(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087331
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240624BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H01L25/08 Y
H01L21/60 311S
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202095
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】築山 慧至
(72)【発明者】
【氏名】高久 悟
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044KK01
5F044LL01
5F044QQ01
5F044RR18
5F044RR19
(57)【要約】
【課題】半導体装置を提供することを課題とする。
【解決手段】実施形態によれば、半導体装置は、配線基板と保護膜と第1電子部品と第2電子部品と第1樹脂層と第2樹脂層を具備する。配線基板は、第1面を有し、第1面に少なくとも第1導体部と第2導体部を備える。保護膜は、第1面を覆い、少なくとも第1導体部に連通する第1開口部と少なくとも第2導体部に連通する第2開口部を備える。第1電子部品は、電極端子を備え、該電極端子を第1開口部を介し第1導体部に接続して配線基板に実装される。第2電子部品は、第1電子部品を埋め込む接着層を介し該第1電子部品上に設けられる。第1樹脂層は、保護膜と第1電子部品との間の領域であって、電極端子の周りを埋める。第2樹脂層は、第1電子部品の平面視周囲側において、保護膜と接着層の間に介在される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有し、前記第1面に少なくとも第1導体部と第2導体部を備えた配線基板と、
前記第1面を覆い、少なくとも前記第1導体部に連通する第1開口部と少なくとも前記第2導体部に連通する第2開口部を備えた保護膜と、
電極端子を備え、該電極端子を前記第1開口部を介し前記第1導体部に接続して前記配線基板に実装された第1電子部品と、
前記第1電子部品を埋め込む接着層を介し前記第1電子部品に積層された第2電子部品と、
前記保護膜と前記第1電子部品との間の領域であって、前記電極端子の周りを埋める第1樹脂層と、
前記第1電子部品の平面視周囲側において、前記保護膜と前記接着層の間に介在された第2樹脂層と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第2樹脂層に、前記第1電子部品を埋め込む前記接着層の平面視外側の領域に突出された延出部を備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1樹脂層が、前記第1開口部を埋めるように前記保護膜と前記接着層の間に介在された、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2樹脂層が、前記第2開口部を埋めるように前記保護膜と前記接着層の間に介在された、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1樹脂層を構成する樹脂と前記第2樹脂層を構成する樹脂が同じ樹脂からなる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1樹脂層を構成する樹脂と前記第2樹脂層を構成する樹脂が異なる組成の樹脂からなる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2樹脂層の一部に、前記第1電子部品の少なくとも外周縁を覆う被覆部を備えた、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2樹脂層の一部に前記接着層側に突出する峰部を備えた、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
第1面を有し、前記第1面に少なくとも第1導体部と第2導体部を備えた配線基板と、
前記第1面を覆い、少なくとも前記第1導体部に連通する第1開口部と少なくとも前記第2導体部に連通する第2開口部を備えた保護膜と、
電極端子を備え、該電極端子を前記第1開口部を介し前記第1導体部に接続して前記配線基板に実装された第1電子部品と、
前記第1電子部品を埋め込む接着層を介し前記第1電子部品に積層された第2電子部品と、
前記保護膜と前記第1電子部品との間の領域であって、前記電極端子の周りを埋める第1樹脂層と、
前記第1電子部品の平面視周囲側において、前記保護膜と前記接着層の間に介在された第2樹脂層と、
を備える半導体装置の製造方法であって、
前記配線基板の前記第1導体部に対し前記電極端子を接続して前記第1電子部品を前記配線基板に実装した後、
前記第1電子部品の周囲の前記保護膜の上に、前記第1電子部品の端縁に沿って前記第1樹脂層を構成するための未硬化樹脂層を塗布し、この未硬化樹脂層を前記第1電子部品と前記保護膜との間の空間を埋めるように充填し、充填樹脂層を形成し、
前記充填樹脂層の周囲の前記保護膜の上に、前記第2樹脂層を構成するための未硬化樹脂からなる塗布層を前記充填樹脂層の周囲を囲むように形成した後、
フィルム状の前記接着層を備えた前記第2電子部品を前記接着層で前記第1電子部品と前記充填樹脂層と前記塗布層を覆うように前記配線基板に貼り付ける、
