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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087394
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】開閉装置及び開閉装置の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/84 20060101AFI20240624BHJP
   E06B 9/17 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
E06B9/84 A
E06B9/17 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202196
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 展行
【テーマコード(参考)】
2E042
【Fターム(参考)】
2E042AA01
2E042CA01
2E042DA01
(57)【要約】
【課題】既設または新設の開閉装置において、巻取軸の脱落を確実に防止することができる開閉装置及び開閉装置の施工方法を提供することを課題とする。
【解決手段】下地材7が取り付けられた複数の柱材6を含む躯体に設置される開閉装置において、巻取軸2と、シャッターカーテン3と、前記巻取軸2を回転自在に支持するとともに、その後方側が前記躯体の柱材6aに固定される左右一対のブラケット4と、開閉機20と、前記巻取軸2の脱落を防止する脱落防止部30と、を備え、前記脱落防止部30は、前記ブラケット4の上部前方側と、前記ブラケット4が固定された前記柱材6aとは異なる前記躯体の他の柱材6bとの間に配置される連結部材31を有し、前記連結部材31の一端部を前記ブラケット4の前記上部前方側に連結するとともに、前記連結部材31の他端部を前記他の柱材6bに取付部材33を介して連結する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地材が取り付けられた複数の柱材を含む躯体に設置される開閉装置において、
巻取軸と、
前記巻取軸に巻装されるシャッターカーテンと、
前記巻取軸を回転自在に支持するとともに、その後方側が前記躯体の柱材に固定される左右一対のブラケットと、
前記巻取軸を正逆回転させる開閉機と、
前記巻取軸の脱落を防止する脱落防止部と、
を備え、
前記脱落防止部は、前記ブラケットの上部前方側と、前記ブラケットが固定された前記柱材とは異なる前記躯体の他の柱材との間に配置される連結部材を有し、
前記連結部材の一端部を前記ブラケットの前記上部前方側に連結するとともに、前記連結部材の他端部を前記他の柱材に取付部材を介して連結する
ことを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記取付部材は、前記他の柱材に取り付け固定される本体部を有し、
前記本体部は、前記他の柱材に当接して固定される垂直部と、この垂直部の下端から前方側に水平に延びる水平部と、を有し、
前記水平部に、前記連結部材の他端部が連結されることを特徴とする請求項1記載の開閉装置。
【請求項3】
前記垂直部の後面と前記水平部の下面とは直交し、前記後面と前記下面とは略直角の角部を有して接していることを特徴とする請求項2記載の開閉装置。
【請求項4】
前記取付部材を被覆する被覆部材を有し、
前記被覆部材は、前記本体部の前記水平部に載置されるとともに、前記垂直部を被覆するように配置されることを特徴とする請求項2記載の開閉装置。
【請求項5】
前記連結部材は、前記ブラケットの前記上部前方側から前記他の柱材側に延設される長尺状の長尺材からなることを特徴とする請求項1記載の開閉装置。
【請求項6】
前記連結部材は、複数の索体と、これら索体の張力を調整する張力調整部を有することを特徴とする請求項1記載の開閉装置。
【請求項7】
前記取付部材を前記他の柱材に取り付け固定するために、前記下地材を切除し、開口を形成する工程と、
前記取付部材を、前記開口に収容して前記他の柱材に取り付け固定する工程と、
前記連結部材の一端部を前記ブラケットの前記上部前方側に連結するとともに、前記連結部材の他端部を前記他の柱材に取り付け固定された前記取付部材に連結する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の開閉装置の施工方法。
【請求項8】
前記取付部材を、前記開口に収容して前記他の柱材に取り付け固定する工程は、
前記取付部材の本体部を前記開口に収容して前記他の柱材に取り付け固定する工程と、
