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  • 特開-バスの空調装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087381
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】バスの空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20240624BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B60H1/34 651Z
B60H1/00 102Z
B60H1/00 102U
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202180
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】圷 俊裕
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA05
3L211BA02
3L211BA03
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】空調の吹き出し口の配置と開閉扉の開放時の収納位置とが干渉する場合であっても、開閉扉の開閉状態に拘らず乗降口付近の温度環境を良好に維持するバスの空調装置を提供する。
【解決手段】開閉扉により乗降口7を開閉するバス1の空調装置であって、車室内の空調を制御する空調制御装置10と、空調制御装置10から延びて、乗降口7側に突出して開口するダクト11と、を備え、開閉扉は、乗降口7を開放する際、車内側へ扉が引き込まれる車内収納式に構成されるとともに、ダクト11を挿通可能な開口部4aと、開口部4aを開閉可能なフラップ部4bとを備え、開閉扉が車内側に引き込まれた際、ダクト11がフラップ部4bを押し込みながら開口部4aを挿通する、ことを特徴とする、バス1の空調装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉扉により乗降口を開閉するバスの空調装置であって、
車室内の空調を制御する空調制御装置と、
前記空調制御装置から延びて、前記乗降口側に突出して開口するダクトと、を備え、
前記開閉扉は、前記乗降口を開放する際、車内側へ扉が引き込まれる車内収納式に構成されるとともに、前記ダクトを挿通可能な開口部と、前記開口部を開閉可能なフラップ部とを備え、
前記開閉扉が車内側に引き込まれた際、前記ダクトが前記フラップ部を押し込みながら前記開口部を挿通する、ことを特徴とする、バスの空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスの空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
路線バスや観光バス等の車両は、乗降口に設けられる開閉扉が車内収納式に構成されることが多く、当該開閉扉を開放して乗客を乗降させるときに当該開閉扉を車内側に引き込むように収納している。例えば、特許文献1には、乗降口の開口部に設けられた2枚のドアのそれぞれを、回転とスライドとを組み合わせた動作により当該開口部の両側に収納するように開放するグライドスライドドアが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、2枚のドアを折り畳むようにして車内側に引き込みつつ乗降口の片側に収納するタイプの開閉扉が開示されている。ここで、特許文献2に係る従来技術では、開閉扉を開放した状態であっても、乗降口の開口にエアカーテンを形成するようにエアコンなどの空調風を送ることで外気を遮断し、乗客の温度環境を向上させている。このような目的のために、当該従来技術では、乗降口の開口部の片側に当該開閉扉を収納しつつ、開口部の他方の側に空調の吹き出し口を設ける構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-2210129号公報
【特許文献2】実開平2-33722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、空調の吹き出し口の配置と開閉扉の開放時の収納位置とが互いに制約し合うことによりレイアウトの自由度が低下し、配置が干渉し合う場合には開閉扉の開放時に空調風を乗降口付近に供給することができない虞が生じる。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、空調の吹き出し口の配置と開閉扉の開放時の収納位置とが干渉する場合であっても、開閉扉の開閉状態に拘らず乗降口付近の温度環境を良好に維持することができるバスの空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るバスの空調装置は、開閉扉により乗降口を開閉するバスの空調装置であって、車室内の空調を制御する空調制御装置と、前記空調制御装置から延びて、前記乗降口側に突出して開口するダクトと、を備え、前記開閉扉は、前記乗降口を開放する際、車内側へ扉が引き込まれる車内収納式に構成されるとともに、前記ダクトを挿通可能な開口部と、前記開口部を開閉可能なフラップ部とを備え、前記開閉扉が車内側に引き込まれた際、前記ダクトが前記フラップ部を押し込みながら前記開口部を挿通する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空調の吹き出し口の配置と開閉扉の開放時の収納位置とが干渉する場合であっても、開閉扉の開閉状態に拘らず乗降口付近の温度環境を良好に維持することができるバスの空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る空調装置を備えるバスの外観斜視図である。
図2】前扉の閉鎖時におけるバスの車内前方付近を模式的に示す上面図である。
図3】前扉の開放時におけるバスの車内前方付近を模式的に示す上面図である。
図4】前扉の変形例を模式的に示す側面図である。
