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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087319
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】低反射性積層体、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20240624BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20240624BHJP
【FI】
G02B5/00 B
C09D11/102
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202075
(22)【出願日】2022-12-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松代 穗
【テーマコード(参考)】
2H042
4J039
【Fターム(参考)】
2H042AA06
2H042AA09
2H042AA21
2H042AA22
2H042AA23
4J039AE04
4J039BA04
4J039BC13
4J039BC16
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE12
4J039EA19
4J039EA48
4J039FA02
4J039FA04
4J039GA04
4J039GA34
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、低反射性に優れ、かつ遮光性にも優れた、黒色インキおよび低反射性積層体を提供することである。
【解決手段】
基材上に、黒色インキ層を有する低反射性積層体であって、前記黒色インキ層が、ウレタン樹脂を含むバインダー樹脂、カーボンブラック及び樹脂微粒子を含有するスクリーン印刷インキからなり、前記バインダー樹脂100質量%に対する、樹脂微粒子の含有量が、280~450質量%であり、前記カーボンブラックの平均粒子径が、50~250nmである低反射性積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、黒色インキ層を有する低反射性積層体であって、
前記黒色インキ層が、ウレタン樹脂を含むバインダー樹脂、カーボンブラック及び樹脂微粒子を含有する印刷インキからなり、
前記バインダー樹脂100質量%に対する、前記樹脂微粒子の含有量が、280~450質量%であり、
前記カーボンブラックの平均粒子径が、50~250nmである低反射性積層体。
【請求項2】
印刷インキが、スクリーン印刷用である、請求項1に記載の低反射性積層体。
【請求項3】
黒色インキ層の膜厚が、10~60μmである請求項1に記載の低反射性積層体。
【請求項4】
樹脂微粒子の平均粒子径が、0.5~15μmである請求項1又は2に記載の低反射性積層体。
【請求項5】
黒色インキ層の表面粗さRaが、3~5μmである請求項1又は2に記載の低反射性積層体。
【請求項6】
樹脂微粒子の屈折率が、1.4~1.6である請求項1又は2に記載の低反射性積層体。
【請求項7】
印刷インキが、ケトン系有機溶剤からなる有機溶剤(A)、並びに、グリコールエーテル系有機溶剤、エステル系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤及び芳香族系有機溶剤から選ばれる少なくとも一種の有機溶剤(B)を含む、請求項1又は2に記載の低反射性積層体。
【請求項8】
有機溶剤(A)と有機溶剤(B)の沸点の差が、10~80℃である、請求項7記載の低反射性積層体。
【請求項9】
基材上に、印刷インキをスクリーン印刷して黒色インキ層を形成する工程を含む低反射性積層体製造方法であって、
前記印刷インキが、ウレタン樹脂を含むバインダー樹脂、カーボンブラック及び樹脂微粒子を含有し、
前記バインダー樹脂100質量%に対する、前記樹脂微粒子の含有量が、280~450質量%であり、
前記カーボンブラックの平均粒子径が、50~250nmである、低反射性積層体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低反射性積層体に関する。特に、基材上に黒色インキ層を有する低反射性積層体に関する。
【0002】
より具体的には、基材上に黒色インキ層を有し、前記黒色インキ層表面の低反射性、及び遮光性に優れた低反射性積層体に関する。
【背景技術】
【0003】
イメージングの分野では、一眼レフカメラ、スマートフォン等のカメラモジュールで、不要な入射光や反射光を除去し、画質低下の要因となるフレアやゴースト等の発生を抑制する等の観点から、レンズの側面やレンズの縁に低反射性を有する黒色インキが塗布されている。一方でセンシングの分野では、物体認識や3次元計測を目的として、レーザー光を用いて距離を計測してセンシングするToF(Time of Flight)方式センサーの需要が増している。このToFセンサーについても、光源レーザーの内部反射を抑制する目的で、光源周囲に低反射性塗料が塗布されている。
【0004】
イメージング及びセンシングの分野以外では、消費財向け包装パッケージ分野において、低反射性を有する黒色インキの漆黒性による意匠性付与が期待されている。
【0005】
上記のイメージングやセンシングという光学用途では、バインダー樹脂、カーボンブラック、疎水化処理された乾式シリカ、粗し粒子、染料および溶剤を含有する霧化塗布用表面反射防止塗料を使用する表面反射防止塗膜の例がある(特許文献1)。しかし、この方法は、カーボンブラックと染料との併用により黒色性を付与しているが、染料は耐光性が低いため、経時により低反射性が劣化する懸念がある。また、この組成物は霧化塗布用であり、印刷インキではなく、例えば、スクリーン印刷インキに適用しても、凹凸を形成する効果小さくが低反射性が得られにくいと考えられる。また艶消し剤としてのシリカの量が過剰であり耐擦傷性、逆艶において劣る可能性がある。
