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特開2024-87383散水装置および膜分離活性汚泥処理設備の立ち上げ方法
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  • 特開-散水装置および膜分離活性汚泥処理設備の立ち上げ方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087383
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】散水装置および膜分離活性汚泥処理設備の立ち上げ方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/00 20060101AFI20240624BHJP
   C02F 3/12 20230101ALI20240624BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240624BHJP
【FI】
B01D65/00
C02F3/12 S
C02F1/44 A
C02F1/44 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202182
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003502
【氏名又は名称】弁理士法人芳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢次 壮一郎
【テーマコード(参考)】
4D006
4D028
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA01
4D006HA21
4D006HA41
4D006HA93
4D006JA31Z
4D006JA51Z
4D006JB11
4D006KA31
4D006KA41
4D006KB22
4D006KC07
4D006KC14
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006PA01
4D006PB08
4D006PC62
4D028BC17
4D028BD17
(57)【要約】
【課題】親水化剤が抜けた後の分離膜の乾燥を効率的に抑えることができる散水装置および膜分離活性汚泥処理設備の立ち上げ方法を提供すること。
【解決手段】散水装置3は、膜分離装置23が設置された水処理施設の水供給源に接続され、水を導く給水配管31と、給水配管31に接続され、被処理水を貯留する膜分離槽4に配置されて浸漬される膜分離装置23が有する分離膜の表面に給水配管31により導かれた水を供給する散水部32と、を備える。散水部32は、膜分離装置23の上方に配置され、給水配管31により導かれた水を通す本体321と、本体321に設けられ、本体321を通った水を分離膜の表面に向かって噴射するノズル322と、水処理施設に設置された部材52、53に取り付けられ、分離膜に対するノズル322の位置を決める位置決め部323と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を貯留する膜分離槽に配置されて浸漬される膜分離装置が有する分離膜の表面に水を供給する散水装置であって、
前記膜分離装置が設置された水処理施設の水供給源に接続され、前記水を導く給水配管と、
前記給水配管に接続され、前記給水配管により導かれた前記水を前記分離膜の前記表面に供給する散水部と、
を備え、
前記散水部は、
前記膜分離装置の上方に配置され、前記給水配管により導かれた前記水を通す本体と、
前記本体に設けられ、前記本体を通った前記水を前記分離膜の前記表面に向かって噴射するノズルと、
前記水処理施設に設置された部材に取り付けられ、前記分離膜に対する前記ノズルの位置を決める位置決め部と、
を有することを特徴とする散水装置。
【請求項2】
前記部材は、前記膜分離装置を前記膜分離槽に設置する際に前記膜分離装置を案内し前記膜分離槽に対する前記膜分離装置の位置を決める案内部材であり、
前記本体は、前記膜分離槽を跨いで配置され、
前記位置決め部は、前記本体の両端部に設けられており、前記案内部材の上端部に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の散水装置。
【請求項3】
前記部材は、前記膜分離槽に設置された前記膜分離装置の浮きを抑える安定部材であり、
前記本体は、前記膜分離槽を跨いで配置され、
前記位置決め部は、前記本体の両端部に設けられており、前記安定部材の上端部に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の散水装置。
【請求項4】
前記散水部は、前記本体の中央部に設けられ単独または前記本体と共に輪を形成する吊り輪をさらに有し、
前記吊り輪は、前記位置決め部が前記部材に取り付けられた状態において水平に延びたことを特徴とする請求項1に記載の散水装置。
【請求項5】
前記散水部は、前記本体に設けられ前記給水配管に接続されて前記水を前記本体に導く接続部をさらに有し、
前記接続部は、前記吊り輪が延びた向きと同じ向きに延びたことを特徴とする請求項4に記載の散水装置。
【請求項6】
前記散水部は、前記水処理施設に仮設されることを特徴とする請求項2~5のいずれか1項に記載の散水装置。
【請求項7】
前記部材は、前記膜分離槽の上部に設置され前記膜分離槽の少なくとも一部を覆う覆蓋であり、
前記位置決め部は、前記ノズルを挟む位置で前記本体に設けられており、前記覆蓋に形成された点検口に嵌められることを特徴とする請求項1に記載の散水装置。
【請求項8】
前記散水部は、前記本体に設けられ前記給水配管に接続されて前記水を前記本体に導く接続部をさらに有し、
前記接続部は、前記本体が延びた方向と同じ方向に延びたことを特徴とする請求項7に記載の散水装置。
【請求項9】
前記散水部は、前記水処理施設に常設されたことを特徴とする請求項7または8に記載の散水装置。