半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記塗布層を構成する未硬化樹脂を前記保護膜に沿って拡げて前記充填樹脂層と一体化させた後、前記接着層で前記第1電子部品と前記充填樹脂層と前記塗布層を覆うように前記配線基板に前記第2電子部品を貼り付ける、
請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記未硬化樹脂を前記保護膜に沿って拡げて前記充填樹脂層と一体化させる際、前記第2開口部を前記未硬化樹脂で埋める、
請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1樹脂層を構成する樹脂と前記第2樹脂層を構成する樹脂として同じ樹脂を用いる、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1樹脂層を構成する樹脂と前記第2樹脂層を構成する樹脂として異なる組成の樹脂を用いる、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記未硬化樹脂を前記保護膜に沿って拡げて前記充填樹脂層と一体化させる際、前記未硬化の一部を前記第1電子部品の端縁に被せる、
請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置として、積層された電子部品を備える装置が知られている。例えば、フィルムオンダイ(Film On Die:FOD)と呼ばれる構造は、積層されたメモリチップと、ダイアタッチフィルム(Die Attach Film:DAF)のような接着層に埋め込まれたコントローラなどの半導体チップと、を備える。
また、半導体チップはバンプを介したフリップチップ接合などの接合構造を利用し、配線基板に実装される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4204989号公報
【特許文献2】特開2011-165741号公報
【特許文献3】特開2021-125643号公報
【特許文献4】特開2015-195263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体チップを配線基板にフリップチップ接合した構造において、FOD構造を適用し半導体チップを接着層に埋め込みした構造を採用することが考えられる。この構造において、半導体チップを接合した配線基板の表面には、ソルダーレジストと称される保護膜が設けられている。
配線基板表面においては、保護膜に覆われている領域の他、配線基板の内部配線に接続するために保護膜に開口部を設けた領域が存在する。
【0005】
また、半導体チップと配線基板の間には接合部周りの空間を埋めるようにアンダーフィルと称される樹脂層を充填後、ダイアタッチフィルムで半導体チップを埋め込み、ダイアタッチフィルムの外面側にメモリチップなどの電子部品が積層される。
この構造では、半導体チップの周辺領域に存在する保護膜の開口部をダイアタッチフィルムで覆った領域が生じる。
【0006】
一つの実施形態は、開口部を有する保護膜を備えた配線基板にフィルムオンダイ構造を適用した構成において、保護膜開口部に位置する配線の信頼性を向上させた半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の半導体装置は、配線基板と保護膜と第1電子部品と第2電子部品と第1樹脂層と第2樹脂層を具備する。前記配線基板は、第1面を有し、前記第1面に少なくとも第1導体部と第2導体部を備える。前記保護膜は、前記第1面を覆い、少なくとも前記第1導体部に連通する第1開口部と少なくとも前記第2導体部に連通する第2開口部を備える。前記第1電子部品は、電極端子を備え、該電極端子を前記第1開口部を介し前記第1導体部に接続して前記配線基板に実装される。前記第2電子部品は、前記第1電子部品を埋め込む接着層を介し該第1電子部品上に設けられる。前記第1樹脂層は、前記保護膜と前記第1電子部品との間の領域であって、前記電極端子の周りを埋める。前記第2樹脂層は、前記第1電子部品の平面視周囲側において、前記保護膜と前記接着層の間に介在される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態にかかる半導体装置の概略構成を示す断面図。
【
図2】同半導体装置の製造方法について段階的に説明するための平面略図。
【
図3】同半導体装置の製造方法について段階的に説明するための平面略図。
【
図4】同半導体装置の製造方法について段階的に説明するための平面略図。
【
図5】同半導体装置の製造方法について段階的に説明するための平面略図。
【
図6】同半導体装置の製造方法について段階的に説明するための平面略図。
【
図7】同半導体装置の製造方法を実施する場合に好適な構成を示す平面略図。
【
図8】第2実施形態にかかる半導体装置の概略構成を示す断面図。
【
図9】比較例にかかる半導体装置の概略構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照し、実施形態にかかる半導体装置について詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。また、以下に説明する実施形態において、配線基板の上下方向は、電子部品が設けられる面を上とした場合の相対方向を示し、重力加速度に従った上下方向と異なる場合がある。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面について、前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態にかかる半導体装置1の概略構成を示す断面図である。半導体装置1は、配線基板2と、保護膜3、4と、第1電子部品5と、第2電子部品6と、第1樹脂層7と、第2樹脂層8と、接着層9と封止樹脂層10を備える。