【0006】
特許文献2には、カーボンブラック用いた低反射フィルム、及びこれを用いた光学センシングキット、並びに低反射成形体について記載されている。しかし、カーボンブラックの平均粒子径D50が25nmと小さく、可視光領域での透過性が高いため、遮光性が不十分となる懸念がある。また、アクリル樹脂をバインダー樹脂としているため基材密着性等に懸念がある。従って低反射性積層体の特性を満足する技術は未だ得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-97730号公報
【特許文献2】WO2020/195693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低反射性、耐光性、耐傷性及び遮光性に優れた低反射性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究した結果、以下の発明によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、基材上に、黒色インキ層を有する低反射性積層体であって、
前記黒色インキ層が、ウレタン樹脂を含むバインダー樹脂、カーボンブラック及び樹脂微粒子を含有する印刷インキからなり、
前記バインダー樹脂100質量%に対する、前記樹脂微粒子の含有量が、280~450質量%であり、
前記カーボンブラックの平均粒子径が、50~250nmである低反射性積層体に関する。
【0011】
また、本発明は、印刷インキが、スクリーン印刷用である、上記低反射性積層体に関する。
【0012】
また、本発明は、黒色インキ層の膜厚が、10~60μmである上記いずれかの低反射性積層体に関する。
【0013】
また、本発明は、樹脂微粒子の平均粒子径が、0.5~15μmである上記いずれかの低反射性積層体に関する。
【0014】
また、本発明は、黒色インキ層の表面粗さRaが、3~5μmである上記いずれかの低反射性積層体に関する。
【0015】
また、本発明は、樹脂微粒子の屈折率が、1.4~1.6である上記いずれかの低反射性積層体に関する。
【0016】
また、本発明は、印刷インキが、ケトン系有機溶剤からなる有機溶剤(A)、並びに、グリコールエーテル系有機溶剤、エステル系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤及び芳香族系有機溶剤から選ばれる少なくとも一種の有機溶剤(B)を含む、上記いずれかの低反射性積層体に関する。
【0017】
また、本発明は、有機溶剤(A)と有機溶剤(B)の沸点の差が、10~80℃である、上記低反射性積層体に関する。
【0018】
また、本発明は、基材上に、印刷インキをスクリーン印刷して黒色インキ層を形成する工程を含む低反射性積層体製造方法であって、
前記印刷インキが、ウレタン樹脂を含むバインダー樹脂、カーボンブラック及び樹脂微粒子を含有し、
前記バインダー樹脂100質量%に対する、前記樹脂微粒子の含有量が、280~450質量%であり、
前記カーボンブラックの平均粒子径が、50~250nmである、低反射性積層体製造方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、低反射性、耐光性、耐傷性及び遮光性に優れた低反射性積層体を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0021】
なお、以下において、「低反射性積層体」のことを単に「積層体」、「黒色インキ」及び「印刷インキ」のことを「インキ」とすることがあるが、同義である。また、「低反射性」は、反射率が3.2%未満を目安とする。
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、基材上に、黒色インキ層を有する低反射性積層体であって、前記黒色インキ層が、ウレタン樹脂を含むバインダー樹脂、カーボンブラック及び樹脂微粒子を含有する印刷インキからなり、前記バインダー樹脂100質量%に対する、樹脂微粒子の含有量が、280~450質量%であり、前記カーボンブラックの平均粒子径が、50~250nmである低反射性積層体に関する。
前記黒色インキ層が、ウレタン樹脂、上記特定範囲の平均粒子径であるカーボンブラックを含み、樹脂微粒子を上記特定範囲とすることで、黒色インキ層が低反射となり、更に、耐光性、耐傷性、遮光性を満足させる低反射性積層体となる。
本発明の低反射性積層体をスマートフォンや車載センサー向けカメラモジュールの鏡筒内部やイメージセンサー周辺に使用することで、ゴーストやフレアといった現象の抑制に寄与できる。ただし、この作用機能は考察によるものであり、本願発明を特段限定するものではない。
【0023】
本発明の代表的な形態は、ガラス等の無機基材に、上記スクリーン印刷インキをスクリーン印刷して形成される黒色インキ層を有する低反射性積層体である。本発明の黒色インキ層は、カーボンブラック、及び樹脂微粒子を含む。当該カーボンブラックの平均粒子径は50~250nmであり、樹脂微粒子の配合量は、バインダー樹脂成分100質量%に対し、280~450質量%であることを必要とする。
【0024】
<黒色インキ層>
本発明の黒色インキ層は、ウレタン樹脂、カーボンブラック、樹脂微粒子を含む。黒色インキ層は、印刷インキを基材に印刷、乾燥することで得られ、得られた印刷物が低反射性積層体となる。
黒色インキ層100質量%中、ウレタン樹脂は、14~22質量%含むことが好ましく、16~20質量%含むことがより好ましい。また、前記バインダー樹脂成分100質量%に対する樹脂微粒子の含有比率は、は280~450質量%であることが好ましく、より好ましくは300~370質量%である。280質量%以上だと、低反射性が良好となり、450質量%以下だと耐傷性が良好となる。
【0025】
(黒色インキ層の表面粗さRa値)
