(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087358
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】スイッチ装置、時計および電子機器
(51)【国際特許分類】
G04G 21/00 20100101AFI20240624BHJP
【FI】
G04G21/00 304B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202141
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(74)【代理人】
【識別番号】100171882
【弁理士】
【氏名又は名称】北庄 麗絵子
(72)【発明者】
【氏名】市村 龍美
【テーマコード(参考)】
2F002
【Fターム(参考)】
2F002AA00
2F002AC01
2F002AC03
2F002BA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】釦交換ができ、且つ脱落し難いスイッチ装置、それを備えた時計および電子機器を提供する。
【解決手段】外装部材6が着脱可能に取り付けられるケース本体5と、ケース本体5に取り付けられ、ケース本体5の外部に位置する一端部である外端部15bに、操作軸15の軸方向と直交する方向に延びる係止部21が設けられた操作軸15と、係止部21に対して操作軸15の軸方向と直交する方向に着脱可能に係合する係合部22を有し、外装部材6によって操作軸15の軸方向と直交する方向の少なくともいずれか一方向への移動が阻止される操作釦16と、を備える。外装部材6をケース本体5から取り外すと、外装部材6による操作軸15の軸方向と直交する方向への移動の阻止が解除されるので、操作釦16を交換することができ、外装部材6をケース本体5に取り付けた際に、外装部材6によって操作軸15の係止部21からの操作釦16の脱落を防ぐことができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装部材が着脱可能に取り付けられるケース本体と、
前記ケース本体に取り付けられ、前記ケース本体の外部に位置する一端部に、操作軸の軸方向と直交する方向に延びる係止部が設けられた操作軸と、
前記係止部に対して前記操作軸の軸方向と直交する方向に着脱可能に係合する係合部を有し、前記外装部材によって前記操作軸の軸方向と直交する方向の少なくともいずれか一方向への移動が阻止される操作釦と、
を備えていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチ装置において、
前記ケース本体には、前記操作軸が挿入する軸挿入孔が設けられており、前記外装部材には、前記操作釦が挿入する釦挿入孔が設けられており、前記釦挿入孔は、内径が前記軸挿入孔の内径よりも大きく形成され、前記軸挿入孔と同一軸上に設けられている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスイッチ装置において、
前記係止部の外径は、前記操作軸の外径よりも大きく形成されており、
前記係合部は、前記操作軸の前記一端部が挿入する第1溝部と、前記係止部が挿入する第2溝部と、を備えている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチ装置において、
前記第1溝部は、前記操作釦の中心部に設けられて前記操作軸の前記一端部が挿入する第1孔部と、前記第1孔部から前記操作釦の外周部に亘って設けられた第1切欠き溝と、を備え、
前記第2溝部は、前記操作軸の軸方向において前記第1孔部に対応して設けられて前記係止部が挿入する第2孔部と、前記第2孔部から前記操作釦の外周部に亘って設けられた第2切欠き溝と、を備えている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のスイッチ装置において、
前記操作軸と前記ケース本体との間には、防水部材が設けられている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項6】
請求項1に記載のスイッチ装置において、
前記操作軸には、前記操作釦を前記ケース本体の外部に向けて付勢する付勢部材が設けられている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項7】
請求項1に記載のスイッチ装置において、
前記操作軸には、前記ケース本体から前記操作軸の抜け出しを防ぐ抜止め部材が設けられている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項8】
請求項1に記載のスイッチ装置において、
