(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087335
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】食後血中中性脂肪上昇抑制用組成物、及び食後血中RLP-C上昇抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240624BHJP
A23L 33/22 20160101ALI20240624BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240624BHJP
A61K 36/81 20060101ALI20240624BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L33/22
A61P3/06
A61K36/81
A61K31/715
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202101
(22)【出願日】2022-12-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物 薬理と治療 第50巻 第7号 1255~1263頁(2022年) 発行日 2022年7月20日 〔刊行物等〕 刊行物 薬理と治療 第50巻 第8号 1457~1466頁(2022年) 発行日 2022年8月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和敬
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE05
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4B018MD53
4B018ME04
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4C086AA01
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4C088ZC33
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、食後血中中性脂肪の上昇を抑制する組成物、及び/又は食後血中RLP-Cの上昇を抑制する組成物を提供することである。
【解決手段】トマト由来の食物繊維、好ましくはトマトの果肉由来の食物繊維を、食後血中中性脂肪上昇抑制用組成物及び/又は食後血中RLP-C上昇抑制用組成物の寄与成分とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食後血中中性脂肪上昇抑制用組成物であって、
その寄与成分は食物繊維であり、
前記食物繊維の由来はトマトである。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、
前記食物繊維の由来はトマトの果肉である。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物であって、
その摂取対象者は、食後の血中中性脂肪値が高めの人である。
【請求項4】
食後血中レムナント様リポタンパクコレステロール(RLP-C)上昇抑制用組成物であって、
その寄与成分は食物繊維であり、
前記食物繊維の由来はトマトである。
【請求項5】
請求項4に記載の組成物であって、
前記食物繊維の由来はトマトの果肉である。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物であって、
その組成物は飲食品である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、食後血中中性脂肪上昇抑制用組成物、及び食後血中レムナント様リポタンパクコレステロール(RLP-C)上昇抑制用組成物である。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病は、健康長寿を妨げる要因となるため、国や医療機関は生活習慣病患者又はその予備軍に対して生活習慣を改善するよう推奨している。
生活習慣病の一つである脂質異常症(高脂血症)は、トリグリセリド等の中性脂肪やLDLコレステロールの血中濃度が基準値よりも高い状態、又はHDLコレステロールの血中濃度が基準値より低い状態をいい、動脈硬化や心血管疾患の主要なリスク因子であることが知られている(非特許文献1)。また、中性脂肪濃度が高くなると、血管内部が傷つけられ、動脈硬化につながる恐れがある。さらに脂肪肝などの内臓脂肪蓄積や肥満を誘発し、急性膵炎を発症することもある。これらの症状は生活の質(QOL)を低下させる原因となったり、死を引き起こしたりするため、血中中性脂肪濃度の上昇を抑えることは重要である。
日本の脂質異常症の患者数は2017年時点で約220万人であり、増加傾向にある(非特許文献2)。また、令和元年国民健康・栄養調査報告によると、「脂質異常症が疑われる者」の割合は成人男性の25.0%、成人女性の23.2%となっており(非特許文献3)、脂質異常症は日本における重要な健康問題の一つであるといえる。
【0003】
食後の血中中性脂肪値は摂取する食事の影響を強く受けるため、脂質異常症患者又はその予備軍には、一般的に、食事等の基本的な生活習慣を改善する他に、食後の血中中性脂肪の上昇を抑制する成分を投与又は摂取することが求められる。
食後の血中中性脂肪値の上昇を抑制する食品成分の一つとして、食物繊維が挙げられる。これまでに、難消化性デキストリン(非特許文献4)、イソマルトデキストリン(非特許文献5)、ポリデキストロース(非特許文献6)、サイリウム種皮由来の食物繊維(非特許文献7)といった食物繊維が、食後の血中中性脂肪値の上昇を抑制することが報告されており、そのエビデンスに基づいた特定保健用食品や機能性表示食品も多く市販されている。
【0004】
ところで、近年、トマトに由来する食物繊維(以降、トマト由来食物繊維とも記す)が健康に有用な成分として注目されており、これまでにトマト由来食物繊維が血糖値の上昇を抑制することが報告されている(特許文献1~2、非特許文献8~9)。一方、トマト由来食物繊維が食後の血中中性脂肪値に与える影響については、動物を用いた出納試験でトマト残渣がエネルギーの吸収量を減少させるという報告はあるものの(非特許文献10)、ヒトに対してどのような影響を及ぼすかは不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-167281号公報
【特許文献2】特開2022-46589号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本動脈硬化学会編.動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版.一般社団法人日本動脈硬化学会; 2017.
【非特許文献2】Miller M, et al. Circulation 2011; 123: 2292-2333.
【非特許文献3】Nordestgaard BG, et al., JAMA 2007; 298: 299-308.
【非特許文献4】篠田有希ほか, 薬理と治療, 2014; 42: 265-279.
【非特許文献5】高野晃ほか, 薬理と治療, 2015; 43: 1149-1156.
【非特許文献6】高橋維子ほか,薬理と治療, 2019; 47: 949-955.
【非特許文献7】Inoike N. et al., Jpn. Pharmacol. Ther. 2019; 47: 1537-1543.
【非特許文献8】吉田和敬ほか, 薬理と治療, 2019; 47: 1665-1675.
