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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087343
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01D 69/00 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
A01D69/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202114
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】李 昇圭
【テーマコード(参考)】
2B076
【Fターム(参考)】
2B076AA03
2B076BA07
2B076DA03
2B076EC16
2B076ED21
2B076ED30
(57)【要約】
【課題】機体の各種状態の報知に用いられる表示を行うための状態表示装置を備えた構成において、機体の外部から目視しやすい位置に状態表示装置を配置することができるとともに、状態表示装置を強固に支持することができる作業車両を提供する。
【解決手段】運転部を覆うキャビン30を備えた作業車両であって、作業車両の機体の各種状態の報知に用いられる表示を行う積層灯150を備え、積層灯150は、キャビン30に設けられた積層灯支持部160により支持された状態で設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転部を覆うキャビンを備えた作業車両であって、
作業車両の機体の各種状態の報知に用いられる表示を行う状態表示装置を備え、
前記状態表示装置は、前記キャビンに設けられた支持部により支持された状態で設けられている
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記状態表示装置は、前記機体の左右方向の中央部に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記状態表示装置は、姿勢変更可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記支持部は、前記状態表示装置の姿勢を、前記状態表示装置の使用状態での姿勢である使用姿勢から、前記状態表示装置の収納状態の姿勢である収納姿勢に変更可能に構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記キャビンの左右の側面部のうち一方の側面部の上部に設けられたアンテナユニットと、
前記一方の側面部に設けられ、前記アンテナユニットを支持するアンテナ支持部材と、を備え、
前記支持部は、前記アンテナ支持部材を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項6】
前記支持部は、前記状態表示装置と前記アンテナユニットとを互いに連結する部材を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動走行をしながら作業を行う構成において、機体の各種状態の報知に用いられる表示を行う状態表示装置を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機等の受信装置により受信した位置情報に基づいて自動走行をしながら作業を行う作業車両としてのコンバインにおいて、機体の各種状態の報知に用いられる表示を行う状態表示装置を備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。状態表示装置は、機体の外部から目視される位置に設けられ、機体外部の者に対する報知に用いられる。
【0003】
特許文献1には、GPS位置情報に基づく所定の走行経路に沿った自動走行が可能なコンバインにおいて、状態表示装置として、GPS衛星から送信される電波の受信状態によって表示内容を切り換える表示ランプを備えた構成が開示されている。表示ランプの表示内容により、機体外部の者に対して電波の受信状態が報知される。特許文献1に開示された構成において、表示ランプは、運転部を覆うキャビンの上部に立設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-240183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業車両における状態表示装置については、機体の外部から目視しやすいことと、作業中に脱落しないようにしっかりと支持されることが要求される。この点、特許文献1には、表示ランプの配置位置や支持構造について具体的な内容は記載されていない。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、機体の各種状態の報知に用いられる表示を行うための状態表示装置を備えた構成において、機体の外部から目視しやすい位置に状態表示装置を配置することができるとともに、状態表示装置を強固に支持することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車両は、運転部を覆うキャビンを備えた作業車両であって、作業車両の機体の各種状態の報知に用いられる表示を行う状態表示装置を備え、前記状態表示装置は、前記キャビンに設けられた支持部により支持された状態で設けられているものである。
【0008】
本発明の他の態様に係る作業車両は、前記作業車両において、前記状態表示装置は、前記機体の左右方向の中央部に配置されているものである。
【0009】
本発明の他の態様に係る作業車両は、前記作業車両において、前記状態表示装置は、姿勢変更可能に設けられているものである。
【0010】
本発明の他の態様に係る作業車両は、前記作業車両において、前記支持部は、前記状態表示装置の姿勢を、前記状態表示装置の使用状態での姿勢である使用姿勢から、前記状態表示装置の収納状態の姿勢である収納姿勢に変更可能に構成されているものである。
【0011】
本発明の他の態様に係る作業車両は、前記作業車両において、前記キャビンの左右の側面部のうち一方の側面部の上部に設けられたアンテナユニットと、前記一方の側面部に設けられ、前記アンテナユニットを支持するアンテナ支持部材と、を備え、前記支持部は、前記アンテナ支持部材を含むものである。
【0012】
本発明の他の態様に係る作業車両は、前記作業車両において、前記支持部は、前記状態表示装置と前記アンテナユニットとを互いに連結する部材を含むものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、機体の各種状態の報知に用いられる表示を行うための状態表示装置を、機体の外部から目視しやすい位置に配置することができるとともに強固に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの左側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの右側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るコンバインの平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るキャビンの左側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るキャビンの正面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るキャビンの平面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るアンテナユニットおよびその支持構成を示す左側面図である。
図8】本発明の一実施形態に係るアンテナユニットおよびその支持構成を示す正面図である。
図9】本発明の一実施形態に係るアンテナユニットおよびその支持構成を示す平面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る積層灯およびその支持構成を示す左側面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る積層灯およびその支持構成を示す背面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る積層灯およびその支持構成を示す左後方斜視図である。
図13】本発明の一実施形態に係る積層灯の姿勢を変更した状態を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に説明する本発明の実施の形態では、本発明に係る作業車両として、コンバインを例にとって説明する。ただし、本発明に係る作業車両は、運転部を覆うキャビンを備えたものであればよい。本発明が適用される作業車両としては、自脱型コンバインや普通型コンバイン等の各種コンバインの他、例えばトラクタや土木作業用のホイルローダ等が挙げられる。
【0016】
図1から図3を用いて、本実施形態に係る作業車両としてのコンバイン1の全体構成について説明する。なお、以下の説明では、コンバイン1の前方(図1における左方)に向かって左側および右側を、それぞれコンバイン1における左側および右側とする。
【0017】