なお、
図1に示す例において第2電子部品6は、封止樹脂層10の内部に1つのみ設けられているが、配線基板2の厚さ方向に複数積層されていても良い。
本実施形態における一例としての半導体装置1は、フィルムオンダイ(FOD)構造を有するボールグリッドアレイ(Ball Grid Array:BGA)の半導体パッケージを備えた半導体装置である。
【0011】
半導体装置1は、例えば、種々の電子機器の一部を構成することができる。
電子機器としては、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、ポータブルコンピュータ、タブレット、携帯電話、テレビジョン受信器、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)、USBフラッシュドライブ、SDカード、eMMC(登録商標)、ユニバーサルフラッシュストレージ、(Universal Flash Storage:UFS)、メモリーカード、他の記憶装置、ウェアラブルデバイス、スマートスピーカー、家庭用電気機器、および他の電子機器であっても良い。
【0012】
図1に示されるように本明細書において、X軸、Y軸およびZ軸が定義される。X軸と、Y軸と、Z軸とは互いに直交する。X軸は、半導体装置1の幅方向に沿う。Y軸は、半導体装置1の長さ方向(奥行き方向)に沿う。Z軸は、半導体装置1または配線基板2の高さ方向(厚さ方向)に沿う。
【0013】
配線基板2は、一例として、プリント回路板(PCB)である。配線基板2は、表面(第1面)2aと裏面(第2面)2bを有する。表面2aはZ軸正方向(Z軸の矢印が示す方向)に向く略平坦な面であり、裏面2bはZ軸負方向に向く略平坦な面である。配線基板2の表面2aにチップ状の第1電子部品5が搭載されている。
【0014】
配線基板2は、複数の基板プレート11と、複数の配線層12と、複数のビア13などを有する。
配線基板2は複数の基板プレート11をプリプレグなどの基板接着層17を介し接着して多層化されている。複数の基板プレート11のうち、Z軸の正方向端に位置する基板プレート11の表面が配線基板2の表面2aとなり、Z軸の負方向端に位置する基板プレート11の表面が配線基板2の裏面2bとなる。
【0015】
配線基板2の表面2aはソルダーレジストなどの保護膜3により覆われ、裏面2bはソルダーレジストなどの保護膜4により覆われている。保護膜3はアクリレート系樹脂を主体とする樹脂、この樹脂とフェノール樹脂とエポキシ樹脂の混合樹脂など、アクリルポリマーを含んでいる樹脂からなる。
配線基板2の内部には、基板プレート11に沿って形成された配線層12、基板プレート11を貫通するビア13、その他、導体部15、16、20、21などを備えた配線回路が設けられている。配線基板2は一例としてインターポーザ基板である。なお、
図1に示す導体部15、16は、それぞれY軸方向に複数の導体が配列された狭ピッチ配線の一部を示している。
【0016】
配線基板2においてX軸方向中央側の表面2aにX軸方向に離間して第1導体部20、21が設けられている。一方の第1導体部20の周囲の保護膜3に、一方の第1開口部22が形成され、第1導体部20は保護膜3に覆われていない。他方の第1導体部21の周囲の保護膜3に他方の第1開口部23が形成され、他方の第1導体部21は保護膜3に覆われていない。
【0017】
第1電子部品5はコントローラチップなどの半導体パッケージであり、矩形板状のモールド樹脂本体5Aの内部にコントローラなどの機能を有する集積回路や回路素子などが収容されている。モールド樹脂本体5AのZ軸負方向側の面(底面)に複数の電極端子5Bが形成されている。
図1ではX軸方向に離間して2つの電極端子5Bが描かれている。
第1電子部品5の一方の電極端子5Bは、はんだバンプなどの接合材25を介し前述の一方の第1導体部20に電気的に接続されている。第1電子部品5の他方の電極端子5Bは、はんだバンプなどの接合材26を介し前述の他方の第1導体部21に電気的に接続されている。
【0018】
なお、
図1に示す第1電子部品5において電極端子5Bの設置個数は2つよりも多い任意の個数であるが、
図1では図示簡略化のため2つのみ表示している。実用的な第1電子部品5では、
図1のX軸方向あるいはY軸方向に、さらに複数の電極端子5Bが設けられている。よって、配線基板2側にもこれら図示を略した複数の電極端子5Bに対応する数の第1導体部20、21が設けられる。
図1では図示簡略化のため、2つの電極端子5Bと、2つの電極端子5Bに接続した第1導体部20、21のみ描いている。
【0019】
第1電子部品5は、接合材25、26を介し保護膜3の上側(Z軸正方向側)に設けられているので、保護膜3の表面(Z軸正方向側の面)と第1電子部品5との間には隙間が形成されているが、この隙間は第1樹脂層7で埋められている。第1樹脂層7を構成する樹脂は、一例として、アンダーフィル樹脂と称されるエポキシ樹脂を含む樹脂からなる。第1樹脂層7はエポキシ樹脂を主成分とする樹脂から構成されていてもよい。
【0020】
第1樹脂層7は、保護膜3の表面と第1電子部品5の底面の間の隙間を埋めるとともに平面視した場合、第1電子部品5の周囲に若干はみ出すように形成されている。