前記操作軸の軸方向と直交する方向とは、前記ケース本体の上下方向のいずれか一方、または前記ケース本体の左右方向のいずれか一方である
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項9】
請求項1に記載されたスイッチ装置を備えていることを特徴とする時計。
【請求項10】
請求項1に記載されたスイッチ装置を備えていることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腕時計などの電子機器に用いられるスイッチ装置、それを備えた時計および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、腕時計のスイッチ装置においては、特許文献1に記載されているように、腕時計ケースに設けられた取付孔に押釦スイッチを取り付け、この押釦スイッチの操作頭部に釦キャップを着脱自在に取り付ける構造のものが知られている。押釦スイッチを着脱自在にすることで、所望のデザイン性や機能性などを有する押釦スイッチへの交換をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなスイッチ装置では、腕時計ケースに取り付けられた押釦スイッチの操作頭部に凹部を押釦スイッチの軸方向に沿って設け、この凹部に釦キャップの軸部を嵌め込んで取り付ける構造であるから、押釦スイッチの操作頭部から釦キャップが脱落しやすいという問題がある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、釦交換ができ、且つ脱落し難いスイッチ装置、それを備えた時計および電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、外装部材が着脱可能に取り付けられるケース本体と、前記ケース本体に取り付けられ、前記ケース本体の外部に位置する一端部に、操作軸の軸方向と直交する方向に延びる係止部が設けられた操作軸と、前記係止部に対して前記操作軸の軸方向と直交する方向に着脱可能に係合する係合部を有し、前記外装部材によって前記操作軸の軸方向と直交する方向の少なくともいずれか一方向への移動が阻止される操作釦と、を備えていることを特徴とするスイッチ装置である。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、釦交換ができると共に、脱落し難いスイッチ装置、それを備えた時計および電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明を腕時計に適用した一実施形態を示した拡大正面図である。
【
図2】
図1に示された腕時計ケースのケース本体を示した拡大斜視図である。
【
図3】
図1に示された腕時計ケースの外装部材を示した拡大斜視図である。
【
図4】
図1に示された腕時計のA-A矢視における要部を示した拡大断面図である。
【
図5】
図4に示された腕時計の要部において外装部材を取り外した状態を示した拡大断面図である。
【
図6】
図4に示されたスイッチ装置の操作軸を示した拡大斜視図である。
【
図7】
図4に示されたスイッチ装置の操作釦を示し、(a)はその拡大斜視図、(b)は操作釦の内面側を示した拡大内面図、(c)は(b)のB-B矢視における拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図7を参照して、この発明を腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、
図1に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の12時側と6時側とには、時計バンド(図示せず)が取り付けられるバンド取付部2がそれぞれ設けられている。また、この腕時計ケース1の2時側、4時側、8時側、10時側には、スイッチ装置3がそれぞれ設けられている。
【0010】
この腕時計ケース1は、
図1~
図4に示すように、時計ガラス4がガラスパッキン4aを介して取り付けられるケース本体5と、このケース本体5の外周に着脱可能に取り付けられる外装部材6と、を備えている。また、この腕時計ケース1の下部、つまりケース本体5の下部には、裏蓋8が防水パッキン8aを介して取り付けられている。この腕時計ケース1の内部、つまりケース本体5の内部には、時計モジュール7が設けられている。
【0011】
時計モジュール7は、図示しないが、指針を運針させて時刻を指示表示する時計ムーブメント、時刻や日付、曜日などの情報を電気光学的に表示する表示部、これらを電気的に駆動して制御する回路部など、時計機能に必要な各種の部品が搭載されている。この場合、時計モジュール7の外周部には、複数の接点部(図示せず)が複数のスイッチ装置3に対応して設けられている。
【0012】
ところで、ケース本体5は、
図2、
図4および
