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特開2024-87350車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087350
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240624BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20240624BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20240624BHJP
   B60W 50/04 20060101ALI20240624BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240624BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/10
B60W40/06
B60W50/04
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202127
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】井上 大地
(72)【発明者】
【氏名】田村 祥
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA64
3D241BA65
3D241CE04
3D241CE05
3D241CE07
3D241DB01Z
3D241DC37Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】カメラ道路区画線と地図道路区画線との間に乖離が発生した場合であっても、車両の走路を適切に選択すること。
【解決手段】車両の周辺状況を撮像したカメラ画像を取得する取得部と、前記カメラ画像に写された道路区画線を表すカメラ道路区画線と、地図情報に含まれる道路区画線を表す地図道路区画線とのうちの少なくとも一方に基づいて、前記車両が走行可能な領域である走行可能領域を仮想的に生成する走行可能領域生成部と、前記車両の進行方向に関して前方を走行する他車両の走行軌跡を検出する他車両走行軌跡検出部と、生成された前記走行可能領域を走行するように前記車両の走行を制御する走行制御部と、を備え、前記走行可能領域生成部は、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線との間に乖離が発生した場合、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線とのうちのいずれか一方を優先して前記走行可能領域を生成するかを決定する、車両制御装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺状況を撮像したカメラ画像を取得する取得部と、
前記カメラ画像に写された道路区画線を表すカメラ道路区画線と、地図情報に含まれる道路区画線を表す地図道路区画線とのうちの少なくとも一方に基づいて、前記車両が走行可能な領域である走行可能領域を仮想的に生成する走行可能領域生成部と、
前記車両の進行方向に関して前方を走行する他車両の走行軌跡を検出する他車両軌跡検出部と、
生成された前記走行可能領域を走行するように前記車両の走行を制御する走行制御部と、を備え、
前記走行可能領域生成部は、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線との間に乖離が発生した場合、検出された前記走行軌跡と前記カメラ道路区画線との間の乖離度を表すカメラ乖離度と、検出された前記走行軌跡と前記地図道路区画線との間の地図乖離度とに基づいて、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線とのうちのいずれか一方を優先して前記走行可能領域を生成するかを決定する、
車両制御装置。
【請求項2】
前記走行可能領域生成部は、前記地図道路区画線を優先する期間が所定期間、継続した場合、前記カメラ道路区画線を用いることなく、前記地図道路区画線に基づいて前記走行可能領域を生成する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記走行制御部は、前記カメラ道路区画線を優先する期間が所定期間、継続した場合、前記車両の運転支援の支援レベルを低下させるか、又は前記車両の運転者に課される運転タスクを増加させ、前記地図道路区画線を優先する期間が所定期間、継続した場合には、前記支援レベル又は前記運転タスクを維持する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記走行可能領域生成部は、検出された前記走行軌跡と前記カメラ道路区画線とが成す角度を前記カメラ乖離度として算出し、検出された前記走行軌跡と前記地図道路区画線とが成す角度を前記地図乖離度として算出する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記走行可能領域生成部は、複数の前記他車両の各々について前記走行軌跡を検出し、複数の前記走行軌跡の各々について前記カメラ乖離度と前記地図乖離度とを算出する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記走行可能領域生成部は、検出された前記走行軌跡と両側の前記カメラ道路区画線とが成す角度のうち、大きい方の値を前記カメラ乖離度として算出し、検出された前記走行軌跡と両側の前記地図道路区画線とが成す角度のうち、大きい方の値を前記地図乖離度として算出する、