図1に示す断面において、保護膜3と第1電子部品5の間の領域よりX軸負方向側に所定幅延出するように第1延出樹脂部7Aが形成されている。また、保護膜3と第1電子部品5の間の領域よりX軸正方向側に所定幅延出するように第2延出樹脂部7Bが形成されている。
【0021】
第1延出樹脂部7Aの幅(X軸方向幅)は、第2延出樹脂部7Bの幅(X軸方向幅)よりも若干幅広に形成されている。なお、
図1の断面では略されているが、保護膜3と第1電子部品5の間の領域よりY軸正方向側にも所定幅延出するように第1樹脂層7の図示略の延出樹脂部が形成されている。同様に、保護膜3と第1電子部品5の間の領域よりY軸負方向側にも所定幅延出するように第1樹脂層7の図示略の延出樹脂部が形成されている。これら
図1では略した延出樹脂部のY軸方向長さは、一例として、第2延出樹脂部7Bの幅(X軸方向幅)と同程度に形成されている。
図1において図示を略したこれら延出樹脂部については、半導体装置1の製造方法について説明するための
図2~
図6を用いて後に再度説明する。
【0022】
第1電子部品5を平面視した周囲側には、第1樹脂層7に連続して一体化するように第1樹脂層7の周囲を囲む第2樹脂層8が形成されている。第2樹脂層8は、接着層9と保護膜3の間を埋めるように、かつ、第1電子部品5と第1樹脂層7の周囲を囲むように形成されている。
第2電子部品6は、メモリチップなどの平面視矩形板状の半導体パッケージであり、そのZ軸負方向の面(底面)にフィルム状の接着層9が形成されている。第2電子部品6の幅と長さは第1電子部品5の幅と長さより大きく形成されている。接着層9の幅と長さは第2電子部品6の幅と長さより若干大きく形成されている。よって、接着層9の幅と長さは、第1電子部品5および第2電子部品6より大きく形成されている。
【0023】
図1の例では、接着層9の幅が第1電子部品5の幅の数倍程度大きく形成されている。図示は略しているが、接着層9の長さ(奥行き)も第1電子部品5の長さ(奥行き)の数倍程度大きく形成されている。
接着層9は、一例として、ダイアタッチフィルム(DAF)であり、例えば、アクリル系樹脂とエポキシ樹脂を含む材料により構成される。ダイアタッチフィルムは、ダイボンディングフィルム(Die Bonding Film)とも称され得る。接着層9は、フィルム状であり、フィルム自身を構成する樹脂骨格を構成するため、アクリル系樹脂を含んでいる。
【0024】
第2樹脂層8は、1つの例として第1樹脂層7と同一の樹脂からなる樹脂層である。第2樹脂層8は、第1樹脂層7と同一の組成の樹脂であっても、含まれる無機酸化物粒子であるフィラーの濃度が異なっていてもよい。
あるいは、他の例として、第2樹脂層8は、第1樹脂層7と異なる組成の樹脂からなる樹脂層であっても良い。第2樹脂層8は、第1樹脂層7と異なる組成の樹脂であり、かつ、含まれる無機酸化物粒子のフィラーの濃度が異なっていてもよい。
なお、第1樹脂層7と第2樹脂層8は、一例としてエポキシ樹脂を含むか、エポキシ樹脂を主成分とする樹脂からなることが好ましいが、他の成分を含む樹脂としても、熱硬化性などの硬化性を有する樹脂である。また、第1樹脂層7と第2樹脂層8は、アクリルポリマーなどのアクリル系樹脂を含まない熱硬化性の樹脂からなることが好ましい。
【0025】
第1樹脂層7と第2樹脂層8に覆われている保護膜3において、第1電子部品5の周囲に、複数カ所、開口部が形成されている。
図1において、符号18で示す開口部は、第1電子部品5の周縁領域において保護膜3に部分的に覆われている導体部15に連通する第2開口部である。
配線基板2には、配線回路の露出端子や接続導体部に金めっき層などの耐食層をめっきなどの手段により形成するためのめっき用電極配線を設ける必要がある。このめっき用電極配線を用いて配線基板2の露出端子や接続導体部に金めっき層を形成後、めっき用電極配線はエッチング処理により除去する。エッチング処理は例えば、金メッキ層を形成後開口部18にあった保護膜3をレーザ等で除去し、その下にあっためっき電極用配線をエッチングやレーザ等で除去する。
【0026】
図1に示す第2開口部18の内側に設けられている第2導体部15は、上述のエッチング処理によりめっき用電極配線を除去した後に第2開口部18の内側に残った導体部である。
第2開口部18が形成されている位置は、第1電子部品5を搭載した領域において第1導体部21の近傍位置から、第1電子部品5を搭載した領域のX軸負方向外側にかけての位置である。
図1に示す断面構造では、一例として、第2開口部18のX軸負方向端が、第1電子部品5のX軸負方向端から若干X軸負方向側に離間した位置に設けられている第2導体部15までである。第2導体部15はX軸方向の幅の半分程度まで保護膜3により覆われ、残り半分程度が第2開口部18内に位置する。第2開口部18は第1樹脂層7の第1延出樹脂部7Aにより埋められているので、第2導体部15のX軸方向半分程度が第1樹脂層7により覆われている。また、第1樹脂層7と第2樹脂層8の境界部が第2導体部15の近傍に位置されている。
【0027】
導体部15を設けた位置からX軸負方向側に、さらに離間した位置にも開口部19が形成され、開口部19の内側に他の第2導体部16が設けられている。
第2導体部16も、例えば、前述のエッチング処理により電極配線を除去した後に開口部19の内側に残っている導体部である。
【0028】
図6に第1電子部品5と第2樹脂層8を平面視した場合の位置関係の概要を示す。
図6において接着層9の外周縁の輪郭位置を矩形状の2点鎖線で示し、第1電子部品5の外周縁の輪郭を鎖線で示している。
図6に示すように、平面視矩形状の第1電子部品5の4周の外側を一定幅で矩形枠状(矩形リング状)に囲む第2樹脂層8が形成されている。
第2樹脂層8は、