【請求項10】
他の水処理設備からの余剰汚泥または活性汚泥を種汚泥として用いる膜分離活性汚泥処理設備の立ち上げ方法であって、
被処理水を貯留する膜分離槽に配置されて浸漬される膜分離装置の膜ろ過の試運転を前記膜分離装置が前記膜分離槽に清水で浸漬された状態で行うステップと、
前記試運転を行った後に、前記膜分離槽から前記清水を排出するステップと、
前記膜分離槽に設置された前記膜分離装置が有する分離膜の表面に水を供給する散水装置を用いて前記分離膜の前記表面に前記水を定期的に供給しつつ、前記種汚泥を前記膜分離槽に供給し前記膜分離活性汚泥処理設備に適した所定のMLSSに活性汚泥を馴養するステップと、
を備えたことを特徴とする膜分離活性汚泥処理設備の立ち上げ方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離槽に配置されて浸漬される膜分離装置が有する分離膜の表面に水を供給する散水装置、および他の水処理設備からの余剰汚泥または活性汚泥を種汚泥として用いる膜分離活性汚泥処理設備の立ち上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活排水のような一般的な都市下水や産業廃水等(以下、「汚水」という。)の浄化処理を行うために、膜分離活性汚泥法を採用した汚水処理設備(以下、「膜分離活性汚泥処理設備」という。)が構築されている。膜分離活性汚泥処理設備は、例えば、汚水を嫌気処理する嫌気槽、嫌気処理された汚水から窒素を除去する無酸素槽、有機物及びアンモニア性窒素を好気処理する好気槽(曝気槽)、好気処理された汚水から処理水を膜ろ過する膜分離装置を備えた膜分離槽等を備える。
【0003】
膜分離活性汚泥処理設備は、膜分離装置により活性汚泥の固液分離を行うので、MLSS(Mixed Liquor Suspended Solids:活性汚泥法の曝気槽中混合液の浮遊物質)を高い濃度に維持できるため、槽の容積を小さくでき、あるいは槽内での反応時間を短縮できる等の利点がある。また、最終沈殿池が不要となるので処理施設全体の敷地面積を減らすことができる等の利点がある。
【0004】
膜分離装置が有する分離膜は、基本的に疎水性の物質であり、親水化剤を分離膜に浸透させることにより通水性能を確保している。しかし、分離膜が膜分離槽において一旦浸漬されて親水化剤が抜けた後、分離膜が乾燥すると、分離膜の膜ろ過機能が失われる。そのため、親水化剤が抜けた後に分離膜を乾燥させないことが必要である。
【0005】
例えば、膜分離装置が設置された膜分離槽の清掃や改造工事が実施される場合、膜分離槽から被処理水等を排出して膜分離槽を空にする必要がある。そのため、作業期間中に分離膜を乾燥させないことが必要である。
【0006】
また、例えば、他の水処理設備からの余剰汚泥または活性汚泥を種汚泥として用いて膜分離活性汚泥処理設備を立ち上げる場合、事前に清水を用いた膜ろ過の試運転が行われる。膜分離槽から清水を排出し膜分離槽を空にした後で種汚泥を膜分離槽に供給する場合、処理施設の規模が大きくなると膜分離槽の容量も大きくなるため、分離膜が再び浸漬されるまでに例えば1日以上の長い時間を要する場合がある。このような場合、種汚泥の供給期間中に分離膜を乾燥させないように注意する必要がある。
【0007】
特許文献1には、使用された分離膜を運転休止後に保管する方法が開示されている。特許文献1に記載された固液分離膜の保管方法では、使用された分離膜を乾燥状態で保管する際、分離膜を洗浄液により洗浄し、ついで、親水化剤を含む水溶液により膜面を親水化させた後、分離膜を乾燥し、保管する。
【0008】
しかし、親水化剤が抜け、分離膜が乾燥した後に、親水化剤を分離膜に浸透させることは容易ではない。また、例えば限外ろ過(UF:Ultra Filtration)膜の場合など、分離膜の種類によっては、親水化剤が抜け、分離膜が乾燥した後に、親水化剤を分離膜に浸透させることはできない場合がある。
【0009】
親水化剤が抜けた後に分離膜を乾燥させない手段の一策として、作業者が膜分離槽の清掃や改造工事などの作業期間中に分離膜の表面に定期的に散水することが挙げられる。しかし、24時間体制で散水を行う必要性が生ずる場合があるため、安全性や手間の点において問題がある。
【0010】
他方、特許文献2および3には、所定のBOD/SS負荷よりも高いBOD/SS負荷で運転管理される他の水処理装置からの余剰汚泥または活性汚泥を種汚泥に用いることにより、短時間で膜分離活性汚泥処理装置を立ち上げる技術が開示されている。しかし、いずれも、清水を用いた膜ろ過の試運転が行われた後、膜分離槽から清水を排出せずに種汚泥を供給して馴養運転を開始する。そのため、馴養運転の開始直後のMLSSを高くして馴養運転期間を短縮する点においては、なお改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009-214023号公報
【特許文献2】特開2013-664号公報
【特許文献3】特開2013-22548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、親水化剤が抜けた後の分離膜の乾燥を効率的に抑えることができる散水装置および膜分離活性汚泥処理設備の立ち上げ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1態様は、被処理水を貯留する膜分離槽に配置されて浸漬される膜分離装置が有する分離膜の表面に水を供給する散水装置であって、前記膜分離装置が設置された水処理施設の水供給源に接続され、前記水を導く給水配管と、前記給水配管に接続され、前記給水配管により導かれた前記水を前記分離膜の前記表面に供給する散水部と、を備え、前記散水部は、前記膜分離装置の上方に配置され、前記給水配管により導かれた前記水を通す本体と、前記本体に設けられ、前記本体を通った前記水を前記分離膜の前記表面に向かって噴射するノズルと、前記水処理施設に設置された部材に取り付けられ、前記分離膜に対する前記ノズルの位置を決める位置決め部と、を有することを特徴とする散水装置である。