請求項4又は5に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記走行可能領域生成部は、前記走行軌跡が検出された複数の前記他車両のうち、前記車両の進行方向に関して前記車両により近い他車両について算出された前記カメラ乖離度と前記地図乖離度とに基づいて、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線とのうちのいずれを優先するかを決定する、
請求項5に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記走行可能領域生成部は、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線との間に乖離が発生し、かつ前記車両が特定エリアに存在する場合に、前記カメラ乖離度と前記地図乖離度とに基づいて、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線とのうちのいずれか一方を優先して前記走行可能領域を生成するかを決定する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記走行可能領域生成部は、前記カメラ道路区画線の信頼性と、前記地図道路区画線の信頼性とを独立に判定し、前記判定の結果に応じて、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線とのうちのうちのいずれか一方を優先して、前記走行可能領域を生成する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項10】
コンピュータが、
車両の周辺状況を撮像したカメラ画像を取得し、
前記カメラ画像に写された道路区画線を表すカメラ道路区画線と、地図情報に含まれる道路区画線を表す地図道路区画線とのうちの少なくとも一方に基づいて、前記車両が走行可能な領域である走行可能領域を仮想的に生成し、
前記車両の進行方向に関して前方を走行する他車両の走行軌跡を検出し、
生成された前記走行可能領域を走行するように前記車両の走行を制御し、
前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線との間に乖離が発生した場合、検出された前記走行軌跡と前記カメラ道路区画線との間の乖離度を表すカメラ乖離度と、検出された前記走行軌跡と前記地図道路区画線との間の地図乖離度とに基づいて、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線とのうちのいずれか一方を優先して前記走行可能領域を生成するかを決定する、
車両制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、
車両の周辺状況を撮像したカメラ画像を取得させ、
前記カメラ画像に写された道路区画線を表すカメラ道路区画線と、地図情報に含まれる道路区画線を表す地図道路区画線とのうちの少なくとも一方に基づいて、前記車両が走行可能な領域である走行可能領域を仮想的に生成させ、
前記車両の進行方向に関して前方を走行する他車両の走行軌跡を検出させ、
生成された前記走行可能領域を走行するように前記車両の走行を制御させる、
前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線との間に乖離が発生した場合、検出された前記走行軌跡と前記カメラ道路区画線との間の乖離度を表すカメラ乖離度と、検出された前記走行軌跡と前記地図道路区画線との間の地図乖離度とに基づいて、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線とのうちのいずれか一方を優先して前記走行可能領域を生成するかを決定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が搭載するカメラによって撮像された周辺状況を表すカメラ画像と、地図情報とを照合することによって、当該車両の位置を特定し、特定した位置に基づいて車両を走行させる技術が知られている。例えば、特許文献1には、車両が走行する道路区間の形状が直線状か否かを判定し、道路区間の形状が直線状である場合に、車両が走行している走行レーンを特定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-004803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、一般的に、カメラ画像に含まれる道路区画線と、地図情報に含まれる道路区画線との間の関係性のみに基づいて、いずれの道路区画線によって規定される走路が正しいものであるかを推定している。そのため、例えば、カメラ道路区画線と地図道路区画線との間に乖離が発生した場合、実際にはカメラ道路区画線が誤っている状況においても、地図道路区画線の誤りを誤検知し、車両の走路が適切に選択できない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、カメラ道路区画線と地図道路区画線との間に乖離が発生した場合であっても、車両の走路を適切に選択することができる車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る車両制御装置は、車両の周辺状況を撮像したカメラ画像を取得する取得部と、前記カメラ画像に写された道路区画線を表すカメラ道路区画線と、地図情報に含まれる道路区画線を表す地図道路区画線とのうちの少なくとも一方に基づいて、前記車両が走行可能な領域である走行可能領域を仮想的に生成する走行可能領域生成部と、前記車両の進行方向に関して前方を走行する他車両の走行軌跡を検出する他車両軌跡検出部と、生成された前記走行可能領域を走行するように前記車両の走行を制御する走行制御部と、を備え、前記走行可能領域生成部は、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線との間に乖離が発生した場合、検出された前記走行軌跡と前記カメラ道路区画線との間の乖離度を表すカメラ乖離度と、検出された前記走行軌跡と前記地図道路区画線との間の地図乖離度とに基づいて、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線とのうちのいずれか一方を優先して前記走行可能領域を生成するかを決定するものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記走行可能領域生成部は、前記地図道路区画線を優先する期間が所定期間、継続した場合、前記カメラ道路区画線を用いることなく、前記地図道路区画線に基づいて前記走行可能領域を生成するものである。
