(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087371
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/54 20100101AFI20240624BHJP
【FI】
H01L33/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202166
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野澤 翔
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA03
5F142AA04
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA03
5F142CB23
5F142CD02
5F142CD18
5F142CD44
5F142CD47
5F142CF03
5F142CF23
5F142CG03
5F142CG24
5F142CG26
5F142CG43
5F142DA16
5F142DB24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】出射される光の損失を低減することができ、高い光出力が得られる発光装置を提供することができる。
【解決手段】基板11及び基板11の周縁に立設された枠部12からなり、凹部13Aを有する躯体13と、基板11上に配置され、支持基板25上に半導体発光機能層26が反射部材層29を介して設けられた半導体発光素子20と、半導体発光素子20上に接着部材21を介して配置された透光部材22と、躯体13の凹部13Aの底面から半導体発光素子20の上面20Bの周縁まで至って凹部13A内に充填された第1被覆部材23と、第1被覆部材23の上面から透光部材22の上面22Aの周縁まで至って凹部13A内に充填された第2被覆部材24と、を備え、半導体発光素子20の上面には、出光領域28と、半導体発光素子20の上面20Bの縁部上において出光領域28に並置された素子電極27Aとが設けられている。
【選択図】
図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板及び前記基板の周縁に立設された枠部からなり、凹部を有する躯体と、
前記基板上に配置され、支持基板上に半導体発光機能層が反射部材層を介して設けられた半導体発光素子と、
前記半導体発光素子上に接着部材を介して配置された透光部材と、
前記躯体の前記凹部の底面から前記半導体発光素子の上面の周縁まで至って前記凹部内に充填された第1被覆部材と、
前記第1被覆部材の上面から前記透光部材の上面の周縁まで至って前記凹部内に充填された第2被覆部材と、を備え、
前記半導体発光素子の上面には、出光領域と、前記半導体発光素子の前記上面の縁部上において前記出光領域に並置された素子電極とが設けられている半導体発光装置。
【請求項2】
前記接着部材は、一部が前記第1被覆部材と前記第2被覆部材との間に延在している接着部材延在部を有する請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記半導体発光素子は、矩形形状を有し、
矩形形状の前記半導体発光素子の1辺に沿って前記素子電極が設けられている請求項1または請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記半導体発光素子は、前記半導体発光素子の前記上面に垂直な方向から見たときに前記透光部材よりも突き出た突出部を有し、
前記突出部の上に前記素子電極が設けられた請求項1または請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記接着部材は、前記素子電極を覆う請求項1または請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記接着部材延在部は、前記半導体発光素子の前記上面と平行または離間する方向に延在する請求項1または請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記接着部材又は/及び前記透光部材に波長変換粒子を含む請求項1または請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記半導体発光素子の前記支持基板が前記半導体発光機能層から出射する光を吸収する特性を有する請求項1または請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
