ22の正極端子とを接続するが、主回路基板61に接続される必要はない。
【0039】
また、図示は省略されるが、平滑コンデンサ21,22は、主回路基板61に対して、様々な方式を用いて固定され得る。例えば、電線71~73を、剛性の高い銅バー等で構成する方式が挙げられる。または、主回路基板61と平滑コンデンサ22、および、平滑コンデンサ22と平滑コンデンサ21を、それぞれ接合部材で固定する方式が挙げられる。あるいは、電力変換装置1aを収納する図示しないカバー部材を利用し、平滑コンデンサ21,22を固定できるようにカバー部材の形状を定める方式や、当該カバー部材に平滑コンデンサ21,22を固定するためのホルダーを取り付ける方式等が挙げられる。
【0040】
<実施の形態1の主要な効果>
以上、実施の形態1の方式では、平滑コンデンサ21,22は、最長サイズを定める軸方向が主回路基板61の面方向と略平行になるように配置され、高側電位VPを出力する平滑コンデンサ21は、低側電位VNを出力する平滑コンデンサ22よりも制御回路104から離れた位置に配置される。これにより、電力変換装置1,1aにおいて、小型化と安定動作とを両立することが可能になる。
【0041】
(実施の形態2)
<電力変換装置の外形>
図5は、実施の形態2による電力変換装置において、
図3とは異なる外形例を示す鳥瞰図であり、
図6は、
図5に示される電力変換装置を別方向から見た側面図である。
図5および
図6に示される電力変換装置1bでは、
図3に示した構成例に対して、コンデンサ基板(第2の基板)63が追加されている。コンデンサ基板63は、主回路基板61の面に対する略垂直方向を面方向として配置される。すなわち、コンデンサ基板63の面方向は、幅方向Wおよび奥行方向Dで定められる面方向である。
【0042】
図3および
図4に示した構成例では、平滑コンデンサ21,22は、電線71~73のみを介して主回路基板61に接続されていた。従って、
図3および
図4に示した構成例を用いて平滑コンデンサ21,22を主回路基板61に固定するためには、例えば、電線71~73に銅バー等を適用する等、何からの工夫が必要であった。
【0043】
一方、
図5および
図6では、コンデンサ基板63が設けられ、平滑コンデンサ21,22は、当該コンデンサ基板63に実装されている。コンデンサ基板63は、平滑コンデンサ21,22を接続するためのスルーホールを備えており、平滑コンデンサ21,22は当該スルーホールにはんだ等で接続されることで、コンデンサ基板63に固定される。
【0044】
電線71~73は、一端が、コンデンサ基板63に設けたスルーホールにはんだ等で接続され、他端が、主回路基板61に設けたスルーホールにはんだ等で接続される。これにより、平滑コンデンサ21,22は、コンデンサ基板63を介して主回路基板61に物理的に固定される。また、平滑コンデンサ21,22の正極端子および負極端子は、コンデンサ基板63と、電線71~73とを介して主回路基板61に電気的に接続される。
【0045】
図7は、
図5において、コンデンサ基板63の主回路基板61への物理的な固定方法の一例を示す図である。なお、
図7では、基板同士の接触部分を明確に示すため、平滑コンデンサ21,22は図示されない。
図7に示されるように、コンデンサ基板63の端部には、奥行方向Dに突出するように、突起部が形成されている。一方、主回路基板61には、当該コンデンサ基板63の突起部に嵌合する開口部が形成されている。
【0046】
図7に示す通り、コンデンサ基板63に設けた突起部を主回路基板61に設けた開口部に嵌合させることで、コンデンサ基板63を主回路基板61に対して自立させることが可能となる。また、コンデンサ基板63と主回路基板61との位置関係が、固定的に定められるため、主回路基板61に対する平滑コンデンサ21,22の位置も、固定的に定められる。
【0047】
ここで、
図5~
図7に示した電力変換装置1bは、例えば、次のような手順で組み立てられる。まず、電線71~73の一端が、コンデンサ基板63にはんだ付けされ、続いて、平滑コンデンサ21,22がコンデンサ基板63に実装される。その後、コンデンサ基板63が主回路基板61に取り付けられ、電線71~73の他端が主回路基板61にはんだ付けされる。この際に、
図7に示したように、コンデンサ基板63を主回路基板61に挿入できる仕組みを用いることで、位置決めを含めた一連の組み立て工程を容易化することができる。
【0048】
なお、ここでは、コンデンサ基板63を、主回路基板61に対する平滑コンデンサ21,22の物理的な固定手段として用いたが、加えて、電気的な接続手段として用いることも可能である。具体的には、例えば、主回路基板61に電気端子を含んだスロットを実装し、コンデンサ基板63の端部に、平滑コンデンサ21,22の正極端子および負極端子に配線パターンを介して接続される電気端子を形成する。当該コンデンサ基板63の端部は、主回路基板61のスロットに挿入される。これにより、コンデンサ基板63と主回路基板61は、物理的に固定され、また、電気的にも接続される。
【0049】
ただし、この場合、主回路基板61には、大電流に対応した比較的大型のスロットを設ける必要がある。この場合、主回路基板61上にスロットの実装領域を大きく確保する必要があり、さらに、スロットの部品コストも必要とされる。一方、
図5~
図7に示したような方式を用いる場合、このようなスロットの実装領域は不要となり、さらに、スロットの部品コストも必要とされない。
【0050】
