(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087329
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】フライホイールハウジングおよびフライホイールハウジングを備えるエンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 77/00 20060101AFI20240624BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
F02B77/00 D
F02F7/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202092
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003502
【氏名又は名称】弁理士法人芳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伴 まりこ
(72)【発明者】
【氏名】玉置 裕一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友裕
(72)【発明者】
【氏名】植田 真人
(72)【発明者】
【氏名】江口 礼良
【テーマコード(参考)】
3G024
【Fターム(参考)】
3G024AA74
3G024BA05
3G024BA30
3G024EA01
3G024FA14
(57)【要約】
【課題】エンジンの大型化を抑制し、作業性を向上することができるフライホイールハウジングおよびフライホイールハウジングを備えたエンジンを提供すること。
【解決手段】フライホイールハウジング100は、フライホイール20のエンジン1の側に配置され、フライホイール20を収容する収容部11を有する本体部110と、フライホイール20のエンジン1とは反対側に配置され、本体部110に接続され、フライホイール20の外径よりも小さい内径の開口部125を有するカバー部120と、を備え、本体部110は、本体部110の上部に設けられ他の部材を支持する支持部130を有し、支持部130は、本体部110の上部から上方に延在する土台部131と、土台部131の上に設けられ、カバー部120を避けつつカバー部120の側へ延出する台座部132と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの出力軸に連結されるフライホイールを収容するフライホイールハウジングであって、
前記フライホイールの前記エンジンの側に配置され、前記フライホイールを収容する収容部を有する本体部と、
前記フライホイールの前記エンジンとは反対側に配置され、前記本体部に接続され、前記フライホイールの外径よりも小さい内径の開口部を有するカバー部と、
を備え、
前記本体部は、前記本体部の上部に設けられ他の部材を支持する支持部を有し、
前記支持部は、
前記本体部の上部から上方に延在する土台部と、
前記土台部の上に設けられ、前記カバー部を避けつつ前記カバー部の側へ延出する台座部と、を有することを特徴とするフライホイールハウジング。
【請求項2】
前記台座部の延出方向の先端は、前記本体部と前記カバー部との接合面よりも前記カバー部の表面の側で、前記カバー部の前記表面よりも前記本体部の側に位置することを特徴とする請求項1に記載のフライホイールハウジング。
【請求項3】
前記支持部は、少なくとも前記土台部に接続される補強用リブを有することを特徴とする請求項1に記載のフライホイールハウジング。
【請求項4】
前記補強用リブは、前記土台部から前記台座部に向かうにつれて、前記エンジンに接続された吊り上げ用フックから離間する方向に傾斜していることを特徴とする請求項3に記載のフライホイールハウジング。
【請求項5】
前記エンジンの上方からみたとき、前記エンジンおよび前記エンジンと接続される部材は、前記台座部の上面と重なる位置に設けられていないことを特徴とする請求項1に記載のフライホイールハウジング。
【請求項6】
前記エンジンの上方からみたとき、前記台座部は、前記エンジンに接続された吊り上げ用フックと離間した位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載のフライホイールハウジング。
【請求項7】
2つの前記支持部を備え、
前記エンジンの上方からみたとき、前記2つの支持部は、前記出力軸に対して対称の位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載のフライホイールハウジング。
【請求項8】
前記エンジンの上方からみたとき、前記支持部は、前記出力軸と重なる位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載のフライホイールハウジング。
【請求項9】
エンジンの出力軸に連結されるフライホイールを収容するフライホイールハウジングを備えるエンジンであって、