前記本体部に被覆部材を装着する工程と、
を含むことを特徴とする請求項7記載の開閉装置の施工方法。
【請求項9】
前記取付部材を前記他の柱材に取り付け固定するために、前記下地材に形成する前記開口の開口範囲を設定する工程を有することを特徴とする請求項7記載の開閉装置の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉装置及び開閉装置の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の開閉装置として、例えば、特許文献1に記載されているように、天井部材で仕切られている天井裏空間に、左右のブラケットが配置され、これらのブラケットに巻取軸の軸方向の両端部が回転自在に支持されているシャッター装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-189913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のシャッター装置は、シャッターカーテンを巻き取り、繰り出すための巻取軸を備え、この巻取軸の軸方向の両端部に設けられた軸部は、軸受け部材を介して左右のブラケットに回転自在に支持されている。
ところで、このような構造を有するシャッター装置においては、例えば、地震等によって建物(躯体)に強い揺れが生じた場合、シャッター装置が振動し、ブラケットと巻取軸とが相対変位(相対移動)することで、巻取軸の軸部がブラケット側の軸受け部材から脱落することも考えられ、改善の余地があった。
また、シャッター装置は、下地材が取り付けられた複数の柱材を含む躯体に設置されていることも多く、このような下地材や柱材を含む躯体にシャッター装置の各構造部を設置する上で施工上の問題も生じていた。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであって、既設または新設の開閉装置(例えば、シャッター装置)において、巻取軸の脱落を確実に防止することができる開閉装置及び開閉装置の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題に鑑みて、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
下地材が取り付けられた複数の柱材を含む躯体に設置される開閉装置において、巻取軸と、前記巻取軸に巻装されるシャッターカーテンと、前記巻取軸を回転自在に支持するとともに、その後方側が前記躯体の柱材に固定される左右一対のブラケットと、前記巻取軸を正逆回転させる開閉機と、前記巻取軸の脱落を防止する脱落防止部と、を備え、前記脱落防止部は、前記ブラケットの上部前方側と、前記ブラケットが固定された前記柱材とは異なる前記躯体の他の柱材との間に配置される連結部材を有し、前記連結部材の一端部を前記ブラケットの前記上部前方側に連結するとともに、前記連結部材の他端部を前記他の柱材に取付部材を介して連結する
ことを特徴とする開閉装置。
【0007】
また、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
上述した開閉装置の施工方法において、前記取付部材を前記他の柱材に取り付け固定するために、前記下地材を切除し、開口を形成する工程と、前記取付部材を、前記開口に収容して前記他の柱材に取り付け固定する工程と、前記連結部材の一端部を前記ブラケットの前記上部前方側に連結するとともに、前記連結部材の他端部を前記他の柱材に取り付け固定された前記取付部材に連結する工程と、を含むことを特徴とする開閉装置の施工方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るシャッター装置の全体を示す概略正面図である。
図2】同シャッター装置における脱落防止部の配置の例を示す概略斜視図である。
図3】取付部材の構造(各構造部が一体化した状態)の例を示す概略斜視図である。
図4】取付部材の構造(各構造部が分離した状態)の例を示す概略斜視図である。
図5】取付部材を設置する設置工程の例を示す概要図である。
図6】取付部材を設置する設置工程の例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本明細書中、「左右方向」とは、開閉装置(シャッター装置1)の横幅方向(図1の左右方向)を意味し、「前後方向」とは、「左右方向」に略直交する水平方向(図1の手前側が「前方」、図2の奥側が「後方」)を意味する。
【0010】
[実施形態1]