図6の左側(X軸負方向側)に位置する第1縁部8Aと、右側(X軸正方向側)に位置する第2縁部8Bと、これらの両端側を連結した第3縁部8D、第4縁部8Eを有する。
【0029】
第1縁部8Aは、第1電子部品5のX軸負方向の端縁に沿ってその外側に平面視Y軸方向に延在する所定幅の樹脂層である。
第2縁部8Bは、第1電子部品5のX軸正方向の端縁に沿ってその外側に平面視Y軸方向に延在する所定幅の樹脂層である。
第3縁部8Dは、第1縁部8AのY軸正方向端と第2縁部8BのY軸正方向端を連結してX軸方向に延在し、Y軸方向に所定幅を有する樹脂層である。
第4縁部8Eは、第1縁部8AのY軸負方向端と第2縁部8BのY軸負方向端を連結してX軸方向に延在し、Y軸方向に所定幅を有する樹脂層である。
第1縁部8Aと第2縁部8Bと第3縁部8Dと第4縁部8Eから、平面視矩形枠状の第2樹脂層8が形成されている。
図6に示すように平面視した第1縁部8Aと第2縁部8Bと第3縁部8Dと第4縁部8Eにおいて、各々の長辺と短辺が交差するコーナー部分にはラウンド部Rが形成されている。
【0030】
図6のA-A’線に沿う断面が
図1の断面に相当する。
第1縁部8AにおいてX軸負方向端の端縁は、接着層9のX軸負方向端の端縁より外側に若干突出する第1延出部8aを有する。第1縁部8AにおいてY軸正方向端の端縁は、接着層9のY軸正方向端の端縁より外側に若干突出する第2延出部8bを有する。第1縁部8AにおいてY軸負方向端の端縁は、接着層9のY軸負方向端の端縁より外側に若干突出する第3延出部8cを有する。
図1の断面では、これら複数の延出部のうち、第1延出部8aのみ描かれている。
【0031】
第2縁部8BにおいてX軸正方向端の端縁は、接着層9のX軸正方向端の端縁より外側に若干突出する第4延出部8dを有する。第2縁部8BにおいてY軸正方向端の端縁は、接着層9のY軸正方向端の端縁より外側に若干突出する第5延出部8eを有する。第2縁部8BにおいてY軸負方向端の端縁は、接着層9のY軸負方向端の端縁より外側に若干突出する第6延出部8fを有する。
図1の断面では、これら複数の延出部のうち、第4延出部8dのみが描かれている。
【0032】
第3縁部8DにおいてY軸正方向端の端縁は、接着層9のY軸正方向端の端縁より外側に若干突出する第7延出部8gを有する。
第4縁部8EにおいてY軸負方向端の端縁は、接着層9のY軸負方向端の端縁より外側に若干突出する第8延出部8hを有する。
第1縁部8Aと第2縁部8Bと第3縁部8Dと第4縁部8Eが
図6に示すように平面視矩形枠状に配置されている。従って、第1延出部8a、第2延出部8b、第7延出部8g、第5延出部8e、第4延出部8d、第6延出部8f、第8延出部8h、第3延出部8cも平面視矩形状となるように配置されている。これら第1延出部8a~第8延出部8hは、いずれも
図6に示す接着層9の外周輪郭を描く2点鎖線の外側に突出する位置に設けられている。
【0033】
図1の断面に示すように、第1縁部8Aにおいて、X軸負方向端の第1延出部8aに近い位置に、Z軸正方向に凸型の山型形状をなす第1峰部8iがY軸方向に沿うように形成されている。換言すると、第1峰部8iは接着層側に突出している。第1縁部8Aにおいて、X軸方向中央側には、第1峰部8iの裾野部分を延長した平坦状の接続部8jが形成されている。第1縁部8AにおいてX軸正方向端には、Z軸正方向に凸型の山型をなす第2峰部8kがY軸方向に沿うように形成されている。
第2峰部8kの頂部8xは第1電子部品5のX軸負方向端の端縁5cを所定の幅で覆う被覆部となっている。
第2峰部8kは、第1樹脂層7における第1延出樹脂部7Aの上に位置するように形成された樹脂層であり、第2峰部8kが部分的に第1電子部品5の端縁5cを覆うように形成されている。
第2峰部8kにおいて、頂上部分よりX軸負方向側の裾野部分は、所定の傾斜角度で保護膜3側に接近する傾斜面8Sが形成されている。第2峰部8kにおいて、頂上部分よりX軸正方向側の部分は第1電子部品5の端縁5cが占めている。
【0034】
図1に示す第2縁部8Bの断面形状は、第1縁部8Aの断面形状に一部類似する形状である。第2縁部8Bは、第1峰部8iと同等断面形状の第3峰部8mを有し、第2峰部8kと類似する断面形状の第4峰部8nを有する。第3峰部8mの断面形状は第1峰部8iの断面形状と同等形状であり、第3峰部8mの高さと第1峰部8iの高さはほぼ同一である。第3峰部8mは第2縁部8Bに沿ってY軸方向に延在されている。
【0035】
第3峰部8mは、第2縁部8BのX軸方向においてX軸正方向端よりではなく、X軸方向中央よりの位置に形成されている。
第4延出部8dのX軸正方向端から、第3峰部8mの裾野までの距離をaとする。第1延出部8aにおけるX軸負方向端から、第1峰部8iの裾野までの距離をbとする。距離aと距離bの関係はa>bである。
【0036】
図1に示す断面構成において、第3峰部8mの裾野部分と第4峰部8nの裾野部分は、傾斜部分どうしが連続されてそれらの間に平坦な部分は形成されていない。この点において、第1縁部8Aの断面形状と第2縁部8Bの断面形状は若干異なっている。
また、第4峰部8nのX軸正方向側の裾野部分の保護膜3に対する傾斜角度は、先の第2峰部8kのX軸負方向側の裾野部分の保護膜3に対する傾斜角度よりも小さく形成されている。第4峰部8nの頂部8yは第1電子部品5のX軸正方向端の端縁5cを所定の幅で覆う被覆部となっている。
第4峰部8nにおいて、頂上部分よりX軸負方向側の部分は第1電子部品5の他方の端縁が占めている。
【0037】
図1には、