前記フライホイールハウジングは、
前記フライホイールの前記エンジンの側に配置され、前記フライホイールを収容する収容部を有する本体部と、
前記フライホイールの前記エンジンとは反対側に配置され、前記本体部に接続され、前記フライホイールの外径よりも小さい内径の開口部を有するカバー部と、
を備え、
前記本体部は、前記本体部の上部に設けられ他の部材を支持する支持部を有し、
前記支持部は、
前記本体部の上部から上方に延在する土台部と、
前記土台部の上に設けられ、前記カバー部を避けつつ前記カバー部の側へ延出する台座部と、を有することを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの出力軸に連結されるフライホイールを収容するフライホイールハウジングおよびフライホイールハウジングを備えるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの出力軸の一つであるクランク軸にはフライホイールが連結されており、エンジンの円滑な回転に寄与している。フライホイールは、エンジンブロックに設けられたフライホイールハウジングに収容される。
【0003】
特許文献1には、エンジンのリア側の端部にフライホイールハウジング、フライホイール、およびフライホイールカバーを備えるエンジンが開示される。このエンジンにおいて、フライホイールハウジングは端面に円形の開口を有し、その開口がフライホイールカバーで塞がれている。フライホイールハウジングにはフライホイールが収容される。フライホイールカバーには貫通孔が設けられ、この貫通孔を介してエンジンの回転力を取り出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フライホイールハウジングはフライホイールの外側を覆うように構成される。このため、フライホイールハウジングを大きくするとエンジン全体の大型化に繋がる。一方、フライホイールハウジングを小さくすると、フライホイールハウジングとフライホイールとの間隔が狭くなることから、エンジンの組み立てや検査時における作業性の低下を損なわないようにすることが望ましい。また、フライホイールハウジングにフライホイールを収容する以外の機能を兼用させることはエンジンの省スペース化を図る上で重要である。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、エンジンの大型化を抑制し、作業性を向上することができるフライホイールハウジングおよびフライホイールハウジングを備えたエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、エンジンの出力軸に連結されるフライホイールを収容するフライホイールハウジングであって、前記フライホイールの前記エンジンの側に配置され、前記フライホイールを収容する収容部を有する本体部と、前記フライホイールの前記エンジンとは反対側に配置され、前記本体部に接続され、前記フライホイールの外径よりも小さい内径の開口部を有するカバー部と、を備え、前記本体部は、前記本体部の上部に設けられ他の部材を支持する支持部を有し、前記支持部は、前記本体部の上部から上方に延在する土台部と、前記土台部の上に設けられ、前記カバー部を避けつつ前記カバー部の側へ延出する台座部と、を有することを特徴とするフライホイールハウジングである。
【0008】
本発明の第1態様によれば、本発明の第1態様によれば、支持部の台座部がカバー部を避けつつカバー部の側へ延出するため、カバー部との干渉を避けながら十分な台座領域を確保することができる。
【0009】
本発明の第2態様は、本発明の第1態様において、前記台座部の延出方向の先端は、前記本体部と前記カバー部との接合面よりも前記カバー部の表面の側で、前記カバー部の前記表面よりも前記本体部の側に位置することを特徴とするフライホイールハウジングである。
【0010】
本発明の第2態様によれば、台座部の延出方向の先端の位置が、本体部とカバー部との接合面よりもカバー部の表面の側で、カバー部の表面よりも本体部の側に位置するため、台座部がカバー部の表面よりも突出することなく十分な台座領域を確保することができる。
【0011】
本発明の第3態様は、本発明の第1または2態様において、前記支持部は、少なくとも前記土台部に接続される補強用リブを有することを特徴とするフライホイールハウジングである。
【0012】
本発明の第3態様によれば、補強用リブによって土台部の補強が行われる。
【0013】
本発明の第4態様は、本発明の第3態様において、前記補強用リブは、前記土台部から前記台座部に向かうにつれて、前記エンジンに接続された吊り上げ用フックから離間する方向に傾斜していることを特徴とするフライホイールハウジングである。
【0014】
本発明の第4態様によれば、補強用リブが、土台部から台座部に向かうにつれて吊り上げ用フックから離間する方向に傾斜しているため、吊り上げ用フックに吊り上げ用の部材を掛けてエンジンを吊り上げる際に台座部が邪魔にならない。