図1は、本発明の一実施形態に係るシャッター装置の全体を示す概略正面図であり、図2は、同シャッター装置における脱落防止部の配置の例を示す概略斜視図である。本発明の実施形態は、例えば、開閉装置の一例である防災用のシャッター装置1として構成される。
【0011】
(シャッター装置の全体構成)
シャッター装置1は、巻取軸2、巻取軸2に巻装されるシャッターカーテン3、巻取軸2を回転自在に支持する左右一対のブラケット4、巻取軸2を正逆回転させる開閉機20を含み構成されている。
巻取軸2は、図1に示すように、天井材Aで形成される天井によって仕切られる天井裏空間T1に配置されている。この巻取軸2には、通常時、シャッターカーテン3が巻き取られており、火災等の非常事態発生時にシャッターカーテン3が巻取軸2から繰り出されて閉じ移動することにより、室内空間T2に防災区画が形成される。
【0012】
巻取軸2の軸方向の両端部は、左右一対のブラケット4により回転自在に支持される。これらのブラケット4は、防災用のシャッター装置1が設置される建物等の構造物(躯体B)を構成する柱や間柱等の柱材6(6a)にアンカー部材等の固定手段により取り付けられる。構造物(躯体B)を構成する柱材6(6a,6b,6c・・・)は、例えば金属製の角形鋼管等からなる柱材、あるいは、非金属(木材等)の素材からなる柱材で構成され、所定間毎に複数設けられている。
【0013】
複数の柱材6(6a,6b,6c・・・)には、図2に示すように、第1下地層7a及び第2下地層7bを含む下地材7が取り付けられている。
下地材7を構成する第1下地層7a及び第2下地層7bは、例えば、不燃材として、無機材料からなる、石膏ボード、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)、ALC板、フレキシブルボード等が用いられる。これらの材料は、高い断熱性と吸熱性とを有するので好適である。
第1下地層7a及び第2下地層7bは略同一の厚みに形成されており、これら第1下地層7a及び第2下地層7bを2層構造として所定の厚さに形成することで、熱伝導を抑制する効果を向上させている。第1下地層7aと第2下地層7bとは、同じ無機材料を使用してもよく、あるいは、それぞれ異なる無機材料を使用してもよい。
【0014】
なお、下地材7は、第1下地層7a及び第2下地層7bの2層構造に限定されるものではなく、第1下地層7a及び第2下地層7bに加え、さらに他の下地層を加えた多層構造として構成してもよく、あるいは、第1下地層7aあるいは第2下地層7bのみの単層構造として構成してもよい。
また、第1下地層7aと第2下地層7bは、それらの厚みをそれぞれ異なる厚みに構成してもよい。
【0015】
シャッターカーテン3は、多数のスラットを上下に連設することによって形成されたカーテン本体部3aと、このカーテン本体部3aの下端部に取り付けられた座板3bを含み構成されている。シャッターカーテン3は、室内空間T2に配置される壁等の躯体Cに取り付けられた左右一対のガイドレール10に案内されて上下方向に移動する。
【0016】
左右一対のブラケット4は、図2に示すように、平板状の本体部4aと、本体部4aの上縁部から左右方向外方に向けて折曲された上側フランジ部4bと、本体部4aの下縁部から左右方向外方に向けて折曲された下側フランジ部4cとを備えて構成されている。
また、ブラケット4には、巻取軸2の軸部2aを挿入するための孔部(不図示)が形成されている。この孔部に、例えばビス等の止着具でブラケット4に止着されている軸受け部材5を介して巻取軸2の軸部2aがブラケット4に回転自在に支持される。また、この軸部2aの先端部には軸部2aと一体回転する従動回転体2b(例えば、従動スプロケット)が外嵌されている。
なお、ブラケット4における軸部2aを挿入する孔部は、ブラケット4の前方に向かって開口するスリット(凹部)として形成してもよい。
【0017】
また、左右一対のブラケット4同士の下端部における対向間には、躯体B側に位置してまぐさ部8が左右方向長尺状に設けられている。このまぐさ部8は、前後方向に対向する前後一対のまぐさを備えて構成され、これらのまぐさによって、シャッターカーテン3が出入りする出入口スリットが形成されるとともに、天井材Aの端縁が覆われる。
【0018】
開閉機20は、巻取軸2を回転駆動するためのものであり、図2に示すように、左右一対のブラケット4のうち、一方のブラケット4に取り付けられる。例えば、ブラケット4の前端縁に、ネジやビス等の一体化手段により連結した支持板21に開閉機20を設置することができる。
【0019】
開閉機20は、例えば電動モータ等からなる開閉機本体20a、出力軸20b及び駆動回転体20c(例えば、駆動スプロケット)を含み構成されており、支持板21の内面に開閉機本体20aが固定支持される。この開閉機本体20aの出力軸20bは、支持板21に形成された貫通孔(不図示)から外方に突出し、その先端部に出力軸20bと一体回転する駆動回転体20cが外嵌されている。