図1から図3に示すように、コンバイン1は、左右一対のクローラ部3,3を有するクローラ式の走行装置として構成された走行部2と、走行部2により支持された走行機体4とを備える。コンバイン1は、穀稈を刈り取る刈取部5と、刈取部5により刈り取られた穀稈を脱穀処理する脱穀部6と、脱穀部6から取り出された穀粒を貯留する穀粒貯留部としての穀粒タンク7と、穀粒タンク7内の穀粒を排出する穀粒排出装置としての排出オーガ9とを備える。コンバイン1は、走行機体4上に搭載された駆動源としてのエンジン11を備える。また、コンバイン1は、運転部12を覆うキャビン30を備えている。
【0018】
走行部2を構成する各クローラ部3は、走行機体4の下方において前後方向に延設されたトラックフレーム3aと、トラックフレーム3aに支持された駆動スプロケット3c等の各種回転体と、これらの回転体に巻回された履帯3bとを有する。クローラ部3は、駆動スプロケット3cにおいて、エンジン11の動力の伝達を受けて駆動する。
【0019】
刈取部5は、圃場の稲、麦等の穀稈を刈り取りながら取り込むための装置構成であり、走行機体4の前部に設けられている。刈取部5は、走行機体4の前側において、コンバイン1の機体幅の略全体にわたって設けられている。刈取部5は、走行機体4に対して、昇降用の油圧シリンダを介して所定の軸回りに回動可能に装着されており、油圧シリンダの伸縮動作による回動動作によって昇降調節可能に設けられている。
【0020】
刈取部5は、刈取フレームとしての刈取支持機枠5aを有し、この刈取支持機枠5aに、分草体5b、引起装置5c、刈刃装置5e、および穀稈搬送装置5fを支持させて構成されている。刈取部5は、分草体5bにより圃場の穀稈を分草し、分草した穀稈を引起装置5cにより引き起し、引き起した穀稈を穀稈搬送装置5fにより後側へ搬送しつつ刈刃装置5eにより切断して刈り取る。刈取部5は、刈り取った穀稈を脱穀部6に搬送する。刈取部5を構成する各装置は、エンジン11から伝達される動力により作動する。
【0021】
走行機体4上には、脱穀部6と穀粒タンク7が横並び状に設けられている。脱穀部6は機体左側に、穀粒タンク7は機体右側にそれぞれ配置されている。コンバイン1は、走行部2により走行しながら刈取部5による穀稈の刈取りや脱穀部6による脱穀等を行う。
【0022】
脱穀部6は、前後方向を回転軸方向とする扱胴6aと、扱胴6aの左方に設けられた穀稈供給装置とを有する。穀稈供給装置は、刈取部5により刈り取られた穀稈の株元を挟持して穂先を扱胴6a側とした横臥姿勢で穀稈を後方へ搬送する。穀稈供給装置は、左右方向を回転軸方向とする複数のスプロケットに巻回されたフィードチェンと、フィードチェンと協働して穀稈の株元を挟扼する穀稈供給挟扼体とを有する。
【0023】
走行機体4上における脱穀部6の下方には、脱穀部6により脱穀処理された処理物を選別処理する選別部8が設けられている。選別部8は、揺動選別装置8aと、風選別装置および穀粒搬送装置とを有する。選別部8は、脱穀部6から落下してきた処理物を揺動選別装置8aにより揺動選別し、揺動選別後の処理物を風選別装置により風選別する。選別部8は、風選別後の処理物のうち、穀粒を穀粒搬送装置により穀粒タンク7に向けて右方へ搬送し、藁屑や塵埃などを風選別装置により後方へ飛ばして機体の外部に排出する。穀粒搬送装置により穀粒タンク7に向けて搬送された穀粒は、穀粒タンク7に貯留される。
【0024】
走行機体4上には、排出オーガ9が設けられている。排出オーガ9は、走行機体4の右後側に設けられた縦取出しコンベア9bを介して走行機体4に対して旋回可能に設けられている。排出オーガ9は、スクリューコンベアを内装しており、先端部に排出口9aを有する。また、排出オーガ9は、その基部を中心として上下昇降回動可能に設けられている。
【0025】
排出オーガ9は、走行機体4の右後側の縦取出しコンベア9bから左前方に水平状に延伸した状態を収納状態としている。排出オーガ9は、収納状態において、平面視で、先端部を刈取部5の左側の部分に位置させ、機体の対角線に沿うように延伸している(図3参照)。排出オーガ9は、オーガ受け部としてのオーガレスト27に載置支持されることで収納状態となる。
【0026】
穀粒タンク7に貯留されている穀粒は、排出オーガ9内のスクリューコンベアにより搬送され、排出口9aから排出される。排出口9aから排出された穀粒は、トラックの荷台やコンテナ等に投入される。排出オーガ9は、穀粒の排出作業の際、収納状態から機体の左右方向または上下方向に回動することで、排出口9aを機体の外側に移動させる。
【0027】
走行機体4上において、脱穀部6の後方には、脱穀部6による脱穀処理後の排藁を処理する排藁処理部10が設けられている。排藁処理部10は、排藁搬送装置10aと、排藁切断装置10bとを有する。排藁搬送装置10aは、脱穀部6により脱穀済みの穀稈(排稈)を後方に搬送して機体の外部に排出するかあるいは排藁切断装置10bに搬送する。排藁切断装置10bは、排藁搬送装置10aから搬送された排稈を切断して機体の外部に排出する。
【0028】
走行機体4上において、刈取部5の右方であって穀粒タンク7の前方には、キャビン30により覆われた運転部12が設けられている。つまり、運転部12は、走行機体4の前部の上方においてキャビン30内に設けられている。運転部12の前部には、操向操作部としてのハンドル13が設けられており、ハンドル13の後方に、運転席14が設けられている。また、運転席14の左側方には、主変速レバー15を含む各種操作具等が配設されている。
【0029】
運転部12の後下方には、エンジン11を含む原動機部が設けられている。エンジン11の動力は、変速装置等を介して、コンバイン1が備える各部の各種装置に伝達される。エンジン11は、ディーゼルエンジンである。
【0030】
図4から図6を用いて、キャビン30の構成について説明する。キャビン30は、前面部31、後面部32、左側壁部33、右側壁部34、天井部をなすルーフ部35、および床部36を有し、これらの部分により全体として略箱状に構成されている。
【0031】
キャビン30の前面部31は、その上側の過半部分を構成する前傾状の前上面部31aと、前面部31の略下半部を構成する前下がりの傾斜状の前下面部31bとを有し、全体として側面視で後側に凹の屈曲形状を有する。前上面部31aは、ガラスやアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等からなる矩形状の透明板により、全体的に透明な窓部として形成されている。前下面部31bは、鋼板等の金属製の部材により構成されている。
【0032】
キャビン30の左側壁部33は、下側の部分を、鋼板等により構成された板金製の部分である下部側面部41としている(図4参照)。左側壁部33において、前後方向の中間部には、上下方向に沿う直線状の左支柱部42が設けられている。
【0033】
左支柱部42は、左側壁部33の上部において上下方向の略全体にわたるように設けられている。左支柱部42は、平面断面視で矩形状をなす柱部分であり、鉛直状の平坦な左側面42aを有する。左支柱部42は、左側面42aを、左側壁部33における他の部分に対してわずかに左方に突出させるように設けられている。
【0034】
左側壁部33において、下部側面部41の上側かつ左支柱部42の後側には、矩形状の左後窓部43が設けられている。左後窓部43は、左側壁部33において左支柱部42の後側の部分をなす左側板44の上部により左支柱部42とともに形成された枠状の部分に対して矩形状のガラス等の透明板を取り付けることにより構成されている。左側板44の下部により、下部側面部41が形成されている。
【0035】
左側壁部33において、左後窓部43の前方の部分は、左前窓部47となっている。左前窓部47は、略逆台形状を有し、前側の縁部を前面部31の前上面部31aの前傾状の傾斜に沿わせるとともに、後側の縁部を左支柱部42の上部に沿わせている。左前窓部47は、ガラスやアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等からなる矩形状の透明板により形成されており、上下方向について前面部31の前上面部31aと略同じ範囲に設けられている。
【0036】
左側壁部33において、左前窓部47の上側には、前上側板57(図8参照)が設けられている。前上側板57は、左側壁部33の左支柱部42よりも前側の部分の上縁部を形成している。前上側板57は、下縁部を、左前窓部47の上縁部に対して内側(右側)から重ねている。
【0037】
キャビン30の右側壁部34には、乗降用の開閉扉であるドア48が設けられている(図2参照)。ドア48は、前側から外方に開くようにキャビン30のフレーム部分に対して回動可能に支持されている。
【0038】
キャビン30のルーフ部35は、平面視で前後方向を長手方向とする略矩形状の外形を有する。ルーフ部35は、前側の縁端部を、前面部31の上端部に対して前側に庇状に突出させており、後側の縁端部を、後面部32の上端部に対して後側に庇状に突出させている。ルーフ部35の前端面部には、複数の照明部51が横並びに設けられている(図5参照)。
【0039】
ルーフ部35は、扁平状の外形を有するとともに中空状に構成されている。ルーフ部35は、ルーフ部35の基部をなす下側パネル(図示略)と、下側パネルの上側に設けられたルーフパネル50とを有し、これらのパネルにより中空部を形成している。ルーフパネル50は、上面部50aと、上面部50aの左右両側において下側に向けて屈曲形成された左右の側面部50bとを有する。ルーフパネル50は、下側パネル部を全体的に上側および左右両側から被覆するように設けられたカバー部材である。
【0040】