【0014】
本発明の第1態様によれば、散水部は、本体と、ノズルと、位置決め部と、を有する。位置決め部は、水処理施設に設置された部材に取り付けられ、分離膜に対するノズルの位置を決める。そのため、位置決め部は、分離膜に対するノズルの位置が風などの影響によりずれることを抑え、分離膜に対するノズルの位置がずれることで水が分離膜の表面以外の箇所に供給されることを抑えることができる。また、ノズルは、膜分離装置の上方に配置される本体に設けられているため、膜分離装置の上方から分離膜の表面に水を供給することができる。これにより、本発明の第1態様に係る散水装置は、親水化剤が抜けた後の分離膜の乾燥を効率的に抑えることができる。
【0015】
本発明の第2態様は、本発明の第1態様において、前記部材は、前記膜分離装置を前記膜分離槽に設置する際に前記膜分離装置を案内し前記膜分離槽に対する前記膜分離装置の位置を決める案内部材であり、前記本体は、前記膜分離槽を跨いで配置され、前記位置決め部は、前記本体の両端部に設けられており、前記案内部材の上端部に取り付けられることを特徴とする散水装置である。
【0016】
本発明の第2態様によれば、水処理施設に設置された部材は、案内部材である。案内部材は、膜分離装置を膜分離槽に設置する際に膜分離装置を案内し、膜分離槽に対する膜分離装置の位置を決める。そのため、案内部材の各種寸法および相対的な位置関係は、膜分離装置の据付を考慮して、厳密に管理されている。これにより、散水部の現場合わせをしなくとも、散水部の位置決め部を案内部材の上端部に確実かつ容易に取り付けることができる。また、ノズルは、膜分離槽を跨いで膜分離装置の上方に配置される本体に設けられているため、膜分離装置の直上部から分離膜の表面に水を供給することができる。
【0017】
本発明の第3態様は、本発明の第1態様において、前記部材は、前記膜分離槽に設置された前記膜分離装置の浮きを抑える安定部材であり、前記本体は、前記膜分離槽を跨いで配置され、前記位置決め部は、前記本体の両端部に設けられており、前記安定部材の上端部に取り付けられることを特徴とする散水装置である。
【0018】
本発明の第3態様によれば、水処理施設に設置された部材は、安定部材である。安定部材は、膜分離槽に設置された膜分離装置の浮きを抑える。そのため、安定部材の各種寸法および相対的な位置関係は、膜分離装置の浮きを抑えるという安定部材の機能を考慮して、厳密に管理されている。これにより、散水部の現場合わせをしなくとも、散水部の位置決め部を安定部材の上端部に確実かつ容易に取り付けることができる。また、ノズルは、膜分離槽を跨いで膜分離装置の上方に配置される本体に設けられているため、膜分離装置の直上部から分離膜の表面に水を供給することができる。
【0019】
本発明の第4態様は、本発明の第1~3態様のいずれか1つの態様において、前記散水部は、前記本体の中央部に設けられ単独または前記本体と共に輪を形成する吊り輪をさらに有し、前記吊り輪は、前記位置決め部が前記部材に取り付けられた状態において水平に延びたことを特徴とする散水装置である。
【0020】
本発明の第4態様によれば、吊り輪が本体の中央部に設けられているため、吊り輪の位置は、膜分離装置の吊り上げ用のクレーンのフックの位置に一致する。そのため、作業者等は、水処理施設に設置されたクレーンを用いて膜分離槽の両側から散水部を安全に部材に取り付けることができる。また、位置決め部が部材に取り付けられた状態において吊り輪が水平に延びるため、作業者等は、クレーンを用いて位置決め部を部材に取り付けた後にクレーンを下げることで、人の手を使うことなくクレーンのフックを吊り輪から簡単に外すことができる。
【0021】
本発明の第5態様は、本発明の第4態様において、前記散水部は、前記本体に設けられ前記給水配管に接続されて前記水を前記本体に導く接続部をさらに有し、前記接続部は、前記吊り輪が延びた向きと同じ向きに延びたことを特徴とする散水装置である。
【0022】
本発明の第5態様によれば、給水配管に接続される接続部が、吊り輪が延びた向きと同じ向きに延びている。そのため、散水部がクレーンに吊り上げられた状態において、接続部は、本体から上方に向かって延びることになる。これにより、作業者等は、散水部がクレーンに吊り上げられた状態で給水配管を接続部に容易に接続することができる。また、散水部がクレーンに吊り上げられた状態において、接続部が本体から下方に向かって延びる場合と比較して、給水配管のキンクが発生することを抑えることができる。
【0023】
本発明の第6態様は、本発明の第2~5態様のいずれか1つの態様において、前記散水部は、前記水処理施設に仮設されることを特徴とする散水装置である。
【0024】
本発明の第6態様によれば、散水部が水処理施設に仮設されるため、膜分離装置の吊り上げ作業に配慮する必要がなく、散水部のノズルを膜分離装置の直上部に効率的に設置することができる。また、散水部が水処理施設に仮設されるタイミングは、膜ろ過運転を実行しない停止期間中である。そのため、膜分離槽の活性汚泥が飛散してノズルに付着しノズルの噴射口を閉塞するおそれを抑えることができる。また、被処理水等が同じタイミングで排出される膜分離槽の系統数(通常は1系統)だけ散水部を用意することで、親水化剤が抜けた後の分離膜の乾燥を効率的に抑えることができる。
【0025】
本発明の第7態様は、本発明の第1態様において、前記部材は、前記膜分離槽の上部に設置され前記膜分離槽の少なくとも一部を覆う覆蓋であり、前記位置決め部は、前記ノズルを挟む位置で前記本体に設けられており、前記覆蓋に形成された点検口に嵌められることを特徴とする散水装置である。
【0026】
本発明の第7態様によれば、水処理施設に設置された部材は、覆蓋である。覆蓋は、膜分離槽の上部に設置され、膜分離槽の少なくとも一部を覆う。分離膜に対するノズルの位置を決める位置決め部は、覆蓋に形成された点検口に嵌められるため、ノズルの位置を膜分離装置(具体的には分離膜)の直上部に決めることができる。これにより、ノズルは、膜分離装置の直上部から分離膜の表面に水を供給することができる。