【非特許文献9】吉田和敬ほか, 薬理と治療, 2020; 48: 843-852.
【非特許文献10】Alvarado A, Plant Foods Hum. Nutr. 2001; 56: 335-348.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる状況に鑑みて、本発明は、食後血中中性脂肪の上昇を抑制する組成物、及び/又は食後血中RLP-Cの上昇を抑制する組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究の末、トマトに由来する食物繊維が食後血中中性脂肪と食後血中RLP-Cの上昇を抑制する機能を有することを見出し、トマトに由来する食物繊維を食後血中中性脂肪上昇抑制用組成物及び食後血中RLP-C上昇抑制用組成物に寄与成分として含有させることに想到して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通り定義される。
【0009】
<食後血中中性脂肪上昇抑制用組成物>
本発明の第一の態様である食後血中中性脂肪上昇抑制用組成物は、食物繊維を寄与成分として含有する。前記食物繊維の由来はトマトであり、好ましくはトマトの果肉である。
本態様の組成物は、好ましくは食後の血中中性脂肪値が高めの人に摂取される。
本態様の組成物は、好ましくは飲食品である。
【0010】
<食後血中RLP-C上昇抑制用組成物>
本発明の第二の態様である食後血中RLP-C上昇抑制用組成物は、食物繊維を寄与成分として含有する。前記食物繊維の由来はトマトであり、好ましくはトマトの果肉である。
本態様の組成物は、好ましくは飲食品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、食後血中中性脂肪の上昇を抑制する組成物、及び食後血中RLP-Cの上昇を抑制する組成物が提供される。これらの組成物は、日常で摂取しやすい機能性食品等の形態に好ましく適用でき、心血管疾患リスクの低減に役立つことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】試験例1における全解析対象者における血中中性脂肪値の評価を示すグラフ。a)血中中性脂肪値の経時変化、b)血中中性脂肪値の変化量の経時変化、c)血中中性脂肪値の変化量の最大値(ΔC
max)、d)血中中性脂肪値の変化量の上昇曲線下面積(IAUC)。各グラフは平均値±標準偏差を示す。プラセボ飲料群に対して**p<0.01(対応のあるt検定)。Pはプラセボ飲料摂取群を、Tはトマト由来食物繊維含有飲料摂取群を示す。
【
図2】試験例1におけるプラセボ飲料摂取後のC
max≧200mg/dLの対象者における血中中性脂肪値の評価を示すグラフ。a)血中中性脂肪値の経時変化、b)血中中性脂肪値の変化量の経時変化、c)血中中性脂肪値の変化量の最大値(ΔC
max)、d)血中中性脂肪値の変化量のIAUC。各グラフは平均値±標準偏差を示す。プラセボ飲料群に対して**p<0.01(対応のあるt検定)。Pはプラセボ飲料摂取群を、Tはトマト由来食物繊維含有飲料摂取群を示す。
【
図3】試験例2における全解析対象者における血中中性脂肪値の評価を示すグラフ。a)血中中性脂肪値の経時変化、b)血中中性脂肪値の変化量の経時変化、c)血中中性脂肪値の変化量の最大値(ΔC
max)、d)血中中性脂肪値の変化量の上昇曲線下面積(IAUC)。各グラフは平均値±標準偏差を示す。プラセボ飲料群に対して*p<0.05、**p<0.01(対応のあるt検定)。Pはプラセボ飲料摂取群を、Tはトマト由来食物繊維含有飲料摂取群を示す。
【
図4】試験例2における全解析対象者におけるRLP-C値の評価を示すグラフ。a)RLP-C値の経時変化、b)RLP-C値の変化量の経時変化、c)RLP-C値の変化量の最大値(ΔC
max)、d)RLP-C値の変化量のIAUC。各グラフは平均値±標準偏差を示す。プラセボ飲料群に対して*p<0.05、**p<0.01(対応のあるt検定)。Pはプラセボ飲料摂取群を、Tはトマト由来食物繊維含有飲料摂取群を示す。
【
図5】試験例2におけるプラセボ飲料摂取後のC
max≧200mg/dLの対象者における血中中性脂肪値の評価を示すグラフ。a)血中中性脂肪値の経時変化、b)血中中性脂肪値の変化量の経時変化、c)血中中性脂肪値の変化量の最大値(ΔC
max)、d)血中中性脂肪値の変化量のIAUC。各グラフは平均値±標準偏差を示す。プラセボ飲料群に対して*p<0.05、**p<0.01(対応のあるt検定)。Pはプラセボ飲料摂取群を、Tはトマト由来食物繊維含有飲料摂取群を示す。
【
図6】試験例2におけるプラセボ飲料摂取後のC
max≧200mg/dLの対象者におけるRLP-C値の評価を示すグラフ。a)RLP-C値の経時変化、b)RLP-C値の変化量の経時変化、c)RLP-C値の変化量の最大値(ΔC
max)、d)RLP-C値の変化量のIAUC。各グラフは平均値±標準偏差を示す。プラセボ飲料群に対して*p<0.05、**p<0.01(対応のあるt検定)。Pはプラセボ飲料摂取群を、Tはトマト由来食物繊維含有飲料摂取群を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
【0014】
<本発明の組成物>