<実施の形態2の主要な効果>
以上、実施の形態2の方式を用いることで、実施の形態1で述べた各種効果と同様の効果が得られる。さらに、コンデンサ基板63を設けることで、実施の形態1の方式と比較して、部品コストは増大し得るが、主回路基板61に対して平滑コンデンサ21,22を物理的に固定し易くなり、また、組み立て工程を容易化することも可能になる。
【0051】
(実施の形態3)
<電力変換装置の外形>
図8は、実施の形態3による電力変換装置において、
図5とは異なる外形例を示す鳥瞰図であり、
図9は、
図8に示される電力変換装置を別方向から見た側面図である。
図8および
図9に示される電力変換装置1cでは、
図5に示した構成例に対して、2個の接合部材64が追加されている。2個の接合部材64の一方は、平滑コンデンサ22と主回路基板61とを物理的に接合し、2個の接合部材64の他方は、平滑コンデンサ21と平滑コンデンサ22とを物理的に接合する。
【0052】
例えば、実施の形態2で述べた方式によって、平滑コンデンサ21,22の位置を、主回路基板61、コンデンサ基板63を介して定めた場合、寸法公差により平滑コンデンサ22と主回路基板61の間や、平滑コンデンサ21と平滑コンデンサ22の間に間隙を生じ得る。当該間隙は、例えば、輸送中等に製品が振動した際に、平滑コンデンサ21,22の振動を誘発するおそれがある。このため、当該間隙を絶縁物により埋めて、平滑コンデンサ21,22を固定することが望まれる。
【0053】
そこで、
図8および
図9に示される電力変換装置1cは、当該間隙に対し、接合部材64を適用することにより間隙を埋める構成となっている。接合部材64として、具体的には、接着剤や、粘着テープや、硬化性ゴム等を適用可能である。
【0054】
<実施の形態3の主要な効果>
以上、実施の形態3の方式を用いることで、実施の形態2で述べた各種効果と同様の効果が得られる。さらに、接合部材64によって、主回路基板61に対して平滑コンデンサ21,22をより強固に固定することが可能になる。
【0055】
(実施の形態4)
<電力変換装置の外形>
図10は、実施の形態4による電力変換装置において、
図8とは異なる外形例を示す鳥瞰図である。
図10に示される電力変換装置1dでは、
図8に示した構成例に対して、主回路基板61に電気的に接続される制御基板(第3の基板)65が追加されている。制御基板65は、コンデンサ基板63と同様に、主回路基板61の面に対する略垂直方向を面方向として配置されている。
【0056】
具体的には、制御基板65は、主回路基板61の片方の面上において、コンデンサ基板63と略直交する向きに配置されている。すなわち、制御基板65の面方向は、奥行方向Dおよび高さ方向Hで定められる面方向であり、コンデンサ基板63の面方向は、奥行方向Dおよび幅方向Wで定められる面方向である。制御回路104は、
図8の場合のような主回路基板61上ではなく、制御基板65上に実装される。
【0057】
このため、高側電位VPを出力する平滑コンデンサ21は、低側電位VNを出力する平滑コンデンサ22よりも、制御回路104を実装した制御基板65から離れた位置に配置されている。また、制御回路104等からの弱電信号は、制御基板65を介して主回路基板61上にも伝送される。このため、平滑コンデンサ21は、平滑コンデンサ22よりも、主回路基板61からも離れた位置に配置されている。
【0058】
ここで、実施の形態1で述べた弱電部は、制御回路104に限らず、例えば、外部インタフェースとの通信回路、制御用の電源回路、機能安全回路等のように、電力変換装置の機能次第で種々の回路を含み得る。このような機能追加に伴い、主回路基板61に弱電部の実装領域を十分に確保できない場合、主回路基板61の面積、すなわち幅方向Wまたは高さ方向Hのサイズを拡大するのではなく、
図10に示したような制御基板65を別途設けることが有益となる。この場合、例えば、制御基板65は弱電部を担い、主回路基板61は強電部を担う。
【0059】
図10に示した例では、制御基板65は、平滑コンデンサ21,22の積層方向と同じ方向、すなわち奥行方向Dに延伸している。このため、電力変換装置1dの大型化を抑制することができる。また、この際には、装置サイズの観点で、制御基板65の奥行方向Dのサイズは、積層された平滑コンデンサ21,22の奥行方向Dのサイズを可能な限り超えないことが望ましい。
【0060】
なお、
図10に示した例では、制御基板65は、主回路基板61に対して略垂直に配置されているが、この限りではなく、場合によっては、主回路基板61に対して略平行に配置されてもよい。また、制御基板65の寸法は、電力変換装置の仕様次第であり、
図10に示した寸法に限らない。
【0061】
<実施の形態4の主要な効果>
以上、実施の形態4の方式を用いることで、実施の形態3で述べた各種効果と同様の効果が得られる。さらに、制御基板65を設けることで、電力変換装置1dの大型化を抑制しつつ、弱電部の実装面積を拡大することが可能になり、その上で、弱電部から平滑コンデンサ21を遠ざけることで、電力変換装置1dの安定動作を実現できる。
【0062】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1、1a~1d 電力変換装置
101 整流回路
103 インバータ回路
104 制御回路
21,22 平滑コンデンサ
61 主回路基板
63 コンデンサ基板
64 接合部材
65 制御基板
71~73 電線
VP 高側電位
VN 低側電位