【0020】
開閉機20の駆動回転体20c(例えば、駆動スプロケット)と、巻取軸2の軸部2aに外嵌された従動回転体2b(例えば、従動スプロケット)との間には、例えば、伝動チェーンや伝動ベルト等からなる伝動連結体22が懸回され、開閉機20の正逆回転に伴い巻取軸2が正逆回転されるように構成されている。
この開閉機20の回転駆動は、不図示の自動閉鎖装置、手動閉鎖装置、操作部、検知器(煙感知器、熱感知器またはヒューズ装置)、リミットスイッチ等に接続される制御装置によって制御される。
【0021】
通常時のシャッターカーテン3は、このシャッターカーテン3の略全体が巻取軸2に巻き取られていることにより、シャッターカーテン3の下端部の座板3bがまぐさ部8の出入口スリットの高さ位置に達する全開状態となっている。
火災が発生すると、煙等を検知した検知器からの信号により、制御装置が開閉機20を作動させてシャッターカーテン3を下方へ閉じ移動させる。シャッターカーテン3は、図1に示すように、室内空間T2に配置される壁等の躯体Cに取り付けられた左右一対のガイドレール10に案内されながら下方へ閉じ移動し、これにより、室内空間T2に防災区画が形成される。
なお、上述した実施形態は、開閉装置の一例である防災用のシャッター装置の例として説明したが、本発明の実施形態に係るシャッター装置は、出入口等の開口部をシャッターカーテンが開閉する各種シャッター装置にも適用可能である。
【0022】
(巻取軸の脱落防止部)
次に、シャッター装置1における巻取軸2の脱落を防止する脱落防止部30の構成について説明する。この脱落防止部30は、地震等によって建物(躯体)に強い揺れが生じた場合であっても、シャッター装置1の左右のブラケット4が、巻取軸2に対して巻取軸2の軸方向(図1の左右方向)に相対変位(相対移動)すること防ぎ(左右一対のブラケット4が所定範囲を超えて先拡がり状に拡開移動することを制限)、巻取軸2の軸部2aがブラケット4から脱落(抜出)するのを防止するためのものである。
【0023】
図1には、シャッター装置1における脱落防止部30の配置の例として、左右の脱落防止部30を、左右のブラケット4と、躯体を構成する柱材6bとの間に配置した例が示されている。これらの脱落防止部30は、図2に示すように、ブラケット4の上部前方側と柱材6bとの間を連結する連結部材31を含み構成される。
【0024】
<連結部材>
連結部材31は、ブラケット4の上部前方側から柱材6b側に延設される長尺状の長尺材からなり、例えば、金属製のL型アングル材や平板材等の長尺状の長尺材から構成することができる。連結部材31の一端側は、ブラケット4の上部前側に、例えば、ネジやビス等の結合具50又は溶接により連結固定され、その他端側は、取付部材33を介して、ブラケット4を固定支持する柱材6aに隣接して配置された柱材6bに連結固定される。
【0025】
この連結部材31がブラケット4の上部前方側と柱材6bと間に連結固定されることで、地震等によって建物(躯体)に強い揺れが生じた場合であっても、シャッター装置1の左右のブラケット4が、巻取軸2に対して巻取軸2の軸方向(図1の左右方向)に相対変位(相対移動)することを抑制することができる。
【0026】
<取付部材>
図3には、取付部材33の構造(各構造部が一体化した状態)の例を示す概略斜視図が示され、図4には、取付部材33の構造(各構造部が分離した状態)の例を示す概略斜視図が示されている。取付部材33は、本体部34、第1被覆部材35、第2被覆部材36、ワッシャ37及びナット38を含み構成されている。
【0027】
[本体部]
本体部34は、断面略L字状に形成されており、躯体Bを構成する柱材6(6b)への取付状態において、柱材6(6b)に当接する垂直部34aと、垂直部34aの下端から前方側に水平に延びる水平部34bとを有する。本体部34の垂直部34aは、柱材6(6b)に当接する後面34a3と、第1被覆部材35の後面35a2と当接する前面34a4とを有する。また、本体部34の水平部34bは、垂直部34aの後面34a3と直交する下面34b2と、第1被覆部材35の底面35a6及び第2被覆部材36の底面36a4と当接する上面34b3とを有する。
この本体部34は、例えば、強度と剛性を有する金属材料により形成される。
【0028】
本体部34の垂直部34aには、図4に示すように、本体部34を柱材6(6b)に固定するための接合部材39のネジ部39bを挿通する取付孔34a1が形成されている。接合部材39は、例えばワンサイドボルトやドリルネジ等からなり、垂直部34aの取付孔34a1と柱材6(6b)の取付孔(不図示)に接合部材39のネジ部39bを挿通させて締め付ける(螺合する)ことで、本体部34を柱材6(6b)に接合(固定)する。なお、柱材6(6b)の取付孔は、本体部34の取付作業時に、ドリルを用いて開孔すればよい。