本発明の、食後血中中性脂肪上昇抑制用組成物及び食後血中RLP-C上昇抑制用組成物は、トマトに由来する食物繊維を寄与成分とすることを特徴とする。当該組成物の摂取1回あたりの量は特に限定されないが、ヒトが摂取する場合、例えば10分以内に摂取可能な量であればよく、具体的には好ましくは500g以下、より好ましくは350g以下、特に好ましくは265g以下である。なお、下限値は特に限定されない。
【0015】
<トマト由来食物繊維>
本発明におけるトマト由来食物繊維は、食後血中中性脂肪上昇抑制作用及び/又は食後血中RLP-C上昇抑制作用の寄与成分としての効果を奏するものであればよく、特に限定されるものではないが、トマトの果肉由来のものが好ましい。トマト又はその搾汁から食物繊維を抽出したものを使用してもよく、トマト由来食物繊維を含有するトマト搾汁をそのまま使用することもできる。トマト搾汁を例示すると、トマトジュース、トマトピューレ、トマトペースト、トマトパルプなどであり、液体のまま用いることもできるが、これらを濃縮又は乾燥したものも好適に用いることができる。
【0016】
トマト由来食物繊維の構成糖は、グルコース、ガラクツロン酸、キシロース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸等である。構成糖中のグルコース及びキシロースの合計の含有量は、通常は50mol%以上、好ましくは、60mol%以上、より好ましくは、69mol%以上である。構成糖中のキシロースの含有量
は、通常は7.0mol%以上、好ましくは8.0mol%以上、より好ましくは9.0mol%以上である。構成糖中のグルコースの含有量は、通常は40mol%以上、好ましくは50mol%以上、より好ましくは60mol%以上であり、主要な構成糖である。構成糖中のグルコースとキシロースの含有比(グルコース(mol)/キシロース(mol))は、通常は3.5以上8.5以下、好ましくは5.0以上7.5以下である。構成糖中のマンノースの含有量は6.0mol%以上、好ましくは6.5mol%以上、より好ましくは7.0mol%以上である。構成糖中のグルコースとマンノースの含有比(グルコース(mol)/マンノース(mol))は、通常は4.0以上10.0以下、好ましくは6.0以上9.0以下である。
上記トマト由来食物繊維の構成糖組成は、他の野菜由来の食物繊維の構成糖組成と異なることが示唆されており、トマト由来食物繊維の特徴的な構成糖の組成が、食後血中中性脂肪上昇抑制作用及び食後血中RLP-C上昇抑制作用と関連していることが推察される。
【0017】
本発明の組成物におけるトマト由来食物繊維の含有量は、食後血中中性脂肪上昇抑制作用及び/又は食後血中RLP-C上昇抑制作用を奏するのに十分な量であればよく、特に限定されるものではないが、例示すると、摂取1回あたりの組成物に含有されるトマト由来食物繊維は、1.0g以上であればよく、好ましくは1.3g以上、より好ましくは1.6g以上、さらに好ましくは3.2g以上である。上記範囲とすることにより、食後血中中性脂肪上昇抑制効果及び/又は食後血中RLP-C上昇抑制効果を十分に得られやすくすることができる。
【0018】
<その他の含有成分>
本発明の組成物は、トマト由来食物繊維による食後血中中性脂肪上昇抑制作用及び/又は食後血中RLP-C上昇抑制作用が損なわれない限り、他の有効成分又は寄与成分、添加剤など任意の成分を含有することができる。
【0019】
他の有効成分又は寄与成分としては、トマト由来食物繊維以外に食後血中中性脂肪上昇抑制作用及び/又は食後血中RLP-C上昇抑制作用を奏する成分であってよく、それらは既存の又は将来見出されるものであってよい。具体的には、例えば、難消化性デキストリン、大麦β-グルカン、グアーガム分解物、α-シクロデキストリン、イヌリン、サラシア由来サラシノール、ターミナリアベリリカ由来没食子酸、バナバ葉由来コロソリン酸、アカシア樹皮由来プロアントシアニジン、エピガロカテキンガレート、ボタンボウフウ由来クロロゲン酸、ルテオリン、イソマルトデキストリン、セルロース、アップルファイバー、ポテトデキストロース、サイリウム、ビートファイバー、アラビアガムなどが挙げられる。またこれらの有効成分又は寄与成分は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
また、食後血中中性脂肪上昇抑制作用及び/又は食後血中RLP-C上昇抑制作用以外の、何らかの機能性を有する成分を併用して含有させてもよい。
【0020】
<添加剤>
本発明の組成物に含有しうる添加剤は、特に限定されるものではなく、例えば、薬学的に許容される基剤、担体、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、保存剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0021】
薬学的に許容される基剤は、特に限定されるものではなく、例えば、水、エタノールのような極性溶媒、油性基剤などが挙げられる。
【0022】
担体、賦形剤は、特に限定されるものではなく、例えば、マルチトール、キシリトール
、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール類、結晶セルロース、デキストリン、ブドウ糖、白糖、マンニトール、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。