また、ルーフパネル50の左側の側面部50bは、左側壁部33の上縁部を左方から覆っており、ルーフパネル50の右側の側面部50bは、右側壁部34の上縁部を右方から覆っている。ルーフ部35の内部には、コンバイン1が備える空調装置の室内機等が設けられている。
【0041】
以上のような構成を備えたキャビン30において、キャビン30の左方の側面部は、左側壁部33とルーフ部35の左側の部分とにより形成されている。また、キャビン30の右方の側面部は、右側壁部34とルーフ部35の右側の部分とにより形成されている。以下では、キャビン30において、左側壁部33とルーフ部35の左側の部分とを含む左方の側面部をキャビン左側面部37とする。
【0042】
本実施形態に係るコンバイン1は、衛星からの位置情報を受信するためのアンテナユニット60を備える。アンテナユニット60は、キャビン30の左右の側面部のうちキャビン左側面部37の上部に設けられている。アンテナユニット60は、キャビン左側面部37の上部の左方の近傍に位置するように、キャビン30に対して所定の支持部材を介して支持された状態で設けられている。
【0043】
アンテナユニット60は、平面視で略矩形状をなす箱状の外形を有し、長手方向を前後方向とする向きで設けられている。アンテナユニット60は、上下方向について、ルーフ部35と略同じ高さ位置に設けられている。具体的には、アンテナユニット60は、上下方向の寸法を、ルーフパネル50の側面部50bの上下方向の寸法と略同じとし、上下方向について、上下方向の略全体を、ルーフパネル50の側面部50bの高さ範囲に位置させるように設けられている。
【0044】
アンテナユニット60は、前後方向について、全体または略全体を、キャビン左側面部37に設けられた左支柱部42よりも前側に位置させている。具体的には、アンテナユニット60は、前後方向について、後端部を、左支柱部42の上端部の近傍に位置させており、左側面視で左前窓部47の上縁部に沿うように設けられている。アンテナユニット60は、前後方向について、左前窓部47の上縁部と略同じ長さを有する。アンテナユニット60は、前後方向について、ルーフ部35の全体の長さに対して略1/3の寸法を有し、ルーフ部35に対して左前側に位置するように設けられている(図6参照)。
【0045】
アンテナユニット60は、左右方向について、右側面部を、ルーフパネル50の左側の側面部50bの直左方に位置させるように設けられている。このように、アンテナユニット60は、キャビン30に対して、ルーフ部35の前部の左方に隣接配置されている。
【0046】
このようなアンテナユニット60の配置構成によれば、キャビン30をコンバイン1の機体における右前部に設けた構成において、アンテナユニット60は、左右方向について機体の略中央部に位置する(図3参照)。また、アンテナユニット60がルーフ部35の前左方に位置することから、照明部51による配光やキャビン30内からの視野がアンテナユニット60により妨げられることがない。また、キャビン30の左側方には、収納状態の排出オーガ9との間に空間が形成されており、アンテナユニット60は、その空間を利用して配置されている。
【0047】
アンテナユニット60は、測位衛星からの電波を受信してコンバイン1の位置を測定するための測位ユニットとして構成されている。アンテナユニット60は、受信部としての受信装置61と、演算部としての慣性航法装置62と、通信部としての無線通信装置63と、これらの装置を収容するケース64とを備えている。アンテナユニット60により、コンバイン1の自動操舵システムが構成されている。
【0048】
受信装置61は、測位衛星からの電波を受信し、受信した電波を信号に変換して慣性航法装置62に送信する。受信装置61は、例えば、GNSS衛星群からの電波を受信するGNSS受信機(GNSSアンテナ)や、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信するGPS受信機(GPSアンテナ)等である。
【0049】
慣性航法装置62は、3軸のジャイロと3方向の加速度を測定し、姿勢方位データを算出する。また、慣性航法装置62は、受信装置61から送信される信号に基づいて位置データを算出する。慣性航法装置62は、受信装置61からの位置情報に基づいて位置データを算出する演算装置として機能する。例えば、慣性航法装置62がGNSS受信機を搭載することで、慣性航法装置62により算出される姿勢方位データの信頼性が向上する。
【0050】
アンテナユニット60は、慣性航法装置62を備えることで、悪天候、電波障害等で測位衛星からの電波を受信できない状況においても、慣性航法装置62によって検出した3方向の加速度に基づいて、移動速度や移動距離などを算出して測位する慣性航法を利用することが可能となる。
【0051】
無線通信装置63は、慣性航法装置62によって算出された位置データおよび姿勢方位データを無線通信によって外部に送信する。無線通信装置63は、例えば無線LAN(Local Area Network)やモバイル通信を用いたデータ通信装置である。無線通信装置63から送信されるデータは、例えばオペレータが所持する携帯端末やコンバイン1のECU(Electronic Control Unit)等で受信され、圃場内での位置確認やコンバイン1の姿勢(前後左右への傾き等)の確認等に利用される。
【0052】
ケース64は、ケース64の下部をなす下ケース体65と、ケース64の上部をなす上ケース体66とを有し、これらのケース体によって収容空間を形成するとともにアンテナユニット60の外形をなしている。ケース64は、下ケース体65および上ケース体66により、前後方向を長手方向とした比較的扁平な箱状の外形をなしている。下ケース体65および上ケース体66は、例えば樹脂製の部材である。
【0053】
下ケース体65は、上側を開放させた箱状の部材であり、水平状の底面部65aと、前後左右の側面部を含み上縁部によって矩形状の開口部を形成する周壁部65bとを有する(図7参照)。上ケース体66は、下ケース体65の開口部を上側から覆う蓋状の部分である。上ケース体66は、前後左右の面部によって矩形状の縁部を形成しており、この縁部を下ケース体65の矩形状の開口部に嵌合させた状態で設けられている。上ケース体66は、下側の開口縁部を下ケース体65の上側の開口縁部に対して外側から重ねた状態で下ケース体65に嵌合しており、両ケース体は、互いの嵌合部分を貫通するボルト等の固定具67(図7参照)により複数箇所で互いに固定されている。
【0054】
ケース64内において、前方から後方にかけて、無線通信装置63、受信装置61および慣性航法装置62の順に、これらの装置が所定の間隔をあけて配置されている。これらの装置は、ケース64内において下ケース体65の底面部65aの上側に設けられた図示せぬ取付板に対してボルト等の固定具によって固定された状態で設けられている。
【0055】
以上のように、アンテナユニット60は、ケース64内に受信装置61、慣性航法装置62および無線通信装置63を収容した一体的なユニットとして構成されている。
【0056】
アンテナユニット60によって取得される測位データ(位置データおよび姿勢方位データ)は、あらかじめ設定された経路上を自律的に走行しながら作業を行う自律型のコンバイン1の制御に用いられる。位置データは、例えば、コンバイン1が所定の経路に沿って走行しているか否かの判定に用いられる。また、姿勢方位データは、例えば、コンバイン1の傾斜を認識することで、コンバイン1の走行状態や圃場の状態の確認に用いられる。また、オペレータが無線通信装置63からの送信データを受け取ることで、コンバイン1に対してリアルタイムの指示を送ることができる。
【0057】
なお、アンテナユニット60の構成は、本実施形態に限定されるものではない。アンテナユニット60の構成としては、例えば、受信装置61に、受信装置61によって受信した位置情報から位置データを算出する演算部としての機能を持たせることで、慣性航法装置62を省略した構成であってもよい。
【0058】
アンテナユニット60の支持構成について、図4から図9を用いて説明する。なお、図7および図8においては、ルーフパネル50の一部を切り欠いた状態で示している。
【0059】
コンバイン1は、アンテナユニット60を支持するアンテナ支持部材としての支持フレーム70を備えている。支持フレーム70は、所定の屈曲形状ないし湾曲形状を有する金属製の丸パイプ状の部材により構成されたフレーム部分であり、キャビン左側面部37に設けられている。
【0060】
支持フレーム70は、前後に延伸するように構成されている。支持フレーム70は、前後の両端部を除いた大部分を、略前後方向に延伸したフレーム本体部としている。支持フレーム70は、パイプ状の部材による屈曲形状をなす部分として、前側から後側にかけて順に、前固定部71と、前後延伸部72と、傾斜部73と、後固定部74とを有する。
【0061】
前固定部71は、左右方向を軸方向とした部分であり、キャビン左側面部37から左方に向けて延出した部分である。前固定部71の右側の端部が、支持フレーム70の前側の端部となる。
【0062】
前後延伸部72は、前後方向を軸方向とした部分であり、前固定部71の左端部から、前固定部71とともに直角状の角部をなすように後方に向けて水平状に延伸した部分である。前後延伸部72と前固定部71との間の角部は湾曲部となっている。
【0063】
傾斜部73は、平面視において前側から後側にかけて徐々に左右外側(左側)から左右内側(右側)に向かう傾斜方向を軸方向とした部分である。傾斜部73は、前後延伸部72の後端部から、平面視において前後延伸部72とともに鈍角状の角部をなすように斜め後右方に向けて延伸した部分である。平面視において、傾斜部73と前後延伸部72のなす角度は、例えば170°程度である。