黒色インキ層が、上記所定範囲であるカーボンブラック、及び樹脂微粒子を含み、黒色インキ層表面に一定の大きさの凹凸形状を形成することができ、可視光領域で有効な光吸収効果が得られるため低反射性が良好となる本発明においては、黒色インキ層の表面粗さRaが、3~5μmであると好ましく、3.5~5μmであるとより好ましい。
表面粗さRaとは算術平均粗さであり、形状解析レーザー顕微鏡を用いたJISB0601:2001方式での測定値をいう。
表面粗さRa上記範囲を達成するための具体的手法としては、印刷インキに含むカーボンブラックの平均粒子径を50~250nmとし、樹脂微粒子の含有比率は樹脂に対して280~450質量%とすることが最低限の要件であり、樹脂微粒子の平均粒子径が0.5~15μmであることが好ましく、2~10μmであるとより好ましく、3~7μであると特に好ましい。当該樹脂微粒子凝集により凹凸を形成して黒色感及び低反射とする効果を有する。樹脂微粒子の屈折率は、1.4~1.6であると好ましく、1.45~1.5であるとより好ましい。
またRaを達成するためには、黒色インキ層の膜厚は、具体的にはRa値よりも大きい膜厚であることが必要であるため、5μm以上の膜厚を有することが好ましく、当該膜厚は10~60μmであることが好ましく、12~30μmであることがより好ましい。膜厚が10μm以上だと、遮光性が良好となり、60μm以下だと、膜の表面欠陥が生じにくく良好な表面状態となる。
表面粗さRa上記範囲を達成するための具体的手法としては、印刷インキの粘度との関係上、スクリーン印刷方式であることが好ましく、ディップコート、ディスペンサーでの印刷もまた好ましい。印刷時の粘度は、700~12000cpsであることが好ましく、1000~8000cpsであることが好ましく3000~5000cpsであることが好ましい。
またRaを達成するためには、例えば、印刷インキは後述の様に、有機溶剤(A)と有機溶剤(B)とを含み、有機溶剤(A)が、ケトン系有機溶剤であり、前記有機溶剤(B)が、グリコールエーテル系有機溶剤、エステル系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤、芳香族系有機溶剤から選ばれる少なくとも一種を含み、有機溶剤(A)と有機溶剤(B)の沸点の差が、10~80℃であることが好ましい。スクリーン印刷インキに含まれる有機溶剤の乾燥速度に差があることで、有機溶剤の乾燥が段階的になり、低反射性に効果的な凹凸形状を形成することができる。更に、上記印刷インキを印刷する際には、乾燥時間を短くするため、80℃以上の温度で乾燥させることが好ましい。乾燥時間が短いことで、上記表面粗さRaが得られる。
【0026】
(黒色インキ層の透過濃度)
本発明の低反射性積層体は黒色インキ層の透過濃度が1.0以上であることが好ましい。ここでいう透過濃度とは、光学濃度計を用いて測定した値であり、垂直透過光束を積層体に照射し、積層体が無い状態との比を対数で表したものである。黒色インキ層の透過濃度が1.0以上とするためには印刷インキにおいてカーボンブラックの含有量を2質量%以上とすることが好ましく、3質量%以上とすることがより好ましい。また、積層体においては、5μm以上のドライ膜厚とすることが好ましく、これらによって優れた遮光性という効果を有する。
【0027】
(ウレタン樹脂)
本発明の黒色インキ層においては、ウレタン樹脂を含むバインダー樹脂として結着材となる。ウレタン樹脂は柔軟性やゴム弾性に優れており、高い基材密着性を有する。更には、高温・低温環境下に繰り返しさらした場合でも、塗膜にクラックが発生しにくく、耐冷熱衝撃性が高いため好ましい。
本発明においては、公知のウレタン樹脂を用いることができるが、ポリオールと、ポリイソシアネートとの反応で得られるウレタン結合を有するウレタン樹脂が好ましい。また、前記ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられ、ポリエーテルポリオールを用いたウレタン樹脂であることが好ましい。ポリエーテルポリオールを用いることで、ウレタン樹脂がポリエーテル由来の構造単位を有するものとなる。ウレタン樹脂がポリエーテル由来の構造単位を有すると、インキの印刷適性が良好になる。
また、本発明の効果を損なわない範囲で他の樹脂を併用してもよい。
【0028】
ウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、50,000~100,000が好ましく、70,000~90,000がより好ましい。重量平均分子量が50,000以上になることで、耐冷熱衝撃性が良好になる。また、重量平均分子量が100,000以下になることで、耐傷性が良好になる。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミッションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の数値である。
【0029】
ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-35℃~10℃であることが好ましく、-20~5℃であることが更に好ましい。Tgが-35℃以上であると、耐傷性が良好になる。Tgが10℃以下であると、インキと基材との密着性が良好になる。
なお、Tgは、DSC(示差走査熱量計)にて測定した数値である。
ウレタン樹脂の含有量は、有機溶剤等の媒体を含めたインキ中に含まれる全質量に対し、4~11質量%であることが好ましく、5~9質量%であることがなお好ましく、5~7質量%であることが更に好ましい。インキ中での分散安定性が向上するためである。ウレタン樹脂の具体例としては、例えば、DIC社製のパンデックス4030、パンデックス4110、パンデックス P-910、パンデックス P-895等が挙げられる。
【0030】
(カーボンブラック)
