(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087418
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】NFT発行システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/18 20120101AFI20240624BHJP
G06F 21/10 20130101ALI20240624BHJP
【FI】
G06Q50/18 310
G06F21/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202238
(22)【出願日】2022-12-19
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100216677
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】川口 将司
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC16
5L050CC16
(57)【要約】
【課題】AIの利用により出力された個々のデジタルコンテンツをストレージに保管する必要性を解消する。
【解決手段】AIによる推論により生成されたデジタルコンテンツに係るNFTを発行するNFT発行システム1であって、デジタルコンテンツの生成に用いられた学習済みモデルの情報と、推論時に学習済みモデルに与えられるパラメータとを含むNFTを発行するNFT発行部12を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AI(Artificial Intelligence)による推論により生成されたデジタルコンテンツに係るNFT(Non-Fungible Token)を発行するNFT発行システムであって、
前記デジタルコンテンツの生成に用いられた学習済みモデルの情報と、推論時に前記学習済みモデルに与えられるパラメータとを含む前記NFTを発行する、NFT発行システム。
【請求項2】
請求項1に記載のNFT発行システムにおいて、
前記パラメータの少なくとも一部をストレージに記憶し、当該パラメータに代えて、当該パラメータへのリンク情報を含む前記NFTを発行する、NFT発行システム。
【請求項3】
請求項1に記載のNFT発行システムにおいて、
前記パラメータの少なくとも一部について、値に代えて当該パラメータを識別するメタ情報を含む前記NFTを発行する、NFT発行システム。
【請求項4】
請求項1に記載のNFT発行システムにおいて、
前記NFTから前記学習済みモデルと前記パラメータを取得し、取得した前記学習済みモデルと前記パラメータに基づいてAIによる推論により前記デジタルコンテンツを生成する、NFT発行システム。
【請求項5】
請求項3に記載のNFT発行システムにおいて、
前記NFTから前記学習済みモデルと前記パラメータを取得し、前記メタ情報に基づいて所定の方法によりパラメータの値を補完して、取得した前記学習済みモデルと前記パラメータに基づいてAIによる推論により前記デジタルコンテンツを生成する、NFT発行システム。
【請求項6】
請求項1に記載のNFT発行システムにおいて、
任意の第1のデジタルコンテンツと、前記NFTから取得した前記学習済みモデルと前記パラメータに基づいてAIによる推論により生成した第2のデジタルコンテンツとを比較し、同一である場合に前記第1のデジタルコンテンツの所有者が前記NFTの所有者である旨を出力する、NFT発行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルコンテンツの保管・保護の技術に関し、特に、コンテンツに関連付けられたNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)を発行するNFT発行システムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
AI(Artificial Intelligence)技術の進歩により、近年、テキストや画像、その他何らかのデジタルデータを入力として、AIにより画像/映像や物語、音楽/音声、ゲームなどのデジタルコンテンツを出力するシステムやサービス、学習済みモデルなどが存在する(例えば、「Stable Diffusion」(https://stablediffusionweb.com)や「Novel AI」(https://novelai.net)など)。このようなシステム等により出力されたデジタルコンテンツは、例えば「Opensea(登録商標)」(https://opensea.io)などのNFTマーケットプレイス上で、NFTに関連付けることで所有権の所在やオリジナルであることの証明を可能とした上で販売される場合がある。
【0003】