図5に示すように、ポリアミド樹脂に炭素繊維またはガラス繊維などの強化繊維を混入させた剛性の高い合成樹脂によって形成されている。このケース本体5の内部には、金属製の補強部材5aが埋め込まれている。なお、このケース本体5は、必ずしも合成樹脂で形成されている必要はなく、金属で形成されていても良い。
【0013】
このケース本体5の12時側と6時側とには、
図2に示すように、バンド取付部2の取付突起部2aがそれぞれ設けられている。また、このケース本体5の周側部における10時側の箇所には、
図4および
図5に示すように、スイッチ装置3の後述する操作軸15が取り付けられる軸挿入孔14aがそれぞれ設けられている。
【0014】
外装部材6は、
図1、
図3、
図4に示すように、ケース本体5にこれを覆って着脱可能に取り付けられるように構成されている。この外装部材6は、ウレタン樹脂などの弾力性を有する合成樹脂に形成されている。この外装部材6は、時計ガラス4の外周の縁部を覆う上部6aと、ケース本体5の外周部を覆う周側部6bと、を備えている。この場合、外装部材6の周側部6bにおける2時側、4時側、8時側および10時側の箇所には、スイッチ装置3の釦挿入孔14bがそれぞれ設けられている。
【0015】
これにより、外装部材6は、
図3および
図4に示すように、上部6aが時計ガラス4の外周の縁部を覆い、周側部6bがケース本体5の外周部を覆った際に、外装部材6に設けられた釦挿入孔14bがケース本体5に設けられた軸挿入孔14aに同一軸上で対応して配置されるように構成されている。
【0016】
また、この外装部材6の周側部6bにおける12時側と6時側とには、
図2および
図3に示すように、ケース本体5に設けられたバンド取付部2の取付突起部2aを覆う突起カバー部2bがそれぞれ設けられている。これら突起カバー部2bの両側における各内面には、ケース本体5の取付突起部2aの両側に設けられた係合突起12に係脱可能に係合する係合凹部13がそれぞれ設けられている。
【0017】
これにより、外装部材6は、
図2、
図3および
図4に示すように、上部6aが時計ガラス4の外周の縁部を覆い、周側部6bがケース本体5の外周部を覆った際に、外装部材6の12時側と6時側とに設けられた突起カバー部2bがケース本体5の12時側と6時側とに設けられた取付突起部2aを覆って重なり合うように構成されている。これにより、取付突起部2aと突起カバー部2bとが重なり合うことにより、
図1に示すバンド取付部2が構成されている。
【0018】
また、この外装部材6は、
図2および
図3に示すように、12時側と6時側とに設けられた突起カバー部2bがケース本体5の12時側と6時側とに設けられた取付突起部2aを覆った際に、突起カバー部2bの両側の内面に設けられた係合凹部13がケース本体5の取付突起部2aの両側の外面に設けられた係合突起12に係脱可能に係合して、ケース本体5に着脱可能に取り付けられるように構成されている。
【0019】
ところで、腕時計ケース1の2時側、4時側、8時側、10時側に設けられた複数のスイッチ装置3のうち、例えば10時側に位置するスイッチ装置3は、
図4に示すように、腕時計ケース1の取付孔14にスライド可能に取り付けられる操作軸15と、腕時計ケース1の外部側に位置する操作軸15の一端部である外端部15bに取り付けられる操作釦16と、を備えている。
【0020】
この場合、腕時計ケース1の取付孔14は、
図4に示すように、ケース本体5に設けられて操作軸15がスライド可能に挿入する軸挿入孔14aと、外装部材6に設けられて操作釦16がスライド可能に挿入する釦挿入孔14bと、を備えている。釦挿入孔14bは、その内径が操作釦16の外径とほぼ同じ大きさで、軸挿入孔14aの内径よりも大きく形成されている。
【0021】
操作軸15は、
図4~
図6に示すように、その外径が取付孔14の軸挿入孔14aの内径よりも小さく形成され、且つ軸方向の長さが軸挿入孔14aの軸方向の長さよりも長く形成されている。これにより、操作軸15は、取付孔14の軸挿入孔14aに挿入された際に、操作軸15の外端部15bが軸挿入孔14aの外部に位置し、操作軸15の他端部である内端部15aがケース本体5の内部に突出するように構成されている。
【0022】
この操作軸15の内端部15aには、
図4~
図6に示すように、ケース本体5の内面に接離可能に当接するEリングなどの抜止め部材17が取り付けられている。これにより、操作軸15は、抜止め部材17がケース本体5の内面に当接することにより、ケース本体5の軸挿入孔14aからケース本体5の外部に抜け出さないように構成されている。
【0023】
また、この操作軸15の内端部15a側に位置する外周面には、
図4~