【0029】
また、本体部34の垂直部34aには、取付孔34a1を挟んで、水平部34bと略平行に延びる左右のネジ軸34a2が設けられている。これらの左右のネジ軸34a2には、第1被覆部材35に形成された左右の第1取付孔35a3と、第2被覆部材36に形成された左右の第2取付孔36a3とが挿通される。これら第1被覆部材35及び第2被覆部材36は、ネジ軸34a2にワッシャ37を介してナット38で締め付けられ、本体部34に装着される。
【0030】
本体部34の水平部34bは、垂直部34aの下端から前方側に水平に延び、その前端部に左右方向に複数の取付孔34b1が形成されている。本体部34を柱材6(6a)に取り付け固定した場合、水平部34bの前方側は、図2に示すように、躯体Bを構成する下地材7から突出するように配設される。
【0031】
本体部34において、垂直部34aの後面34a3と、水平部34bの下面34b2とは直交し、後面34a3と下面34b2とは略直角(略90度)の角部(かど)を有して接している。本体部34は、この角部(かど)を有しているため、後述する取付部材33の設置に際し、下地材7の開口範囲を設定する工程(第2工程)等を円滑かつ正確に行うことができる。
【0032】
脱落防止部30の連結部材31は、その他端側を本体部34の水平部34bに載置した状態で、例えば、ボルト、ネジ等の固定手段により固定される。連結部材31の他端側に取付孔(不図示)を形成し、この取付孔と水平部34bに形成された取付孔34b1に、ボルト、ネジ等の固定手段を挿通させて締め付け固定される。
なお、連結部材31の他端側は、本体部34の水平部34bに溶接により固定してもよい。
【0033】
[第1被覆部材]
第1被覆部材35は、正面視略矩形状に形成され、本体部34の垂直部34aに当接する後面35a2と、第2被覆部材36に当接する前面35a1を有する。この第1被覆部材35は、下地材7と同様に、例えば、不燃材として、無機材料からなる、石膏ボード、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)、ALC板、フレキシブルボード等を用いて形成されており、本体部34の垂直部34aの前面を被覆するように配置される。
【0034】
第1被覆部材35には、その中央部に接合部材39の頭部39aを収容する収容孔35a4が、その前面35a1から後面35a2を貫通するように形成されている。この収容孔35a4は、本体部34を柱材6(6b)に取り付け固定した際に、本体部34の垂直部34aから突出する接合部材39の頭部39a(図6(d)参照)をその内部空間に収容する。
したがって、本体部34に第1被覆部材35及び第2被覆部材を装着した場合、本体部34の垂直部34aと第1被覆部材の後面35a2、及び、第1被覆部材35の前面35a1と第2被覆部材36の後面36a2は、それぞれ隙間なく密着状態に当接することができ、第1被覆部材35及び第2被覆部材36を本体部34に安定して装着することができる。
【0035】
また、第1被覆部材35には、収容孔35a4を挟んで、本体部34の垂直部34aに設けられた左右のネジ軸34a2を挿通する左右の第1取付孔35a3が形成されている。これら第1取付孔35a3に本体部34の垂直部34aに設けられた左右のネジ軸34a2を挿通させると、第1被覆部材35の底面35a6は、本体部34の水平部34bに当接した状態で載置される。
【0036】
さらに、第1被覆部材35は、その後面35a2側の下端縁が面取りされ、面取り部(テーパー面)35a5が形成されている。したがって、本体部34に第1被覆部材35を装着した場合、第1被覆部材35の面取り部(テーパー面)35a5は、本体部34の垂直部34aと水平部34bとがなす角部に干渉することないので、第1被覆部材の後面35a2及び底面35a6を本体部34の垂直部34a及び水平部34bのそれぞれに隙間なく密着状態に当接させることができ、第1被覆部材35を本体部34に安定して装着することができる。
【0037】
この第1被覆部材35は、本体部34の垂直部34aの前面を被覆するように配置されているため、火災が発生した場合であっても、第1被覆部材35により柱材6B側への温度上昇を抑制することができる。したがって、取付部材33と柱材6(6b)との固定状態を安定して維持することができる。
またこの第1被覆部材35は、後述する下地材7に形成された開口(収容孔)40を塞ぐように設置されることから、取付部材33の設置後、下地材7に形成された開口40を塞ぎ補修する部材としても機能する。