【0064】
後固定部74は、左右方向を軸方向とした部分であり、傾斜部73の後端部から、傾斜部73とともに鈍角状の角部をなすように右方に向けて水平状に延伸した部分である。平面視において、傾斜部73と後固定部74のなす角度は例えば100°程度である。傾斜部73と後固定部74との間の角部は湾曲部となっている。後固定部74の右側の端部が、支持フレーム70の後側の端部となる。
【0065】
支持フレーム70においては、前後延伸部72および傾斜部73により、略前後方向に延伸したフレーム本体部が形成されている。支持フレーム70は、左側面視において、ルーフパネル50の左側の側面部50bの下縁部の下方近傍に位置し、ルーフパネル50の左側の側面部50bに沿うように設けられている。
【0066】
支持フレーム70は、前端部および後端部を、キャビン左側面部37に固定させた状態で設けられている。すなわち、支持フレーム70は、前端部となる前固定部71の右側の端部、および後端部となる後固定部74の右側の端部を、それぞれキャビン左側面部37に固定させた状態で設けられている。
【0067】
支持フレーム70の前側の端部は、キャビン左側面部37において、前面部31を構成する前上面部31aの上端部近傍に位置している。支持フレーム70の前側の端部は、キャビン左側面部37の前上部を構成する前上側板57に対して、前取付プレート76を介して固定されている。
【0068】
前取付プレート76は、略矩形状の外形を有する板状部材であり、板厚方向を左右方向とする向きで、前上側板57に対して、固定ボルト78により前後2箇所で固定されている。固定ボルト78は、前取付プレート76および前上側板57を貫通し、前上側板57の裏側(右側)に設けられたナット部79(図8参照)に螺挿されている。前取付プレート76は、上部を固定ボルト78により前上側板57に対して固定させ、下部を前上側板57から下方に延出させている。
【0069】
前取付プレート76の下部は、左前窓部47の前上側の角部に対して左右外側(左側)の近傍に位置している。前取付プレート76の下部に対して、支持フレーム70の前固定部71の右端部が固定されている。前固定部71の右端部は、前取付プレート76の下部に形成された円形状の開口部76a(図8参照)に嵌合した状態で、溶接等により前取付プレート76に固定されている。
【0070】
前取付プレート76と支持フレーム70との間には、補強プレート80が設けられている。補強プレート80は、上下方向について前取付プレート76と略同じ寸法を有する板状の部材であり、前後方向を板厚方向とする向きで、前固定部71の後側に設けられている。補強プレート80は、前取付プレート76の前後方向の中間部の位置において前取付プレート76に対して垂直状に左方に突出するように設けられている。補強プレート80は、前取付プレート76に対して溶接等によって固定されるとともに、前固定部71の右端部に対して溶接等によって固定されている。
【0071】
支持フレーム70の前固定部71は、前取付プレート76のうち、左側面視でルーフパネル50の左側の側面部50bから下方に延出した部分に対して固定されている。前上側板57に対する固定ボルト78による前取付プレート76の固定部分は、ルーフパネル50の左側の側面部50bによって左方から覆われている。
【0072】
支持フレーム70の後側の端部は、キャビン左側面部37において、左後窓部43の後上側の角部の近傍に位置している。支持フレーム70の後側の端部は、キャビン左側面部37の後部を構成する左側板44の上端部に対して、後取付プレート81を介して固定されている(図7参照)。
【0073】
後取付プレート81は、略截頭二等辺三角形状の外形を有する板状部材であり、板厚方向を左右方向とするとともに、頂部側を前側とする向きで、左側板44に対して固定されている。後取付プレート81は、左側板44に対して、固定ボルト82により前後2箇所で固定されている。固定ボルト82は、左側板44を貫通し、左側板44の裏側(右側)に設けられた図示せぬ雌ネジ部に螺挿されている。
【0074】
後取付プレート81に対して、支持フレーム70の後固定部74の右端部が固定されている。後固定部74の右端部は、後取付プレート81の下部に形成された円形状の開口部81aに嵌合した状態で、溶接等により後取付プレート81に固定されている。
【0075】
支持フレーム70の後固定部74は、後取付プレート81のうち、左側面視でルーフパネル50の左側の側面部50bから下方に延出した部分に対して固定されている。左側板44に対する固定ボルト82による後取付プレート81の固定部分の上部は、ルーフパネル50の左側の側面部50bによって左方から覆われている。
【0076】
以上のようにキャビン30に対して固定支持された支持フレーム70に対して、支持フレーム70の前部の上にアンテナユニット60が支持されている。アンテナユニット60は、支持フレーム70の前後延伸部72において前後2箇所に設けられた支持ブラケット90に固定された状態で支持されている。前側の支持ブラケット90は、支持フレーム70に対し、前固定部71と前後延伸部72による角部の近傍に設けられており、後側の支持ブラケット90は、前後延伸部72の前後の中間部に設けられている。
【0077】
支持ブラケット90は、支持フレーム70に固設された取付ブラケット91に固定されている。つまり、支持ブラケット90は、支持フレーム70に対して取付ブラケット91を介して設けられている。支持ブラケット90および取付ブラケット91は、支持フレーム70の前後延伸部72の軸心位置を中心として左右対称または略左右対称となるように構成されている。また、前後の支持ブラケット90および取付ブラケット91の組同士は、前後方向について対称または略対称となるように構成されている。
【0078】
取付ブラケット91は、板状の部材を屈曲形成した態様の長手状の部材であり、長手方向を左右方向として、平面視で前後延伸部72の軸方向に直交するように、前後延伸部72の上側に設けられている。取付ブラケット91は、互いに平行な前面部91aおよび後面部91bと、上面部91cとを有し、これらの面部によって側面視で下側を開放側とした略「U」字形状をなしている。
【0079】
取付ブラケット91の前面部91aおよび後面部91bの左右の中央部の下側には、前後延伸部72を嵌合させるための半円状の切欠部が形成されている。取付ブラケット91は、前面部91aおよび後面部91bの切欠部に前後延伸部72を嵌合させた状態で、溶接等により前後延伸部72に固定されている。取付ブラケット91は、長手方向についてアンテナユニット60のケース64の幅方向(左右方向)の寸法よりも短く、平面視でアンテナユニット60の外形の範囲内に設けられている。
【0080】
支持ブラケット90は、板状の部材を屈曲形成した態様の長手状の部材であり、長手方向を左右方向として、平面視で前後延伸部72の軸方向に直交するように、前後延伸部72の上側に設けられている。支持ブラケット90は、取付ブラケット91と略同じ長さを有する。
【0081】
支持ブラケット90は、前後方向を板厚方向とする固定面部90aと、固定面部90aの上端から直角状に屈曲形成された水平状の支持面部90bと、固定面部90aの左右両端から直角状に屈曲形成された左右の側面部90cとを有する。支持ブラケット90においては、支持面部90bが、アンテナユニット60のケース64の取付けを受ける面部となる。支持面部90bは、取付ブラケット91の上面部91cと略同じ高さに位置している。
【0082】
前側の支持ブラケット90は、固定面部90aを後側とする向きで、取付ブラケット91の前側に位置し、固定面部90aを取付ブラケット91の前面部91aに重ねた状態で、固定ボルト92により左右両端の2箇所で取付ブラケット91に固定されている。固定ボルト92は、固定面部90aおよび前面部91aを貫通し、取付ブラケット91の前面部91aの後側に設けられたナット部93に螺挿されている。
【0083】
後側の支持ブラケット90は、固定面部90aを前側とする向きで、取付ブラケット91の後側に位置し、固定面部90aを取付ブラケット91の後面部91bに重ねた状態で、固定ボルト94により左右両端の2箇所で取付ブラケット91に固定されている。固定ボルト94は、固定面部90aおよび後面部91bを貫通し、取付ブラケット91の後面部91bの前側に設けられたナット部95に螺挿されている。
【0084】
このような前後の支持ブラケット90に対し、アンテナユニット60のケース64が、固定ボルト96により支持面部90bに固定されている。固定ボルト96による固定部は、各支持ブラケット90において左右両側の2箇所に設けられている。このため、支持ブラケット90の支持面部90bには、左右両側の2箇所に、固定ボルト96を貫通させるための孔部90eが形成されている(図9参照)。このように、アンテナユニット60は、前後の支持ブラケット90に対して2箇所ずつ計4箇所で固定ボルト96により固定されている。各固定ボルト96は、支持ブラケット90の支持面部90bを下側から貫通し、ケース64内において下ケース体65の底面部65aに臨んでネジ穴を開口させるように設けられた筒状の部材からなる雌ネジ部97に螺挿されている。
【0085】
アンテナユニット60は、支持フレーム70の略前半部の上側に支持された状態で設けられている。詳細には、アンテナユニット60は、支持フレーム70に対して、平面視において、ケース64の外形の左右の中心を前後延伸部72の軸心位置に一致または略一致させる位置に設けられている。また、アンテナユニット60は、前後方向について、ケース64の前端部を、前固定部71より前方に位置させるとともに、ケース64の後端部を、前後延伸部72と傾斜部73による屈曲部よりも前方に位置させている。