図6に示すように、防水部材である複数の防水リング18が設けられている。これら複数の防水リング18は、ゴムなどの弾力性を有する合成樹脂によって形成されている。これら複数の防水リング18は、その外周面が軸挿入孔14aの内周面に圧接した状態で摺動するように構成されている。これにより、複数の防水リング18は、操作軸15の外周面とケース本体5の軸挿入孔14aの内周面との間の防水を図るように構成されている。
【0024】
また、この操作軸15の外周には、
図4~
図6に示すように、操作釦16を腕時計ケース1の外部に向けて付勢する付勢部材20が設けられている。この付勢部材20は、操作軸15の外端部15b側に位置する外周面に固定された固定板20aと、操作軸15の内端部15a側に位置する外周面にその軸方向に沿ってスライド可能に配置されたワッシャーなどの可動板20bと、これら固定板20aと可動板20bとの間に配置されるばね部材20cと、を備えている。
【0025】
この場合、固定板20aと可動板20bとは、
図4~
図6に示すように、各外径がケース本体5の軸挿入孔14aの内径よりも少し小さい円板状に形成されている。ばね部材20cは、操作軸15の外周面にその軸方向に沿って配置されるコイルばねである。このばね部材20cは、一端部が固定板20aに当接し、他端部が可動板20bに押し当てられて、可動板20bを防水リング18に押し当てることにより、操作軸15を腕時計ケース1の外部に向けて付勢するように構成されている。
【0026】
また、この操作軸15の外端部15bには、
図4~
図6に示すように、操作釦16が着脱可能に係止されて取り付けられる係止部21が設けられている。この係止部21は、その外径が操作軸15の外径よりも大きい円板状に形成されている。この場合、係止部21は、その外径が取付孔14の軸挿入孔14aの内径とほぼ同じかそれよりも少し小さい大きさで形成されている。
【0027】
一方、操作釦16は、
図4、
図5および
図7に示すように、操作軸15の外端部15bに操作軸15の軸方向に対して直交する方向に着脱可能に取り付けられるものであり、合成樹脂、金属、強化繊維樹脂などの素材によって形成されている。この操作釦16は、その外径が外装部材6の釦挿入孔14bの内径とほぼ同じ大きさに形成されている。この操作釦16は、色や柄、素材などが自由に選択できるように構成されている。
【0028】
また、この操作釦16には、
図4、
図5および
図7に示すように、操作軸15の外端部15bとこの外端部15bに設けられた係止部21とが操作軸15の軸方向に対して直交する方向に係脱可能に係合する係合部22が設けられている。この係合部22は、操作軸15の外端部15bが挿入する第1溝部23と、操作軸15の係止部21が挿入する第2溝部24と、を備えている。
【0029】
第1溝部23は、
図7(a)~
図7(c)に示すように、操作釦16の中心に操作軸15の外径と同じ大きさで形成された第1孔部23aと、この第1孔部23aから操作釦16の外周に向けて操作軸15の外径とほぼ同じ大きさで且つ第1孔部23aよりも狭く形成された第1切欠き溝23bと、を備えている。この第1切欠き溝23bにおける両側の先端部には、操作軸15を第1切欠き溝23b内に挿入し易くするための半円形状のガイド部23cが設けられている。
【0030】
第2溝部24は、
図7(a)~
図7(c)に示すように、第1溝部23よりも操作釦16の軸方向における奥側(
図7(c)では左側)に位置する操作釦16の中間部に設けられている。この第2溝部24は、操作軸15の係止部21の外径と同じ大きさの第2孔部24aと、この第2孔部24aから操作釦16の外周に向けて係止部21の外径と同じ大きさで形成された第2切欠き溝24bと、を備えている。
【0031】
これにより、操作釦16は、
図5および
図7に示すように、操作軸15の軸方向と直交する操作軸15の係止部21の上方から第2溝部24の第2切欠き溝24bに係止部21が挿入して第2溝部24の第2孔部24a内に挿入されると共に、操作軸15の外端部15bが第1溝部23のガイド部23cにガイドされて第1溝部23の第1切欠き溝23bに挿入された上、第1溝部23の第1孔部23a内に挿入されることにより、操作軸15の係止部21に取り付けられるように構成されている。
【0032】
また、この操作釦16は、
図4、
図5および
図7に示すように、操作軸15の係止部21が第2溝部24の第2孔部24a内から第2溝部24の第2切欠き溝24bに引き出されると共に、操作軸15の外端部15bが第1溝部23の第1孔部23a内から第1溝部23の第1切欠き溝23bに引き出されることにより、操作軸15の係止部21から操作軸15の軸方向と直交する方向(
図5では上方)に向けて取り外せるように構成されている。
【0033】
この場合、腕時計ケース1の取付孔14における軸挿入孔14aの外端部側には、
図4および
図5に示すように、軸挿入孔14aの内径よりも大きい大径孔部14cが形成されている。この大径孔部14cは、操作釦16の一部が挿入する孔であり、この大径孔部14c内の下部側には、操作釦16が大径孔部14c内に侵入するのを防ぐためのストッパ部14eを形成する平坦部14dが設けられている。