【0008】
(3):上記(1)の態様において、前記走行制御部は、前記カメラ道路区画線を優先する期間が所定期間、継続した場合、前記車両の運転支援の支援レベルを低下させるか、又は前記車両の運転者に課される運転タスクを増加させ、前記地図道路区画線を優先する期間が所定期間、継続した場合には、前記支援レベル又は前記運転タスクを維持するものである。
【0009】
(4):上記(1)の態様において、前記走行可能領域生成部は、検出された前記走行軌跡と前記カメラ道路区画線とが成す角度を前記カメラ乖離度として算出し、検出された前記走行軌跡と前記地図道路区画線とが成す角度を前記地図乖離度として算出するものである。
【0010】
(5):上記(1)の態様において、前記走行可能領域生成部は、複数の前記他車両の各々について前記走行軌跡を検出し、複数の前記走行軌跡の各々について前記カメラ乖離度と前記地図乖離度とを算出するものである。
【0011】
(6):上記(4)又は(5)の態様において、前記走行可能領域生成部は、検出された前記走行軌跡と両側の前記カメラ道路区画線とが成す角度のうち、大きい方の値を前記カメラ乖離度として算出し、検出された前記走行軌跡と両側の前記地図道路区画線とが成す角度のうち、大きい方の値を前記地図乖離度として算出するものである。
【0012】
(7):上記(5)の態様において、前記走行可能領域生成部は、前記走行軌跡が検出された複数の前記他車両のうち、前記車両の進行方向に関して前記車両により近い他車両について算出された前記カメラ乖離度と前記地図乖離度とに基づいて、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線とのうちのいずれを優先するかを決定するものである。
【0013】
(8):上記(1)の態様において、前記走行可能領域生成部は、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線との間に乖離が発生し、かつ前記車両が特定エリアに存在する場合に、前記カメラ乖離度と前記地図乖離度とに基づいて、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線とのうちのいずれか一方を優先して前記走行可能領域を生成するかを決定するものである。
【0014】
(9):上記(1)の態様において、前記走行可能領域生成部は、前記カメラ道路区画線の信頼性と、前記地図道路区画線の信頼性とを独立に判定し、前記判定の結果に応じて、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線とのうちのうちのいずれか一方を優先して、前記走行可能領域を生成するものである。
【0015】
(10):この発明の別の態様に係る車両制御方法は、コンピュータが、車両の周辺状況を撮像したカメラ画像を取得し、前記カメラ画像に写された道路区画線を表すカメラ道路区画線と、地図情報に含まれる道路区画線を表す地図道路区画線とのうちの少なくとも一方に基づいて、前記車両が走行可能な領域である走行可能領域を仮想的に生成し、前記車両の進行方向に関して前方を走行する他車両の走行軌跡を検出し、生成された前記走行可能領域を走行するように前記車両の走行を制御し、前記走行可能領域生成部は、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線との間に乖離が発生した場合、検出された前記走行軌跡と前記カメラ道路区画線との間の乖離度を表すカメラ乖離度と、検出された前記走行軌跡と前記地図道路区画線との間の地図乖離度とに基づいて、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線とのうちのいずれか一方を優先して前記走行可能領域を生成するかを決定するものである。
【0016】
(11):この発明の別の態様に係るプログラムは、コンピュータに、車両の周辺状況を撮像したカメラ画像を取得させ、前記カメラ画像に写された道路区画線を表すカメラ道路区画線と、地図情報に含まれる道路区画線を表す地図道路区画線とのうちの少なくとも一方に基づいて、前記車両が走行可能な領域である走行可能領域を仮想的に生成させ、前記車両の進行方向に関して前方を走行する他車両の走行軌跡を検出させ、生成された前記走行可能領域を走行するように前記車両の走行を制御させる、前記走行可能領域生成部は、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線との間に乖離が発生した場合、検出された前記走行軌跡と前記カメラ道路区画線との間の乖離度を表すカメラ乖離度と、検出された前記走行軌跡と前記地図道路区画線との間の地図乖離度とに基づいて、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線とのうちのいずれか一方を優先して前記走行可能領域を生成するかを決定させるものである。
【発明の効果】
【0017】
(1)~(11)の態様によれば、カメラ道路区画線と地図道路区画線との間に乖離が発生した場合であっても、車両の走路を適切に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。
図2】第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。