基板及び基板の周縁に立設された枠部からなり、凹部を有する躯体と、
前記基板上に配置された複数の半導体発光素子と、
前記半導体発光素子上に接着部材を介して配置された透光部材と、
前記躯体の前記凹部の底面から前記半導体発光素子の上面の周縁まで至って、前記凹部内に充填された第1被覆部材と、
前記第1被覆部材の上面から前記透光部材の上面の周縁まで至って前記凹部に充填された第2被覆部材と、を備え、
前記半導体発光素子の上面には、出光領域と、前記半導体発光素子の前記上面の縁部上において前記出光領域に並置された素子電極とが設けられており、
前記接着部材の一部が前記第1被覆部材と第2被覆部材との間に延在し、かつ前記接着部材は全体として一体に形成されている半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、特に発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子が実装された発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子が実装された発光装置は、各種の照明や表示装置に利用されている。特に近年、半導体発光素子が実装された発光装置は、更なる発光出力及び発光効率の向上が求められている。また、車両用ヘッドライトなどの光源として、高出力な発光装置が求められている。
【0003】
さらに、表示装置のバックライト用光源として小型化も求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、発光素子と、発光素子よりも幅広な透光性部材と、発光素子と透光性部材を接合する接着部材と、第1の光反射性部材と、第2の光反射性部材とを備えた発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、接着部材により発光素子と透光部材を接合する発光装置には、出射される光の損失が発生するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、出射される光の損失を低減することができ、高い光出力が得られる発光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1実施形態による発光装置は、
基板及び前記基板の周縁に立設された枠部からなり、凹部を有する躯体と、
前記基板上に配置され、支持基板上に半導体発光機能層が反射部材層を介して設けられた半導体発光素子と、
前記半導体発光素子上に接着部材を介して配置された透光部材と、
前記躯体の前記凹部の底面から前記半導体発光素子の上面の周縁まで至って前記凹部内に充填された第1被覆部材と、
前記第1被覆部材の上面から前記透光部材の上面の周縁まで至って前記凹部内に充填された第2被覆部材と、を備え、
前記半導体発光素子の上面には、出光領域と、前記半導体発光素子の前記上面の縁部上において前記出光領域に並置された第1の素子電極とが設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】第1の実施形態の発光装置を示した概念図であり、上面側から見たときの斜視図である。
【
図1B】第1の実施形態の発光装置を示した概念図であり、下面側から見たときの斜視図である。
【
図1C】第1の実施形態の発光装置を示した概念図であり、上面側から見たときの第2被覆部材の透かし図である。
【
図2A】第1の実施形態の発光素子を示した概念図である。
【
図2C】発光素子及び透光部材の一例を示した拡大図である。
【
図2D】発光素子及び透光部材の一例を示した拡大図である。
【
図3】発光装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4A】発光装置の製造工程S1を示す断面図である。
【
図4B】発光装置の製造工程S2を示す断面図である。
【
図4C】発光装置の製造工程S3を示す断面図である。
【
図4D】発光装置の製造工程S4を示す断面図である。
【
図4E】発光装置の製造工程S5を示す断面図である。
【
図4F】発光装置の製造工程S6を示す断面図である。
【
図5A】第2の実施形態による発光装置を示した断面図である。
【
図5B】第2の実施形態による発光装置を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下においては、本発明の好適な実施形態について説明するが、適宜改変し、組み合わせてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