【0086】
以上のようにキャビン30の左方上部に支持フレーム70によってアンテナユニット60を支持した構成に対し、手摺部100が設けられている。手摺部100は、アンテナユニット60に対する作業等を行うために用いられる。手摺部100は、所定の屈曲形状ないし湾曲形状を有する金属製の丸パイプ状の部材により構成されており、キャビン30のキャビン左側面部37に設けられている。
【0087】
手摺部100は、上下に延伸するように構成されている。手摺部100は、上下の両端部を除いた大部分を、側面視で上下方向に延伸した手摺本体部としている。手摺部100は、パイプ状の部材による屈曲形状をなす部分として、下側から上側にかけて順に、下固定部101と、傾斜延伸部102と、上固定部103とを有する。
【0088】
下固定部101は、左右方向を軸方向とした部分であり、キャビン左側面部37から左方に向けて延出した部分である。下固定部101の右側の端部が、手摺部100の下側の端部となる。
【0089】
傾斜延伸部102は、側面視において上下方向に沿う方向、かつ正面視において下側から上側にかけて徐々に左右内側(右側)から左右外側(左側)に向かう傾斜方向を軸方向とした部分である。傾斜延伸部102は、正面視において下固定部101とともに鈍角状の角部をなすように斜め左上方に向けて延伸した部分である。傾斜延伸部102と下固定部101との間の角部は湾曲部104となっている。
【0090】
上固定部103は、上下方向を軸方向とした部分であり、傾斜延伸部102の上端部から、傾斜延伸部102とともに鈍角状の角部をなすように上方に向けて延伸した部分である。上固定部103の上端部が、手摺部100の上側の端部となる。
【0091】
手摺部100においては、傾斜延伸部102および上固定部103により、側面視で上下方向に延伸した手摺本体部が形成されている。この手摺本体部の大部分をなす傾斜延伸部102が、手摺部100において主に作業者により把持される部分となる。手摺部100は、左側面視において、キャビン左側面部37を構成する左支柱部42に大部分を重ねる位置に設けられている。
【0092】
手摺部100は、上端部を支持フレーム70に連結させるとともに、下端部をキャビン左側面部37に固定させた状態で設けられている。すなわち、手摺部100は、上固定部103の上端部を支持フレーム70に連結支持させ、下固定部101の右側の端部をキャビン左側面部37に固定させた状態で設けられている。
【0093】
手摺部100の上端部は、支持フレーム70に固設された上側の連結部材である上支持ブラケット110を介して、支持フレーム70に連結されている。上支持ブラケット110は、支持フレーム70において、後側の支持ブラケット90と、前後延伸部72と傾斜部73による角部との間の部分に対して、支持フレーム70の下側に設けられている。
【0094】
上支持ブラケット110は、板状の部材を所定の形状に屈曲形成した態様の部材である。上支持ブラケット110は、左右方向を板厚方向とした略矩形状の固定面部110aと、固定面部110aの前後の端部から左右内側(右側)に向けて直角状に屈曲した前後の側面部110bとを有し、これらの面部によって上面視で右側を開放側とした略「U」字形状をなしている。上支持ブラケット110においては、固定面部110aが、手摺部100の上端部の取付けを受ける面部となる。
【0095】
上支持ブラケット110の前後の側面部110bの上部の左側には、支持フレーム70の前後延伸部72を嵌合させるための凹状の切欠部110cが形成されている(図8参照)。上支持ブラケット110は、前後の側面部110bの切欠部110c内に前後延伸部72を位置させた状態で、溶接等により前後延伸部72に固定されている。上支持ブラケット110は、固定面部110aの上縁部を、前後延伸部72の左方に位置させている。
【0096】
手摺部100は、固定プレート115を介して、上固定部103の上端部を上支持ブラケット110に固定させている。固定プレート115は、略截頭二等辺三角形状の外形を有する板状部材であり、板厚方向を左右方向とするとともに、頂部側を下側とする向きで設けられている。固定プレート115は、上固定部103の上端部の左側に溶接等により固定されている。
【0097】
固定プレート115は、上支持ブラケット110の固定面部110aに裏側(右側)から重なった状態で、固定ボルト116により、前後2箇所で固定面部110aに固定されている。固定ボルト116は、固定面部110aおよび固定プレート115を貫通し、固定プレート115の裏側(右側)に設けられたナット部117に螺挿されている。固定ボルト116による固定部は、固定プレート115の上部の前後の角部近傍に位置している。
【0098】
手摺部100の下端部は、キャビン左側面部37を構成する下部側面部41に対して、取付部材である下支持ブラケット120を介して固定されている。下支持ブラケット120は、平面視で略「L」字状の屈曲形状をなす取付け金具である。下支持ブラケット120は、略「L」字状をなす一方の面部を固定面部として下部側面部41に沿わせた状態で、固定ボルト124により下部側面部41に固定されている。下支持ブラケット120の略「L」字状をなす他方の面部である支持面部は、固定面部121の前側から左方に向けて突出している。下支持ブラケット120に対して、手摺部100は、下固定部101と湾曲部104の一部を支持面部の後側に位置させた状態で、溶接等によって下支持ブラケット120に固定されている。
【0099】
以上のように、手摺部100は、上端側を支持フレーム70に連結支持させるとともに、下端側をキャビン左側面部37に連結支持させ、支持フレーム70とキャビン左側面部37との間に架設された状態で設けられている。
【0100】
本実施形態に係るコンバイン1は、コンバイン1の機体の各種状態の報知に用いられる表示を行う状態表示装置としての積層灯150を備える。積層灯150は、キャビン左側面部37に対し、アンテナユニット60の直後方の位置に設けられている。
【0101】
積層灯150は、円筒状の外形を有し、中心軸方向を上下方向とするように立った状態で設けられている。積層灯150は、円筒状の外形をなす面部として、円筒面状の外周面部151と、いずれも平坦な面部である底面部152および上面部153とを有する。
【0102】
積層灯150は、略上半部を、複数の表示灯部を積層した発光表示部154としている。発光表示部154は、複数の表示灯部として、上から下にかけて順に、赤色の発光表示を行う第1表示灯部154a、黄色の発光表示を行う第2表示灯部154b、および緑色の発光表示を行う第3表示灯部154cを積層した構成を有する。各表示灯部は、LED等の光源を含んで構成されている。
【0103】
積層灯150の構成、例えば、各色の発光表示を行う表示灯部の積層の順番、各表示灯部が発光する色の種類、表示灯部の積層の数、発光表示を行う構造等は、限定されるものではない。また、積層灯150の表示態様も限定されるものではない。積層灯150の表示態様としては、例えば、すべての表示灯部を消灯させたり、複数の表示灯部を同時に点灯させたり、表示灯部の点滅表示が用いられたりしてもよい。
【0104】
積層灯150は、底面部152から延出された接続線である接続コード155を介して、コンバイン1が備える制御部を構成するコントローラ(図示略)に接続されており、積層灯150の表示動作は、コントローラにより制御される。コントローラは、各種演算処理や制御を実行するCPU(Central Processing Unit)、記憶部としてのROM(read only memory)、RAM(random access memory)、入出力インターフェイス等の各種機能部をバス等により接続させた構成を備える。CPUは、ROM等に記憶された各種のプログラムに従って演算処理を行う。
【0105】
コントローラは、コンバイン1の各部に配置された各種のセンサやスイッチ等から入力される信号や、アンテナユニット60の動作モード等に基づき、積層灯150の発光表示部154のいずれかの表示灯部を発光させ、コンバイン1の機体の各種状態の報知を行う。なお、積層灯150により報知される内容は特に限定されるものではない。
【0106】
第1表示灯部154aによる赤色の発光表示は、例えば、コンバイン1で何らかのトラブルが生じた場合の注意喚起や警報の表示として用いられる。具体的には、例えば、脱穀部6における穀稈の詰まりや、穀粒タンク7内の穀粒の量が満量となることや、エンジン11の冷却水温の異常等が生じた場合、第1表示灯部154aの点灯によって報知が行われる。また、第2表示灯部154bによる黄色の発光表示は、例えば、上述したようなトラブルが生じる前段階での予備的な警報表示や、機体の自動走行における障害物の検知の報知表示等として用いられる。また、第3表示灯部154cによる緑色の発光表示は、コンバイン1が作業開始の準備が完了した状態や正常運転が行われている状態等を報知するために用いられる。
【0107】
また、積層灯150は、コンバイン1の機体の状態として、アンテナユニット60の受信装置61による受信状態に応じた報知に用いられてもよい。この場合、例えば、積層灯150は、アンテナユニット60の電波の受信状態が適性受信モードの場合、緑色の第3表示灯部154cを点灯させ、同受信状態が不安定受信状態の場合、黄色の第2表示灯部154bを点灯させ、同受信状態が受信不能状態の場合、赤色の第1表示灯部154aを点灯させるように制御される。
【0108】