図3】走行可能領域生成部134が、カメラ道路区画線と地図道路区画線のうちのいずれを優先するかを決定する方法を説明するための図である。
図4】走行可能領域生成部134が、カメラ道路区画線と地図道路区画線のうちのいずれを優先するかを決定する方法を説明するための別の図である。
図5】カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLとの間の乖離度が両側について同一ではない場合の処理について説明するための図である。
図6】乖離度を算出する対象となる他車両を選択する方法を説明するための図である。
図7】車両制御装置によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0021】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。自動運転制御装置100は、「車両制御装置」の一例である。
【0022】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、自車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0023】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0024】
LIDAR14は、自車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0025】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。
【0026】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0027】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0028】
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0029】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0030】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0031】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0032】
運転操作子80は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステアリングホイール、ジョイスティックその他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。
【0033】
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160とを備える。第1制御部120と第2制御部160は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0034】
図2は、第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0035】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0036】
また、認識部130は、例えば、自車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、認識部130は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。なお、認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部130は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
【0037】
認識部130は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部130は、例えば、自車両Mの基準点の車線中央からの乖離、および自車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部130は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0038】
他車両軌跡検出部132は、認識部130によって認識された自車両Mの進行方向に関して前方を走行する他車両の走行軌跡を検出する。より具体的には、例えば、他車両軌跡検出部132は、自車両Mの前方を走行する各他車両の位置を所定の制御サイクルごとに点群として取得し、取得した点群を連結することにより、当該他車両の走行軌跡を検出する。
【0039】
走行可能領域生成部134は、カメラ10によって撮像された画像から認識された道路区画線(以下、「カメラ道路区画線」)と、第2地図情報62に含まれる道路区画線(以下、「地図道路区画線」)とのうちの少なくとも一方に基づいて、自車両Mが走行可能な領域である走行可能領域を仮想的に生成する。例えば、走行可能領域生成部134は、認識された両側のカメラ道路区画線に挟まれる領域として走行可能領域を生成したり、第2地図情報62に含まれる両側の道路区画線に挟まれる領域として走行可能領域を生成することができる。後述する通り、走行可能領域生成部134は、他車両軌跡検出部132によって検出された他車両の走行軌跡と、カメラ道路区画線および地図道路区画線との間の乖離度に基づいて、カメラ道路区画線と地図道路区画線とのうちのいずれか一方を優先して、走行可能領域を生成する。
【0040】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を、走行可能領域生成部134によって生成された走行可能領域を通過するように生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0041】