[第1の実施形態]
【0011】
図1Aは、本発明の第1の実施形態による発光装置10を示した概念図であり、上面測から見たときの斜視図である。
図1Bは、下面側から見たときの斜視図であり、
図1Cは、第2被覆部材24を透かした状態の上面図である。また、
図1Dは、
図1Aおよび
図1Cに示すA-A線に沿った断面図である。
【0012】
本明細書においては、基板11に対して発光素子20が設けられた方向を上方といい、その反対方向を下方という。また、上面視において発光素子20の中心に向かう方向を内方といい、その反対方向を外方という。
【0013】
第1の実施形態に係る発光装置10は、基板11及び基板11の周縁に立設された枠部12からなり凹部13Aを有する躯体13と、基板11上に配置された発光素子20と、発光素子20上に接着部材21を介して配置された透光部材22と、躯体13の凹部13Aの底面から発光素子20の上面20Bの周縁まで至って凹部13A内に充填された第1被覆部材23と、第1被覆部材23の上面から透光部材22の上面22Aの周縁まで至って凹部13A内に充填された第2被覆部材24と、を備えている。
【0014】
(躯体)
躯体13は、上面11A及び下面11Bを備えた板状に形成された基板11と、基板11の上面11Aの周縁から立設された枠部12を有している。すなわち、
図1Dに示すように、躯体13は、発光素子20及び透光部材22を内部に収容する空間である凹部13Aを画定している。また、
図1Cに示すように、躯体13は上面視において(すなわち、当該上面11Aに垂直な方向に沿って上方から見たとき)、矩形状から4つの角部を扇状に切り欠かれた形状に一体成型されている。なお、躯体13は基板11と枠部12を別途作成して、接着して形成することもできる。
【0015】
基板11の基材としては、アルミナ(Al2O3)系セラミックが用いられている。なお、基材には、窒化アルミ(AlN)系のセラミック基板、ガラスエポキシ(ガラス繊維強化エポキシ樹脂)系の樹脂基板を用いることができる。枠部12には、基板11と同一な基材、または異なる素材のセラミック、樹脂、金属等を用いてもよい。
【0016】
基板11の上面11Aには、第1配線電極17A及び第2配線電極17Bが設けられている。また、基板11の内部には、第1導通ビア15A、第2導通ビア15B、放熱コア16が設けられている。また、基板11の下面11Bには、回路基板(図示せず)と接続する第1実装電極14A、第2実装電極14B、第3実装電極14Cとが設けられている。
【0017】
以後、第1配線電極17A、第2配線電極17Bの各々を区別しない場合には単に配線電極17と、第1導通ビア15A、第2導通ビア15Bの各々を区別しない場合には単に導通ビア15と、第1実装電極14A、第2実装電極14B、第3実装電極14Cの各々を区別しない場合には単に実装電極14と称して説明する。
【0018】
基板11の上面11Aの第1配線電極17Aと下面11Bの第1実装電極14Aは、第1導通ビア15Aを介して電気的に接続されている。また、基板11の上面11Aの第2配線電極17Bと下面11Bの第2実装電極14Bは、第2導通ビア15Bを介して電気的に接続されている。また、第2配線電極17Bと第3実装電極14Cは、放熱コア16を介して電気的に接続されている。
【0019】
第2配線電極17Bには、発光素子20が載置される発光素子載置領域を有し、第1配線電極17Aには保護素子が載置される保護素子載置領域を有している。
【0020】
第1及び第2配線電極17A、17Bは、銀(Ag)を主体とした金属であり、表面にニッケル(Ni)、金(Au)がこの順でメッキされている。また、第1、第2及び第3実装電極14A、14B、14Cは、Agを主体とした金属であり、表面にNi、Auがこの順でメッキされている。また、第1及び第2導通ビア15A、15及び放熱コア16は、Agを主体とした金属である。配線電極17、導通ビア15、放熱コア16及び実装電極14の主体金属は、銅(Cu)、タングステン(W)などでもよい。
実施形態においては、第1配線電極17Aはアノード電極であり、第2配線電極17Bはカソード電極である。なお、放熱コア16は第2配線電極17Bの発光素子を載置する発光素子載置領域の下部に設けてあり、発光素子20の発する熱を発光装置10の外部へ放熱する機能を有している。
【0021】
(発光素子)
発光素子20は、