デジタルコンテンツにNFTを関連付けて取引可能とする技術に関連するものとして、例えば、特許第7033352号公報(特許文献1)には、ユーザから入力された出品希望のデジタルアート作品情報に基づいて出品登録を行い、当該デジタルアート作品に係る所有権トークンを発行して、当該所有権トークンをブロックチェーンネットワークへ出品して取引可能とすることで、デジタルアート作品の流動性を向上させるとともに、出品登録時におけるアーティストの負担を軽減し、利便性を向上させることを可能とする仕組みが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によれば、デジタルコンテンツをNFTマーケットプレイスなどのブロックチェーン上で一意なものとして取引対象とすることが可能である。
【0006】
しかしながら、デジタルコンテンツのデータ自体は、例えば、分散ストレージやクラウドストレージなどで保管し、当該データへのリンクをNFTの定義(スマートコントラクト等)に埋め込むことで、デジタルコンテンツとNFTを関連付けていることから、デジタルコンテンツを大量に出力・生成すればするほどストレージの容量を大きく消費してしまうことになる。
【0007】
そこで本発明の目的は、AIの利用により出力された個々のデジタルコンテンツをストレージに保管する必要性を解消するNFT発行システムを提供することにある。
【0008】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記載および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0010】
本発明の代表的な実施の形態であるNFT発行システムは、AIによる推論により生成されたデジタルコンテンツに係るNFTを発行するNFT発行システムであって、前記デジタルコンテンツの生成に用いられた学習済みモデルの情報と、推論時に前記学習済みモデルに与えられるパラメータとを含む前記NFTを発行するものである。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0012】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、AIの利用により出力された個々のデジタルコンテンツをストレージに保管する必要性を解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態であるNFT発行システムの構成例について概要を示した図である。
【
図2】AIによるデジタルコンテンツの出力の考え方の例について概要を示した図である。
【
図3】本発明の一実施の形態におけるアーキテクチャについて概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0015】
<概要>
上述したように、近年では、テキストや画像、その他何らかのデジタルデータを入力として、AIにより画像/映像や物語、音楽/音声、ゲームなどのデジタルコンテンツを出力するシステムやサービス、学習済みモデルなどが存在する。すなわち、AIがアーティストの代替となり始めている。この場合、学習済みモデルに対して所定のパラメータを与えて推論(計算)することで、デジタルコンテンツを出力する。
【0016】
図2は、AIによるデジタルコンテンツの出力の考え方の例について概要を示した図である。上述した、学習済みモデルに対して所定のパラメータを与えてデジタルコンテンツを出力する処理は、図中に示すような「y=f(X)」という関数演算になぞらえて把握することができる。すなわち、学習済みモデルを関数「f」とし、推論時に学習済みモデルに入力するパラメータを「X」とすると、「f」と「X」に基づく推論「f(X)」は、デジタルコンテンツ「y」を生成・出力することであるといえる。
【0017】
ここで、入力するパラメータ「X」は、何らかのモチーフから取得したデジタル情報である。
図2の例では、「(実在の)黒いリンゴ」をモチーフとして、"black apple"というテキストデータや、画像データを取得してパラメータとする場合を示している。また、関数「f」は、制作者である人間が機械学習等により作成した学習済みモデル(これが適用される特定のバージョンのシステムやサービスの情報も含む。以下同様。)である。そして、出力された「y」は、「f(X)」の推論により得られた画像・映像や音楽等のデジタルコンテンツである。このように「y=f(X)」になぞらえて把握できるということは、「f」と「X」が決まれば「y」を一意にすることができる(すなわち、デジタルコンテンツを再現することができる)ことを意味する。
【0018】
例えば、上述した「Stable Diffusion」の「txt2img」(文章をモデルに与えることで新しい画像を得る機能)により、画像等のコンテンツデータ「y」を学習済みモデル「f」により生成するには、パラメータ「X」として一般的に、プロンプト(学習済みモデルに対して、どのようなコンテンツを生成して欲しいかを指示するテキストデータ。例えば、歌の歌詞や小説の文、漫画やアニメ作品、映画作品の台詞等)とシード値(生成するコンテンツにランダム性を持たせるために使われる大きな数値)が含まれるが、同じ学習済みモデル「f」に対して、プロンプトとシード値を固定すれば、同じコンテンツデータ「y」を再現することが可能である。「img2img」(画像と文章をモデルに与えることで新しい画像を得る機能)では、上記に加えてさらに画像データ(例えば、音楽CDのジャケットや広告に用いた写真や広告、漫画やアニメ作品、映画作品のカットシーン等)がパラメータ「X」に含められる。