【0034】
これにより、操作釦16は、
図4、
図5および
図7に示すように、第1溝部23における半円形状のガイド部23cと反対側に位置する上部側の一部が軸挿入孔14aの大径孔部14c内に挿入するように構成されている。また、この操作釦16は、第1溝部23における半円形状のガイド部23c間に位置する第2溝部24の第2切欠き溝24bの奥側面(
図7(c)では右側面)における下部側の一部が平坦部14dに対応する大径孔部14cの端部であるストッパ部14eに当接して大径孔部14c内に侵入しないように構成されている。このため、操作釦16は、外装部材6の釦挿入孔14b内において操作軸15と共に軸方向にスライドするように構成されている。
【0035】
次に、このような腕時計を組み立てる組立方法について説明する。
この腕時計の組立方法は、ケース本体5にスイッチ装置3の操作軸15を組み付ける第1の組立工程と、ケース本体5に取り付けられた操作軸15に操作釦16を取り付ける第2の組立工程と、ケース本体5の外周面に外装部材6を取り付ける第3の組立工程と、を備えている。
【0036】
第1の組立工程では、ケース本体5の上側開口部に時計ガラス4を取り付けて、ケース本体5の2時側、4時側、8時側、10時側の箇所にスイッチ装置3をそれぞれ取り付ける。このときには、予め、10時側のスイッチ装置3の操作軸15を組み立てる。この場合には、まず、操作軸15の一端部である外端部15bに円板状の係止部21を固定すると共に、付勢部材20の固定板20aを固定する。
【0037】
この状態で、操作軸15の内端部15a側から付勢部材20のばね部材20cを操作軸15に挿入させて、ばね部材20cの一端部を操作軸15の固定板20aに当接させる。そして、操作軸15の内端部15a側からワッシャーなどの可動板20bを操作軸15に挿入させてばね部材20cの他端部に押し当てる。この状態で、操作軸15の内端部15a側から複数の防水リング18を操作軸15に嵌め込む。
【0038】
このように、係止部21、付勢部材20および複数の防水リング18が設けられた操作軸15をケース本体5の10時側の箇所に設けられた取付孔14の軸挿入孔14aにケース本体5の外部側から挿入させる。このときには、複数の防水リング18の各外周部が軸挿入孔14aの内周面に圧接した状態で摺動するので、操作軸15の外周面と軸挿入孔14aの内周面との間の防水が図れる。
【0039】
そして、軸挿入孔14aに挿入された操作軸15の他端部である内端部15aをケース本体5内に突出させ、この突出した操作軸15の内端部15aにEリングなどの抜止め部材17を取り付ける。これにより、操作軸15がケース本体5の軸挿入孔14a内からケース本体5の外部に抜け出すことがない。
【0040】
この状態で、ケース本体5内に時計モジュール7を組み込む。このときには、時計モジュール7の外周部に設けられた複数の接点部(図示せず)をケース本体5の2時側、4時側、8時側、10時側の箇所にそれぞれ設けられたスイッチ装置3に対応させて配置させる。これにより、10時側のスイッチ装置3における操作軸15の内端部15aが時計モジュール7の10時側の接点部に接離可能に対応して配置される。
【0041】
第2の組立工程では、ケース本体5の外部に位置する操作軸15の外端部15bに設けられた係止部21に操作釦16を取り付ける。このときには、付勢部材20のばね部材20cのばね力によって操作軸15がケース本体5の外部に向けて付勢されるので、操作軸15の外端部15bに設けられた係止部21がケース本体5の外部に押し出される。
【0042】
この状態で、操作軸15の係止部21に操作釦16を取り付ける。このときには、操作軸15の軸方向と直交する方向である係止部21の上方に操作釦16を配置させて、操作釦16の第1溝部23の第1切欠き溝23bを操作軸15の外端部15bに対応させると共に、第2溝部24の第2切欠き溝24bを操作軸15の係止部21に対応させる。
【0043】
そして、操作軸15の係止部21を操作軸15の軸方向に対して直交する方向の上方から操作釦16の第2溝部24の第2切欠き溝24bに挿入させて第2溝部24の第2孔部24aに挿入させると共に、操作軸15の外端部15bを操作軸15の軸方向に対して直交する方向の上方から操作釦16の第1溝部23の第1切欠き溝23bに挿入させて第1溝部23の第1孔部23aに挿入させる。これにより、操作釦16が操作軸15の係止部21に取り付けられる。
【0044】
第3の組立工程では、ケース本体5の外周面に外装部材6を取り付ける。このときには、外装部材6の上部6aで時計ガラス4の外周の縁部を覆い、外装部材6の周側部6bでケース本体5の外周部を覆い、外装部材6の12時側と6時側とに設けられた突起カバー部2bでケース本体5の12時側と6時側とに設けられた取付突起部2aを覆って重ね合わせる。