以上のような積層灯150を備えた構成において、コンバイン1における積層灯150の配置および支持構成について、図3図4から図13を用いて説明する。
【0109】
積層灯150は、その表示によってコンバイン1の状態を報知するため、コンバイン1の周囲における全方向から、つまり360°の範囲でどの位置からでも発光表示部154による表示態様が把握できるように設けられる。この点に関し、積層灯150は、上下方向について、少なくとも発光表示部154の全体を、キャビン30のルーフパネル50の上面部50aより上方に位置させるように設けられている。
【0110】
積層灯150は、キャビン30に設けられた支持部である積層灯支持部160により支持された状態で設けられている。つまり、積層灯150は、キャビン左側面部37に設けられた積層灯支持部160を介して、キャビン30に対して支持された状態で設けられている。
【0111】
積層灯150の配置に関し、積層灯150は、積層灯支持部160によりキャビン左側面部37に支持されることで、機体の左右方向の中央部に配置されている。図3に示すように、コンバイン1の前部において、機体の左右方向(幅方向)については、キャビン30が右側の略半分の範囲を占めており、刈取部5の穀稈搬送装置5fが左側の略半分の範囲を占めている。このような構成において、積層灯150は、キャビン30のルーフ部35の左側に隣接した位置に配置されることで、機体の左右方向の略中央に位置している。
【0112】
積層灯150の支持構成に関し、積層灯150は、キャビン30に対するアンテナユニット60の支持構成を用いてキャビン30に対して支持されている。すなわち、キャビン30の左右の側面部のうち一方の側面部であるキャビン左側面部37の上部に設けられたアンテナユニット60と、キャビン左側面部37に設けられ、アンテナユニット60を支持する支持フレーム70とを備えた構成において、積層灯支持部160は、支持フレーム70を含んで構成されている。
【0113】
積層灯150は、支持フレーム70に対して、後側の取付ブラケット91および支持ブラケット90、アームプレート161、下支持プレート162、ヒンジ部材163および支持ステー164を介して支持された状態で設けられている。すなわち、積層灯支持部160は、支持フレーム70と、後側の取付ブラケット91および支持ブラケット90と、アームプレート161と、下支持プレート162と、ヒンジ部材163と、支持ステー164とを有する。以下では、支持フレーム70上に設けられた前後の支持ブラケット90および取付ブラケット91のうち積層灯支持部160を構成する後側の支持ブラケット90および取付ブラケット91をそれぞれ「後側支持ブラケット90」および「後側取付ブラケット91」とする。
【0114】
アームプレート161は、平面視で略台形状を有する平坦な板状部材であり、前後方向を長手方向として、後側支持ブラケット90から後方に向けて延出したアーム状の部分をなしている。アームプレート161は、右側の縁部を前後方向に沿う直線状の辺部とし、左側の縁部を、後側から前側にかけて右側から左側に向かう方向に傾斜した傾斜辺部としている。したがって、アームプレート161は、後側から前側にかけて徐々に幅(左右方向の寸法)を広げた形状を有する。
【0115】
アームプレート161は、その略全体を水平状の面部であるプレート本体部161aとしており、プレート本体部161aの左側の縁部に形成された屈曲面部161bを有する。屈曲面部161bは、プレート本体部161aに対して下方に向けて直角状に屈曲した面部である。
【0116】
アームプレート161は、後側支持ブラケット90に固定された状態で設けられている。具体的には、アームプレート161は、後側支持ブラケット90より幅方向の寸法を小さくした前側の端部を、後側支持ブラケット90に対して後側から差し込んだ態様で、プレート本体部161aを支持面部90bに対して下側から重ね、アンテナユニット60固定用の固定ボルト96によって左右2箇所で後側支持ブラケット90に固定されている。
【0117】
固定ボルト96は、プレート本体部161aに形成された孔部、および後側支持ブラケット90の孔部90eを下側から貫通し、アンテナユニット60側に設けられた雌ネジ部97に螺挿されている。つまり、アームプレート161は、2本の固定ボルト96により後側支持ブラケット90とともにアンテナユニット60に対して共締めされることで、後側支持ブラケット90に固定されている。後側支持ブラケット90は、上述のとおり支持フレーム70に固設された後側取付ブラケット91に対して固定ボルト94等によって固定されている。このように、アームプレート161は、支持フレーム70に対して、後側取付ブラケット91および後側支持ブラケット90を介して取り付けられている。
【0118】
下支持プレート162は、アームプレート161の後端部上に固設されている。下支持プレート162は、左側面視で略「L」字状の屈曲形状をなす本体部を有する。下支持プレート162の本体部は、略「L」字状の屈曲形状をなす面部として、固定面部162aおよび支持面部162bとを有する。
【0119】
下支持プレート162は、アームプレート161に対して、固定面部162aをプレート本体部161a上に重ねた状態で、固定ボルト165によって左右2箇所で固定されている。固定ボルト165は、アームプレート161の下側からプレート本体部161aおよび固定面部162aを貫通し、固定面部162a上に設けられたナット部166に螺挿されている。支持面部162bは、前後方向を板厚方向とし、固定面部162aの後側において上方に向けて立った状態となっている。
【0120】
ヒンジ部材163は、下側の羽根である下取付板部163aと、上側の羽根である上取付板部163bと、これらの取付板部を互いに回動可能に連結する軸支部163cとを有する。軸支部163cは、下取付板部163aおよび上取付板部163bのそれぞれと一体に形成された筒状の管部にピン等の軸体を挿入させた構成を有する。軸支部163cを構成する軸体の中心軸が、ヒンジ部材163における取付板部同士の回動軸C1となる。
【0121】
ヒンジ部材163は、下支持プレート162に対して、軸支部163cによる回動軸方向を左右方向とする向きで支持面部162bの後側に取り付けられている。ヒンジ部材163は、下支持プレート162に対して、下取付板部163aを支持面部162bに後側から重ねた状態で、固定ボルト168によって左右2箇所で固定されている。固定ボルト168は、ヒンジ部材163の後側から下取付板部163aおよび支持面部162bを貫通し、支持面部162bの前側に設けられたナット部169に螺挿されている。
【0122】
ヒンジ部材163は、下取付板部163aを下支持プレート162の支持面部162bに固定させるとともに、軸支部163cを、下支持プレート162の上端より下方に位置させ、上取付板部163bの上部を、支持面部162bの上端から上方に延出させている。このような構成により、ヒンジ部材163において、下取付板部163aに対する軸支部163cによる上取付板部163bの回動について、上取付板部163bの下部が支持面部162bに対して後側から接触することで、上取付板部163bの前側への回動が規制される。一方、ヒンジ部材163において、上取付板部163bの鉛直状態から後側への回動は許容される。
【0123】
支持ステー164は、屈曲板状の部材により構成されており、アームプレート161の上方において、積層灯150を載置支持する水平状の支持面部164aを有する。支持ステー164は、前後方向を板厚方向とする縦支持面部164bを有し、縦支持面部164bの上端から前方に向けて支持面部164aを水平状に延出させている。支持ステー164は、支持面部164aおよび縦支持面部164bの右側に設けられた右側面部164cを有する。支持面部164aの左側には、支持面部164aに対して下方に向けて直角状に屈曲した屈曲面部164dが形成されている。
【0124】
支持ステー164は、ヒンジ部材163に対して、縦支持面部164bの下端部を上取付板部163bに後側から重ねた状態で溶接等によって固定されている。これにより、支持ステー164は、ヒンジ部材163の軸支部163cの軸回りに上取付板部163bと一体的に回動する部分となる。
【0125】
支持ステー164においては、支持面部164a上に、積層灯150が載置支持される。支持面部164aは、矩形状の板状部分であり、平面視で円形状の外形をなす積層灯150の全体を外形の範囲内に位置させる寸法を有する。積層灯150は、底面部152を支持ステー164の支持面部164aの上面を載置面として支持面部164aに固定支持されている。
【0126】
積層灯150は、底面部152から下方に向けて突出させた複数の(例えば3本の)ネジ部156を有する(図10参照)。積層灯150は、ネジ部156を支持ステー164の支持面部164aに対して上側から貫通させ、支持面部164aの下側においてナット157にネジ部156を螺合させることで、支持面部164aに締結固定されている。支持面部164aには、ネジ部156を貫通させる複数の孔部が形成されている。また、支持面部164aには、積層灯150の底面部152から延出される接続コード155を通すための開口部164eが形成されている(図12参照)。
【0127】
以上のような積層灯150の支持構成において、積層灯支持部160は、積層灯150とアンテナユニット60とを互いに連結する部材を含む。積層灯支持部160においては、アンテナユニット60を直接的に支持する後側支持ブラケット90と、アームプレート161、下支持プレート162、ヒンジ部材163、および支持ステー164とが、積層灯150とアンテナユニット60とを互いに連結する部材となる。すなわち、アンテナユニット60と積層灯150とは、これらの積層灯支持部160の構成部材を介して互いに連結されている。