【0027】
本発明の第8態様は、本発明の第7態様において、前記散水部は、前記本体に設けられ前記給水配管に接続されて前記水を前記本体に導く接続部をさらに有し、前記接続部は、前記本体が延びた方向と同じ方向に延びたことを特徴とする散水装置である。
【0028】
本発明の第8態様によれば、給水配管に接続される接続部が、本体が延びた方向と同じ方向に延びている。そのため、散水部が覆蓋に取り付けられた状態において、接続部は、本体の延長線上に延びることになる。これにより、作業者等は、散水部が覆蓋に取り付けられた状態で給水配管を接続部に容易に接続することができる。また、接続部が本体の延長線上に延びるため、給水配管のキンクが発生することを抑えることができる。
【0029】
本発明の第9態様は、本発明の第7または8態様において、前記散水部は、前記水処理施設に常設されたことを特徴とする散水装置である。
【0030】
本発明の第9態様によれば、散水部が水処理施設に常設されているため、作業者等は、例えば給水配管を散水部に接続したり接続部に接続したりすることにより、膜分離装置の上方から分離膜の表面に水を容易に供給することができる。また、散水部が膜分離槽の少なくとも一部を覆う覆蓋の点検口に嵌められて常設されているため、膜ろ過運転を実行する運転期間中において、被処理水の水面とノズルとの間の隙間を確保することができる。そのため、散水部が水処理施設に常設されていても、膜分離槽の活性汚泥が飛散してノズルに付着しノズルの噴射口を閉塞するおそれを抑えることができる。
【0031】
本発明の第10態様は、他の水処理設備からの余剰汚泥または活性汚泥を種汚泥として用いる膜分離活性汚泥処理設備の立ち上げ方法であって、被処理水を貯留する膜分離槽に配置されて浸漬される膜分離装置の膜ろ過の試運転を前記膜分離装置が前記膜分離槽に清水で浸漬された状態で行うステップと、前記試運転を行った後に、前記膜分離槽から前記清水を排出するステップと、前記膜分離槽に設置された前記膜分離装置が有する分離膜の表面に水を供給する散水装置を用いて前記分離膜の前記表面に前記水を定期的に供給しつつ、前記種汚泥を前記膜分離槽に供給し前記膜分離活性汚泥処理設備に適した所定のMLSSに活性汚泥を馴養するステップと、を備えたことを特徴とする膜分離活性汚泥処理設備の立ち上げ方法である。
【0032】
本発明の第10態様によれば、膜分離装置の膜ろ過の試運転を膜分離装置が膜分離槽に清水で浸漬された状態で行った後に、膜分離槽から清水を排出する。続いて、散水装置を用いて分離膜の表面に水を定期的に供給しつつ、種汚泥を膜分離槽に供給し膜分離活性汚泥処理設備に適した所定のMLSSに活性汚泥を馴養する。そのため、親水化剤が抜けた後の分離膜の乾燥を効率的に抑え、分離膜の湿潤状態を保ちつつ、排出された清水に相当する量の種汚泥を膜分離槽に供給し膜分離活性汚泥処理設備に適した所定のMLSSに活性汚泥を馴養することができる。すなわち、散水装置を用いて分離膜を湿潤状態に維持できるので、膜分離槽内で種汚泥をできるだけ清水で薄めないようにでき、例えば最初沈殿池生汚泥など有機物を含有する被処理水の投入負荷を徐々に高めながら膜分離活性汚泥処理設備のMLSSを所定濃度にまで高めていく馴養運転の開始直後のMLSSを比較的高めることができ、その結果、馴養運転の運転期間を比較的短縮できる。これにより、水処理施設の規模が大きい場合であっても、膜分離槽に清水を張った状態のままで少量の種汚泥を供給して所定のMLSSに活性汚泥を少しずつ長い時間をかけて馴養する必要はなく、膜分離槽に多量の種汚泥を供給することにより、早期に膜分離活性汚泥処理設備に適した所定のMLSSに活性汚泥を馴養することができる。また、本発明の第10態様によれば、膜分離槽に清水を張った状態のままで種汚泥を供給する場合(特許文献2および3の場合を含む)と比較して、膜分離活性汚泥処理設備のMLSSを所定濃度にまで高めていく馴養運転の運転期間を短縮できる。そのため、膜分離活性汚泥処理設備の立ち上げ作業が、煩雑化および複雑化することを抑えることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、親水化剤が抜けた後の分離膜の乾燥を効率的に抑えることができる散水装置および膜分離活性汚泥処理設備の立ち上げ方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本実施形態に係る散水装置が設置される膜分離活性汚泥処理設備を表す概略図である。
図2】本実施形態に係る散水装置が水処理施設に設置された状態を表す斜視図である。
図3図2に表した矢印A1の方向に向かって本実施形態に係る散水装置および膜分離装置を眺めたときの正面図である。
図4図3に表した矢印A2の方向に向かって本実施形態に係る散水装置および膜分離装置を眺めたときの上面図である。
図5図2に表した領域A11を拡大した拡大図である。
図6】本実施形態に係る散水装置の散水部を表す斜視図である。
図7】本実施形態に係る散水装置および膜分離装置を表す正面図である。
図8】本実施形態に係る散水装置を表す斜視図である。
図9図8に表した切断面A12-A12における断面図である。
図10】本実施形態に係る膜分離活性汚泥処理設備の立ち上げ方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0036】
図1は、本実施形態に係る散水装置が設置される膜分離活性汚泥処理設備を表す概略図である。
図1に表した膜分離活性汚泥処理設備2は、無酸素槽21と好気槽22とを備えている。本実施形態の好気槽22は、本発明の「膜分離槽」の一例である。好気槽22には、分離膜231(図3および図4参照)を備えた膜分離装置23が浸漬して配置されている。膜分離装置23の下部には、散気装置24が配設されている。膜分離装置23に備えられた分離膜231としては、限外濾過膜、精密濾過膜等が採用される。分離膜231の形態は、中空糸膜、平膜、チューブラー膜などが採用される。
【0037】