【0023】
結合剤は、特に限定されるものではなく、例えば、デンプン、ゼラチン、シロップ、トラガントゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0024】
崩壊剤は、特に限定されるものではなく、例えば、デンプン、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどが挙げられる。
【0025】
滑沢剤は、特に限定されるものではなく、例えば、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、タルク、マクロゴールなどが挙げられる。
【0026】
着色剤は、特に限定されるものではなく、例えば、コチニール、カルミン、クルクミン、リボフラビン、アンナット、酸化チタン、酸化鉄、タルク、焼成シリカ、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0027】
pH調節剤は、特に限定されるものではなく、例えば、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、炭酸カリウム、乳酸、これらの塩などが挙げられる。
【0028】
緩衝剤は、特に限定されるものではなく、例えば、リン酸塩、アルギニン、ヒスチジンなどが挙げられる。
【0029】
安定化剤は、特に限定されるものではなく、例えば、アルギニン、ポリソルベート80、マクロゴール4000などが挙げられる。
【0030】
保存剤は、特に限定されるものではなく、例えば、安息香酸、フェノキシエタノール、チメロサールなどが挙げられる。
【0031】
その他の添加剤としては、溶解補助剤、界面活性剤、乳化剤、抗酸化剤、光沢化剤、発泡剤、防湿剤、防腐剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、着香剤、香料、芳香剤、崩壊補助剤などが挙げられる。
また、これらの添加剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0032】
<食後血中中性脂肪上昇抑制効果>
本発明の組成物は、食後の血中中性脂肪の上昇を抑制する作用を有する。
ここで食後の血中中性脂肪の上昇抑制とは、食後の血中中性脂肪の量又は濃度が本発明の組成物の非摂取時よりも小さくなることを含み、より好ましくは食後の血中中性脂肪の最大量又は最大濃度が本発明の組成物の非摂取時よりも小さくなること含む。また、食後の血中中性脂肪の量又は濃度が食前の血中中性脂肪の量又は濃度にまで戻るのにかかる時間が、本発明の組成物の非摂取時よりも短くなることを含んでもよい。なお、ここで食後とは、食事を摂取した後を指し、特に限定はされないが、通常は食事の摂取1時間後以降、2時間後以降、又は4時間後以降をいう。
食後の血中中性脂肪の上昇が抑制されたことは、血中中性脂肪量又は濃度を測定してその上昇抑制を観察することにより評価することができる。
本発明における中性脂肪は、特に限定されないが、通常はトリグリセリドを指す。トリグリセリド中のアシル基の炭素数、及び不飽和結合の数は特に限定されない。
【0033】
本発明の食後血中中性脂肪上昇抑制用組成物は、特に限定されないが、食後の血中中性脂肪値が高めの人に摂取されることが好ましい。
ここで食後の血中中性脂肪値が高めの人とは、食後の血中中性脂肪値の上昇程度が大きめの人であり、また脂質異常症の診断がなされているか否かは問わない。
より具体的には、トマト由来食物繊維を含有しない飲食品を摂取した後の、好ましくは後述の実施例におけるプラセボ飲料に相当する飲食品を摂取した後の、血中中性脂肪の最大値(Cmax)が200mg/dL以上となる人が、本発明の食後血中中性脂肪上昇抑制用組成物の摂取対象として好適である。
なお、アメリカ心臓協会により推奨されている心血管疾患リスクのスクリーニング基準では、食後の血中中性脂肪値が200mg/dL以上になる人とされている(Miller M, et al., Circulation 2011; 123: 2292-2333.)。本発明の組成物は、このような食後の血中中性脂肪値が高めの人に対して特に食後血中中性脂肪上昇抑制効果が発揮されやすいため、対象として好適である。
【0034】
<食後血中RLP-C上昇抑制効果>
本発明の組成物は、食後の血中RLP-Cの上昇を抑制する作用を有する。
ここで食後の血中RLP-Cの上昇抑制とは、食後の血中RLP-Cの量又は濃度が本発明の組成物の非摂取時よりも小さくなることを含み、より好ましくは食後の血中RLP-Cの最大量又は最大濃度が本発明の組成物の非摂取時よりも小さくなること含む。また、食後の血中RLP-Cの量又は濃度が食前の血中RLP-Cの量又は濃度にまで戻るのにかかる時間が、本発明の組成物の非摂取時よりも短くなることを含んでもよい。なお、ここで食後とは、食事を摂取した後を指し、特に限定はされないが、通常は食事の摂取1時間後以降、2時間後以降、又は4時間後以降をいう。
食後の血中RLP-Cの上昇が抑制されたことは、血中RLP-C量又は濃度を測定してその上昇抑制を観察することにより評価することができる。
【0035】