本発明で用いるカーボンブラックとしては、公知なものを使用でき、カラーインデックス(Colour Index International、略称C.I.)のC.I.ナンバーで示すと、C.I.ピグメントブラック7が挙げられる。本発明で用いるカーボンブラックの平均粒子径は、50~250nmであり、100~200nmであるとより好ましい。平均粒子径が50~250nmであると、遮光性が良好であり、50nm以上であるとインキの流動性が良好であり、250nm以下であると低反射性が良好である。なお、本発明における平均粒子径とは、動的光散乱法での測定におけるD50粒子径をいい、例えば、マイクロトラック(マイクロトラック・ベル株式会社製、商品名「MT3300EXII」)により測定することができる。
【0031】
上記カーボンブラックの吸油量は、10~150cm/100gであると好ましく、20~100cm/100gであるとより好ましい。吸油量がこの範囲にあると、印刷物の濃度が十分に得られ、遮光性が良好となる。当該吸油量は、JIS K6221に準拠し、カーボンブラック100gが吸収する DBP(ジブチルフタレート)量を測定したものである。カーボンブラックの比表面積(窒素吸着法)は、5~200m/gであると好ましく、10~150m/gであるとより好ましい。比表面積がこの範囲にあると、印刷適性が良好となる。
【0032】
カーボンブラックの含有量は、インキの総質量に対して2~10質量%であることが好ましく、3~6質量%であるとより好ましい。カーボンブラックを2質量%以上含むことで、遮光性が良好となり、10質量%以下にすることで、印刷適性が良好となる。
【0033】
上記を満たすカーボンブラックの具体例としては、ミツビシカーボン#10、ミツビシカーボン#20、ミツビシカーボンMA220(三菱化学株式会社製)、シーストS、シーストSP、シーストTA、(東海カーボン株式会社製)、SUNBLACK235、旭#8、旭#15(旭カーボン株式会社製)等が挙げられる。
【0034】
(艶消し剤)
上記印刷インキは、艶消し剤として樹脂微粒子を含む。艶消し剤は、無機微粒子、樹脂微粒子を含んでよいが、樹脂微粒子を含むことを必須とする。低反射性の向上のため、艶消し剤総質量中、樹脂微粒子を60~100質量%含むことが好ましく、80~100質量%含むとより好ましく、90~100質量%含むと更に好ましい。
【0035】
(樹脂微粒子)
上記バインダー樹脂成分100質量%に対する樹脂微粒子の含有比率は、280~450質量%であることが好ましく、300~360質量%であるとより好ましい。含有比率が280~450質量%であることで、低反射性、耐傷性が良好となる。印刷インキ総質量中、樹脂微粒子成分の含有比率は18~26質量%であることが好ましく、20~24質量%であるとより好ましい。
【0036】
樹脂微粒子の平均粒子径は、0.5~15μmであると好ましく、2~10μmであるとより好ましく、3~7μであると特に好ましい。平均粒子径が0.5μm以上であると、黒色インキ層表面に微細な凹凸を形成できるため、低反射性が良好であり、15μm以下であると、黒色インキ層表面の耐傷性が良好である。
【0037】
本発明で用いる樹脂微粒子の屈折率は、1.4~1.6であると好ましく、1.45~1.5であるとより好ましい。屈折率が上記範囲であると、低反射性が良好である。
【0038】
樹脂微粒子としては好適なものは、例えば、ポリエステル樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、メラミン樹脂微粒子、メラミン・ベンゾグアナミン樹脂微粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、ウレタン樹脂微粒子及びセルロース樹脂微粒子等が挙げられ、中でもポリエステル樹脂微粒子及び/又はアクリル微粒子が好ましく、ポリエステル樹脂微粒子が更に好ましい。ただし、本発明に適用できる樹脂微粒子はこれらに限定されない。
【0039】
ポリエステル樹脂微粒子としては、ポリヒドロキシアルカン酸からなるポリエステル樹脂微粒子、二塩基酸とジオールの縮合物からなるポリエステル樹脂微粒子及びポリ乳酸樹脂微粒子等が挙げられる。
ポリヒドロキシアルカン酸からなるポリエステル樹脂微粒子、二塩基酸とジオールの縮合物からなるポリエステル樹脂微粒子であるポリエステル樹脂微粒子が好ましい。ポリヒドロキシアルカン酸からなるポリエステル樹脂微粒子であることがより好ましい。また、ポリエステル樹脂微粒子としては、生分解性樹脂で形成されたポリエステル樹脂微粒子を用いることも好ましい。
【0040】
ポリエステル樹脂微粒子の具体例としては、テクポリマーTP-MGシリーズ(積水化成品工業株式会社製)が挙げられる。また、ポリエステル微粒子の製造方法としては、特開2007-191617号や特開平5-194141号に記載の手法が挙げられる。
【0041】
アクリル樹脂微粒子の具体例としては、エポスターMA1002、エポスターMA1004、エポスターMA1006、エポスターMA1010(株式会社日本触媒製)、タフチックFH-S005、タフチックFH-S008、タフチックFH-S010、タフチックFH-S015、タフチックFH-S020(東洋紡株式会社製)、ケミスノーMX-80H3wT、MX-150、MX-180TA、MX-300、MX-500、MX-1000、MX-1500H、MX-2000、MX-3000(綜研化学株式会社製)等が挙げられる。
【0042】
メラミン樹脂微粒子の具体例としては、エポスターSS、エポスターS、エポスターFS、エポスターS6、エポスターS12(株式会社日本触媒製)等が挙げられる。
メラミン・ベンゾグアナミン樹脂微粒子の具体例としては、エポスターM30(株式会社日本触媒製)が挙げられる。
【0043】
ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂微粒子の具体例としては、エポスターMS、エポスターL15(株式会社日本触媒製)等が挙げられる。
【0044】