行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してよい。自動運転のイベントには、定速走行イベント、低速追従走行イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベント、テイクオーバーイベントなどがある。行動計画生成部140は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。
【0042】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
【0043】
図2に戻り、第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0044】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0045】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0046】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0047】
[走行可能領域生成部の動作]
走行可能領域生成部134は、カメラ道路区画線と地図道路区画線との間に乖離が発生した場合、他車両軌跡検出部132によって検出された他車両の走行軌跡と、カメラ道路区画線および地図道路区画線との間の乖離度に基づいて、カメラ道路区画線と地図道路区画線のうちのいずれか一方を優先して、走行可能領域を生成する。なお、カメラ道路区画線と地図道路区画線のうちのいずれか一方を優先して、走行可能領域を生成する処理は、例えば、走行可能領域生成部134が、分岐路や合流路、トンネル入口付近などの特定エリア(すなわち、カメラ情報と地図情報との間の乖離が発生しやすい地点)において、カメラ道路区画線と地図道路区画線との間の乖離を検知した場合に実行されるものとする。ここで、カメラ道路区画線と地図道路区画線との間の乖離とは、例えば、カメラ道路区画線を構成する点群と地図道路区画線を構成する点群との間の距離の和が閾値以上となった場合を意味する。自車両Mがこれら特定エリアにいるか否かは、例えば、カメラ画像に基づいて判定してもよいし、第2地図情報62に基づいて判定してもよい。
【0048】
図3は、走行可能領域生成部134が、カメラ道路区画線と地図道路区画線のうちのいずれを優先するかを決定する方法を説明するための図である。図3において、符号MLは地図道路区画線を表し、符号CLはカメラ道路区画線を表し、符号ALは実際の道路区画線を表し、符号M1~M3は、自車両Mの進行方向に関して前方を走行する他車両を表し、符号T1~T3は、他車両軌跡検出部132によって検出された他車両M1~M3の走行軌跡を表す。
【0049】
まず、走行可能領域生成部134は、検出された他車両M1~M3の各々について、走行軌跡T1~T3と、カメラ道路区画線CLおよび地図道路区画線MLとの間の乖離度を算出する。例えば、図3の場合、走行可能領域生成部134は、他車両M1について、走行軌跡T1とカメラ道路区画線CLとのカメラ乖離度θoc1と、走行軌跡T1と地図道路区画線MLとの地図乖離度θom1を算出し、他車両M2について、走行軌跡T2とカメラ道路区画線CLとのカメラ乖離度θoc2と、走行軌跡T2と地図道路区画線MLとの地図乖離度θom2を算出し、他車両M3について、走行軌跡T3とカメラ道路区画線CLとのカメラ乖離度θoc3と、走行軌跡T3と地図道路区画線MLとの乖離度θom3を算出する(例えば、走行軌跡を基準として区画線が時計回りに乖離していた場合は正の値として定義し、反時計回りに乖離していた場合は負の値として定義する)。
【0050】
走行可能領域生成部134は、検出された他車両M1~M3の各々についてカメラ乖離度θoc1~θoc3および地図乖離度θom1~θom3を算出すると、次に、これらの値を用いて、カメラ道路区画線CLおよび地図道路区画線MLの信頼性をそれぞれ独立に判定する。図4は、走行可能領域生成部134が、カメラ道路区画線と地図道路区画線のうちのいずれを優先するかを決定する方法を説明するための別の図である。走行可能領域生成部134は、カメラ道路区画線CLおよび地図道路区画線MLの信頼性を判定するために、まず、検出された他車両M1~M3の各々について算出したカメラ乖離度θoc1~θoc3に基づいて、カメラ道路区画線CLと他車両全体の走行軌跡との間のカメラ平均乖離度を、カメラ乖離度θoc1~θoc3の平均値θocAve=(|θoc1|+|θoc2|+|θoc3|)/3として算出する。さらに、走行可能領域生成部134は、検出された他車両M1~M3の各々について算出した地図乖離度θom1~θom3に基づいて、地図道路区画線MLと他車両全体の走行軌跡との間の地図平均乖離度を、地図乖離度θom1~θom3の平均値θomAve=(|θom1|+|θom2|+|θom3|)/3として算出する。すなわち、カメラ平均乖離度θocAveは、カメラ道路区画線CLに対する他車両全体の走行軌跡の乖離度を表し、地図平均乖離度θomAveは、地図道路区画線MLに対する他車両全体の走行軌跡の乖離度を表す。
【0051】