本発明の組成物により食後血中中性脂肪上昇抑制効果や食後血中RLP-C上昇抑制が得られる詳細なメカニズムは不明だが、一般に食物繊維による血中中性脂肪やRLPの上昇抑制に関しては,消化管内で形成されたミセルの安定化(佐藤文彦他,薬理と治療, 2009; 37: 857-866.、田中高生他,薬理と治療, 2011; 39: 813-821.)、リンパ流量を減少させることによる脂肪の移動阻害(小林夕美恵他, 薬理と治療, 2013; 41: 863-875.)、消化管内でのゲル形成による脂肪の吸着,便への排出(金平努他,薬理と治療 2014; 42: 115-121.)といった作用機序が報告されている。
【0036】
<関連疾患等の治療、改善又は予防>
血中中性脂肪が高い値にあることは、動脈硬化や心血管疾患の主要なリスク因子である(非特許文献1)。
また、RLP-C値は、食事から摂取した中性脂肪の一部が体内で加水分解を受けたレムナントリポタンパクの量を反映する指標である。レムナントリポタンパクは血管内皮の動脈硬化プラークに蓄積するため、その増加は動脈硬化や心血管疾患のリスクを高めることも知られている。そのため、RLP-Cが高い値にあることも、動脈硬化や心血管疾患のリスク因子と考えられる(非特許文献2、3)。
本発明の組成物は、食後血中中性脂肪の上昇を抑制したり、食後RLP-Cの上昇を抑制したりすることができるため、血中中性脂肪やRLP-Cの食後高値に起因する疾患又は症状を予防すること及び/又は改善することが期待される。かかる疾患や症状としては、脂質異常症、肥満、動脈硬化性疾患、高血圧症等の心血管疾患、糖尿病、ネフローゼ症候群、膵炎、甲状腺機能低下症等が挙げられる。
ここで、症状又は疾患の「改善」とは、疾患が治癒すること、症状が緩和すること、疾患又は症状の程度が低減すること、疾患又は症状の進行が遅延することを含む。また、症状又は疾患の「予防」とは、症状又は疾患の発生を防止すること、該発生を遅延させること、該発生のリスクを低下させることを含む。
【0037】
<本発明の他の側面>
本発明の第一の態様の別の側面は、食後血中中性脂肪上昇抑制用組成物の製造における、トマト由来食物繊維の使用である。
また別の側面は、食後血中中性脂肪上昇抑制における、トマト由来食物繊維の使用である。
また別の側面は、食後血中中性脂肪上昇抑制のために用いられる、トマト由来食物繊維である。
また別の側面は、トマト由来食物繊維を摂取すること又は対象に投与することを含む、食後血中中性脂肪上昇を抑制する方法である。
【0038】
本発明の第二の態様の別の側面は、食後RLP-C上昇抑制用組成物の製造における、トマト由来食物繊維の使用である。
また別の側面は、食後RLP-C上昇抑制における、トマト由来食物繊維の使用である。
また別の側面は、食後RLP-C上昇抑制のために用いられる、トマト由来食物繊維である。
また別の側面は、トマト由来食物繊維を摂取すること又は対象に投与することを含む、食後RLP-C上昇を抑制する方法である。
【0039】
本発明の組成物を摂取させる又は投与する対象は、動物であれば特に限定されないが、通常は哺乳動物であり、ヒトが好ましい。
なお、「対象に摂取させること」は「対象に投与すること」と同義であってよい。摂取は、自発的なもの(自由摂取)であってもよく、強制的なもの(強制摂取)であってもよい。すなわち、投与工程は、具体的には、例えば、トマト由来食物繊維を飲食品や飼料に配合して対象に供給し、以て対象に前記有効成分を自由摂取させる工程であってもよい。
【0040】
本発明の組成物の摂取量は、特に限定されるものではなく、例えば、60kgのヒトにおいては、トマト由来食物繊維の摂取量として、1回あたりの摂取で好ましくは、0.017g/kg(体重)以上、より好ましくは0.022g/kg(体重)以上、さらに好ましくは0.027g/kg(体重)以上とすることができる。なお、非ヒト動物を対象とする場合は、その種類により、摂取量を適宜変更することができる。
【0041】
本発明の組成物を摂取するタイミングは、食前、食後、食間、就寝前など特に限定されないが、好ましくは本発明の組成物以外の飲食品の摂取の前、より好ましくは摂取10分前から摂取時までの間である。
本発明の組成物の摂取回数は、特に限定されるものではなく、例えば、1日1回、1日2回、1日3回などでもよい。摂取期間は、特に限定されるものではなく、例えば、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間などでもよく、摂取期間を定めずに継続して用いてもよい。また、摂取期間中の摂取は、特に限定されるものではなく、例えば、連日摂取でもよいし、1日おきの摂取、2日おきの摂取、3日おきの摂取などでもよい。
【0042】
本発明の組成物は、それ自体を飲食品や医薬品等の形態としてもよいし、添加物として飲食品や医薬品等に含有させる形態としてもよい。
本発明の組成物の摂取(投与)経路は、経口又は非経口のいずれでもよいが、通常は経
口である。また、非経口摂取(投与)としては、経皮、静注、直腸投与、吸入等が挙げられる。
【0043】
<飲食品、飼料>
本発明の組成物を経口摂取される組成物とする場合は、飲食品や飼料の態様とすることが好ましい。
飲食品や飼料としては、本発明の効果を損なわず、経口摂取できるものであれば形態や性状は特に制限されず、トマト由来食物繊維を含有させること以外は、通常飲食品や飼料に用いられる原料を用いて通常の方法によって製造することができる。