図5】開閉機構の変形例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ実施形態について詳細に説明する。尚、本開示は、以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、又は省略などを行っており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0011】
図1は、本発明に係る空調装置を備えるバス1の外観斜視図である。バス1は、本実施形態においては例えば2か所の乗降口が設けられた路線バスであり、車両の前方に配置された前扉2、及び車両の中程に配置された中扉3を備える。本実施形態のバス1は、前扉2の下方において、詳細を後述する開閉機構4が設けられている。
【0012】
尚、図1では、三次元空間における互いに直交する方向として、車両の前後方向、左右方向、上下方向を示している。以降の図においても、これらに対応する方向を必要に応じて図示することとする。
【0013】
図2は、前扉2の閉鎖時におけるバス1の車内前方付近を模式的に示す上面図である。バス1は、一般的な路線バスと同様、当該部分の右側に運転席5、及び運転台6が配置され、左側に乗降口7の空間が設けられている。また、バス1は、フロントガラス8の下方において、各種コンポーネントを収納可能なフロントパネル9が設けられている。
【0014】
運転台6の内部には、空調風を供給することにより車室内の空調を制御するための空調制御装置10を備える。空調制御装置10は、主に運転席5の下方付近に当該空調風を吹き出すよう構成されている。尚、空調制御装置10は、配置が運転台6の内部に限定されるものではなく、他の任意の場所に収容されてもよい。
【0015】
そして、本実施形態に係るバス1は、空調制御装置10から延びて、乗降口7に突出して開口するダクト11を備える。より具体的には、ダクト11は、空調制御装置10からフロントパネル9の内部を経由して乗降口7の空間へ突出するように、当該空間の下方に吹き出し口12が設けられる。これにより、空調制御装置10は、矢印P1で示すように乗降口7の空間の温度環境を調整することができ、特に車両へ乗り込んだ乗客の体感を向上させることができる。
【0016】
また、本実施形態の「開閉扉」としての前扉2は、回転とスライドとを組み合わせた動作により乗降口7を開閉するグライドスライドドアであり、ここでは開閉の軌跡を複数の破線で表している。すなわち、前扉2は、閉鎖時において車室外を向く面が、開放時に車両前方を向くように回転しつつフロントガラス8に対向する位置に収容される。これによりバス1は、乗降口7の限られたスペースにおいて乗客の乗降を妨げることなく前扉2を開放することができる。
【0017】
ここで、本実施形態の前扉2には、ダクト11の吹き出し口12と同等の高さにおいて開閉機構4が設けられている。より具体的には、開閉機構4は、前扉2に設けられた開口部4a、開口部4aを塞ぐ板状のフラップ部4b、フラップ部4bを摺動可能に支持するヒンジ4c、及び図示しないバネ等からなる付勢部材を備える。
【0018】
開口部4aは、ダクト11の吹き出し口12を挿通可能な形状及び大きさで形成されている。また、フラップ部4bは、前扉2の閉鎖時において付勢部材により開口部4aを塞ぐように付勢されている。
【0019】
図3は、前扉2の開放時におけるバス1の車内前方付近を模式的に示す上面図である。前扉2は、乗車口を開放する際、車内側に扉が引き込まれる車内収納式に構成されている。このとき、前扉2の収納位置とダクト11の吹き出し口12とは互いに干渉することになる。
【0020】
しかしながら、本実施形態に係るバス1は、上記した前扉2に開閉機構4を備えるため、開閉扉が車内に引き込まれた際、吹き出し口12の部分においてダクト11がフラップ部4bを押し込みながら開口部4aを挿通するように構成されている。このため、ダクト11を通る空調風は、矢印P2で示すように、前扉2に妨げられることなく乗降口7の空間へ供給され、当該空間の温度環境を調整することができる。
【0021】
尚、開閉扉を開ける過程においては前扉2の角度が変化しながらダクト11が開口部4aを挿通するため、開口部4aは、ダクト11の断面寸法よりも大きく、且つ前扉2と吹き出し口12とが干渉しない配置に設定されている。
【0022】
以上のように、本実施形態に係るバス1の空調装置は、開閉扉にダクト11を挿通可能な開口部4aと、開口部4aを開閉可能なフラップ部4bとを備え、開閉扉が車内側に引き込まれた際にダクト11がフラップ部4bを押し込みながら開口部4aを挿通する。従って、バス1の空調装置は、空調の吹き出し口12の配置と開閉扉の開放時の収納位置とが干渉する場合であっても、開閉扉の開閉状態に拘らず乗降口7付近の温度環境を良好に維持することができる。
【0023】
尚、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々なタイプの開閉扉に適用することができる。例えば、上記の実施形態では乗降口7を開閉する一枚のグライドスライドドアに適用する例を示したが、2枚のドア板が乗降口7の両側にそれぞれ収納されるグライドスライドドアにも適用することも可能である。
【0024】
また、図4に示すように、前扉2を構成する一対のドア板2a、2bが乗降口7の両側にそれぞれ単純回転して収納される開閉扉に対しても適用可能である。また、上記した実施形態では車両前方のフロントパネル9から乗降口7に向けてダクト11が突出する形態を例示したが、乗降口7に向けて車両後方側から空調風を供給し、且つ同位置に開閉扉が収容される場合には、当該開閉扉に開閉機構4を設けることもできる。
【0025】
更に、開閉機構4は、図5に示すように、前扉2の開口部4aの上端にヒンジ4cを設けることにより、水平方向の回転軸で開閉するフラップ部4bを有する構成としてもよい。この場合には、フラップ部4bが自重により開口部4aを塞ぐため、上記した付勢部材の適用を省略してもよい。
【0026】
また、バス1の中扉3が車内収納式に構成されている場合には、上記した各種の開閉扉及び開閉機構4を中扉3に適用してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 バス
2 前扉
4 開閉機構
4a 開口部
4b フラップ部
4c ヒンジ
7 乗降口
10 空調制御装置
11 ダクト
図1
図2
図3
図4
図5