図6に示した第3縁部8Dと第4縁部8Eの断面形状が描かれていないが、第3縁部8Dの断面形状と第4縁部8Eの断面形状は、第2縁部8Bの断面形状と略同等である。従って、第3縁部8Dと第4縁部8Eにもそれぞれ峰部が形成されている。
図6では、第3縁部8Dに形成されていて、第1電子部品5のY軸正方向端の端縁を所定幅で被覆する峰部の頂部(被覆部)8pを描いている。
図6では、第4縁部8Eに形成されていて、第1電子部品5のY軸負方向端の端縁を所定幅で被覆する峰部の頂部(被覆部)8rを描いている。
【0038】
第1電子部品5と第1樹脂層7および第2樹脂層8の上面(Z軸正方向側の面)に接着層9の底面(Z軸負方向側の面)が被着されている。接着層9の底面中央に平坦面9Aが形成され、この平坦面9Aが第1電子部品5の上面を覆っている。
接着層9の底面側には、第1峰部8iを覆う凹部9aと第2峰部8kを覆う凹部9bが形成され、さらに、第3峰部8mを覆う凹部9dと第4峰部8nを覆う凹部9cが形成されている。なお、
図1では示されていないが、接着層9の底面側には第3縁部8Dに形成されている峰部を覆う凹部と、第4縁部8Eに形成されている峰部を覆う凹部も形成されている。従って接着層9は、第1電子部品5の上面と第1樹脂層7の上面および第2樹脂層8の上面に隙間無く密着し、これらを覆っている。
【0039】
「半導体装置の製造方法」
第2樹脂層8に峰部8i、8k、8m、8nが形成され、これらに対し接着層9が隙間無く密着する構成は、
図2~
図6を元に以下に説明する半導体装置1の製造方法に基づいて作製される。
図2は配線基板2の上面に第1電子部品5を実装した状態を平面視した概要を示す平面略図である。
図2に示すように第1電子部品5を実装した状態とは、第1電子部品5の電極端子5Bをはんだボールなどの接合材25、26を介し配線基板2の第1導体部20、21に電気的に接合した状態を示す。この状態では、配線基板2の保護膜3と第1電子部品5の間に隙間(空間部)が形成されている。
【0040】
第1電子部品5の実装後、
図3に示すように、第1電子部品5のX軸負方向端の端縁外側に沿って、第1樹脂層7を形成するための未硬化状態の樹脂を所定幅、所定厚さになるように塗布する。この塗布処理は、ディスペンサなどの塗布器具を用いて実施することができる。
未硬化樹脂の塗布により、
図3に示すX軸方向に所定幅を有する塗布層をY軸方向に沿って直線状に延在する第1塗布層30を形成することができる。なお、第1塗布層30を形成する場合、第1塗布層30のX軸正方向端が保護膜3と第1電子部品5の間の隙間に所定幅にわたり重複するように形成する。
【0041】
このように第1塗布層30を形成すると、第1塗布層30を構成する未硬化樹脂は、保護膜3と第1電子部品5の隙間(空間部)に毛管現象で徐々に自動的に注入されてゆくので、前述の隙間を未硬化樹脂で埋めることができる。
前記隙間に未硬化樹脂を充填するためには、第1塗布層30の塗布厚を隙間の高さより充分に厚く形成し、毛管現象により隙間に未硬化樹脂が吸い込まれるように形成する。未硬化樹脂は適切な粘度を有するので、前述のように厚く塗布した場合、その横断面形状はコニーデ型などの山型形状となる。
【0042】
図4に、保護膜3と第1電子部品5の間の隙間を未硬化樹脂層が埋めた状態を示す。なお、隙間を未硬化樹脂層で埋めた場合、
図4に平面視するように未硬化樹脂が第1電子部品5の周縁から所定幅はみ出すように注入する。
【0043】
このように未硬化樹脂を注入するには、充填後、
図4に示すように第1電子部品5の周縁から所定幅はみ出す程度の未硬化樹脂量を予め把握しておき、
図3に示す第1塗布層30を形成する場合、必要量の未硬化樹脂を塗布すれば良い。
第1塗布層30を構成する未硬化樹脂は、毛管現象で徐々に自動的に前述の隙間に注入されるので、第1塗布層30の塗布量を規定しておくと、
図4に示す注入状態を確実に得ることができる。
【0044】
図4に示す状態において、保護膜3と第1電子部品5の間に充填された未硬化の充填樹脂層5aは、第1電子部品5のX軸負方向端側(
図4の左側)において幅の広い第1延出樹脂層31を構成する。第1電子部品5のY軸正方向端側(
図4の上側)では第1延出樹脂層31より幅の狭い第2延出樹脂層32を構成する。Y軸負方向端側(
図4の下側)では第1延出樹脂層31より幅の狭い第3延出樹脂層33を構成する。X軸正方向端側(
図4の右側)では第1延出樹脂層31より幅の狭い第4延出樹脂層34を構成する。
第1延出樹脂層31は、第1塗布層30を基に形成された層であるので、一番幅広となる。第2延出樹脂層32と第3延出樹脂層33と第4延出樹脂層34は、毛管現象により隙間に吸い込まれた未硬化樹脂が濡れ広がることにより形成される。この濡れ広がり力はそれほど強いものではないため、第2~第4延出樹脂層32~34は第1延出樹脂層31より幅の狭い層となる。
【0045】
図4に示すように未硬化の各樹脂層を形成した後、
図5に示すように第1延出樹脂層31の左側(X軸負方向側)に、第2樹脂層8を形成するための未硬化樹脂による第2塗布層35をディスペンサなどの塗布器具を用いて形成する。第2塗布層35は、Y軸方向に沿ってX軸方向に所定幅となるように短冊状に形成する。
第2塗布層35のY軸方向長さは、
図5に描いた接着層9の外周輪郭を示す2点鎖線のY軸方向長さに近い長さに形成する。また、第2塗布層35は適切な粘度を有する未硬化樹脂層からなるため、横断面視山型などのように盛り上がった形状で配線基板2上に(正確には保護膜3上に)形成される。第2塗布層35は、後の工程で第1延出樹脂層31に一体化するように濡れ広がらせるために、充分な厚さに形成する。例えば、第2塗布層35は横断面山型などのように肉厚に塗布する。
【0046】
続いて、第2延出樹脂層32のY軸正方向側(