【0044】
飲食品、飼料の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、加工食品、健康食品(栄養補助食品、栄養機能食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示食品など)、サプリメント、病者向け食品(病院食、病人食、介護食など)、菓子、油脂類、乳製品、レトルト食品、レンジ食品、冷凍食品、調味料、健康補助食品、飲料、栄養ドリンクなどが挙げられる。
【0045】
飲食品、飼料の形状や性状は、特に限定されるものではなく、例えば、固体状、半固体状、ゲル状、液体状、粉末状などが挙げられる。特に、飲料として使用する場合は、野菜果実飲料を好適に選択することができる。
【0046】
本発明の組成物が飲食品や飼料の態様である場合、食後血中中性脂肪上昇抑制用途や食後RLP-C上昇抑制用途が表示された飲食品や飼料として提供・販売されることができる。
【0047】
かかる「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明における「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0048】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0049】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、若しくは機能性表示食品に係る制度、又はこれらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一日内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
かかる表示としては、例えば、「食後血中中性脂肪濃度を低下させる機能性」、「食後
血中中性脂肪濃度の上昇を抑制する機能性」、「食後血中中性脂肪濃度が高めの人の食生活の改善に役立つ機能性」、「食後血中中性脂肪濃度が気になる人の食生活の改善に役立つ機能性」、「食後血中中性脂肪濃度の上昇が気になる人の食生活の改善に役立つ機能性」、「食後血中中性脂肪を低下させる機能性」、「食後血中RLP-C濃度を低下させる機能性」、「食後血中RLP-C濃度の上昇を抑制する機能性」、「食後血中RLP-C濃度が高めの人の食生活の改善に役立つ機能性」、「食後血中RLP-C濃度が気になる人の食生活の改善に役立つ機能性」、「食後血中RLP-C濃度の上昇が気になる人の食生活の改善に役立つ機能性」、「食後血中RLP-Cを低下させる機能性」、「生活習慣病が気になる人の食生活の改善に役立つ機能性」、等が挙げられる。
【0050】
<医薬品、医薬部外品>
本発明の組成物を医薬品、医薬部外品の形態とする場合、特に限定されるものではなく、例えば、経口投与形態として、糖衣錠、バッカル錠、コーティング錠、チュアブル錠などの錠剤、トローチ剤、丸剤、散剤、ソフトカプセルを含むカプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、ドライシロップを含むシロップ剤、エリキシル剤などの液剤など、及び非経口投与形態として、腹腔内投与、経腸投与、口腔内投与などが挙げられる。利便性、汎用性の観点から、医薬品、医薬部外品の形態は、経口投与形態が好ましい。
【0051】
かかる医薬品としては、血中中性脂肪やRLP-Cの食後高値に起因する疾患や状態に対して、その予防、改善又は治療のために投与されるものも好ましい。
そのような疾患や状態としては、例えば、脂質異常症、肥満、動脈硬化性疾患、高血圧症等の心血管疾患、糖尿病、ネフローゼ症候群、膵炎、甲状腺機能低下症などが挙げられる。
【0052】
医薬品の投与経路は、経口又は非経口のいずれでもよいが経口が好ましい。また、非経口摂取(投与)としては、経皮、静注、直腸投与、吸入等が挙げられる。
医薬品の形態としては、投与方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。例えば、経口投与の場合、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。また、腸溶性コーティング等により、腸溶剤とすることもできる。非経口投与の場合、座剤、軟膏剤、注射剤等に製剤化することができる。
製剤化に際しては、本発明に係る有効成分の他に、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。また、他の薬効成分や、公知の又は将来的に見出される食後血中中性脂肪上昇抑制作用又は食後血中RLP-C上昇抑制作用を有する成分等を併用することも可能である。
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、適宜、前述の添加剤等を配合して製剤化すればよい。
【実施例0053】
[試験例1]ヒト臨床試験
以下に記載の方法により、プラセボ対照クロスオーバー比較試験を行った。
【0054】
<試験対象者>
20歳以上の健康な成人男女を対象とし、以下の基準に該当する者を試験対象候補者として選定した。
(1)投薬治療又は通院治療を行っていない者
(2)過去に脂質異常の診断を受けていない者
(3)空腹時血中中性脂肪値が150mg/dL未満の者