【0015】
本発明の第5態様は、本発明の第1~第4態様のいずれか1つの態様において、前記エンジンの上方からみたとき、前記エンジンおよび前記エンジンと接続される部材は、前記台座部の上面と重なる位置に設けられていないことを特徴とするフライホイールハウジングである。
【0016】
本発明の第5態様によれば、台座部の上方にエンジンやエンジンと接続される部材が配置されていないため、台座部に取り付けられる他の部材の接続位置の自由度が高まる。
【0017】
本発明の第6態様は、本発明の第1~第5態様のいずれか1つの態様において、前記エンジンの上方からみたとき、前記台座部は、前記エンジンに接続された吊り上げ用フックと離間した位置に設けられることを特徴とするフライホイールハウジングである。
【0018】
本発明の第6態様によれば、台座部とエンジンの吊り上げ用フックとが離間しているため、吊り上げ用フックに吊り上げ用の部材を掛けてエンジンを吊り上げる際に台座部が邪魔にならない。
【0019】
本発明の第7態様は、本発明の第1~第6態様のいずれか1つの態様において、2つの前記支持部を備え、前記エンジンの上方からみたとき、前記2つの支持部は、前記出力軸に対して対称の位置に設けられることを特徴とするフライホイールハウジングである。
【0020】
本発明の第7態様によれば、エンジンの上方からみたとき、2つの支持部が出力軸に対して対称の位置に設けられていることで、エンジンの出力軸周りの振動を効果的に抑制することができる。
【0021】
本発明の第8態様は、本発明の第1~第7態様のいずれか1つの態様において、前記エンジンの上方からみたとき、前記支持部は、前記出力軸と重なる位置に設けられることを特徴とするフライホイールハウジングである。
【0022】
本発明の第8態様によれば、エンジンの上方からみたとき、支持部が出力軸と重なる位置に設けられていることで、1つの支持部であってもエンジンの出力軸周りの振動を効果的に抑制することができる。
【0023】
本発明の第9態様は、エンジンの出力軸に連結されるフライホイールを収容するフライホイールハウジングを備えるエンジンであって、前記フライホイールハウジングは、前記フライホイールの前記エンジンの側に配置され、前記フライホイールを収容する収容部を有する本体部と、前記フライホイールの前記エンジンとは反対側に配置され、前記本体部に接続され、前記フライホイールの外径よりも小さい内径の開口部を有するカバー部と、を備え、前記本体部は、前記本体部の上部に設けられ他の部材を支持する支持部を有し、前記支持部は、前記本体部の上部から上方に延在する土台部と、前記土台部の上に設けられ、前記カバー部を避けつつ前記カバー部の側へ延出する台座部と、を有することを特徴とするエンジンである。
【0024】
本発明の第9態様によれば、支持部の台座部がカバー部を避けつつカバー部の側へ延出するため、カバー部との干渉を避けながら十分な台座領域を確保することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、エンジンの大型化を抑制し、作業性を向上することができるフライホイールハウジングおよびフライホイールハウジングを備えたエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係るフライホイールハウジングを備えるエンジンを示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るフライホイールハウジングの分解斜視図である。
【
図5】本体部の一部を例示する斜視図(その1)である。
【
図6】本体部の一部を例示する斜視図(その2)である。
【
図8】フライホイールハウジングの一部を例示する断面図である。
【
図9】フライホイールハウジングに設けられる支持部を例示する斜視図である。
【
図10】フライホイールハウジングに設けられる支持部を例示する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係るフライホイールハウジングを備えるエンジンを示す斜視図である。
図1に示すエンジン1は、内燃機関であって、例えば産業用ディーゼルエンジンである。エンジン1は、例えばターボチャージャ付きの過給式の高出力な3気筒エンジンや4気筒エンジン等の多気筒エンジンである。エンジン1は、例えば建設機械や農業機械などの産業機械に搭載される。また、エンジン1は、駆動用充電電源バッテリと、駆動用電動モータと、を組み合わせることにより、ハイブリッド駆動装置を構成しても良い。
【0029】
エンジン1は、シリンダブロック2と、シリンダヘッド3と、ヘッドカバー4と、オイルパン7と、ブローバイガス処理装置10と、フライホイールハウジング100に収容されたフライホイール20とを備える。なお、本実施形態において、エンジン1の出力軸であるクランク軸9の軸方向をX方向、X方向と直交する方向の一つ(横方向)をY方向、X方向およびY方向と直交する方向(高さ方向)をZ方向ということにする。また、X方向のうちの一方(エンジン1の前方)をX1、他方(エンジン1の後方)をX2、Y方向のうちの一方をY1、他方をY2、Z方向のうちの一方(エンジン1の上方)をZ1、他方(エンジン1の下方)をZ2ということにする。