【0019】
具体的には、例えば、「Stable Diffusion」のサービスを用いて画像データを生成する場合、「X」としては、プロンプトや画像データの他に、サプリング方法(アルゴリズム)、サンプリングのステップ数、出力のテンソルの次元数・形状・要素数(例えば、画像のサイズ)、CFG(Classifier-Free Guidance)スケール、シード値、ファインチューニングや転移学習されたモデルの利用の指示(「embedding」や「hypernetwork」)、加工処理(例えば、ノイズ除去や修正等)およびそれらの設定値などが含まれ、これらのデータに同じ値を設定すると出力として同じ画像が得られる。
【0020】
従来のデジタルコンテンツに関連付けられるNFTでは、
図2の例において出力・生成されたコンテンツデータである「y」を分散ストレージやクラウドストレージ等に保管し、当該データに対するリンクをNFTの定義(スマートコントラクト等)に埋め込むことで関連付けをしていた。
【0021】
これに対し、本発明の一実施の形態であるNFT発行システムは、
図2における学習済みモデル「f」と、推論時に学習済みモデルに入力するパラメータ「X」に関連付けたNFTを発行するものである。これにより、個々のコンテンツデータ「y」をストレージに保管する必要をなくし、もしくは保管しなければならないデータ量を大幅に圧縮することができる。
【0022】
具体的には、学習済みモデル「f」を一意に識別するメタ情報をNFTに含むものとする。例えば、デジタルコンテンツを出力する一般に公開されたシステムやサービスにおける学習済みモデルへのリンク情報、もしくはこれらを識別するコードネームやバージョン情報などをNFTに含むものとする。また、推論時に学習済みモデルに与えるパラメータ「X」についてもNFTのスマートコントラクトに含むものとする。もしくは「X」をJson(JavaScript Object Notation)形式等で分散ストレージ等に保管しておき、これへのリンク情報をNFTのスマートコントラクトに含めてもよい。
【0023】
「f」と「X」に基づいて推論(すなわちコンテンツの生成)を行ってコンテンツデータ「y」を生成することで、ストレージに保管された「y」を参照しに行かなくても(もはや「y」が参照不可能な状態であっても)、「y」を再現することができる。これにより、保管しなければならないデータ量を大幅に圧縮することができるとともに、NFTに関連付けられたコンテンツデータ「y」を保管しているストレージが分権されていない中央集権的なものであった場合に生じ得る単一障害点のリスクも低減することができる。
【0024】
<アーキテクチャ>
図3は、本発明の一実施の形態におけるアーキテクチャについて概要を示した図である。上述したように、本実施の形態では、ブロックチェーン上にNFTがあることで、NFT内に定義される情報の完全性が維持される構造である。そして、学習済みモデル「f」と、推論時に用いるパラメータ「X」の情報がNFTに含まれることで、これらの情報の完全性が維持される構造である。なお、NFTに直接含むデータ量の削減や、ブロックチェーン上での取引手数料(いわゆる「ガス代」)の節約等の理由から、上述したように、学習済みモデル「f」の情報やパラメータ「X」の情報は、ストレージ(例えば、クラウドストレージやIPFS(InterPlanetary File System)等の分散ファイルシステム等)に保管する構成としてもよい。この場合、これらの情報へのリンク情報のみがNFTに含まれることになる。
【0025】
一方、NFTの保有者のウォレット(アプリケーション)において管理される、当該保有者のアカウントに関連付けられた図示しない秘密鍵に基づいて、当該NFTの所有権が維持される構造である。そして、当該NFTの保有者が、デジタルコンテンツに係るサービスの提供を受けるにあたり、サービス提供者の環境に対してウォレット連携等により当該デジタルコンテンツに対応するNFTの所有権を証明する構造である。
【0026】
サービス提供者の環境では、学習済みモデルによる推論に必要なリソースを十分に備えた計算環境により、対象のNFTから学習済みモデル「f」とパラメータ「X」を特定してこれらにより推論(計算)を行い、推論結果としてコンテンツデータ「y」を得る。そして、このコンテンツデータ「y」を、ゲームやSNS(Social Networking Service)、メタバース等のサービスにインポートして転用することで、対象のNFTの保有者は、娯楽や経済的利益といったベネフィットを得ることができる。
【0027】
なお、基本的に、NFTの保有者が、当該NFTに関連付けられた学習済みモデル「f」およびパラメータ「X」を用いて生成されたデジタルコンテンツ「y」を利用する構成としているが、NFT上もしくはNFTに関連するシステム上で利用権を許諾されているユーザの求めに応じて、当該NFTに関連付けられた「f」および「X」を用いて生成されたデジタルコンテンツ「y」を当該ユーザが利用する構成としてもよい。
【0028】