図4の上側)に、第2樹脂層8を形成するための未硬化樹脂による第3塗布層36を平面視短冊状に形成する。同様に、第2樹脂層8を形成するための未硬化樹脂による第4塗布層37、第5塗布層38をそれぞれ平面視短冊状に形成する。これらの塗布層を形成するには、ディスペンサなどの塗布器具を用いて先に第2塗布層35を形成した場合と同様に実施できる。
ここで、第2塗布層35~第5塗布層38を形成する順番は、前述の順番に限らず、いずれの塗布層から作製を開始しても良く、同時に4つの塗布層を形成しても良い。
【0047】
第2塗布層35、第3塗布層36、第4塗布層37、第5塗布層38は、いずれも適切な粘度の未硬化樹脂からなるので、横断面視山型などのように盛り上がった形状で保護膜3上に形成される。
各塗布層の形成後、若干時間が経過すると各塗布層の粘度に応じて各塗布層は徐々に保護膜3に沿って濡れ拡がる。この結果、第2塗布層35、第3塗布層36、第4塗布層37、第5塗布層38は、第1延出樹脂層31、第2延出樹脂層32、第3延出樹脂層33、第4延出樹脂層34と一体化する。濡れ拡がった状態において未硬化樹脂は横断面視凸型の峰部を有するように盛り上がった状態を維持する。
この後、全体を加熱して保護膜3と第1電子部品5の間の充填樹層と、延出樹脂層31~34と、塗布層35~38を硬化させると、
図6に示す構造を得ることができる。
【0048】
即ち、第1電子部品5の周囲を囲む第1縁部8A、第2縁部8B、第3縁部8D、第4縁部8Eを形成できる。第1縁部8Aには第1峰部8iと第2峰部8kが形成され、第2縁部8Bには第3峰部8mと第4峰部8nが形成される。第3縁部8Dと第4縁部8Eにも峰部が形成される。
図6では各峰部の記載は略している。
なお、塗布層35~38を塗布後、適切な治具を用いて塗布層35~38をZ軸正方向側から押圧し、塗布層35~38を濡れ拡がるように加圧処理しても良い。
【0049】
図6に示す第1縁部8A、第2縁部8B、第3縁部8D、第4縁部8Eを形成したならば、接着層9となる基の平坦な均一厚さの接着層を備えた第2電子部品6を用意する。
この接着層を第1縁部8A、第2縁部8B、第3縁部8D、第4縁部8Eに対し、それらのZ軸正方向側(上方側)から接近させ、接着層を押し付ける。
接着層の押し付けにより、接着層は第1縁部8A、第2縁部8B、第3縁部8D、第4縁部8Eに沿って形を変形しつつ、これらに密着する。
【0050】
以上の処理により、
図1の断面に示す第1峰部8i、第2峰部8k、第3峰部8m、第4峰部8nに密着した接着層9を利用し、第2電子部品6を配線基板2に貼り付けることができる。
第2電子部品6を配線基板2に搭載後、ワイヤボンディングなどの手法により配線基板2の図示略の端子に、第2電子部品6の端子を接続する。この後、封止樹脂層10を設けることで
図1に示す構成を得ることができる。
【0051】
図1に示す半導体装置1によれば、接着層9は保護膜3に接触しておらず、接着層9と保護膜3の間に第1樹脂層7と第2樹脂層8が介在されている。
従って、配線基板2において保護膜3の第2開口部18と第2開口部19は、第1樹脂層7か第2樹脂層8により埋められている。従って、これら第2開口部18、19の内側に存在する導体部15、16は第1樹脂層7か第2樹脂層8により覆われている。
第1樹脂層7と第2樹脂層8は、いずれもエポキシ樹脂を含むか、エポキシ樹脂を主成分とする樹脂であり、加熱履歴を経たとして、これら樹脂層7、8から塩素イオンが排出されにくい。
【0052】
これに対し、フィルム状である接着層9は、自身を構成する樹脂骨格を構成するため、アクリル樹脂を含み、保護膜3を構成する樹脂もアクリル、アクリレート系樹脂を含んでいる。従って、接着層9と保護膜3からは、何れも加熱に伴い微量ながら塩素イオンが発生する。ここで、接着層9と保護膜3が接している部分の近傍に導体部15、16が存在すると、加熱により両層から発生した塩素イオンの相乗効果により保護膜3の構成樹脂が加水分解しやすい。
【0053】
図1に示す断面構造であると、HAST試験(Highly Accelerated Temperature and Humidity Stress Test)などのように高温多湿環境下において加熱される加速試験を実施したとして、保護膜の構成樹脂が加水分解されにくい。
よって、耐久性に優れた半導体装置1を提供することができる。
【0054】
図7は、
図5に示すように保護膜3上に第2塗布層35、第3塗布層36、第4塗布層37、第5塗布層38を塗布する場合、塗布位置に対応するように浅溝型の第1凹部41、第2凹部42、第3凹部43、第4凹部44を設けた構成を示す。
保護膜3上にディスペンサなどの塗布器具を用いて未硬化樹脂層を塗布する場合、第1凹部41、第2凹部42、第3凹部43、第4凹部44を設けておくことにより、未硬化樹脂層を正確な位置に塗布する目印とすることができる。
また、第1凹部41~第4凹部44を設けることにより、未硬化樹脂の塗布量を正確に調整できる結果、
図6に示すように未硬化樹脂層を濡れ広がらせる場合に安定した形状を得やすくなる。
【0055】
図8は、
図1に示す構造に対し、第1電子部品5と保護膜3の間に第1樹脂層7を設けている点は同等であるが、第2樹脂層8を略し、第2樹脂層8を設けていた部分も接着層29が占めている比較例構造の半導体装置28を示す。
第2樹脂層8を設けていないため、接着層29が保護膜3の表面に接するように設けられており、導体部15の半分程度と開口部19は接着層29で埋められる。また、導体部15は、第1樹脂層7と保護膜3と接着層29の境界部分に存在する。このため、接着層29と保護膜3の境界部分が導体部15の近傍に配置される。また、接着層29と保護膜3の境界部分が導体部16の近傍に配置される。