図2Aに示すように、矩形状に形成されており、支持基板25と、支持基板25の上面に設けられたn型半導体層と発光層及びp型半導体層を備えた半導体発光機能層26と、支持基板25の上面に設けられた第1素子電極27Aと、支持基板25の下面に設けられた第2素子電極27Bと、半導体発光機能層26の下面に設けられた反射部材層29とを有するLED(light-emitting diode)である。
【0022】
矩形状の発光素子20の上面20Bには、半導体発光機能層26の発光層からの光が出射される矩形状の出光領域28と、発光素子20の上面20Bの1辺に沿って出光領域28と離間して設けられた第1素子電極27Aとが並置されている。つまり、第1素子電極27Aは、発光素子20の上面20Bの縁部に設けられている。よって、出光領域28と同サイズの透光部材22を重ねて載置でき、またワイヤ19を透光部材22に干渉することなく第1素子電極27Aへ接続できる。
【0023】
実施形態において支持基板25は、紫外光~1260nmまでの近赤外光を吸収するシリコン(Si)結晶体である。また、半導体発光機能層26は、青色光を放射するGaN系化合物半導体である。すなわち、発光素子20の支持基板25は半導体発光機能層26から出射する光を吸収する。なお、半導体発光機能層26としては赤色光や赤外光を放射する、AlInGaP系、InGaAs系の化合物半導体とすることもできる。
【0024】
反射部材層29は、支持基板25の上面(半導体発光機能層26の下面)に設けられている。言い換えると、半導体発光機能層26は、反射部材層29を介して、支持基板25上に設けられている。反射部材層29は、銀(Ag)を含み半導体発光機能層26から出射する光を反射する導電性を有する部材である。よって、支持基板25が半導体発光機能層26から出射する光を吸収する特性を有していても、支持基板25に吸収されることはない。また、支持基板25の半導体発光機能層26が設けられていない上面には第1素子電極27Aが設けられている。よって、半導体発光機能層26から出射する光が支持基板25に吸収されることはない。言い換えれば、半導体発光機能層26は、反射部材層29と第1素子電極27Aによって支持基板25とは光学的に遮蔽されている。なお、反射部材層29を介して支持基板25と半導体発光機能層26を接合した構成の発光素子20(金属貼り合せ発光素子とも称す)の出射光は、出光領域28から主に上方へ出射される。
【0025】
支持基板25に設けられた第1素子電極27Aは半導体発光機能層26のp型半導体に接続され、第2素子電極27Bは半導体発光機能層26のn型半導体に接続される。
図2Cに示したように、発光素子20の第1素子電極27Aは金バンプを介して基板11の上面の第1配線電極17Aと導電性のワイヤ19により電気的に接続されている。また、発光素子20の第2素子電極27Bは、第2配線電極17Bの発光素子載置領域上に接合部材18を介して接合されている。よって、基板11の第1実装電極14Aと第2実装電極14Bに電圧を印加することで発光素子20が発光する。
【0026】
なお、図示していないが、保護素子の上面の電極が第2配線電極17Bと導電性のワイヤにより電気的に接続され、保護素子の下面の電極が第1配線電極17Aの保護素子載置領域上に接合部材18を介して接合されている。保護素子は発光素子20と並列かつ逆極性で接続されており、静電気等による発光素子20の破損を防止する。実施形態の保護素子にはツェナーダイオードを用いた。なお、保護素子としてはツェナーダイオードの他にコンデンサ、バリスタ等を用いることもできる。
【0027】
(透光部材)
透光部材22は矩形状に形成されており、接着部材21を介して、発光素子20の上面20B上に設けられている。また、透光部材22は、上面視において、発光素子20の出光領域28を包含する大きさに形成されている。より詳細には、上面視において、透光部材22と発光素子20の出光領域28は一致する。そのため、発光素子20から出射される光が透光部材22の全体に広がり、発光装置10から出射される光の光ムラが低減でき、光強度の均一性の高い光を出射することができる。
【0028】
透光部材22は、発光素子20から出射された光、及び接着部材21に含まれる波長変換粒子31から出射される光を透光する導光体であり、透光部材22の上面22Aは発光装置10の出光面である。実施形態の透光部材22は、可視光透過率の高いガラスである。なお、ガラス以外にアルミナ(Al2O3)、フッ化カルシウム(CaF2)等の透光性のセラミック、またはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の透光性の樹脂を用いることもできる。また、透光部材22には、後述する接着部材21に含まれる波長変換粒子31と同様な波長変換粒子を含むことができる。