メラミン樹脂微粒子の具体例としては、エポスターSS、エポスターS、エポスターFS、エポスターS6、エポスターS12(株式会社日本触媒製)等が挙げられる。
メラミン・ベンゾグアナミン樹脂微粒子の具体例としては、エポスターM30(株式会社日本触媒製)が挙げられる。
【0045】
ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂微粒子の具体例としては、エポスターMS、エポスターL15(株式会社日本触媒製)等が挙げられる。
【0046】
フッ素樹脂微粒子の具体例としては、KTL-1N、KTL-2N、KTL-8N(株式会社喜多村製)、Shamrock SST-3D、Shamrock SST-4MG(Shamrock Technologies社製)等が挙げられる。
【0047】
ウレタン微粒子の具体例としては、アートパールC-1000透明、アートパールC-600透明、アートパールC-400透明、アートパールC-800、アートパールMM-120T、アートパールJB-800T、アートパールJB-600T、アートパールP-800T、アートパールP-400T(根上工業株式会社製)などの架橋ウレタンビーズ等が挙げられる。
【0048】
(有機溶剤)
上記印刷インキは有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶剤としては、グリコールエーテル系有機溶剤、エステル系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤、芳香族系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、ケトン系有機溶剤等を挙げることができ、中でも、バインダー樹脂であるウレタン樹脂の溶解性が良好な下記有機溶剤(A)及び有機溶剤(B)を含むことが好ましい。中でもケトン系有機溶剤、及び、印刷適性が良好なグリコールエーテル系有機溶剤を用いることが好ましい。
【0049】
(有機溶剤(A))
上記有機溶剤(A)とは、ケトン系有機溶剤である。ケトン系有機溶剤は、環状骨格を有する環状ケトン系有機溶剤と、環状骨格を有さないケトン系有機溶剤に分類できる。中でも、印刷適性の観点から、環状ケトン系有機溶剤を用いることが好ましい。
【0050】
環状ケトン系有機溶剤としては、分子内に、5~7員環の環状ケトン構造を含む有機溶剤が好ましい。5員環の環状ケトン系有機溶剤としては、シクロペンタノン、2-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、2-メチルシクロペンタノン、3-メチルシクロペンタノン、2-エチルシクロペンタノン、3-エチルシクロペンタノン、2,2-ジメチルシクロペンタノン、2,4,4-トリメチルシクロペンタノン等が挙げられる。
6員環の環状ケトン系有機溶剤としては、シクロヘキサノン、イソホロン、2-シクロヘキセン-1-オン、2-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、4-メチルシクロヘキサノン、4-エチルシクロヘキサノン、2,6-ジメチルシクロヘキサノン、2,2-ジメチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
7員環の環状ケトン系有機溶剤としては、シクロペプタノン、2-シクロペプタン-1-オン等が挙げられる。
【0051】
環状骨格を有さないケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。
【0052】
(有機溶剤(B))
本発明において、有機溶剤(B)は、グリコールエーテル系有機溶剤、エステル系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤、芳香族系有機溶剤から選ばれる少なくとも一種を含む。中でも、印刷適性の観点から、グリコールエーテル系有機溶剤を含むことが好ましい。ただし、有機溶剤(B)は上記有機溶剤(A)を含む場合を除く。
【0053】
グリコールエーテル系有機溶剤としては、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0054】
エステル系有機溶剤としては、ガンマーブチロラクトン、セロソルブアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、プロピレンカルボナート等が挙げられる。
【0055】
脂肪族系有機溶剤としては、ノルマルパラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、シクロパラフィン系溶剤等が挙げられる。
【0056】
芳香族系有機溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ナフタレン、テトラリン、ソルベントナフサの他、芳香族系に富む溶媒としてスワゾール(コスモ石油社製、丸善石油化学社製)ソルベッソ(エクソンモービル社製)、カクタスファイン(ジャパンエナジー社製)等が挙げられる。
【0057】
本発明においては、インキの乾燥工程が重要である。低沸点溶剤の揮発と高沸点溶剤の揮発という2段階の揮発過程を設けることで樹脂微粒子の配向が可能となり、それによって特定の表面粗さRaを有する凹凸構造の形成という作用があるため、有機溶剤(A)の沸点よりも有機溶剤(B)の沸点の方が高い方が好ましい。また、沸点の差が10℃~80℃であると好ましく、10~50℃であるとより好ましい。沸点の差が上記範囲である有機溶剤を用いることで、低反射性が向上する。
【0058】
有機溶剤は、黒色インキの総質量に対して、40~80質量%含まれることが好ましく、50~70質量%含まれることがより好ましい。樹脂の溶解性が向上するためである。
有機溶剤(A)と有機溶剤(B)は任意の比率で配合することが可能だが、質量比として有機溶剤(A)/有機溶剤(B)=10/90~50/50であることが好ましい。
【0059】
(硬化剤)