【0128】
以上のように積層灯支持部160によって立った状態で支持される積層灯150は、姿勢変更可能に設けられている。本実施形態では、積層灯150は、ヒンジ部材163によって、回動軸C1を中心として後側に倒れるように設けられており、起立状態から後側に倒れることで、姿勢を変更させる。すなわち、図13に示すように、積層灯150は、回動軸C1を中心として後側に90°または略90°回動し、円筒状の外形における中心軸の方向を前後方向に沿わせた姿勢となるように設けられている(矢印A1参照)。
【0129】
積層灯支持部160は、積層灯150の姿勢を、積層灯150の使用状態での姿勢である使用姿勢から、積層灯150の収納状態の姿勢である収納姿勢に変更可能に構成されている。積層灯150の使用姿勢は、図10等に示すように、積層灯150の円筒状の外形における中心軸方向(長手方向)を上下方向とした姿勢である。積層灯150の収納姿勢は、図13に示すように、上面部153を後側に向けるとともに、積層灯150の長手方向を前後方向とした姿勢である。
【0130】
積層灯150の姿勢を変更させるために積層灯支持部160が有する構成について説明する。積層灯支持部160は、ヒンジ部材163の上取付板部163bに対して支持ステー164を介して積層灯150を支持した構成を有する。このような構成において、支持ステー164および積層灯150の起立状態は、支持ステー164を、下支持プレート162のガイドプレート部162cに固定することによって保持される。ガイドプレート部162cは、下支持プレート162の一部として設けられている。
【0131】
ガイドプレート部162cは、左右方向を板厚方向とした板状部分であり、固定面部162aの右側において固定面部162aに対して上方に向けて直角状に屈曲形成されている。ガイドプレート部162cは、前部を、支持ステー164の右側面部164cに対して右側から重ねるとともに、後部を、支持ステー164の縦支持面部164bから後方に突出させている。
【0132】
支持ステー164は、固定ボルト170による固定部によってガイドプレート部162cに対して右側面部164cを固定させることで、姿勢を保持する。ガイドプレート部162cの上部には、固定ボルト170を貫通させるガイド孔162dが形成されている。固定ボルト170は、ガイドプレート部162cの右側からガイド孔162dを貫通し、右側面部164cの左側に設けられたナット部171に螺挿されている。
【0133】
ガイド孔162dは、回動軸C1の軸方向視(例えば左側面視)で回動軸C1を中心とした円弧に沿った上に凸の円弧状の長孔形状を有する。ガイド孔162dは、固定ボルト170を貫通させた状態で、支持ステー164を、積層灯150の使用姿勢および収納姿勢の各姿勢に対応した位置間で移動可能とする範囲(略90°の角度範囲)に形成されている。
【0134】
使用姿勢となっている積層灯150の姿勢の変更は、次のようにして行われる。まず、固定ボルト170による締結を解除することで、積層灯150を載置支持した支持ステー164が、回動軸C1の軸回りにガイドプレート部162cに対して後側に相対回動可能な状態となる。この状態において、積層灯150が収納姿勢となるように、積層灯150および支持ステー164を後側に倒す操作を行う(図13、矢印A1参照)。
【0135】
その後、固定ボルト170をナット部171に対して締結し、ガイドプレート部162cに対して支持ステー164を固定することにより、積層灯150が収納姿勢で固定保持された状態となる。積層灯150の使用状態ではガイド孔162dの前端部に位置していた固定ボルト170による固定部が、積層灯150が収納姿勢となることで、下支持プレート162の後端部に移動する。
【0136】
収納姿勢の積層灯150の保持に関しては、ガイド孔162dを貫通した固定ボルト170のガイドプレート部162cに対する係止作用が、横臥状態の積層灯150の下側への回動を規制する位置決め作用として用いられてもよい。なお、図13において、使用姿勢の積層灯150を二点鎖線で示している。また、図6において、収納姿勢の積層灯150を二点鎖線で示している。
【0137】
収納姿勢の積層灯150を使用姿勢に戻すときは、固定ボルト170による締結を解除し、積層灯150および支持ステー164を回動軸C1の軸回りに回動させて起立させ、積層灯150を使用姿勢とし、固定ボルト170による締結を行う。これにより、積層灯150が使用姿勢で固定保持された状態となる。
【0138】
図13に示すように、積層灯150の収納状態において、積層灯150は、その全体をルーフパネル50の上面部50aの下方に位置させている。つまり、収納姿勢の積層灯150の外周面部151の上端は、ルーフパネル50の上面部50aよりも下方に位置している。また、図6に示すように、収納姿勢の積層灯150は、左右方向について、円筒状の外形における左側の端部(外周面部151の左端)を、支持フレーム70の左端と略同じ位置に位置させている。したがって、積層灯150は、使用姿勢および収納姿勢のいずれの姿勢でも、左右方向について全体をアンテナユニット60のケース64の左端よりもキャビン30側(右側)に位置させている。
【0139】
なお、使用姿勢から収納姿勢となる積層灯150の姿勢変更の態様は、本実施形態に限定されるものではない。本実施形態では、使用姿勢の積層灯150を収納姿勢とする際の積層灯150の後側への回動角度(傾倒角度)は、略90°であるが、この回動角度の大きさは特に限定されない。また、本実施形態では、使用姿勢の積層灯150は、後側に倒されることで収納姿勢となるが、積層灯150を倒す方向についても特に限定されない。
【0140】
積層灯150の収納姿勢への姿勢変更は、例えば、コンバイン1をトラック等によって運搬する際や、倉庫等にコンバイン1自体を収納する際に用いられる。すなわち、コンバイン1において最も高い部位をルーフパネル50の上面部50aとした構成において、高さ制限の観点から、上面部50aよりも上方への突出部分を無くすために、積層灯150が収納姿勢とされる。したがって、積層灯150の収納姿勢は、積層灯150の全体がルーフパネル50の上面部50aより下方に位置する姿勢であることが好ましい。
【0141】
コンバイン1においては、積層灯150の姿勢変更に関し、積層灯150の姿勢が使用姿勢から収納姿勢に変更されたことを検出する姿勢変更検出装置としての検出スイッチ180が設けられている(図13参照)。検出スイッチ180は、積層灯150が収納姿勢となる位置にあることを検出するための接触式のセンサである。検出スイッチ180は、使用姿勢にある積層灯150が収納姿勢となることで検出ONの状態となる。検出スイッチ180は、コンバイン1が備えるコントローラに接続されており、検出スイッチ180の検出信号は、コントローラに入力される。
【0142】
図13に示すように、検出スイッチ180は、プッシュボタン181を有するプッシュスイッチであり、プッシュボタン181が押されることでONの状態となる。検出スイッチ180は、プッシュボタン181側を上側とする向きで、支持フレーム70上に、支持部材である支持ステー182を介して所定の位置に固定支持されている。支持ステー182は、支持フレーム70に対して溶接等によって固定されており、水平な支持面182aをなしている。支持ステー182の支持面182a上に、検出スイッチ180がボルト等の固定具によって固定支持されている。
【0143】
検出スイッチ180は、積層灯150が収納姿勢となることで、プッシュボタン181において積層灯150と回動軸C1回りに一体的に回動する支持ステー164の縦支持面部164bの接触を受ける位置に設けられている。ただし、検出スイッチ180は、プッシュボタン181において収納姿勢となる積層灯150の外周面部151の接触を受ける位置に設けられてもよい。
【0144】
以上のように検出スイッチ180を設けた構成によれば、使用姿勢にある積層灯150を収納姿勢となるように操作することで、積層灯150と一体的に回動する支持ステー164がプッシュボタン181に押圧作用し、検出スイッチ180がONの状態となる。一方、収納姿勢にある積層灯150を使用姿勢とするために持ち上げることで、支持ステー164の上昇回動にともなってプッシュボタン181に対する押圧作用が解除され、検出スイッチ180がOFFの状態となる。
【0145】
検出スイッチ180の検出信号は、例えばコントローラによる排出オーガ9の動作制御に用いられる。この場合、コントローラは、例えば、検出スイッチ180の検出信号に基づき、排出オーガ9の動作に関する制御モードを切り換えるように構成される。
【0146】
具体的には、検出スイッチ180がOFFの状態の場合、つまり積層灯150が使用姿勢にある場合、コントローラは、排出オーガ9の旋回動作および上下昇降回動動作の制御モードとして、ルーフパネル50から上方に突出した積層灯150に排出オーガ9が干渉しないような動作軌跡を描く積層灯使用時の制御モードが用いられる。ここで、排出オーガ9の旋回動作についての旋回角度を検出する角度センサを設け、コントローラにより、角度センサの検出値に基づき、排出オーガ9が積層灯150に接触しないように排出オーガ9の動作制御を行うこともできる。
【0147】