走行可能領域生成部134は、カメラ平均乖離度θocAve-地図平均乖離度θomAve=difoc-omを算出し、difoc-omが閾値以上である場合には、地図道路区画線MLに信頼性ありと判定する。また、走行可能領域生成部134は、地図平均乖離度θomAve-カメラ平均乖離度θocAve=difom-ocを算出し、difom-ocが閾値以上である場合には、カメラ道路区画線CLに信頼性ありと判定する。この判定は、他車両全体の走行軌跡が、カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLのうちのいずれに相対的により沿っているかを判定するものである。そのため、追加条件として、走行可能領域生成部134は、算出したカメラ乖離度θoc1~θoc3のうちの所定個数(例えば、過半数)が閾値以内であるか否かを判定し、所定個数が閾値以内であると判定した場合にはカメラ道路区画線CLに信頼性ありと判定する。同様に、走行可能領域生成部134は、算出した地図乖離度θom1~θom3のうちの所定個数(例えば、過半数)が閾値以内であるか否かを判定し、所定個数が閾値以内であると判定した場合には地図道路区画線MLに信頼性ありと判定する。この追加条件を付与して判定を行うことにより、カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLの関係性のみに基づいた従来の判定に比して、信頼性の判定精度を向上することができる。
【0052】
信頼性判定の結果、カメラ道路区画線CLに信頼性ありと判定され、かつ地図道路区画線MLに信頼性なしと判定された場合(図4のパターン1)、走行可能領域生成部134は、カメラ道路区画線CLを優先することを決定し、カメラ道路区画線CLに基づいて走行可能領域を生成する。この場合、走行可能領域生成部134は、カメラ平均乖離度θocAveが閾値以内であるか否かを判定し、カメラ平均乖離度θocAveが閾値以内であると判定された場合にのみ、カメラ道路区画線CLを優先することを決定してもよい。さらに、走行可能領域生成部134は、カメラ道路区画線CLを優先する期間(条件の成立期間)が、所定期間、継続した場合、自車両Mの自動運転(運転支援)の支援レベルを低下させるか、又は自車両Mの運転者に課される運転タスクを増加させる。より具体的には、例えば、自動運転において、運転操作子80のステアリングホイールを把持するタスクが課されない状態から、ステアリングホイールを把持するタスクが課される状態に変更される。
【0053】
信頼性判定の結果、カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLのいずれにも信頼性なしと判定された場合(図4のパターン2)、走行可能領域生成部134は、走行可能領域を生成することなく、自動運転を停止させ、乗員に自車両Mの手動運転を実行させる。
【0054】
信頼性判定の結果、地図道路区画線MLに信頼性ありと判定され、かつカメラ道路区画線CLに信頼性なしと判定された場合(図4のパターン3)、走行可能領域生成部134は、地図道路区画線MLを優先することを決定し、地図道路区画線MLに基づいて走行可能領域を生成する。このとき、走行可能領域生成部134は、地図道路区画線MLを優先する期間(条件の成立期間)が、所定期間、継続した場合に初めて、カメラ道路区画線CLを用いることなく(捨てて)、地図道路区画線MLに基づいて走行可能領域を生成してもよい。この場合、図4のパターン1および2とは異なり、自車両Mの自動運転(運転支援)の支援レベル、又は自車両Mの運転者に課される運転タスクは維持され、自車両Mの自動運転は継続される。より具体的には、例えば、自動運転において、運転操作子80のステアリングホイールを把持するタスクが課されない状態が維持される。
【0055】
なお、上記の図3では、カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLとの間の乖離度が両側について同一である場合について説明している。カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLとの間の乖離度が両側について同一でない場合、走行可能領域生成部134は、より乖離が大きい側のカメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLを用いて、カメラ乖離度および地図乖離度を算出する。
【0056】
図5は、カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLとの間の乖離度が両側について同一ではない場合の処理について説明するための図である。図5は、他車両M1について、右側のカメラ道路区画線RCLと右側の地図道路区画線RMLとの間の乖離が、左側のカメラ道路区画線LCLと左側の地図道路区画線LMLとの間の乖離よりも大きい場合を表している。この場合、走行可能領域生成部134は、他車両M1について、走行軌跡T1と右側のカメラ道路区画線RCLとの間の乖離度をカメラ乖離度θoc1として算出するとともに、走行軌跡T1と右側の地図道路区画線RMLとの乖離度を地図乖離度θom1として算出する。
【0057】
カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLとの間の乖離度が両側について同一ではない場合、これは、一般的に、カメラ道路区画線CLが両側について同一ではないことに起因することが多い傾向にある。そのため、上記の処理を実行することにより、カメラ誤認識シーンにおいて、誤ってカメラ道路区画線を優先する可能性を低減することができる。
【0058】
さらに、上記の図3では、自車両Mの進行方向に関して前方を走行する他車両全てについて乖離度を算出してカメラ道路区画線CLおよび地図道路区画線MLの信頼性を判定する例について説明した。しかし、本発明はそのような構成に限定されず、自車両Mの進行方向に関して前方を走行する他車両のうち、自車両Mの走行可能領域生成にとってより重要な他車両についてのみ乖離度を算出してもよい。
【0059】
図6は、乖離度を算出する対象となる他車両を選択する方法を説明するための図である。図6の範囲Rに示す通り、走行可能領域生成部134は、例えば、自車両Mの進行方向に関して前方を走行し、かつ自車両Mから所定距離以内に存在する他車両(図6では、他車両T1)についてのみ乖離度を算出し、カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLのうちのいずれを優先するかを判定してもよい。さらに、例えば、走行可能領域生成部134は、他車両のうち、曲率が閾値以下(すなわち、直線に近い)走行軌跡を有する他車両(図6では、他車両T1およびT3)についてのみ乖離度を算出し、カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLのうちのいずれを優先するかを判定してもよい。このような追加条件を設定することにより、カメラ道路区画線CLおよび地図道路区画線MLの信頼性をより確実に判定することができる。