【0029】
(第1被覆部材)
図1Dに示すように、第1被覆部材23は、躯体13の凹部13Aに充填されており、躯体13の凹部13Aの底面から発光素子20の上面20Bの周縁まで至っている。詳細には、第1被覆部材23は、発光素子20の上面20B(反射部材層29面でもある)の周縁から枠部12の内面に向かって上方へ湾曲する上面と、発光素子20の側面20Dに沿った内周面と、凹部13Aの底面に沿った下面と、枠部12の内面に沿った外周面とを有している。
【0030】
第1被覆部材23の母材(媒質)には、透光性のシリコーン樹脂を用いている。なお、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂などからなる透光性の樹脂材料を用いることができる。言い換えれば、発光素子20及び波長変換粒子31から出射する光を吸収しない樹脂である。
【0031】
第1被覆部材23の添加粒子には、光反射材として光反射性を有する酸化チタン(TiO2)粒子が含有されている。第1被覆部材23に含有させるTiO2粒子としては、例えば、粒径は200nm~300nmであり、かつ、含有量は8~60wt%であることが好ましい。TiO2粒子の粒径が200nm~300nmであることにより、可視光帯域の光においてミー散乱が発生し、拡散反射性に優れるからである。なお、本実施形態では光反射材としてTiO2粒子を用いたが、TiO2粒子のほか、酸化亜鉛(ZnO)粒子などを用いることもできる。このような第1被覆部材23で発光素子20の側面20Dを被覆することで、半導体発光機能層26から出射する光が支持基板25に吸収されることを抑制できる。
【0032】
(第2被覆部材)
第2被覆部材24は、躯体13の凹部13Aに充填されており、第1被覆部材23の上面から透光部材22の上面22Aの周縁まで至っている。詳細には、透光部材22の外周縁から枠部12の内面の上端縁まで延びる上面と、透光部材22の側面22Cに沿った内周面と、第1被覆部材23及び接着部材21の上面に沿った下面と、枠部12の内面に沿った外周面とを有している。なお、枠部12の内面に沿った外周面は、第1被覆部材23が枠部12の内面の上端にまで達している場合には形成されないこともある。また、第2被覆部材24の上面は、発光装置10の表面でもある。
【0033】
第2被覆部材24の母材(媒質)には、透光性のシリコーン樹脂を用いている。なお、第1被覆部材23と同様なエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂などからなる透光性の樹脂材料を用いることもできる。
【0034】
第2被覆部材24の添加粒子には、光反射材として光反射性を有する酸化チタン(TiO2)粒子が含有されている。第2被覆部材24に含有させるTiO2粒子としては、例えば、粒径は200nm~300nmであり、かつ、含有量は8~60wt%であることが好ましい。TiO2粒子の粒径が200nm~300nmであることにより、可視光帯域の光においてミー散乱が発生し、拡散反射性に優れるからである。なお、本実施形態では光反射材としてTiO2粒子を用いたが、TiO2粒子のほか、酸化亜鉛(ZnO)粒子などを用いることもできる。このような第2被覆部材24で後述する接着部材21の延在部21Aを覆うことで、延在部21Aは第1被覆部材23と第2被覆部材24で挟まれて光漏れが防止される。また、第2被覆部材24で透光部材22の側面22Cを被覆することで、透光部材22の上面22Aから面内均一性に優れ、またコントラストの高い光を出射できる。実施形態においては、第2被覆部材24の母材(媒質)を第1被覆部材23と同じものとしたが、第1被覆部材23と異なったものでもよい。
【0035】
(接着部材)
接着部材21は、発光素子20と透光部材22を接着する透光部材である。接着部材21は、発光素子20の上面20Bと透光部材22の下面22Bとを覆い、上面視において発光素子20よりも外側に延在した延在部21Aを有している。延在部21Aは、第1被覆部材23と第2被覆部材24との間に挟まれて延在している。つまり、延在部21Aの上面は第2被覆部材24に覆われており、延在部21Aの下面は第1被覆部材23に覆われている。また、延在部21Aは、発光素子20の上面20Bに対して略平行に延びている。なお、延在部21Aの外周端(枠部12方向へ向かう先端部)は発光素子20の上方に向かう方向または離間する方向に延びていることが好ましい。
【0036】