一方、検出スイッチ180がONの状態の場合、つまり積層灯150が収納姿勢である場合、積層灯150は、ルーフパネル50よりも下方かつアンテナユニット60よりも内方(右方)に位置し、排出オーガ9に干渉しない状態となる。この場合、コントローラは、排出オーガ9の動作の制御モードとして、積層灯150とは無関係の積層灯非使用時の(通常時の)制御モードが用いられる。このような排出オーガ9の動作制御は、コントローラによる自動的な操作、および運転部12に設けられた操作具による手動操作のいずれの操作についても用いることができる。
【0148】
以上のような構成を備えた本実施形態に係るコンバイン1によれば、機体の各種状態の報知に用いられる表示を行うための積層灯150を、機体の外部から目視しやすい位置に配置することができるとともに強固に支持することができる。
【0149】
積層灯150は、キャビン30に対して積層灯支持部160により支持された状態で設けられている。このような構成によれば、ルーフパネル50の配設部位をコンバイン1において比較的高い部分とするキャビン30に対し、積層灯支持部160の支持構造によって積層灯150をしっかりと支持することが可能となる。これにより、積層灯150をコンバイン1における最上部に位置させることができ、積層灯150について、コンバイン1の周囲やコンバイン1から離れた位置からでも良好な視認性を得ることができる。
【0150】
特に、上下方向について少なくとも発光表示部154の全体がキャビン30のルーフパネル50の上面部50aより上方に位置するように積層灯150を設けた構成によれば、コンバイン1の周囲における全方向から積層灯150を視認することが可能となる。これにより、コンバイン1において複数の積層灯150を設けることなく、積層灯150について良好な視認性を得ることができる。
【0151】
また、積層灯150は、キャビン30の左側の上部に設けることで、コンバイン1において機体の左右方向の中央部に配置されている。このような構成によれば、コンバイン1の周囲において積層灯150についての良好な視認性をコンバイン1の左右の両外方からバランス良く得ることができる。
【0152】
また、積層灯150は、姿勢変更可能に設けられている。このような構成によれば、コンバイン1による作業形態による積層灯150の要否等によって積層灯150の姿勢を変更することができ、コンバイン1について良好な取扱い性を得ることができる。
【0153】
本実施形態のように積層灯150をキャビン30のルーフパネル50より上方に突出させるように配置した構成においては、例えばコンバイン1の輸送に際して機体を移動させるときや、倉庫等にコンバイン1を収納するときに、積層灯150が障害となって機体の移動が妨げられる可能性がある。また、キャビン30のルーフパネル50から上方へ突出した積層灯150については、例えばキャビン30のルーフパネル50上を移動する排出オーガ9等の他の装置との干渉を避ける必要がある。
【0154】
そこで、積層灯支持部160は、積層灯150の姿勢を起立状態の使用姿勢から横臥状態の収納姿勢に変更させるように構成されている。このような構成によれば、積層灯150を収納姿勢とすることにより、例えば、コンバイン1の輸送時や収納時に積層灯150がコンバイン1の移動の障害となることを回避することができる。これにより、コンバイン1について良好な取扱い性を得ることができる。
【0155】
積層灯150の姿勢変更に関し、積層灯支持部160は、ヒンジ部材163の回動構造およびガイドプレート部162cに対する固定構造を用いて積層灯150を回動させることで、積層灯150の姿勢を変更させるように構成されている。このような構成によれば、簡単な構造および簡単な操作により、積層灯150の姿勢を変更させることができる。
【0156】
また、積層灯支持部160は、起立状態の積層灯150を、長手方向を前後方向とするように後側に倒すことで収納姿勢とするように構成されている。このような構成によれば、収納姿勢の積層灯150をキャビン左側面部37に沿わせることができるので、積層灯150をコンパクトに収納することが可能となり、積層灯150が他の装置と干渉することを抑制することができる。
【0157】
また、コンバイン1は、キャビン30のキャビン左側面部37の上部に配置されたアンテナユニット60を備え、積層灯150は、キャビン左側面部37に対してアンテナユニット60を支持する支持フレーム70に対して所定の支持部材を介して支持されている。このような構成によれば、キャビン30に対する積層灯150の支持にアンテナユニット60の支持構造を利用することができるので、コンバイン1の自動走行に関する装置をコンパクトに配置構成することができる。
【0158】
また、積層灯支持部160は、アンテナユニット60と積層灯150とを互いに連結する部材を含んで構成されており、アンテナユニット60と積層灯150とが一体的に構成されている。このような構成によれば、アンテナユニット60と積層灯150とを一体の構成として取り扱うことが可能となり、これらの装置をコンパクトに配置することができるとともに、これらの装置についてキャビン30に対する良好な組付け性を得ることができる。
【0159】
また、コンバイン1は、積層灯150が収納姿勢となったことを検知するための検出スイッチ180を有する。このような構成によれば、検出スイッチ180の検出信号を用いて、積層灯150が収納姿勢にあることをコントローラに認識させることができる。これにより、排出オーガ9の動作に関し、積層灯150との干渉を避けながら、積層灯150の姿勢に応じた効率的な操作および制御を行うことが可能となる。
【0160】
なお、積層灯150が収納姿勢となったことを検知するための装置は、ブッシュスイッチに限定されるものではなく、他の方式の接触式のセンサや非接触式のセンサ等を適宜用いることができる。また、積層灯150が使用姿勢にあることを検知するための装置が設けられてもよい。
【0161】
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係るコンバインは、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
【0162】
上述した実施形態では、積層灯150は、キャビン30のキャビン左側面部37に対して積層灯支持部160を介して設けられているが、キャビン30に対する積層灯150の配置位置は限定されるものではない。積層灯150は、キャビン30に対して、右側、後側、または前側に配置されてもよい。
【0163】
上述した実施形態では、積層灯支持部160は、積層灯150を使用姿勢において所定の高さ位置に支持するように構成されているが、積層灯150の高さ位置を変更するように構成することができる。具体的には、例えば、下支持プレート162に対するヒンジ部材163の固定に用いられる固定ボルト168の螺挿部を、支持面部162bにおいて上下方向について複数箇所設けたり、固定ボルト168を貫通させる孔部を上下に長い長孔としたりして、固定ボルト168によるヒンジ部材163の固定位置によって積層灯150の高さ位置を調整可能とすることができる。この場合、固定ボルト170を貫通させるガイド孔162dも適宜上下方向について複数箇所に設けられる。
【0164】
また、積層灯150の高さ位置の変更に関し、積層灯150は、上面部153をルーフパネル50の上面部50aの高さよりも下方に位置させる高さ位置まで上下方向に移動可能に設けられてもよい。このような構成によれば、使用姿勢の積層灯150をその姿勢のまま下方に移動させることで、積層灯150を収納状態とすることができる。
【0165】
本技術は、以下のような構成を取ることができる。なお、以下に記載の構成は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
(1)
運転部を覆うキャビンを備えた作業車両であって、
作業車両の機体の各種状態の報知に用いられる表示を行う状態表示装置を備え、
前記状態表示装置は、前記キャビンに設けられた支持部により支持された状態で設けられている
ことを特徴とする作業車両。
(2)
前記状態表示装置は、前記機体の左右方向の中央部に配置されている
ことを特徴とする前記(1)に記載の作業車両。
(3)
前記状態表示装置は、姿勢変更可能に設けられている
ことを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載の作業車両。
(4)
前記支持部は、前記状態表示装置の姿勢を、前記状態表示装置の使用状態での姿勢である使用姿勢から、前記状態表示装置の収納状態の姿勢である収納姿勢に変更可能に構成されている
ことを特徴とする前記(3)に記載の作業車両。
(5)
前記キャビンの左右の側面部のうち一方の側面部の上部に設けられたアンテナユニットと、
前記一方の側面部に設けられ、前記アンテナユニットを支持するアンテナ支持部材と、を備え、
前記支持部は、前記アンテナ支持部材を含む
ことを特徴とする前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の作業車両。
(6)
前記支持部は、前記状態表示装置と前記アンテナユニットとを互いに連結する部材を含む
ことを特徴とする前記(5)に記載の作業車両。
【符号の説明】
【0166】
1 コンバイン(作業車両)
9 排出オーガ
12 運転部
30 キャビン
37 キャビン左側面部
50 ルーフパネル
60 アンテナユニット
70 支持フレーム(アンテナ支持部材)
90 後側支持ブラケット
150 積層灯(状態表示装置)
154 発光表示部
160 積層灯支持部(支持部)
161 アームプレート
162 下支持プレート
163 ヒンジ部材
164 支持ステー
180 検出スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13