【0030】
シリンダヘッド3は、シリンダブロック2の上に組付けられている。ヘッドカバー4は、シリンダヘッド3の上に組付けられている。シリンダブロック2は、上部のシリンダ5と、下部のクランクケース6と、を有する。オイルパン7は、クランクケース6の下部に配置されている。シリンダ5内にはピストン(図示せず)が配置される。クランク軸9は、クランクケース6内に配置されている。ピストンは、コンロッド(図示せず)を介してクランク軸9に連結されている。
【0031】
ブローバイガス処理装置10は、ヘッドカバー4内に設けられている。ブローバイガス処理装置10は、ブローバイガスを、オイルと、オイルのミストを分離したガスと、に分離する役割を有する。
【0032】
フライホイール20は、エンジン1の出力軸の一つであるクランク軸9の後端(X2側の端部)に連結される。クランク軸9とともにフライホイール20が回転し、その回転によって生じる遠心力によってエンジン1の回転動作を滑らかにする。
【0033】
フライホイール20を収容するフライホイールハウジング100は、シリンダブロック2の後端(X2側の端部)に設けられる。フライホイールハウジング100は、本体部110とカバー部120とを有する。本体部110は、フライホイール20を収容する収容部111(
図2参照)を有し、例えばボルトによってシリンダブロック2に締結される。収容部111にフライホイール20が収容されると、本体部110はフライホイール20のシリンダブロック2の側(X1側)を覆うように配置される。
【0034】
カバー部120は、本体部110に対向するように本体部110に取り付けられる。カバー部120は、例えばボルトによって本体部110のX2側に取り付けられる。カバー部120が本体部110に取り付けられることで、カバー部120はフライホイール20のシリンダブロック2とは反対側(X2側)を覆うように配置される。カバー部120の中央には開口部125(
図2参照)が設けられる。この開口部125を介してフライホイール20の回転力、すなわちエンジン1の回転力が外部に取り出される。
【0035】
図2は、本実施形態に係るフライホイールハウジングの分解斜視図である。
フライホイールハウジング100は、椀型の本体部110と、円環状のカバー部120とを有する。椀型に設けられた本体部110の内側にはフライホイール20を収容する収容部111が設けられる。収容部111の内径は、フライホイール20の外径よりも大きい。本体部110の中央部(椀型の底部分の中央部)には孔115が設けられる。本体部110をシリンダブロック2に取り付けると、孔115の中央にクランク軸9の端部が位置する状態となる。
【0036】
シリンダブロック2の後端に本体部110を取り付けた状態で、フライホイール20がクランク軸9に連結される。フライホイール20は、収容部111に収容され、孔115に位置するクランク軸9と連結される。フライホイール20をクランク軸9の後端に連結する場合、クランク軸9の後端に取り付けた連結部材(例えば、連結用フランジ)を介してフライホイール20を固定してもよい。
【0037】
本体部110の収容部111にフライホイール20を取り付けた状態で、カバー部120が本体部110のX2側に取り付けられる。カバー部120は、本体部110の収容部111を覆うようにカバー部120に取り付けられる。円環状のカバー部120の周辺部分には取付用孔126が設けられ、この取付用孔126を介してボルト(図示せず)によってカバー部120が本体部110に締結される。
【0038】
カバー部120の中央部には開口部125が設けられる。開口部125の内径は、フライホイール20の外径よりも小さい。これにより、カバー部120を本体部110に取り付けると、カバー部120によってフライホイール20の外周部分がカバーされることになる。フライホイール20の中央部分は開口部125を介して外部からアクセスすることができる。エンジン1の回転力を利用する駆動対象機器は、カバー部120の開口部125を介してフライホイール20の回転力を得ることができる。
【0039】
(カバー部の構成)
次に、フライホイールハウジング100のカバー部120の構成について説明する。
図3は、カバー部を例示する斜視図である。
図3には、カバー部120のX1側をX2向きにみた斜視図が示される。
図4は、カバー部の一部断面図である。
図4には、
図3に示すA-A線の断面図が示される。
カバー部120は、環状の外周部121と、外周部121の内側に設けられる内周部122とを有する。内周部122は、外周部121と開口部125との間の部分である。外周部121には所定の間隔で複数の取付用孔126が設けられる。内周部122には、円周上に延在する凸部122aが設けられる。凸部122aはカバー部120を本体部110に取り付ける際の中心位置を合わせるために用いられる。