【0038】
[第2被覆部材]
第2被覆部材36は、正面視略矩形状に形成され、第1被覆部材35の前面35a1に当接する後面36a2と、ワッシャ37やナット38に対向する前面36a1を有する。この第2被覆部材36は、下地材7と同様に、例えば、不燃材として、無機材料からなる、石膏ボード、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)、ALC板、フレキシブルボード等を用いて形成されており、第1被覆部材35の前面35a1を被覆するように配置されている。
【0039】
第2被覆部材36には、本体部34の垂直部34aに設けられた左右のネジ軸34a2を挿通する左右の第2取付孔36a3が形成されている。これら第2取付孔36a3に本体部34の垂直部34aに設けられた左右のネジ軸34a2を挿通させると、第2被覆部材36の底面36a4は、本体部34の水平部34bに当接した状態で載置される。
【0040】
この第2被覆部材36は、第1被覆部材35の前面35a1を被覆するように配置されているため、火災が発生した場合、第1被覆部材35に加え、第2被覆部材36により柱材6B側への温度上昇をさらに抑制することができる。したがって、取付部材33と柱材8(6b)との固定状態をさらに安定して維持することができる。
またこの第2被覆部材36は、第1被覆部材35と同様に、後述する下地材7に形成された開口(収容孔)40を塞ぐように設置されることから、取付部材33の設置後は、下地材7に形成された開口40を塞ぎ補修する部材としても機能する。
【0041】
取付部材33を構成する本体部34、第1被覆部材35、第2被覆部材36、ワッシャ37及びナット38等の構成部材(部品)は、予め工場で製造され、それらの構成部材(部品)を仮組みした状態で建築現場へ搬送することができるため、現場における部品の欠損などを抑えて品質安定化を実現することができる。
【0042】
(取付部材の設置方法)
次に、上述した取付部材33の設置方法について、図5及び図6を参照しつつ説明する。図5及び図6には、取付部材を設置する設置工程の例を示す概要図であって、具体的には、取付部材33を柱材6(6b)に配置する工程の一例を示す概要図が示されている。
【0043】
[第1工程]
第1工程は、取付部材33を配置する柱材6(6b)の位置を特定する工程である。図5(a)には、取付部材33を柱材6(6b)に配置する前の状態であって、柱材6(6b)と、下地材7(7a,7b)との配設態様の要部を示す概要斜視図が示されている。
脱落防止部30を設置する場合、先ずは、現場において、取付部材33を配置する柱材6(6b)の位置を特定する。柱材6(6b)は、図5(a)示すように下地材7の裏面側に配置されているので、その特定には、例えば、柱材6(6b)の材質が金属の場合には金属検出用の検出器を用い、また、柱材6(6b)の材質が非金属の場合には非金属検出用の検出器を用いる。このような検出器を下地材7の表面に接触させながら移動させ、下地材7の裏面における柱材6(6b)の位置を検出することができる。
【0044】
[第2工程]
第2工程は、取付部材33を柱材6(6b)に取り付け固定するための下地材7の開口範囲を設定する工程である。第1工程において、取付部材33を取り付け固定する柱材6(6b)の位置が特定できると、第2工程において、取付部材33(本体部34)を柱材6(6b)に取り付け固定するための下地材7の開口範囲を設定する。この開口範囲は、下地材7を切除する(取り除く)切除領域となる。
この開口範囲(切除領域)を設定する場合、例えば、図5(b)に示すように、本体部34を下地材7(7b)に当接させて、その範囲(領域)を設定することができる。この場合、開口を形成する大きさ、位置にマーキング(例えば、ケガキ)などで印をつければよい。
【0045】
本体部34における垂直部34aの後面34a3と、水平部34bの下面34b2とは直交し、略直角(略90度)の角部(かど)を有して接しているため、本体部34を下地材7(7b)に当接させた状態で、水平(面)と垂直(面)を正確に確認することができるとともに、マーキング時に死角(視認し難い)となる角部の位置を正確にマーキングすること(角部に沿ってマーキングすること)ができる。
また、垂直部34aの後面34a3と水平部34bの下面34b2とが直交しているため、下地材7の開口範囲は、垂直部34aの上縁と左右の側縁と角部(かど)の四辺で設定することができるため、その設定作業を円滑に行うことができる。
【0046】
[第3工程]