【0060】
なお、走行可能領域生成部134は、図3の他車両T1~T3に関する信頼性の判定と、図6の先行車両T1に関する信頼性の判定とを同時に実行し、双方の判定条件が成立するか否かによって、カメラ道路区画線CLおよび地図道路区画線MLの信頼性を判定してもよい。さらに、上記の説明では、自車両Mの前方に他車両が3台存在する場合の処理について説明したが、本発明はそのような構成に限定されず、上記の処理は、自車両Mの前方に他車両(または先行車両)が少なくとも2台以上存在する場合に実行されてもよい。
【0061】
次に、図7を参照して、車両制御装置によって実行される処理の流れについて説明する。図7は、車両制御装置によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。図7に示す処理は、例えば、自車両Mが走行中、繰り返し実行されるものである。
【0062】
まず、走行可能領域生成部134は、カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLとが乖離しているか否かを判定する(ステップS100)。カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLとが乖離していないと判定された場合、走行可能領域生成部134は、本フローチャートの処理を終了する。一方、カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLとが乖離していると判定された場合、走行可能領域生成部134は、自車両Mが特定エリアにいるか否かを判定する(ステップS102)。自車両Mが特定エリアにいないと判定された場合、走行可能領域生成部134は、本フローチャートの処理を終了する。
【0063】
一方、自車両Mが特定エリアにいると判定された場合、走行可能領域生成部134は、他車両の走行軌跡と、カメラ道路区画線CLおよび地図道路区画線MLとの間の乖離度をそれぞれ算出する(ステップS104)。次に、走行可能領域生成部134は、算出された乖離度に基づいて、カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLの双方に信頼性が無いか否かを判定する(ステップS106)。カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLの双方に信頼性が無いと判定された場合、走行可能領域生成部134は、自動運転を停止して、乗員に自車両Mの手動運転を実行させる。
【0064】
一方、カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLの少なくとも一方に信頼性ありと判定された場合、走行可能領域生成部134は、カメラ道路区画線CLに信頼性があるか否かを判定する(ステップS110)。カメラ道路区画線CLに信頼性ありと判定された場合、走行可能領域生成部134は、カメラ道路区画線CLを優先して走行可能領域を生成する(ステップS112)。一方、カメラ道路区画線CLに信頼性なしと判定された場合、走行可能領域生成部134は、地図道路区画線MLを優先して走行可能領域を生成する(ステップS114)。これにより、本フローチャートの処理を終了する。
【0065】
以上の通り説明した本実施形態によれば、カメラ道路区画線と地図道路区画線との間に乖離が発生した場合、検出された他車両の走行軌跡とカメラ道路区画線との間の乖離度を表すカメラ乖離度と、走行軌跡と地図道路区画線との間の地図乖離度とに基づいて、カメラ道路区画線と地図道路区画線とのうちのいずれか一方を優先して走行可能領域を生成する。これにより、カメラ道路区画線と地図道路区画線との間に乖離が発生した場合であっても、車両の走路を適切に選択することができる。
【0066】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
車両の周辺状況を撮像したカメラ画像を取得し、
前記カメラ画像に写された道路区画線を表すカメラ道路区画線と、地図情報に含まれる道路区画線を表す地図道路区画線とのうちの少なくとも一方に基づいて、前記車両が走行可能な領域である走行可能領域を仮想的に生成し、
前記車両の進行方向に関して前方を走行する他車両の軌跡を検出し、
生成された前記走行可能領域を走行するように前記車両の走行を制御し、
前記走行可能領域生成部は、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線との間に乖離が発生した場合、検出された前記軌跡と前記カメラ道路区画線との間の乖離度を表すカメラ乖離度と、検出された前記軌跡と前記地図道路区画線との間の地図乖離度とに基づいて、前記カメラ道路区画線と前記地図道路区画線とのうちのいずれか一方を優先して前記走行可能領域を生成するかを決定する、ように構成されている、車両制御装置。
【0067】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0068】
10 カメラ
12 レーダ装置
14 LIDAR
16 物体認識装置
100 自動運転制御装置
120 第1制御部
130 認識部
132 他車両軌跡検出部
134 走行可能領域生成部
140 行動計画生成部
160 第2制御部
162 取得部
164 速度制御部
166 操舵制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7