散気装置24から供給される空気により好気性条件に制御される好気槽22では、活性汚泥により被処理水に含まれるアンモニア成分が硝化処理され、活性汚泥の一部が被処理水とともに無酸素槽21に返送される。つまり、好気槽22は膜分離槽でもあり、散気装置24から供給される気泡により分離膜231の表面が洗浄される。
【0038】
無酸素槽21では、図示しない最初沈殿池からの越流水が被処理水として流入する。好気槽22から返送された被処理水から窒素が分離除去される。
【0039】
無酸素槽21と好気槽22とは区画壁により互いに区画され、無酸素槽21内の被処理水が区画壁をオーバーフローすることで下流側の好気槽22へ移送される。図示しない吸引ポンプにより分離膜231でろ過された処理水は河川や海に放流される。
【0040】
図1に示すように、膜分離活性汚泥処理設備2には、種汚泥を供給するための汚泥供給経路25が設置されている。
【0041】
汚泥供給経路25を介して標準活性汚泥法等を採用した他の水処理設備からの余剰汚泥または活性汚泥が、種汚泥として供給される。種汚泥は、膜分離活性汚泥法に適した所定のBOD/SS負荷よりも高いBOD/SS負荷で運転管理される種汚泥である場合が多い。
【0042】
一例として、膜分離活性汚泥処理設備2の活性汚泥では、MLSSが8000~12000mg/Lに維持され、BOD/SS負荷が0.03~0.1gBOD/gMLSS/dの範囲で運転管理されている。一方、種汚泥を採取する処理方式が例えば標準活性汚泥法である場合、MLSSが生物処理槽で1000~2000mg/L、最終沈殿池93で3000~6000mg/Lに維持され、BOD/SS負荷が0.1~0.4gBOD/gMLSS/dの範囲で運転管理されている。このようなBOD/SS負荷が高い種汚泥を用いて、膜分離活性汚泥処理設備2の立ち上げが実行される。膜分離活性汚泥処理設備2の立ち上げ方法の詳細については、後述する。
【0043】
図2は、本実施形態に係る散水装置が水処理施設に設置された状態を表す斜視図である。
図3は、図2に表した矢印A1の方向に向かって本実施形態に係る散水装置および膜分離装置を眺めたときの正面図である。
図4は、図3に表した矢印A2の方向に向かって本実施形態に係る散水装置および膜分離装置を眺めたときの上面図である。
が水処理施設に設置された状態を表す上面図である。
図5は、図2に表した領域A11を拡大した拡大図である。
図6は、本実施形態に係る散水装置の散水部を表す斜視図である。
なお、図2図6に表した散水装置は、第1実施形態に係る散水装置3である。
【0044】
本実施形態に係る散水装置3は、給水配管31と、散水部32と、を備える。
給水配管31は、膜分離装置23が設置された水処理施設の水供給源(図示せず)に接続され、散水部32に水を導く。図1に表したように、本実施形態の給水配管31は、第1配管311と、第2配管312と、を有する。第1配管311は、膜分離槽4の上面41に載置され、水処理施設の水供給源に接続される。図1に関して前述した通り、膜分離槽4の一例が、好気槽22である。第1配管311は、水処理施設に仮設されてもよく、水処理施設に常設されていてもよい。第2配管312は、一方の端部において第1配管311に接続され、他方の端部において散水部32に接続されている。第2配管312としては、例えば、樹脂により形成された可撓性を有するホースあるいはチューブが挙げられる。
【0045】
散水部32は、本体321と、ノズル322と、位置決め部323と、を有する。散水部32は、水処理施設に仮設される。
【0046】
図2および図3に表したように、本体321は、膜分離装置23の上方に配置される。具体的には、図2図4に表したように、本体321は、膜分離槽4を跨いだ状態で膜分離装置23の上方に配置される。本体321は、例えば呼び径が50A程度の塩化ビニル管であり、水処理施設の水供給源から給水配管31を介して導かれた水を内部空間に通すことができる。
【0047】
ノズル322は、本体321の中央部に設けられている。散水部32が膜分離槽4に設置された状態において、ノズル322の噴射口は、下方を向いている。これにより、散水部32が膜分離槽4に設置された状態において、ノズル322は、本体321の内部空間を通った水を膜分離装置23の分離膜231(図3および図4参照)に向かって噴射する。
【0048】
位置決め部323は、図6に表したように、本体321の両端部に設けられている。位置決め部323は、本体321が延びた方向に対して交差する方向(例えば直交する方向)に延びている。位置決め部323は、例えば90°エルボを介して本体321に接続されている。あるいは、位置決め部323は、例えば90°エルボ自体であってもよい。位置決め部323は、膜分離槽4に設置された部材に取り付けられ、分離膜231に対するノズル322の位置を決める。
【0049】
以下、位置決め部323の位置決め機構について、図面を参照してさらに説明する。
図2および図5に表したように、接続部材51が、ボルトなどの締結部材により膜分離槽4の側面42に固定されている。また、案内部材52および安定部材53が、ボルトなどの締結部材により接続部材51に固定されている。つまり、案内部材52および安定部材53は、接続部材51を介して膜分離槽4の側面42に固定されている。本実施形態の案内部材52および安定部材53のそれぞれは、本発明の「水処理施設に設置された部材」の一例である。
【0050】
案内部材52は、膜分離装置23を膜分離槽4に設置する際に膜分離装置23を案内し、膜分離槽4に対する膜分離装置23の位置を決める部材である。すなわち、図2に表したように、膜分離装置23のうち膜分離槽4の側面42に対向する部分には、案内受け部232が付設されている。案内受け部232は、案内部材52が通過可能な凹部あるいは孔を有する。膜分離装置23は、膜分離槽4に設置される際、クレーン6(図3参照)に吊り上げられた状態からクレーン6により膜分離槽4の内部に降ろされていく。そして、膜分離装置23は、接続部材51を介して膜分離槽4の側面42に固定された案内部材52が案内受け部232の凹部あるいは孔を相対的に通過しつつ、膜分離槽4の底面まで降ろされ設置される。
【0051】