また、所定のデジタルコンテンツ「y」を生成した「f」および「X」に関連付けられたNFTの販売等のために、対象のデジタルコンテンツ「y」そのもの(またはそのコピー)、もしくは当該デジタルコンテンツ「y」を簡略的にデータ変換したもの(例えば、サムネイル画像)を、デジタルコンテンツの販売サイトにて表示し、ユーザによる購入処理の後に、当該NFTの保有者情報を当該ユーザに更新する処理を行う構成であってもよい。すなわち、このような販売サイトと、本実施の形態に係るNFT発行システム1とが連動する構成、もしくは一方に機能的に包含される構成であってもよい。
【0029】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態であるNFT発行システムの構成例について概要を示した図である。本実施の形態では、NFT発行システム1が、インターネット等のネットワークを介してクラウドストレージ等のストレージ2やブロックチェーン3と接続可能な構成を有する。また、利用者が保有するPCやスマートフォン等の利用者端末4上のアプリケーションであるウォレット41を介して、ブロックチェーン3上の図示しないNFTにアクセスすることができる構成を有する。
【0030】
NFT発行システム1は、例えば、1つ以上のサーバ機器や情報処理端末もしくはクラウドコンピューティングサービス上に構築された1つ以上の仮想サーバ等により実装され、図示しないCPU(Central Processing Unit)により、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)、Webサーバプログラム等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで、学習済みモデル「f」と入力のパラメータ「X」に基づく推論によるデジタルコンテンツ「y」の生成・出力、および「f」と「X」に関連付けたNFTの発行に係る各種機能を実現する。
【0031】
NFT発行システム1は、例えば、ソフトウェアとして実装されたパラメータ取得部11、NFT発行部12、推論処理部13、検証処理部14、およびサービス提供部15などの各部を有する。なお、
図1の例では、これら各部を有するNFT発行システム1を1つの物理的なシステムのように示しているが、あくまで論理的なものであり、実際にはこれら各部の一部または全部が物理的に異なる独立したシステムやサービスとしてそれぞれ実装・運用され、自動もしくは利用者による手動により連携して動作して各種機能を実現する構成であってもよい。例えば、NFT発行システム1のうち、推論処理部13と検証処理部14のみが、それぞれ推論処理装置、検証処理装置として別個に構成されていてもよい。
【0032】
パラメータ取得部11は、推論時に学習済みモデル「f」に与えるパラメータ「X」を取得もしくは決定する機能を有する。必要なデータとしては、例えば、(1)シード値、(2)出力形式やアルゴリズムを決定するパラメータ(サンプリングのアルゴリズム、サンプリングのステップ数、出力のテンソルの次元数・形状・要素数等)、(3)推論結果の内容を決めるパラメータ(テキスト、画像/映像、音楽に代表されるデジタルデータ全般。例えば、コンテンツとしてキャラクターを生成したい場合におけるキャラクター名などのテキスト、キャラクターの容姿を連想させる画像/映像、キャラクターの声質を表す音楽や音など)が含まれる。
【0033】
これらのパラメータは、例えば、既に「f」と「X」に関連付けられたNFTがブロックチェーン3上に存在する場合(すなわち、デジタルコンテンツ「y」の再現時)は、当該NFTから取得することができる。この場合、利用者は、当該NFTが自身の所有するものであることを、例えば、デジタルコンテンツ「y」を利用するサービスの画面で自身のウォレット41と連携するなどにより示すことができる。
【0034】
後述するように、NFTには推論に必要な全ての情報が含まれておらず一部が省略されていてもよいが、この場合、省略された情報については、例えば、利用者端末4を介して利用者が入力したり、サービス提供者が入力したりしてもよい。あるいはパラメータ取得部11が所定のルールに基づいて、もしくはランダムに自動的に補完してもよい。一方、「f」と「X」に関連付けられたNFTが存在しない場合(すなわち、デジタルコンテンツ「y」を新たに生成する場合)は、必要な情報全てを同様の手法により補完する。
【0035】
NFT発行部12は、学習済みモデル「f」と、推論時に当該学習済みモデルに与えるパラメータ「X」に関連付けられたNFTをブロックチェーン3上に発行する機能を有する。本実施の形態では、発行されたNFTは、ブロックチェーン3における保有者のアカウントアドレスに保有されるものとして説明する。上述したように、NFTに関連付けられる学習済みモデル「f」としては、例えば、デジタルコンテンツを出力する一般に公開されたシステムやサービスにおける学習済みモデルへのリンク情報、もしくはこれらを識別するコードネームやバージョン情報などが含まれ、これらをNFTのスマートコントラクトに含むものとする。また、パラメータ「X」についてもNFTのスマートコントラクトに含むものとする。
【0036】