【0040】
内周部122におけるフライホイール20との対向面122bには、フライホイールから離間する方向に凹となる凹部123が設けられる。凹部123の底面123bは対向面122bからX2側に後退しているため、凹部123の位置においてカバー部120とフライホイール20との間に隙間が構成される。この隙間によってカバー部120のX2側から開口部125を介してフライホイール20にアクセスする際の作業スペースを確保することができる。
【0041】
例えば、カバー部120が本体部110に取り付けられた状態で開口部125を介してカバー部120で覆われたフライホイール20の部分や、カバー部120の裏側になる対向面122bを清掃したい場合、作業者は凹部123によって構成される隙間を利用することで手を入れやすくなる。凹部123が設けられていない場合、カバー部120とフライホイール20との間の隙間が狭く、開口部125からカバー部120の裏側(フライホイール20との対向面122b)とフライホイール20との間に手を入れることが困難となる。本実施形態では凹部123によってカバー部120の裏側とフライホイール20との間に隙間が構成され、開口部125からこの部分に手を入れてウエス等で拭き取るといった作業を行いやすくなる。
【0042】
カバー部120の対向面122bには複数の凹部123を設けておくことが好ましい。複数の凹部123は、開口部125の縁125aに沿って配置される。これにより、カバー部120の対向面122bの広い範囲にわたる作業性の向上を図ることができる。
【0043】
複数の凹部123における隣り合う2つの凹部123の間にはリブ124が設けられる。すなわち、複数の凹部123のそれぞれと、複数のリブ124のそれぞれとが互いに交互に配置される。凹部123を設けることでカバー部120の肉厚が薄くなるが、リブ124を設けることでカバー部120の強度が確保される。
【0044】
凹部123は、凹部123の底面123bに開口部125の縁125aが位置するように配置される。すなわち、開口部125の縁125aに沿って凹部123が配置される。これにより、開口部125の縁125aから凹部123の底面123bが連続することになり、凹部123における縁125aの側には壁が無い状態となる。これにより、開口部125の縁125aからカバー部120の対向面122bへのアクセスが容易となる。
【0045】
また、隣り合う複数の凹部123の間にリブ124が設けられている場合、リブ124の延出方向の先端124aは、開口部125の縁125aに位置する。リブ124の先端124aが開口部125の縁125aに位置することで、開口部125の縁125aからリブ124に沿って凹部123へアクセスしやすくなる。
【0046】
ここで、凹部123の側面123sと底面123bとの間には曲面123cが設けられていることが好ましい。また、凹部123の隣り合う側面123sの間には曲面123dが設けられていることが好ましい。このように、凹部123における面と面との間が曲面123c、123dになっていることで、作業者が凹部123に手を入れた際に凹部123の表面全体に接触しやすくなる。すなわち、隣り合う側面123sの間や側面123sと底面123bとの間である隅部が比較的大きなR面になっていることで、隅部への手による接触が容易となり、拭き残しが抑制される。なお、凹部123は、凹んだ曲面(平面を含まない面)のみによって構成されていてもよい。
【0047】
また、
図4に示すように、リブ124の外面と凹部123の底面123bとの間は曲面になっていることが好ましい。リブ124の外面は、凹部123の側面123sの一部に相当する。本実施形態では、
図4に示すように、リブ124は、X方向とZ方向とで表される平面上において、左右対称(X方向に対する線対称)の山形(例えば、正規分布)になっている。リブ124の外面(すなわち凹部123の側面123sの一部)と凹部123の底面123bとの間が曲面になっていることで、作業者が凹部123に手を入れた際にリブ124の表面に接触しやすくなる。
【0048】
リブ124の幅(
図4においてY方向の長さ)は延出方向(
図4においてX2側からX1側に向かう方向)に向けて狭くなることが好ましい。これにより、リブ124の根元の幅を確保して補強効果を得ることができるとともに、凹部123の幅が縁125aに向けて拡がり、開口部125から凹部123に手を入れやすくなる。
【0049】
(水抜き機構)
次に、フライホイールハウジング100の水抜き機構について説明する。
エンジン1においては、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間や、シリンダヘッド3とヘッドカバー4との間など、部材の合わせ部分においてシール性が必要となる。シール性を検査する方法の一つに水没検査がある。エンジン1の水没検査では、フライホイールハウジング100をカバーしておき、フライホイールハウジング100に水が入らないようにしておく。しかし、カバーをしていたとしてもフライホイールハウジング100内に多少の水が入り込むことがある。水没検査後、この水をフライホイールハウジング100内から排出する必要がある。本実施形態のフライホイールハウジング100では、このような水を排出するための水抜き機構を備える。