第3工程は、下地材7に本体部34を収容する開口(収容孔)40を形成する工程である。第2工程において、下地材7を切除する開口範囲が設定されると、第3工程において、例えば、回転鋸、カッター等の切削具を用いて下地材7の開口範囲を切削し、図5(c)に示すように、開口(収容孔)40を形成する。この開口(収容孔)40を形成することで、下地材7の裏面に位置する柱材6(6b)が露出する。
【0047】
[第4工程]
第4工程は、取付部材33(本体部34)を柱材6(6b)に取り付け固定する工程である。第3工程において、下地材7に本体部34を収容する開口(収容孔)40が形成されると、第4工程において、取付部材33の本体部34を下地材7の開口(収容孔)40に収容するとともに、接合部材39を用いて柱材6(6b)に取り付け固定する。
【0048】
接合部材39は、例えばワンサイドボルト、タッピングネジ、ドリルネジ、等の接合部材からなり、本体部34の垂直部34aを柱材6(6b)に当接させた状態で、垂直部34aに形成した取付孔34a1及び柱材6(6b)の取付孔(不図示)に接合部材39のネジ部39bを挿通させて締め付ける(螺合する)ことで、本体部34を柱材6(6b)に接合(固定)することができる。柱材6(6b)の取付孔は、本体部34の取り付け作業時に、ドリルを用いて開孔すればよい。
【0049】
なお、柱材6(6b)に取付孔を設ける必要がない場合には、本体部34の垂直部34aを柱材6(6b)に当接させた状態で、垂直部34aに形成した取付孔34a1に接合部材39のネジ部39bを挿通させてねじ込んで固定すればよい。
【0050】
また、本体部34の垂直部34aは、柱材6(6b)にワンサイドボルトやドリルネジ等からなる接合部材39により連結固定されているが、その固定手段に限定されない。例えば、柱材6(6b)が金属製の素材から構成されている場合には、本体部34の垂直部34aを、柱材6(6b)に溶接により固定してもよい。
【0051】
[第5工程]
第5工程は、本体部34に第1被覆部材35を装着する工程である。第4工程において、取付部材33の本体部34が柱材6(6b)に取り付け固定されると、第5工程において、本体部34に第1被覆部材35を装着する(図6(d)参照)。本体部34の垂直部34aに設けられた左右のネジ軸34a2に、第1被覆部材35に形成された左右の第1取付孔35a3を挿通し、第1被覆部材35を本体部34に装着する。この装着状態で、接合部材39の頭部39a(図6(d)参照)は、第1被覆部材の収容孔35a4に収容される。
【0052】
[第6工程]
第6工程は、本体部34に第2被覆部材36を装着する工程である。第5工程において、本体部34に第1被覆部材35が装着されると、第6工程において、本体部34に第2被覆部材36を装着する(図6(e)参照)。本体部34の垂直部34aに設けられた左右のネジ軸34a2に、第2被覆部材36に形成された左右の第2取付孔36a3を挿通し、第2被覆部材36を本体部34に装着する。
【0053】
[第7工程]
第7工程は、本体部34に第1被覆部材35及び第2被覆部材36を固定する工程である。第6工程において、本体部34に第2被覆部材36が装着されると、第7工程において、本体部34のネジ軸34a2にワッシャ37を介してナット38を締め付けることで、本体部34に第1被覆部材35及び第2被覆部材36が固定される(図6(f)参照)。
これらの第1工程から第7の工程により、取付部材33を柱材6(6b)に設置することがきる。
【0054】
(脱落防止部の設置:連結部材の設置工程)
取付部材33が柱材6(6b)に設置された後、脱落防止部30の連結部材31がブラケット4の上部前方側と柱材6bに設置された取付部材33に連結固定される。
連結部材31の一端側は、図2に示すように、ブラケット4の上部前側に、例えば、ボルト、ネジ、ビス等の結合具50により連結固定される。
また、連結部材31の他端側は、取付部材33の水平部34bに、例えば、ボルト、ネジ、ビス等の結合具60により連結固定される。連結部材31の他端側に取付孔(不図示)を形成し、この取付孔と取付部材33の水平部34bに形成された取付孔34b1に、ボルト、ネジ、ビス等の結合具60を挿通させて連結固定される。
【0055】
なお、連結部材31の一端側及び他端側は、ブラケット4の上部前側及び取付部材33の水平部34bのそれぞれに、ボルト、ネジ、ビス等の結合具50,60により連結固定されているが、その固定手段に限定されない。例えば、連結部材31の一端側及び他端側を、ブラケット4の上部前側及び取付部材33の水平部34bのそれぞれに、溶接により固定してもよい。
【0056】
以上のとおり、脱落防止部30の連結部材31が、ブラケット4の上部前方側と柱材6bと間に連結されているため、地震等によって建物(躯体)に強い揺れが生じた場合であっても、シャッター装置1の左右のブラケット4が、巻取軸2に対して巻取軸2の軸方向(図1の左右方向)に相対変位(相対移動)することを抑制することができる。したがって、巻取軸2の軸部2aがブラケット4から脱落(抜出)するのを防止することができる。