上記印刷インキには、必要に応じて、ポリイソシアネート型硬化剤を本発明の目的を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
【0060】
(添加剤)
上記印刷インキには、必要に応じて、分散剤、消泡剤、レベリング剤、濡れ浸透剤、皮張り防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、防腐剤、防カビ剤、粘度調整剤、pH調整剤等の添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
【0061】
<印刷インキの製造>
本発明で用いられる印刷インキは、ウレタン樹脂、カーボンブラック、樹脂微粒子、有機溶剤、及び、必要に応じて、硬化剤、及び/又は、添加剤を必要量混合し、攪拌機等で良く撹拌する方法、又は、カーボンブラック、分散剤、有機溶剤を含む分散体を先に調製しておき、さらにウレタン樹脂、有機溶剤、硬化剤、及び/又は、添加剤を必要量混合し、攪拌機等で良く撹拌して製造する方法がある。
【0062】
<黒色インキ層の形成>
本発明において、基材に黒色インキ層を形成するための印刷方法としては、スクリーン印刷、ロールコーター、ディスペンサー塗工、ディップコート、刷毛塗り等が挙げられ、中でも、スクリーン印刷が好ましい。印刷機としては、シリンダープレス印刷機や半自動印刷機を使用し、刷版としては、ナイロンやポリエステル等の樹脂素材、ステンレス等の樹脂素材を使用することが好ましい。
【0063】
<基材>
本発明において、積層体を形成するために用いられる基材は特に限定されるものではなく、ソーダガラス、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、白板ガラス等の各種ガラス、石英等の無機材料基材、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル基材、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニルその他のポリオレフィン基材、ポリアミド等のナイロン基材、アクリル基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリカーボネート基材、ウレタン基材、エポキシ基材等の樹脂基材が挙げられる。また、当該基材を用いた積層体であってもよい。シリカ、アルミナ、アルミニウム等の無機化合物を当該基材に蒸着した蒸着基材も用いることができ、更に蒸着処理面がポリビニルアルコール等によるコート処理を施されていてもよい。また、コロナ処理やフレーム処理、延伸処理が施されていてもよい。以上のうち、ガラス等の無機材料基材であることが好ましい。
【0064】
<スクリーン印刷>
スクリーン印刷とは、版にポリエステル、ナイロン等の化学繊維やステンレス製のスクリーンを利用し、版上に感光性乳剤を用いてインキが透過する箇所と透過しない箇所をパターニングした後、インキをスキージと呼ばれるヘラ状のゴム板でスクリーンの内面を加圧・移動させることで、インキを基材に転写させる技法である。また、スクリーンの版枠に対してのメッシュの織方向の角度をバイアス角と呼ぶ。基材面側に塗布された上記感光性乳剤の膜厚により、印刷されるインキの膜厚を調整することができる。
また、印刷時、基材とスキージからなる角度の内、印刷方向の角度をアタック角と呼ぶ。
印刷後は、熱風オーブンを用いて、インキ中の溶剤を揮発させることで、インキを基材に定着させることができる。
【0065】
<低反射性積層体の製造方法>
本発明の低反射性積層体は、基材上に、印刷インキを、スクリーン印刷を含む上記印刷方式で印刷して黒色インキ層を形成することで得られる。印刷速度は50~300mm/secであることが好ましく、100~250mm/secであるとより好ましく、150~200mm/secであると更に好ましい。印刷後の乾燥温度は25~120℃であると好ましく、40~100℃であるとより好ましく、60~80℃であると更に好ましい。これにより低反射性が向上する。
更に印刷時の印刷インキの粘度は、700~12000cpsであると好ましく、1000~8000cpsであるとより好ましく、3000~5000cpsであると更に好ましい。
【実施例0066】
以下、実施例として本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。本発明において、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は、「質量%」をそれぞれ表す。
【0067】
<膜厚>
接触式膜厚計DigiMicro(株式会社ニコン製)を用いて測定した。
【0068】
<表面粗さ>
形状解析レーザー顕微鏡VK-X100(株式会社キーエンス製)を用いて、対物レンズ50倍にて積層体の黒色インキ印刷面の画像を取り込んだ後、JISB0601:2001方式で全画面エリアの算術平均粗さRa(μm)を測定した。
【0069】
<反射率>
紫外可視分光光度計V-760(日本分光株式会社製)を用いて、硫酸バリウム白色板を基準とし、波長400nm~800nm、積分球モードにて反射率(%)を測定した。
【0070】
<配合例1>
撹拌機、温度計を備えた0.3Lのガラス製フラスコに、下記ウレタン樹脂1を6.6部、ブチルセロソルブ(沸点171.2℃)41.3部、シクロヘキサノン(沸点155.6℃)22.2部を仕込み、80℃で2時間攪拌し、固形分10.4質量%のウレタン樹脂ワニスを得た。次に、得られたウレタン樹脂ワニス70.1部、下記カーボンブラック1を3.6部、下記分散剤1.9部、下記消泡剤2.2部を金属製密閉容器に入れ、ガラス製ビーズを用いて、ビーズミル分散を行った。得られたカーボンブラック分散液77.8部に対し、下記ポリエステル樹脂微粒子1を22.2部仕込み、ディスパー攪拌を行い、スクリーン印刷インキS1を得た。
【0071】
<配合例2~14、比較配合例1~9>