パラメータ「X」については、その種類や値を一意にする情報を含むものとするが、データの構造については任意である。また、推論に必要な全ての情報を含まず、一部が省略されていてもよい。この場合、省略された情報を識別するための名前や形式等のメタ情報をNFTに含むものとして、例えば、推論時に当該メタ情報に基づいて利用者が必要な情報を補完できるようにしてもよい。また、パラメータ「X」については、ブロックチェーン3上に保存されるように、NFTのスマートコントラクトにデータ自体を含めてもよいし、外部のストレージ2(分散ストレージやクラウドストレージを含む)にJson形式等で保存し、当該データへのリンク情報という形式でNFTのスマートコントラクトに含めることで参照可能な構成としてもよい。
【0037】
推論処理部13は、学習済みモデル「f」と、これに与えるパラメータ「X」を特定して、これらに基づいて推論(計算)処理を行い、デジタルコンテンツ「y」を出力・生成する機能を有する。上述したように、「f」や「X」の情報については、パラメータ取得部11により、既に関連付けられたNFTが存在する場合は当該NFTから参照し(一部が省略されている場合は補完し)、NFTが存在していない場合は、必要な全ての情報を入力もしくは補完して取得する。デジタルコンテンツ「y」を生成した後に、これを簡略的にデータ変換したもの(例えば、サムネイル画像)をさらに生成してもよい。
【0038】
検証処理部14は、NFTを用いてデジタルコンテンツ「y」の所有者を検証・証明する機能を有する。本実施の形態により出力されたデジタルコンテンツ「y」の所有権を不正に表明する者が現れた場合、これに対応するNFTの保有者が当該デジタルコンテンツの真の所有者であることを証明できることが望ましい。
【0039】
上述したように、学習済みモデル「f」と、これに入力するパラメータ「X」が同一であれば、同じデジタルコンテンツを再現することができる。すなわち、デジタルコンテンツに係るサービスの提供者(もしくは第三者)が、NFTに関連付けられた学習済みモデル「f」(およびこれが適用されるシステムやサービス)と、パラメータ「X」とに基づいて推論を行い、出力された結果のデータと対象のデジタルコンテンツとの同一性を確認することで、対象のデジタルコンテンツが当該NFTを保有する者に帰属することを証明することができる。その際、例えば、その旨を示す証明書等のデータを出力してもよい。
【0040】
他の方法として、例えば、サービスの提供者(もしくは第三者)が、デジタルコンテンツの所有者のアカウントアドレスや身元情報等を自身のサービス上で公開してもよいし、NFTのコントラクトアドレスと出力結果(推論により出力されたデジタルコンテンツ)とが関連付けられていることを保証する旨を、検証者自身もしくは再現性を保証する身元の電子署名を付与したJWT(JSON Web Token)形式等のトークン/クレデンシャルを発行することで示すようにしてもよい。
【0041】
サービス提供部15は、本実施の形態のNFTにより所有権が証明されるデジタルコンテンツを利用する任意のサービスを提供する機能を有する。例えば、SNSやメタバース、オンラインゲーム、フリーマーケット、マッチングサービスなど、複数の利用者が他の利用者と識別される形で利用する各種のサービスが該当し得る。
【0042】
これらのサービスの提供者は、対象のNFTを保有するウォレット41の保有者に、対応するデジタルコンテンツ「y」の所有権を認めて、これを自身のサービス(サービス提供部15)において転用可能とする。例えば、デジタルコンテンツ「y」がキャラクターの画像の場合、これをオンラインゲームでのアバターとして用いたり、SNSでの自身のアイコンとして用いたりすることを可能とする。また、デジタルコンテンツ「y」が音楽の場合、SNSの自身のプロフィールページ上で演奏可能とする。展示・掲載や販売の対象として転用してもよい。このような利用により、利用者は、娯楽や経済的利益といったベネフィットを享受することができる。
【0043】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態であるNFT発行システム1によれば、学習済みモデル「f」と推論時に学習済みモデルに与えるパラメータ「X」に基づいて推論(すなわちコンテンツの生成)を行うことで、デジタルコンテンツ「y」を再現することができる。これにより、デジタルコンテンツ「y」のために保管しなければならないデータ量を大幅に圧縮することができるとともに、NFTに関連付けられたコンテンツデータ「y」の保管に係る単一障害点のリスクも低減することができる。
【0044】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0045】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0046】
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、コンテンツに関連付けられたNFTを発行するNFT発行システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…NFT発行システム、2…ストレージ、3…ブロックチェーン、4…利用者端末、
11…パラメータ取得部、12…NFT発行部、13…推論処理部、14…検証処理部、15…サービス提供部、
41…ウォレット