【0056】
図8に示す比較例構造が熱履歴を受けた場合、接着層29から排出される塩素イオンと保護膜3から排出される塩素イオンとが第2導体部15、16の近傍に排出されることとなる。
このため、第2導体部15、16の近傍において保護膜3の樹脂分解が促進されやすい。
【0057】
この点、
図1の構造では、第2導体部15の近傍に接着層9は存在せず、エポキシ樹脂を含むか、エポキシ樹脂を主体とする第1樹脂層7と第2樹脂層8と保護膜3が存在している。
保護膜3からは微量の塩素イオンの排出があるとしても、接着層9は離れた位置に存在するので、第2導体部15近傍の保護膜3において樹脂分解は促進されない。また、他方の第2導体部16の近傍にも接着層9が存在せず、保護膜3のみ存在するため、第2導体部16近傍の保護膜3の樹脂分解は促進されない。これらの結果、耐久性により優れた半導体装置1を提供することができる。
【0058】
「第2実施形態」
図9は、第2実施形態に係る半導体装置50を示す断面図である。
第2実施形態の構造において、配線基板2の構成は第1実施形態の構成と同等であり、第1電子部品5、第2電子部品6、第1樹脂層7、封止樹脂層10の構成も同等である。
図9の構成において、配線基板2に対し第1電子部品5の電極端子5Bをはんだボール等の接合材25、26を介し接合した構造も同等である。
【0059】
図9の構成では、第1樹脂層7の周囲に設けられている第2樹脂層8’の構成が、第1実施形態の構成と異なる。
第2樹脂層8’においては、第2樹脂層8に形成されていた第1峰部8iと第3峰部8mが略され、第1峰部8iが形成されていた領域に平坦部8tが形成され、第3峰部8mが形成されていた領域に平坦部8uが形成されている。
第2樹脂層8’を構成する樹脂は第2樹脂層8を構成する樹脂と同等の樹脂からなる。
【0060】
第2樹脂層8’において第2峰部8kが第1電子部品5の端縁5cを覆う構成と、第4峰部8nが第1電子部品5の端縁を覆う構成は同等である。
第2樹脂層8’において第2峰部8kよりX軸負方向側に平坦部8tが形成され、第4峰部8nよりX軸正方向側に平坦部8uが形成されている。平坦部8tのX軸負方向端に第1延出部8aが形成され、平坦部8uのX軸正方向端に第4延出部8dが形成されている。
【0061】
第1縁部8Aに形成されている第2峰部8kにおいて、X軸負方向側の裾野部分の傾斜角度は、第1実施形態の第2峰部8kと同じである。このため、第2実施形態の第2峰部8kの裾野部分は、第1縁部8Aの幅方向(X軸方向)の1/2幅よりも幅狭に形成されている。
第2縁部8Bに形成されている第4峰部8nにおいて、X軸正方向側の裾野部分の傾斜角度は、第1実施形態の第4峰部8nの裾野部分の傾斜角度と同じである。このため、第2実施形態の第4峰部8nの裾野部分は、第2縁部8Bの幅方向(X軸方向)中央側まで延在され、そのX軸正方向側に平坦部8tが形成されている。
【0062】
第2実施形態の構造においても、接着層9’と配線基板2の保護膜3との間に第1樹脂層7と第2樹脂層8’が介在されているので、第1実施形態の構造と同様に、信頼性の高い配線構造を得ることができる。
即ち、第2開口部18を第1樹脂層7が埋めるとともに、第2開口部19を第2樹脂層8’が埋めている。従って、第2開口部18の下に存在する導体部15の近傍と第2開口部19の下に存在する導体部16の近傍に、接着層9’が存在しない。
従って、第2実施形態の構造においても、HAST試験などのように高温多湿環境下において加熱される加速試験を実施したとして、保護膜3が加水分解されにくい。
【0063】
第2実施形態の構造は、
図5に示すように第2塗布層35、第3塗布層36、第4塗布層37、第5塗布層38を形成する場合、各層の塗布厚を第1実施形態の場合より薄く設定することにより実現できる。
【0064】
他の実施形態
(a)第1実施形態において、第1樹脂層7または第2樹脂層8のいずれか、または両方が第1電子部品5の上面の一部または全部を覆っていてもよい。この場合でも第1実施形態と同様の効果が得られる。これは例えば、
図6のあとに、第1電子部品5の上面にさらに第2樹脂層8を滴下することで得られる。または
図3のときに第1塗布層30を第1電子部品5の上面にまで到達するように多めに滴下することでも得られる。他、様々な方法で得られる。
(b)第1実施形態において、第2樹脂層8は接着層9よりはみ出ている。これに限らず、第1樹脂層7または第2樹脂層8は、第2開口部19を埋める範囲まで覆っていればよい。この場合も第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0066】
1…半導体装置、
2…配線基板、
2a…表面(第1面)、
2b…裏面(第2面)、
3、4…保護膜、
5…第1電子部品、
5B…電極端子、
5c…端縁、
6…第2電子部品、
7…第1樹脂層、
7A…第1延出樹脂部、
7B…第2延出樹脂部、
8…第2樹脂層、
8a…第1延出部、
8b…第2延出部、
8c…第3延出部、
8d…第4延出部、
8e…第5延出部、
8f…第6延出部、
8g…第7延出部、
8h…第8延出部、
8i…第1峰部、
8k…第2峰部、
8m…第3峰部、
8n…第4峰部、
8p…頂部(被覆部)、
8r…頂部(被覆部)、
8x…頂部(被覆部)、
8y…頂部(被覆部)、
9、9’…接着層、
10…封止樹脂層、
15、16…導体部(第2導体部)、
18、19…開口部(第2開口部)、
20、21…導体部(第1導体部)、
22、23…開口部(第1開口部)、
50…半導体装置。