案内部材52の各種寸法および相対的な位置関係は、膜分離装置23の据付を考慮して、厳密に管理されている。そのため、膜分離装置23が案内部材52に案内され膜分離槽4に設置された状態において、膜分離槽4に対する膜分離装置23の位置は決まる。このようにして、案内部材52は、膜分離装置23を膜分離槽4に設置する際に膜分離装置23を案内し、膜分離槽4に対する膜分離装置23の位置を決める。
【0052】
図5に表したように、案内部材52は、管状を呈する。位置決め部323は、案内部材52の上端部521に挿入可能とされている。位置決め部323は、案内部材52の管内に挿入されることにより案内部材52の上端部521に取り付けられる。このように、膜分離槽4に対する膜分離装置23の位置を決める案内部材52の上端部521に位置決め部323が取り付けられるため、位置決め部323は、分離膜231に対するノズル322の位置を決めることができる。
【0053】
位置決め部323が取り付けられる部材は、案内部材52に限定されるわけではない。位置決め部323は、安定部材53に取り付けられてもよい。安定部材53は、膜分離槽4に設置された膜分離装置23の浮きを抑える部材である。すなわち、図1に関して前述した通り、膜分離装置23は、膜分離槽4に配置され、膜分離槽4に貯留された被処理水に浸漬される。また、散気装置24が、膜分離装置23の下方から散気あるいは曝気を行い、分離膜231の表面を洗浄する。そこで、接続部材51を介して膜分離槽4の側面42に固定された安定部材53は、膜分離装置23の上部を押さえ、膜分離装置23の浮きを抑える。安定部材53の各種寸法および相対的な位置関係は、膜分離装置23の浮きを抑えるという安定部材53の機能を考慮して、厳密に管理されている。
【0054】
図5に表したように、安定部材53は、管状を呈する。位置決め部323は、安定部材53の上端部531に挿入可能とされている。位置決め部323は、安定部材5の管内に挿入されることにより安定部材53の上端部531に取り付けられる。このように、各種寸法および相対的な位置関係が厳密に管理された安定部材53の上端部531に位置決め部323が取り付けられるため、位置決め部323は、分離膜231に対するノズル322の位置を決めることができる。
【0055】
図6に表したように、散水部32は、吊り輪324と、接続部325と、をさらに有する。
吊り輪324は、本体321の中央部に設けられ、単独または本体321と共に輪を形成する。図6に表した例では、吊り輪324は、本体321と共に輪を形成している。クレーン6は、フック61(図3参照)が吊り輪324に掛かることにより、散水部32を吊り上げることができる。
【0056】
図2に表したように、吊り輪324は、膜分離槽4に設置された部材に位置決め部323が取り付けられた状態において水平に延びる。前述した通り、膜分離槽4に設置された部材とは、案内部材52や安定部材53などである。すなわち、位置決め部323が案内部材52あるいは安定部材53の管内に挿入され案内部材52の上端部521あるいは安定部材53の上端部531に取り付けられた状態において、吊り輪324は、水平に延びる。一方で、吊り輪324は、散水部32がクレーン6に吊り上げられた状態において、略上方に延びる。
【0057】
接続部325は、本体321の一方の端部に設けられている。図2に表したように、接続部325は、給水配管31の第2配管312に接続され、水処理施設の水供給源から給水配管31の第1配管311および第2配管312を介して導かれた水を本体321の内部空間に導く。
【0058】
図6に表したように、接続部325は、吊り輪324が延びた向きと同じ向きに延びている。そのため、位置決め部323が案内部材52あるいは安定部材53の管内に挿入され案内部材52の上端部521あるいは安定部材53の上端部531に取り付けられた状態において、接続部325は、水平に延びるとともに吊り輪324が延びた向きと同じ向きに延びる。また、接続部325は、散水部32がクレーン6に吊り上げられた状態において、吊り輪324と同様に略上方に延びる。
【0059】
本実施形態に係る散水装置3によれば、位置決め部323は、水処理施設に設置された部材(例えば案内部材52や安定部材53)に取り付けられ、分離膜231に対するノズル322の位置を決める。そのため、位置決め部323は、分離膜231に対するノズル322の位置が風などの影響によりずれることを抑え、分離膜231に対するノズル322の位置がずれることで水が分離膜231の表面以外の箇所に供給されることを抑えることができる。また、ノズル322は、膜分離装置23の上方に配置される本体321に設けられているため、膜分離装置23の上方から分離膜231の表面に水を供給することができる。これにより、本実施形態に係る散水装置3は、親水化剤が抜けた後の分離膜231の乾燥を効率的に抑えることができる。
【0060】
位置決め部323が案内部材52の上端部521に取り付けられる場合、案内部材52の各種寸法および相対的な位置関係が膜分離装置23の据付を考慮して厳密に管理されているため、散水部32の現場合わせをしなくとも、散水部32の位置決め部323を案内部材52の上端部521に確実かつ容易に取り付けることができる。また、ノズル322は、膜分離槽4を跨いで膜分離装置23の上方に配置される本体321に設けられているため、膜分離装置23の直上部から分離膜231の表面に水を供給することができる。
【0061】
位置決め部323が安定部材53の上端部531に取り付けられる場合、安定部材53の各種寸法および相対的な位置関係が膜分離装置23の浮きを抑えるという安定部材53の機能を考慮して厳密に管理されているため、散水部32の現場合わせをしなくとも、散水部32の位置決め部323を安定部材53の上端部531に確実かつ容易に取り付けることができる。また、ノズル322は、膜分離槽4を跨いで膜分離装置23の上方に配置される本体321に設けられているため、膜分離装置23の直上部から分離膜231の表面に水を供給することができる。
【0062】