接着部材21の母材(媒質)には、発光素子20から出射された光及び接着部材21内に含まれる波長変換粒子31から出射される光を透光するシリコーン樹脂を用いた。また、波長変換粒子31として粒径10~50μmのセリウム賦活イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)蛍光体粒子を用いている。蛍光体粒子には、セリウム賦活ルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LuAG:Ce)蛍光体、ユーロピウム又は/及びセリウム賦活オルトシリケート((Ba,Sr,Ca)SiO4:Eu,Ce)蛍光体、セリウム賦活テルビウム・アルミニウム・ガーネット(TAG:Ce)、ユーロピウム賦活αサイアロン蛍光体(α-SiAlON:Eu)、ユーロピウム賦活βサイアロン蛍光体(β-SiAlON:Eu)、マンガン賦活カリウム・フルオロ珪酸カリウム(KFS:Mn)などを用いることもできる。蛍光体粒子は、所望する発光装置10の出光色となるように単数又は複数の種類の蛍光体粒子を適宜選択して用いることができる。なお、接着部材21に波長変換粒子31を含有させないこともできる。
【0037】
接着部材21には、波長変換粒子31より粒径の大きいスペーサ30を含有させている。これにより、蛍光体粒子が半導体発光機能層26を損傷することを防止できる。また、発光素子20の半導体発光機能層26の上面26Aと透光部材22の下面22Bの離間距離TCが一意に定まる。このことで、接着部材21中の波長変換粒子(蛍光体粒子)31の濃度が一定化するので発光装置10から出射される光の色度を安定させることができる。また、接着部材21の最適充填量が規定できる。
【0038】
具体的には、スペーサ30として粒径40μmの軟質ガラスを用いた。軟質ガラスの替わりに硬質樹脂等を用いることもできる。これにより透光部材22の下面22Bと発光素子20の半導体発光機能層26の上面26Aとの離間距離TCを40μmにできる。
【0039】
実施形態において、接着部材21に延在部21Aを形成するには、接着部材21の理想の充填量に対して1.05倍~1.30倍の範囲で過剰充填することで実現している。ここで、接着部材21の理想の充填量とは、透光部材22の下面積に透光部材22の下面22Bと発光素子20の半導体発光機能層26の上面26Aとの離間距離TCを乗じた値である。このように接着部材21を過剰充填することで、透光部材22の下面に接着部材21のない非接着部が形成されることを防止できると同時に延在部21Aを形成できる。
【0040】
上述したように、実施形態の発光装置10は、発光素子20の支持基板25の側面20Dの全面を第1被覆部材23が被覆している。また、発光素子20の支持基板25の突出部20Aの上面は、第1素子電極27Aが形成されている。よって、接着部材21の延在部21Aの下面において、半導体発光機能層26及び波長変換粒子31から放射された光が支持基板25に吸収されることを防止できる。なお、支持基板25の突出部20Aの上面に形成された第1素子電極27Aは、接着部材21に覆われている。
【0041】
金属貼り合せ発光素子20の半導体発光機能層26から放射される主光は、接着部材21を介して対向した透光部材22へ導波される。したがって、接着部材21の延在部21A方向に導波する光は僅かである。また、接着部材21に含まれる波長変換粒子31により半導体発光機能層26から放射される光は遮蔽されて接着部材21の延在部21Aに至ることを防止できる。
【0042】
次に比較例を用いた比較結果について説明する。接着部材21が支持基板25まで延在し、接触している点、及び第1被覆部材23と第2被覆部材24が一体化している点が異なるだけで、他の構成を第1の実施形態と全て同じにした比較サンプル1(
図6Aの発光装置70)を作成し、比較サンプル1と本実施形態を同条件下で光出力比率(%)を測定した。その結果、本実施形態の光出力を100%とした場合、比較サンプル1の光出力は94%であった。すなわち、第1被覆部材23を設け且つ接着部材21の延在部21Aを設けることで6%もの光出力の減衰を防止でき、高い光出力を得た。
【0043】
また、接着部材21の体積が理想の充填量よりも2%少ない点、及び第1被覆部材23と第2被覆部材24が一体化している点が異なるだけで、他の構成を第1の実施形態と全て同じにした比較サンプル2(
図6Bの発光装置80)を作成し、比較サンプル2と本実施形態を同条件下で光出力(%)を測定した。その結果、本実施形態の光出力を100%とした場合、比較サンプル2の光出力比率は98%であった。すなわち、すなわち、第1被覆部材23を設け且つ接着部材21の延在部21Aを設けることで2%の光出力の減衰を防止でき、高い光出力を得た。