【0050】
図5は、本体部の一部を例示する斜視図(その1)である。
図5には、本体部110のX1側の下部を斜め上にみた斜視図が示される。
図6は、本体部の一部を例示する斜視図(その2)である。
図6には、本体部110のX2側の下部を斜め下にみた斜視図が示される。
【0051】
フライホイールハウジング100において、本体部110の収容部111の下部には第1貫通孔117が設けられる。第1貫通孔117は、本体部110の椀状に設けられた収容部111における最も下の位置に下方に向けて開口するように設けられる。本体部110に第1貫通孔117が設けられていることで、収容部111から第1貫通孔117を介して外部へ水を排出することができる。
【0052】
本体部110における収容部111の内周面111aには、周方向に段差部118が設けられる。段差部118は第1貫通孔117と接続される。すなわち、第1貫通孔117は、周方向に連続して設けられる段差部118の途中に位置する。段差部118が設けられることで、収容部111の内周面111aに付着した水が段差部118に沿って内周面111aの下部まで案内される。そして、内周面111aの下部まで案内された水は、段差部118と接続される第1貫通孔117を介して本体部110の外部へ排出されることになる。段差部118が設けられることで、収容部111の水は段差部118に沿って内周面111aを案内されて効率良く第1貫通孔117まで導かれ、外部へ排出される。
【0053】
図7は、カバー部の一部を例示する斜視図である。
図7には、カバー部120のX2側をX1向きにみた斜視図が示される。
フライホイールハウジング100において、カバー部120の開口部125の下部に位置する内周部122には第2貫通孔127が設けられる。第2貫通孔127は、例えばカバー部120の外周部121と内周部122との間で、カバー部120の裏面(X1側)から表面(X2側)に向けて貫通するように設けられる。カバー部120の下部に第2貫通孔127が設けられていることで、収容部111から第2貫通孔127を介して外部へ水を排出することができる。
【0054】
図8は、フライホイールハウジングの一部を例示する断面図である。
図8には、フライホイールハウジングの下部の断面図(Y2方向にみた断面図)が示される。
収容部111にフライホイール20を収容した状態で本体部110にカバー部120を取り付けると、カバー部120の凸部122aが本体部110の内周面111aに係合し、中心位置を合わせた状態で取り付けられる。
【0055】
本体部110の内周面111aには周方向に溝部119が設けられる。本実施形態では、本体部110の内周面111aに周方向に設けられた壁部119aと、カバー部120の凸部122aとの間に溝部119が構成される。すなわち、本体部110にカバー部120を取り付けることで溝部119が構成される。溝部119はカバー部120の第2貫通孔127と接続される。これにより、収容部111内の水が溝部119に入って第2貫通孔127まで案内され、第2貫通孔127から効率良く水を排出できるようになる。
【0056】
また、第2貫通孔127の溝部119との間にテーパ部119bが設けられていてもよい。テーパ部119bが設けられることで、溝部119によって案内された水がテーパ部119bを伝わり第2貫通孔127へ流れやすくなる。
【0057】
第2貫通孔127は、カバー部120の表面に向けて(X1側からX2側に向けて)内径が漸増する漸増部127aを有していることが好ましい。漸増部127aは、第2貫通孔127の内径が段階的に拡がるようになっていてもよいし、連続的に拡がるようになっていてもよい。また、漸増部127aは第2貫通孔127の中心軸に対して内径が対称に拡がるように設けられていてもよいし、非対称に拡がるように設けられていてもよい。例えば、第2貫通孔127の内径の下側(Z2側)が上側(Z1側)に比べて多く拡がるようになっていてもよい。これにより、第2貫通孔127に導かれた水が漸増部127aを介して排出される方向に流れやすくなり、水の逆戻りが抑制される。
【0058】
(支持部の構造)
次に、フライホイールハウジング100の支持部の構造について説明する。
図9は、フライホイールハウジングに設けられる支持部を例示する斜視図である。
図10は、フライホイールハウジングに設けられる支持部を例示する側面図である。
図10には、フライホイールハウジングの上部の側面図が示される。
本実施形態に係るフライホイールハウジング100において、本体部110の上部には他の部材を支持する支持部130が設けられる。支持部130で支持される他の部材としては、例えば、エンジン1の振動抑制装置(制振ダンパ、補助バーなど)が挙げられる。
【0059】