【0045】
この状態で、外装部材6の2時側、4時側、8時側に設けられた釦挿入孔14bにスイッチ装置3の釦頭部3aをそれぞれ挿入させる。このときには、外装部材6の10時側に設けられた釦挿入孔14bにスイッチ装置3の操作釦16を挿入させて、突起カバー部2bの両側の内面に設けられた係合凹部13にケース本体5の取付突起部2aの両側の外面に設けられた係合突起12を係脱可能に係合させる。これにより、ケース本体5に外装部材6が着脱可能に取り付けられる。
【0046】
この状態では、操作軸15の係止部21に取り付けられた操作釦16が外装部材6の釦挿入孔14bに挿入されていることにより、この操作釦16が操作軸15の軸方向と直交する方向に移動することがない。このため、操作釦16が操作軸15から脱落することがないので、操作釦16の紛失を防ぐことができる。そして、ケース本体5の下部に裏蓋8を防水パッキン8aと共に取り付ける。これにより、腕時計が組み立てられる。
【0047】
次に、このように組み立てられた腕時計における10時側のスイッチ装置3の作用について説明する。
この10時側のスイッチ装置3は、通常、付勢部材20のばね部材20cのばね力によって操作軸15が押し出されて、操作釦16が外装部材6の釦挿入孔14bから外部に露出する。この状態では、操作軸15の内端部15aに取り付けられた抜止め部材17がケース本体5の内面に当接するので、操作軸15がケース本体5の外部に向けて抜け出すことがない。
【0048】
これにより、10時側のスイッチ装置3の操作釦16を操作することができる。このときには、操作釦16をばね部材20cのばね力に抗して押圧操作する。すると、ばね部材20cが圧縮されながら操作軸15がケース本体5の軸挿入孔14a内を押し込まれる方向にスライドして、操作軸15の内端部15aがケース本体5内に押し込まれる。これにより、操作軸15の内端部15aがケース本体5内に配置された時計モジュール7の外周部に設けられた接点部(図示せず)を押圧してスイッチ動作させる。
【0049】
次に、この腕時計の10時側に位置するスイッチ装置3の操作釦16を交換する方法について説明する。
この操作釦16の交換方法は、外装部材6をケース本体5から取り外す第1の交換工程と、操作釦16を操作軸15から取り外して交換する第2の交換工程と、外装部材6をケース本体5に取り付ける第3の交換工程と、を備えている。
【0050】
外装部材6をケース本体5から取り外す第1の交換工程では、外装部材6がウレタン樹脂などの弾力性を有する合成樹脂によって形成されているので、外装部材6の12時側と6時側との少なくとも一方の突起カバー部2bをケース本体5の取付突起部2aからめくり上げるだけで、外装部材6をケース本体5から取り外すことができる。
【0051】
すなわち、外装部材6の突起カバー部2bをケース本体5の取付突起部2aからめくり上げると、操作軸15に取り付けられた操作釦16が外装部材6の釦挿入孔14b内から抜け出すと共に、突起カバー部2bの両側における各内面に設けられた係合凹部13が、ケース本体5の取付突起部2aの両側に設けられた係合突起12から離脱する。これにより、外装部材6がケース本体5から取り外されるので、外装部材6を交換することができる。
【0052】
第2の交換工程では、外装部材6がケース本体5から取り外されているので、操作釦16がケース本体5の外部に突出して配置される。このため、操作釦16を操作軸15から取り外すことができる。このときには、操作釦16を摘まんで操作軸15の軸方向と直交する方向(
図5では上方)に向けて持ち上げる。
【0053】
すると、操作軸15の係止部21が操作釦16の第2溝部24の第2孔部24aから第2切欠き溝24bに引き出されると共に、操作軸15の外端部15bが操作釦16の第1溝部23の第1孔部23aから第1切欠き溝234bに引き出される。これにより、操作釦16を操作軸15から取り外して、色や柄、素材などが異なる操作釦16と交換することができる。
【0054】
第3の交換工程では、操作釦16が交換されたケース本体5の外周面に外装部材6を取り付ける。このときには、外装部材6の上部6aで時計ガラス4の外周の縁部を覆い、外装部材6の周側部6bでケース本体5の外周部を覆い、外装部材6の12時側と6時側とに設けられた突起カバー部2bでケース本体5の12時側と6時側とに設けられた取付突起部2aを覆って重ね合わせる。
【0055】
この状態で、外装部材6の2時側、4時側、8時側の箇所に設けられた釦挿入孔14bにスイッチ装置3の釦頭部3aをそれぞれ挿入させる。このときには、外装部材6の10時側の箇所に設けられた釦挿入孔14bにスイッチ装置3の操作釦16を挿入させる。そして、突起カバー部2bの両側の内面に設けられた係合凹部13に、ケース本体5の取付突起部2aの両側の外面に設けられた係合突起12を係脱可能に係合させる。これにより、外装部材6がケース本体5に取り付けられて、操作釦16の脱落を防ぐことができる。