【0044】
以上、本実施形態の発光装置10は、第1及び第2被覆部材23、24と延在部21Aとを設けたことで光損失の発生を防ぐことを可能にした。
【0045】
(実施形態の変形例)
次に実施形態の変形例について説明する。実施形態の発光素子として、
図2B及び
図2Dに示す発光素子40を用いることもできる。発光素子40は、第1素子電極47Aが上面視において出光領域48の隣接する2辺を延長して交わる角部の内側に設けられた発光素子である。発光素子40においては、第1素子電極47Aの上面に金バンプを設けワイヤ19が接続され、ワイヤ19を覆うように透光部材22が配置される。そこで、ワイヤ19と透光部材22が干渉しないような発光素子40の半導体発光機能層46の上面46Aと透光部材22の下面22Bの間隔を一定に設定できるスペーサ30を用いている。例えば、高さ20μmの金バンプ上にワイヤ径30μmのワイヤ19を接続する場合には、スペーサ30の粒径を70μmとすれば、ワイヤ19の頂部と透光部材22の下面22Bのクリアランスが20μm超となり干渉しなくなる。よって、発光素子40であってもスペーサ30によって離間距離TCを一定に設定できる。すなわち、接着部材21を所望する過剰充填にでき、接着部材21の充填不足がなく延在部21Aが形成された発光装置とできる。
【0046】
(発光装置の製造方法)
以下に第1の実施形態の発光装置10の製造方法についてフローチャート及び図面を参照して詳細に説明する。
図3は、発光装置10の製造方法を示すフローチャートである。また、
図4A~4Fは、各工程を示す断面図である。
【0047】
(S1)躯体の準備
第1及び第2配線電極17A,17Bと、第1及び第2導通ビア15A,15Bと、第1実装電極14A、第2実装電極14B及び第3実装電極14Cとを有するアルミナ系LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)セラミック基板11と、基板11の上面11Aの周縁から立設する枠部12と、を有する躯体13を準備する(
図4A)。
【0048】
(S2)発光素子の実装
発光素子20が実装される第2配線電極17Bの発光素子載置領域の上面と保護素子が実装される第1配線電極17A上面に接合部材18として金錫(Au-Sn)クリームはんだを塗布する。次に、発光素子20、保護素子を金錫クリームはんだ上に載置する。リフロー炉で300℃まで加熱して金錫クリームはんだを溶融・固化して発光素子20及び保護素子を第2配線電極17B及び第1配線電極17Aの上面に実装する。その後、発光素子20の上面20Bに設けられた第1素子電極27Aと基板11の上面11Aに設けられた第1配線電極17Aとを金(Au)ワイヤ19で接続する(
図4B)。同様に、保護素子の上面の電極と第2配線電極17BをAuワイヤ19で接続する(図示せず)。
【0049】
(S3)第1被覆部材の形成
躯体13の内部に酸化チタン粒子を混合したシリコーン樹脂からなる第1被覆部材23を発光素子20の上面20Bの周縁に至る高さまで充填する。なお、第1被覆部材23の充填量が多少の増減があっても、発光素子20の上面20Bが覆われないように、第1被覆部材23の外周面の上端縁が枠部12の内周面において上下することで収束されるので問題ない。その後、150℃で10分間加熱してシリコーン樹脂を仮硬化させる(
図4C)。
【0050】
(S4)接着部材の塗布
発光素子20の上面20Bの中央にYAG:Ce及びスペーサ30として粒径40μmの軟質ガラスを混合したシリコーン樹脂からなる接着部材21を規定量塗布する。ここで規定量とは、発光素子20の上面積に発光素子20と透光部材22との離間距離TC(40μm)を乗じた値に1.05を乗じた値である。発光素子20と透光部材22との離間距離TCは、接着部材21に含有されるスペーサ30の粒径により一意に定まる(
図4D)。なお、接着部材21を規定量(最適充填量の1.05倍)とすることで、塗布位置のズレ又は塗布量の揺らぎがあっても、発光素子20の上面20Bと透光部材22の下面22Bの間に接着部材21が満たされ、延在部21Aが形成される。
【0051】
(S5)透光部材の載置
ガラス製の透光部材22を接着部材21の上部から、接着部材21内のスペーサ30により係止するまで押圧する。そのため、透光部材22は接着部材21を介して、発光素子20上に載置される。このとき、接着部材21の一部は、第1被覆部材23の上面に延出する(
図4E)。
【0052】
(S6)第2被覆部材の形成