【0057】
上述した実施形態は、脱落防止部30の連結部材31として、例えば、金属製のL型アングル材や平板材等からなる連結部材を用いた例を説明したが、このような連結部材31に限定されない。
連結部材31の他の例として、例えば、ブラケット4の上部前側に連結固定あるいは係合する第1ボルト部材と、取付部材33の水平部34bに連結固定あるいは係合する第2ボルト部材と、第1ボルト部材と第2ボルト部材を互いに連結するターンバックル等の連結部材を有する連結部材を用いてもよい。
【0058】
また、連結部材31の他の例として、例えば、ブラケット4の上部前側に連結固定あるいは係合する金属製のワイヤロープ等からなる第1索体と、取付部材33の水平部34bに連結固定あるいは係合する金属製のワイヤロープ等からなる第2索体と、第1索体と第2索体とを互いに連結するターンバックル等の連結部材を有する連結部材を用いてもよい。
【0059】
また、本発明の脱落防止部30は、既設または新設の開閉装置(例えば、シャッター装置)に適用できる。
本発明は上述した具体的構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0060】
<総括>
以上のとおり、上記実施形態では以下の発明を開示している。
(1)
下地材が取り付けられた複数の柱材を含む躯体に設置される開閉装置において、巻取軸と、前記巻取軸に巻装されるシャッターカーテンと、前記巻取軸を回転自在に支持するとともに、その後方側が前記躯体の柱材に固定される左右一対のブラケットと、前記巻取軸を正逆回転させる開閉機と、前記巻取軸の脱落を防止する脱落防止部と、を備え、前記脱落防止部は、前記ブラケットの上部前方側と、前記ブラケットが固定された前記柱材とは異なる前記躯体の他の柱材との間に配置される連結部材を有し、前記連結部材の一端部を前記ブラケットの前記上部前方側に連結するとともに、前記連結部材の他端部を前記他の柱材に取付部材を介して連結することを特徴とする開閉装置(図1図2参照)。
(2)
前記取付部材は、前記他の柱材に取り付け固定される本体部を有し、前記本体部は、前記他の柱材に当接して固定される垂直部と、この垂直部の下端から前方側に水平に延びる水平部と、を有し、前記水平部に、前記連結部材の他端部が連結されることを特徴とする上記(1)記載の開閉装置(図2図4参照)。
(3)
前記垂直部の後面と前記水平部の下面とは直交し、前記後面と前記下面とは略直角の角部を有して接していることを特徴とする上記(2)記載の開閉装置(図3図4参照)。
(4)
前記取付部材を被覆する被覆部材を有し、前記被覆部材は、前記本体部の前記水平部に載置されるとともに、前記垂直部を被覆するように配置されることを特徴とする上記(2)又は(3)記載の開閉装置(図3図4参照)。
(5)
前記連結部材は、前記ブラケットの前記上部前方側から前記他の柱材側に延設される長尺状の長尺材からなることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載の開閉装置(図1図2参照)。
(6)
前記連結部材は、複数の索体と、これら索体の張力を調整する張力調整部を有することを特徴とする上記(1)~(4)の何れかに記載の開閉装置。
(7)
前記取付部材を前記他の柱材に取り付け固定するために、前記下地材を切除し、開口を形成する工程と、前記取付部材を、前記開口に収容して前記他の柱材に取り付け固定する工程と、前記連結部材の一端部を前記ブラケットの前記上部前方側に連結するとともに、前記連結部材の他端部を前記他の柱材に取り付け固定された前記取付部材に連結する工程と、を含むことを特徴とする上記(1)~(6)のいずれかに記載の開閉装置の施工方法(図5図6参照)。
(8)
前記取付部材を、前記開口に収容して前記他の柱材に取り付け固定する工程は、前記取付部材の本体部を前記開口に収容して前記他の柱材に取り付け固定する工程と、前記本体部に被覆部材を装着する工程と、を含むことを特徴とする上記(7)に記載の開閉装置の施工方法(図5図6参照)。
(9)
前記取付部材を前記他の柱材に取り付け固定するために、前記下地材に形成する前記開口の開口範囲を設定する工程を有することを特徴とする上記(7)又は(8)記載の開閉装置の施工方法。
【符号の説明】
【0061】
2:巻取軸
3:シャッターカーテン
4:ブラケット
6(6a,6b,6c・・・):柱材
7:下地材
20:開閉機
30:脱落防止部
31:連結部材
33:取付部材
34:本体部
34a:垂直部
34b:水平部
図1
図2
図3
図4
図5
図6