【0056】
このように、この腕時計のスイッチ装置3によれば、外装部材6が着脱可能に取り付けられるケース本体5と、ケース本体5に取り付けられ、ケース本体5の外部に位置する一端部である外端部15bに、操作軸15の軸方向と直交する方向に延びる係止部21が設けられた操作軸15と、係止部21に対して操作軸15の軸方向と直交する方向に着脱可能に係合する係合部22を有し、外装部材6によって操作軸15の軸方向と直交する方向の少なくともいずれか一方向への移動が阻止される操作釦16と、を備えていることにより、釦交換ができると共に、脱落し難いものを提供することができる。
【0057】
すなわち、このスイッチ装置3では、外装部材6をケース本体5から取り外すことにより、外装部材6を交換することができると共に、外装部材6による操作軸15の軸方向と直交する方向への移動の阻止を解除することができるので、操作釦16を操作軸15の係止部21から取り外すことができる。このため、外装部材6をケース本体5から取り外した際に、操作釦16を交換することができると共に、外装部材6をケース本体5に取り付けた際に、外装部材6によって操作軸15の軸方向と直交する方向への操作釦16の移動が阻止されるので、操作釦16が操作軸15の係止部21から脱落するのを確実に防ぐことができる。
【0058】
この場合、このスイッチ装置3では、ケース本体5に操作軸15が挿入する軸挿入孔14aが設けられており、外装部材6には、操作釦16が挿入する釦挿入孔14bが設けられており、釦挿入孔14bは、その内径が軸挿入孔14aの内径よりも大きく形成され、軸挿入孔14aと同一軸上に設けられていることにより、操作釦16の交換ができると共に、操作釦16の脱落を防ぐことができる。
【0059】
すなわち、このスイッチ装置3では、外装部材6をケース本体5に取り付けた際に、外装部材6の釦挿入孔14bに操作釦16を配置させることができるので、操作軸15の軸方向と直交する方向への操作釦16の移動を阻止することができ、これにより操作釦16の脱落を防ぐことができると共に、操作釦16を外装部材6の釦挿入孔14bから抜き出して外装部材6をケース本体5から取り外すことができるので、操作釦16を容易に交換することができる。
【0060】
また、このスイッチ装置3では、係止部21が操作軸15の外径よりも大きく形成されており、係合部22は、操作軸15の一端部である外端部15bが挿入する第1溝部23と、係止部21が挿入する第2溝部24と、を備えていることにより、操作釦16を操作軸15の係止部21に取り付ける際に、操作軸15の軸方向と直交する方向から操作釦16の第2溝部24に操作軸15の係止部21を挿入させることができると共に、操作釦16の第1溝部23に操作軸15の外端部15bを挿入させることができ、これにより操作軸15の係止部21に操作釦16を簡単に装着させることができる。
【0061】
この場合、このスイッチ装置3では、第1溝部23が、操作釦16の中心部に設けられて操作軸15の外端部15bが挿入する第1孔部23aと、この第1孔部23aから操作釦16の外周部に亘って設けられた第1切欠き溝23bと、を備え、第2溝部24は、操作軸15の軸方向において第1孔部23aに対応して設けられて係止部21が挿入する第2孔部24aと、この第2孔部24aから操作釦16の外周部に亘って設けられた第2切欠き溝24bと、を備えていることにより、操作軸15の係止部21に対して操作釦16を簡単に且つ容易に着脱することができる。
【0062】
すなわち、このスイッチ装置3では、操作軸15の軸方向と直交する方向から操作軸15の係止部21を第2溝部24の第2切欠き溝24bに挿入させて第2溝部24の第2孔部24aに挿入させると共に、操作軸15の外端部15bを第1溝部23の第1切欠き溝23bに挿入させて第1溝部23の第1孔部23aに挿入させることにより、簡単に且つ容易に操作釦16を操作軸15の係止部21に取り付けることができる。
【0063】
また、このスイッチ装置3では、操作軸15の係止部21を操作軸15の軸方向と直交する方向に向けて移動させることにより、操作軸15の係止部21を第2溝部24の第2孔部24aから第2溝部24の第2切欠き溝24bに引き出すことができると共に、操作軸15の外端部15bを第1溝部23の第1孔部23aから第1溝部23の第1切欠き溝23bに引き出すことができるので、簡単に且つ容易に操作釦16を操作軸15の係止部21から取り外すことができる。
【0064】
また、このスイッチ装置3では、操作軸15に防水部材である複数の防水リング18が設けられていることにより、操作軸15の外周面とケース本体5の軸挿入孔14aの内周面との間の防水を図ることができる。すなわち、このスイッチ装置3では、複数の防水リング18がゴムなどの弾力性を有する合成樹脂によって形成されて、複数の防水リング18の各外周面がケース本体5の軸挿入孔14aの内周面に圧接した状態で摺動するので、操作軸15の外周面とケース本体5の軸挿入孔14aの内周面との間の防水を図ることができる。