躯体13の内部に酸化チタン粒子を混合したシリコーン樹脂からなる第2被覆部材24を透光部材22の上面22Aの周縁に至る高さまで充填する。なお、第2被覆部材24の外周面の上端縁は、枠部12の内周面の何れの高さでも問題ない。その後、180℃で30分間加熱して、第1被覆部材23、第2被覆部材24及び接着部材21を本硬化させる(
図4F)。
【0053】
以上、説明したように、本発明によれば、より安定的な製造が可能であり、光出力に損失のない高い光出力が得られる発光装置10を提供することができる。なお、発光素子40を用いる場合でも同じ製造工程で製造できる。
【0054】
[第2の実施形態]
第2の実施形態について説明する。なお、本発明の第1の実施形態による発光装置10と同一の構成については適宜説明を省略する。
第2の実施形態に係る発光装置50は、基板11及び基板11の周縁に立設された枠部からなり、凹部を有する躯体13と、基板11上に配置された複数の半導体発光素子20と、発光素子20の上に接着部材21を介して配置された透光部材22と、躯体13の凹部13Aから発光素子20の上面20Bの周縁まで至って、凹部13A内に充填された第1被覆部材23と、第1被覆部材23の上面から透光部材22の上面22Aの周縁まで至って凹部13Aに充填された第2被覆部材とを備えている。
【0055】
図5Aに示すように、発光装置50は発光素子20を2つ有し、上面視において、各発光素子20の2つの側面が平行に揃うように互いに離間した隣接離間領域を有して配列されている。そして、2つの発光素子20の全体の仮想外周縁(発光素子20の外側の辺を結んだ仮想線)は矩形である。また、複数の発光素子20の上面20Bの高さは実質上において一致している。
【0056】
第2の実施形態の発光装置50においては、2つの発光素子20の隣接離間領域において、接着部材21の延在部21Aが一体化した架橋構造となっている。よって、隣接離間領域の接着部材21の架橋構造部は、波長変換粒子31が出射する光を導光するので、隣接離間領域に沿った部分の透光部材22から出射する光の光出力の落ち込みを改善する。
【0057】
本実施形態においては、発光素子20の数を2つとしたが、その数は3つ以上でもよい。すなわち、複数の発光素子20の全体の仮想外周縁(発光素子20の外側の辺を結んだ仮想線)が矩形となるように、発光素子20を1行2列、1行3列、1行4列、・・・、m行n列(m、nは自然数)に配列できる。
【0058】
(第2の実施形態の変形例)
次に、第2の実施形態の変形例について説明する。
図5Bに示す発光装置60は、2つの発光素子20で透光部材62を共有した構造である。具体的には、隣接離間領域において、接着部材21の延在部21Aが一体化した架橋構造の上面に透光部材62が覆った架橋構造となっている。よって、隣接離間領域の透光部材62の架橋構造部は、発光素子20及び波長変換粒子31が出射する光を導光するので、隣接離間領域及び隣接離間領域に沿った部分の透光部材62から出射する光の光出力の落ち込みを改善する。
【0059】
上述したように、発光装置50では接着部材21の延在部21Aが合体した架橋構造、発光装置60では更に透光部材62が架橋構造を有することで、上面視において、2つの発光素子20の間隙にも、光が伝達されるため、発光装置50、60から出射される光の強度ムラを低減することができ、光強度の均一性の高い光を出射することができる。
【0060】
以上、詳細に説明したように、出射される光の損失を低減することができ、高い光出力が得られる発光装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 発光装置
11 基板
11A 上面
11B 下面
12 枠部
13 躯体
13A 凹部
14A 第1実装電極
14B 第2実装電極
15A 第1導通ビア
15B 第2導通ビア
16 放熱コア
17A 第1配線電極
17B 第2配線電極
18 接合部材
19 ワイヤ
20 発光素子
20A 突出部
20B 上面
20C 下面
20D 側面
21 接着部材
22 透光部材
22A 上面
22B 下面
22C 側面
23 第1被覆部材
24 第2被覆部材
25 支持基板
26 半導体発光機能層
27A 第1素子電極
27B 第2素子電極
28 出光領域
29 反射部材層
30 スペーサ
31 波長変換粒子
40 発光素子
40A 切欠部
45 支持基板
46 半導体発光機能層
47A 第1素子電極
47B 第2素子電極
48 出光領域
49 反射部材層
50 発光装置
60 発光装置
62 透光部材
70 発光装置
80 発光装置