また、吊り輪324が本体321の中央部に設けられているため、吊り輪324の位置は、膜分離装置23の吊り上げ用のクレーン6のフック61の位置に一致する。そのため、作業者等は、水処理施設に設置されたクレーン6を用いて膜分離槽4の両側(すなわち膜分離槽4の上面41)から散水部32を安全に部材に取り付けることができる。また、前述した通り、位置決め部323が案内部材52の上端部521あるいは安定部材53の上端部531に取り付けられた状態において、吊り輪324が水平に延びる。そのため、作業者等は、クレーン6を用いて位置決め部323を案内部材52の上端部521あるいは安定部材53の上端部531に取り付けた後にクレーン6を下げることで、人の手を使うことなくクレーン6のフック61を吊り輪324から簡単に外すことができる。
【0063】
また、接続部325が、吊り輪324が延びた向きと同じ向きに延びているため、散水部32がクレーン6に吊り上げられた状態において、接続部325は、本体321から上方に向かって延びることになる。これにより、作業者等は、散水部32がクレーン6に吊り上げられた状態で給水配管31の第2配管312を接続部325に容易に接続することができる。また、散水部32がクレーン6に吊り上げられた状態において、接続部325が本体321から下方に向かって延びる場合と比較して、第2配管312のキンクが発生することを抑えることができる。
【0064】
さらに、散水部32が水処理施設に仮設されるため、膜分離装置23の吊り上げ作業に配慮する必要がなく、散水部32のノズル322を膜分離装置23の直上部に効率的に設置することができる。また、散水部32が水処理施設に仮設されるタイミングは、膜ろ過運転を実行しない停止期間中である。そのため、膜分離槽4の活性汚泥が飛散してノズル322に付着しノズル322の噴射口を閉塞するおそれを抑えることができる。また、被処理水等が同じタイミングで排出される膜分離槽4の系統数(通常は1系統)だけ散水部32を用意することで、親水化剤が抜けた後の分離膜231の乾燥を効率的に抑えることができる。
【0065】
次に、第2実施形態に係る散水装置3Aについて説明する。
なお、第2実施形態に係る散水装置3Aの構成要素が、図2~6に関して前述した第1実施形態に係る散水装置3の構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0066】
図7は、本実施形態に係る散水装置および膜分離装置を表す正面図である。
図8は、本実施形態に係る散水装置を表す斜視図である。
図9は、図8に表した切断面A12-A12における断面図である。
なお、図7は、図2に表した矢印A1の方向に向かって本実施形態に係る散水装置および膜分離装置を眺めたときの正面図に相当する。
【0067】
図7に表したように、本実施形態では、覆蓋54が膜分離槽4の上部に設置されている。本実施形態の覆蓋54は、本発明の「水処理施設に設置された部材」の一例である。覆蓋54は、膜分離槽4の少なくとも一部を覆い、例えば作業者等の動線として利用される。覆蓋54は、点検口541を有する。点検口541は、例えば作業者等が覆蓋54の上から膜分離槽4の内部を確認する際に利用される。点検口541は、作業者等が膜分離槽4の内部を確認しない通常の状態では蓋部材などにより閉じている。
【0068】
本実施形態に係る散水装置3Aは、給水配管31と、散水部32Aと、を備える。散水部32Aは、本体321と、ノズル322と、位置決め部323Aと、を有する。本実施形態の散水部32Aは、水処理施設に常設されている。
【0069】
位置決め部323Aは、ノズル322を挟む位置で本体321に設けられている。具体的には、位置決め部323Aは、第1枠326aと、第2枠326bと、第3枠326cと、第4枠326dと、を有し、枠体として形成されている。第1枠326aと第3枠326cとは、互いに対向した状態でノズル322を挟む位置に設けられ、本体321が延びた方向に対して交差する方向(例えば直交する方向)に延びている。第1枠326aおよび第3枠326cは、溶接あるいは接着などにより本体321の下部に固定されている。第2枠326bと第4枠326dとは、互いに対向した状態でノズル322を挟む位置に設けられ、本体321が延びた方向に対して平行方向に延びている。
【0070】
図7および図8に表したように、位置決め部323Aは、覆蓋54に形成された点検口541に嵌められる。これにより、位置決め部323Aは、分離膜231に対するノズル322の位置を決める。なお、位置決め部323Aが覆蓋54の点検口541に嵌められ分離膜231に対するノズル322の位置を決めることができる限りにおいて、第2枠326bおよび第4枠326dは、必ずしも設けられていなくともよい。
【0071】
散水部32Aは、接続部325Aをさらに有する。本体321の一方の端部に設けられている。図7および図8に表したように、接続部325Aは、給水配管31の第2配管312に接続され、水処理施設の水供給源から給水配管31の第1配管311および第2配管312を介して導かれた水を本体321の内部空間321a(図9参照)に導く。図8に表したように、接続部325Aは、本体321が延びた方向と同じ方向に延びている。
他の構造は、図2~6に関して前述した第1実施形態に係る散水装置3の構造と同様である。
【0072】
本実施形態に係る散水装置3Aによれば、分離膜231に対するノズル322の位置を決める位置決め部323Aは、覆蓋54に形成された点検口541に嵌められるため、ノズル322の位置を膜分離装置23(具体的には分離膜231)の直上部に決めることができる。これにより、ノズル322は、膜分離装置23の直上部から分離膜231の表面に水を供給することができる。
【0073】
また、本体321が延びた方向と同じ方向に接続部325Aが延びているため、散水部32Aが覆蓋54に取り付けられた状態において、接続部325Aは、本体321の延長線上に延びることになる。これにより、作業者等は、散水部32Aが覆蓋54に取り付けられた状態で給水配管31の第2配管312を接続部325Aに容易に接続することができる。また、接続部325Aが本体321の延長線上に延びるため、第2配管312のキンクが発生することを抑えることができる。