(4)試験開始前検査の臨床検査値及び計測値から、健康と判断された者
(5)除外基準に該当しない者
除外基準は以下の通り設定した。
(1)試験食品に対して食物アレルギーのある者
(2)試験開始前検査において時間内での負荷食品の摂取が困難であった者
(3)試験開始前検査において時間内での負荷食品摂取後の経時採血が困難であった者
(4)採血時のアルコール消毒が困難なほどのアルコール過敏症の者
(5)試験期間中に妊娠、授乳の予定がある者
(6)本試験開始時に他の臨床試験に参加している者
(7)その他,試験責任医師または試験分担医師が不適当と判断した者
選定基準および除外基準に準じて選定された者より、負荷食品摂取後の血中中性脂肪のIAUCが大きい者、かつ血中中性脂肪値の変化量が大きい者を選定し、さらにそのなかで空腹時の血中中性脂肪値が高い順に研究対象者として組み込み、最終的に80名を研究対象者として選定した。
【0055】
<試験飲料>
試験飲料は、プラセボ飲料と、被検飲料であるトマト由来食物繊維含有飲料の2種類とし、いずれの飲料もカゴメ株式会社にて製造した。試験飲料の容量は265gとした。トマト由来食物繊維含有飲料は、トマト、にんじん、ケール、プチヴェール、ほうれん草、ブロッコリー、あしたば、ビート、チンゲンサイ、小松菜、かぼちゃ、パセリ、クレソン、アスパラガス、セロリ、しょうが、とうもろこし、ごぼう、グリーンピース、紫いも、キャベツ、レタス、たまねぎ、だいこん、紫キャベツ、赤じそ、ピーマン、カリフラワー、なす、はくさい及びレモンを原材料とする飲料であり、総食物繊維含量は1.6g(265gあたり)であった。プラセボ飲料は、トマト由来食物繊維含有飲料からトマト原材料を除いた飲料であり、食物繊維は検出されなかった。したがって、トマト由来食物繊維含有飲料の食物繊維量1.6gはトマト由来食物繊維の量に相当する。各試験飲料の栄養成分を表1に示す。なお、プラセボ飲料とトマト由来食物繊維含有飲料は研究対象者が性状の違いから識別が可能な状態であり、非盲検で介入を実施した。
負荷食品は、コーンポタージュスープ(名古屋製酪株式会社)200gに無塩バター(よつ葉乳業株式会社)20gとラード(雪印メグミルク株式会社)15gを混合したものとした。総脂質量は42.3gであった。
【0056】
【0057】
<試験方法>
研究対象者に、2週間の間隔を空けて試験飲料(プラセボ飲料又はトマト由来食物繊維含有飲料)と負荷食品とを摂取させ、その後の血中中性脂肪値を測定した。試験期間中の制限事項は、以下のとおりとした。
(1)試験期間中は食後の血中中性脂肪値の上昇を抑制したり、血中中性脂肪値を低下させたりする特定保健用食品や機能性表示食品の摂取を避ける。
(2)試験期間中は、通常と同様の生活習慣(食生活や睡眠、運動など)を継続する。
(3)試験前日は過度な運動を控え、試験当日は試験終了まで静かな立ち仕事や座位の仕事程度の活動とする。
(4)試験前日の夕食は、2回ともできるだけ同じ内容の食事とする。
(5)試験前日から試験開始までは、12時間以上、水または白湯以外の飲食物を摂取しない。
(6)試験開始前検査日および試験日は、各採血の間に100mLずつ水を摂取する。
(7)試験責任医師、試験分担医師、研究責任者等の指示に従う。
試験当日朝の試験食品摂取前(0時間)に、研究対象者から6mLの採血を行った。その後、試験飲料と負荷食品を交互に摂取しながら全量を摂取させた。試験飲料と負荷食品の摂取時間の合計は10分以内とした。試験飲料摂取開始から2、3、4、6時間後に、0時間と同様の方法で研究対象者から採血を行った。採取した血液を用いて、血液中の中性脂肪を測定した。
【0058】
<有効性の評価>
血中中性脂肪値上昇の指標である以下の項目を主評価項目とした。副次評価項目は設定しなかった。
(1)各時間における血中中性脂肪値
(2)各時間における血中中性脂肪値から0時間時点の値を引いた変化量(Δ血中中性脂肪値)
(3)Δ血中中性脂肪値の最大値(TG-ΔCmax)
(4)Δ血中中性脂肪値の推移から台形公式により算出したTG―IAUC(IAUCの範囲:試験食品摂取開始から6時間)
【0059】
<統計解析>
上記各評価項目について、平均値±標準偏差で表記した。統計解析ソフトにはEZR(Ver.1.40)を用いた。プラセボ飲料摂取時と他の試験飲料摂取時の各評価項目の比較は、対応のあるt検定により行った。有意差水準は、いずれも両側5%として有意差検定を行った。
統計解析に際しては、解析対象者全体を対象とした解析と、サブグループ解析を行った。サブグループ解析は、プラセボ飲料摂取後の血中中性脂肪値の最大値(Cmax)が200mg/dL以上の者を抽出して行った。
【0060】
<結果>
試験期間中に試験食品と関連した有害事象はみられなかった。また、試験飲料や負荷食品の未摂取、試験期間中の制限事項の不遵守などのコンプライアンス違反もなかった。試験完了者のうち基準を満たす73名を解析対象者として選定した(表2)。
【0061】
【0062】
図1に全解析対象者における血中中性脂肪値の評価項目の結果をそれぞれ示した。0時間時点の血中中性脂肪値において、群間で有意差は見られなかった(
図1a)。トマト由来食物繊維含有飲料を摂取した場合、2時間のΔ血中中性脂肪値がプラセボ飲料を摂取した場合と比較して有意に高値を示した(
図1b)。その他の項目においては、群間で有意差は見られなかった(