支持部130は、本体部110の上部から上方(Z1側)に延在する土台部131と、土台部131の上に設けられる台座部132と、を有する。台座部132の上面は平坦な台座面132bとなっており、例えばネジ穴132cが設けられる。このネジ穴132cを利用して他の部材が支持部130に固定される。
【0060】
台座部132は、土台部131の上において、カバー部120を避けつつカバー部120の側(X2側)へ延出するように設けられる。すなわち、支持部130の土台部131は本体部110の上方に向けて設けられているが、台座部132は本体部110の上方からカバー部120の側へ張り出して設けられる。これにより、支持部130のカバー部120との干渉を避けながら十分な台座面132bの領域(台座領域)を確保することができる。
【0061】
台座部132の延出方向の先端132aは、本体部110とカバー部120との接合面135よりもカバー部120の表面120aの側(X2側)で、カバー部120の表面120aよりも本体部の側(X1側)に位置する(
図10に示す範囲L参照)。これにより、台座部132がカバー部120の表面120aよりもX2側に突出することがなく、十分な台座領域を確保することができるようになる。
【0062】
支持部130は、少なくとも土台部131に接続される補強用リブ133を有していることが好ましい。本実施形態では、土台部131のX1側の面と本体部110との間に補強用リブ133が設けられる。これにより、土台部131の強度補強が行われる。
【0063】
また、エンジン1の上方からみたとき、エンジン1およびエンジン1と接続される部材は、台座部132の上面(台座面132b)と重なる位置に設けられていないことが好ましい。台座部132の上方にエンジン1やエンジン1と接続される部材が配置されていないことで、台座部132に取り付けられる他の部材の接続位置の自由度が高まる。
【0064】
一例として、エンジン1のシリンダヘッド3にはエンジン1を吊り上げる際に使用される吊り上げ用フック31(
図1参照)が設けられる。エンジン1の上方からみたとき、台座部132は、エンジン1に接続された吊り上げ用フック31と離間した位置に設けられる。これにより、吊り上げ用フック31に吊り上げ用の部材を掛けてエンジン1を吊り上げる作業を行う際に台座部132が邪魔にならない。また、補強用リブ133は、土台部131から台座部132に向かうにつれて(すなわちZ2側からZ1側に向かうにつれて)、吊り上げ用フック31から離間する方向(すなわちX2の方向)に傾斜している。これにより、吊り上げ用フック31に吊り上げ用の部材を掛けてエンジン1を吊り上げる作業を行う際に補強用リブ133が邪魔にならない。なお、吊り上げ用フック31以外であっても、台座部132の上方にはエンジン1およびエンジン1に接続される部材を配置しないことが好ましい。
【0065】
支持部130は、本体部110に1つ設けられていてもよいし、2つ以上設けられていてもよい。例えば、2つの支持部130を備える場合、エンジン1の上方からみたとき、2つの支持部130は、出力軸であるクランク軸9に対して対称の位置に設けられることが好ましい。2つの支持部130がクランク軸9に対して対称の位置に設けられていることで、これらの支持部130に制振装置を取り付けることにより、エンジン1のクランク軸9の周りの振動(クランク軸9を中心とした回転方向の振動)を効果的に抑制することができる。
【0066】
また、例えば1つの支持部130を備える場合には、エンジン1の上方からみたとき、支持部130をクランク軸9と重なる位置に設けるようにするとよい。これにより、上記と同様に、エンジン1のクランク軸9の周りの振動(クランク軸9を中心とした回転方向の振動)を効果的に抑制することができる。
【0067】
このような本実施形態によれば、エンジン1の大型化を抑制し、作業性を向上することができるフライホイールハウジング100およびフライホイールハウジング100を備えたエンジン1を提供することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0069】
1…エンジン、2…シリンダブロック、3…シリンダヘッド、4…ヘッドカバー、5…シリンダ、6…クランクケース、7…オイルパン、9…クランク軸、10…ブローバイガス処理装置、20…フライホイール、31…吊り上げ用フック、100…フライホイールハウジング、110…本体部、111…収容部、111a…内周面、115…孔、117…第1貫通孔、118…段差部、119…溝部、119a…壁部、119b…テーパ部、120…カバー部、120a…表面、121…外周部、122…内周部、122a…凸部、122b…対向面、123…凹部、123b…底面、123c…曲面、123d…曲面、123s…側面、124…リブ、124a…先端、125…開口部、125a…縁、126…取付用孔、127…第2貫通孔、127a…漸増部、130…支持部、131…土台部、132…台座部、132a…先端、132b…台座面、132c…ネジ穴、133…補強用リブ、135…接合面