表1、表2に記載の原料、配合にて、実施配合例1と同様の所作を行い、スクリーン印刷インキS2~S14、T1~T9を得た。表中、単位の標記のない数値は、部を表し、空欄は配合していないことを表す。
・ウレタン樹脂1:重量平均分子量Mw80000、Tg0℃
・ウレタン樹脂2:重量平均分子量Mw130000、Tg10℃
・アクリル樹脂:重量平均分子量Mw180000、Tg20℃
・カーボンブラック1:平均粒子径150nm 吸油量40cm/100g、比表面積15m/g
・カーボンブラック2:平均粒子径75nm 吸油量78cm/100g、比表面積25m/g
・カーボンブラック3:平均粒子径220nm 吸油量32cm/100g、比表面積15m/g
・カーボンブラック4:平均粒子径350nm 吸油量21cm/100g、比表面積8m/g
・カーボンブラック5:平均粒子径30nm 吸油量113cm/100g、比表面積76m/g
・黒色染料 Solvent Black No.3:平均粒子径200nm
・ポリエステル樹脂微粒子1:平均粒子径5μm、屈折率1.48
・ポリエステル樹脂微粒子2:平均粒子径0.3μm、屈折率1.48
・ポリエステル樹脂微粒子3:平均粒子径18μm、屈折率1.48
・アクリル樹脂微粒子:平均粒子径6μm、屈折率1.49
・ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂微粒子:平均粒子径5μm、屈折率1.66
・フッ素樹脂微粒子:平均粒子径4μm、屈折率1.35
・球状シリカ:平均粒子径4μm、屈折率1.46
・メチルエチルケトン:沸点80℃
・ジエチレングリコールジメチルエーテル:沸点162℃
・分散剤:SOLSPERSE 24000 GR、Lubrizol社製、固形分100%
・消泡剤:DOWIL SH5500 Antifoam Compound、ダウ・ケミカル日本社製、固形分100%
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
<実施例1:積層体G1の作成>
印刷インキS1を用いて、厚み1.1mmのソーダガラス基材上に、スクリーン印刷で5cm×5cmの印刷部を作成した。スクリーン印刷後、80℃のオーブンに1時間投入し、印刷インキを乾燥させた。
【0075】
(スクリーン印刷条件)
メッシュカウント80メッシュ/インチのポリエステルメッシュ上に、印刷インキからなる膜厚20μmの乳剤層を形成し、バイアス角22.5°となるよう製版した。スキージはデュロメーターA硬度で80となるウレタン材質のものを使用。アタック角度75°、スキージ速度100mm/secにてスクリーン印刷を行った。
【0076】
<実施例2~19、比較例1~10:積層体G2~19、H1~9の作成>
表3、表4に記載の印刷インキを用いて、表3、表4に記載の印刷・塗工条件で、基材上に、5cm×5cmの印刷・塗工部を作成した。印刷・塗工後、表3、表4に記載の乾燥条件で、印刷・塗工部を乾燥させた。
比較例10として、印刷インキS1を用いてスプレーによる塗工を試みたが、インキの粘度が高いために塗工することができなかった。
【0077】
(実施例5のスクリーン印刷条件)
メッシュカウント350メッシュ/インチのポリエステルメッシュを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、スクリーン印刷を行った。
【0078】
(実施例4のディスペンサー塗工条件)
小型デジタルディスペンサーML-5000XII(武蔵エンジニアリング株式会社製)を用いて塗工。エア圧0.5MPa、ニードルPresision Tips 5123-B(内径0.33mm)、ディスペンス時間1秒×15回にて条件を設定しディスペンサー塗工を行った。
【0079】
(実施例8のディップコート条件)
基材の非塗工面を保護フィルム(株式会社スミロン製E-75M(B))でマスキングした後、ディップコーターDT0303-S4(株式会社SDI製)を用いて、基材を25℃の黒色インキに1.0mm/secの速度で浸漬させ5秒間保持し、1.0mm/secの速度で黒色インキから引き上げることでディップコートを行った。
【0080】
(乾燥条件)
80℃1時間、40℃1時間、又は25℃24時間のいずれかの条件で乾燥を行った。
【0081】
<評価>
上記実施例及び比較例で得られた積層体について以下の評価を行った。評価結果は表3、表4に示した。
【0082】
<接着性>
黒色インキ層上に碁盤目剥離試験治具を用い1mm2のクロスカットを100個作製した。その後、クロスカット上に粘着テープ(LP24、ニチバン(株)製)を貼り付け、90度方向に剥離し、硬化皮膜の残留碁盤目の数を計測した。評価基準は次の通りである。
5(優):96~100個
4(良):91~95個
3(可):86~90個
2(不可):81~85個
1(劣):80個以下
なお、実用上使用可能な評価は3、4および5である。
【0083】
<遮光性>
透過濃度計Gretag Macbeth TD-931を用いて透過濃度(OD値)を測定した。評価基準は次の通りである。
5(優):OD値 2.0以上
4(良):OD値 1.4以上、2.0未満
3(可):OD値 0.8以上、1.4未満
2(不可):OD値 0.2以上、0.8未満
1(劣):OD値 0.2未満
なお、当機器は、OD値の上限として5.7までは測定可能であり、5.7より大きい場合は「>5.7」として表2の結果に記載した。
実用上使用可能な評価は3、4および5である。
【0084】
<低反射性>
上記の方法で反射率を測定し評価した。評価基準は次の通りである。
5(優):2.4%未満
4(良):2.4%以上、2.8%未満
3(可):2.8%以上、3.2%未満
2(不可):3.2%以上、3.6%未満
1(劣):3.6%以上
なお、実用上使用可能な評価は3、4および5である。
【0085】
<耐傷性>