【0065】
また、このスイッチ装置3では、操作軸15に操作釦16を腕時計ケース1の外部に向けて付勢する付勢部材20が設けられていることにより、付勢部材20の付勢力によって操作釦16を腕時計ケース1の外部に確実に且つ良好に露出させることができ、これにより操作釦16を良好に操作することができる。
【0066】
すなわち、この付勢部材20は、操作軸15の外端部15b側に位置する外周面に固定された固定板20aと、操作軸15の内端部15a側に位置する外周面にその軸方向に沿ってスライド可能に配置されたワッシャーなどの可動板20bと、これら固定板20aと可動板20bとの間に配置されるばね部材20cと、を備えていることにより、ばね部材20cのばね力に抗して操作軸15をスライドさせることができる。
【0067】
この場合、この付勢部材20では、ばね部材20cが操作軸15の外周面にその軸方向に沿って配置されるコイルばねであり、一端部が固定板20aに当接し、他端部が可動板20bに押し当てられて、可動板20bを防水リング18に押し当てることにより、操作軸15を腕時計ケース1の外部に向けて確実に付勢することができると共に、ばね部材20cのばね力に抗して操作軸15をスライドさせることができる。
【0068】
さらに、このスイッチ装置3では、操作軸15に腕時計ケース1から操作軸15の抜け出しを防ぐ抜止め部材17が設けられていることにより、付勢部材20の付勢力によって操作軸15が腕時計ケース1の外部に向けて押し出されても、抜止め部材17によって操作軸15が腕時計ケース1の外部に向けて抜け出さないようにすることができる。
【0069】
すなわち、この抜止め部材17は、腕時計ケース1のケース本体5内に突出した操作軸15の内端部15aに取り付けられて、ケース本体5の内面に接離可能に当接することにより、付勢部材20の付勢力によって操作軸15が腕時計ケース1の外部に向けて押し出されても、操作軸15が腕時計ケース1の外部に向けて抜け出さないようにすることができる。
【0070】
なお、上述した実施形態では、スイッチ装置3を組み立てる際に、操作軸15をケース本体5に取り付けた後に、操作軸15に操作釦16を取り付ける場合について述べたが、この発明は、これに限らず、例えば操作釦16を操作軸15に取り付けた状態で、操作軸15をケース本体5に取り付けるようにしても良い。
【0071】
また、上述した実施形態では、10時側のスイッチ装置3について説明したが、この発明は、これに限らず、2時側、4時側、8時側の各スイッチ装置3にも適用することができる。
【0072】
また、上述した実施形態では、操作釦16が、操作軸15の係止部21(外端部15b)に操作軸15の軸方向に対して直交する方向(上下方向)に着脱可能に取り付けられ、上方に向けて係止部21から外されるものとして説明したが、この発明は、これに限らず、操作釦16が上方に向けて外されなくても良い。
【0073】
例えば、係止部21を操作軸15の軸方向に対して直交する方向として横方向(左右方向のいずれか一方)に少なくとも延びるものとし、操作釦16を横方向(左右方向のいずれか一方)へと取り外せるものとしても良い。この場合、操作釦16は左右方向のいずれか他方から挿入される。
【0074】
このようにすることで、ケース本体5から外装部材6を上方へ外した際に、操作釦16が同時に外れてしまうことによる紛失のリスクを防ぐことができる。なお、係止部21が延びる方向や操作釦16の取り外し方向は横方向に限らず、下方向など、操作軸15の軸方向に対して直交する方向であり、且つ上方向を除く方向であれば良い。
【0075】
さらに、上述した実施形態では、腕時計に適用した場合について述べたが、この発明は必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の適用することができる。また、この発明は、必ずしも時計である必要はなく、腕に装着して使用する腕装着装置、携帯電話、携帯情報端末などの電子機器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 腕時計ケース
2 バンド取付部
3 スイッチ装置
4 時計ガラス
5 ケース本体
6 外装部材
7 時計モジュール
8 裏蓋
12 係合突起
13 係合凹部
14 取付孔
14a 軸挿入孔
14b 釦挿入孔
14c 大径孔部
14d 平坦部
14e ストッパ部
15 操作軸
15a 内端部
15b 外端部
16 操作釦
17 抜止め部材
18 防水リング
20 付勢部材
20a 固定板
20b 可動板
20c ばね部材
21 係止部
22 係合部
23 第1溝部
23a 第1孔部
23b 第1切欠き溝
23c ガイド部
24 第2溝部
24a 第2孔部
24b 第2切欠き溝