図1a、c、d)。
図2にサブグループ解析対象者における血中中性脂肪値の評価項目の結果をそれぞれ示した。0時間時点の血中中性脂肪値において、群間で有意差は見られなかった。トマト由来食物繊維含有飲料を摂取した場合、4時間の血中中性脂肪値及びΔ血中中性脂肪値がプラセボ飲料を摂取した場合と比較して有意に低値を示した(
図2a、b)。また、ΔC
max、IAUCにおいても、トマト由来食物繊維含有飲料を摂取した場合に、プラセボ飲料を摂取した場合と比較して有意に低値を示した(
図2c、d)。
【0063】
[試験例2]ヒト臨床試験
以下に記載の方法により、プラセボ対照クロスオーバー比較試験を行った。
<試験対象者>
試験例1と同様の選定基準および除外基準に準じて選定された者より、負荷食品摂取後の血中中性脂肪のIAUCが大きい者、かつ血中中性脂肪値の変化量が大きい者を選定し、さらにそのなかで空腹時の血中中性脂肪値が高い順に研究対象者として組み込み、最終的に40名を研究対象者として選定した。ただし、選定基準(3)において空腹時血中中性脂肪値が30mg/dL以上かつ150mg/dL未満の者とした。
【0064】
<試験飲料>
試験飲料は、プラセボ飲料と、被検飲料であるトマト由来食物繊維含有飲料の2種類とし、いずれの飲料もカゴメ株式会社にて製造した。試験飲料の容量は265gとした。トマト由来食物繊維含有飲料は、トマト、にんじん、レモンを原材料とする飲料であり、総食物繊維含量は3.2g(265gあたり)であった。プラセボ飲料は、トマト由来食物繊維含有飲料からトマト原材料を除いた飲料であり、食物繊維は検出されなかった。したがって、トマト由来食物繊維含有飲料の食物繊維量3.2gはトマト由来食物繊維の量に相当する。各試験飲料の栄養成分を表3に示す。なお、プラセボ飲料とトマト由来食物繊維含有飲料は研究対象者が性状の違いから識別が可能な状態であり、非盲検で介入を実施した。
負荷食品は、試験例1と同じものを用いた。
【0065】
【0066】
<試験方法>
採取した血液について、血中中性脂肪値に加えてRLP-C値も測定したことの他は、試験例1と同様に試験を実施した。
【0067】
<有効性の評価>
試験例1と同様に、血中中性脂肪値上昇の指標である以下の項目を主評価項目とした。(1)各時間における血中中性脂肪値
(2)各時間における血中中性脂肪値から0時間時点の値を引いた変化量(Δ血中中性脂肪値)
(3)Δ血中中性脂肪値の最大値(TG-ΔCmax)
(4)Δ血中中性脂肪値の推移から台形公式により算出したTG―IAUC(IAUCの範囲:試験食品摂取開始から6時間)
加えて、血中RLP-C値上昇の指標として、以下の項目を副次評価項目とした。
(5)各時間における血中RLP-C値
(6)各時間における血中RLP-C値から0時間時点の値を引いた変化量(ΔRLP-C値)
(7)Δ血中RLP-C値の最大値(RLP-C-ΔCmax)
(8)Δ血中RLP-C値の推移から台形公式により算出したRLP-C-IAUC(IAUCの範囲:試験食品摂取開始から6時間)
【0068】
<統計解析>
上記各評価項目について、試験例1と同様に、解析対象者全体を対象とした解析と、サブグループ解析を行った。サブグループ解析は、試験例1と同じくプラセボ飲料摂取後の血中中性脂肪値の最大値(Cmax)が200mg/dL以上の者を抽出して行った。
【0069】
<結果>
試験期間中に試験食品と関連した有害事象はみられなかった。また、試験飲料や負荷食品の未摂取、試験期間中の制限事項の不遵守などのコンプライアンス違反もなかった。試験完了者のうち基準を満たす28名を解析対象者として選定した(表4)。
【0070】
【0071】
図3、4に全解析対象者における血中中性脂肪値、血中RLP-C値の評価項目の結果をそれぞれ示した。0時間時点での血中中性脂肪値、血中RLP-C値において、群間で有意差は見られなかった(
図3a、
図4a)。トマト由来食物繊維含有飲料摂取時は、プラセボ摂取時と比較して摂取2時間後の血中中性脂肪値、Δ血中中性脂肪値が有意に高値を示したが、4時間、6時間の血中中性脂肪値、Δ血中中性脂肪値は有意に低値を示した(
図3b、
図4b)。TG-ΔC
max、TG―IAUCにおいては、群間で有意差は見られなかった(
図3c、d)。また、トマト由来食物繊維含有飲料摂取時はプラセボ飲料摂取時と比較して4時間、6時間の血中RLP-C値、Δ血中RLP-C値、及びRLP-C-ΔC
maxが有意に低値を示した(
図4a、b、c)。
【0072】
図5、6にサブグループ解析対象者における血中中性脂肪値、血中RLP-C値の評価項目の結果をそれぞれ示した。0時間時点での血中中性脂肪値、血中RLP-C値において、群間で有意差は見られなかった(
図5a、
図6a)。トマト由来食物繊維含有飲料摂取時は、プラセボ摂取時と比較して摂取2時間後のΔ血中中性脂肪値が有意に高値を示したが、4時間、6時間の血中中性脂肪値、Δ血中中性脂肪値は有意に低値を示した(
図5a、b)。トマト由来食物繊維含有飲料摂取時のTG-ΔC
max、TG―IAUCは、プラセボ飲料摂取時より平均値は低かったものの、群間で有意差は見られなかった(
図5c、d)。また、トマト由来食物繊維含有飲料摂取時はプラセボ飲料摂取時と比較して4時間、6時間の血中RLP-C値、Δ血中RLP-C値、及びRLP-C-ΔC
maxが有意に低値を示した(
図6a、b、c)。