25℃湿度50%環境下、学振型摩擦堅牢度試験機を用いて評価。摩擦子(20mm×20mm、 R45mm)先端に白色綿布を取り付け、荷重200gf条件で、黒色インキ層の上に摩擦子を置き30往復/分のスピードで10往復させた。10往復後、黒色インキの擦れ落ち度合いを、白色綿布への着色として評価した。なお、白色綿布の着色度合いは汚染用グレースケールを用いてJIS L 0805に基づき評価した。評価基準は次の通りである。
5(優):グレースケール5級
4(良):グレースケール4級と5級との間
3(可):グレースケール4級
2(不可):グレースケール3級と4級との間
1(劣):グレースケール3級以下
なお、実用上使用可能な評価は3、4および5である。
【0086】
<耐光性>
紫外線フェードメータを用いて評価。サンシャインカーボン使用、300~400nmにおける放射照度78.5W/m条件下、黒色積層体を1000時間曝露。耐光試験前の透過濃度をOD(前)とし、試験後の透過濃度をOD(後)として、耐光性試験後の透過濃度保持率を以下のように定義し評価した。
透過濃度保持率(%)=OD(後)÷OD(前)×100
なお本試験は、紫外光による遮光性の劣化度合いを評価するために行っているため、遮光性を付与するための黒色顔料および黒色染料ともに用いていない比較例4は、本評価の対象外とした。
評価基準は次の通りである。
5(優):95%以上
4(良):90%以上、95%未満
3(可):85%以上、90%未満
2(不可):80%以上、85%未満
1(劣):80%未満
なお、実用上使用可能な評価は3、4および5である。
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
黒色インキ層にウレタン樹脂を用いない比較例1、平均粒子径が50~250nmのカーボンブラックを用いない比較例2~4及び7、樹脂微粒子を用いない比較例5及び6、バインダー樹脂成分100質量%に対する樹脂微粒子の質量%が280~450ではない比較例8及び9では、接着性、遮光性、低反射性、耐傷性、及び、耐光性のいずれかが劣る結果となった。また、比較例10では、本発明の印刷インキは粘度が高く、スプレーでは塗工できなかった。
【0090】
本発明により、遮光性、低反射性、耐傷性、及び、耐光性に優れる低反射性積層体を提供することが可能となった。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、黒色インキ層を有する低反射性積層体であって、
前記黒色インキ層が、ウレタン樹脂を含むバインダー樹脂、カーボンブラック及び樹脂微粒子を含有する印刷インキからなり、
前記バインダー樹脂100質量%に対する、前記樹脂微粒子の含有量が、280~450質量%であり、
前記カーボンブラックの平均粒子径が、50~250nmであり、
前記黒色インキ層の表面粗さRaが、3~5μmである低反射性積層体。
【請求項2】
印刷インキが、スクリーン印刷用である、請求項1に記載の低反射性積層体。
【請求項3】
黒色インキ層の膜厚が、10~60μmである請求項1に記載の低反射性積層体。
【請求項4】
樹脂微粒子の平均粒子径が、0.5~15μmである請求項1又は2に記載の低反射性積層体。
【請求項5】
樹脂微粒子の屈折率が、1.4~1.6である請求項1又は2に記載の低反射性積層体。
【請求項6】
印刷インキが、ケトン系有機溶剤からなる有機溶剤(A)、並びに、グリコールエーテル系有機溶剤、エステル系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤及び芳香族系有機溶剤から選ばれる少なくとも一種の有機溶剤(B)を含む、請求項1又は2に記載の低反射性積層体。
【請求項7】
有機溶剤(A)と有機溶剤(B)の沸点の差が、10~80℃である、請求項記載の低反射性積層体。
【請求項8】
基材上に、印刷インキをスクリーン印刷して黒色インキ層を形成する工程を含む低反射性積層体製造方法であって、
前記印刷インキが、ウレタン樹脂を含むバインダー樹脂、カーボンブラック及び樹脂微粒子を含有し、
前記バインダー樹脂100質量%に対する、前記樹脂微粒子の含有量が、280~450質量%であり、
前記カーボンブラックの平均粒子径が、50~250nmであり、
前記黒色インキ層の表面粗さRaが、3~5μmである、低反射性積層体製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明は、基材上に、黒色インキ層を有する低反射性積層体であって、
前記黒色インキ層が、ウレタン樹脂を含むバインダー樹脂、カーボンブラック及び樹脂微粒子を含有する印刷インキからなり、
前記バインダー樹脂100質量%に対する、前記樹脂微粒子の含有量が、280~450質量%であり、
前記カーボンブラックの平均粒子径が、50~250nmであり、
黒色インキ層の表面粗さRaが、3~5μmである低反射性積層体に関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
また、本発明は、基材上に、印刷インキをスクリーン印刷して黒色インキ層を形成する工程を含む低反射性積層体製造方法であって、
前記印刷インキが、ウレタン樹脂を含むバインダー樹脂、カーボンブラック及び樹脂微粒子を含有し、
前記バインダー樹脂100質量%に対する、前記樹脂微粒子の含有量が、280~450質量%であり、
前記カーボンブラックの平均粒子径が、50~250nmであり、
黒色インキ層の表面粗さRaが、3~5μmである、低反射性積層体製造方法に関する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
<実施例2~19、比較例1~10:積層体G2~19、H1~9の作成>
表3、表4に記載の印刷インキを用いて、表3、表4に記載の印刷・塗工条件で、基材上に、5cm×5cmの印刷・塗工部を作成した。印刷・塗工後、表3、表4に記載の乾燥条件で、印刷・塗工部を乾燥させた。
比較例10として、印刷インキS1を用いてスプレーによる塗工を試みたが、インキの粘度が高いために塗工することができなかった。
なお、実施例6、8、9および12は参考例である。