【0074】
さらに、散水部32Aを水処理施設に常設した場合、作業者等は、例えば給水配管31の第2配管312を散水部32Aの接続部325Aに接続することにより、膜分離装置23の上方から分離膜231の表面に水を容易に供給することができる。また、膜分離槽4の少なくとも一部を覆う覆蓋54の点検口541に散水部32Aが嵌められて常設されているため、膜ろ過運転を実行する運転期間中において、被処理水の水面44(図7参照)とノズル322との間に十分な隙間を確保することができる。そのため、散水部32Aが水処理施設に常設されていても、膜分離槽4の活性汚泥が飛散してノズル322に付着しノズル322の噴射口を閉塞するおそれを抑えることができる。
【0075】
図10は、本実施形態に係る膜分離活性汚泥処理設備の立ち上げ方法を説明するフローチャートである。
例えば、他の水処理設備からの余剰汚泥または活性汚泥を種汚泥として用いて膜分離活性汚泥処理設備2を立ち上げる場合、清水を用いた膜ろ過の試運転が行われる。そして、試運転が行われた後に膜分離槽4から清水を排出する必要がある。そのため、膜分離活性汚泥処理設備2の立ち上げ期間中に分離膜231を乾燥させないことが必要である。水処理施設の規模が大きくなると膜分離槽4の容量も大きくなるため、膜分離槽4から清水を排出し膜分離槽4を空にした後で種汚泥を膜分離槽4に供給すると、分離膜231が再び浸漬されるまでに例えば1日以上の長い時間を要する場合がある。このような場合、膜分離活性汚泥処理設備2の立ち上げ期間中に分離膜231を乾燥させないように注意する必要がある。
【0076】
親水化剤が抜けた後に分離膜231を乾燥させない手段の一策として、作業者が膜分離活性汚泥処理設備2の立ち上げ期間中に分離膜231の表面に定期的に散水することが挙げられる。しかし、24時間体制で散水を行う必要性が生ずる場合があるため、安全性や手間の点において改善の余地がある。
【0077】
そこで、本実施形態に係る膜分離活性汚泥処理設備2の立ち上げ方法では、まず、ステップS1において、膜分離活性汚泥処理設備2の膜ろ過の試運転を清水で行う。続いて、ステップS2において、図2図6に関して前述した散水装置3あるいは図7図9に関して前述した散水装置3Aを膜分離活性汚泥処理設備2に設置する。なお、図2図9に関して前述したように、散水装置3、3Aは、膜分離槽4に設置された膜分離装置23の上方から分離膜231の表面に水を供給することができる。続いて、ステップS3において、散水装置3あるいは散水装置3Aを用いて分離膜231の表面に水を定期的に供給しつつ、膜分離活性汚泥処理設備2の膜分離槽4から清水を排出し、膜分離槽4を空にする。ただし、ステップS3において分離膜231が乾燥しなければ、必ずしも分離膜231の表面に水を供給しなくてもよい。
なお、ステップS2は、ステップS1の前に行われてもよい。また、ステップS2における設置は、仮設であっても常設であってもどちらでもよい。
【0078】
続いて、ステップS4において、散水装置3あるいは散水装置3Aを用いて分離膜231の表面に水を定期的に供給しつつ、種汚泥を膜分離槽4に供給し膜分離活性汚泥処理設備2に適した所定のMLSSに活性汚泥を馴養する。
【0079】
なお、ステップS3で膜分離槽4を空にすることが、ステップS3に続くステップS4で供給される種汚泥が清水で希釈されないために最も望ましい。ただし、ステップS3で膜分離槽4から排出する清水の量が例えば膜分離槽4の貯留量の半分であったとしても、膜分離槽4に清水を張った状態のままで種汚泥を供給する場合に比べて、膜分離活性汚泥処理設備2の馴養運転の開始直後のMLSSを高める効果を期待できる。すなわち、図10のステップS3は、最適な例示であり、図10に表すように、膜分離槽4を空にするまで清水を排出する場合に限定されず、膜分離槽4から清水を排出するものであればよい。
【0080】
本実施形態に係る膜分離活性汚泥処理設備2の立ち上げ方法によれば、親水化剤が抜けた後の分離膜231の乾燥を効率的に抑え、分離膜231の湿潤状態を保ちつつ、排出された清水に相当する量の種汚泥を膜分離槽4に供給し膜分離活性汚泥処理設備2に適した所定のMLSSに活性汚泥を馴養することができる。これにより、水処理施設の規模が大きい場合であっても、膜分離槽4に清水を張った状態のままで少量の種汚泥を供給して所定のMLSSに活性汚泥を少しずつ馴養する必要はなく、膜分離槽4に多量の種汚泥を供給することにより、早期に膜分離活性汚泥処理設備2に適した所定のMLSSに活性汚泥を馴養することができる。また、膜分離槽4に清水を張った状態のままで種汚泥を供給する場合(特許文献2または3における場合を含む)と比較して、膜分離活性汚泥処理設備2のMLSSを所定濃度にまで高めていく馴養運転の運転期間を短縮できる。そのため、膜分離活性汚泥処理設備2の立ち上げ作業が、煩雑化および複雑化することを抑えることができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0082】
2:膜分離活性汚泥処理設備、 3:散水装置、 3A:散水装置、 4:膜分離槽、 5:安定部材、 6:クレーン、 21:無酸素槽、 22:好気槽、 23:膜分離装置、 24:散気装置、 25:汚泥供給経路、 31:給水配管、 32:散水部、 32A:散水部、 41:上面、 42:側面、 44:水面、 51:接続部材、 52:案内部材、 53:安定部材、 54:覆蓋、 61:フック、 93:最終沈殿池、 231:分離膜、 232:案内受け部、 311:第1配管、 312:第2配管、 321:本体、 321a:内部空間、 322:ノズル、 323:位置決め部、 323A:位置決め部、 324:吊り輪、 325:接続部、 325A:接続部、 326a:第1枠、 326b:第2枠、 326c:第3枠、 326d:第4枠、 521:上端部、 531:上端部、 541:点検口

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10